Atlantic Moneyはさらに安い国際送金でWiseに挑戦する

他の外国為替サービスよりも安くすることを計画している外国為替スタートアップ、Atlantic Money(アトランティックマネー)を紹介する。この売り込みに聞き覚えがあるとすれば、それは、以前TransferWise(トランスファーワイズ)として知られていたWise(ワイズ)が、同じ約束でスタートアップシーンに登場したからだ。

だが、Atlantic Moneyは、WiseやRevolut(レボリュート)でさえ高すぎると考えている。同社によれば、彼らは一度に多くのことをやろうとしすぎて、結局は必要のないものを顧客に請求しているのだという。

Atlantic Moneyの国際送金の料金はいくらか?同社は一律3ポンド(約457円)の手数料を徴収し、それでおわりだ。彼らが確保できる為替レートに上乗せすることはない。

少額の送金の場合、3ポンドはかなり高い。しかし、1000ポンド(約15万2000円)以上の送金となると、Atlantic Moneyはより競争力を持つようになる。

そして、これがAtlantic Moneyのビジネスモデルのカギなのだ。段階的に手数料を徴収するのではなく、取引ごとに固定された手数料に移行したいと考えているのだ。

画像クレジット:Atlantic Money

設立者のNeeraj Baid(ニラージ・バイド)氏とPatrick Kavanagh(パトリック・カヴァナー)氏は、もともとRobinhood(ロビンフッド)での前職で出会った。このスタートアップは、Amplo(アンプロ)とRibbit Capital(リビット・キャピタル)の主導で450万ドル(約5億2100万円)のシードラウンドを調達している。Robinhoodの創業者であるVlad Tenev(ヴラド・テネフ)氏とBaiju Bhatt(バイジュ・バット)氏も出資している。Webull(ウェブル)のAnquan Wang(アンカン・ワン)氏も投資家だ。

このスタートアップは、まず少数のコリドーを立ち上げる。具体的には、今日サインアップしたユーザーは、英国からGBPで、USD、EUR、AUD、CAD、SEK、NOK、DKK、PLN、CZKの9通貨に送金することができる。支払い方法については、Atlantic Moneyは現在、現地の銀行振込を中心に行っている。標準的な送金は2、3営業日かかり、特急送金は1日以内に到着する予定だ。

その裏側には、同社は良い為替レートを提供できるいくつかの大手金融機関と提携している。Atlantic Moneyは、その中から最適なレートを選択し、手数料は上乗せしない。Atlantic Moneyが競合他社より良いレートを提供できるかどうか、興味深いところだ。

本稿執筆時点では、5000ポンド(約76万2000円)を米国に送金しようとすると、現在Wiseでは手数料が17.79ポンド(約2700円)かかり、6648.51ドル(約76万9000円)を受け取ることができる。Revolutの無料口座では、換金したい5000ポンドに加え、20.96ポンド(約3100円)の手数料を支払うことになる。しかし、5020.96ポンド(約76万6000円)と引き換えに約6700ドル(約77万5000円)を受け取るので、為替レートは若干良くなっている。

もちろん、Revolutは他にも銀行口座やカード、株や暗号資産を取引できるなどのサービスを提供している。月額6.99ポンド(約1000円)を支払ってプレミアムアカウントを取得すれば、為替に関する手数料を免除することができる。ただし、12カ月プランなので、Revolutの利用状況によっては、FX手数料よりも利用料の方が高くついてしまうかもしれない。

同様に、Wiseでは12カ国の現地口座情報を作成できるため、住んでいない国で支払いを受ける際に便利かもしれない。また、Wiseは送金をできるだけ早くするようにしており、Wiseの送金の45%は20秒以内に到着する

つまり、外国為替商品は1つだけではない余地があるのだ。外国為替取引は1つの商品だけでは成立しないのだ。カスタマーは、最も頻繁に使用するコリドー、平均的な送金サイズ、必要と思われる追加機能に応じて、結局はサービスを選ぶことになる。しかし、英国からヨーロッパや北米へ大金を移動させるだけなら、Atlantic Moneyのユーザーになる可能性がある。

画像クレジット:Atlantic Money

画像クレジット:Philip Veater / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Yuta Kaminishi)

テンセントが中国人留学生の授業料支払いに特化したクロスボーダー送金スタートアップに出資

Easy Transferのチーム(画像クレジット:Easy Transfer)

Tencent(テンセント)は、国外にいる何十万人もの中国人学生の学費支払いのストレスを軽減することを目的としているスタートアップEasy Transfer(イージートランスファー)に出資した。

Tencentはこの件についてのコメントを却下したが、Easy Transferの創業者でCEOのTony Gao(トニー・ガオ)氏はTechCrunchに、Tencentは現在Easy Transferの株式約5%を所有していると語った。この投資は2021年12月にクローズし、Easy Transferが現在行っているシリーズCラウンドの第1弾となった。IDGキャピタルとZhenFundがEasy Transferの初期投資家だ。

Easy Transferは取引を直接扱うのではなく、中国でのクロスボーダー決済ライセンスを持つ金融機関と連携している。ガオ氏は以前のインタビューで、同社の付加価値は、送金の手間を省くことだと語っている。従来のやり方では、親や学生は銀行を訪れ、たくさんの書類に記入し、送金先情報が正しいかどうかダブルチェックし、大学の口座に授業料が振り込まれるまで気を揉みながら待たなければならなかった。

Easy Transferでは、ユーザーはオンラインで簡単なフォームに記入するだけで、あとは同社が最大200元(約3600円)の手数料ですべてを処理する。

Tencentの戦略的投資により、Easy Transferはユーザー体験をさらに合理化するつもりだ。両社はWeChatベースの学費送金サービス「WeRemit」を共同開発した。WeChatのエコシステム内にある何百万ものサードパーティのライトアプリとは異なり、WeRemitはWeChatからの手厚いサポートを受け、WeChatが一部運営を行っている。

「マネーロンダリング防止、本人確認、情報のセキュリティなど、WeChatはクロスボーダー決済取引をより安全なものにします」とガオ氏はいう。「WeChatは膨大な量のユーザーデータを保有しているため、銀行でも対応できないような強固なリスク管理システムを構築することができるのです」。

お金を動かす前に、WeRemitはユーザーの顔をスキャンして本人確認を行い、WeChatにすでに保存されている個人情報を収集する。中国のインターネットプラットフォームは、モバイル決済やコンテンツ投稿などのコアな機能を有効にする前に、人々の真の身元を確認することが義務づけられている。

WeChatのAIを使った金融コンプライアンスシステムも活躍している。授業料の請求書、内定通知書、ビザ情報など、WeRemitに提出された書類を特定し、理解するために機械学習が使用されている。また、このシステムではリスクの高い取引にフラグを立ててマニュアルで確認したり、請求額と支払額の数字を比較して過払いを回避したりすることもできる。

WeRemitのサービスを支えているのは、Tencentのオンライン決済部門であり、WeChatのデジタルウォレットであるWeChat Payも運営しているTenpayだ。ユーザーから依頼を受けると、クロスボーダー取引ライセンスを持つTenpayが、Easy Transferを受け入れている大学2000校のいずれかに送金する。

中国で広く普及しているWeChatと提携することで、Easy Transferのリーチが大幅に拡大する可能性がある。ガオ氏によると、Easy Transferは2021年に学生12万人にサービスを提供し、20億ドル(約2280億円)以上の取引を処理したという。現在は、WeChatが「海外留学生」と呼ぶ50万人のユーザーをターゲットにしている。教育省によると、2019年には全体で約70万人の中国人学生が海外に留学していた。

Tencentにとって、Easy Transferとの提携は、海外に旅行する観光客をターゲットにしたクロスボーダーフィンテックサービスの幅を広げることにつながるかもしれない。ガオ氏は、Easy Transferのモデルをアジアの他の地域、特に南アジアや東南アジアで再現したいと考えている。インド、ネパール、ベトナムといった国々で増加している海外留学生を取り込む計画だ。これらの国々の家庭は、学費の送金に関して同じような悩みを抱えており、さらに手数料に敏感だと、ガオ氏はいう。

Tencentにとって海外展開は困難で、海外での影響力を拡大するために主に戦略的投資に頼ってきた。例えば、ビデオゲーム会社の膨大なポートフォリオがその例だ。Tencentは、Grab(グラブ)を含むアジア全域の複数のフィンテックサービスプロバイダーを支援してきた。Tencentは、海外送金に必要なライセンスを持つ適切な現地パートナーとEasy Transferを結びつけることができるとガオ氏は述べ、Easy Transferは現地チームの構築とWeRemitのような使いやすいプロダクトに注力するとしている。

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi