脊髄損傷患者が脳に直接接続されたロボットハンドの指を「感じ」た

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「人差し指…薬指…小指…人差し指…中指… 」

Nathan Copelandは、研究者に向かって、今自分のどの指が触られているかを答えている。しかし研究者が触れているのはロボットの手で、Copelandの手ではない。彼の手は10年以上に渡って何も感じて来なかったのだ。

この「原理証明」実験では、脊髄損傷によって四肢の感覚を失った男性が、彼の脳に直接接続されたロボットの指に与えられる圧力を「感じる」ことができた。サイバネティックハンドへの道のりは遠いが、必要とする更に多くの人々がそれを利用できる可能性を開くものだ。

さて、注意点が2つある:まず最初に、これはロボットハンドがユーザーの脳に感覚を送った最初の例ではない;これは継続的に行われていて、どのようにそれを定義するかに依存している。第2に、とても凄いことの様に思えるものの、これはまだ神経システムの精妙さ複雑さに比べると信じられないほど粗いものだということを理解しておくべきということだ ‐ 私たちはそれを制御するどころか、理解するレベルにもほど遠い位置にいる。

とはいうものの、他の多くの義手/義足が依存している末梢神経系というステップを飛び越えているという意味で、これは重要な研究なのである。もし置換された手から信号を送ろうとするなら、結局信号が通過する、より腕の上方にプラグインすることが可能だ。しかし脊髄損傷の場合には、そうした信号は決して脳に到達しない。よってこのアプローチは上手くいかない。

ピッツバーグ大学のRobert Gauntと彼のチームが行ったことは、本質的には、ロボットアームを直接脳にプラグインして、中間の神経系や脊髄を共にバイパスすることだった。

Copelandは12年前に事故に遭い、四肢麻痺が残された。しかし事故に遭うまでの16年間に手足を動かしていた経験が意味することは、手に触れられたときにどのように感じるかを覚えているということで ‐ それはすなわち、彼の脳も覚えているということを意味するのだ。

そこで研究者らは、Copelandを異なる指に触れたときの感覚に集中させ、その感覚に関連した脳のアクティビティをトラックした。その後彼らは、指先サイズの微小電極アレイの4組を、それらの感覚がトラックされたCopelandの感覚皮質の中心に、外科的に移植した。

微小電極

使用した微小電極アレイのイメージ

その後数ヶ月にわたり、チームは繰り返しその領域に刺激を与え、人差し指、薬指、などの、どの指に触れられているのかの感覚を生み出すパターンと場所を発見した。
ついには、Copelandは、それぞれの指が脳の回路に対応したロボットハンドと接続された。

最初は85パーセントの正答率だったが、やがて100パーセント近いものになった。これはとても有効な証拠だが、関係者は皆、これはまだ初期段階に過ぎないと言う。

「究極の目標は、ただ自然の腕を動かし、感じているようなシステムを作成することです」とGauntは、UPニュースリリースで述べている。「そこに行くまでは長い道のりですが、素晴らしいスタートを切りました」。

1つの課題は、感覚を均一化する必要があるということだ ‐ 「電気刺激に感じることもあれば、圧力に感じることもあります。しかし多くの場合に、どの指かということは正確に伝えることができます」と、Copelandは言った。タッチの程度と種類に関してはまだまだ遠い。

また、これは一方通行だ:脳から腕へは何のデータも送られていない。制御方法は、運動皮質にある完全に異なる神経回路に依存している;それは、全く異なる研究フィールドである。しかし、義手から直接脳に送られるこの種のフィードバックは、ユーザーがものを自然な形で握ったり操作するための直感的な制御のために重要なものである。

チームの仕事は、Science Translational Medicineジャーナルに掲載されている 。この研究は、DARPA、アメリカ合衆国退役軍人省、その他の助成金を受けている。

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(翻訳:Sako)