米上院議員がUberやLyftなどに対し新型コロナの影響を受けるギグワーカーたちへの経済的配慮を要請

ギグエコノミー企業の中には、すでにその労働者間の新型コロナウイルス(COVID-19)の拡散を防止するための措置を講じているところもあるが、米国バージニア州選出のMark Warner(マーク・ワーナー)上院議員は、そうした企業に対してウイルスの影響によって労働者たちが経済的苦境に陥らないような配慮も求めた。

「労働者が病気になるか、自己検疫(自宅待機)の状況に陥った場合には、その財政的苦境の可能性に対して、何らかの対応をとっていただきたいと、強くお願いしたいと思います」と同議員は書いている。「新型コロナウイルスの拡散を抑制するためには、経済的不安定性が労働者の皆さまに公衆衛生ガイダンスに従うことを躊躇わせるような事態にならないように、プラットフォーム企業の皆さまには率先して例を示し、対応していだくことが重要なのです」と続ける。

ワーナー上院議員は、UberやLyft、Instacart、Postmates、Grubhub、そしてDoorDashへ宛てた別々の手紙の中で、いくつかのアイデアを提示している。1つ目は、検査や自己検疫のために休暇を取る必要がある場合に、ギグワーカーが利用できる特別なコロナウイルス健康基金を設立することだ。また別のアイデアはたとえ通常の平均時間分の労働を行えない場合でも、労働者たちに通常の平均賃金を支払うというものだ。

「自らの責任に帰すことのできない健康上の緊急事態が、労働者とその家族に対して、過度の財政的負担をかけるべきではありません」と同議員は説明する。

UberはTechCrunchへのメッセージの中で、影響を受ける可能性のあるドライバーたちに補償を行うためのオプションを検討していると述べた。「私たちは公衆衛生コンサルの専門家と公衆衛生組織からの助言を受けている専任のグローバルチームを持っています。事業を展開する世界中の各市場で、必要に応じて対応を行うよう努めています」とUberの広報担当者は答えている。「私たちはチームはまた、コロナウイルスのために検疫状態に置かれたり診断されたりしたドライバーの皆さまに対して、個別に、あるいは基金を介して、または同業他社と提携して補償を行う方法を検討しています。上院議員には私たちの計画についての最新情報を提供し、議員からの手紙に直接の対応を続けます」と続けた。

Lyftの場合は、広報担当者による声明の中で、同社からワーナー上院議員のリーダーシップへの感謝を述べつつも補償の可能性については明示的に言及していない。「私たちは適切な行動を取ることに注力し、複数のシナリオを積極的に計画しているところです」とLyftの広報担当者は述べている。「政府当局者と調整を行う準備は整っています」と続ける。

一方DoorDashは、DoorDash配達員の福祉向上に役立つ「革新的なソリューション」について米国時間3月6日に上院議員と議論する予定だと述べている。「DoorDashのタスクフォースは、新型コロナウイルスの拡散に対抗して、コミュニティ全体の安全を保護するための、包括的な戦略の策定と実施に積極的に取り組んでいます」とDoorDashの広報担当者は述べている。「消費者の皆さま、配達員(Dashers)、そしてお店の方々に対して最新の公衆健康ガイドラインの提供を続けます。そして、アプリを用いてドアの前のどこに食べ物を置けば良いかを指定できる配達指示機能が使えることを、影響を受ける地域で周知しようとしています」と続ける。

また、非対面配達オプションの提供を開始したPostmatesは、米国疾病予防管理センター(CDC)からのガイダンスが更新されるたびに、その情報を労働者たちと共有すると述べている。さらにPostmatesは、同議員に対して「当社の柔軟な労働力の福利に投資する」計画を説明する予定であると述べた。

「コミュニティの健康と安全はPostmatesにとって最優先事項です。最新の予防措置を認識して貰うために、私たちはCDCの予防ガイダンスを配達を行う方々に向けてアプリ内で発信し続けます」とPostmatesの広報担当者は声明の中で述べている。「またPostmatesは本日、非対面でのお届けを指定するオプションも発表しました。私たちは引き続き、従業員、商店、消費者の皆さま、およびコミュニティのすべての方々が、手を洗ったり、調子が悪いときには外出を控えるといった、安全プロトコルに従うことを奨励して行きます」と続けた。

GruhHubも同様に、ドライバー、消費者、そしてレストランパートナーの、健康と安全に焦点を合わせていると述べている。「私たちはドライバーの安全性と福祉に対するワーナー上院議員の懸念を共有し、これらの重要な問題について上院議員と積極的に協力して行きます」と広報担当者は声明で述べている。

ギグエコノミー企業たちの対応への注目が集まったこのタイミングは、ギグエコノミー企業の多くがカリフォルニア州のギグワーカー保護法に対して対抗しようとしているタイミングに重なっている(この法律によって、企業はその労働者を独立請負業者として扱うことが難しくなる)。もし労働者たちがW-2従業員として分類された場合には、ヘルスケアや有給休暇などが与えられることになる。

ギグエコノミーの外の世界を見れば、例えばMicrosoft(マイクロソフト)やFacebookのような企業は、この方面に対してより積極的に行動している。たとえばマイクロソフトの場合、新型コロナウイルスの懸念によって仕事ができない場合でも、その時間給労働者に対して、通常の賃金を支払うことを約束している。Facebookも、マイクロソフトの発表後まもなく、懸念のあるこの時期に働けない臨時職員たちへの支払いを約束した。 SXSWも最近会議をキャンセルしたばかりだ。

TechCrunchはInstacartに連絡を取っている。なんらかの回答があれば記事を更新する予定だ。

画像クレジット: DoorDash / file photo

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(翻訳:sako)

Uberがエンジニアリングおよび製品チーム全体で435人を解雇

Uber(ウーバー)は米国時間9月10日、製品およびエンジニアリングチーム全体で435人の従業員を解雇したと発表した。合わせると、レイオフは両チームの約8%を占めることになるが、170人が製品チームを去り、265人がエンジニアリングチームを去る。

内情に詳しい情報筋によると今回のレイオフは、Uberの稼ぎ頭であるEatsや、Freightには影響しないという。一方、情報筋によれば、同社は8月初旬から実施されていた製品およびエンジニアリングチームの雇用凍結を解除している。

「今回の変化で私たちが望んでいるのは、日々の仕事をリセットし改善することです。ためらわずに優先度を決め、常にパフォーマンスと俊敏性の高い目標に対して責任を負います」とUberの広報担当者はTechCrunchに対して語った。「現時点では、特に直接影響を受けた人たちは、確かに痛みを感じていますが、これにより技術組織がより強力になり、今後も世界中で最高の人材を採用していけると信じています」。

情報筋によればレイオフの内訳は、85%以上が米国から、10%がアジア太平洋地域から、そして5%がヨーロッパ、中東、アフリカからのものだという。

レイオフは、Uber CEOのDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏が、経営幹部チームのすべてのメンバーに、もしゼロから始められたとしたら、それぞれの組織は現在のように見えているかどうかと尋ねたことに端を発した。

「慎重に検討した後、エンジニアリングおよび製品のリーダーたちは、多くの点でこの質問に対する答えがノーであるという結論になりました」と広報担当者は述べる。

この結論を下したリーダーたちは、最高製品責任者のManik Gupta(マニック・グプタ)氏とCTOのThuan Pham(トゥアン・ファム)氏だ。彼らはチームの規模を見直し、個々人のパフォーマンスだけでなく、重複する役割や仕事を特定し、レイオフされるべき人物を決定した。それが、彼らが製品側では。デザインチームと研究チームにもっと焦点を当てるようになった経緯だ。

「以前は、急速に成長するスタートアップの要求を満たすために、急速かつ分散型のやり方で雇用を行いました」と、広報担当者は語る。「これはこれまでのUberではうまく行っていましたが、現在では2万7000人を超える従業員を世界中の都市に抱えています。私たちは組織のデザイン方法を変える必要があるのです。明確な権限と競合よりも迅速に行動できる能力を備えた、身軽で非常に高いパフォーマンスチームになる必要があります」。

これらのレイオフは、Uberがマーケティングチームから400人を解雇した直後に行われた。2019年第2四半期には、Uberは50億ドル(約5388億円)以上を失った。これは、これまでで最大の四半期損失だ。とはいえ、この損失の多くの部分は5月のIPOによって発生した従業員への株式報酬費用である。今回のレイオフはこの四半期損失に対応しているように見えるかもしれないが、Uberは対話は続いていると述べている。

UberはW-2の従業員をレイオフすると同時に、1099独立請負業者がそのクラスに分類され続けることを確かにするための投資を行っている(ざっくり言えば W-2 が「社員」、1099 が「外注」に相当する)。ギグ労働者保護法案AB-5の審議がカリフォルニア州議会を通過しそうなことを考慮して、Uberは、LyftやDoorDashと並んで、運転手を独立請負業者として扱い続けることを目指す2020年の住民投票への運動に向けて、3000万ドル(約32億円)を投じた。もしAB-5が通過した場合、Uberはコストの大幅な増加を見込むことになる。

Uberは現在、1株当たり33.14ドルで取引されており、IPO時点の価格である45ドルを大きく下回っている。

Uberからの完全な声明は次のとおりだ。

CEOは、経営陣の全員にシンプルだが重要な質問をしました。もしゼロから始めるならば、私たちの組織を現在のようなものとしてデザインしますか?と。慎重に検討した結果、エンジニアリングおよび製品のリーダーたちは、多くの点でこの質問に対する答えは「いいえ」であると結論付けました。以前は、急速に成長するスタートアップの要求を満たすために、私たちは迅速かつ分散型のやり方で雇用を行いました。

これはこれまでのUberではうまく行っていましたが、現在では2万7000人を超える従業員を世界中の都市に抱えています。私たちは組織のデザイン方法を変える必要があるのです。明確な権限と競合よりも迅速に行動できる能力を備えた、身軽で非常に高いパフォーマンスチームになる必要があります

本日私たちは、本来の軌道へと立ち返るための変更をいくつか行いました。その中には、私たちの優先度に応じてスタッフを適切に配置できるできるように、いくつかのチームサイズの縮小を行うことも含まれています。これらは非常に困難な決定でした。なぜならそれは私たちの従業員の一部に、もはや役割を与えることができないということを意味していたからです。特に製品グループで約170人、エンジニアリングで約265人、2つの組織を合わせた約8%がそれに相当しました。

今回の変化で私たちが望んでいるのは、日々の仕事をリセットし改善することです。ためらわずに優先度を決め、常にパフォーマンスと俊敏性の高い目標に対して責任を負います。現時点では、特に直接影響を受けた人たちは、確かに痛みを感じていますが、これにより技術組織がより強力になり、今後も世界中で最高の人材を採用していけると信じています」。

【Japan編集部注]この記事が出た半日後にカリフォルニア州議会上院でAB5法案が可決された。

関連記事:Gig worker bill, AB5, passes California State Senate (未訳)

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(翻訳:sako)

Uberの第2四半期は5500億円超の赤字、収入も予測に届かず

米国時間8月8日、Uberは4月から6月にかけての四半期決算を発表した。株式を上場してから2回目の四半期決算報告だが、31.6億ドル(約3343億円)の収入に対して52億ドル(約5500億円)の損失を計上した。

Uber(NYSE: UBER)の株価は、決算発表直前には9%アップして42.98ドルで引け、45ドルという上場時の目標価格にかなり近づいた。しかし第2四半期の巨額の赤字が発表されると時間外取引で11%急落している。

52億ドルの純損失というのはUberの四半期赤字額の新記録だ。収入は対前年同期比で14%しかアップしていない。これが成長の遅さという懸念を再燃させている。Uberでは第2四半期の損失の大部分は上場にともなう株式による報酬支払によるものと説明している。4月の上場に際し社員報酬を株式で支払ったことが原因だという。しかし報酬分を別にしても同社は13億ドルの損失を出しており、第1四半期の損失より30%アップしている。

アナリストは1株あたり3.12ドルの損失と予想していたが、発表は4.72ドルとこれを大きく上回った。 CNBCによれば、アナリストは収入を33.6億ドルと予測していた。これも実際の額は2億ドル少なかった。

Uberの最高財務責任者であるNelson Chai(ネルソン・チャイ)氏は四半期発表の文書中で「我々は引き続き全力で成長に向けて投資していくが、 同時に成長の健全性も追求する。今四半期、我々はこの方向に向けて大きく前進することができた」と述べている。

Uberは4月の上場以後、波乱の道を歩んできた。ビジネスモデルを確立できないため株価は低迷し、同社は経費節減と効率化のために1200人のマーケティング部門の人員の3分の1にあたる400人のレイオフ実施せざるを得なかった。

Uberの赤字が累積していく中、米国における強力なライバルのLyftが四半期決算を発表、 8億6700万ドル(約917億円)の収入に対して6億4400万ドル(約680億円)の純損を計上した。収入は昨年の第2四半期の 5億500万ドルから大きくアップし、アナリストの予想を超えた。昨年動機の純損は1億7900万ドルだったのでこちらも大幅に拡大している。決算発表後、Lyftは3%のアップの62ドルで引けた。しかし同社が「上場にともなうインサイダーの株式売買禁止は1月以上早く解除される」というニュースを発表した後、時間外取引で値を下げた。

UberによればUber EatsのMAPC(月間アクティブ・プラットフォーム・クライアント)数は前年同期比で140%成長したという。実数ではUberを利用するレストランの実数は32万店舗となった。収益については、72%増加して5億9500万ドル(約630億円)に達した。

Uberの2019年Q2の収益報告書はこちらで確認できる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクが出資する自動車サブスクのFairが国際派人材を獲得して業務拡大へ

ソフトバンクが出資し、Uberと密接な関係を持つ自動車サブスクリプションのスタートアップであるFairは、ビジネスの重要部門をリードする人材をスカウトしたことを発表した。

今回テクノロジー、ベンチャーキャピタル、自動車業界出身の新しいトップが就任したのはサブスクリプションアプリ、財務、Uberとのリース契約を担当する部門だ。Fairはこれにより、Uberとの提携を進化させ、北米以外にもネットワークを広げようとしている。

Jay Trinidad(ジャイ・トリニダッド)氏は、Google、Discoveryなどで幹部を務めた経験があり、最高プロダクト責任者となった。同氏はアプリ開発をはじめとしてテクノロジーと業務開発全般を指揮する。
TrueCarの前・最高財務責任者であるJohn Pierantoni(ジョン・ピエラントーニ)氏は財務および財務リスク担当の上級副社長に就任した。

Uber関連事業を担当することとなったPat Wilkison(パット・ウィルキンソン)氏はベンチャーキャピタルであるExponential Partnersのジェネラルパートナーで、ExponentialはFairの最初期からの投資家だ。

3人のエグゼクティブのスカウトに成功したこと創立後3年となるスタートアップにとって大きな意味がある。これにより同社はCaaS(カーアズアサービス)というコンセプトを消費者に納得させるための大きな一歩を踏み出した。自動車といえば消費者はローカルの自動車ディーラーから購入するかリースすることが普通だった。これに対してFairは、15億ドルという巨額の資金に加えて、サービスのプラットフォームだという点がセールスポイントだ。

ファウンダーでCEOのScott Painter(スコット・ペインター)氏はTrueCarのファウンダーで前CEO、自動車リースの専門家だ。他の共同ファウンダーも通販、金融などの専門家だ。同社は現在大きく普及したギグ・エコノミーの考え方をベースに自家用車の柔軟な利用方法を提案しようとしている。

Fairは伝統的なリース形式を革新してユーザーにさらに広い選択肢を提供することを目標としている。法的にはリースの一種だが、ユーザーは自由に自動車をチェンジできるなど自由度の高いサブスクリプション契約を結ぶ。

この事業をスケールさせるには巨額の資金を短時間で投資することが必要であり、「スカウトした3人はこれを実行するのにうってつけの人材だ」とペインター氏は考えている。

ユーザーがFairを利用する上でCaaSインフラそのものに加えて、決済方法、資金プランニングの構築が必須となる。各部門のトップに迎えた人材はアメリカ国内はもちろん世界を舞台にアグレッシブに活動し消費者の自動車所有のコンセプトを変えていくという。

今回の採用は我々も報じた3億8500万ドル(約410億円)という超大型の資金調達に引き続くものだ。このシリーズBはソフトバンクがリードし、Exponential Ventures、Munich Re VentureのERGO Fund、 G Squared、CreditEaseなどの投資家が参加している。

ペインター氏は声明で次のように述べている。

3億8500万ドルのシリーズBを完了したことで、我々は自動車などの資産を購入すると同時に優秀な人材をスカウトし、市場に対する洞察を深め、リーダーシップを強化することができるようになった。ジャイは豊富な経験により実施面でのリスクを最小化し、事業運営の戦略を立てる。パットは投資家だが、今回我々の十字軍に参加してくれた。ジョンは世界でもトップクラスの財務会計の専門家であり、我々のサブスクリプションと自動車損害保険のシステムを堅実な基盤の上に構築してくれるものと信じている。

Fairは2018年1月に、Xchange Leasingの契約中のリース資産とサービスを買収した。このスタートアップはUberが2015年に設立したもので、自分車を所有していないドライバーがUberに参加しようとするとき新車ないし新車に準ずる中古車をリースすることが目的だった。

このXchangeのリース部門はFairの事業の基礎をなすといってもいい大きな意味がある買収だった。現在Fairが保有する自動車の45%はUberのドライバーが使用しているという。

Fairは事業の国際展開にも強く期待しており、新しい最高プロダクト責任者のトリニダッド氏はTechCrunchのインタビューに対し、「来年は海外への事業拡大に力を入れていく」と語った。Fairはまだ具体的にどの国か明らかにしていないが、トリニダッド氏はGoogleやディスカバリーチャンネルなどで海外に長く駐在し国際経験が豊富だ。こうした経歴を考えるとFairの国際展開のターゲットはまずアジアとヨーロッパになるだろう。

トリニダッド氏は「全力でビジネスを拡大する。近くもっと大きなオフィスに移る予定だ」と述べ、またビジョンを次のように語った。

ロサンゼルスとサンフランシスコでは1年以内に「自動車がいるなFairからサブスクリプションすればいいじゃないか」と人々が言うようになるはずだ。われわれはサブスクリプションが購入、リースに次ぐ第3のオプションになるものと期待している。

画像: Justin Sullivan / Getty Images

【Japan編集部追加】 LinkedInによれば、Jay Trinidad(ジャイ・トリニダッド)氏はGoogle Asia Pacific、日本マクドナルド、Square、翻訳スタートアップのGengo、Discoveryなどの幹部として長く東京に駐在している。このことから考えるとFairはまず日本に進出する可能性がある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ギグエコノミーの隆盛を受けロンドン発のインシュアテックZegoが45億円を調達

ロンドンを拠点とするスタートアップのZegoが、ギグエコノミー労働者たちのための保険の必要性に気付いたのは数年前のことだ。そして同社は、当時Balderton Capitalが主導するシリーズAで600万ポンド(約8億1000万円)を調達した。その最初の保険商品は、食料配達人たち向けの従量制のスクーターならびに自動車保険だった。

今回同社は、欧州のインシュアテック(保険テック)スタートアップとしては最大規模である4200万ドル(約45億円)のシリーズB調達を、欧州全域をカバーするフィンテック並びにモビリティに特化した専門ファームであるTarget Globalの主導によって行った。同シリーズの支援者の中にはTransferWiseの創業者であるターベ・ヒンリクス(Taavet Hinrikus)氏も入っている。調達された資金は、Zegoのヨーロッパ全域での拡大と、従業員数を75人から150人へと増やすために使われる。

この調達によって同社の調達総額は5100万ドル(約55億2千万円)となり、既存の支援者であるBalderton CapitalならびにDST Globalのトム・スタッフォード(Tom Stafford)氏に、Latitudeが新たに投資家として加わった。この投資は、同社が過去12カ月間で10倍になるという、途方もない成長を遂げたことによって行われたものだ。

Zegoは、配車サービス、相乗りサービス、カーレンタル、そしてスクーターシェアリングといった新しいモビリティサービスの要求に応えるかたちで、従来の保険よりも柔軟な分刻み契約から年間契約に至る、さまざまな種類の保険ポリシーを提供している。保険料は車両から得られる利用実績データに基いて計算される。

これが意味することは、スクーターや車を使う配達人たちや、乗り合いやタクシーサービスの間で人気が高まっているということだ。同社は現在英国の食品配達市場の、3分の1の保険を担っている。その大きな部分はDeliveroo、Just Eat、およびUber Eatsとの提携を通したものだ。

ZegoのCEOで共同創業者であるステン・ザール(Sten Saar)氏は、次のように述べている。「私たちが3年前にZegoをゼロから立ち上げたときには、私たちのミッションは、急速に変化しつつある輸送業界の状況を真に反映した商品を生み出して、保険業界を変革することでした。世界はますます都市化が進み、そのことによって、従来の車両の『所有権』は、共有される『使用権』へと変化しています。これは、何百年もの間存在してきた、硬直した保険モデルが、もはや目的に適さないということを意味しています」。

Target Globalのリード投資家であるベン・カミンスキー(Ben Kaminski)氏は、次のように述べている。「新しいモビリティサービスの成長を受けて、Zegoは保険市場に大きな隙間を見出し、それを埋めるために独自のビジネスモデルを編み出しました。この会社の可能性はほぼ無限です。そして英国内での成功は、今後数年のうちにヨーロッパ全域はもちろん、その先へと反映されていくことでしょう」。

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(翻訳:sako)

Uber Blackが「寡黙な運転手モード」を開始

お喋りな運転手にうんざりしていないだろうか?とうとうUberは、ユーザーたちに最も要求されてきた機能を提供する。乗車中に必要最小限の会話しか行わないように、アプリ内で要求する機能だ。この「Quiet Mode」(静寂モード)機能は無料で、米国時間5月16日から米国内で利用できるようになるが、利用できるのはUber BlackとUber Black SUVのプレミアム乗車のみであ。Uber Blackは、資格を持ったプロ運転手がやって来るサービスだ。

ユーザーは「Quiet preferred」(静寂を優先)または「Happy to chat」(お喋り歓迎)を選択するか、もしくは「No preference」(指定なし)のままにしておくことができる。こうした静寂への欲求は、仕事をしたり、昼寝をしたり、電話をかけたり、あるいはただ車の中でリラックスできることを求める、より多くの人たちに、より高いUberのタイプを選ばせる動機となるかもしれない。

Quiet Modeは、ユーザーがUber BlackやSUVを配車する前に指定できるRider Preferences(乗車時お好み設定)機能の一部である。ただし既に配車を待っている最中や乗車中には設定することはできない。またBags(荷物)オプションを使うと、利用者は荷物を持っていることを知らせることができるので、運転手は荷物をトランクに積み込むことを手助けできる場所に車を停めることができる。Temperature(温度)は室内の温度の寒暖をリクエストすることができる。これを使って運転手は、エアコンを操作すべきかどうかを知ることができる。

これからUber Blackの運転手は到着後ユーザーを15分まで待つことになる(乗車がなければその後キャンセル)。これはプライベートカーサービスとしては標準的なものだ。ただし到着と同時に課金は始まり、5分以上経った時点から実際の支払い義務が発生する。また技術的には、必要ならいつでもUber側から待機を中止しキャンセルすることができる。

Uber Blackユーザーは、Uber Rewardsの最高グレードであるDiamondメンバーのように、プレミアム電話サポートを受けることができる。そしてUberは、この先運転手たちがUber Blackに登録するためには、より良いそして新しい車を要求するようになる。「より多くの乗車を促進するために、私たちはプレミアムサービスと普通のサービスの間の差別化を図りたいと考えています」と筆者に語るのは、Uberプロダクトマネージャーのアイディーン・ファジャール(Aydin Ghajar)氏だ。特にQuiet Modeは「人々が長い間求めていたもの」であり、お喋りな運転手は多くのジョークのネタにされてきた。

私はQuiet Modeはおそらくヒットすると思う。なぜなら私はこの機能を昨年7月にも提案したし、昨年末のウィッシュリストの中でも、「Quiet Ride Mode」(静寂乗車モード)をUberが提供してくれるように要求していたからだ。多くの男性読者から寄せられたフィードバックには、フレンドリーな運転手とお喋りするよりも酷い状況はあること、そして彼らに沈黙せよと要求するのは、乱暴もしくは非人間的な扱いだというものがあった。

しかしその意見は、男性の運転手がひっきりなしに話しかけてくるときに女性客がしばしば感じている不快な気持ちを無視したものだ。そして運転手がハンドルを握っていることを考えると、もしそれが望まない馴れ馴れしいアプローチへと変わるようなら、恐ろしいことになる可能性もある。多くの場合乗客は、その場で会話を拒否したり、静かにするように大声で制することを、失礼だと思ったり、恐ろしく感じたりするだろう。だからこそ、私はUberがこれを、UberXだけでなく国際マーケットにも拡大を計画してくれることを期待しているのだが、同社はそのことについては何も語っていない。

Uberのファジャール氏は次のような話も明かした、「Uber Blackの運転手の方々からの反応は、圧倒的に前向きなものでした。皆お客様に素晴らしい体験を提供したいと願っているのに、お客様が望んでいることを必ずしも知ることができなかったからです。彼らは、顧客サービス担当者として何をできるのかに対して、大いなる誇りを抱いているのです」。

Uberは、この機能を開発するのにかかった3カ月の間に、運転手たちの認識について詳細な調査を行った。しかし、雇用法の定めるところによれば、実際には運転手たちをユーザーのリクエストに応えさせるように沈黙させておくことはできない(とは言え、もしリクエストを無視したならば良くない評価はつくだろう)。ファジャール氏は以下のように強調した「これは強制ではありません。運転手は独立した請負業者だからです。私たちは単に乗客の好みを伝えているだけです。運転手はその情報を手にした上で、望む行動をとることができます」。

多くの場合UberX(通常のUber)の2倍、そしてUberPool(乗り合いUber)の3倍を超えるUber Blackのプレミアム配車の価格を考えると、Uberは乗客にアップグレードを促すことで、よりたくさんの収益を得ることができるようになる。先週のぱっとしないIPOが株価の下落を招いているこのタイミングでは、必死に利益率を改善し損失を抑えることがとても重要である。世界中には非常に多くの競合する乗物サービスがあるため、Uberにとっては、より多くの自動車を集め、より安い価格を提供し、そしてより精密なアルゴリズムを生み出すというコストの掛かる努力をするばかりではなく、顧客サービスの差別化に取り組むことが賢明だ。

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(翻訳:sako)

Lyftがドライバー向けカーレンタルプログラムを強化

最近Lyft は、米国内における車所有台数を減らしたいというメッセージの発信に力を入れている。その反車両所有運動の最新の例が、カーレンタル会社であるAvisとの提携だ。

複数年契約の一部として、AvisはLyftのExpress Driveプログラムに数千台もの車両を追加する。同プログラムはこれまでもHertz、Flexdriveからドライバーたちに週単位で車をレンタルしてきたが、これにAvisが加わった。

LyftのCOOであるJon McNeillは「Avis Budget Groupとの提携によって、新規ならびに既存のドライバーの皆さんに、より高品質なオプションを車両選択時に提供できるようになります」とプレスリリースで語っている。「そしてより多くのドライバーの方がご自身の車を手放すに従って、Express Drive programが拡充し、Lyftを介してお金を稼ぎ続けることが可能です」。

これは、Teslaの元ワールドワイドサービスならびにカスタマーエクスペリエンスサービス担当副社長だったKarim Boustaが、Lyft Express Driveの責任者に着任した直後の決定だ。Boustaはまた、LyftのドライバーサポートセンターであるLyft Hubの、次世代版を立ち上げ、拡大する役割も担当している。彼はまた、ドライバーへの報酬とインセンティブを強化することも任されることだろう。

Uberも同様に、Hertz、Getaround、そしてFairを通じ、週単位、日単位でのカーレンタルを提供している 。UberはGetaroundとのパートナーシップをさらに拡大して、誰でもUberアプリを介して個人利用のために車を借りることができるようにした。Uber Rentと呼ばれるこのプラットフォームは、インスタントレンタルに利用可能なGetaroundの既存の車市場を活用している。

5月にLyftは、より安価なオイル交換、基本的な車のメンテナンス、カーウォッシュその他でドライバーたちをより良くサポートするために、1億ドルを拠出することを約束した。Lyftはまた、全国15都市のドライバーハブの営業時間を倍にする予定だ。

このコミットメントによって、ドライバーたちはより多くのお金を稼ぐことができ、運転コストを下げることで儲けを最大化することができる。その他のメリットとしては、SUVレンタル、税教育などが含まれている。

Lyftはまた、今後5年間でドライバ数を2倍以上に増やす予定だと述べている。現在Lyftには、最新の経済影響報告書によると、140万人の運転手が登録されている。

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(翻訳:sako)

画像: Patrick T. Fallon/Bloomberg via Getty Images

車を所有するよりもUberを使ったほうが安上がりな都市は?

ライドシェアリング企業は、これまでずっとプラットフォーム利用のコストメリットを宣伝してきた。Kleiner Perkins Caufield Byers(KPCB)のパートナーであるメアリ・ミーカーが書いた、2018年版インターネットトレンドレポートによれば、都市によっては、毎週UberXもしくはUberPOOLを使うほうが、自分で車を所有するよりも安上がりになるかもしれない。

実際、米国の5大都市のうち4都市では、車を所有するよりもUberに頼ってしまった方が安いのだ。Meekerの分析では、ガソリン、自動車保険、メンテナンス、そして駐車料金のコストが考慮されている。

というわけで、もしニューヨーク、シカゴ、ワシントン、DC、あるいはロサンゼルスに住んでいるならば、Uberを使った方が安い。しかし、これはダラスでは成り立たない。この都市では車の所有によってかかるコストが毎週65ドルであるのに対して、Uberのコストは毎週181ドルに達するからだ。

ミーカーの報告書はまた、米国におけるオンデマンド労働者の増加も注目している。報告書によれば、昨年米国内には540万人のオンデマンド労働者がいた。今年はオンデマンド経済で働く労働者は、680万人と推定されている。

ミーカーはこれを「大きな数字である」(big numbers)と表現した上で、これらのタイプの仕事が、人びとの収入を補完し、より柔軟性を高め、ワークライフバランスを向上させていると指摘している。

スライドの全体の概要は以下の記事で読むことができる。

メアリ・ミーカー、恒例のインターネット・トレンドを発表――全スライドと重要ポイント要約

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(翻訳:sako)

写真クレジット: Spencer Platt

Thumbtackはオンデマンドサービスマーケットをどのように勝ち取ったのか? ―― 答:すべてを扱うことによって

本日(米国時間5月5日)、サービスマーケットプレイスであるThumbtackが、サンフランシスコのイベントスペースに最高のギグエコノミーワーカー300人を集めて、小さな会議を開催した(ギグエコノミーとはインターネットを介して一時的な仕事を請負う労働形態のこと)。

ほぼ10歳になるこの企業にとって、このイベントは新しい機能の紹介や、週の頭に行われたブランドの再デザインについての説明を行うためのものだった。米国内の各地から自腹で参加したサービスプロフェッショナルたちに加えて、同社のトップエグゼクティブたちも参加した。

それはThimbtackが消費者向けのサービスマーケットプレイスの1つとなるために取った長い道のりの最新の1歩だった。

2008年といえば、世界的な金融危機が米国の経済を引き裂き始めたところだった。ThumbtackやTaskRabbitのような企業の起業家たちは、既に可能性に向けて必死に努力していた。

これが現在、ギグエコノミーとして知られているものの始まりだった。ThumbtackとTaskRabbitに加えて、HandyZaarlyなどの若い企業たちが、サービスの買い手と売り手のための、より良いマーケットプレイスの開拓を試み始めた。結果的に彼らの始めたタイミングは、先見性のあるものだった。

雪の多いボストンの2008年の冬、Kevin Busqueと彼の妻Leahは、やがてTaskRabbitという名前になるマーケットプレイスRunMyErrand(私の用足し)を開発していた、ドッグフードを買うために雪道の中を苦労して出歩かなくても良いようにしたいというのが動機である。

一方、サンフランシスコでは、両親がLogitechの創業者である若き起業家Marco Zappacostaが、仲間の共同創業者たちと共に、プロフェッショナルサービスのためのマーケットプレイスであるThumbtackを、彼らがシェアしていた自宅兼事務所で立ち上げていた。

これらの起業家たちがカリフォルニア北部で事業を開始したとき(ちょうどGoogleやSalesforce.comのような企業への投資を経て、裕福になった後援者たちによる、テクノロジールネッサンスの初期段階だった)、米国の他の地域は苦しみ始めていた。

2008年から2010年までの2年間で、アメリカの失業率は倍増し、5%から10%に上昇した。銀行、保険会社、不動産業者、請負業者、開発業者、小売業者のすべてが縮小したため、プロフェッショナルサービスを提供する人たちは特に深刻な打撃を受けた。最悪なローンや投機的な不動産市場の下で経済が崩壊したために、企業が大規模なレイオフを行っていた。

Thumbtackの創業者たちは、13億ドルの評価額を手に入れ、最後に行った1億ドル以上の資金調達ラウンドにたどり着くまでには、数々の困難を味わった。「チームのことで本当に印象的だったことの1つは、彼らがとても痩せていたことですね。その頃には自宅は出ていましたが、それでも彼らはまだ一緒に食事を作っていました」と語るのは、同社の最も初期の投資家の1人で、数十億ドル規模のベンチャーファームであるFounders Fundのパートナーを務めるCyan Banisterだ。

彼らが実際にお金を使っていたのは食べ物だけでした…そうした点が彼らが贅沢ではなかった事を示すのですが、とにかく使う1ドル1ドルに対して彼らは目的を厳しく吟味していたのです」とBanisterは語った。「彼らは基本的に仕事場で眠り、ソファーの下に転がっているという、典型的なスタートアップストーリーを体現していたのです。最初の何年かはほとんど変わりがありませんでした、私たちはCraigslist(有名な汎用マッチング掲示板サービス)を真似しながら、徐々に注目を集めて行きました」。

Craigslistをより強力にして、マーケットプレイスモデルで置き換えていくというアイデアは、Thumbtackの最も初期の投資家かつ擁護者であり、連続起業家であり、そしてエンジェル投資家でもあるJason Calcanisにアピールした。

ThumbtackのCEO Marco Zappacosta

「Marcoが私にThumbtackを見せてくれた日を、まるで昨日のように覚えています。これを見た私はこう尋ねました『で、何故これを作ったの?』と。それに彼はこう答えたのです『まあ、何かを探しにCraigslistに行ったとしますよね、それが全く運任せだってことはご存じだと思います。投稿してもどうなるかわからない。投稿を読んでも、その人が一体いい人なのか悪い人なのかも良くわからない。レビューがないのですから』」とCalanisは言った。「彼はディレクトリを作っていました。それは現在のアプリで目にするようなワークフローではありませんでしたね、それが変わったのは確か3年目でした。しかし最初の3年間は、彼はディレクトリを作っていたのです。そして、彼は私に人物写真、提供しているサービス、人物紹介が掲載されたディレクトリのページを見せました」。

最初の3年間は、サービスベンダーのリスト作りに費やされていたのだ。これらのベンダーは住所の実在、免許の所有、そしてある種のサービスを必要としている人たち向けの保険加入済であることが確認されていた。Calcanisにとっては、それらの3つの項目が確認されていることが、取引を検証し最初の投資の銃爪を引くために必要なことだった。

「それが、私のエンジェル投資に対する個人的理論が完成した瞬間でした」とCalcanisは語る。

「マーケット至上主義の人もいます、また特定の年代や、文化的集団に対して投資しようとする人もいます、移民の子らとかスタンフォードの学生とか、何でも。私の場合は単に『本当に興味深いプロダクトを作ることができますか?検討しているプロダクトについて決定したことは何ですか?』という問いかけです。そして、私たちがそうした決定事項について議論している際に、相手が世界のためにこのプロダクトを作るべき人間であるかどうかを感じられるか否かなのです。ちょうど、私がMarcoの頭上に大きな看板が浮き上がるような気がしたようなものです。そこにはこう書かれていました『勝者!勝者!勝者!』と」。

確かに、Zappacostaと彼の会社は現在、非公開企業として、成功した10年目を迎えようとしているようだ。Thumbtackは2019年までに黒字に転換する予定であり、過去6ヶ月間に多数の新製品を投入してきた。

彼らの命題は、顧客が求める可能性のある、あらゆるサービスのリストを米国のあらゆる場所で提供するプロダクトを開発するという、一般通念からすると途方もないものだった。HandyやTaskRabbit などの他の企業は、家庭向けの用途に集中していた。しかしThumbtackでは(良いコミュニティの掲示板がそうであるように)、利用者はあらゆるものに関する投稿を目にすることが可能である。たとえば修理工から気功のレッスンやマジシャン、そしてミュージシャンなども、家庭の修繕サービスと共に見ることができて、いまやリストは膨大なものとなっている。

「面白いことに、私たちが昔書いたビジネスプランとドキュメントがあるのですが、私たちがその時にアウトラインを考えたビジョンは、現在社会で求められているものと非常に似通っているのです。その当時私たちは、周囲を素直に眺めてこう考えたのです『私たちは膨大な数の人たちに影響を及ぼす問題を解決したいと思っている。地元のサービスデータベースはとても非効率的だ。頼りになって信頼できる人材を適切な価格でみつけることは本当に困難なのだ』」と同社の共同創業者であるSander Danielsは語った。

「プロフェッショナルにとって最大の関心事は『次はどこでお金を稼ぐことができるのか?、次はどうやって家族のために食べ物を食卓の上に並べれば良いのか?』なのです。そこで私たちは『これこそがリアルな問題だ。これらの人びとをテクノロジーで結びつけられたらどうだろう?周りを見回すと、Amazon、Ebay、Alibabaのようなプロダクトのための世界的マーケットプレイスが既に存在している。それならサービスのための世界的マーケットプレイスが存在しても良いのでは?』と考えたのです。その時に、そんな事を言うのはまるで狂ったように聞こえましたし、今でもそうです。しかしそれこそが私たちの実現したかったことなのです」。

Danielsは、同社が製品の方向性、マネタイズの方法、そして発生する問題に対処するためにやり方を修正してきたことは認めたが、そのビジョンは変わっていないと述べた。

一方、マーケットの他のスタートアップたちは、焦点をシフトしている。実際に、Handyはよりプロフェッショナルなサービスモデルに移行し、TaskRabbitはIkeaによって買収されたため、Thumbtackはその独立性を活かし、サービス提供者と顧客のマッチングをより簡単にする自動化ツールの提供によってそのマーケットプレイスを強化することに賭けることにした。

昨年末には、同社は顧客の要求に対してサービス候補を自動的に選び出してくれるツールを立ち上げた。サービスプロバイダーたちは、顧客が同社のアプリやウェブサイト上で行う検索に対して生み出されたきっかけに対して支払いを行う(訳注:具体的には発行した見積に対して、具体的なコンタクトが顧客側からきたときに1度だけ支払いが発生する、見積の発行自身は無料で、見積後の最初のコンタクト以降のメッセージのやりとりなども無料である)。

Thumbtackは、約1000の専門分野に広がるサービスプロバイダーが提供する、年間およそ10億ドルのビジネスを処理している。

いまや、消費者側のマッチング機能がアップグレードされつつある。今月初めに、同社は(そのウェブサイトとモバイルアプリの新しい外観と共に)Instant Resultsを公開した。これはその20万人のサービスプロフェッショナルの中から最もサービスの要求に対応する30人のプロフェッショナルを選び出すというものである。Zappacostaによれば、それは様々なサイトの上で、最高に評価されたプロフェッショナルたちだということだ。次に大きな規模を持つ、競合相手であるYelpは、年に11万5000件の登録がある。Thumbtackのプロフェッショナルたちは90日単位で区切られている。

価格、場所、ツール、そしてスケジュールでフィルタリングすることで、米国内の誰もがニーズに合ったサービスを見つけることができる。これは、異なる職種にわたり9年間におよそ2500万件のサービスリクエストを処理してきた結果の集大成である。

“buy”(購入)と”sell”(販売)のタブがあった最初のバージョンのThumbtackから、ここに至るまでは長い道のりだった(その頃”buy”サイドではローカルサービスを依頼することが可能で、”sell”サイドではその提供をすることが可能だった)。

「非常に早い時期から…デザインは、ビジネスリスティングディレクトリの従来のモデルを超えて繰り返し改善されてきました。そこでは、消費者が探しているサービスを私たちに伝えることが可能で、私たちはそれを受けて適切な人を探して紹介するのです」とDanielsは言う。「この見積もり依頼の機能は、プロダクトの最初のバージョンから組み込まれてはいました。しかしそれを使おうとしてもあまり上手く働きませんでした。当時はプラットフォームが接続してくれる先のビジネスはありませんでした。沢山のバグがあったと確信していますが、もちろんUIとUXも最悪でした。それが少くとも私が覚えている最初のバージョンです」。

それは最悪だったかもしれないが、120万ドルのエンジェルラウンドを行う程度には魅力的だった。単にプロダクトを開発するためには十分だったのだ。この100万ドル投資は、ベンチャーキャピタルが他の投資家たちと同様に一斉に手を引いた米国の景気後退による「核の冬」の間、会社を生き延びさせた。

「シリーズAラウンドで投資してくれる人たちを探そうと、私たちはひたすら歩き回っていました」とDanielsは語った。「それは会社にとって極めて厳しい時期でした。誰も私たちに投資しようとしなかったので、ほとんどビジネスも終わりかけていたのです」。

これは同社が収益化を始める前の期間の話である、このとき同社は4つの収益モデルを実験しており最終的に最も優れていた収益モデルを選んだ。最初はサービスは無料で、その後ゆっくりと手数料モデルに移行したのだ。その後、同社はサブスクリプションモデルへと移行した。サービスプロバイダーはThumbtackによってもたらされたきっかけに対して、一定の金額を支払うことになった。

「私たちはループを閉じることができませんでした」とDanielsは語った。「手数料モデルが上手く行くには、誰が、いつ、幾らで仕事を請け負ってくれるかがわからなければなりません。こうした情報を収集する方法には、いくつかありますが、最良の方法はプラットフォーム上で支払いを行ってもらうことでしょう。実際2011年と2012年にはプラットフォームに支払い機能を入れました。相当な取引量がありましたが、それぞれ18ヵ月後、そして24カ月後までにはそれらのやりかたを止めることにしました。結局手数料で稼ぐという方法への見切りを付けてしまったということでしょうかね」。

Thumbtackはその骨格を作ることに苦労していたが、その一方でTwitter、Facebook、Pinterestは現金をかき集めていた。創業者たちも同じようなやり方でマーケットにアクセスできると考えていたが、投資家たちは広告ではなく取引が必要な消費者向けのビジネスには興味を持っていなかった。ユーザー生成コンテンツ(UGC)とソーシャルメディアは大流行していたが、Uber Lyft を除いて、マーケットプレイスモデルに対する裁定はまだ下っていなかったのだ。

「その当時、FacebookでもTwitterでもPinterestでもなかった私たちの会社にとって、少くともマネタイズが可能であることを示す、何らかの収益が必要とされていたのです」とDanielsは語る。「私たちは膨大な数のプロフェッショナルに登録してもらう方法を見出し、顧客もまたプラットフォームにやって来るようになりました。これは本当に有望であることを示すサインでした。私たちは『やった、人気が出てきたぞ。本当に収益を挙げられるようになりそうだ』と喜びました。しかし、私たちの経験不足、収益モデルの欠如、おそらくたくさんの理由から、私たちにお金を払おうとするひとはいませんでした」。

Danielsによれば、同社は2011年の秋までは収益モデルに注力していなかった。その後、拒絶に続く拒絶を受け続けて、創業者たちは心配をし始めた。「私たちときたら『うわっ大変だ!』と叫んで、2009年11月には収益化のための様々なテストを始めました、なにしろこの先お金を稼ぐことができないかもしれないのです。すぐにでも請求書に対する支払いを行うための資金を調達する必要があったのです」とDanielsは振り返った。

もう少しで壁に激突しそうになった経験は、会社を恐怖のどん底に突き落とした。彼らはJavelinからの投資をなんとか引き込むことに成功したが、創業者たちは資本注入の有無にかかわらず、ビジネスを機能させるためには適切な収益を見出す必要があると思い知った。一連の検討の末に、彼らは35万ドルを事業継続のためのマジックナンバーとして設定した。

「それが私たちが目指す目標基準でした」とDaniels。「私たちが積極的に様々な収益モデルを試したのはこの期間です。そして最終的に、見積の反応に対して課金することにしました。その期間の終わりにSequoiaが投資し、突如プロフェッショナルの供給と消費者の需要と収益のモデルがすべて一緒になって再び(今度は良い意味で)『うわっ大変だ!』となったわけです」”

適切なビジネスモデルを見つけることは、会社が実を結ばずに終わることから救うための1つの手段だったが、それ以外にも少なくとも論理的に思えるアイデアが1つ存在していた。それは家庭向けの修繕とサービス以外のものにも目を向けるべき、というものだった。

同社の家庭部門は、Google向けにサービスの検索優先度を挙げて、結果を出す技術を習得した企業との競争が激しくなっていた。Danielsによれば、同社は当初家庭部門では全く競争できなかった。

「それが…全くの偶然だったのですが、私たちと同じくらい開発が進んでいて成熟していたイベント企業が存在していなかったのです」とDanielsは語る。「私たちはイベントカテゴリーでは人気が出ました。1000にも及ぶカテゴリーを扱うという戦略的決定のお陰ではありますが、過去5年にわたって私たちが国内で確かに大手イベントサービスプロバイダーの1つであったことは偶然の賜物でした。棚ぼたとまでは言いたくないのですが、私たちはこうして競争の激しくない分野に出会い、十分に競争力を持ちビジネスを育てることができたのです。

単一のカテゴリーや単一の場所でのビジネス構築を狙うのではなく、地理的にもサービス的にも幅広いものを目指すことで、Zappacostaと会社が受け入れられるのには長い時間が掛かることになった、しかし一度成長を始めた際には、遥かに広いスタンスと豊かなデータベースを持つこととなった。

「無邪気さと夢見がちな野心から、私たちはこれらをやり遂げようとしているのです。本当にそれ以上の戦略も複雑さもなかったのです」とDanielsは語る。「対象を広げることを決心したとき、私たちは荒野をさまよっていました。それまでに、これほどのことをしたことはなかったのです」。

同社の観点からみたときに、外界(および潜在的な投資家たち)がそのアプローチについて把握していなかった2つの点が存在していた。1つ目は、完璧なプロダクトを出せば単一のカテゴリではより競争力があった可能性もあるものの、完璧ではなくとも十分に良いプロダクトなら、当時マーケットに存在していた酷いUXの製品よりもましだという点だ。「この十分に良いプロダクトでも大企業を作り上げることは可能です、時間とともにより良いものへとどんどん改善して行けば良いのですから」とDanielsは語る。

2番目の点は、対象を広げることで、1つのカテゴリを対象にしているだけでは決してThumbtackの対象にはならなかったようなものも扱えるようになるということだ。カーペットクリーニングから引越しサービス、家の清掃から、パーティ用のバウンスハウスレンタル(バウンスハウスというのは空気を注入して中で跳ねたりすることのできる大きな仕掛け)至るまで、あらゆるものの組み合わせ販売とアップグレード販売が、より多くの繰り返し利用の機会をもたらした。

繰り返し利用が意味することは、一度に必要なサービス従事者がより沢山必要になるということである。そのとき失業率はまだ歴史的な高水準で推移していた。2011年でさえ、失業率は依然として高いままであったし、2013年までに、失業者数が確実に減ることはなかった。

こうしたギグエコノミーの仕事が、この先変化する時代と足並みを揃えて行くことができるのかどうかには疑問が出されている。失業率が景気後退前の水準に戻った今、果たして人びとは健康保険も退職金もない仕事で働き続けたいものだろうか?だがThumbtackプラットフォームが成長を続け、UberとLyftが減速の兆候を見せないことから、その答は「はい」であるように思える。

「その当時の、そして今も残る私の最大の情熱の1つは、ソフトウェアがどのように、意味のある働き方を生み出すことができるかということに対する興味です」とBanisterはThumbtackの取引に関して語った。「それこそが私が探している基準なのです、つまり、それによって人びとが仕事を見つける方法は変化するのでしょうか?なぜなら私は、現在手にしているプラットフォームを使って、私たちは仕事を創出できる、そしてこれまで存在していなかった種類の仕事をも創出することができると信じているのです」。

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(翻訳:sako)