20代の転職意欲を可視化ブーストするポジウィルが資金調達

ポジウィルは11月12日、STRIVE(ストライブ)、柳澤安慶氏、ほか個人投資家への第三者割当増資による資金調達を発表した。調達額は非公開。今回調達した資金は、採用やサービス開発、マーケティングとして活用し、事業基盤の強化を図るという。

同社は20178月設立のスタートアップ。転職そのものではなく、その前段階をサポートする点で一般的な転職支援サービスとは異なっている。転職希望者が同社のサービスを有償で利用することで、さまざまなアドバイスを専門家から受けられるのが特徴だ。

具体的には、累計1000人以上の利用実績があるオンライン有料転職相談サービス「そうだんドットミー」と、転職に向けた2カ月集中プログラム「ゲキサポ!転職」の2サービスを運営している。ゲキサポ!転職は、2カ月で税別30万円の費用がかかるが、2019年7月末のリリース以降、すでに100名以上が利用しているとのこと。

一般的な転職サービスは、優秀な人材を確保したい雇用主である法人から、採用が決定した人材の年収の3分1、もしくは月収3カ月ぶんほどの成功報酬を受け取るというのが基本的なマネタイズの仕組みだ。一方ポジウィルは、転職先を見つけるサービスでないため人材紹介業ではない。同社は転職希望者が、どういった仕事に就きたいのか、自分の価値はどこにあるのかといった就職活動の基礎的な部分を徹底的に鍛え直すことに特化している。

就職氷河期を経験している読者にとっては疑問符が3つほど付くサービスだが、現在の20代を取り巻く環境は当時とはまったく異なっている。リクルートキャリア出身でポジウィルの代表を務める金井芽衣氏によると「ゲキサポ!転職は20代のビジネスパーソンをターゲットとしており、若年層の就職活動に必要とされている」と語る。

スマートフォンやタブレット端末が普及した現在では、さまざまな企業に対してエントリーシートを一斉に送信できるほか、ネット企業を中心に積極的な採用活動を進めているので最近は人手不足が常態化している。特にプログラマーやエンジニアはかなりの売り手市場になっている。そして、多くの企業が事業内容だけだなく、社員教育方針、福利厚生などをウェブサイトに詳しく掲載しているため、多くの情報を短時間で集めることもできる。テクノロジーの発達によって、就職や転職を希望する側は情報過多になっているという現状がある。

その結果、「自己分析や明確な動機、会社への情熱がないままに就職が決まり、入社後に違和感を覚えて1年未満で辞めてしまう若者が増えている」と金井氏。「難易度の高い大学に努力して入った学生は特に、過去に必死に頑張ってきた経験があるため、入社後の仕事内容にやりがいや達成感を得られずモチベーションが下がってしまう傾向がある。彼らはもっともっと頑張って仕事をしたいと考えています」と続ける。ゲキサポ!転職はこういったビジネスパーソンに対し、2カ月間集中して自己分析や取り組みたい仕事などを洗い出したうえで、目的を持って転職に臨める環境を作るのが狙いだ。なお、実際の転職活動は転職者個人が進める必要がある。

同社は、転職希望者を入社させることで多額の成功報酬が得られる人材紹介業と一線を画するサービスを目指す。第一の目的は転職の成功ではなく、転職における個人の意向や可能性を転職者本人に深く考えさせること。転職市場で売り物にされないために、20代には少々高額な求職者課金型でサービスを展開しているわけだ。今後は同サービスのモデルを横展開し、子育てや介護などさまざまな悩みを専門家に相談できる有料課金サービスを育てていきたいとしている。

無料で手に入る情報は玉石混交で、その中から正しく役に立つ情報、自分に合った情報を見つけ出すには、結局は知識が経験が重要。有料サービスにすることで、本当に必要な情報に最短でリーチできる同社のサービスモデルの今後の横展開が楽しみだ。