「独立後も正社員と同等の社会保障を」――エンジニアの独立支援サービス「Midworks」が正式リリース

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スキルのあるエンジニアのなかには、1つの会社で働くことを選ばず、独立してより高い報酬を追い求める者もいる。だが、そこで心配になるのが独立後の社会保障だ。エンジニアが独立した場合、それまで会社と折半で支払っていた社会保険(社保)には加入できず、代わりに加入できる国民健康保険と国民年金は自己負担となる。

その問題の解決を目指すのが、日本のスタートアップであるBranding Engineerだ。同社は1月24日、エンジニア向けの社会保険付き独立支援サービス「Midworks」を正式リリースした。

独立したエンジニアにも正社員と同等の社会保険を提供

Midworksを利用するエンジニア(Midworker)はまず、Branding Engineerと専属契約を結ぶ。その後、エンジニアは勤務先となる企業に常駐するというかたちで働き始める。Midworksを利用するエンジニアは、Branding Engineerと労使折半で社会保険に加入することができる。そのため、エンジニアは独立しながらも正社員と同等の社会保障を受けられるという仕組みだ。

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Midworksが他の類似サービスと異なるのは、手数料の透明性だ。Midworksに支払う手数料は、エンジニアが企業から受け取った報酬の最大20%で一律となる(手数料率を下げられる特典もある)。Branding Engineer代表取締役COOの高原克弥氏(写真右)によれば、受け取った手数料の中から社会保険料を支払うため、実際のマージンは「10%から15%程度になる」という。

Midworksは社会保険料を折半して支払うだけでなく、さまざまなサポートも提供している。Midworkerになるとクラウド会計ソフトの「freee」を無料で利用できるだけでなく、書籍や勉強会の費用として月に1万円まで負担してもらうことが可能だ。

「Midworksのターゲットは、優秀だけれども、企業に所属していることで給料の上限が押さえつけられているエンジニアです。日本のエンジニアの15%から20%が、それに当てはまるのではないかと考えています」と高原氏は語る。そのため、Midworkerの大半は、ある程度キャリアを積んだ30〜40代のエンジニアを想定している。

エンジニアが企業から受け取る報酬が高ければ高いほどMidworksが受け取る手数料金額も増える。そのため、優秀なエンジニア(≒給料が高いエンジニア)をターゲットにしているのは納得がいく。しかし、Midworksが優秀なエンジニアにターゲットを絞る理由はもう1つある。

苦い経験から起業のアイデアが生まれる

自身もエンジニアである高原氏は、高校時代に音楽系サービスを立ち上げ、それを月間約300万PVにまで成長させたという経歴をもつ。その後、大学時代に3社のスタートアップの立ち上げに関わることになる。そこでの苦い経験が、のちにMidworksやTech Starsを作るきっかけとなったと高原氏は話す。

「大学時代、3社のスタートアップの立ち上げに関わってきました。しかし、その3社とも、ほとんどプロダクトを完成することができませんでした。その経験から、『なぜ優秀なエンジニアがいるのにプロダクトが完成しないのだろう』、『なぜ優秀なエンジニアが集まらないのだろう』と思うようになりました。そのような現場を見ているうちに、エンジニアのキャリアの部分に関わることをやりたいと思ったのが起業のきっかけです」(高原氏)。

Branding Engineerの創業は2013年。現在は25人の従業員(インターン含む)を抱え、渋谷にオフィスを構える。同社はこれまでに、ANRI2号投資事業有限責任組合、East Venturesなどから総額1億2000万円を調達している(前回の資金調達はTechCrunch Japanでも取り上げた)。

選ばれたエンジニアのみが加入できるマーケットプレイスのCodementorが160万ドルを調達

Hacker writing code

Codementor(法人名はPeer Idea Inc.)は現地時間14日、シードラウンドで160万ドルを調達したと発表した。同社のオンライン教育ビジネスをフリーランス・ディベロッパー向けのマーケットプレイスへと進化させるためだ。

マウンテンビューに拠点を置き、台湾に開発オフィスを設けるCodementorは、シアトルのアクセラレーターであるTechStarsの卒業生だ。本調達ラウンドでリード投資家を務めたのはWI Harperだ。Codementorはこれまでに、Techstars500 Startups、そして個人投資家などから120万ドルを調達している。

Codementorの創業者兼CEOであるWeiting Liuは、「創業した当初のCodementorは、コーディング・ブートキャンプのようなものでした。しかし、オンデマンドでメンターを提供するというサービスは、既存のオンライン学習サービスの隙間にあるギャップを埋めることができる1つのピースなのではないか、ということに気がついたのです」と語る。

WI HaperのパートナーであるYvonne Chenは、今後Codementorはマッチング・アルゴリズム強化に注力すべきだと話す。同社のマッチング・アルゴリズムでは、助けが必要なプログラマーやフリーランスの人材を求める企業と、能力のあるエンジニアを自動でマッチングさせることができる。

「成功するための鍵となるのは流動性です」とChenは語る。「様々な専門分野を持つディベロッパーとマッチングさせるまでの時間を短縮するために、経営資源を投下するのです。これが実現すれば、今後10年間におけるエンジニアリング人材と企業との協働のあり方を、大きく変えることができるかもしれません」。

Codementorには現在、助けを求める1万5000人のプログラマーと5000人のベテラン・ディベロッパーがいる。彼らの専門分野となるプログラミング言語は様々だ。

Codementorのメンターとして認定されるためには、ビデオ面接に合格する必要があり、他のディベロッパーから高い評価をつけられた者でなければならない。他のディベロッパーから高い評価を受けた上位2%のメンターのみが、Codementorで仕事を受注できるという仕組みだ。

Codementorの競合となるのは、数多くあるフリーランス・マーケットプレイスや、ソフトエンジニア向けの求人を掲載している求人サイトなどだ。その一部の名前をあげただけでも、Freelancer.com、GitHub Jobs、Guru.com、Upwork、Topitalなど、様々なサービスがある。

Weitingは、招待されたエリート・フリーランサーしか加入できないマーケットプレイス、そして、それにメンターシップを組み合わせた同社のハイブリット・モデルこそが競合他社との違いであり、それこそがエンジニアの卵やベテラン・エンジニアたちを惹きつける要因になると主張している。

[原文]

(翻訳: 木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

シリコンバレーでは、スタートアップ経験が履歴書代わりになりつつある

WE ARE HIRING, vector. Card with text in hands. Message on the card WE ARE HIRING, in hands of businessman.  Isolation on background. Vector illustration flat design style. Template.

編集部:筆者のSaeid FardはCrunch Network Contributorで、Sokanuのデジタル・デザイナー兼プロダクト担当。

エンジニア5人とその仲間が集まってエンジェル投資をいくらか募り、スタートアップを設立したと思ったら、ほとんどもしくは全く収益もないまま1000万ドルで売却。一体どういうことなんだ? ありがちな解釈ならば、ITバブル、思慮のない”アクハイヤー”(買収による人材獲得)、あるいは不合理な共同幻想ということになるだろう。

しかし、もう少し大きな視点から見れば、たとえば超一流の人材が報酬を得る方法が根本的に変化したとか、何か別の現象なのかもしれない。

約10年前、最後のITブーム以前には、最も優秀な新卒学生はウォール街でキャリアをスタートしたものだった。今日では、ますます多くの新卒者が、アメリカの新たな経済的中心地であるシリコンバレーに照準を合わせている。そこでは理想主義や「世界を変えてやろう」というカルチャーを押し出してはいるものの、実際にはウォール街と同様、優秀な若手を魅了する金と権力への約束がまん延している。

両者の似通った点はそれだけではない。テクノロジーの世界でも、成功は売上規模と短期での投資回収にかかっている。何十億ドル規模のヘッジファンドの運営陣は、5~6人程度のことが多いのと同様に、2~3人のエンジニアで何十億ドルも生み出すプロダクトを開発することができる。これら2つの産業はどちらも労働効率が非常に良い。よく言うように、優秀なエンジニア1人は、良いエンジニア10人分に匹敵するのだ。

効率の追求は、一流の人材を獲得するための巨額のインセンティブにつながり、その結果、皮肉にも使えない人材を高い費用で雇ってしまうことになりがちだ。今こうして技術革命の黎明期にあるシリコンバレーは、いうなれば「開拓時代の西部の荒野」のようなものだ。大企業が生き残りと長期的な市場シェアをかけて戦いを繰り広げる世界では、どの人材を雇うかはずっと先まで影響をもたらし続ける重要事項だ。

しかしテクノロジー業界は金融業界とは異なり、価値ドライバー、つまりエンジニアやデザイナー、その他プロダクト担当者を評価し、能力に見合った報酬を出すのはもっと難しい。MBA用語的に言えば、これはバンカーやトレーダーがレベニューセンター(収益に責任を負う部門)なのに対して、エンジニアとデザイナーがコストセンター(費用だけが集計される部門)であることが原因だ。金融業ならば社員の純益への貢献は簡単に評価が可能で、スター社員を見分けたければ「いくら儲けたか見せてみろ」と尋ねれば済む。

一方でエンジニアの場合、プロジェクト全体への貢献や、プロジェクトの成功が事業の存続にどれだけ貢献したかをはっきりと測るのは困難だ。トレーダーの場合なら、先の取引で上げた利益がその人材の価値になる。では「インフラストラクチャ分析チーム在籍の某エンジニア」の価値は一体どれだけだろうか。

どの人材を雇うかは、ずっと先まで影響をもたらし続ける重要事項だ。

テクノロジー業界は、いまだにエリート人材への報酬はどうあるべきかを模索中だ。なぜなら、これまでにコストセンターが業界全体の収益に対して影響力をふるったことなどなかったからだ。たとえば製薬業界の場合でも、事業の命運はプロダクト(の研究開発)にかかっている。しかし製薬関連でスタートアップを立ち上げる手間とコストは一般に高すぎるため、ガレージで何かを作るようなことは不可能だ。その結果、研究開発チームの貢献度は高くても、経営側に対する発言力は高くはならない。

こうした事情と背景は、興味深いインセンティブ・システムを創りだした。雇用側は一流の人材を確保したいし、高額な報酬も喜んで支払う気でいるが、情報の非対称性とエリート社員の持つ交渉力の問題がある。世界中のGoogleのような企業は、業界トップレベルのプログラマーになら法外な金額を支払うことができるし、実際にそうするだろう。しかし、たとえばスタンフォード出の新卒学生の場合になると能力自体は測定不能なので、その人材が今後トップ・プレイヤーになるかは「予測」しかできない。しかし少なくとも、100万ドルの契約金を正当付けるだけの説得力がないことは明らかだ。

テクノロジー業界では、頭が良くて野心のある若手へのインセンティブは、従来の労働モデルと同列に考えることはできない。大手企業に入社して、実力を証明したり、自分の価値が認められるよう社内政治に精を出したりすることに何年もの年月を費やしたとしても、本来桁外れであるべき報酬が十分に支払われない可能性も高い。だが代わりにスタートアップを立ち上げて成功すれば、一生分の給料をものの数年で稼ぐこともできるだろう。

スタートアップの評価は、売上のような従来型の指標に依存しないことも特徴だ。なぜなら、そもそもスタートアップというものは、事業やプロダクトとしての成熟など全く意図していないからだ。最高のケースでは、もっと大きな企業の製品ラインナップにニッチなプロダクトとして加わり、営業チームが代わりに広めてくれる。最悪のケースでも、その人材がプロダクト開発ができることの証明にはなるだろう。スタートアップでの経験は「生きた履歴書」となり、採用時には履歴書と実力のギャップを縮めてくれるだろう。

このようにして、スタートアップは人材市場の空洞を埋めはじめている。「スタートアップを立ち上げる」という行為そのものが、自分は雇われる価値があると証明し、自らが創出した価値をさらに増幅するための影響力を得る手段になるのだ。企業側としても、人材の過去の実績そのものは入手できなくても、だれかが何年もかけて開発したプロダクトと、それを生み出した頭脳を活用する権利は獲得できることになる。

では、スタートアップがたどる最も一般的な道のりとはどのようなものだろう? 率直に言うなら、それは「失敗」だ。さまざまなサクセス・ストーリーはあっても、大成功を収めるビジネスはほんの一握りだ。加えて、どのスタートアップも口をそろえて自社の使命や世界の変革のようなことを振りまくけれども、ファウンダーの多くはただ単に何百万ドルかを稼いで、自分のエゴと財布を満たしたいだけなのだ。

注目を浴びる大ヒット・ビジネスのたどった道のりだけを見てスタートアップの価値を判断したならば、シリコンバレーで起きていることの多くは正気の沙汰には見えないだろう。けれども一部のスタートアップを人材市場にとっての「機能の追加」として捉えるなら、少しは理にかなっているかもしれない。

画像提供: ANASTASIIA_NEW/GETTY IMAGES

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(翻訳:Ayako Teranishi / website

オンライン学習のUdacityで自動運転車のエンジニアになろう

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自分で学習する自動運転車の製作者であるGeohotが今年のDisruptイベントに来ると発表したばかりなので、ちょうどいいタイミングだ。Udacityは新しく発表したナノ学位で読者も1年で自動運転車のエンジニアになれるようになった(情報提供:Recode)。

Udacityはオンラインの教育スタートアップで、元GoogleのSebastian Thrunが設立した。彼は、自分の事業を立ち上げる前、Googleで自動運転車のプログラムのキックオフに携わった人物でもある。Thrunの専門性があれば、Udacityのプログラムは盤石な教育要素が詰まっていることが保証できるだろう。Udacityのナノ学位(濃縮された、独学卒業証書)は、いくつかのプログラムで提携しているGoogleといった企業から概ね良い評価を受けている。

この自動運転車プログラムは、通常数ヶ月かかる平均的なナノ学位よりは学習の期間が長い。自動運転車のエンジニアになるには、自分で初歩的な「Hello World!」のiOSやAndroidアプリを作るより時間がかかるのは当然だろう。

Thrunは上記の動画でこのプログラムの紹介を行っている。現在、多くの企業が人材を探しているとし、今後確実に様々な企業が自動運転テクノロジーに関心を寄せるようになるという。例えば、つい昨日発表されたばかりのElon Muskの「マスタープラン第2章」では、最終的にTeslaの連隊が自律走行をし、どこにでも移動でき、乗車料金で車の所有者が行った投資が回収できるシステムの構想を例にあげた。

需要が伸びる確率は高いが、私たちが本当に気になっているのは、このプログラムの最初の卒業生がどんな自動運転車を制作することができるようになるかだ。Udacityの生徒には、この課題が待ち受けている。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website