「NetWalker」ランサムウェア攻撃関与の元カナダ政府職員が米国に送還、約32億円超相当のビットコイン押収

数十のランサムウェア攻撃を行ったとして起訴されたカナダの元政府職員が米国に送還され、この事件に関連して2800万ドル(約32億8500万円)以上のビットコインが押収された。

LinkedInのプロフィールによるとカナダ公共事業・政府業務省(PWGSC)でITコンサルタントとして働いていたSebastien Vachon-Desjardins(セバスチャン・ヴァション=デジャルダン)容疑者は、米国時間3月9日に米国に身柄を引き渡され、NetWalkerランサムウェアグループに参加した疑いで複数の罪に問われると、米国司法省(DOJ)は3月10日に発表した

NetWalkerは「Mailto」としても知られるRaaS(ランサムウェア・アズ・ア・サービス)で、ランサムウェアを展開するアフィリエイトを募り、身代金の一部を分配することで事業を展開している。このグループは2019年に初めて表面化し、その後、いくつかのハイプロファイルのサイバー攻撃と関連している。2020年6月にはカリフォルニア大学サンフランシスコ校を標的にし、その際に同校は100万ドル(約1億1700万円)以上の身代金を支払った。その3カ月後、NetWalkerはサイバー脅威スタートアップのCygilant(サイジアント)を襲った

このRaaS運営グループは、アルゼンチンの移民局、パキスタン最大の民間電力会社、そして新型コロナウイルスのパンデミック中には、多くの病院や法執行機関も標的にしていた。暗号資産分析会社Chainalysisによると、2019年8月から2021年1月の間に、NetWalkerが関与するランサムウェア攻撃は、4600万ドル(約53億円)にのぼる身代金を引き出しているという。

ヴァション=デジャルダン容疑者は、NetWalkerランサムウェアグループを標的とした国際法執行キャンペーンの一環として、2021年1月にカナダの警察に逮捕された。ケベック州にある彼の自宅を捜索した際、警察官は執筆時点で約2810万ドル(約33億円)相当の719ビットコインと、79万ドル(約7280万円)のカナダ通貨を発見した。米国とベルギーの当局は、NetWalkerが被害者から盗んだデータを公開するために使用していたダークウェブのサイトも差し押さえている

当時、ヴァション=デジャルダン容疑者は、カナダの裁判所で、コンピュータデータの窃盗、恐喝、暗号資産の身代金の支払い、犯罪組織の活動への参加に関する5つの罪を認め、7年の禁固刑を言い渡された。

ヴァション=デジャルダン容疑者は現在米国にいるため、コンピュータ詐欺と電信詐欺の共謀、保護されたコンピュータへの故意の損害、保護されたコンピュータへの損害に関連した要求の送信で告発され、さらなる罪に問われている。

有罪判決を受けた場合、NetWalkerランサムウェア一味との関わりにより、2700万ドル(約31億6800万円)以上の没収を求められる可能性がある。

ケネス・ポリテ・ジュニア司法次官補はこう述べている。「カナダのパートナーによる暗号資産の押収に代表されるように、我々は、国内外を問わず、ランサムウェアの収益とされるものの押収・没収を法的に可能なあらゆる手段を用いて追求します。当省は暗号資産だからといって身代金の追求と押収をやめることはなく、これにより、暗号資産を使って法執行から逃れようとするランサムウェア犯の企みを阻止します」。

ヴァション=デジャルダン容疑者の送還のニュースは、REvilランサムウェアグループのメンバーがKaseyaハッキングへの関与の疑いで逮捕され、米国で告発を受けるためにテキサス州に送還されたわずか数日後に発表された。

画像クレジット:TechCrunch(スクリーンショット)

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(文:Carly Page、翻訳:Den Nakano)

またカナダの募金サイトに不正アクセス、ハッカーがトラック運転手抗議デモへの寄付者の名前を漏洩

あるリークサイトは、募金サイトGiveSendGoがハッカーに狙われた後、オタワでのトラック運転手による抗議デモ「Freedom Convoy(フリーダムコンボイ)」への寄付者に関する情報のキャッシュを受け取ったという。

GiveSendGoのウェブサイトは現地時間2月14日、サイトが乗っ取られ、ハッカーによってコントロールされていると思われるページにリダイレクトされるようになり、その数時間後に「メンテナンス中」となって、もはや読み込めなくなったと明らかにした。リダイレクトされたページは、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の義務化に反対してカナダの首都を襲い、1週間以上にわたって交通と貿易に広範な混乱を引き起こしたトラック運転手たちを非難した。

このページには、Freedom Convoyに寄付をした人たちの「生の寄付データ」と称される数万件の記録を含むファイルへのリンクも含まれていた。

しばらくして、非営利のリークサイト「Distributed Denial of Secrets」が、GiveSendGoから30MBの寄付者情報を受け取ったと発表した。この中には、同サイトで行なわれた「すべてのキャンペーン」に対する寄付者の自称氏名、電子メールアドレス、郵便番号、IPアドレスが含まれていた。

Distributed Denial of Secretsは、極右グループに関する一連の流出データを保管していることで知られるサイトだが、このデータは研究者やジャーナリストにのみ提供されると述べた。

ジャーナリストのMikael Thalen(ミカエル・タレン)氏によると、今回の情報漏洩は、1000件以上の身分証明書類を保存しているAmazon(アマゾン)がホストするS3バケットをGiveSendGoがインターネットに公開したままにしていた、以前のセキュリティ過失とは別のものだ。タレン氏は2月13日夜に今回のデータ漏洩を最初に指摘した

関連記事:カナダのワクチン義務化に抗議するトラック運転手たちの寄付サイトから個人情報流出

GoFundMeがオタワで発生した暴力の警察報告を理由にクラウドソーシングキャンペーンを停止して数百万ドル(数億円)の寄付を凍結した後、マサチューセッツ州ボストンを拠点とするGiveSendGoは1月にFreedom Convoyの主要寄付サービスになっていた。週末には、カナダの裁判所がGiveSendGoが集めた資金へのアクセスを停止する命令を出したが、同社は命令に従わないと述べた。

抗議者らは2月初め、Freedom Convoのために800万ドル(約9億円)超を集めた。

GiveSendGoの共同設立者、Jacob Wells(ジェイコブ・ウェルズ)氏は、コメントの要請に応じなかった。

画像クレジット:Stephanie Keith / Bloomberg / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

AIを活用した製薬会社向け商業インサイトプラットフォームのODAIAが約16億円を調達

トロントに拠点を置く、AIを活用した製薬会社向け商業インサイトプラットフォームのODAIA(オダイア)は、Flint Capital(フリント・キャピタル)が主導するシリーズA資金調達で1380万ドル(約16億円)を調達した。このプラットフォームは、データ分析、プロセスマイニング、AIを組み合わせ、製薬およびライフサイエンスの商業チームに予測分析を提供するものだ。この資金調達ラウンドは、同社が過去1年間でチームの規模を倍増させたことを受けて行われた。

このスタートアップは、製薬会社のコマーシャルチームが彼らの処方者について何を知る必要があるか判断するのを手助けし、最適なチャネルを通じて正しいメッセージを伝え、最終的には、治療薬を必要とする患者に届けることができるようにすることを目的としている。同社は、プロセスマイニング、カスタマージャーニーマッピング、AIの分野における長年の研究開発の後、2018年にトロント大学で設立された。

「初期の研究作業のいくつかは、ペイシェントジャーニーを分析し、AIと機械学習を使ってそれらのジャーニーを最適化することを中心としていました」とODAIA共同創設者兼CEOのPhilip Poulidis(フィリップ・プーリディス)氏は、電子メールでTechCrunchに語った。「それは、処方者の取引、匿名化された患者の医療請求データ、人口統計学的および社会経済学的データ、匿名化されたラボデータなど、多くの異なるが関連するデータソースの分析を含むために、時間をかけて進化しました。MAPTUALは、上記のデータセットを分析し、予測的洞察を提供するSaaSプラットフォームで、標的治療薬の理想的な候補となる患者を治療している医師の優先順位付けと動的なセグメント化を行うもので、こうした研究・技術開発の積み重ねが、MAPTUALの誕生につながったのです」と述べる。

米国時間2月10日に発表された資金調達ラウンドには、Innospark Ventures(イノスパーク・ベンチャーズ)、Alumni Ventures(アルミナイ・ベンチャーズ)、Graphite Ventures(グラファイト・ベンチャーズ)の他、BDC Capital(BDCキャピタル)、MaRS IAF(マーズIAF)、StandUp Ventures(スタンドアップ・ベンチャーズ)、Panache Ventures(パナッシュ・ベンチャーズ)などODAIAの現在の投資家が参加している。同社によると、新たな資金調達は、プラットフォームの機能強化や、市場拡大をサポートするための営業、マーケティング、カスタマーサクセスチームの拡充に充てられるという。

画像クレジット:ODAIA

プーリディス氏は「今回の資金調達により、製品およびソフトウェアエンジニアリングチームの拡大、商業チームの拡大、プラットフォーム統合パートナーシップの拡大により、製品ロードマップの開発を加速させます」と述べている。

同社は、パンデミックによって顧客向け医薬品ビジネスが変化し、現在はDXが主な優先事項であると述べている。将来についてプーリディス氏は、同スタートアップの目標は、ライフサイエンスデータの多変量データ解析と予測的洞察を1つのプラットフォームで提供することであると述べている。このプラットフォームには、ライフサイエンス企業が処方者とペイシェント・ジャーニーをよりよく理解し、データとAIを活用してリアルタイムに対応できるような機能と能力が含まれると概説した。

同社のシリーズAラウンドは、2019年に発表された160万ドル(約1億8600万円)のシード投資に続くものだ。このラウンドは、Panache VenturesとStandUp Venturesが共同主導し、BDC CapitalのWomen in Technology Venture Fund(ウーマン・イン・テクノロジー・ベンチャー・ファンド)、Inovia Capital(イノヴィア・キャピタル)、MaRS IAFが参加した。この投資家グループは、Toronto Innovation Acceleration Partners(トロント・イノベーション・アクセレーション・パートナー)、トロント大学のUTEST(ユーテスト)、N49P、Ontario Centres of Excellence(オンタリオ・センター・オブ・エクセレンス、OCE)、Autonomic.ai(オートノミック・ドット・エーアイ、Fordが買収)の共同創業者であるAmar Varma(アマール・ヴァルマ)氏などのプレシード投資家に参加した。

画像クレジット:ODAIA

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(文:Aisha Malik、翻訳:Akihito Mizukoshi)

カナダのワクチン義務化に抗議するトラック運転手たちの寄付サイトから個人情報流出

カナダのワクチン義務化に抗議しているオタワのトラック運転手が利用している寄付サイトが、寄付者のパスポートや運転免許証が流出するセキュリティ上の不備を修正した。

マサチューセッツ州ボストンを拠点とする寄付サービスGiveSendGo(ギブセンドゴー)は先週、GoFundMe(ゴーファンドミー)が市内での暴力や嫌がらせに関する警察の報告を理由に数百万ドル(数億円)の寄付を凍結した後、いわゆる「フリーダム・コンボイ」活動の主要寄付サービスとなっていた。

1月に始まったこの抗議運動では、新型コロナワクチン接種の義務化に反対する数千人の抗議者とトラック運転手がカナダの首都に降り立ち、渋滞で通りがマヒするほどだ。GoFundMeの募金ページが約790万ドル(約9億1200万円)の寄付を達成した後、このクラウドソーシングの巨人はキャンペーンを阻止するために介入し、募金活動を、抗議活動への支援を公言するGiveSendGoに移行するよう促した。プレスリリースによると、GiveSendGoは、同社がキャンペーンを主催した初日に、フリーダム・コンボイの抗議者のために450万ドル以上(約5億1900万円)の寄付を処理したと述べている。

TechCrunchは、AmazonがホストするS3バケットに50Gバイトを超えるファイル(パスポートや運転免許証など)が保存されていることがセキュリティ分野の人物によって発見されたことを受けて、このデータ漏えいに関する情報を入手した。

この研究者は、GiveSendGoにあるフリーダム・コンボイのウェブページのソースコードを閲覧することで、公開されたバケットのウェブアドレスを見つけたという。

S3バケットは、ファイルや文書、あるいはウェブサイト全体をAmazonのクラウドに保存するために使用されるが、デフォルトでは非公開に設定されており、バケットの内容を誰でもアクセスできるように公開するには、複数のステップのプロセスが必要だ。

公開されていたバケットには、フリーダム・コンボイのページがGiveSendGoに最初に設置された2月4日から、1000枚以上のパスポートと運転免許証の写真とスキャン画像がアップロードされていた。ファイル名から、一部の金融機関が個人の支払いや寄付を処理する前に必要とする、支払いプロセスで身分証明書がアップロードされていたことが示唆される。

TechCrunchは、GiveSendGoの共同設立者であるJacob Wells(ジェイコブ・ウェルズ)氏に、現地時間2月8日に公開されたバケットの詳細について連絡を取った。しばらくして、バケットの安全は確保されたようだが、ウェルズ氏は、GiveSendGoがセキュリティの欠陥について、情報が流出した人々に知らせる予定があるかどうかなどの質問には答えなかった。

バケットがいつまで晒されたままになっていたかは正確には不明だが、無名のセキュリティ研究者が残した2018年9月付けのテキストファイルには、バケットが「適切に設定されていない」ため「危険なセキュリティ上の影響を及ぼす」と警告されていた。

画像クレジット:Kadri Mohamed / Anadolu Agency / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ハイパースペクトル衛星画像技術Wyvernが新たに約4.6億円獲得、スマートファーム施設での実験でも使用される

カナダのスタートアップ企業で、衛星画像技術を手がけるWyvern(ワイバーン)は2021年12月、450万ドル(約5億2000万円)のシードラウンド(新たな取り組みが発表されたおかげで終盤にほぼ倍増した)を実施し、Y Combinator(Yコンビネーター)への参加を発表したばかりだが、さらに今回、カナダのSustainable Development Technology(SDTC、持続可能な開発技術)プログラムを通じて、新たに400万ドル(約4億6000万円)の資金を獲得したことを明かした。

SDTCプログラムは、シード期、グロース期、スケールアップ期の各段階にあるスタートアップ企業に対し、官民の機関や企業とのパートナーシップを通じて、クリーンテックに革新を起こす可能性のあるプロジェクトへの資金提供を行うというもの。SDTCが提供する資金は、スタートアップ企業に株式の譲渡を要求するものではなく、また返済義務のあるローンでもない。その代わり、SDTCとそのパートナーが設定した測定可能な結果と成果物をもとに契約を結び、その目標を達成することで資金を得られる。

Wyvernの場合、SDTCは、BASFのxardio digital farming(ザルビオ・デジタルファーミング)、Olds College(オールズ大学)、SkyWatch(スカイウォッチ)、MetaSpectral(メタスペクトラル)、Wild + Pine(ワイルド+パイン)のコンソーシアムと協力。この3年間におよぶプロジェクトの概要は、オールズ大学にある2800エーカー(約11.3平方キロメートル)の「スマートファーム」施設を使って、Wyvernのハイパースペクトル衛星画像をテストするというものだ。

Wyvernは現在、自社の技術を実際に宇宙へ持って行くことに取り組んでいるため、資金が豊富にあることは非常に重要だ。同社は今後数年内に、最初の観測衛星「DragonEye(ドラゴンアイ)」を打ち上げることを計画している。

画像クレジット:Olds College

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Blink Chargingが米国とカナダのGMのディーラーにEV充電器を供給へ

電気自動車用充電器メーカーのBlink Charging(ブリンク・チャージング)は、米国とカナダのGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)のディーラーにEV充電器を提供することを発表した。同スタートアップは設備ソリューション・プロバイダーのABM(エービーエム)と組んで、同社の新しいレベル2EV充電器IQ 200をGMに供給する。

Blinkは決して小さなEV充電器メーカーではないが、これまではChargepoint(チャージポイント)、EVBox(イービーボックス)、Tesla(テスラ)、さらにはShellと比べても市場シェアは小さかった。Blinkによると、同社は13か国に約3万台のEV充電器を展開しており、GMとの契約は、さらなる規模拡大とブランド認知度の向上という同社の目標にひと役買うだろう。

ただしこれはGMにとってBlinkとの初めての契約ではない。2021年4月、GMは充電ネットワーク7社(Blink、ChargePoint、EV Connect、EVgo、FLO、Greenlots、SemaConnect)をGMのモバイルアプリに統合し、顧客が容易に充電場所を探せるようにする計画を発表した。今回は、GMが2030年までにEV販売でTeslaのシェアを狙って売上を倍増する計画の中、Blinkが選ばれたようだ。

2021年5月にGMから最初の注文を受けたBlinkは、設置を担当するABMを通じて一部のGMディーラー向けに充電器の出荷をすでに開始している。今後数カ月間必要に応じて追加の充電ステーションに向けた準備ができていると同社はいう。契約には充電ステーション数の目標や大規模展開の日程は書かれておらず、これはディーラーからの注文ごとの設置が基本であるためだ。これまでにBlinkは「GMディーラーから1000件近く、計1505台の充電器の注文を受けている」と同社の広報担当者は述べた。

GMとの契約に同社からの出資は含まれていないとBlinkはいう。GMディーラーは、Blink製品を購買パートナーのABMを通じて、ディーラー機器購入価格で購入する。

BlinkのIQ 200充電器は、車両基地向けに設計されており、1つの共有回路上で最大20台の充電器を電力網に負荷をかけすぎることなく利用できる。80アンペアの充電器は、100アンペア回路上で高速レベル2充電が可能で、出力は19.2kW、充電1時間あたり最大65マイル(約104.6 km)走行できる。設置方法には壁かけ型、ポール型、および自立スタンドがある。

2022年のCESでBlinkは次世代レベル2充電器のMQ 200を発表しており、第1四半期末までに提供される予定だ。Blinkは、出荷可能になった時にGMがこの新型充電器を受け取るかどうかの質問には答えていない。MQ 200は高速かつ高機能で、Blink充電器をクラウドや、新しいBlink Fleet Management Portal(Blink車両管理ポータル)に接続するソフトウェアが付いてくるため、デーラー業務に最適だ。

関連記事:CESに登場したEV充電企業は家庭での充電を高速化、V2G、コネクティビティを推進

画像クレジット:GM

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

地球低軌道で撮影されるハイパースペクトル画像を提供するWyvernが約5.2億円調達、2022年に同社初の打ち上げを予定

衛星画像技術の最先端を行くカナダのWyvernが、450万ドル(約5億2000万円)を調達した。そのうち225万ドル(約2億6000万円)はシードラウンドで、残る225万ドルはプレシードと政府投資の合計となる。同社はハイパースペクトルイメージング(可視光線を含むさまざまな波長において波長の違いを識別する能力で対象物の反射光を撮影し、可視化する技術)に特化して取り組んでいる。同社はまた、Y Combinatorの2022冬季に参加している。

TechCrunchは過去にも、インキュベーターCreative Destruction Lab(CDL)の2019年に行われた学会のようなデモデーに参加したときなど、同社を取り上げてきた。その後、同社は資金調達以外の面でも急速な成長を遂げ、社員は18名となり、航空宇宙業界のベテランで元Airbus(エアバス)のCTOだったChristine Tovee(クリスティン・トビー)氏を招いている。さらにWyvernは、2022年に同社初となる衛星の打ち上げを行う。

共同創業者でCEOのChristopher Robson(クリストファー・ロブソン)氏は次のように語る。「打ち上げは、私たちが楽しみにしている次の大きな事業です。これは私たちの最初の画像製品になります。これは超高解像度のハイパースペクトルを得るための最初のステップとなります。超高解像度のものはまだ数年先ですが、登場すれば、かなりすばらしいものになり、ゲームを変えるものになるでしょう」。

宇宙から捉えたハイパースペクトル画像へのアクセスを商用の顧客に提供できるようになれば、Wyvernの最初のターゲットである農業をはじめ、既存の産業の効率を大幅に上げるだけでなく、まったく新しい事業や産業にも実現の機会を提供する。ハイパースペクトル画像は、例えば捉えたシーンの化学的組成など、これまで隠れていた情報を詳細に提供することができる。

シードラウンドをリードしたMaC Venture Capitalは、ハイパースペクトルの広大なポテンシャルを認識しており、ロブソン氏によると、同VCとこの度新たにWyvernの取締役会に加わったAdrian Fenty(エイドリアン・フェンティ)氏は、若い同社に完璧にマッチしているという。

「最初の会議のときから、両社は波長が合っていました。またそれ以上に重要なことは、MaCにはすでに宇宙産業への投資経験があったことです。同社は、宇宙市場に対して極めて積極的です。彼らは非常に戦略レベルで考えるため、投資に臨む視点の中に顧客と投資家とパートナーからの見方が共存しています。またそれは、宇宙に限定されず、その他の私たちの顧客市場対しても同様です」とフェンティ氏はいう。

若い起業家とエンジニアと科学者たちのチームが創業したWyvernは、その戦略的な利点に加えて最近、トビー氏を招いた。ロブソン氏は、同社のその重要なリーダーシップチームチームメンバーの招聘について、次のように語った。

「クリスティン(・トビー)はかなり前から私たちの技術顧問団の1人です。また両者は、CDLのころからの強固な関係があります。それに、一緒に仕事をすることが楽しい。クリスティンと我々チームとの間には、お互いに対する深い尊敬があります。私たちとしては航空宇宙のベテランを役員が必要で、宇宙産業に対する私たちの理解を深めてもらいたかった。だから彼女が来たことは、戦略的な面でとてもすばらしいことです」。

Tovee氏はまた、ジェンダーのダイバーシティがおそろしく遅れている業界で、同社の2人目の女性上級管理職として迎えられる。2021年のTechCrunch主催セッションTC Sessions:Spaceに出てくれた、Wyvernの共同創業者でCOOのCallie Lissinna氏は、ダイバーシティは最初から同社のプライオリティであり、そのことは投資家や入社志望者たちとの会話でも良い効果を生んでいるという。

「投資家たちはほとんどみんな、宇宙産業で創業時から50 / 50のダイバーシティ、役員チームでは66%の女性上位を実現していることに言及しとてもユニークだといいます。そしてこのことは雇用や募集にも影響を与えています。学生たちは、私たちの創業チームや社内のダイバーシティがとても気に入った、といってくれます。だからこれは、人材獲得と投資調達の両方の面で、私たちの魅力になっているようです」とトビー氏はいう。

画像クレジット:Wyvern

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hiroshi Iwatani)

MetaのVRマルチプレイヤーワールド「Horizon Worlds」が米国・カナダで18歳以上向けに一般配信開始

かつてFacebook(フェイスブック)と呼ばれた企業が、我々をメタバースへと導くという同社の目標に向けて一歩を踏み出した。Second Life(セカンドライフ)またはMinecraft(マインクラフト)のMeta(メタ)VRアプリ版のようなものであるHorizon Worlds(ホライズン・ワールド)が、招待制ベータから拡大し、米国とカナダの18歳以上のすべてのユーザーに開放された。これは、2019年に最初に発表された同アプリにとって大きなマイルストーンだ。

関連記事:FacebookのHorizonは巨大なVRマルチプレイヤーワールド

この無料アプリは、ソーシャル要素のある仮想世界を構築するプレイグラウンドだ。アプリに入ると(初めての場合は短いチュートリアルの後)、プレイ(ゲーム)、アテンド(イベント)、ハングアウトの3つの選択肢が表示される。Meta自身が作ったエクスペリエンスに加えて、誰でも作れるコミュニティ生成スペースを探索することもできる。2021年10月に同社は、これらのVR体験を構築するクリエイターに1000万ドル(約11億3500万円)の資金提供を発表し、ユーザーが新しいゲームやハングアウトを作るインセンティブを与えた。

画像クレジット:Meta

これらの仮想空間に入る前に、同プラットフォームは、あなたが交流する相手は誰もが実在の人物であることを忘れないようにしてください、と通知する。

左手首を見てアクセスするプライマリーメニューには、セーフティボタンがあり、これを押すとすぐに「セーフゾーン」と呼ばれるプライベートルームに移動し、そこで休憩したり、ユーザーをブロックしたり、ミュートしたり、問題人物を報告することなどができる。

ユーザーが最初に遭遇するであろうハングアウト空間のひとつが、Metaが作ったPlaza(プラザ)というスペースだ。我々の足のないアバターは、知らない人と一緒に紙飛行機を投げたり、コミュニティのモデレーターと話したりした。モデレーターは、初めての人とおしゃべりしたり、操作方法を説明したりしてくれる(直感的に操作はできるが、慣れるまでには数分かかる)。近未来的な風景を眺めながら、周りの人たちがアバターの服装についてメタバース的な世間話をしているのを聞くのは、奇妙で楽しい体験だった。

しかし、ユーザー生成スペースでは、何か問題が起きたときに介入できる人間のモデレーターが常に存在するわけではない。Horizon WorldsのすべてのスペースにMetaの担当者がいることを期待するのは現実的ではないし、もし実際にいたら少し不気味に感じるかもしれない。だがメタバースは、人々のオンラインでの安全を守るための新たな課題を引き起こすことになりそうだ。

画像クレジット:Meta

Metaは、Facebookからヘイトスピーチや暴力的な画像を削除するのに苦労しており、同社のアプリであるInstagram(インスタグラム)が、10代の若者にとって精神衛生上危険であることを示す内部文書が流出した影響で動揺している。さらに米国時間12月8日には、Instagramの責任者であるAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏が、子どもと10代の若者のオンラインの安全性について議会で証言したばかりだ。しかし、メタバースの世界では、より没入感のあるオーディオビジュアル体験ができるため、さらなる課題がある。Clubhouse(クラブハウス)はライブオーディオルームのモデレートに苦労しており、Twitter(ツイッター)でも最近はSpaces上の有害なコンテンツが問題になっている。Twitchストリーマーも「ヘイトレイド」と呼ばれる荒らし行為に悩まされている。

ユーザーエクスペリエンスの面では、Horizon Worldsは、Metaの没入型イベントプラットフォームであるHorizon Venuesよりも大幅にステップアップしている(Worldsがベータ版からグローバルにアクセスできるようになれば、Venuesは廃止されるかもしれない)。

現在、Venuesを使用すると、映画館の廊下のようなブロック状の入口エリアにドロップされる。いくつかの部屋が用意されていて、ピクセル化されたBillie Eilis(ビリー・アイリッシュ)の録画コンサートをループで見られるなどの機能がある。Worldsはすでに、Venuesよりも魅力的で期待できそうに感じる。しかし、これから何百万人ものユーザーがHorizon Worldsに参加していくにつれ、Metaは、ソーシャルプラットフォームを安全に維持する能力があることを証明する必要がある。

Horizon Worldsを実行するには、Quest 2デバイスに無料アプリをダウンロードする必要がある。2022年1月13日以降、Quest 1ではサポートされなくなる。

画像クレジット:Meta

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Aya Nakazato)

Gadgetはeコマースアプリ開発者の生産性を高めるプラットフォームを提供

カナダのオタワに拠点を置くGadget(ガジェット)は、Shopify(ショッピファイ)の元社員2名によって設立された開発者の生産性向上を支援する企業だ。同社はシード資金として、850万ドル(約9億6700万円)を調達したことを発表した。この資金調達ラウンドは、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)とBessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ)が主導し、OpenAI(オープンAI)の共同創業者兼CTOであるGreg Brockman(グレッグ・ブロックマン)氏、Klarna(クラーナ)のCTOであるKoen Koppen(コエン・コッペン)氏、Shopifyのデータサイエンス・エンジニアリング部門の責任者を務めるSolmaz Shahalizadeh(ソルマズ・シャハリザデ)氏などが参加した。

2020年にHarry Brundage(ハリー・ブランデージ)氏とMohammad Hashemi(ムハンマド・ハシェム)氏が設立したGadgetは、eコマースアプリの開発者がコードを書く時間を削減する方法を提供することを目的としている。同社のプラットフォームを利用することで、開発者は作業にともなう無駄な仕事を省くことができ、アプリの構築と拡張をより効率的に行うことができる。

「私たちがGadgetを起ち上げた理由は、自分たちでさまざまなものを作ろうとしていた時に、何かを実現するまでには、どれほど長い時間がかかるかということに不満を感じたからです」と、CEOのブランデージ氏は、TechCrunchによるインタビューで語っている。「発売前の準備に何週間もかかるのは、フラストレーションがたまります。私たちは他の多くの人が同じ問題を抱えていると考え、それを解決するものを構築したいと思いました」。

Gadgetは、開発者が必要とするツール、ライブラリ、API、そしてベストプラクティスを1つにまとめ、開発者が、内蔵ステートマシン、自動アクセス制御、即時のAPI生成、他のSaaSプラットフォームとの統合など、一連の高度なプリミティブにアクセスしながら、データモデルを定義し、コードを書くことができるようにした。

画像クレジット:Gadget

今回調達した資金を使って、Gadgetはサーバーレススタックを公開し、Shopifyを手始めにサードパーティのAPIとの接続を構築する予定だ。ブランデージ氏とハシェム氏は、Shopifyの製品やエンジニアリングに関する専門的な知識を活用するために、まずはこの大手eコマース企業に注力する。

将来について、ブランデージ氏とハシェム氏は、重要なソフトウェアをより容易に開発できるようにするために、息の長い永続的な会社を作りたいと望んでいる。ブランデージ氏は、まだ作られていない実現可能な役に立つツールがたくさんあると指摘し、Gadgetは同社でそれらのツールを実現したいと考えている。

「ソフトウェア開発は転換期を迎えています」と、SequoiaのパートナーであるMike Vernal(マイク・ヴァーナル)は声明で述べている。「私たちが使用するソフトウェアに多くを期待するようになったことで、開発者はその要求に追いつくために、構築に使うツールに多くを求めるようになりました。Gadgetのプラットフォームは、eコマースの開発者が拡張性の高いソフトウェアを驚くほど速く構築できるように支援するという約束を果たしています」。

画像クレジット:Gadget

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

カナダのオンライン中古車購入プラットフォームClutchが事業拡大へ約91億円調達

Clutch(クラッチ)は、カナダ最大のオンライン中古車購入プラットフォームになりたいと考えている。2016年に設立された同社は、8000万ドル(約91億円)のシリーズBラウンドを完了したばかりだ。同社はこのラウンドで獲得した資金を、カナダ国内の新しいマーケットに進出するための準備として、チームの拡大、物流機能の拡充、在庫の拡大に充てる。

ClutchのCEOであるDan Park(ダン・パーク)氏は「我々は2023年末までにカナダ人の90%にサービスを提供したいと考えています。そのためには、カナダのいくつかの主要都市でサービスを開始する必要があります。モントリオールやウィニペグなどはカナダの中でも大きな都市であり、最終的には進出する予定です」とTechCrunchに語った。

Clutchは、近年市場に登場した数少ないオンラインカーディーラーの1つだ。オンラインカーディーラー各社は注力する地域を抱える。米国ではCarvanaとVroomが、英国ではCazooが、メキシコではKavakが、それぞれ最大のプレイヤーとなっている。Clutchはトロントに本社を置き、アルバータ州、ブリティッシュコロンビア州、ノバスコシア州、ニューブランズウィック州、オンタリオ州、プリンスエドワード島州でサービスを展開しているが、2022年にはさらにエリアを拡大する予定だ。海外進出よりもカナダ市場に注力することで、Canada Drivesのような競合他社に先駆けて、数十億ドル(数千億円)規模のビジネスチャンスをつかみたいと考えている。

パーク氏によると、Clutchはこれまでに数千台の中古車を販売し、現在は約1250台超の在庫を抱えているという。同社は、過去の債務融資を使って車両を購入し、オークション、個人販売者、フリートなどから調達した車両を210項目におよぶ厳しい再調整プロセスにかけ、その間にClutchの点検・整備部門が車両の安全性と外観をチェックする。その後、一新されたクルマは平台型トラックにのせられ、パーク氏がいう「ボタンをクリックするとクルマがあなたの家の前に現れるという、可能な限り魔法のような方法で」最終消費者に直接届けられる。

D1 Capital Partnersがリードし、Flight Deck Capital、Canaan Partners、Upper90、Real Ventures、GFC、BrandProject、FJ Labsが参加した今回の資金調達ラウンドは、Clutchが2022年中に従業員を約160人から250人超に増員するのに役立つだけでなく、事業拡大に必要なインフラと物流ネットワークの構築にも役立つ。Clutchはカナダ国内に倉庫を持っていて、そこに車を保管し、最短で翌日には納車できるようにしている。

「在庫を増やし、幅広く多様な車種を揃えることが、来年の大きな課題です」とパーク氏は話す。「顧客がClutchのファンであったとしても、もし顧客が走行距離5万キロのスバルの青いOutbackで2018年以降のモデルを本当に探していて、当社にそのモデルの在庫がない場合、顧客がClutchから購入する可能性はかなり低くなります。我々は、できるだけ多くのカナダ人に対応したいと考えています。そのため、在庫を増やして品揃えを充実させることは、来年のことを考えるとき大きなフォーカスであり、間接的な資金の使い道でもあります」。

eコマースはClutchのビジネスモデルの一部にすぎず、売上高の約半分は保証、保険、融資などのフィンテックサービスによるものだとパーク氏は話す。

「我々がここでやろうとしているのは、本当に合理的な体験を提供することであり、これまでその面での垂直統合はあまり行われてきませんでした」とパーク氏は指摘する。「すばらしい自動車購入体験を提供するだけでなく、消費者をサポートし、また一部のケースでは消費者の信用回復に役立つ金融商品の提示などすばらしい所有体験も提供できます」。

Clutchは、事業規模の拡大にともない、ユニットエコノミクスの向上を目指している。同社のビジネスで最もコストがかかるのは、車両の購入と、生産工程を経て車両を手に入れるための物流だ。カナダ国内でさらに規模を拡大すれば、部品の購入、配送トラックの使用、リフトの使用、その他のコストを効率化することができ、いつかはより多くのユニットで償却できるようになる。

Clutchは中古車マーケットプレイスであるため、在庫のうち電気自動車(EV)はごく一部にすぎないが、パーク氏は今後数年でそれも変わってくると考えている。

「我々のモデルは、EVにより適していると確信しています」と同氏は話す。「EVは一般的に再調整が少なくて済みます。ガソリン車の可動部品は2000個ですが、EVは200個で、当然メンテナンスも少なくなります」。

従来のディーラーの多くは、利益率を得るために部品やサービスに大きく依存しているが、Clutchはそこで利益を得ているわけではない。利益率はさておき、Clutchが内燃機関搭載車を販売する際には、そのクルマが送られる地域に3本の木を寄付するとパーク氏は話した。同社はこれまでに約8000本を植林したという。

画像クレジット:Clutch

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

GMがディーラーと協力してEV充電ステーション4万基を北米で設置

General Motors(ゼネラル・モーターズ)は、電気自動車の導入を促進するため、7億5000万ドル(約853億円)を投じて充電インフラを整備するという野心的な計画の一環として、北米全域に最大4万基の電気自動車用充電器を設置すると発表した。


このプログラムでは、GMは米国およびカナダの自動車ディーラーに充電器を提供する。しかし、ディーラーは自社の敷地内に充電器を設置するのではなく、適切な場所を特定してインフラの設置を行う。GMは、各ディーラーに最大10基のUltium充電ステーションを提供し、それぞれの地域に配備する。また、ディーラーが充電器を設置するためのインセンティブやその他の資金調達プログラムへの申請を支援するとしている。

GMのEVインフラ担当リードアーキテクトであるAlex Keros(アレックス・ケロス)氏はTechCrunchに「ディーラーはすでに地元で活動していることが多く、この計画(Dealer Community Charging Programと呼ばれている)でGMはディーラーと提携することにしました」と語った。「ディーラーはすでに地域社会でかなり活発に活動しており、すばらしい関係を築いて地域社会のことをよく知っているので、それを活用しない手はありません」。

新しいインフラは「Ultium Chargers」と呼ばれ、GMの明確なブランド名を持つことになるが、TeslaのSuperchargingネットワークと違ってGMの4万基の新しいレベル2充電器は独自のネットワークではない。ケロス氏は、電気自動車の販売を促進するために、独占的なネットワークを展開することには興味がない、と明言した。

「我々の世界観は、『誰でも参加できる 』というものです。私たちは、海を育てるようにしたいのです」。

GMはまた、EV充電器メーカーのCTEKと共同で開発・製造した家庭用および業務用のUltium Level2スマートチャージャー3種を展開する。このうち2種は11.5kW、残る1種は19.2kWで、間もなく発売予定の電気自動車GMC HummerやCadillac Lyriqへの電力供給に最適だ。これらの充電器は、Dealer Community Charging Programで使用されるが、家庭での使用にも適している、とケロス氏は話した。

充電器にはWi-FiとBluetooth機能が搭載され、より強力なタイプにはカスタマイズ可能なスクリーンが搭載される。また、充電器は負荷を分散することができ、車両へのエネルギーの流れを安全に調整することができる。例えば、住宅に設置した場合、自動車と他の家電製品との間の電流のバランスを取ることができる。

GMのアプリ「Ultium Charge 360」を使えば、充電器の状態を把握したり、充電スケジュールを設定したりすることができ、充電の習慣や履歴などの統計情報を閲覧することも可能だ。このアプリではすでにGreenlots、Blink、FLO、ChargePoint、EVgo、EV Connect、Greenlots、SemaConnectなど北米の7つのネットワークの充電器を検索することができる。GMは、GM車と非GM車の間で充電体験がどのように異なるかについて詳細は明らかにせず、すべてのEVに対応するとだけ述べた。

GMは、コミュニティ充電プログラムの開始に合わせて、来年には充電器の販売を開始する予定だ。顧客は充電器の購入費用をGMファイナンシャル・リースや契約に組み込むことができる。

同社は、2025年末までに全世界で30種のEVを発売するという目標を掲げている。同年までにEVと自動運転技術に350億ドル(約3兆9810億円)を投資する計画を立てており、その実現に向けて迅速に動いている。

関連記事:GMが3.8兆円をEV開発へ投資、従来の計画に8850億円上乗せ

先の記者会見で、会長兼CEOのMary Barra(メアリー・バーラ)氏は「入手しやすい価格のEV、真に手ごろ価格のEVを提供します。またそうした車両は多くの人々にとって唯一の自動車となり、信頼できる充電インフラを必要とするため、当社はエコシステムにも取り組んでいます」と述べた。

画像クレジット:General Motors

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

オリンパスが米国での新たなサイバー攻撃を認める、ランサムウェア「BlackMatter」がEMEA地域のシステムを攻撃した数週間後に

日本の大手テクノロジー企業Olympus(オリンパス)は、先の週末にサイバー攻撃を受け、米国、カナダ、ラテンアメリカのITシステムを停止せざるを得なくなったことを認めた。

オリンパスはウェブサイト上の声明で「10月10日に検知されたサイバーセキュリティ事件の可能性を調査中」であり「現在、この問題を解決するために最優先で取り組んでいます」と述べている。

関連記事:オリンパスがランサムウェア「BlackMatter」の攻撃を受ける

「調査と封じ込めの一環として、影響を受けたシステムを停止し、関連する外部パートナーに報告しています。現在の調査結果によると、この問題はアメリカ大陸に限定されており、他の地域への影響は確認されていません」。

「当社は、この状況について適切な第三者と協力しており、今後もお客様やビジネスパートナーに安全にサービスを提供するために必要なあらゆる手段を講じていきます。お客様やビジネスパートナーを保護し、当社への信頼を維持することは当社の最優先事項です。当社の調査は継続中であり、透明性の高い情報開示に努め、新たな情報が得られた場合には最新情報を提供していきます」。

これは、2021年9月にオリンパスが欧州・中東・アフリカのネットワークへのサイバー攻撃を受けて発表した声明とほぼ同じ内容だ。

攻撃を受けた当時、オリンパスは「サイバーセキュリティ事件の可能性を調査中」とも述べている。この事件を知る人物がTechCrunchに語ったところによると、オリンパスはランサムウェアの攻撃から回復していたという。感染したシステムに残された身代金のメモは、ランサムウェア・アズ・ア・サービス(ransomware-as-a-service)グループ「BlackMatter」にも関連していた。

Emsisoftのランサムウェア専門家で脅威アナリストであるBrett Callow(ブレットキャロウ)氏は、今回の事件が週末に発生したことを受けてギャングがランサムウェアを展開するのは休日を含むことが多いため、繰り返し攻撃を受ける可能性が高まるという。「ランサムウェアだとしても、それがまたBlackMatterであるかどうかはわかりません。また、もしランサムウェアだとしたら、それがBlackMatterであるかどうかはわかりませんが、その可能性もありますし、EMEA地域への攻撃を行った組織が、今回は別のランサムウェアを使用した可能性もあります」。

オリンパスの広報担当者であるSusan Scerbo(スーザン・セルボ)氏からは、コメントを得られていない。オリンパスのセキュリティ事件についての詳細がわかり次第、更新する。

画像クレジット:Filip Radwanski / SOPA Images / LightRocket / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Katsuyuki Yasui)

ツイッターのクリエイター向け機能「スーパーフォロー」、開始から2週間の売上はわずか66万円

Twitter(ツイッター)のクリエイター向けプラットフォーム「Super Follows(スーパーフォロー)」の幸先は芳しくない。公開から2週間の米国iOS売上は6000ドル(約66万円)ほどだった。Sensor Tower(センサータワー)提供のデータによる。そしてカナダでの売上はわずか600ドル(約6万6000円)ほどだった。収益のごく一部は、別のアプリ内購入の仕組みである「Ticketed Spaces(チケット制スペース)」による可能性もあるが、社外からこの部分を調べる方法はない。

Twitterが最初にスーパーフォローの計画を発表したのは、2月のAnalyst Dayイベントで、新たな収益ストリームを生み出す将来の取り組みの詳細を数多く予告していた。

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現在、Twitterのビジネスは大きく広告に依存しており、スーパーフォローは同社の収益多様化に向けた数少ない方法の1つだ。Twitterはクリエイターがライブイベントを 有料で提供するTicketed Spaces(チケット制スペース)を提供している他、米国外ではパワーユーザー向けのプレミアム商品、Twitter Blue(ツイッター・ブルー)のテストを開始している

画像クレジット:Twitte

しかしクリエイターがターゲットのスーパーフォローは、主要ユーザー層に最も強くアピールするはずだ。

これは、クリエイターがフォロワーを集め、サブスクリプションを通じて直接収益を生むクリエイター経済を育てることで、Twitter自身の広告やブランド契約への依存を減らす試みの一環でもある。クリエイターたちがこのビジネスのために使うプラットフォームは、収益のごく一部を受け取ってクリエイターツール開発費に宛てる(Twitterの場合、取り分はわずか3%)。

この機能は、すでに有名人と一般の人々が同じタイムラインで、親しく付き合い会話しているプラットフォームであるTwitterにとって理に適っているように思えた。スーパーフォローは、ファンがお気に入りのクリエイター(ミュージション、アーティスト、コメディアン、インフルエンサー、ライター、ゲーム、あるいはその他のエキスパート)にもっと近づけるようにすることでアクセスを増やす。クリエイターは月額サブスクリプション価格を2.99ドル(約330円)、4.99ドル(約550円)、9.99ドル(約1100円)のいずれかに設定して、ファンに「舞台裏」コンテンツなどのボーナスを提供する。それらは、追加のツイートやQ&Aその他サブスクライバーとのやり取りで受け渡される。

画像クレジット:Twitter

サービス開始時点でTwitterは、スーパーフォローを少数のクリエイターに開放した。美容・スキンケアに特化したアカウント、@MakeupforWOC、星占いのアカウント、@TarotByBronx、スポーツ専門の@KingJosiah54、ライターの@myeshachou、インターネットパーソナリティーでポッドキャスターの@MichaelaOkla、スピリチュアルヒーラー@kemimarie、ミュージックチャートをツイートする@chartdata、Twitchストリーマーの@FaZeMew@VelvetIsCake@MackWood1@GabeJRuizおよび@Saulsrevenge、ユーチューバーの@DoubleH_YT@LxckTVおよび@PowerGotNow,そして暗号トレーダーの@itsALLrisky@moon_shine15などの面々だ。Twitterは、スーパーフォローを利用できるクリエイターは100人以下がと言っている。

クリエイション側の利用は限定されているが、クリエイターのサブスクライブはそうではない。米国またはカナダのTwitter iOSユーザーなら、支援したいクリエイターのアカウントをいくつでも「スーパーフォロー」できる。米国には 2021年第2四半期時点で、収益可能なデイリーアクティブユーザーが3700万人いる。もちろんiOSユーザーはその一部にすぎない。

それでもTwitterには、スーパーフォローのプラットフォーム開始時点で数百数千万人の「潜在」顧客がいた。現在の収益は、アプリ内購入ランキング上位の多くが、低い価格設定でコンテンツを提供しているクリエイターのものであることを踏まえると、利用しているのはわずか数千人程度のようだ。

画像クレジット:Twitte

Sensor Towerは、TwitterのiOSにおける米国消費者利用額である6000ドルは、9月最初の2週間(9月1~14日)に測定されたという。この期間前の8月25~31日、米国のTwitter iOSユーザーは100ドル(約1万1000円)しか消費していない。これはユーザーがチケット制スペースに支払った金額を表す数字だ。言い換えると、iOS消費者の利用合計6000ドルに占めるチケット制スペースの割合はごくわずかである可能性が高い。

スーパーフォローをサブスクライバーが利用できるもう1つの市場であるカナダでは、9月1~14日のTwitterのiOSアプリ内購入収益はわずか600ドルだった(これにはカナダとオーストラリアでテスト中のTwitter Blueのサブスクリプション収益も含まれている)。

全世界では、同じ期間にiOSのTwitterユーザーは9000ドル(約98万9000円)を消費しており、これにもチケット制スペースとTwitter Blueのテストによる収益が含まれる(クリエイターに直接支払う方法であるTwitterのTip Jarはアプリ内購入を経由していない)。

ハッシュタグの利用やコンテンツのリツイートのように、元々ユーザーがやっていたことを観察して開発された他のプロダクトと異なり、最近のTwitterの新機能の多くは、プラットフォーム上でのユースケースを再定義しようとしている。数多く売り込んでいる製品ラッシュの中でTwitterは、クリエイター向けだけでなく、eコマース読むコンテンツの整理ニュースレターのサブスクリプションコミュニティのソーシャル化オーディオによるチャットコンテンツの事実検証トレンドのフォローよりプライベートな会話などを提供している。

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スーパーフォローの遅いスタートは、何かを決めるにはまだ早すぎるというTwitterのポジションを示している。それも一理あるが、利用状況を追跡して、新しいプロダクトが幸先の良いスタートを切ったかどうか確認する価値があるだろう。

「これはスーパーフォローの始まりにすぎません」とTwitterの広報担当者がSensor Towerの数字に関するコメント要求に答えて言った。「私たちの最終目標はクリエイターが成功するための準備を整えることです。そのためにこの1巡目のでは少人数のクリエイターたちと密に働くことで、スーパーフォローで最高の体験が得られることを、広く公開する前に確認します」。

さらに広報担当者は、Twitterのスーパーフォローはクリエイターがスケールに合わせて収益を増やせるように設定されていることも指摘した。

「スーパーフォローでは、クリエイターは生涯の収益が5万ドル(約549万6000円)になるまで、アプリ内購入手数料差し引き後収益の最大97%を受け取れます。5万ドルを超えてからは、アプリ内購入手数料差し引き後収益の最大80%%を受け取れます」と広報担当者はいう。

画像クレジット:Twitter

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

「頭痛のないヘッドレスコマース」Shopistryは5年後のeコマースの主流を目指す

Shopistryの共同創業者ジャファー・ハイダー(画像クレジット:Shopistry)

カナダのShopistryは、ヘッドレスコマースというコンセプトを、いわば逆立ちさせたいと考えている。米国時間8月16日にこのeコマースのスタートアップは200万ドル(約2億2000万円)のシード資金調達を発表して、今後も同社のツールキットや統合化、サービス、そしてマネージドインフラストラクチャの開発を続け、オンラインのブランドの成長を支えていくと発表した。

Jaafer Haidar(ジャファー・ハイダー)氏とTariq Zabian(タリク・ザビアン)氏は、2019年にShopistryを始めた。これまでのハイダー氏はeコマースやクラウドソフトウェアで多くのエグジットとベンチャー投資を経験してきた連続起業家だ。Shopistryのアイデアがひらめいたとき、彼はベンチャーキャピタリストとして仕事をしていた。ザビアン氏は、オンライン三行広告のマーケットプレイスOLXのゼネラルマネージャーだった。

Shopistryを利用して顧客は、誰でもアクセスできる個人化されたコマース体験を作れる。ハイダー氏の予想では、5年後にはヘッドレスが優勢なアーキテクチャになっているだろうという。ただし彼は「ヘッドレス」ではなくて「modular(モジュラー)」という言葉を好んで使う。

ハイダー氏は、TechCrunchの取材に対して次のように答える。「それはモジュール構造のシステムなのです。それを私たちは『頭痛のないヘッドレス』と呼んでいます。フレームワークを使ってAPIを容易に管理できるからです。一般的に、スタートアップを立ち上げると資金の半分は事業を継続することだけに使われてしまいます。彼らはShopifyのようなマーケットプレイスを使って技術的な部分を支えますが、私たちも同じことを行いますが選択肢の幅がもっと大きい。私たちは、一枚岩のシステムではないのです」。

現在、同社のプロダクトは次の5つとなる。

  • Shopistry Console:ブランドは自分に合ったスタックだけを使えばよいが、いつでも、プラットフォームを変えずに変更できる。ShopifyとSquareなど、複数のeコマース管理ツールや、決済プロバイダー、アナリティクス、マーケティング手法などをサポートしている。
  • Shopistry Cloudはパフォーマンスやデータ管理や複数サービスのオーケストレーションなどを支えるマネージドインフラストラクチャー。
  • Shopistry StorefrontとMobileでウェブとモバイルアプリのストアフロント(店頭)を管理する。
  • Shopistry CMSは、データドリブンでヘッドレスの顧客管理システムで、1つ作れば複数のチャネルに対応できる。
  • Shopistry Servicesは、デザインや技術の支援を要するブランドのためのサービスだ。

シードラウンドの投資家は、Shoptalkの創業者Jonathan Weiner(ジョナサン・ワイナー)氏やHatch LabsのAmar Varma(アマール・バルマ)氏、Garage Capital、Mantella Venture Partners(MVP)、そしてRaiven Capitalだ。

Mantella Venture Partnersの共同創業者でゼネラルパートナーのDuncan Hill(ダンカン・ヒル)氏は、声明で次のように述べている。「MVPが大事にしたい企業は、複雑なものを単純化して、高度な技術を持つ大手リテイラーが実証したイノベーションを大量の中小リテイラーに提供し、彼らの競争力を強化する開発者です。Shopistryのチームと技術は、eコマースの進化の次の段階でメジャーなプレイヤーになれるでしょう。疑問の余地なく、エキサイティングです」。

Shopistryはすでに、HonedやOura Ringなどのリテイラーのeコマースのプレゼンスを、彼ら自身が大きな技術チームを抱えなくても管理できるようにしている。

シード資金を求める前までは、ハイダー氏とザビアン氏は成長性の良いブランドと協力して約2年間、そのインフラストラクチャを構築していた。ハイダー氏によると今度の資金は、インフラの開発の継続と、営業とマーケティングのスタッフの獲得に当てたいという。

ハイダー氏によると、現状のShopistryはまだ数字として発表できるほどの成果はない。ただし顧客ベースは伸びているため、2022年には成長を報告できるだろう。ハイダー氏が今考えているのは、Shopistryのプラットフォームのバックエンドの柔軟性と統合部位を増し、もっと多くの他のプラットフォームをサポートしていくことだ。

ハイダー氏は付け加えた。「第4四半期にはもっと大きなローンチとして、市場開拓の視点にフォーカスしたい。また『アフター・ザ・セール』、売った後のフォローアップも重要だ。そして、バックオフィス(事務、会計など)の部分でも、すばらしい体験を作りたい。ユーザーはもっぱら自分のストアフロントのメンテナンスに集中して、その他の裏方部分は、データの管理も含めてうちに任せて欲しい」。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Shopistryeコマースカナダヘッドレスコマース資金調達

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】カナダ人は穏やかながらも積極的に米国のバイオテクノロジー人材をリクルートしている

本稿の著者はMichael May(マイケル・メイ)氏とJayson Myers(ジェイソン・マイヤーズ)氏。マイケル・メイ氏はCentre for Commercialization of Regenerative Medicineの社長兼CEO。ジェイソン・マイヤーズ氏はNext Generation Manufacturing CanadaのCEO。

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米国のトランプ大統領の任期中、カナダはSTEM(科学、技術、工学、数学)分野の労働者を自国に呼び寄せようと注力し、大きなニュースになった。トランプ氏は退任したが、カナダは隣国から人材をリクルートすることをやめてはいない。そして、この人材確保の戦いで最もホットな前線の1つがバイオテクノロジーだ。

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何世代にもわたり、カナダのエンジニアやプログラマー、研究者たちにとってシリコンバレーの給与水準と天候は魅力的なものだった。しかし、トランプ大統領による移民排斥の発言、政策、ビザ規制が行われた4年間は、カナダのテクノロジー企業や政府に競争上の優位性をもたらした。

2016年のトランプ大統領就任後、カナダ連邦政府は移民の受け入れを促進するプログラムを立ち上げ、トロントやモントリオール、バンクーバーといった都市のテクノロジーエコシステムを後押しした。カナダのテクノロジー界のリーダーたちは、より多くの労働者を同国に呼び込むキャンペーン乗り出した。ケベックでは、移民排斥的な空気が高いことで知られる同州政府に業界が働きかけ、新規移住者を14%増やすことに成功している。

パンデミックによるシリコンバレーからの大規模な流出により、多数の国外移住カナダ人が故郷に押し寄せている。米国のH-1 Bプログラム(特定のスキルを備えた外国人労働者のためのビザプログラム)に応募するカナダ人の数は劇的に減少しており、10年にわたる傾向に拍車をかけている。

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を抑え、新しい経済への移行を促進する政府支出は、カナダ国民に広く支持されている。

それでも、カナダのテクノロジー界や政治界のリーダーたちは依然として、先進的な製造、クリーンテクノロジー、バイオテクノロジーといった主要セクターの人材のインバウンドフローについて懸念している。彼らは、米国の長年の優位性を切り崩すためにあらゆる手段を講じている。

その活動の大半はバイオテクノロジー分野におけるものだ。新型コロナウイルス感染症はワクチン製造能力の不足を露呈させたが、カナダには優れた大学のエコシステムと最先端の研究を行う数千のベンチャー企業が主導する、活気に満ちたバイオテクノロジーおよび生命科学の研究セクターが存在する。これらの企業の多くは、パンデミックに端を発するバイオテクノロジーへの投資ブームに乗じて、2020年には記録的な額のベンチャー資金を調達している。

しかし、この財源流入は資金調達の展望を変えたものの、多くのカナダ企業はなおも規模の拡大を模索している。カナダのテクノロジーエコシステムは人材に満ちているが、伝統的には、これらの企業がグローバルな強豪企業に成長するために必要な、十分な数の上級人材を育成、採用、保持していない。

科学者のみならず、ビジネスリーダーも必要とされている。トロント地域のハブやベンチャー企業を対象とした最近の調査によると、生物医学工学、再生医療、その他の関連企業は、米国産業界のより良い賃金と機会に引き寄せられる上級幹部、最高経営責任者、科学専門家といった人材の大幅な不足に苦しんでいる。

我々双方の組織も属するカナダのイノベーション経済協議会(IEC)の最近のサミットでは、産業界のリーダーたちが、世界的な規制問題やビジネス開発における未充足の仕事、さらには最高医療責任者について議論を交わした。これらは、学問的な訓練と職場での進歩的なリーダーシップの任務の両方から培われた、技術的およびビジネス的な洞察力を必要とするハイブリッドな役割を担っている。

カナダの大学、ハブ、ベンチャーキャピタル企業は、専門の研修機関やプログラムを設立することでこのニーズに対応している。また、規模拡大を目指すカナダ企業は、新たに調達した資金を使って米国内外で大量の人材を採用することでこのギャップを埋めようとしており、パートナーシップを構築し、未開発の人材プールを精査しつつ、リモートワークや柔軟な勤務時間を提供している。

このような背景の中、カナダの連邦政府は2年ぶりに予算を執行した。これは、同国がこれまでに展開した中で最も積極的なテクノロジー支出計画の1つであり、世界市場が同国の伝統的なエネルギー輸出や天然資源、工業製品から離れつつある中で、連邦政府が先進産業の育成とSTEM分野の雇用創出に真剣に取り組んでいることを物語っている。予算には、大学研究パートナーシップ、雇用奨励金、助成金、インキュベーターやハブへの支援が含まれている。重要なのは、ライフサイエンス分野の人材パイプラインを構築するための22億ドル(約2400億円)のコミットメントがあることだ。

新型コロナの影響を抑え、新しい経済への移行を促進する政府支出は、カナダ国民に広く支持されている。4月初旬に行われたIECとCampaign Researchによる世論調査では、中等後のSTEM教育への投資に対して3対1の支持が示され、バイオテクノロジーを含む先進的な製造業への政府投資に対しても同様に強い支持が見られた。10倍の広さの隣国と競争するには、まさに必要とされることである。

カナダの研究者や大手製薬企業のCEOの米国流出がすぐになくなるとは言い難い。しかし、投資資金の流入、テクノロジーエコシステムの急成長、自律的な人材エコシステムの構築、採用、維持に向けた協調的な政策努力などにより、カナダは業界が望むような存在になりつつある。

言い換えれば、米国は、自国のバイオテクノロジーの人材がカナダに積極的に惹きつけられようとしていることに留意すべきであろう。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:コラムカナダバイオテックアメリカ人材採用

画像クレジット:Ivan-balvan / Getty Images

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(文:Michael May、Jayson Myers、翻訳:Dragonfly)

北米フォルクスワーゲンの販売業者から330万人分の個人データ流出

Volkswagen(フォルクスワーゲン)によると、北米のある販売業者が顧客データのキャッシュをインターネット上に保護されていない状態のまま放置していたことで、330万人以上の顧客の情報が流出したという。

同社の北米事業本部であるVolkswagen Group of America(フォルクスワーゲン・グループ・オブ・アメリカ)は書簡の中で、フォルクスワーゲンおよびその傘下のAudi(アウディ)の米国とカナダの正規ディーラーが提携している販売業者が、2014年から2019年の間に収集された顧客データを、2019年8月から2021年5月までの2年間にわたり、保護されていない状態のまま放置していたと述べている。

販売やマーケティングのために収集されたというこれらのデータには、氏名、郵便番号、メールアドレス、電話番号など、顧客や購入希望者の個人情報が含まれていた。

さらに約9万人のアウディの顧客および購入希望者においては、ローンやリースの審査に関する情報など、よりセンシティブなデータも流出したという。フォルクスワーゲンの書簡によると、流出した詳細な個人データのほとんどは運転免許証番号などだが「少数の」データには生年月日や社会保障番号も含まれていたとのこと。

フォルクスワーゲンは、データを漏えいさせた販売業者の名前を明らかにしていない。同社の広報担当者は「法執行機関や規制当局を含む適切な当局に通知し、外部のサイバーセキュリティ専門家と当該販売業者とともに状況の判断と対応にあたっています」と、危機管理会社を通して述べている。

運転免許証番号に関するセキュリティ事件は、他にもこの数カ月の間に何度か起きている。保険大手のMetromile(メトロマイル)とGeico(ガイコ)は2021年前半に、運転免許証番号を入手しようとする詐欺行為に見積もりフォームが悪用されたことを認めた。他のいくつかの自動車保険会社も、運転免許証番号の盗難に関わる同様の事件を報告している。これらの犯罪者は他人の名前で不正な失業手当を申請し、現金を得ようとしたのではないかと、Geicoは述べている。

だが、フォルクスワーゲンの書簡には、流出したデータが悪用されたという証拠があるかどうかについては書かれていなかった。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Volkswagenアウディ個人情報データ漏洩アメリカカナダ

画像クレジット:Jens Schlueter / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

安定した大手を離れづらいシニアエンジニアとどうしても来て欲しいスタートアップをマッチングするCommit

エンジニアを採用したいアーリーステージのスタートアップと、新しい仕事を探しているエンジニアをマッチングするのにユニークなアプローチを取っている、カナダ・バンクーバー拠点のスタートアップCommit(コミット)は現地時間6月9日、600万ドル(約6億6000万円)のシード資金を調達したと発表した。同ラウンドはAccompliceがリードし、Kensington Capital Partners、Inovia、Garage Capitalが参加した。

リモートファーストのスタートアップとの協業に注力しているCommitは2019年の創業だ。Hootsuiteで初期従業員として出会った共同創業者でCEOのGreg Gunn (グレッグ・ガン)氏と、同じく共同創業者でCTOのBeier Cai(バイエル・カイ)氏は、どのようにCommitを機能させたいか詳細を詰めながら人の助けを借りずに会社を興した。

「(Inovia Capitalで)私はEIR(客員起業家)で、世界を変えるようなアイデアを持ってやって来るすばらしい創業者たちを目にしました。彼らは資金を調達しましたが、最大の問題は会社に加わってくれるエンジニアを獲得することでした」とガン氏は説明した。

共同創業者でCTOのバイエル・カイ氏、共同創業者でCEOのグレッグ・ガン氏、戦略・オペレーション担当副社長のティファニー・ジュング氏(画像クレジット:Commit)

ガン氏の経験では、創業者たちは通常、会社に加わるフルスタックのテックリーダーを探す。しかしそうしたシニアエンジニアは往々にしてすでに大企業でかなり快適な任務についており、アーリーステージのスタートアップ、あるいはアーリーステージを脱していてもスタートアップに賭けるというのは彼らにとって最も現実的な選択ではない。

何十人というエンジニアと話して、共同創業者の2人は多くのエンジニアが現在働いている会社内で築いたサポートネットワークを失いたくないと感じていることに気づいた。仲間のエンジニアから受けるサポートだけでなく、公的・私的なメンターシップや大企業が提供する自己啓発の機会を通じて受ける組織的なサポートなどもそこには含まれる。加えて「アーリーステージスタートアップでの採用は大変です」とガン氏は指摘した。ホワイトボードのスキルを試すだけで、エンジニアとしての実際の能力についてはほとんど語られないような技術面接を、もう何度も受けたいとは思っていない。

そうしてチームはこうしたバリアを除く方法を探すことに決めた。VCファームのように、Commitは協業するスタートアップやスタートアップの創業者を細かく調査する。そのためCommitにやってくるエンジニアたちは、こうしたスタートアップが少なくとも資金調達を予定し、エンジニアに軌道を描かせて潜在的に早期のリーダーの役割に育てる用意がある真剣な会社であることを知っている。

一方、エンジニアがCommitと提携している企業に次々とインタビューを受けなくてもいいよう、Commitはエンジニアにテクニカルに関するインタビューを行ってエンジニアを精査する。ガン氏が指摘したように、これまでのところCommitが協業したエンジニアはパイロットプロジェクトを開始する前に平均1.6人の審査を通った創業者に会った。

大手テック企業を辞める財政的なリスクを和らげるために、Commitは仕事が見つかるまで協業するエンジニアに実際に給料を払う。現在は、未来の雇用主とパイロットプロジェクトを開始するエンジニアの90%がフルタイムでの雇用に落ち着いている。

画像クレジット:Commit

創業者とエンジニアのマッチングに加え、同社はコミュニティのメンバーに仲間からのサポートやキャリアについてのアドバイス、コーチング、他の転職サービスなどを受けられるよう、エンジニアのリモートファーストコミュニティへのアクセスも提供している。

バックエンドでCommitは創業者とエンジニアをマッチングするために多くのデータを使っているが、チームがかなり選り好みし、提携する人々のプロフィールが偏っている一方で、Commitは多様性のある創業者やエンジニアのプールを構築することに注力している、とガン氏は述べた。「当社が戦っているものは、こうした機会が偏在していたという事実です」とも話した。「シリコンバレーですら、そうした機会にアクセスを持つためには社会的・経済的地位を持つ階級出身でなければなりません。当社では、全ビジネスモデルは住みたいところで利用でき、希望するあらゆる機会へのアクセスを手にします」。2021年後半、Commitは雇用ダイバーシティに特化したプロジェクトを立ち上げる計画だ。

Commitのスタートアップパートナーには現在Patch、Plastiq、Dapper Labs、Relay、Certn、Procurify、Scope Security、Praisidio、Planworth、Georgian Partners、Lo3 Energyがいる。Commitはこじんまりと事業を開始し、これまでのところ協業しているエンジニアは100人足らずだが、今後12カ月でエンジニア1万人超のコミュニティに拡大したいと考えている。プログラムに参加したいエンジニアはウエイトリストに登録できる。

カテゴリー:HRテック
タグ:Commitエンジニア資金調達カナダ

画像クレジット:tupungato / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

米セブン-イレブンが2022年末までに北米250店舗にEV充電ステーション500基を設置

コンビニエンスストアはユビキタスだ。米国の消費者が購入するガソリンの圧倒的大部分を販売している。しかし多くの米国人が電気自動車(EV)に移行するにつれ、人々がコンビニに立ち寄る大きな理由は消失する。

コンビニ大手の7-Eleven(セブン-イレブン)はこの成長しつつあるEVドライバーマーケットをつかもうとしている。同社は米国時間6月1日、2022年末までに北米の250店舗にDC急速充電ポート500基を設置すると発表した。サプライヤーから購入されなければならないガソリンスタンドの燃料とは対照的に、これらの充電ステーションはセブン-イレブンが所有・運営する。

EVgoやChargePoint、TeslaのSuperchargerネットワークのような米国最大のプロバイダーが展開している多くの充電ステーションは、ショッピングモールやTargetのような小売店に隣接している駐車場の寄せ集めに立地している。しかしセブン-イレブンのようなコンビニ店の大きな特徴は、高速道路や幹線道路に隣接したエリアにすでに立地していることであり、ドライバーを引きつけるという点で優位かもしれない。

充電スピードが遅いチャージャーではなくDC急速充電を選んだのも、もう1つの強みだ。コンビニ店の大半は、給油する時間で出たり入ったりする短時間のサービスのためのものだ。多くの店舗が室温が管理された座れる場所を提供しておらず、長い充電時間はドライバーにとって問題となる。古いEVモデルは受け入れられる充電キロワットに制限があるが(なので、バッテリーを充電するのにどれくらいの時間がかかるかという点で、チャージャーの出力レートは重要ではない)、比較的新しいEVはさまざまなレンジの出力を受け入れることができる。

充電インフラ、あるいはその不足はEV浸透にとって引き続き最大の障壁の1つであり、セブン-イレブンが発表したもののような主要小売店による設置計画は消費者のEV移行に関するためらいを減らすのに役立つかもしれない。

セブン-イレブンは現在4州の14店舗にステーション22基を展開していて、新たな充電ステーション500基はこの既存ネットワークに加わる。

カテゴリー:モビリティ
タグ:セブン-イレブン充電ステーションアメリカカナダコンビニエンスストア電気自動車

画像クレジット:7-Eleven

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

日本の宇宙企業ispaceの月着陸船がカナダ宇宙庁とJAXAからペイロード輸送を受託

東京に本社を置くispace(アイスペース)は、カナダと日本のローバー(探査車)を月面まで届ける任務に選ばれた。2022年と2023年に予定されているミッションでは、最近公開された同社の月着陸船が使用され、SpaceX(スペースX)のロケットで打ち上げられる予定だ。

カナダ宇宙庁(CSA)は、それぞれ別の科学的ミッションを担当するカナダの民間企業3社を選定した。Mission Control Space Services(ミッション・コントロール・スペース・サービス)、Canadensys(カナデンシス)、NGCの3社は、いずれもCSAによるLunar Exploration Accelerator Program(LEAP、月探査促進プログラム)の一環であるCapability Demonstration(能力実証)プログラムで受賞した最初の企業だ。2020年2月にカナダ政府が発表したLEAPは、5年間で1億5千万ドル(約165億円)を計上し、カナダの民間企業が宇宙空間で行うデモンストレーションや科学ミッションを支援する。

ispaceは、2022年に予定されている「ミッション1」で、アラブ首長国連邦のThe Mohammed Bin Rashid Space Centre(ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター、MBRSC)が開発した重量約10キログラムの月面探査ローバー「Rashid(ラシッド)」を月に届ける予定だ。このローバーには、宇宙ロボティクス企業であるMission Control Space Servicesの人工知能フライトコンピューターが搭載される。同社の人工知能は、深層学習アルゴリズムを用いて、Rashidが月面を走行する際に取得する画像から月の地質を認識することができる。

また、ispaceはCanadensysのために「ミッション中の重要な事柄を撮影する」カメラを月面へ輸送し、さらにNGCが開発する自律航行システムのデモンストレーションのために、月面の画像データを取得する。

「CSAに選ばれた3社すべてが、それぞれ月面での活動を実現するための役割を、ispaceのサービスに託してくれたことを光栄に思います」と、ispaceの創業者でCEOである袴田武史氏は声明で述べている。「これは、ispaceがCSAとの間に築いてきた過去数年間の信頼の証であり、北米市場においてispaceが認められたものと考えています」。

ispaceはまた、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)と、変形型月面ロボットの「月面輸送・運用・データ取得」契約も締結したと発表。2023年に予定されている月面探査ミッション「ミッション2」で収集されるデータは、JAXAが研究している有人与圧ローバーの設計に活用される。

JAXAの月面ロボットは、展開形状に変形する前は直径が約80ミリメートル、重さは約250グラムしかない。ispaceは、競争入札で獲得したこの契約の金銭的条件を明らかにしていない。

画像クレジット:JAXA

JAXAは、このロボットを月面で走行させ「レゴリス(月の表面を覆う砂)の挙動や月面での画像データ等を月着陸船経由で地上に送信します。取得したデータを用いて、有人与圧ローバの自己位置推定アルゴリズムの評価や走行性能へのレゴリスの影響評価等に反映する予定です」と、ニュースリリースで述べている。

ispaceは2020年7月に、この月探査プログラム「Hakuto-R(ハクトアール)」で使用するランダー(着陸船)のデザインを公開した。Hakuto-Rは、人類初の月面探査レース「Google Lunar XPRIZE(グーグル・ルナ・エックスプライズ)」から生まれたプロジェクトだ。このレースは、探査機を月に送り、500メートル以上の距離を走行させ、写真や動画を地球に送り返すことを競うというものだったが、Hakutoを含む5つのファイナリストがいずれも期日内に打ち上げを完了させることができず、優勝者がないまま2018年に終了した

MBRSCとJAXAのローバーは、それぞれ異なる展開機構を持つはずだが、米国時間5月26日に行われたメディア発表会で、袴田氏は詳細を明らかにしなかった。

袴田氏によると、ランダーはドイツで組み立てられており、組み立ての段階は始まったばかりだという。「だからこそ、私たちはこのスケジュールを達成できると確信しています」と、袴田氏は付け加えた。

ispaceの長期的な目標の1つは、月面における水資源の活用だ。それによって将来的には持続性のある活動を実現するための能力を高めていきたいと袴田氏は語る。

ispaceのHakuto-Rプログラムは、SpaceXのロケットで打ち上げられるいくつかの月面ミッションのうちの1つに過ぎない。2021年4月、米航空宇宙局(NASA)は、そのArtemis(アルテミス)計画の一環で、月面に人間を送る有人着陸システムの開発企業に、SpaceXを選んだと発表。その受注総額は28.9億ドル(約3175億円)に上る。SpaceXはFirefly Aerosapce(ファイアフライ・エアロスペース)からもペイロード輸送を受注しており、2023年に同社の月面着陸船を運ぶ予定だ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:ispace日本探索車カナダJAXA

画像クレジット:ispace

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テスラの北米向けModel 3とModel Yがレーダー非搭載に

北米の顧客向けに製造されるTesla(テスラ)の「Model Y(モデルY)」と「Model 3 (モデル3)」には、レーダーが搭載されなくなる。これは、機械学習を組み合わせたカメラのみを使用して、同社の先進運転支援システムやその他のアクティブセーフティ機能をサポートするようにしたいという、Elon Musk(イーロン・マスク)CEOの意向を反映した変更だ。

センサーの使用をやめるという決定は、多くのテスラの動向と同様に、業界の標準的な考え方に反している。今のところ、レーダーなしのテスラ車は、北米のみで販売される。テスラは、中国や欧州の顧客向けに製造される車両から、レーダーセンサーを削除する時期やその可能性については言及していない。

自動車メーカーは通常、レーダーとカメラを(さらにはLiDARも)組み合わせ、周囲の交通状況に合わせて車両の走行速度を調整するアダプティブ・クルーズ・コントロールや、車線維持および自動車線変更など、先進運転支援システムの機能を実現するために必要なセンシングを行っている。

しかし、以前からマスク氏は、カメラといわゆるニューラルネット処理のみで、車両を取り巻く環境で起きていることを検知・認識し、適切な対応を行うシステムの可能性を喧伝しており、このシステムにはブランド名を冠した「Tesla Vision(テスラ・ビジョン)」という名称が付けられている。

ニューラルネットとは、人間の学習の仕方を模倣した機械学習の一種で、一連の接続されたネットワークを使用してデータのパターンを識別することにより、コンピュータが学習することを可能にする、人工知能アルゴリズムの洗練された形態だ。自動運転技術を開発している多くの企業は、特定の問題を処理するためにディープニューラルネットワークを使用しているが、彼らはこのディープネットワークを壁で囲い、ルールベースのアルゴリズムを使って、より広範なシステムに結びつけている。

Whole Mars Catalog@WholeMarsBlog
ピュア・ビジョンの考え方について、もう少し詳しく教えてください。

レーダーを使わないのは時代に逆行するという意見もありますが、なぜ使わないほうがいいと判断したのでしょうか?

Elon Musk@elonmusk
レーダーと視覚が一致しないとき、あなたはどちらを信じますか? 視覚認識の方がはるかに精度が高いので、複数のセンサーを組み合わせるよりも視覚認識を倍に増やした方が良いのです。

テスラは更新したウェブサイトでレーダーからの移行について詳述し、2021年5月から切り替えを開始したと述べている。このカメラと機械学習(特にニューラルネット処理)を組み合わせた方式は「Tesla Vision」と呼ばれ、同社の車両に標準装備されている先進運転支援システム「Autopilot(オートパイロット)」と、そのアップグレード版で1万ドル(約109万円)の追加料金が必要な「FSD(フル・セルフ・ドライビング)」に使われる。テスラのクルマは自動運転ではないので、人間のドライバーが常に運転に関与し続ける必要がある。

レーダーを搭載していないテスラ車では、当初は運転支援機能が制限される。例えば、Autosteer(オートステア)と呼ばれる車線維持機能が使える速度は最高時速75マイル(時速約120キロメートル)までに制限され、最小追従距離も長くなる。また、緊急車線逸脱回避機能や、駐車場で自車を自分の側まで呼び寄せることができるSmart Summon(スマート・サモン)機能は、納車当初には利用できない可能性があると、テスラは述べている。

同社では、今後数週間のうちにワイヤレス・ソフトウェア・アップデートによって、これらの機能を復活させることを計画しているという。ただし、テスラはその具体的なスケジュールを明らかにしていない。他のAutopilotやFSDの機能は、(注文した仕様にもよるが)納車時にすべて有効になっているとのこと。

一方、Model S(モデルS)とModel X(モデルX)の新車や、北米以外の市場向けに製造されるすべてのモデルには、引き続きレーダーが搭載され、レーダーを使ったAutopilotの機能も利用できる。

テスラは「よくある質問」の中で「Model 3とModel Yは、当社の製品の中でも生産台数が多いモデルです。これらのモデルを先にTesla Visionに移行することで、膨大な実世界におけるデータを短時間で分析することが可能になり、結果的にTesla Visionをベースとした機能の展開を早めることができます」と書いている。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:TeslaModel YModel 3アメリカカナダイーロン・マスクニューラルネットワーク機械学習コンピュータービジョンオートパイロット

画像クレジット:Tesla

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)