ケニア中央銀行がデジタル通貨の導入について国民から意見を募集

ケニアの中央銀行は、デジタル通貨導入の可能性について、5月20日まで国民に意見を求めることにした。ザンビアでもデジタル通貨の実行可能性をテストしていることが明らかになった翌日のことだ。

ナイジェリアは2021年10月、アフリカで初めて「eNaira(eナイラ)」と呼ばれる中央銀行デジタル通貨(CBDC)を導入し、ガーナでは「E-Cedie(Eセディ)」の導入に向かって進んでいる段階にあると言われている。Bank of Zambia(ザンビア銀行)もデジタル通貨について調査を進めているところだ。CBDCはBitcoin(ビットコイン)やEthereum(イーサリアム)のような暗号資産とは異なり、各国の中央銀行から発行され、国のフィアット通貨に固定される。

関連記事:ナイジェリアが中国の足跡を追ってデジタル通貨を試験的に導入

ケニア中央銀行(CBK)は現地時間2月10日、国民討論の基礎資料としてこの文書を発行し、コスト削減、相互運用性、クロスボーダー決済の強化が、国内でのデジタル通貨導入の主な推進力になると指摘している。CBKは、東アフリカ最大の経済大国であるケニアが2007年に先駆的に導入したモバイルマネー(電子マネー)が、デジタル通貨の価値提案の1つである金融サービスへのアクセス強化にすでに貢献していると述べている。

「ケニアの国内決済の傾向は、強固で包括的かつ非常に活発なデジタル通貨(電子マネー)の存在を示しています。したがって、ケニアの決済システムにCBDCを導入することは、モバイルマネーが普及していることを考えると、金融サービスへのアクセスを強化することが主要な目的にはなりません」とCBKは述べている。

CBKのデータによると、ケニアの3800万人のモバイルマネー加入者は、2021年の1〜11月の間に総額550億ドル(約6兆3000億円)の取引を行っている。これは前年同期比の20%増となる数字だ。

「将来を見据えると、我が国の決済システムを地域や世界とつなぐことが重要になります。既存の提案は、CBDCがこの相互運用性を実現する可能性を秘めていることを示しています」と、CBKは述べている。

CBKは、他の通貨と互換性のあるデジタル通貨が、時間とコストがかかっている現在のクロスボーダー決済を、改善する役割を果たす可能性があると述べている。IMF(国際通貨基金)によると、CBDCをどのように国境を越えた支払いに使えるようにするかについての議論は進行中だが、これにも潜在的なリスクがあるという。

IMFは2月9日付で発表した文書の中で「リテールCBDCが国境を越えて利用できるようになると、通貨代替の増加や金融ショックへの脆弱性など、マクロ経済に悪影響を及ぼす可能性がある」と述べている。

現在までに9カ国がデジタル通貨を導入しており、カリブ海諸国以外で導入を開始した国はナイジェリアが初めて。14カ国が試験的な運用段階にあり、87カ国が導入を検討をしている。

画像クレジット:jirawut seepukdee / Getty Images

原文へ

(文:Annie Njanja、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】システム思考は世界の女性に害を与える慣習を終わらせるのに役立つ

世界の有害な慣行や問題の多くは、戦うのが難しく、終わらせるのが複雑すぎると言われている。極度の貧困、食糧不安、ジェンダーに基づく暴力、その他の人道的危機などの問題は、しばしば乗り越えられないと感じられることがある。これらの問題は、世界の貧困層に不均衡な影響を与える気候変動という存亡の危機によって悪化している。中でも子ども、女性、障がい者は最も脆弱であり、適応するのも困難だ。

これらの問題は信じられないほど複雑だ。しかし、解決不可能な問題ではない。

なぜ、わかるのか?私は、女性器切除と強制結婚の廃止に取り組むプロジェクトのグループと一緒に仕事をしたからだ。そして、私たちが協力したケニアのコミュニティでは、これらの有害な慣習は一世代のうちに、時には10年未満で終了した。

30年以上テクノロジーの世界に身を置き、Microsoft(マイクロソフト)では長年、さまざまな業界や教育機関のデジタル変革を支援する仕事に携わってきた私は、自分が学んだことを複雑なグローバル問題に適用しようと考えた。10年以上にわたって、World Vision(ワールド・ビジョン)やGlobal Give Back Circle(グローバル・ギブ・バック・サークル)、そして最近では私自身の団体であるMekuno Project(メクノ・プロジェクト)を通じて、女性器切除や児童婚など、ジェンダーに基づく暴力の問題に取り組んできた。

私がテクノロジーのキャリアで学んだことのいくつかは、公共部門や非営利団体にも応用できる。ここでは、特に人権を向上させ、有害な慣習をなくそうとする組織のために役立つ洞察と戦術を紹介する。

システム思考を応用した多面的な問題の理解と解決

テクノロジーの仕事をしている人は、システム思考に馴染みがあるかもしれない。簡単に言えば、複雑な問題をより小さな論理的な部分に分解して考える分析手法だ。システムを一連の部分としてではなく、全体として捉えながら、システムのさまざまな部分がどのように相互作用しているかを理解することが必要だ。その目的は、最終的に複雑なものを単純化することであり、Microsoftが社内文化の見直しを図った際に適用された

例えば、ケニアにおけるジェンダーに基づく暴力の問題を考える場合、システム思考では、強制結婚といった特定の問題を超えて、なぜその問題がそもそも存在するのかという大局を見据えることが求められる。

単に問題に目を向けるだけでは不十分で、その問題が存在する生態系に目を向ける必要があるのだ。例えば、女性器切除や児童婚は、孤立して存在するものではない。それらは、極度の貧困、文化的規範、非識字率の高さなどと関連しており、これらすべてが農村地域の少女たちに不当に影響を及ぼしている。これらの危険因子は、気候変動と新型コロナウイルス(COVID-19)の流行によっても悪化し、両方の有害な慣習の割合の急増につながっている。このような根本的な原因がコミュニティに影響を与え続けるため、このサイクルは次の世代へと続くことが多いのである。

有害な習慣をなくすには、パートナーの協力のもと、現場で全体的かつ拡張可能な、相互作用のあるアプローチが必要だ。これなくして、どのような介入も持続可能な変化をもたらすことはできない。

私たちは、世界的な問題や有害な慣行が存在する理由を理解することで、それらを取り除くことができる。システム思考は、大局的な見地から、これらの問題を解決することを可能にする。

人を巻き込むデザインを通してコミュニティを活性化する

ジェンダーに起因する暴力を含む問題を、地域社会の総体的なアプローチによって解消することは、1つの地域社会で機能するだけでなく、複数の組織が目標達成のために協力すれば、規模を拡大することもできる。

しかし、コミュニティへの信頼が育たないやり方もあり、常にコミュニティの条件での成功を優先させなければならない。人を巻き込むデザインは共感に根ざしている。つまり、コミュニティとの信頼関係、包括性、そして共有のビジョンを構築するために、そのコミュニティにとって何が有効かを学ぶつもりで耳を傾けなければなない。

このように共感することで、より早く変革的な変化をもたらす新しいイノベーションを生み出すことができる。私たちが支援しようとしているコミュニティの中で協力体制を築けなければ、持続可能で大規模な変化をもたらすことはできない。

地域社会を巻き込み、共感をもって耳を傾け、解決策を共同で創造し、透明性をもってコミュニケーションを図り、地域社会のニーズや懸念を尊重し優先することが、複雑な問題を解決する上で最も重要なことなのだ。

コミュニティの信仰指導者を巻き込む

これは、多くのコミュニティで根深い問題を解決するために重要であり、見落とされがちな点だ。

The Gates Foundation(ゲイツ財団)の副理事長であるBlessing Omakwu(ブレッシング・オマクウ)氏は、宗教的なパートナーの関与なくしてジェンダーの平等は実現できないし、実現することもないだろうと述べている。宗教指導者はコミュニティで最も信頼されている人物であることが多く、オーガニゼーションがコミュニティと関わるための道徳的な枠組みを作る手助けをすることができる。実際、World Economic Forum(世界経済フォーラム)は、信仰指導者はコミュニティとの協働において未開発の資源であると述べている

私たちが抱える問題は、乗り越えられない、解決不可能なものに見えるかもしれないが、決してそうではない。世界最大の問題の多くを解決する鍵は、個々に取り組むことではなく、相互に関連する考え方で取り組むことだ。なぜなら、最大の問題は他の問題から独立して存在するわけではないからだ。そして、今日の相互に関連しあっている世界で、私たちはそれらの問題の解決に向けて動き出すことができる。そして、多角的な戦略を用いることで、一世代のうちにより良い世界を作り始めることができるのだ。

編集部注:執筆者のMargo Day(マーゴ・デイ)氏は、ケニアで女性器切除と児童婚の根本原因を取り除くために活動する非営利団体Mekuno Project(メクノ・プロジェクト)のCEO兼共同設立者。

画像クレジット:Hiroshi Watanabe / Getty Images

原文へ

(文:Margo Day、翻訳:Yuta Kaminishi)

世界最大級の暗号資産取引所Binanceのチャンポン・ジャオCEO、規制とアフリカでの活動について語る

「CZ」ことChangpeng Zhao(チャンポン・ジャオ)氏は2017年にBinance(バイナンス)を立ち上げたが、一部の情報によると同社はわずか180日で世界最大の暗号資産取引所へと成長した。

Wall Street Journal(ウォールストリート・ジャーナル)によると、Binanceの1日の取引額は760億ドル(約8兆6331億円)で、これはライバル4社の合計額を上回るものである。

2021年上半期、Binanceはアフリカと中東から1億5100万回、ナイジェリアから1100万回のクリックを集めたとWSJは伝えている。Chainalysis(チェイナリシス)によると、2020年7月から2021年6月までに1056億ドル(約12兆円)相当の暗号資産がアフリカ内で取引されており、アフリカにおける暗号取引の活発さがうかがえる。

額面としては1200%以上の成長を遂げているにもかかわらず、この期間に取引された世界中の暗号のうちアフリカはまだ2%しか占めていない。暗号資産、ブロックチェーン、分散型金融がアフリカ大陸で定着しつつある中、Binanceはこれらの活動を推進するリーダーになりたいと考えている。

しかしそれを実現するためには、アフリカ大陸で直面するであろう規制上の課題を考慮する必要がある。ナイジェリアとケニアという特に暗号が盛んな2つの国で、暗号活動が禁止されてしまったからだ。

米国、中国、英国、日本、マレーシア、タイ、EUの規制当局は、近年の無秩序な成長に懸念を抱いており、同社はすでに打撃を受けている。

今回のTechCrunchとのインタビューで、ジャオ氏は、アフリカでの暗号の使用と導入、Binanceの活動、規制に対する同社のスタンスなどについて語ってくれた。

このインタビューはわかりやすくするために編集されている。

TechCrunch:暗号は複数の政府が規制しようとしている産業の1つです。これについてどう思われますか?暗号は規制されるべきでしょうか?

ジャオ氏:規制は暗号産業にとって不可欠であり、この分野に関心を持つ消費者や機関との信頼関係を構築する上で大きな役割を果たします。結局のところ、暗号の大量導入を実現するためには適切な規制が必要不可欠です。私たちは現地の規制当局と積極的に協力し、ユーザーの利益と保護という共通の目的に向かって業界を導くことで、健全な形でこれを促進できると信じています。

当社の考えでは、10%、20%、80%、99%の(暗号)採用を目指すために規制当局が入って来るのは良いことだと思っています。しかし規制が暗号の成長を妨げるのではなく、補完することも同様に重要です。全体的に見て、効果的な規制は消費者を保護すると同時に成長とイノベーションを刺激しますが、一方で、不適切な規制政策は成長を阻害し、時代遅れで効果のないプロセスや制度を保護します。

世界最大の取引所であるBinanceは、なぜ米国やヨーロッパ、中国で多くの規制問題を抱えているのでしょうか?また、それらに対処するためにどのような措置をとっていますか?

どの暗号資産取引所も世界中の規制当局と密接に連携していると思います。業界のリーダーとして、多くの人がこの業界の代名詞のようにしてBinanceを見ています。模範となり、規制当局と連携して共通の目標を前進させる機会を得たという事実を、私たちは軽視することはありません。

私たちが最大の暗号化取引所であるのは、ユーザーが私たちを信頼してくれているからです。ユーザーを守るためのあらゆる決断と行動によって、その信頼を私たちは獲得してきました。私たちは、世界中の業界や規制当局とベストプラクティスを共有したいと考えています。それがより健全な業界の形成につながると信じています。

各国の規制ガイドラインへの対応の一環として、FATF(金融活動作業部会)の定める国際規制「トラベルルール」に対応するためのShyft NetworkのVeriscopeや、ユーザーが個人の納税義務を迅速に果たせるようにするためのTax Reporting Tool APIなどの新製品を発表しました。

また「Futures Leverage for New Accounts」を更新し、複数の市場でアクセスを制限したり、プラットフォーム全体でKYC(顧客確認)の義務化を開始したりするなど、既存のサービスを見直しました。また最近、コンプライアンスに精通したトップクラスの人材を数名採用しました。

私たちは最近、リーダーシップの一例として、標準的なKYC/AML(アンチマネーロンダリング)処置に加えて、業界のプレイヤーの長期的活動を推進し始め、創業者トークンのロック解除のスケジュールを、2~4年から8~10年に延長するよう働きかけています。どこかの規制当局に求められたわけでないのですが、これが業界の健全化につながると信じています。私たちは、ユーザーを保護する方法を常に模索しているのです。

政府はこの取り組みを正しく行っていると思いますか?また、政府はこの新産業についての知識を持ち、その優位性に磨きをかけることができているでしょうか。

ここには絶対的な正解や間違いといったものはなく、キャリブレーションとバランスが重要になります。暗号だけでなく、暗号への規制も新しい概念であり、多くの政府がこの分野をより明確にしようと試みています。

規制当局は、消費者を保護すると同時にイノベーションを促進するという同じミッションを私たちと共有しています。規制当局が業界との最も効果的な関わり方を模索する中、当社は全世界で100%のコンプライアンスを実現することを約束し、すべてのチームがこの実現に向けて休むことなく取り組んでいます。

暗号資産の導入と発展は、自動車のそれと多くの類似点があります。自動車が発明された当初は、道路交通法も信号機も、シートベルトさえもありませんでした。車が道路を走りながら法律やガイドラインが作られていったのです。今日、私たちが当たり前のように使っている枠組みや法律があるからこそ、この強力なテクノロジーが広く安全に使われることができるのです。

暗号は誰もがアクセスできるという点で似ていますが、誤用や悪質な行為を防ぐためにはフレームワークが必要です。業界の継続的な成長のためには、最初の基準を明確にして構築することが重要です。Binanceはそこに積極的に貢献していきたいと考えています。

暗号の規制が懸念されているアフリカに対してBinanceが強気に出ているのはなぜでしょうか。

アフリカ大陸は、暗号資産の導入と発展のためのユニークなチャンスを秘めているため、私たちは常にアフリカに強気で臨んでいます。暗号は国境を越えた支払いや送金(アフリカ国内や国外への送金)、通貨の切り下げなどの問題を解決してくれます。

多くのアフリカ諸国は高い失業率に悩まされていますが、暗号とブロックチェーンは、この若く優秀な大陸に革新的な雇用機会を提供し、アフリカの人々の経済的自由の獲得をサポートしています。

Binanceがローンチしたその初日からアフリカのユーザーが存在しましたし、実際に彼らは比較的アクティブでした。私がウガンダ、トーゴ、ナイジェリア、そしてエチオピアを訪問したのは2018年の初めだったと思いますが、市場のことを少しでも知っておこうと思ってアフリカを少し回りました。そのあとすぐにBinance Ugandaを開設して、これが最初のフィアットゲートウェイになりました。

アフリカでの利用で特に興味深いのは、多くの人は伝統的な金融サービスにアクセスできないため、銀行口座を持つ人の数がかなり少ないということです。しかしだからこそ、暗号が魅力的なのです。

確かに魅力的ですが、アフリカの中央銀行がここ数カ月間、暗号ユーザーを標的にして、銀行が取引を促進するのを禁止しているのはそのためかもしれません。米国や中国などと同様に、彼らが代わりにBinanceを狙い始めたらどうなるでしょうか?

Binanceは規制を歓迎していますし、規制当局や政府と協力してこの新興産業をナビゲートするアプローチをとっており、コンプライアンス義務を重じています。変化し続けるこの分野の政策、規則、法律を積極的に把握するよう常に取り組んでいます。

関連記事:ナイジェリアが中国の足跡を追ってデジタル通貨を試験的に導入

このように、Binanceは規制当局を支援し、公正な競争条件を設定するための最適な方法を見つけたいと考えています。消費者保護は私たち全員にとって重要なことです。私たちは組織として飛躍的に成長してきましたが、規制当局の要請に応じて、特定のプロセスやプロトコルの更新を行っています。

Binanceやその他の暗号プラットフォームが世界中で政府の規制を受けた場合、暗号の採用や成長は鈍化すると思いますか?

いいえ、そうとは思いません。スマートな規制はイノベーションを促進し、ユーザーの安全を守ります。また、規制とイノベーションは相反するものではないということを理解するのも重要です。暗号ユーザーは、NFT、ステーブルコイン、ステーキング、イールドファーミングなどの新しいテクノロジーや手法に安全にアクセスする権利があるのです。

これについては先日発表した「10 Fundamental Rights for Crypto Users(暗号ユーザーの10の基本的権利)」で触れています。暗号の規制は避けられませんが、ユーザーには、自分が選択したブロックチェーンプラットフォームで業界をどのように進化させるべきか、声を共有する権利があります。

アフリカでの暗号化導入を後押ししているものは何だと思いますか?

さまざまな要素が重なり合っているのだと思います。アフリカは独特の課題を抱えたユニークな大陸です。例えばアフリカの多くの国は、常に通貨の切り下げに悩まされているため、ユーザーは切り下げに対する防衛や価値の保存として、暗号やステーブルコインを使用する傾向があります。

送金や海外送金、決済など、国を越えた支払いはかなり困難ですが、暗号はこれを簡単にしてくれます。

アフリカの多くの人々は、富の創出と経済的自由を求めて暗号を始めます。東南アジアやラテンアメリカと同じく、何百万人もの人々が貧困ラインの下で暮らしています。そのため、富を生み出すための革新的で非伝統的な方法を求める人が増えるというのは自然なことです。

アフリカの総人口のうち、銀行口座を持っているのはわずか11%という報告もあります。銀行口座を持たない人の多くは、銀行を通さずに携帯電話を銀行として利用し、直接暗号にアクセスしているのです。

数字つながりの話ですが、最近のWSJの記事によると2021年上半期、ナイジェリアではBinanceに1100万回のクリックがあったそうです。これはアフリカ大陸におけるBinanceユーザーの数ですか?

ウォールストリート・ジャーナルは当社のシステムやユーザー情報へのアクセス権を持っておらず、第三者が提供した推測に基づく統計データを引用しています。外部の第三者が行った推測に基づく分析について、当社はコメントできません。

より多くのアフリカ人がこれまで以上にP2Pを利用するようになった今、Binanceはどのようにしてアフリカのユーザーがプラットフォーム上で暗号資産を安全に取引していることを確認しているのでしょうか?

アフリカの人々が確実に十分な教育を受け、守られていると確信を持てるようにするため、弊社にとってこれは大きなフォーカスになっています。

特にBinanceのP2Pでは、ユーザーの保護と安全が最優先されます。8月時点で40万人以上のアフリカ人を対象に、ユーザー保護からブロックチェーンでのキャリア構築まで、さまざまなテーマで無料の暗号クラスを提供しました。

最近では暗号エスクローサービスなどの新しいリスク管理手段を導入し、またユーザー保護を強化するためにグローバルKYC要件を拡充し、悪質な業者によるシステムの悪用を防ぐために新しいP2P機能を実装しました。

アフリカなどの新興国にとって、暗号資産やブロックチェーンにはどのような変革の可能性があるのでしょうか?

可能性は無限にあり、新興国ではそれがさらに顕著になります。新しい金融インフラ、システム、プロセスが構築され、人々の生活を変え、経済的自由の可能性を生み出します。

また個人的には、GameFi、Sports Fan Tokens、NFTなど、最近主流になっているイノベーションにも大きな可能性を感じています。これらが非常に大きな変革をもたらすことができるのではないでしょうか。

画像クレジット:Binance team

原文へ

(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

ケニア政府、デジタル金融機関のデータプライバシー問題で厳重な取り締まり

2021年10月下旬、ケニアの国会で新しい法律が可決された。同法は、顧客の守秘義務に違反した事業者の許可を取り消す権限を金融規制当局に与える条項を追加している。これにともない、デジタル金融機関は、融資不履行者の個人データを第三者と共有することで、同国において免許取り消しのリスクを負うことになる。

典型的に融資アプリは、連絡先を含む借り手の電話データを収集し、メッセージへのアクセスを要求してモバイルマネー取引の履歴をチェックする。クレジットスコアリングやローン支払いの要件として参照されるものだ。悪質な金融機関はその後、借り手が債務不履行に陥った際に、実行された融資を回収する目的で、収集された連絡先情報の一部を使用する。複数の報道によると、デジタル金融機関は、友人や家族に電話をするなどして借り手に借金の返済を強要するような、デット・シェイミング(debt-shaming、債務の状態をさらしあげることによって、はずかしめたり、非難するような行為)手法に訴えているという。

今回の法改正は、高額の無担保ローンを提供する悪質なデジタル金融機関から市民を保護するためにケニアの議員が講じている多数の対策に追加されることになる。これにより、規制当局であるCentral Bank of Kenya(ケニア中央銀行)は、一定の自主規制期間の後、独立したデジタル金融機関(銀行と提携していない)の業務を監督する権限が付与される。今後は、ケニアで事業を行うにはライセンスを取得する必要が出てくる。これまでは登録するだけだったが、それが悪質なアプリの急増を招くことになった。

このケニア中央銀行に関する2021年改正法案では、規制当局に対し、金利に上限を設けたり「データ保護法または消費者保護法の条件」に違反したデジタル金融機関のライセンスを一時停止または取り消す権限も与えている。

ケニアのデータ保護法では、企業はデータを収集する理由を顧客に開示するよう義務付けられている。また、借り手の機密情報が不正な第三者によって侵害されないよう保証する。この動きの背景には、消費者向けロビー活動が、顧客情報をデータやマーケティング企業と共有しているとしてローンアプリを非難していることがある。

デジタル金融機関はまた、プロダクトに関するすべての情報を開示することが求められ、これには価格設定の詳細、債務不履行者に対する罰則、債務回復の手段などが含まれる。これは、プロダクトやサービスの購入に関するすべての条件を消費者に開示することを販売者に義務付けている消費者保護法に沿ったものだ。ほぼすべての融資アプリが、ケニアでの借金を回収するためにデット・シェイミング手法を用いていることが明らかになっている。

ケニアにはおよそ100ものモバイル融資アプリがあり、その中には中国の大手ブラウジング企業Opera(オペラ)が所有するOkashやOpesaも含まれている。両社ともケニアで略奪的な融資戦術を用いているとの主張に直面している。OkashやOpesaをはじめとする数十のローンアプリが、法外な金利と搾取的な条件を設定していたことが判明した。例えば、Google Play Storeのポリシーでは60日ローンと規定されていながら、OkashやOpesaは30日ローンとなっていた。中国の2つのローンアプリの金利は法外で、年間876%に達している。銀行の年間金利にしても20%は滅多に超えない。サンフランシスコに拠点を置くBranch International Ltd.(ブランチ・インターナショナル)やPayPal(ペイパル)が支援するTalaなどの他のアプリでも、年利がそれぞれ156~348%、84~152.4%と、恐喝的なレートが使われていることが判明した。

月額約4000万ドル(約45億円)を支出する25のデジタル金融機関を代表する金融機関ロビー団体がTechCrunchに語ったところによると、メンバーは金利の上限設定について懸念を表明したが、特に彼らのフィードバックが受け入れられたことを受けて、新しい法律には満足しているという。同団体は、最低資本金規制や預金割り当ての撤廃、新技術や新プロダクトの規制権限の委譲を求めてロビー活動を行ってきた。

Digital Lenders Association of Kenya(ケニアデジタル金融業協会)の会長であるKevin Mutiso(ケビン・ムティソ)氏は次のように述べている。「この分野が規制され、中央銀行(規制当局)へのアクセスが可能になり、紛争規制の仕組みも導入されることを喜ばしく思っています。しかし、私たちが懸念しているのは価格統制であり、これにはあまり感心していません。金利の上限を設定した瞬間に融資は行われなくなります。私たちは神経質になっていますが、それは公正なことです」。

しかしムティソ氏によると、規制が整備されれば、金融機関は規制当局をはじめとするパートナーと協力して融資をより強固なものにすることができ、同国の融資市場の拡大に役立つという。

「規制の欠如は市場を予測不能にしていました。今なら私たちに何ができ、何ができないかがわかります。また、私たちはより良い債務回収慣行を持つことになります」とムティソ氏は語る。

「この法律により、ケニアは世界でナンバーワンのフィンテック市場になると私たちは考えています。なぜなら金融機関や借入者から期待されることなど、今はすべてが明らかだからです。私たちはまた、顧客、特にMSME(零細・中小企業)にとってより良いプロダクトを目にすることになるでしょう」と同氏は続けた。

これらのアプリは無担保ローンを提供しているため、当座の現金を求めている借り手や、口座履歴などの前提条件により銀行から締め出されることが多い借り手にとって魅力的なものとなっている。

デジタルクレジットは簡単に利用できるが、保有期間が短いために高額である。また、アクセスが容易なために複数のアプリからの借り入れが発生し、債務の逼迫やクレジットスコアの低下につながり、将来的に銀行からクレジットを取得する借り手の能力に影響を与える。

Kenya Bankers Association(ケニア銀行協会)の調査によると、利便性とアクセスの容易さが、クレジットにアクセスするプラットフォームを決定する際に顧客が考慮する主な理由であることが示されている。

この調査では、自営業者は通常のクレジットよりもデジタルを好むことが明らかになった。これは、彼らが業務を行っている間に経験する流動性の変化に起因するものであり、緊急時にもローンアプリが好まれることが指摘されている。

新しい法律では、規制当局に対し、クレジットコストを設定する際にデジタル金融機関が準拠する価格パラメータを決定する権限が与えられている。

法外な金利はケニアに限ったことではない。インドでは、融資アプリに週当たり60%もの高い金利が設定されていることが判明した。南アジアの国では、融資回収業者による嫌がらせの後に自殺した人々の報告があった。

西アフリカ諸国でも、地域最大の市場の1つであるナイジェリアを含め、融資アプリが急増している。

調査と政策提言を行うConsultative Group to Assist the Poor(CGAP、貧困層支援協議グループ)の報告書でも、タンザニアの2000万人もの借り手のデジタルローンのデフォルト率と延滞率が高いことが明らかになった。ほとんどの借り手は緊急事態や投資のためではなく、日々の必要性のために融資を利用している、と同報告書には記されている。

「これらの数字を減らすために規制当局ができる最も重要なことの1つは、融資条件の透明性を向上させ、顧客が情報に基づいた意思決定をしやすくすることです」とCGAPは述べている

同組織は、融資アプリを管理するためのより厳格な規則について勧告し、金融機関に融資条件の透明性を呼びかけた。

画像クレジット:Tala

原文へ

(文:Annie Njanja、翻訳:Dragonfly)

スウェーデンとケニアの企業Opibusが初の大型EVバスのテスト開始、2023年の現地展開開始を目指す

スウェーデンとケニアのEV(電気自動車)スタートアップ、Opibus(オピバス)は、初の電動バスがケニアの公道に登場し、同社の大量輸送事業への挑戦の始まりを記した。Opibusが電動乗合バスを発売する計画を初めて発表したのは、2021年のプレシリーズAラウンドで750万ドル(約8億5000万円)調達したときだった。

現在、同スタートアップは、2022年中にケニアで、2023年末までにアフリカ全土でEVバスを商業運行することを目指してパイロットテストを行っている。

Opibusは過去5年間、既存のガソリン車とディーゼル車が時代遅れにならないよう、電動式に切り替える事業を行ってきた。EVには、輸送コスト削減やゼロ炭素排出などさまざまな恩恵がある。2017年にFilip Gardler(フィリップ・ガードラー)氏、Filip Lövström(フィリップ・ラブストロム)氏、Mikael Gånge(マイケル・ゴアンゲ)氏の3人が設立したこのスタートアップは、これまでに170台の車両を電動式に改造してきた。顧客は採掘会社や旅行会社などさまざまだ。

現在、同社はEVおよび、それを支える公共充電ステーションなどのインフラストラクチャの構築へと徐々に事業転換している。Opibus電動バスの価格は、新車が10万ドル(約1143万円)、改造(パイロットプログラムで利用している)なら6万ドル(約686万円)だ。

「1年目の2022年は、ナイロビで10台のバスを商用テストする予定で、プロダクトが市場にフィットし、利用パターンに最適化されていることを確認します。そこで重要なフィードバックを得た後、必要な変更を行い、生産パートナーを全員揃えてできるだけ早く量産に入ります」とOpibusの戦略・マーケティング責任者であるAlbin Wilson(アルビン・ウィルソン)氏がTechCrunchに話した。

Opibusは電動バスと電動オートバイの製造を専門にしている(画像クレジット:Opibus)

Opibusは、同社の製品は地元で設計、製造することで市場に低価格で届けられる競合優位性があると言っている。さらに、現地生産であることは、地元市場のニーズに合わせた製品を作れることを意味している。

「私たちの戦略は、価格、耐久性に優れ、この地域で入手しやすいバスを設計、開発することです。迅速なスケールアップが可能で海外、現地両方のメーカーを活用できる製品を作っています。つまり、当社の設計はアフリカ大陸全体で容易に実現可能であり、製品は利用場面に向けて最適化され、非常に費用効率に優れています」。

現在同社は、パートナーシップを通じて他のアフリカ地域に目を向けており、大陸全体でのEV普及を推進しようとしている。

例えば2021年1月に発表されたUber(ウーバー)のOpibusとの提携では、同スタートアップが製造した電動オートバイ最大3000台を、2022年中にアフリカ諸国に展開する予定だ。

ケニアのEV市場は芽生えたばかりで、ここ数年新たなプレイヤーが惹きつけられており、2021年11月にケニアでデビューを飾ったBasiGo(バジゴー)もその1つだ。BasiGoは最近、大量輸送EVバスを2台、パイロットのために輸入しており、中国のEVメーカーBYD Automotive(比亜迪汽車)の部品を使用して電動バスを現地生産する計画だ。BasiGoのバスは25人および36人乗りで航続距離は約250 km、一方Opibusのバスは51人乗り、航続距離は120 kmとなっている。

画像クレジット:Opibus

原文へ

(文:Annie Njanja、翻訳:Nob Takahashi / facebook

フェイスブックがケニアで最も未成年者の性的搾取が横行するSNSであることが判明

新たに公表されたDisrupting Harmレポートによると、ケニアにおいてインターネットを通じた未成年の性的搾取が、他のどのサイトよりもFacebook(フェイスブック)で横行していることが判明した。この大手テクノロジー企業のプラットフォームは未成年にとって極めて危険なものになっている。

インターポール、ユニセフ・イノチェンティ研究所、子どもに対する暴力撲滅に関する活動がまとめたこのレポートにより、2020年の東アフリカ諸国における未成年者に対するオンラインでの性的搾取や性的虐待に関する事例の90%以上がFacebookを起因とするものであることが判明した。このレポートは、全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)のデータ、未成年者やその両親、警察機関、法定代理人との面談に基づいて作成されたものである。

Facebook以外に、WhatsApp、Instagram、YouTubeも児童の性的虐待に関する画像や動画が広く所有、制作、配信されるプラットフォームとして言及されているこのレポートは、NCMECのデータを受けて公表されたものである。そのデータによると、2020年1年間にFacebookが報告した児童の性的虐待の画像は世界全体で2000万件以上にのぼるが、これは2番目に件数が多かったGoogleの37倍であったという。その後に行われている調査でも、Instagramが10代の少女のメンタルヘルスに深刻な影響を及ぼしていることが判明したため、Instagramの親会社であるMetaも、現在中断している13歳未満の未成年者を対象としたInstagram Kidsを開始する計画について熟慮している。

自社のプラットフォームから未成年者の搾取を排除するためにどのような取り組みを行っているかについてMetaからコメントを得ようとしたが、この記事を発表する際の期限までにコメントを得ることはできなかった。

NCMECのCyberTiplineレポートによると、全体的には、ケニアの児童に対するオンラインでの性的虐待も、6%増えて1万4434件となっている。CyberTiplineは、未成年者の性的搾取に関する事例を報告するための一元的なシステムである。ケニアは東アフリカで唯一、同国の犯罪調査局(DCI)の人身売買防止・児童保護課(AHTCPU)やインターポールの国際児童性的搾取データベースを通じてNCMECの報告システムに直結している国である。

同レポートには次のように記されている。「WhatsAppとFacebook(またはFacebook Messenger)は、児童が最も標的にされるソーシャルメディアやインスタントメッセージアプリであった。その理由はおそらく、FacebookとWhatsAppがケニアで最も人気がある2つのソーシャルメディアプラットフォームであり、子どもたちが多くの時間をオンラインで過ごす場所だからである」。

AHTCPUの責任者であるMueni Mutisya(ムエニ・ムティシャ)氏は、TechCrunchの取材に対し、同課がサイバー情報に関するレポートを毎日22件受け取っていると答えた。ケニアでは、新型コロナウイルス感染症が世界的にまん延し始めたあとに記録された事例が増大しており、これもソーシャルサイトの利用に起因する状況であると同氏はいう。

同氏は次のように述べている。「ソーシャルメディアによって、オンラインでの児童の性的搾取と性的虐待(OCSEA)の共有、作成、配信が拡大した。搾取者が若者をだまして、自分自身の露骨な画像を提供させたり、過度に人を性の対象として見る文化のえじきにしたりすることが格段に容易にできるようになった」。

このソーシャルメディアの勢力レポートによると、WhatsAppはFacebookとYouTubeに次いでケニアで人気のあるソーシャルアプリである。これまでに、ケニアの人口の4分の3以上がインターネットにつながっており、FacebookやWhatsAppといったサイトに容易にアクセスできるようになっている。

犯罪者が児童を食い物にする方法が変化しているように思える状況下で、このレポートを作成するにあたって面談を行った被害者の半数以上が、性的なコンテンツの要求はオフラインではなくオンラインで行われたと言っており、未成年者の5人に1人が直接のアプローチを受けている。少年と少女のどちらもオンラインで同程度のリスクに直面しているという事実を報告している調査によると、オンラインでの性的搾取という危険に最もさらされているのは12歳から17歳の未成年者だった。

犯罪者は一般的に被害者の知っている人物であることが判明しており、プレゼントや金銭(性的な恐喝)を利用して、犯罪者に会ったり、画像や動画を共有したりするように未成年者を誘導していた。勧誘は一般的にFacebook(またはFacebook messenger)、WhatsApp、YouTubeを利用して行われる。InstagramやByteDanceのプラットフォームであるTikTokを挙げる者も少数いたが、ほとんどの者はゆすられたり脅されたりして、わいせつなコンテンツを提供させられたり、わいせつな行為に関わらされたりしている。

同レポートにはさらに、ケニアが児童に対する性的虐待の商業的ライブストリーミングの発信地になっていることを国外の法執行機関が明らかにしたことも示されている。Google検索エンジンのトレンドから、ケニアの性犯罪者はティーンエージャーとの性行為、ティーンエージャー同士の性行為、児童や乳児との性行為を題材にした画像や動画を探し求めていることが判明した。安全保障当局のレポートによって、国々を移動する外国の児童性的犯罪者にとってもケニアはホットスポットであることが明らかになっている。

性的な目的で子どもにオンラインで身づくろいをさせる行為もソーシャルサイトで横行している。この行為は、虐待のコンテンツを作成・提供するように操る意図を持って行われているものであり、直接子どもに会ったり、児童を虐待したりする意図はまったくない。これは、現在のケニアでは犯罪行為とはみなされないOCSEA(児童に対するオンラインでの性的搾取と性的虐待)の1つの形態であると同レポートには記述されている。犯罪者を告発する際の根拠となる法律は、児童を性的なコンテンツにさらした加害者を罰するコンピューター不正使用法と児童ポルノを刑事罰の対象としている性犯罪法のみである。

同レポートは次の点を指摘している。「ケニアにおいて、間もなく成立する、オンラインでの身づくろいに対処する児童法案2021(Children Bill 2021)の条文は、児童に会うことを目的としたオンラインでの身づくろいしか対象としていないため、例えばオンラインプラットフォームで性的なコンテンツを送るように犯罪者が児童に求めた場合には適用されない可能性がある」。

現在、立法府の承認手続きが進められているこの法案は2020年に提出されたものである。2週間前に国会議員がこの新しい法律に対する提言を一般に募り、先ほど述べた抜け穴を埋めるチャンスが到来した。

同レポートは次のように述べている。「性的虐待がオンラインで発生する行為である身づくろいを禁止する条文が依然として盛り込まれるように願っている」。

この種の犯罪には、国境を超えて行われるという性質があるため、ケニアは犯罪者の行動を追跡したり、犯人を検挙したりできるように国際機関や地方自治体と綿密な連携を行っている。ケニアのDCI AHTCPUも国の通信規制当局と連携して、この種の犯罪の性質を一般大衆に警告したり、報告を行うことを推奨したりしている。

ムティシャ氏は次のように語る。「インターネット犯罪には国境を超えて行われるという性質があるため、DCI AHTCPUはOCSEAとの戦いをサポートするために、国内や国外の戦略的パートナーと手を組んでいる。国境を超えるOCSEAの事例が発生した場合には、我々はインターポールを利用して通知を発令する」。

「英国高等弁務官事務所の国際渉外官や(ケニアの)米国大使館のFBI法務専門職員およびケニアにおいて同等の役割を担う人々と綿密に連携し、オンラインで虐待を受けた被害者のために正義を求め、犯罪者を追跡していく。これは、社会への啓蒙や学校訪問によって実現する教育、意識の向上と鋭敏化に加えて行うものである」と同氏はいう。

Disrupting Harmの執筆者たちは、同レポートに記された調査結果が、児童に対するオンラインでの性的虐待に関する戦略を導入するための指針となることを願っている。

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(文:Annie Njanja、翻訳:Dragonfly)

政治的な偽情報がケニアのTwitterトレンドトピックを覆う

ケニアのUhuru Kenyatta(ウフル・ケニヤッタ)大統領がオフショアのタックスヘイブンに資産を秘密裏に保有していることが明らかになった直後、Odanga Madung(オダンガ・マドゥン)氏はTwitter(ツイッター)上で奇妙なことに気づいた。ケニヤッタ大統領が密かにタックスシェルタースキームを利用しているという決定的な情報にもかかわらず、ケニアのツイッターでは、苦境に立たされた大統領を擁護する話題が流布しているのだ。

ケニア大統領の隠し口座は「パンドラ文書」の中で明らかになった秘密の1つにすぎない。同文書は、世界のリーダーや有名人、億万長者が、パナマや英領ヴァージン諸島などに隠している財産を詳述したもので、約1200万件が漏洩した。

いずれもMozilla Tech and Societyのフェローであるマドゥン氏とそのサポートリサーチャーであるBrian Obilo(ブライアン・オビロ)氏は新しい調査で、パンドラ文書発覚の直後に、ネットの政治的プロパガンダが同国の情報の空白をどう埋めたかを明らかにした。

「これは、ケニアにおけるTwitterのプラットフォームに非常に広く見られる問題です」とマドゥン氏はTechCrunchの取材に対し答えた。

2人は、TwitterのFirehose APIを利用して、パンドラ文書の公開後、10月3〜10日に送信された8331件のツイートを分析した。その結果「#offshoreaccountfacts」と「#phonyleaks」という2つのハッシュタグが発見された。これらのハッシュタグは、流出した財務情報に含まれる正当な暴露を妨害する意図があり、同期間中、ケニアのトレンドトピックとして急浮上した。

「政府と大統領が圧力を受けるなか、ネットで怒りが高まり、反論作戦が実行され、Twitter上に強い味方を見つけました」とマドゥン氏は書いている。「その結果、歪んだ見方が勢いを増し始めました。そこでは、ケニアの人々が、パンドラ文書の決定的な調査結果に対してではなく、ケニヤッタ大統領が不正行為をしたことに対して憤慨しているように見せています」。

2人の分析によると、このトレンドは自然発生的なものとは程遠い。2人は、関連するハッシュタグを繰り返しツイートし、喧伝するアカウントを多数発見した。その内容は、ケニヤッタ氏の隠された資産に関する情報を隠蔽し、その行為がいかなる法律にも違反していないことを主張し、オフショアでの保有を賢明な財務的行動であると擁護するなど、ケニヤッタ氏の容疑を晴らそうとするものだ。

マドゥン氏が過去の調査と照合した結果、真実ではないコンテンツをアップロードしたアカウントが、ケニアの政府支持派周辺のプロパガンダを流していることが判明した。

「ここで重要なのは、これらのコンテンツの多くが明確な嘘ではなかったということです」とマドゥン氏は書いている。「これは、プロパガンダと偽情報を組み合わせた政治色のある偽りの草の根運動です。特に、ケニア人の多くがケニヤッタ大統領を支持し、パンドラ文書に不信感を抱いているというコンセンサスを捏造することを目的としていました」。

キャンペーンの手法は洗練されたものではなかったが、組織的かつ効率的だった。同じ画像や言葉遣いを繰り返したり、有名人の名前を頻繁に使ったりしていたため、アカウントの特定は容易だった。それら同士の関連性が強かったため、2人はノイズを突破して、Twitter上ではっきりとわかる複数のトレンドトピックを識別することができた。

偽りの草の根運動によるキャンペーンの多くは、真実を曲げて伝えることを目的としているが、それらの主催者は情報の捏造も躊躇しなかった。例えば、ナイロビ在住の経済学者Reginald Kadzutu(レジナルド・カズツ)氏がBBCのインタビューでケニヤッタ大統領を擁護しているように見える画像があるが、そのインタビューは実際には行われていない。画像は偽物だ。

Twitterは、マドゥン氏からの通報を受け、230以上のアカウントに対し、プラットフォーム操作とスパムに関するポリシー違反として措置を取った。

「Twitterのユニークでオープンな性質は、このような調査を後押しします」とTwitterの広報担当者はTechCrunchに話した。また、TwitterはAIと人間のモデレーターを組み合わせ、プラットフォーム上の会話を操作しようとする試みを検出しているとも述べた。

マドゥン氏によると、ケニアの情報エコシステムは、Twitterを翻弄し続ける、確立した偽情報産業に悩まされている。「偽情報は、他の産業と同じように、お金や明確な成果を求める産業です」とマドゥン氏はTechCrunchに語った。「多くの点でそうしたキャンペーンは通常の機関と非常によく似ています」。

この業界には、コンテンツをTwitterのトレンドモジュールにまで増幅させ、結果を出す確立された方法がある。2人のインタビューに応じたあるTwitterユーザーは、過去5年間、ケニアの政党の話題など、さまざまなコンテンツをTwitterのトレンドに載せるために金をもらっていたと説明した。

さらにマドゥン氏はインタビューを通じ、こうしたキャンペーンの中には、自分たちのメッセージを宣伝するために認証済みのユーザーを雇ったり、報酬を支払ったりして、Twitterのトレンドアルゴリズムの下で、さらにトレンドを押し上げようとしていることを知った。

この種の仕事を探している人は、国内のさまざまな政治キャンペーンのために人材を募集しているWhatsApp(ワッツアップ)グループを見つけることができる。そうしたグループは偽情報活動の司令塔としての役割を果たしており、メッセージを伝達し、そのメッセージができるだけ効果的になるようにタイミングを調整している。

「私たちが話を聞いたインフルエンサーの1人は、『ツイッターは簡単だ』と話していた」とマドゥン氏は書いている。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

原文へ

(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルがケニアでクラウドソーシングアプリ「TaskMate」を展開、グローバル展開も検討

米国時間10月18日、Googleは、ケニアにTaskMateを立ち上げた。これはスマートフォンを利用して仕事を見つけ賃金をもらうというクラウドソーシングなアプリで、同社は成長途上のギグ経済を活用する。Googleはケニアで1年間の実験を経てこれからベータテストを行い、この大陸の他の国にも導入するための準備をする。このアプリはインドでもパイロットとして利用できる。

アプリTaskMateのユーザーは、企業が求める翻訳や写真撮影など、スキルを要する、あるいは要しないタスクを充足するが、求人が載るためにはGoogleの承認を必要とする。

TaskMateのような、人びとがサービスを実行して代金をもらうというタイプのGoogleのアプリは、他にもある。たとえば有料でアンケートの回答者になるというアプリや、またLocal Services Adsというアプリは企業に、その会社のサービスを必要としている知人等を見込み客として結びつけて謝礼を得る。

TaskMateのプロダクトマネージャーであるMike Knapp(マイク・ナップ)氏は「TaskMateをローンチしましたが、アフリカだけでなく、も世界でオープンするのもこれが初めてです」と挨拶している。

パイロット事業は2020年後半に始まり、ユーザーはペンシルベニア州立大学の研究プロジェクトのために植物の写真を撮ったり、その他いろいろな仕事をした。このアプリのギグワークには、在宅と現場仕事の両方がある。

ナップ氏は、パイロット事業について「パイロットでは1000名の人たちがアプリを使用し、とてもポジティブなフィードバックが得られました。そこで、今日からはベータ段階に移行します。より大規模な実験になるでしょう」と述べている。

「今は、実験に協力してくれる企業やスタートアップを探しています。彼らの難しい問題の解決にどれぐらい役に立つか、それを検証したい」。

このプラットフォームに求人をポストする企業は、求職者のグループを指定できるし、また特定のスキルを持つ人を招待できる。ケニアのTaskMateのユーザーは、稼いだお金をモバイル決済サービスM-Pesaから引き出せる。M-Pesaを運用しているSafaricomは、東アフリカで最大の通信企業だ。

「クラウドソーシング方式なので、求人を広めるのも、仕事を達成するのもシンプルです。このアプリはケニアの人たちに仕事と収入を得るチャンスを提供し、コミュニティの創成と副収入の獲得の両方の役に立ちます。これはGoogleのアフリカに対するコミットメントであり、DX(デジタルトランスフォーメーション)の旅路でもある」とナップ氏はいう。

TaskMateの立ち上げと同時期にGoogleは、ガーナとケニアとナイジェリアと南アフリカの小規模企業を助けるための、1000万ドル(約11億4000万円)のローンを発表した。パンデミックによって停滞した経済の回復を助ける意図もある。ローンの提供は、サンフランシスコの非営利貸付組織Kivaを通じて行われる。この融資は、先々週に発表されたアフリカへの10億ドル(約1143億円)の投資の一部だ。

Googleの投資に含まれる海底ケーブルは、南アフリカとナミビアとナイジェリアとセントヘレナを貫き、アフリカとヨーロッパを結ぶ。それは高速インターネットを提供し、2025年までにナイジェリアと南アフリカに、デジタル経済の成長により170万の雇用を作り出す、と言われている。

アフリカのデジタル経済はこのような統合化の継続とともに一層の成長が期待され、接続人口の増加によっても成長の新たな機会が生まれる。アフリカのサハラ南部地域では、人口の28%、約3億300万人が現在、モバイルインターネットに接続している、と2021年のGSMAモバイル経済報告書はいう。そしてこの数字は2025年には40%にもなり、TaskMateのようなインターネット接続を利用するサービスや、アフリカの若い人口により、インターネットをベースとする企業やサービスにさらに大きな機会を提供する。

画像クレジット:SpVVK/Getty Images

原文へ

(文:Annie Njanja、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Uberがアフリカで相乗りサービスをテスト、世界的には新型コロナで類似サービス停止中

Uber(ウーバー)は、同じ方向に向かう乗客が乗車料金をシェアできる機能「Pool Chance」をケニアでテスト中で、ガーナとナイジェリアでもこの低価格サービスを展開する予定だ。ケニアのナイロビで車を予約する際にこのオプションがあるのをTechCrunchが発見した。Uberの広報担当者によると、このサービスはパイロット版(ベータ版)の一部であり、小規模なテストの結果を踏まえてより広範囲に展開する予定とのことだ。

アフリカで初めて導入されるこの新サービスは、2014年にサンフランシスコのベイエリアで開始され、その後、世界の複数の都市で導入されたUberPoolに似ている。この低価格で人気のサービスは、米国やカナダを含む多くの地域で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)規制のために一時停止したままだが、Uberは一部の市場で徐々に復活させていて、これまで展開していなかった場所にも導入しつつあるようだ。同社は、この2つのプロダクトのコンセプトは似ているものの同じではないとし、さらなる詳細は明らかにしなかった。

しかし、Uberのドライバー向けフォーラムのこちらのスレッドでは、その違いを次のように説明している。Pool Chanceは、ドライバーが他の乗客を拾えば割引料金で乗車できるチャンスがあり、そうでなければ個別に乗車した場合に支払う通常料金が課される。UberPoolは、他に誰か乗車するかどうかにかかわらず特定の相乗り料金が適用される。

Pool Chanceオプションは、ナイロビでは格安サービスのChap Chapで利用でき、ナイジェリアの人口の多い都市ラゴスとガーナの首都アクラでは、UberXカテゴリーで利用できるようになる。

Uberの東・西アフリカ地域のコミュニケーション責任者であるLorraine Ondoru(ロレーヌ・オンドル)氏は「当社は現在、新しいUberライドであるPool Chanceを試行しています。これはナイロビ(ケニア)の乗客が同じ方向に向かう他の客と乗車を共有する場合、料金を抑えることができるというものです」とTechCrunchに語った。

「新しいサービスを導入する際には、このような方法を用いて、市場が健全でバランスのとれた状態を維持するようにしています。このサービスが正式に展開される際に詳細をお伝えします」と付け加えた。

Uberは、2020年10月にウクライナのキエフでPool Chanceを導入し、そして4月にはニュージーランドのオークランドでも展開を始めた。また、2021年初めにはオーストラリアのシドニーとパースでも低価格のライドシェアサービスを導入し、その後アデレードでも開始した。

Uberはアプリ上で、Pool Chanceにより乗車料金を最大30%抑えられ、客はさらにお得に移動できるようになる、と話している。

同社はこの新サービスについて、アフリカ3カ国のドライバーに向けたメッセージの中で「手頃な価格のシェアライドは、アプリを利用する乗客が増えることを意味し、より多くの移動、ダウンタイムの減少、そしてドライバーの全体的な収益につながります」と述べた。

Uberはアフリカで、エジプト、南アフリカ、ウガンダ、タンザニア、モロッコなど8つの市場でサービスを提供している。

エストニアを拠点とする配車サービスBoltのようなライバルとの競争が激化する中、Uberは顧客の維持と新規顧客の獲得を目的とした新戦略のもと、ここ数カ月の間にアフリカ大陸全体でサービスを拡大し、新プロダクトを導入してきた。

今月初め、Uberはナイジェリアのイバダンとポートハーコートの2都市に進出し、すでにサービスを展開していた他の3都市に加えた。

また南アフリカでは、2021年9都市に事業を拡大し、UberX、UberBlack、格安サービスのUberGoとともにプレミアムサービスのUber Comfortを導入した。また、8月には、世界の他の市場ではすでに提供されていた、1カ月前から乗車予約ができる機能を追加した。

Uberがアフリカの市場で乗車料金を割り勘にするサービスを導入する計画は、同社が最近のレポートで「ライドシェアは今後3~5年の間に公共交通機関の中でますます重要な役割を果たすようになるだろう」と述べたことを受けてのものだ。

バスや鉄道は大勢の人を運ぶことができるため、今後も公共交通の中核となるが、マイクロトランジットやライドシェア、マイクロモビリティなどの手段によって補完されていくだろうと同社は付け加えた。

「ライドシェアのようにコストが変動する新しい交通手段が加わり、オンデマンドサービスが普及することで、公共交通機関の効率化と低コスト化に新たな一石が投じられることになる」と述べた。

これにより「公共交通機関のネットワークの公平性、アクセス性、回復力、柔軟性」を確保し、改善することができる、としている。

公共交通機関にサービスを提供する部門であるUber Transitと、2020年買収した交通機関向けソフトウェアを提供する会社Routematchを通じて、交通機関がより効率的に運営できるような新しいツールを提供し、ライダーもサポートするとレポートで述べている。

2015年にUber Transitを設立して以来、同社は世界各地で公共交通機関をシームレスにすることを目指したサービスを展開してきた。

2019年初めには、デンバーの乗客が旅の計画やチケット購入ができるUberアプリ内サービスを開始し、カリフォルニア州のMarin Transitとの提携では公共交通機関を動かすソフトウェアを提供した。

2020年9月には、一部の市場で「Uber and Transit」を開始し、乗客が電車やバスといった他の公共交通手段と組み合わせて配車サービスを利用できるアプリ内機能を立ち上げた。

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Annie Njanja、翻訳:Nariko Mizoguchi

Netflixがケニアで無料プランを開始、東アフリカでの成長を加速へ

Netflix(ネットフリックス)は米国時間9月20日、2000万人以上のインターネットユーザーがいる東アフリカへ展開を進めるため、ケニアで無料モバイルプランを開始すると発表した。

この無料プランは、今後数週間のうちにケニアのすべてのユーザーに提供される予定で、アカウント登録時に支払い情報を提供する必要はないとのこと。18歳以上でAndroidスマホを持っているユーザーであれば誰でも利用でき、広告も含まれない。

世界190カ国以上でサービスを提供しているNetflixは、近年、発展途上国の顧客を獲得するために、さまざまなプランを実験的に導入してきた。例えば、2018年にはインドで3ドル(約320円)のモバイル専用プランのテストを開始し、その後、他のいくつかの国のユーザーに拡大した。

関連記事
Netflixが月440円のモバイル専用プランをマレーシアで提供開始
「ストレンジャー・シングス」などNetflixがパソコンとAndroidで映画、ドラマの人気作品を無料配信中

また、Netflixが自社のサービスを無料で、あるいはほぼ無料に近い形で提供するのは、今回が初めてではない。同社はこれまでにも、多くの市場で無料トライアルをサポートしたり、オリジナルの映画や番組のごく一部を非加入者に提供したりしており、インドでは少なくとも1回、週末にサービスを無料で利用できるキャンペーンを実施したことがある。

しかし、今回のケニアでのサービスは、やはり注目に値する。ロイター通信によると、同社は東アフリカの国で、映画やテレビ番組のカタログの約4分の1を無料プランのユーザーに提供しているそうだ。

Netflixのプロダクト・イノベーション・ディレクターであるCathy Conk(キャシー・コンク)氏は「これまでにNetflixを見たことがない方(そしてケニアでは多くの方が見たことがない)にとって、これはNetflixのサービスを体験するのに最適な方法です」とブログで述べている

「気に入った作品があれば、有料プランに簡単にアップグレードできるので、テレビやノートパソコンでもフルカタログを楽しむことができます」。

同社は、この無料サービスをケニアでいつまで提供するのか、また他の市場への拡大を検討しているのかについては明らかにしていない。

Netflixの経営陣は、過去の決算説明会で、各市場を調査し、すべての人にとってより魅力的なサービスを提供する方法を検討していると主張してきた。支払い情報なしで登録できることは、そのような主張に信頼性を与えてくれる。発展途上国では、クレジットカードやデビットカードを持っていない人が多く、登録時に決済手段を必要とするサービスにはアクセスができない。

モバイルゲームの提供も計画しているNetflixは、2021年6月に終了した四半期において、150万人の有料会員を獲得したのみで、その数字は予想を下回っていた。2億900万人以上の加入者を集めているNetflixをはじめ、Amazon Prime Video(アマゾン・プライムビデオ)などのストリーミングサービスは、より速い成長率を維持するために、米国外の顧客を獲得しようとする動きを強めている。

2021年初め、Amazonはより多くの顧客を開拓するために、インドのショッピングアプリ内に無料で広告付きのビデオストリーミングサービスを導入した。

関連記事
Netflixがゲーム分野への拡大を表明、追加料金不要でまずはモバイル向けから
アマゾンがインドでアプリ内無料ビデオストリーミングの提供を開始

画像クレジット:Krisztian Bocsi / Bloomberg / Getty Images

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

パンデミック後のアフリカのモバイルアプリ市場と急上昇するモバイルゲームアプリ利用率を読み解く

パンデミックは世界のアプリ市場に大きな影響を与えている。モバイルアプリに対する消費者の支出は2021年第1四半期および上半期にそれぞれ320億ドル(約3兆5200億円)、649億ドル(約7兆1700億円)となり、新記録を樹立した。

関連記事:2021年上半期のモバイルアプリ支出額が過去最大の7兆円超え、ダウンロード成長は鈍化

アフリカの状況は世界のアプリ市場に関するレポートでもあまり言及されないので、正確な消費者支出を求めるのは難しい。それでも、Google(グーグル)とAppsFlyer(アップスフライヤー)が共同で発表した最新のレポートでは、2020年のパンデミック発生以降のアフリカにおけるアプリ市場の状況について、いくつかの重要な情報を読み取ることができる。

このレポートは、アフリカの3大アプリ市場(ケニア、ナイジェリア、南アフリカ)における、2020年第1四半期~2021年第1四半期のモバイルアプリのアクティビティを追跡している。

この3大市場における6000のアプリと20億のインストール数を分析したところ、2020年上半期から2021年上半期にかけて、アフリカのモバイルアプリ業界(主にAndroid)全体でインストール数が41%増加した。ナイジェリアは最も多く43%増、南アフリカ、ケニアではそれぞれ37%増、29%増となった。

ロックダウン期間の数字

アフリカでは2020年3月22日にルワンダが初めてロックダウンを実施。続いて、ケニア(3月25日)、南アフリカ(3月27日)、ナイジェリア(3月30日)でロックダウンが開始された。

2020年第2四半期からは自宅で過ごす人が増え、アプリのインストール数は3か国で20%増加。南アフリカではロックダウンの影響が最も早く表れ、インストール数は2020年第1四半期と比較して17%増加した。

一方、ナイジェリアとケニアにおける同時期のインストール数の増加は、それぞれ2%と9%だった。レポートによると、このような差は、各国の規制レベルの違いにより生じたものだという。南アフリカは規制レベルが最も厳しく、ロックダウンの頻度も高かった。

2020年第1四半期~第2四半期ではゲームアプリが好調に推移し、非ゲーム系アプリの販売が8%増であったのに対し、ゲーム系アプリは50%増となっている。これは、全世界で2020年第2四半期にゲームアプリのダウンロード数が急増(140億ダウンロード)し、過去最高を記録したトレンドと一致する。

アプリ内課金による収益と前年同期と比較した増加率

AppsFlyerによると、最も大きなトレンドとして注目されるのはアプリ内課金による収益だ。2020年第3四半期におけるアプリ内課金による収益の数字は、2020年第2四半期と比較して136%という驚異的な伸びを示し、2020年の総収入の33%を占めた。レポートによれば「アフリカの消費者が小売店での購入からゲームのアップグレードまで、アプリ内でどれだけ消費しているかがはっきりした」という。

アプリ内課金による収益は南アフリカで213%増加、ナイジェリアとケニアではそれぞれ141%、74%増加した。

スマートフォンの利用時間が増えたことから、アプリ内広告収入も前年同期比で大幅に増加し、2020年第2四半期から2021年第1四半期にかけて167%増加した。

先ほど2020年第1四半期~第2四半期で比較したゲームアプリと非ゲームアプリについては、2020年第2四半期と2021年第1四半期との比較では、それぞれ44%、40%増加している。

フィンテックとスーパーアプリ

過去5年間、アフリカのスタートアップに対するベンチャーキャピタルの投資は、フィンテック分野が圧倒的に多いが、それも当然である。フィンテックは、主にモバイルを利用する、大多数の銀行口座を持たない消費者、銀行口座を使いにくい消費者のみならず、銀行口座を持つ消費者にも多くの価値をもたらす。アフリカにおける10億ドル(約1100億円)規模のスタートアップのうち、1社を除いてすべてがフィンテックであるのは、この価値を踏まえてのことだ。

Disrupt Africa(ディスラプトアフリカ)のレポートによると、アフリカのフィンテックは、2017年から2021年の間に89.4%の成長を遂げ、現在、大陸全体で570社以上のスタートアップ企業が存在する。多くのフィンテックはモバイルベースで、アフリカの消費者が毎日利用するフィンテックアプリの数が反映されている。南アフリカとナイジェリアの消費者によるフィンテックアプリのインストール数は、前年比でそれぞれ116%、60%増加した。

AppsFlyerは、フィンテックアプリと同様に、スーパーアプリも増加していると報告している。スーパーアプリ、すなわち「オールインワン」アプリは、銀行業務、メッセージング、ショッピング、ライドヘイリングなど、さまざまな機能をユーザーに提供する。このようなアプリの増加は、大陸ではデバイスが限られることにも起因するが、フィンテックアプリの急増と同様、システム的な銀行口座の使いにくさも一因である。

レポートは「スーパーアプリは、ユーザーが直面する課題を解消し、顧客情報の取得や従来の銀行では実現できないレベルの利便性の提供を可能とする」と報告している。

AppsFlyerのEMEA & Strategic Projects担当リージョナルバイスプレジデント、Daniel Junowicz(ダニエル・ジュノヴィッチ)氏は、本レポートで取り上げられているトレンドについて次のように話す。「2020年来の(パンデミックによる)混乱にもかかわらず、アフリカのモバイルアプリ市場は盛況で、インストール数は増加し、消費者は今まで以上に多くのお金を費やしています。企業が収益を上げる上で、モバイルがいかに重要であるかがわかります」。

関連記事
【コラム】アフリカ諸国政府にブロックチェーンサービスを売って学んだこと
アフリカでの銀行業務と決済のためのローカルソリューション構築を目指すナイジェリアのAppzone
2021年のアフリカへのVC投資は史上最高額を記録するとの予測

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:アフリカアプリケニアナイジェリア南アフリカフィンテックスーパーアプリ

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

【コラム】アフリカ諸国政府にブロックチェーンサービスを売って学んだこと

編集部注:本稿の著者Mohammed Ibrahim Jega(モハメド・イブラハム・ジェガ)氏は、Domineum Blockchain Solutionsの共同ファウンダー。連続テック起業家、スタートアップアドバイザー、フィンテック専門家でブロッチェーン推進者。

ーーー

アフリカ大陸の大きな魅力の1つは12億という人口であり、そこに獲得可能な巨大市場があることを意味している。しかし、ターゲット顧客が54カ国の政府だと何が起きるのか?

我々のケースがそれだ。Domineum Blockchain Solutions(ドミニエム・ブロックチェーン・ソリューションズ)を設立したのは、アフリカ諸国政府が貨物の出荷と記録管理に関わる問題を解決するのを手助けするためだった。

大変な仕事になることはわかっていたが、最初の顧客を獲得するのが最難関になるとは予想していなかった。

当社の最初のプロダクトは、貨物の出荷元と移動経路を追跡し、あらゆる国との輸出入製品の内容を特定する貨物サービスだった。我々は、貨物が非公式な裏経路を通ることによる収入減少問題を解決するためにこれを開発した。

サハラ以南アフリカに焦点を合わせていた我々は、2019年に4つの国に打診した。母国ナイジェリアとケニア、ガンビア、ギニア共和国の各国だ。

最初に話を持ちかけた時、どの政府からも期待した反応を得られなかった。我々のソリューションを試す準備が整っていなかった。提案は新奇であり、彼らがブロックチェーン技術に馴染みがなかったためだ。動揺した我々は、ターゲットに小国を加えた、シエラレオネだ。

首都フリータウンの港湾は、シエラレオネの貿易の主たる玄関口として貿易量の80%がここを通過している。同港には貿易中継地としての長い歴史があり、ヨーロッパとアメリカ大陸の中間という戦略的に重要な位置の恩恵を受けてきた。

しかし、フリータウンはアフリカはもちろん、サハラ以南アフリカの中でも主要な港湾都市とはいえない。この港を通過するのは、全世界の輸送取扱量の1%にも満たない。世界人口のおよそ0.1%が住むアフリカの小国はダイヤモンド、カカオ、コーヒーなどを輸出し、食糧、機械、化学薬品などを輸入している。

ある時この国は、一連の製品の輸出入に関して大きな課題に直面した。シエラレオネのあるサプライチェーンマネージャーが状況を説明した。「私たちは輸出手続きで大きな課題に直面しました。港で長期に渡る遅延が起きていたのです。深夜前に到着した私たちのトラックは、何時間、時には何日間も順番を待たせられました。書類手続きが非常に複雑でした」。

世界銀行によると、シエラレオネの「貿易問題はいくつかの要因に起因する。貿易情報の欠如、高レベルな現物検査、さまざまな手数料、ライセンス、許可証、証明書。手作業による手続き。当局部署間の連携の欠如など」。Domineumはこれを解決することを目指した。

シエラレオネ政府との最初の話し合いは順調に進んだ。幸運なことに、シエラレオネは国境を越える物品の移動に必要な時間とコストを減らすために、世界銀行グループの支援を受けて5年計画(2018~2023年)を展開していた。目標は、貿易コストの10%削減だ。3カ月に渡る検討の結果、当社の貨物追跡システムが導入された。

当社は2019年の終わりにこの提携事業を開始し、さもなければ失われていた200万ドル(約2億2000万円)の収益を獲得することに成功した。ビジネスモデルはシンプルだ。当社の貨物追跡システムによってシエラレオネ政府が獲得した追加収益の40%を手数料として我々が受け取る。

アフリカに参入する際、ナイジェリアや南アフリカ、ケニアなどの大きくて人気のある市場に焦点を当てたがるのが一般的だ。しかし、これまでに我々が学んだのは、この国々は会社にとって最初の参入国ではない可能性が高いということだ。ビジネス-政府モデルは一筋縄ではいかない。政府と仕事をするためには実にさまざまな政治活動が必要だ。

これまでうまくいっているのが、まずいくつかの国に接触して足がかりを得て、それをコンセプトが通用する検証として使うやり方だ。シエラレオネでの成功を受け、我々は他の国々に戻って、よりよい反応を得られることを期待している。

シエラレオネの成功は、我々が提供していたサービスを考え直すきっかけになった。当初の話し合いは貨物追跡サービスから始まったが、やがて我々は、始めにノーと言った国に別のサービスを提案すべきなのではないかと考えた。

アフリカでは土地登記が共通の問題であることがわかった。アフリカの農村部の90%以上が未登記であり、土地収奪の温床になっている。このことが農業その他の産業の成長を阻んでいる。紛争時に土地が他者に略奪されたり、政府に強制収用されるからだ。

我々は再び各国を訪れ、ブロックチェーンを用いた土地所有登記などのサービスを提案した。ナイジェリア政府から肯定的反応があり、パイロットプログラムを実施することになった。このパイロットフェーズが終わった暁には次のビジネス契約を獲得できることを楽観している。

アフリカ諸国政府とのビジネスはどんな感じだったか?小さくて獲得可能な市場である。もしあなたが、アフリカの国の政府に製品やサービスを売り込むつもりなら、最初の顧客は小さな国にいることを念頭に置くのがよいだろう。

その他のチャンスをつかむために、我々はこの発想に基づいて今後も他のアフリカ諸国への拡大計画を続けていくつもりだ。

関連記事
2021年のアフリカへのVC投資は史上最高額を記録するとの予測
アフリカ、ラテンアメリカ、インドなどの新興市場では決済、融資、ネオバンクがフィンテック業界を掌握
日本のVC「サムライインキュベート」がアフリカのスタートアップ向けに20億円超のファンドを組成完了

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:アフリカシエラレオネコラムナイジェリア南アフリカケニア

画像クレジット:KTSDESIGN SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

原文へ

(文:Mohammed Ibrahim Jega、翻訳:Nob Takahashi / facebook

新興国市場のファウンダーを資本、資源、人材と結びつけるケニアのPariti

Startup Genome(スタートアップ・ゲノム)によると、北京、ロンドン、シリコンバレー、ストックホルムとテルアビブは、世界最高水準のスタートアップエコシステムだ。データ・調査会社の同社は、企業の業績、資産、市場活動範囲、連結性、人材、知識などを使ってランキングを作っている。

中国とインドを除き、新興国市場のスタートアップは2020年のトップ40に入っていない。それらの地域が6つの要素全部で遅れを取っていることは周知の事実であり、上に挙げたエコシステムの基準に達するまでには数十年を要するかもしれない。

しかし、Yacob Berhane(ヤコブ・ベルハネ)氏とWossen Ayele(ウォッセン・アイル)氏の2人が設立したケニアのB2BマネジメントのスタートアップPariti(パリティ)は、6要素のうち3つのギャップ、資産、知識、および人材へのアクセスを埋めようとしている。

こうした課題、中でも資産利用のハードルはアフリカでは高い。例えばサブサハラアフリカ(サハラ砂漠より南の地帯)のアーリーステージスタートアップに投資される資金は、ラテンアメリカ、MENA(ミーナ)諸国、南アジア市場の半数以上の企業とと比べてわずか25%ほどでしかない。

「必要なリソースを得られないスタートアップの成功を手助けするソリューションを作りたかったのです」とCEOのベルハネ氏がTechCrunchに話した。「この問題は、生まれたばかりのアフリカ市場で特に急を要しています。そしてこのプラットフォームは、あらゆる新興国市場のファウンダーのために作られています。つまり、まだスタートアップエコシステムが成熟していないすべての地域ということです」。

では、Paritiのチームはどうやってこの問題を解決しようとしているのか?アイル氏は、ある意味でParitiはアンバンドルされていないアクセラレータのようなものだと語った。

一般的なアクセラレーターでは、ファウンダーは集中的なプログラムを通じて、スタートアップが成長していく過程で必要になるあらゆる情報を詰め込まれる。一方Paritiでは、ファウンダーがビジネスの次のステージへ行くために今すぐ必要な情報とリソースを手に入れることができる。

3種類のマーケットプレイス

ファウンダーが入学すると、Paritiはアセスメントツールで会社を評価する。そこでは各社が売り込み資料や会社情報を共有する。Partiは各社のチームや市場、プロダクト、経済などを70項目にわたって評価する。

それが終わると、Paritiはそれぞれの会社を他社と比較するベンチマークを行う。業界、プロダクトのステージ、売上、資金調達などが同レベルにある会社同士が比較対象になる。ファウンダーは自分たちの売り込み資料へのフィードバックや、基準となる数値の詳しい評価結果を受け取り、その後のビジネス構築や資金調達に役立てる。

「このアプローチによって、各社のビジネス内容、強み、弱点などを極めて詳細に見ることができるので、会社が特に必要としているリソースを配分するための順位づけが可能になります」とアイル氏はいう。

それだけではない。Paritiはファウンダーを自らが運営する世界のエキスパートコミュニティのメンバーに1対1で引き合わせる。専門家の経歴は、さまざまな分野における金融、マーケティングからプロダクト、テクノロジーにわたる。さらにParitiは、ファウンダーがプロダクト開発にもっと支援を必要としている場合、コミュニティの中から選りすぐりのエキスパートを雇用のために紹介することもある。

アイル氏によると、ファウンダーはこの後も評価を受け、フィードバックの実践、リソースと人材とのつながりを続けることができる。

その一方で、Paritiでは投資家もプラットフォームに登録して、欲しいデータを集めることができる。つまりスタートアップが資金を調達したいとき、Partitiは投資家のプロフィールと好みに応じて企業を紹介することができる。

「アルゴリズムに基づくマッチングプラットフォームを作り、関連のある出資情報をVC投資家と共有しています。投資家がファウンダーと接触する方法も簡単にしました。これまでこのエコシステムでは特に面倒だった部分です」とアイル氏は付け加えた。

Paritiの投資家プラットフォーム

要約するとParitiは、ファウンダーが手頃な人材とつながり、資本を入手し、ビジネスを開発する手助けをする。専門家は興味深いスタートアップに助言をして、一時的収入を得る機会を得られる。さらに彼らはアーリーステージ・エコシステムとの接触を増やし成長をみてスキルを確認することで収益の可能性を広げることができる。投資家は、独自の契約フロー、自動化されたフィルタリングによって非常に効率的な運用が可能になり、デューデリジェンス、調査、ポートフォリオ管理で専門家のオンデマンド・サポートを受けられる。

COOによると、同社はこのプラットフォームを通じてこれまでに膨大な価値を生んできたという。その証言の1つが、ケニアのフィンテック・スタートアップ、FIngo AfricaのファウンダーであるKiiru Muhoya(キイル・ムホヤ)氏が本誌に語った経験談だ。同プラットフォームは彼の会社がプリシードラウンドで25万ドル(約2700万円)調達するのに役だった。

ムホヤ氏は、予定していた資金調達の前にParitiの評価を受けたことで、自分がターゲットにしていた市場が小さすぎる事に気づいた、と語った。また、成功するためにはVCが何を見ているかをもっと学ぶ必要があった。

ムホヤ氏は、自分を反対の立場に置く決断を下した。Paritiの専門家プラットフォームに参加すると、各社の状況をみて他のファウンダーにアドバイスを与え始めた。こうして彼は数カ月のオフ期間を得て、自分のビジネスをParitiで最初に受けたフィードバックや専門家プラットフォームで学んだことに基づいてピボットするきっかけにした。自分の会社を再びプラッフォームの評価にかけ、プリシードラウンドを完了した。

Paritiは2019年のスタート以来著しい発展を遂げてきた。現在42カ国で500社以上の会社を抱え、100人のフリーランスエキスパートと60の投資家が同社のプラッフォームを使っている。さらにベルハネ氏は、現在5つのファンドがParitiのオペレーティングシステムを使って取引を管理していることを付け加えた。

私たちは、新興国市場でスタートアップが作られ、スケーリングするためのレールを敷いていると思っています。パートナーはラテンアメリカやインドを含むさまざまな新興国市場にいます。米国にも強い関心を持っており、そこは私たちのプラットフォームを本当に必要としている場所です」とベルハネ氏は語った。

投資家に対してはサブスクリプションモデルで課金しているが、ベルハネ氏は数字を明らかにしなかった。いずれファウンダーからもサブスクリプション料金を取る、と述べている。もう1つの収入源は、投資家やファウンダーがParityのフリーランスエキスパートをプロジェクトで使う際に支払う手数料だ。プラットフォーム上で資金調達が実行された場合も同様だ。

資金調達といえば、最近同社は金額非公開のプレシード資金を獲得している。500 Startups、Kepple Africa、Huddle VCらのエンジェルやVCが参加した。

しかし、Paritiにとってすべてが順調だったわけではない。ファウンダーや投資家と付き合う上で重要なのは信用だからだ。ベルハネ氏は、投資家と関わる上で経験した惨劇を語ったファウンダーがいる一方で、ファウンダーが虚偽の数字を報告したと話す投資家もいたことを明かした。

Paritiはこの問題に対処すべく、両者とNDAを結び、Paritiはファウンダーが希望するまでデータを投資家に公開しないことを約束した。そして、投資家はParitiが入念に吟味するまで契約できない。

ファウンダーは2人とも東アフリカ系(ベルハネ氏がエリトリア、アイル氏がエチオピア出身)で、現在一緒に働くようになるまで何度か顔を合わせたが、それぞれ別の道を歩んできた。

COOのウォッセン・アイル氏とCEOのヤコブ・ベルハネ氏(画像クレジット:Khadija M Farah & Rebecca Ume Crook)

アイル氏は東アフリカ各地にオフィスをもつコンサルティング会社でキャリアをスタートし、その後ロースクールに通うために米国に渡った。そこで初めてアーリーステージスタートアップの世界に接し、新興市場に特化したVCファンドの仕事に就いた。

「コミュニティを助けるためにテクノロジーとイノベーションが果たす役割を見つけることができました。誰もが利用できる金融から必要な品物やサービスの利用、ピラミッドの底辺の人々を市場とつなぐことまで」と彼は言った。

アイル氏は法律学校を卒業して訓練を終えるとナイロビに戻り、成長するアフリカのスタートアップエコシステムに関わり、ベルハネ氏とともに会社を設立した。

米国で金融と投資銀行業務を学んだCEOは、アフリカに戻ってパン・アフリカ・アクセラレーターを南アフリカ、ヨハネスブルグで起業した。ベルハネ氏はAfrican Leadership University(アフリカ・リーダーシップ大学)やAjuaなどの会社で管理職として働いたが、ほとんどの時間を会社の契約仲介業務に費やしていたことが後にParitiを立ち上げるきっかけとなった。

「企業が2000万ドル(約21億7000万円)以上の資金を調達するのを助け、そのお金が雇用創生や社員の上昇志向につながっていくのを見たことで、金融分野の中で自分が役に立つ道があることを知りました。これからも、スタートアップエコシステムにおける資本入手や人材、知識の不均衡の増加や、それに対処するためのインフラストラクチャーの欠如についてずっと考えてきました。Paritiは、私たちがそれを解決したいと考えている方法です」とベルハネ氏は語った。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Paritiアフリカケニア資金調達

画像クレジット:Khadija M. Farah & Rebecca Ume Crook

原文へ

(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アフリカを次のグローバル食料基地にするSunCultureのソーラー揚水ポンプ

国連のレポートによると、人口増加の需要に対応するには世界の食料供給を2050年までに倍にしなければならない。供給量を増やすために新しい耕作地を確保するというプレッシャーが高まる中、次の世界の食料基地候補として世界の目はアフリカ大陸に向けられている。

アフリカ開発銀行によると、世界の未開耕作地の65%がアフリカにある一方で、アフリカ諸国は農業分野の生産性向上で大きな障壁に直面している。

アフリカでは80%の世帯が農業で暮らしているが、灌漑を使っているのは4%にすぎない。そして多くの世帯が安定した安価な電力にアクセスできていない。この2つの問題を解決しようと、SunCulture(サンカルチャー)を共同で創業したSamir Ibrahim(サミール・イブラヒム)氏とCharlie Nichols(チャーリー・ニコラス)氏は8年を費やしてきた。

新しい融資モデル、それから専用の太陽光発電で動く発電機と揚水ポンプでニコラス氏とイブラヒム氏は収入を増やすために同社の設備を使っている顧客のネットワークをすでに構築した。そうした顧客は価値の高い作物を栽培し、より広い面性を耕し、そして多くの家畜を育てることで収入を以前の5〜10倍に増やすことを目指している。

同社は事業をアフリカ中に拡大するために1400万ドル(約15億円)の資金調達をクローズしたばかりだ。

「我々は2050年までに食料生産を倍増させなければなりません。食物を育てるのに十分なリソースがあるところはというとアフリカです。農業に従事する人が大勢いて、広大な土地が広がり、リソースも豊富です」とイブラヒム氏は述べた。

アフリカの小規模農家は生産性を上げるにあたって2つの大きな問題に直面している、とイブラヒム氏は指摘した。1つはマーケットへのアクセスだ。これは食料の無駄の大きな原因となっている。そしてもう1つの問題は、気候変動によって悪化している安定した栽培条件の欠如による食料安全保障だ。

2020年初め、とある小規模農家は「雨季は予測できません。雨が降るはずなのに降らないかと思うと、突然降ったりします」とThe Economist紙で語っている

ニューヨーク大学を2011年に卒業したイブラヒム氏は長らくアフリカに引きつけられていた。同氏の父親はタンザニアで生まれ、母親はケニアで育ち、2人とも後に米国にたどり着いた。イブラヒム氏は成長する過程で東アフリカについての話を聞かされた。

ニューヨーク大学で経営学の学位取得を目指しているとき、イブラヒム氏はニューヨークで開催されていた新進の起業家のためのイベントでニコラス氏に出会った。当時ニコラス氏は米国の大規模ソーラープロジェクトで働いていた。

2人は友達になり、ニコラス氏が読んだ農業分野での再生可能エネルギー応用についての論文に端を発てビジネスの機会について議論した。

ニューヨーク大学後援の事業計画コンペティションで2位を獲得したのち、2人は事業計画が1位に値するものであることを証明しようと決心した。ケニア行きの航空券を予約し、ソーラー発電で動く揚水ポンプと発動機を販売する事業のパイロット試験立ち上げに挑んだ。

太陽光で動く揚水システムは概念上、何年も展開されている。しかし太陽光発電とエネルギー貯蓄の施設のコストが下がるにつれ、そうしたものを使うシステムは多くの人が利用しやすいものになった。

そうしたタイミングも作用して、SunCultureは他の企業がつまづいていたところで成功することができた。「多くのマーケットで再生可能エネルギーの発電コストが既存の電力コストと並んだちょうどそのときに我々はここにやって来ました。まさに多くの開発投資家が農業とエネルギーの結合に資金を投入しているときでした」とイブラヒム氏は話した。

当初、同社はエネルギー発生と揚水のシステムを、ナイロビのような都市に仕事を持ち、そして田舎に所有する土地で作物を育てる中所得の農家に販売した。こうした「テレフォン農家」はSunCultureの初期のシステムを導入するのに喜んで5000ドル(約52万円)を払った。

いまやシステムのコストは500〜1000ドル(約5万2000〜10万4000円)で、同社の「pay-as-you-grow(成長するにつれ支払う)」モデルのおかげで世界中の農家5億7000万世帯にとってアクセスしやすいものになっている。

アフリカで提供されるあらゆるタイプのソーラーシステムの中でSunCultureが人気のビジネスモデルになったのは、ちょっとしたひねりのおかげだ。イブラヒム氏によると、投資家はオフグリッドのソーラーエネルギーの開発と、M-kopa、Greenlight Planet、d.light design、ZOLA Electric、SolarHomeといった小売テック企業に10億ドル(約1040億円)近くを注いだ。さまざまな意味で、SunCultureはそのモデルを農業への応用へと拡大しているだけだ。

「我々はサービスと融資を組み合わさなければなりませんでした。これがうまくいったのは、我々の顧客が収入を4、5倍に増やしているからです」とイブラヒム氏は述べた。「収入のほとんどは消費にいっていました。生産に向けられるのは初めてです」。

SunCultureのハードウェアは300ワットのソーラーパネルと、440Whのバッテリーシステムで構成される。バッテリーは最大4つのライト、電話2台、プラグイン式の水中に沈める揚水ポンプをサポートできる。

同社のベストセラーのプロダクトラインは、2.5エーカー(約1ヘクタール)の農地の灌漑に対応する、とイブラヒム氏は話した。「他の応用に向けて、いまはまだ入り口地点にすぎないととらえています。アフリカで最大のソーラー企業になります」 。

Energy Access Ventures (EAV)、Électricité de France (EDF)、Acumen Capital Partners (ACP)、Dream Project Incubators (DPI)といった投資家から調達した1400万ドルで、SunCultureはケニア、エチオピア、ウガンダ、ザンビア、セネガル、トーゴ、コートジボワールに進出する予定だと明らかにした。

今回のディールではEkta Partnersがファイナンシャルアドバイザーを務め、その一方で米国際開発庁のケニア投資メカニズムプログラムのもとでCrossBoundaryが市場機会や競争についての分析を含む助言サポートを提供した。

カテゴリー:フードテック
タグ:SunCulture農業アフリカケニア資金調達

画像クレジット:SunCulture

原文へ

(翻訳:Mizoguchi