G7は有害オンラインコンテンツ規制に取り組むべきと仏マクロン大統領が力説

エリゼ宮での記者会見で、フランスのEmmanuel Macron(エマニュエル・マクロン)大統領はオンライン規制、特に有害なコンテンツ規制に繰り返し言及した。G7サミットが今週英国で開催されるため、マクロン大統領は国際協力を呼びかけた。

「効果的な多国間主義の恩恵を受けるかもしれず、また我々が今回のG7サミットで取り上げる3つめの大きなトピックはオンライン規制です」とマクロン大統領は述べた。「再度話すことになると私が確信しているこのトピックは我々の民主主義にとって不可欠なものです」。

マクロン大統領はまた、記者会見の場を利用してこの件に関するフランスの取り組みを総括した。「2017年夏に我々はオンラインテロリストコンテンツに取り組むイニシアチブをTheresa May(テリーザ・メイ)首相と立ち上げました。当時も今日同様にクレイジーでしたが、イニシアチブはほとんど失敗に終わりました。言論の自由のために、人々は余計なお世話だ、というようなことを言いました」。

2019年にニュージーランドのクライストチャーチで恐ろしいモスク銃乱射事件が起こった。その銃撃の様子をとらえたビデオの複数のコピーがFacebook、YouTube、Twitter上で出回った。マクロン大統領はニュージーランドのJacinda Ardern(ジャシンダ・アーダーン)首相や何人かのG7のデジタル大臣、テック企業をパリに招待した。

出席者は「Christchurch Call」という拘束力のない誓約に署名した。ソーシャルプラットフォームを運営するテック企業は基本的に有害コンテンツ、なかでもテロリストのコンテンツの阻止でさらに取り組むことに同意した。

Facebook、Twitter、Google (そしてYouTube)、Microsoft、Amazon、その他のテック企業も誓約に署名した。17カ国と欧州委員会もまたChristchurch Callを支持した。ただし1つ大きな例外があった。米国は誓約に署名しなかった。

「誓約に署名したすべてのオンラインプラットフォームが従ったため、この戦略はいくらか具体的な成果につながりました」とマクロン大統領は話した。「この証拠はフランスが昨秋テロ攻撃に直面したときに起こったことに見られます」。2020年10月、フランスの教師Samuel Paty(サミュエル・パティ)氏がテロリストによって殺され、斬首された。

「プラットフォームはコンテンツにフラッグを立て、1時間以内にコンテンツを削除しました」とマクロン大統領は続けた。

その後、さらに多くの国やオンラインプラットフォームがChristchurch Call支持を表明した。2021年5月に米国のJoe Biden(ジョー・バイデン)大統領も有害コンテンツに対する国際的な取り組みに加わった。「米国で法人化されている企業の数を考えたとき、大きなステップであり、私はこれを歓迎します」とマクロン大統領は述べた。

しかしChristchurch Callの次に何がくるのだろう。マクロン大統領はまず、Christchurch Callを支持するようさらに多くの国に働きかけたいとと考えている。たとえば中国とロシアはChristchurch Call支持の輪に加わっていない。

「2つめは、あらゆる種のオンラインのヘイト言論、差別的言論、反ユダヤ主義言論、そしてオンラインハラスメントに関連するフレームワークづくりを進める必要があります」とマクロン大統領は話した。

そしてこの件に関するフランスの規制についても手短に言及した。オンラインプラットフォーム上のヘイトスピーチに関するフランスの規制は2020年、新しい法律が合憲かどうかを判断する最高機関である憲法評議会によって違憲だと判断された。

ヘイトスピーチコンテンツのリストは長く広範で、その一方で科され得る罰金はかなり高額だ。憲法評議会はオンラインプラットフォームがあまりにも早くコンテンツを検閲するのではないかと危惧した。

しかしそれでもマクロン大統領は欧州レベルとG7レベルでンラインコンテンツに関する新しい規制を支持するのをやめはしないようだ。

「G20サミットで議論でき、またオンラインでのやりとりの中の粗暴な行為に対して戦えるようにする効果的なフレームワークを構築する唯一の方法です。ゆえに、我々の新しい世界の秩序の中に粗暴な行為をおくことになります」とマクロン大統領は物議を醸している「粗暴な行為」という暗喩(フランス語ensauvagementは「野蛮化する」の意を使って述べた。この言葉は最初に極右の政治家によって広まった

マクロン大統領によると、世界のリーダーがオンライン規制で共通点を見つけ出せなかったらインターネットの崩壊につながる。たとえば一部のオンラインサービスをブロックすることを選択する国も出てくるかもしれない。

そして最近の事件は、そうした事態がすでに起こりつつあることを示している。ナイジェリア政府は数日前にTwitterを禁止した。テロリストコンテンツを阻止するために合意するのは簡単だが、他のコンテンツをモデレートしようと思えばあっという間に大変な作業になる。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:エマニュエル・マクロンコンテンツモデレーションSNSフランスG7

画像クレジット:Pascal Rossignol / AFP / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

テック企業数十社がフランス主導の下「善のためのテック」宣言に署名

2年ほど前、フランスのEmmanuel Macron(エマニュエル・マクロン)大統領はTech for Good Summit(善のためのテック・サミット)を主催した(未訳記事)。50社のテック企業のCEOが招かれ、テック業界の課題が話し合われ、声明が発表された。

通常ならテック企業のCEOたちは、パリで開催される技術系見本市Viva Technology(ビバ・テクノロジー)に先立って顔を合わせることになっている。しかし、2020年のViva Technoloyは中止を余儀なくされたため、テック企業のCEOたちは一堂に会して、みんなで記念写真を撮って、よりよい世界を作ろうと宣言することができなかった。

そこで数十社のテック企業CEOたちは、共通の誓いを立てることにした。一部の技術革新が良いインパクトを社会に与えている一方で、テック業界が完璧ではないことを彼らは自覚している。

「そうした進歩が、独占や組織的地位の悪用、インターネットの断片化といった不公正な競争を含む、外部へのネガティブな影響によって妨げられていることを考慮するに、適切なセーフガードがなければ、テクノロジーによって基本的な自由や人権が脅かされたり、民主主義が弱体化させられることもあり得ます。それに対抗する適切な手段がなければ、一部の個人や団体が、紛争に乗じるなどして犯罪目的でテクノロジーを悪用する事態は避けられません」と誓約には語られている。

この誓約に署名した企業は、たとえば児童の性的虐待やテロリスト関連のコンテンツなどの有害コンテンツに対処する際に力を合わせることになっている。彼らは「ヘイトスピーチ、誤情報、言論操作に責任を持って対処する」と約束している。

また興味深いことに「事業を行う国の税制に適正に従うこと」という同意も含まれている。これは、フランス政府と米国政府との間に現在進行形で横たわっている問題だ。OECDとEUは、事業を行う各国の税務当局への報告義務を負わせるために、巨大テック企業に課税する案も検討されている。

この他、あらゆる種類の差別などに対抗するためのプライバシー、社会的包括性、多様性、公正性に関する誓約もある。その名が示すとおり、この誓約はテクノロジーを善なる目的に使用することを中心に据えている。

それでは、この誓約に署名した人たちを紹介しよう。Alphabet(アルファベット)、Google(グーグル)のSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏、Facebook(フェイスブック)のMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏、 Microsoft(マイクロソフト)のBrad Smith(ブラッド・スミス)氏、Snap(スナップ)のEvan Spiegel(エバン・スピーゲル)氏、Twitter(ツイッター)とSquare(スクエア)のCEO、Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏といった有名どころも名を連ねている。その他の企業には、Cisco(シスコ)、Deliveroo(デリバルー)、Doctolib(ドクトリブ)、IBM、OpenClassrooms(オープンクラスルーム)、Uber(ウーバー)なども参加している。

Mozilla Foundation(モジラ財団)、Simplon(シンプロン)、Tech fo Good Fance(テック・フォー・グッド・フランス)といった非営利団体もいくつか署名した。

だがもっとおもしろいのは、ここに名前が載ってない企業だ。Amazon(アマゾン)とApple(アップル)は誓約に署名しなかった。アップルとは交渉が持たれたが、結局同社は参加しないことを選んだ。

「アマゾンは署名を拒んだ。あなたたちから、その理由を直接聞いて欲しい」とフランス大統領に近い情報筋からいわれた。フランス政府は、特にアマゾンのケースを非難している。

拘束力のない誓約なのに、これは奇妙だ。「税金には適正に応じます」と口でいっておいて、自分は払うべきものはきちんと払っていると主張するのは自由だ。節税と脱税は違うのだから。もっといえば、「デザイン段階からプライバシーを考慮した」製品を作っていると公言しつつ、実際はパーソナライズ広告やマイクロターゲティングで企業全体を支え続けるなどということもできてしまう。

いい換えれば、Tech for Good Summitは、記念写真を撮るため会だ(下の2018年の写真のように)。テック企業のCEOたちは、政府首脳のように扱われたいと願い、マクロン大統領はテクノロジーに通じた大統領という地位に身を置きたい。そんな彼らにとって、これはWin-Winの関係であり、その他全員にとっては時間の無駄ということだ。

一部の非営利団体やガバナンスグループは、実際にデジタルコモンズの設立に向けて努力している。しかし、巨大テック企業はその同じ言葉を、イメージアップのための形だけの環境保護キャンペーンに利用している。

2018年、数百の団体がパリコールに署名した。2019年、ソーシャルメディア最大手企業がクライストチャーチコール(未訳記事)に署名した。そして今度は「the Tech for Good Call」だ。これらのコール(宣言)は、決して適切な規制に置き換わるものではない。

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カテゴリー:その他
タグ:エマニュエル・マクロンフランス

画像クレジット:Charles Platiau / AFP / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)