月額課金型ファンコミュニティ運営のOSIROがグロービス・キャピタルから資金調達した理由

オシロは2月27日、グロービス・キャピタル・パートナーズを引受先とした第三者割当増資を実施したことを発表した。同社は月額課金制のファンコミュニティサービス「OSIRO」を運営する2017年1月設立のスタートアップ。

OSIROには、課金やグループ・イベント管理などファンコミュニティ運営に必要な機能が備わっているほか、コミュニティ活性化につながるコンサルティングサービスも提供する。具体的には、コミュニティプロデューサーが各コミュニティにつき、コミュニティ活性化と醸成のサポートを行っている。コミュニティ内のユーザーのアクション率は平均70%。一般的なサイトでは、書き込みをせずに見るだけの、いわゆるロムユーザーが90%であることを考えるとアクション率は高い(ソース元:The Guardian掲載「What is the 1% rule?」)。

OSIROの特徴は、クローズドな場でファンとコンテンツホルダー、もしくはファン同士が狭く深い関係を築くことができる「n対nのファンコミュニティ」である点。興味関心や価値観が近い人たちが集うと共感が起こり交流が深まりやすくなるという考えに基づいている。

そして、共感した者同士の交流が深まるとコミュニティ全体の熱量が高くなり、結果的には自発的なコミュニティ活動、いわゆる共創が発生する。ここで重要になるのがコミュニティの活性化に欠かせないコミュニティマネジャー存在だ。とはいえコミュニティマネジャーの業務量は多いうえ経験豊富な人材が不足しているのが現状。そこでOSIROには、コミュニティマネージャーの負担を減らす各種機能が搭載されている。

月額課金のファンコミュニティサービスには競合サービスも多いが、OSIROではファン同士が仲良くなる仕掛けとして、興味関心カード、バディ制度などを取り入れている点、「こだわりが強い」コンテンツホルダーやブランドから支持されている点が差別化ポイントとのこと。今後は、アニメコンテンツ、人気ユーチューバー、オンラインメディア、日本のものづくりを支援する企業など、さまざまなコンテンツホルダーとの連携を計画している。

オシロで代表取締役社長を務める杉山 博一氏は、「私がアーティスト活動をしていた経験と、多くのアーティストの作品(パトロン)を購入してきた経験から、アーティストが活動を続けるには、資金面と精神面での応援が必要です。精神面の応援としては、ファンレターなどがありますが、あきらかにデジタル・テクノロジーは弱いと考えています。ファン同士が作品のどこが好きなのか、どこが良いのかを熱量高く語り合うことは、アーティストにとって何よりも励みになります。また、ファンを巻き込んだ新たな創作や、ファン同士が仲良くなることで生まれる価値共創の場に進化していきます。OSIROでは、こういう場作りをテクノロジーで解決したいと考えています」と語る。

同社は「日本を芸術文化大国にする」というミッションを掲げており、これまでもこのミッションに共感したエンジェル投資家などからの出資を受けていた。具体的には、谷家衛氏、小泉文明氏(メルカリ会長)、田川欣哉氏(Takram代表)、渡邉康太郎氏、嶽澤奏子氏、遠山正道氏(スマイルズ代表)、森住理海氏、中川綾太郎氏(newn代表)などの個人投資家だ。そのほか、クリエイターのエージェント業務を手掛けるコルク、ウェブサイトの制作やマーケティングなどを手掛けるRIDE MEDIA&DESIGN、金融関係のスクール事業を展開する日本ファイナンシャルアカデミーなどの事業会社も出資者に名を連ねる。

今回、グロービスからの資金調達はベンチャーキャピタルを株主に加えるという同社としては初の試みとなる。同社によると「成長フェーズに差し掛かるにあたっては実績とリソースが豊富なベンチャーキャピタルの支援が必要であると考えた」とのこと。

一般的にベンチャーキャピタルからの出資を受けると、ユーザー拡大や認知度向上などマネタイズに向けた動きを早める必要があるが、杉山氏は「オンラインコミュニティのニーズや、活用事例はますます増えている状況です。そのスピード感に合わせて、あと数年で一気にオンラインコミュニティの立ち上げを支援していく必要があると考えました。そこで、時間的な制約である『締切』を作ったほうがより実現に近づくと考え、あえてVCに入っていただく決意をしました」と語る。

そのうえでグロービスからの出資を受け入れた理由として「オシロが掲げる『日本を芸術文化大国に』というミッションの実現について深い理解を示していただき、一緒に歩んでいけると確認し合うことができたので、株主としての参加をお願いしました」と続ける。資金提供の以外では「編集者という役割、サービスを昇華するために伴走してくれるところに期待しています。月に数回ミーティングを行い、サービスはもちろに経営について対話し、ベストな道を探るパートナーとしての役割を期待しています」とのこと。