D-Waveが新型コロナ対策用に量子コンピューターへのアクセスを無料提供

D-Waveは、カナダにある量子コンピューティング企業だ。米国時間3月31日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応に取り組んでいる人なら誰にでも、Leap 2と呼ばれる量子コンピューティングのクラウドサービスへのアクセスを無料で提供すると発表した。これは新薬の開発に取り組んでいる人たちだけのものではなく、現在の危機を解決するために働いている研究者、チームなら誰にでも提供される。例えばロジスティクス、ウイルス蔓延のモデル化、あるいは新しい診断方法の開発など、分野は問わない。

D-Waveのプログラムをユニークなものにしているのは、すでに同社と他のプロジェクトで仕事をしている多くのパートナーを巻き込んだことだ。そこにはVolkswagen(フォルクスワーゲン)、デンソー、Jülich Supercomputing Centre、MDR、Menten AI、Sigma-i/東北大学、Ludwig Maximilian大学、OTI Lumionicsが含まれている。こうしたパートナーは、Leap 2を使って新型コロナウイルス危機の解決策を開発しようというチームに、エンジニアリングの専門知識を提供する。

D-WaveのCEOであるAlan Baratz(アラン・バラッツ)氏が私に語ったところによれば、このプロジェクトは約1週間半前に具体化し始めたばかりだという。その会話で同氏は、Leap 2を使用するチームは商用ライセンスを取得することになるので、開発したソリューションをオープンソース化する必要はないという点を強調した。また、通常D-Waveクラウドサービスを利用する際に標準的な、1月あたり1分という制限も課されることがないという。

「Leap 2はハイブリッドのソルバーサービスによって2月26日から利用可能となっています。これはかなり大きな問題を解くことができる量子コンピューティング機能です。現実世界における生産上の問題を解決する規模で、大きな課題を解くことができます」とバラッツ氏は述べた。「そこで私たちは、他に方法がなければ、これはパンデミックへの対応策を考え出そうとしている人たちの役に立つツールとなる可能性があると考えました。そして、これを利用可能にすべきだと考えたのです」。

同氏も、このシステムにアクセスすることになったチームが、実行可能なソリューションを考え出せる保証はないことも承知している。「それでも私たちは、このツールを公開しないのは、怠慢にあたると判断したのです」と述べた。

Leapは現在、米国、カナダ、日本そしてヨーロッパの32カ国から利用可能となっている。それらの国々では、D-Waveのパートナーも活動しており、研究者は同システムを無料で利用できるようになる。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

有力クラウドサービス「Cloudflare」が株式上場を申請

Cloudflareがついに株式上場を申請した。同社は数多くのサイトやサービスがインターネット上で円滑に運営されるために欠かせないクラウド・プラットフォームを提供する有力企業の一つだ。Cloudflareは最近上場が近いという噂が出ていた。また匿名掲示板の8chを排除したことで少なからぬ賛否の議論の的となっていた。

Cloudflareがデビューしたのは2010年に我々が開催したTechCrunch Battlefieldのステージだった。今回、米証券取引委員会に提出されたS-1申請書によれば、暫定企業価値を1億ドルとしているが、実際に株式市場で取引されるようになれば時価総額は数十億ドルとなるのは間違いない。

Cloudflareはウェブサイトやモバイルアプリを誰もが容易に作動させるために欠かせないサービスだ。同社の使命は高速かつダウンタイムなし、あるい最小限のダウンタイムで各種のサービスを動かすことだ。

最近同社が匿名掲示板の8chや人種的偏見を煽ると批判されたDaily Stormerなどのメディアに対するサービスを停止したことで、.激しい政治的論争のただ中に置かれていた。

実際、Cloudflareは8chanは上場にあたってのリスクとS-1申請書で述べている。

経営状態についていえば、他の初期段階のテクノロジースタートアップの例にもれず、 Cloudflareも赤字企業だ。ただしその赤字の率、額はさほど大きなものではなく、成長速度は強い印象を与えるものだ。

証券取引委員会に提出した申請書で同社は次のように述べている。

当社の成長は著しいものがあり、収入は2016年の8480万ドル、2017年には1億3490万ドル、2018年には1億9270万ドルへと拡大した。これはそれぞれ 59%、43%のアップ率に相当する。積極的に投資を続ける中で、純損失の計上は 2016年に1730万ドル、2017年に1070万ドル、2018年に8720万ドルとなっている。今年6月を終期とする上半期の収入は前年同期の8710万ドルから1億2920万ドルへと48%アップしている。純損失は2018年上半期が3250万ドル、2019年上半期が368 0万ドルだった。

Cloudflareは政府による規制と民間企業の動向の双方から影響を受ける立場にある。申請書で詳細に説明されているリスク要因には米中の貿易摩擦が与える可能性のあるネガティブな影響が詳しく検討されている。

クラウドサービスでは今年4月にFastlyがNASDAQに上場を決めている。ただし市場でのパフォーマンスは同社(と投資家)が望むほどの成績を上げていない

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Cloudflareがこれまでに調達した資金の総額は3億3200万ドルで、 投資家にはFranklin Templeton Investments、Fidelity、 Union Square Ventures,、New Enterprise Associates、Pelion Venture Partners、Venrockなどが含まれる。Business Insiderによれば、同社の最後の資金調達ラウンドにおける会社評価額は32億ドルだったという。

同社はNYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場され、ティッカーシンボルはNETとなる予定だ。上場株式引受証券会社にはGoldman Sachs、Morgan Stanley、JP Morgan、Jefferies、Wells Fargo Securities、RBC Capital Marketsが含まれる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SaaSは年平均10%で成長、API連携によるエコシステム構築が進む――スマートキャンプがレポート公開

クラウド会計のfreee、家計簿アプリのマネーフォワード、名刺管理のSansan、ビジネスSNSのWantedly、コミュニケーションツールのChatWorkなどに代表されるクラウドサービス。もはや、これらのサービス名を一度も聞いたことがない人など皆無だろう。TechCrunch Japan読者には、これらのサービスのヘビーユーザーだという人も多くいるはずだ。

また、2016年1月にChatWorkが15億円、2016年10月にマネーフォワードが11億円、2016年12月にはfreeeが33.5億円を調達するなど、近年クラウドサービスを提供するスタートアップの大型資金調達ニュースをよく耳にするようになり、業界内での存在感も年々増している。

そんな中、クラウドサービスの比較サイト「ボクシル」を運営するスマートキャンプは、SaaS業界の全体像やトレンドをまとめた「SaaS業界レポート 2016-2017」を公開した。

SaaS市場は年平均成長率10%のスピードで成長

本レポートによれば、クラウドサービスの普及率は毎年増加しており、2015年末には40%を超える企業がクラウドサービスを利用しているという。なかでも、SaaS市場は年平均成長率10%を超える勢いで成長。2015年はおよそ1兆円だった市場規模が、2020年には1.3兆円になる見通しだ。

特に、デジタルマーケティング、ビッグデータ、人工知能、働き方をテーマとしたサービスは今後大きく成長すると見られている。

導入の決め手はイニシャルコストの低さと運用の容易さ

企業がクラウドサービスを利用する理由を聞いたアンケート結果を見てみると、「保守体制を社内に持つ必要がない」、「どこでもサービスを利用できる」、「初期導入コストが安価」などの意見が多いことが分かる。クラウドサービスならではの、低いイニシャルコストや運用の容易さが導入の決め手となっているようだ。

ただ、逆にクラウドサービスを利用していない理由を見てみると、セキュリティへの不安の声をおさえて「必要がない」という意見が42.9%で一番多い。企業はすでに導入しているオンプレミス型のシステムで十分だと思っているか、もしくはクラウドサービスの魅力や必要性が伝わっていない可能性がある。

クラウドサービスの普及率は、業務の種類や領域によっても異なるようだ。ファイル保管や給与計算などの汎用業務ではクラウドサービスの普及が進んでいる。その一方で、生産管理や決済システムなど、カスタマイズ性が求められる業務では普及が進んでいない。このような領域では、高度なカスタマイズが可能なオンプレミス型に軍配が上がる。

SaaS業界を取り巻くトレンド

本レポートを公開したスマートキャンプは、いまのSaaS業界には6つのトレンドがあると主張する:

  1. エコシステムの構築
  2. プラットフォーム化
  3. Vertical SaaSの台頭
  4. UI/UXの最適化
  5. 人工知能の活用
  6. 新たな脅威・無駄対策(セキュリティなど)

本レポートではSaaSを2つの種類に分けて説明している。業界を問わず特定の部門や機能に特化した”Horizontal SaaS”と、特定の業界に特化した”Vertical SaaS”だ。

マネーフォワードやSansanなどのサービスはHorizontal SaaSに当てはまる。現在はこちらのタイプが業界の主流となっていて、数も多い。もう一方のVertical SaaSの例としては、飲食分野のユビレジや教育のCAMPUS4などがある。スマートキャンプが作成した以下のカオスマップを参考にしてほしい。

Vertical SaaSのカオスマップ

Horizontal SaaS業界はベンダー同士が連携してエコシステムを構築することで付加価値を高める”SaaS 3.0”の時代に突入したとスマートキャンプは主張する。その一方で、スマートキャンプが「台頭し始めている」と表現するVeritical SaaSは、ベンダーが1つのサービスをポイントソリューションとして提供する”SaaS 1.0”から、ベンダーが自社のサービス同士を連携させることで付加価値を高める”SaaS 2.0”へ移行する途中の段階だとしている。

実際、Horizontal SaaSに属するマネーフォワードは、他のHRサービスと連携できるようにAPIを公開しているし、メガバンクが公開する「更新系API」を活用した機能を実装している。

これが本レポートが言うところの「エコシステムの構築」と呼ばれるトレンドだ。つい先日の5月26日、更新APIの利用を促す内容が盛り込まれた改正銀行法(概要PDF)が成立したばかりということもあり、このトレンドが現在進行中でかつ一番大きなトレンドではないだろうか。

他の5つのトレンドの説明を含む本レポートの全文は、こちらのWebページからダウンロードできる(レポートの購読には無料の会員登録が必要だ)。

AmazonがBibaの特許と従業員を取り込む:新しいビデオチャットサービスをリリースか

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AmazonによるTwitchElemental Technologiesの買収は、ビデオサービスに本格的に参入するという同社の大きな戦略の2つのピースでしかなかったようだ。このマーケットプレイスとクラウドコンピューティングの巨大企業は昨年、サンフランシスコを拠点とするBiba Systemsを人知れず買収していた。Biba Syestemsはビジネスパーソン向けのビデオメッセージングアプリを開発する企業だ。ある情報提供者によれば、Amazonは現在ビデオメッセージング・サービスの開発に取り組んでいる最中で、今月開催されるAWS re:Invent 2016でその全貌を明らかにする予定だという。

AmazonによるBiba Systemsの買収の可能性が最初に伝えられたのは先週のことだ。GeekWireは2015年9月にデラウェア州に提出された資料の中で、「Justin Acquisition」と呼ばれる企業体とAmazonの合併に関する記述を見つけた。Justin AcquisitionにAmazonの名が直接記載されているわけではないが、その資料には当時Amazonに雇われていたパラリーガル(法律事務所の事務員)の名前が含まれていたのだ。

私たちはAmazonにこの件に関するコメントを求めたものの、彼らからの返事はない(GeekWireの取材にも応じていないようだ)。そこで私たちは独自で調査をすすめることにした。その結果、私たちはAmazonがBibaのテクノロジーと従業員を取り込んでいたことを突き止めた。BibaとAmazonとの間の直接的なつながりを発見したのだ。

Bibaは2つの特許を取得している。1つはビデオ・カンファレンスに関わる技術、もう1つはオーディオ・ストリーミングに関わる技術だ。そして、この2ヶ月間で2つの特許の所有権がAmazonに移行されている。

さらに、Bibaの従業員に付与されたAmazon名義のEメールアドレスが存在することも突き止めた(この記事でそのEメールアドレスを公開する気はない)。

「ジャスティン・’Biba’」に道をゆずる?

AmazonがBibaのテクノロジーをどのように活用するかはまだ不明だ。だが、情報提供者によればAmazonは先日、数名を対象にビデオカンファレンス製品のテストを行ったところだという。

「彼らはそのプロダクトをサンクスギビング後に控えたre:Inventで発表する予定です」と情報提供者は話す。

そのプロダクトにBibaのテクノロジーが使われているかはまだ分からない(もし本当にそのプロダクトが来週発表されるとすればの話だが)。しかし偶然にも私たちは、Bibaが今年8月と9月に同社のAndroidアプリiOSアプリのアップデートを突然、それも密かに行っていたことに気がついた。同社は2015年9月以降、Twitter上のマーケティング活動を行っていないのにもかかわらずだ。

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AmazonがAWSで提供するアプリやサービスの拡大を目指しているのには納得がいく。

すでにAWSでは、クラウド・インフラストラクチャー上で動作するプロダクトをいくつか提供している。それには、クラウドベースのEメールおよびカレンダー管理サービスのWorkMailや、VMwareやParallels、Microsoftなどと競合関係にある仮想デスクトップサービスのWorkSpacesなどが含まれる。

その製品ミックスに、ビジネス向けのコラボレーション・プロダクトやカンファレンス・プロダクトを新たに加えることは自然な流れだと言えるだろう。Bibaが現在提供している機能には、ビデオ/音声カンファレンス、スケジュール管理、連絡先管理、メッセージング、スクリーン・シェアリング、ITマネージャー向けの運営管理機能などがある。

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過去には、はたしてAmazonはエンタープライズ向けソフトウェアのビジネスを拡大していくのかという議論もあったが、この件が本当であれば、その可能性も出てくる。この買収によってAmazonは、AWSの競合サービスであるAzure、そして幅広い種類のエンタープライズ向けプロダクトを抱えるMicrosoftに対する競争力を高めることができそうだ。Microsoftは先日、同社のカンファレンス・プロダクトであるSkypeのアップデートを行い、同アプリは以前よりビジネス・フレンドリーなものとなっている。

AmazonがどのようなサービスをAWSに加えるにしろ、それは既存サービスを共食いするのではなく、補完するようなサービスとなるだろう。すでにAmazonは、AWSでサードパーティーのソフトウェア・プロバイダー向けの大規模なマーケットプレイスを運営している。同社の消費者向けマーケットプレイスのエンタープライズ版とも呼べるサービスだ。

Bibaのテクロジーが活躍しそうな分野は他にもある。すでに述べたように、AmazonはJunstin Acquisitionという企業体を通して今回の買収を実施している。これに関してGeekWireは、同じくAmazonがすでに買収したビデオ・プラットフォームのTwitchと今回の買収には何らかの関連があるのではないかと推測している(Twitchの創業者は同じくビデオサービスのJustin.tvを創業した人物でもある。Twitchのビジネスにフォーカスするため、Justin.tvはすでに閉鎖されている)。

現在4500万人いるTwitchユーザーの多くは、自分のゲームプレイ姿を生中継したり、他のプレイヤーのプレイを観たり、それにコメントをしたりするゲーマーたちだ。だが、Twitchは「食」「アート」などの他の分野への拡大にも取り組んでいる。AmazonがBibaの機能をTwitchに組み込むことで、またはTwitchの機能をBibaに組み込むことで、Twitchにインタラクティブな要素を加え、同サービスをよりB2B向けのプラットフォームへと進化させることができる。

そして最後に、AmazonがBibaを社内用のプラットフォームとして利用する可能性もある。

Amazonの求人を見渡してみても、Bibaの名前に触れているものは1つしかなかった。AWSの顧客サポート部門であるAWS Supportのトレーニングを専門とする、トレーニング・スペシャリストの求人広告を見ると、応募要項のなかには過去にAdobe Connect、Webex、そしてBibaを利用したことがあるという項目がある。Amazonはまず、Bibaのプラットフォームを自社内のサポート・プラットフォームとして利用する可能性がある。そして、その後にAWS上のサービスとしてリリースすることも考えられるだろう。

CrunchBaseによれば、Bibaのこれまでの調達金額の合計は約1500万ドルで、主要投資家にはBenchmark、Trinity、InterWestPartnersなどがいる。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

日本のオフィスから紙をなくす、請求管理サービスMakeLeapsが資金調達

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クラウドの請求管理サービス「MakeLeaps」を展開するメイクリープスがシリーズAの資金調達を行ったと発表した。調達額は非公開だ。リード投資家はRakuten Venturesが務め、既存投資家である500 StartupsとAngelListのファウンダー、ナバル・ラビカント氏がこのラウンドに参加している。

MakeLeapsは「日本のオフィスから紙をなくす」ことを目指し、帳票の作成・発送・入金管理業務を自動化し、紙ベースの作業を効率化するクラウドサービスだ。MakeLeapsには発注書、納品書などの書類作成、口座連携機能、書類の郵送代行といった機能がある。また、MakeLeapsは外貨とバイリンガル機能にも対応しているため、国際間の取引でも使用できるのも特徴だ。

代表取締役CEOジェイ・ウィンダー氏と最高技術責任者CTOのポール・オズワルド氏が立ち上げたMakeLeapsは、2011年10月からサービスの提供を開始している。2014年8月には、サンフランシスコの投資プラットフォームAngelListを介して60万ドルを調達した。このラウンドにはAngelListのファウンダーであるナバル・ラビカント氏、はてな非常勤取締役のリチャード・チェン氏を始め、複数のエンジェル投資家が出資している。

今後の展望として、MakeLeapsは請求管理特化型サービスから、業界ごとの異なるニーズに合わせた 総合的なビジネスプラットフォームを構築・展開していくと伝えている。

TechCrunch JapanはMakeLeapsに今回の調達についてコメントを求めている。返信が到着次第、追記したい。