コネクテッドロボティクスが10万円台の教育用ロボを朝食調理ロボ「Loraine」に超改造

TechCrunch読者にはたこ焼きロボでおなじみのコネクテッドロボティクスは7月18日、カンデオホテルズ東京六本木にて朝食調理ロボットサービス「Loraine」(ロレイン)の実証実験を報道関係者に披露した。

写真に向かって左から二人目が開発チームリーダーの宮武茉子さん、右端がコネクテッドロボティクスで取締役COOを務める佐藤泰樹氏

Loraineは、東京大学工学部4年の宮武茉子さんが開発チームリーダーを務めるインターン生だけで開発したロボット。チームは、大学でロボットを専門に研究している学生2名と、ロボコンサークルに所属する2名の計4名で構成されている。

なんといっても注目なのが、同社のお家芸ともいえる安価な汎用ロボットをチューニングして調理用ロボットにカスタマイズしている点だ。今回使われていたのは、市販価格15万円前後の「Dobot Magician」。教育用として売られている製品で、ペイロード(アームが持ち上げられる重量)は500g、0.2mm間隔の繰り返し精度を備える4軸アームロボット。

宮武さんによると、開発には1年を要したとのこと。意外にも、最も時間がかかったのはどういう相手に何を届けるかという仕様の部分だったそうだ。3月に米国テキサス州オースティンで開催されたSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)では、ホットプレートの上に食材を直接投下して調理していたが、今回はホテルで多人数の対しての調理が必要なため、食材をアルミニウムの小皿に小分けした状態で調理する仕様に変更している。

ホテルへの設置には3時間ほどを要したとのこと。各機材の位置決めと固定はもちろんだが、研究環境とは湿度や温度が異なるため、ホットプレートの温度などを現地で微調整が必要だった。ただし、一度設定してしまえば3日間問題なく稼働したという。

Loraine自体は座標によって位置を認識しており、食材を調理するホットプレート上の、ワイヤーで区分けさらた固定のエリアを認識し、玉子、ベーコン、さつまいもの3種類の食材を調理する仕組み。食材を設置する場所とそれぞれの調理時間を決めておくことで、9分ほどで温かい料理が出来上がる。「画像認識技術と使わないのか」という問いには「今回のような用途であれば、座標位置を捕捉するだけ問題なく稼働するので、システムが複雑になりコストもかかる画像認識は搭載しなかった」と宮武さん。

調理方法は蒸し焼きで、Loraineがアルミ小皿をホットプレートに設置したあと、シリコンのフタをかぶせる。食材をスロットにセットしておけば、あとはタブレット端末の「START」ボタンを押すだけで調理が始まる。蒸し焼きのため食材から出た水分が水蒸気となり、シリコン製のフタに水滴が付着するが、こちらも水滴を落とす工程を組み込むことで、テーブルを濡らさないよう工夫している。

カンデオホテルズ東京六本木の関係者によると「厨房の人手不足を解消するために今回の実証実験に参加した」とのこと。同ホテルは特にコネクテッドロボティクスの食洗機ロボに興味を示していたので、同ロボの実験の場として今後選ばれるかもしれない。今回は7月16日〜18日までの朝食時の7〜10時までの3時間、計9時間の実験だったが、反応は上々で写真や動画を撮影する宿泊客も多かったとのこと。

チームリーダの宮武さんは、現在はアルミニウムの小皿のまま提供しているが、ロボットのアーム部分は付け替えも可能なので今後は盛り付けまでできるように改良したいとのこと。