お部屋探しプラットフォーム「カナリー」が不動産業者間流通サイト「リアプロ」と連携、タイムリーな空室情報提供を実現

不動産仲介業者の業務をデジタル化する業務効率化ソリューションと、お部屋探しプラットフォーム「カナリー」(CANARY。Android版iOS版)を開発・運営するBluAgeは1月24日、リアルネットプロが運営する不動産業者間流通サイト「リアプロ」と2021年11月から連携を開始したと発表した。

今回発表された連携後は、リアプロ管理の会員不動産管理会社は物件の空室情報を直接カナリーへ掲載することが可能になる。これにより仲介会社による入稿プロセスが省かれ、エンドユーザーに最新の空室情報をタイムリーで発信できるようになるという。カナリーにとっては、アプリ上の物件情報の鮮度と正確性を高めることで、ユーザー体験のさらなる向上、アプリダウンロード数の増加とそれに伴う反響数・成約数の上昇が期待できるとしている。

カナリーは、賃貸・売買物件を探すお部屋探しプラットフォーム。全国の賃貸マンション・アパート、新築・中古マンション・アパートの売買両方に対応している賃貸物件検索アプリとして提供しており、新規ダウンロード数は月10万件、累計ダウンロード数は100万件を達成しているという(2021年10月時点)。

また、募集終了物件や重複した情報を大きく削減した透明性と利便性の高さを特徴としており、ユーザーは最新情報を元に部屋探しが行える。不動産仲介・管理業務から部屋探し体験に至るまで、不動産業界における一気通貫したDXを推進し、「デジタルなインフラとして産業の発展に貢献する」というミッションの実現を目指している。

リアプロは、元付け情報のみを取り扱う賃貸物件情報データベースを活用し、管理会社や仲介会社の業務軽減・情報把握を可能にするシステム。賃貸管理業務用サービス「リアプロ管理」と賃貸仲介会社向けの業務用サービス「リアプロ仲介」からなる。リアプロ管理は2613店舗、リアプロ仲介は3万1766店舗(2021年10月現在)の利用があり、登録物件数は約620万戸に上るという。

リアプロ管理は、管理物件をデータベース化し、管理会社やオーナーの日常業務を効率化するというもの。「紙による入退去履歴の管理」「仲介会社との電話・FAX のやり取り」などの業務負担を削減できるほか、社内での共有、全戸登録での各種統計データ(物件情報登録はリアルネットプロが代行)、入居者管理にも利用できる。

またリアプロ仲介では、複数の管理会社やオーナーが持っている物件の空室情報をリアルタイムに把握でき、諸条件の画面上での確認により管理会社への電話・FAXによる問い合わせの手間を激減可能という。

不動産仲介のDXを推進する「カナリー」のBluAgeが約3億円の資金調達

BluAge 不動産仲介 カナリー

不動産仲介のDXを推進する「カナリー」運営のBluAgeは7月30日、約3億円の資金調達を発表した。引受先はAngel Bridge、東大創業者の会応援ファンド、SMBCベンチャーキャピタル、個人投資家。

同社は、電話やFAXがいまだ主流となっている不動産業界において、一気通貫したデジタルトランスフォーメーションによりユーザーに透明性高い情報と効率的なプロセスを提供。また不動産エージェントの生産性向上によって、よりよい部屋探しのユーザー体験を追求するとしている。

賃貸物件を探す消費者向けアプリ「カナリー」(iOS版Android版)は正式リリースから約1年間の期間で16万件以上のダウンロード、2万件以上の内見依頼があったという。

また2020年7月より同アプリ内において売買版を正式リリース。ヤフーと売買物件情報における事業提携を締結した。ヤフーが運営する不動産ポータルサイト「Yahoo!不動産」が扱う約30万件の物件情報がカナリーにも掲載される。

BluAge 不動産仲介 カナリー

カナリーは、管理会社と提携することで物件情報をデジタル化しており、物件情報の自動掲載を可能にしている。これにより不動産エージェントは面倒な広告掲載作業から解放され、顧客対応に集中できるようとしている。

さらに店舗を起点としない、内見は現地待ち合わせ現地解散、契約はオンラインで完結という効率的で柔軟な業務の形を実現するとしている。

BluAge 不動産仲介 カナリー

また、いわゆる「おとり物件」を含む募集終了物件や重複した情報が大きく削減されるため、ユーザーは正確で最新の物件情報をもとに部屋探しを行えるほか、店舗に行かず契約まで完了できる。

BluAge 不動産仲介 カナリー

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「賃貸物件を探す際のプロセスにはまだまだ無駄が多く改善できる余地がある。大手ポータルサイトで気になった物件に問い合わせをすると複数の不動産業者から連絡がきて、同じように来店や内見日時の調整をしなければ内見できない。悪質な業者だとおとり物件で店舗に呼ばれることもある」

そう話すのはBluAge創業者でCEOの佐々木拓輝氏。同社では賃貸の部屋探しにおけるプロセスを圧縮し、無駄をなくすことをコンセプトとした自社アプリ「カナリー」を開発する。

2018年10月にリリースしたプレビュー版は現段階でダウンロード数が1万件を超え、内見依頼も1000件を突破。プロダクトの基盤も整ってきた中で本日6月26日に正式リリースを迎えた。

またBluAgeではカナリーのリリースと合わせて、昨年12月にCoral Capitalの創業メンバーが運営する500 Startups Japanなどから約7000万円の資金調達を実施したことも明かしている。

希望日時で即内見、複数業者との面倒なやりとりを排除

カナリーはユーザーがアプリから内見したい物件と日時を選択するだけで、すぐに個人のエージェントと繋がり余計な手間なく内見や契約を進めることができる部屋探しサービスだ。

アプリから気になる物件を探す工程までは従来と大きな変わりはないが、違うのは内見日時を申請してから。エリアと日時に合ったエージェント1人とマッチングされる仕組みのため、細かい日時調整や店舗へ足を運ぶ手間もなく、現地で待ち合わせて即内見ができる。

冒頭でも触れたように、通常であれば問い合わせ後に知らない仲介会社から複数件の連絡が届き、各社とメールで物件や日程の調整をしたり店頭に一度足を運んで手続きをする必要があった。要は内見をするためにはいくつかのステップを乗り越えなければならなかったわけだ。

物件を契約する際にもテレビ電話を通じて重要事項の説明を受けられる機能をプラットフォーム側で提供(テレビ電話などによる「IT重説」は2017年10月より本格運用されている)。ユーザーはわざわざ契約のためだけに店舗へ行かずとも、好きな時間に好きな場所からスマホで手続きできる。

カナリーでは一連のプロセスにおける無駄を排除することで、仲介手数料を一般的な「賃料1ヵ月分」から下げることも実現。プレビュー版のリリースからは約8ヶ月ほど経つが、これまで利用したユーザーからは「手間なく内見できる点や仲介手数料の安さ」などが好評だったそう。

「忙しくてすぐ内見したいという人や、これまで何度か引っ越しをしている人の反応が良い。特に過去の経験から部屋探しのプロセスが面倒だと感じていた人には、コンセプトにも共感してもらえている」(佐々木氏)

現在は都内23区に対応。一般の仲介会社が活用しているデータベース(レインズ)を軸としているため、物件数が極端に少ないということもない。一方でAIを活用したおとり物件を検知するシステムを開発し「だいたい半分くらいは削減できている」とのことだ。

仲介会社から「個人エージェント」主体の部屋探しへ

ここまで従来のプロセスにおける“ユーザー視点”での無駄と、それに対するカナリーの解決策を紹介してきたが、当然ながら不動産エージェントとしても負担となっていた部分があった。

仲介会社の営業パーソンにとって物件を「SUUMO」や「LIFULL HOME’S」などの大手ポータルサイトに掲載することは重要な仕事の1つ。この作業に毎日数時間を費やすことも珍しくなく、膨大な時間と手間を要する。

多数の業者が1人の顧客を取り合う構造になるため問い合わせに対する反応もスピーディーにしなければならず、メールや電話で細かい日程調整をするにも一定の時間が必要だ。そこまでしても顧客が他の業者に流れてしまうことも多く「結果的にコンバージョン(成約率)が高くなかった」(佐々木氏)という。

カナリーではこうした課題を解決しつつ、「仲介会社ではなく個人のエージェントを主体とした」モデルへと変えようとしている点が特徴だ。

佐々木氏によると個人エージェント自体はこれまでも存在したが(エージェントが複数人でチームを作って運営している会社も含めて)、集客の部分が1つのネックとなりなかなか浸透してこなかったという。

カナリーの場合は個人では難しい部分をプラットフォーム側でサポート。アプリを通じた集客基盤の提供に加えて、エリアや日時を元にベストなエージェントをマッチングする。IT重説の仕組みなども提供するため、各エージェントはオフィスに出社する必要なく、従来よりもフレキシブルに働きながらユーザーとのコミュニケーションにより多くの時間を使うことができる。

「仲介会社の担当者は朝早くから夜遅くまで店舗に行って働いているケースも多い。お客さんとのやりとりがメインなのであればわざわざ店舗にいる必然性もなく、カナリーではアプリを通して場所を問わず柔軟に働けるので、主婦の方や副業的に働きたい人などもチャレンジしやすい」(佐々木氏)

エージェントに関しては正社員としてBluAgeと契約しているメンバーが7名、業務委託で関わっているメンバーが3名ほどいるそうだ。今後は「Uber」のようにエージェントごとのレビュー機能を本格的に導入していく計画。ユーザーへの透明性を担保するとともに、質の高いエージェントがきちんと評価され、より多くの機会を掴めるような環境を整備していきたいという。

「エージェントが主体となれば、駅前の好立地な店舗を持たなくてもいいので間接的な固定費も削減できる。また仲介業は基本的に同じお客さんが再度使ってくれたとしても数年後などになるので、ショットのビジネスになりやすい。結果的に申し込み後のアフターケアがずさんになる場合も多いが、その点もエージェントごとのレビューを通じてきちんと透明化できると考えている」(佐々木氏)

BluAgeの経営陣と投資家メンバー。左から4人目がCEOの佐々木拓輝氏

今夏を目処にエリア拡大、レコメンド機能の強化などにも着手

個人エージェントを軸としたモデルは、日本に比べてアメリカなど海外でより広がっている。スタートアップではソフトバンク・ビジョン・ファンドなどから累計で約12億ドルを調達しているCompassが有名。日本でもエージェント探しから不動産取引を始められる「EGENT」のようなサービスが登場している。

Compassに関しては不動産売買を対象としているのでカナリーとは少し異なるものの、佐々木氏は日本でも個人を主体としたモデルが浸透する余地があるという。

「最終的には『カナリーに行けば内見までの手間もないし、良いエージェントの人に対応してもらえる』というブランディングができるところまでを目指していきたい。そうなればユーザーも安心して部屋探しをすることができ、一部の悪質な業者につかまるリスクもない」(佐々木氏)

今後は夏頃を目処に1都3県までエリアを拡大する予定のほか、それと合わせてエージェントの採用も進めていく方針。機能面ではデータを活用したレコメンド機能やおすすめ物件の紹介などを中心にアップデートを進めていく。

なおBluAgeは2018年4月の設立。代表の佐々木氏はメリルリンチ日本証券やボストンコンサルティンググループを経て、東京大学在学時からの友人でもある穐元太一氏(CTO)とともに同社を創業している。