オンラインショップ向けのパーソナライゼーション・ツールDynamic Yieldが2200万ドルを調達

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ショップのWebサイトなどを顧客別にパーソナライズすることができるツールのDynamic Yieldは現地時間20日、シリーズCで2200万ドルを調達したと発表した。

CEOのLiad Agmonによれば、彼がDynamic Yieldを2011年に立ち上げた理由は、既存のパーソナライゼーション・ツールは「さまざまな問題に対して個別のソリューションを提供する」ものが多かったからだという。

一方、Dynamic Yieldではあらゆる問題に対処できる総合ツールを提供している。このツールが提供する機能には、A/Bテスト、メッセージング、パーソナライズされた商品リコメンデーション、そして、モバイルアプリやモバイルWeb、Eメール、オンライン広告などから取得したデータによって「顧客情報を全方位から把握できる」機能などがある。

一見ささいに思えることであっても、それを顧客ごとにパーソナライズすることで収益を増加させることができるとAgmonは話す。彼が私に見せてくれた例では、Webサイトのヘッダー画像を顧客の性別にあわせて入れ替えるだけでショップの収益が増加したことが分かる ― 彼が言うように、「1回目のデートと同じで、第一印象が重要だ」ということだ。

Dynamic Yieldによれば、Eコマース、メディア、ゲーミング、旅行業界が同社の主要顧客だ。Under Armour、Rolling Stone、Sephora、CWなどが同社のツールを利用している。それらの顧客企業が抱えるユーザーは5億人を超すという。

本調達ラウンドを合わせ、同社がこれまでに調達した金額は合計で3600万ドル以上である。このラウンドでリード投資家を務めたのはVertexとClalTechだ。その他にも、新規投資家のBaidu、Global Founders Capital、そして既存投資家のBessemer Venture Partners、Marker LLP、Innovation Endevorsなども本ラウンドに参加している。また、Vertexに所属するAviad Arielと、ClalTechに所属するDaniel Shinarの2名がDynamic Yieldの取締役に就任する予定だ。

Baiduの資本参加は特筆すべき点だろう。これについてAgmonは、今回のラウンドによってBaiduとDynamic Yieldの関係がより一層深まったと話している ― 結局のところ、パーソナライズされたWeb体験を提供することでオンライン広告の効果がより高まるということだ。

「近年、Web、モバイル、そしてEメールのパーソナライゼーションはマーケッターにとって欠かせない武器となっています」。そう語るのは、Baidu USAのバイスプレジデント兼ジェネラル・マネージャーであるAlex Chengだ。「トラフィック獲得は重要である一方で、顧客は商品を購入する前にその商品のことを調べ、さまざまなインターフェイスを通してブランドとの交流を深めています。それゆえに、Webとモバイルにおけるシームレスで包括的なカスタマー・エクスペリエンスこそが、ビジネスのROIを左右する重要な要素となっているのです。私たちはDynamic Yieldが創りあげたテクノロジーに感銘を受けており、同社のプラットフォームはすべての広告主にメリットを与えるものだと信じています」。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

返品代金の即日返還サービスReturnlyが320万ドルを調達

Shot of a young man delivering a box to a woman

オンラインで買った物を返品するという行為は、本質的に顧客の不満足を表すものだ。しかし一部の賢いショップオーナたちはある事を学んだ。それは、返品の要望に対して守りに入ってしまうのではなく、逆にその不満足さの表現を広い心で受け入れた方が良いのだということだ。なぜなら、スムーズに返品プロセスを完了させることができれば、その不幸な出来事のあとに顧客がリピーターになってくれる可能性が高いことが分かったからだ。

サンフランシスコ北部の街を拠点とするReturnlyは、返品にともなって顧客とショップとの間に張り詰める緊張の糸をほぐしてくれるスタートアップだ。創業者兼CEOのEduardo Vilarが目指すのは、データの力を駆使することで返品によって一度失った収入をもう一度ショップの元に戻すことなのだ。

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Returnly創業者のEduardo Vilar。サンフランシスコのミッション地区にて。

それを実現するため、Returnlyはショップと消費者との間に立ち、よりスムーズな返品プロセスを提供している。それは、商品を返品してから代金が返還されるまでの恐ろしい待ち時間を省略するというサービスだ。

先日、同社はシードラウンドにて320万ドルの調達に成功した。リード投資家はIndex Venturesが務め、他にもSV Angel、FJ Labs、Mundiventures、そしてエンジェル投資家のAriel Polerも出資に参加している。

Returnlyのサービスでは返品代金が同社から消費者へと前払いされ、その代金はまず、同じショップの商品の購入のみに利用できるオンライン・ウォレットに返還される。そして、ショップが返品された商品を受け取った後には、最終的に返品代金が消費者の銀行口座に振り込まれるという仕組みだ。このオンライン・ウォレットのことを、子犬のような目で「また当店でお買い物してください」と訴えるお金だと思っていただいても差し支えないだろう。

このようなシチュエーションでは様々な行動経済学の原理が働くことになる。だが、このサービスを利用すれば再購買の確率がぐんと上がることは言うまでもない。

また、VilarはGlassdoor出身のサイエンティストを数名雇い、ショップオーナーにA/Bテストを提供して前払いされた代金が再購入に使われる確率の違いを視覚化するということも行っている。

SV AngelのパートナーであるBrian Pokornyによれば、この有名なVCがReturnlyへの出資に踏み切ったのは、同社のサービスを利用するショップオーナーとの会話がきかっけだったと語っている。

ショップオーナーたちはReturnlyから実にざまざまな利点を得ている。Returnlyの収益は返金前の商品代金をもとに計算される手数料収入だ。この他にもサービスの導入時には初期料金も発生する。しかし、FanaticsCotopaxiなどの企業は、これらのコストを合わせたとしてもReturnlyは低いリスクかつ利点の多いサービスだと判断した。

Vilarは数学と保険数理学のバックグランドを持っており、この知識が同社の初期段階のビジネスを支えたという。将来的には、彼が創りあげた金融ビジネスは予測可能であるだけでなく、利益を生むものなのだと機関投資家に示したいとVilarは語る。

返還されたお金をすぐに他のショップで使うことができないことに苛立つ消費者もいることだろう。しかし、覚えておかねばならないのは、Returnlyのサービスがなければ最大で21日ものあいだ代金が返還されないこともあるということなのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter