リチャード・ブランソン、Virgin Hyperloop Onerの会長を辞任――サウジ公営ファンドの投資はキャンセル

Virginグループのファウンダー、リチャード・ブランソンがVirgin Hyperloop Oneの会長を辞任したことが報じられた。

Reutersが引用した声明によれば、ブランソンは、予想したより時間を必要とすることがわかったためだとして次のように述べている。

わが社の発展段階の現状からすると、ビジネスの詳細を知りチャンスを活用するためにさまざまな業務を自ら実行できる会長が必要だと感じた。私はすでに多くの時間をVirginグループの諸企業ならびにチャリティー事業の運営に費やしているため、これは私には困難な任務となる。

しかしここで述べられていない重要な問題は、サウジアラビアの公共ファンドからの資金提供の計画がキャンセルされた点だ。サウジのPIFは総額10億ドル前後をVirginグループの宇宙事業に投資する計画だったが、ブランソンがサウジを非難した後、交渉は中止されていた(TechCrunchはカショーギ殺害事件はシリコンバレーへの一時代の終焉となる可能性があると報じている)。

Washington Postのコラムニスト、ジャマル・カショーギがイスタンブールのサウジ領事館内で殺害され、遺体が切断されたとされる事件が発覚した後、ブランソン始め、多くのビジネスリーダーがサウジとの関係を絶った

Virgin Hyperloopの最大の投資家は UAE(アラブ首長国連邦)のロジスティクス企業、DP Worldだ。今年に入って、両社はハイパーループ・テクノロジーを用いて公共交通機関を建設するジョイント・ベンチャーを立ち上げた。 DP WorldがVirgin Hyperloopに最初の投資を行ったのは2016年だった。

今月、Virgin HyperloopはBlack & Veatchと共同で実施したミズーリのセントルイスとカンザスシティを結ぶ路線に関するフィージビリティスタディの結果を発表した。

グローバルなインフラに関して調査を行う独立企業であるBlack & Veatchのレポートは両都市を結ぶ主要な高速道路、 I-70に沿うルートの可能性について、安全性、サスティナビルティともに肯定的な評価を下した。同社のCEO、Rob Lloydは次のように述べていた。

今回のフィージビリティスタディはアメリカにおける旅客、貨物の輸送を行うフルスケールの商用ハイパーループ路線の実現に向けての第一歩だ。ミズーリ州が最初の高速道路の出発点となったというアメリカの運輸の歴史において占める栄えある地位を考えるとき、われわれはこのハイパーループ路線計画を特に誇りに思う。この路線はやがて全米を結ぶハイパーループ・ネットワークの礎となるに違いない。これによる社会的、経済的影響は計り知れない。

アメリカではコロラド州とオハイオ州もVirgin Hyperloopのテクノロジーの利用に関するフィージビリティスタディを実施しており、インドやUAEでも別個の計画が進行中だった。

Virgin Hyperloop OneもHyperloop Transportation Technologiesもともに、 イーロン・マスクのハイパーループ計画からインスピレーションを受けている。

ハイパーループは真空近くまで減圧されたトンネル中をカプセルが高速で移動する新しい交通システムで、イーロン・マスクの宇宙企業、SpaceXで開発されたテクノロジーや素材が多数用いられている。

われわれはVirgin Hyperloop Oneの広報担当者にコメントを求めており、回答があり次第、記事をアップデートするつもりだ。

画像: Axelle/Bauer-Griffin/FilmMagic / Getty Images

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滑川海彦@Facebook Google+

血まみれの金を受け取るということーサウジ記者殺害事件に寄せて

何年か前、僕はTechCrunchイベントで会ったインベンターにコーヒーに誘われた。こういうことはよくある。僕はウィークリーコラムニストで、オフィシャルメディアのインフルエンサーと思われている。人々は僕に何かしらの影響を与えようとするが、結局僕は彼らを無視して僕が面白いと思ったことを書く、ということに相手は気づく。しかし、僕はこのコーヒーの誘いに応じた。というのも相手の仕事が、悪い意味で例になく興味深かったからだー彼はクレムリンに近いベンチャーファンドの代表だった。

これは、ロシアが今日のように民主主義を操る敵対的な存在になる以前のことだ。しかし、ロシアが“同性愛禁止法”を可決した後のことで、怒りに満ちた反ロシア感情が非常に強い時だった。相手がこの話題で憤慨する様を見るのは僕にとってかなり面白かった:彼が言うには、彼はベイエリアの人間で、ゲイの人権のプロであり、ゲイの結婚のプロだ。しかしそれぞれの国がそれぞれのスピードで啓発されていくという現実を受け入れなければならない。そして我々の価値を促進するための最善策は、国と一緒に働き、正しい道を示すことだ、と。

言うまでもないが、このコラムはサウジアラビアについてだ。

サウジアラビアの残忍さを人々に気づかせるのにJamal Khashoggi殺害を要したのには、まったく驚きに近いものを感じる。もう3年になるが、サウジアラビアは不必要な紛争で何千人ものイエメン人を虐殺している。国連の言葉を引用しているBloombergの記事は「特にサウジアラビア主導の連合、そしてそれをイエメン政府がバックアップすることは、市民の命を見捨てることを意味し、おそらく戦争犯罪に等しい」と記している。かつてはイスラムの過激な解釈のワッハーブ派と同盟を結び、一国一党主義の絶対的な君主主義を長い間しいてきた。ワッハーブについてT.E. Lawrenceは100年前に、解しがたい“狂信的な異教”と表現しているーこの同盟関係の結果、多くの世界的惨事を引き起こしてきた。

ご存知のように、サウジアラビアは国際的な同盟関係を築き、米国のパートナーとなっている。米国の経済/軍事/コンサルティング/産業/石油関係は、かなり長い間サウジと懇意にしていて、そこには政治家も含まれる。テック業界におけるサウジの金がどうにも非常に悪いもので異なるもの、というふりはやめよう。悪いもの、そう、米国社会の全てと同じくらいかなり悪いものだ。長い間、米国のサウジに対する姿勢というのは、「もちろん、彼らは圧制的な独裁制をしいている。しかし彼らは我々の圧制的独裁制であり、王室一家はとても素敵で寛大で、石油の多くをコントロールしている」というものだった。

しかしながら、ようやく今、そうした態度が変わりつつあるようだ。それは、米国がサウジから石油の購入をやめるようとしている、ということではない。米国がサウジに兵器を売るのをやめる、ということでもない。20世紀(間違っても21世紀ではない)にみられたようなその時々の躊躇するようなステップにもかかわらず、これから誰もサウジアラビアが残忍極まりない圧制的な国であるというふりはしない。(この件に関し、僕の故郷カナダの先取りした姿勢を声高にアピールしたい)。何が進歩なのか。進歩に近いものと僕は想像しているが。

サウジアラビアと関係を続けていくのに、実益政策をとることもできる。5年前に僕が一緒にコーヒーを飲んだ相手がロシア政府と協働を続けるように。それがどのような結果になったのかを見るといい。それからロシアがいかに啓発的になり、進歩を見せ、ロシアの社会に貢献しただろうか。…いや、最悪、サウジアラビアは違うかもしれない;あまりにも広範に激しく批判したり過剰反応したりするには繊細な問題だ。というのも、基本的には崩壊しやすい国だからだ。シリアの崩壊と内戦が起こる前にそれを予想したNassim Talebは、サウジアラビアについても同じような運命を予言している。

トランプ政権が、人々の恐れや経済影響を鑑みて、サウジアラビアの新たな常軌を逸したリーダーシップをサポートし続けるとは思わない。“Trump’s razor(トランプのカミソリ)”:最も愚かしい理由がおそらく修正される。ここでは、政権がサウジのサポートに戻ろうと思わないことを意味する。サポートに戻ると、彼ら自身の弱さをさらけ出すことになると彼らは考えているからだ。同様に、我々がからかっている人たち、サウジから資金を受けているVCは、パックスアメリカーナを支えるために同じような対応はとっていない。それは純粋に、彼らは金が欲しいからであり、だれも450億ドルもの現金を放り出す準備はできていない。

しかしながら、現在、そして当面サウジの金は汚れ、血まみれだ。もしそれを受け取れば、Khashoggi殺害事件後の新たな社会的道義に反するという帰結になることを考えなければならない。それは長く続くのだろうか。誰がそう言えるのか。しかし、そう長く続かなかったにしても、あなたの倫理に反するということを考慮しなければならない。それは、どれだけの額の金になろうとも、昨年においても、来年においても真実である。

イメージクレジット: 401kcalculator.org (opens in a new window)Flickr (opens in a new window)under a CC BY-SA 2.0 (opens in a new window)license

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(翻訳:Mizoguchi)

カショーギ事件はシリコンバレーの一つの時代の終焉か――SoftBank新ファンドの行方も不透明

事件の進展の速さは驚くばかりだ。きっかり1週間前、われわれはWashington Postのコラムニストがトルコで失踪した事件でサウジアラビアの資金が汚染されたのではないかと疑う記事を掲載した。しかしジャマル・カショーギがイスタンブールのサウジ領事館で消息を絶ったことに関して、シリコンバレーの取材先はほぼ全員が実名でコメントすることを拒否した。

いくつかのソースからオフレコで聞いたところでは、サウジの資金に利害関係をもつ人々は同国と、特にムハマド・ビン・サルマン皇太子との関係の安定を望んでおり、ことを荒立てたがっていないということだった。曰く、確実は証拠はない、成り行きを見守っている。シリコンバレーに投資しながら一方で自国民を拷問するような体制だと思うならナイーブすぎる。資金の出処が清浄であることを望んでチャンスを逃すくらいならサウジの資金を入れて会社を成長させることを選ぶ、等々だ。

たしかにシリコンバレーの企業はこれまでも多くのスキャンダルを乗り切ってきた。多くの人々を憤慨させるような事件が起きても、すぐ同種の事件が起きて前の失敗は忘れられるのが通例だった。1週間前にはトルコのサウジ領事館でサウジ国民のジャーナリストが消えた件もマスコミはすぐに忘れるだろうと思われていた。

しかしカショーギ事件は忘れられるどこころかその反対の道をたどった。事件はあまりにグロテクスであることが伝えられ、これを無視していることは誰にもできなくなった。トルコ政府高官は今朝、New York Timesに対して殺害現場における録音の内容を明らかにした。それによればカショーギは領事館に入るやいなやサウジの情報機関員に拘束され、拷問された。機関員はカショーギを殴打し、指を切り落とした。その後、首をはね、遺体を切断した。このトルコ政府高官によれば、遺体切断のために法医学専門の医師が同行しており、機関員たちはこの作業の間ヘッドフォンで音楽を聞いていたという。

それでもまだトランプ大統領はシリコンバレーにMBSとして知られているサルマン皇太子を「非難は不当だ」と擁護した。一方、何十億ドルものサウジ資金をテクノロジーその他の企業に流してきた日本の巨大コングロマリット、Softbankは考え直し始めた。Financial Timesによれば、SoftbankのCOO、マルセロ・クラウレはこの問題に関連して初めて口を開き、SoftBankのVision Fund 2号について「何も決まっていない」と述べた。SoftBankは930億ドルの2号ファンドを立ち上げる予定で、サルマン皇太子と関連企業がその半額程度を出資する計画だった。

クラウレは「どいうことになるのか、事件の展開を注視している」と付け加えた。

Softbankにせよ他のサウジ資金の受け手にせよ、事件の展開には驚く他なかっただろう。2週間前にはシリコンバレーでは誰一人名前すら知らなかったコラムニストの失踪が長く続いたシリコンバレーのサウジブームの終焉をもたらすかもしれない。

こういえばあり得ないことのように聞こえるだろうが、そうではない。実は最近数年間シリコンバレーに流れこんでいた資金のきわめて大きな部分がサウジアラビアからのものだった。この資金によりスタートアップのファウンダーも投資家も潤沢な見返りを得ていた。実際、オフレコで聞いたところによれば、シリコンバレーのすれからしのビジネスピープルはサルマン皇太子の魅力に惹きつけられたわけではなく別の思惑からサウジ資金を歓迎していたのだという。つまりこの仕組みであればテクノロジー・ブームの反動が来て市場が崩壊しても、損をするのはサウジだというのだ。

一方でサウジ資金は無数のスタートアップに無数の資金調達ラウンドのチャンスを与えてきた。またラウンドの規模も年々増大していた。ベンチャーキャピタリストが扱う金額も巨大になっていた。これによりベンチャーキャピタルから出資を受ける企業が株式を上場するまでの期間も伸びた。簡単にいえば、サウジ資金はベンチャー・エコシステム全体を根本的に変えた。

こうした巨額の資金の出どころが消えれば――そして、そうなる可能性が高いが――スタートアップは別の金主を探さねばならない。上場して市場から資金を募る企業もあるだろうが、資金調達に失敗して消えていく企業もあるだろう。

この事件は一つの時代の終わりを意味する可能性がある。一人の男が結婚許可証を求めて領事館に入ったのがすべての始まりだったことを考えると皮肉という他ない。

画像:Bloomberg / Getty Images

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滑川海彦@Facebook Google+

サウジアラビアの現状を見ないことが企業の成功の鍵なのか?

昨日、サウジアラビアのメディアは、Marc Andreessen、Sam Altman、Travis Kalanickといったシリコンバレーの大物が、サウジアラビアが国家計画として進めている5000億ドル(約56兆円)規模のメガシティー・プロジェクトのアドバイザーになっていることを伝えた。このプロジェクトは、未来都市がどのような世界になるか、その模範を示すものだと宣伝されている。

この発表は、1カ月前にプロジェクトへの参加を決めた19人にとって、いろいろな意味で、あまりいいタイミングではなかった。このとき、サウジの反体制派ジャーナリストJamal Khashoggi(ジャマル・カショギ)が1週間以上姿を消していた。そして、先週、イスタンブールのサウジアラビア領事館内で、サウジの王家の命令で殺害されたとトルコ当局者が話したことから、激しい批判が高まっている。彼はその後、骨のこぎりで細切れにされ、建物から持ち出されたとのこと。

想像するだに生々しく心乱される事件だが、注意すべきは、証明されていない点だ。だが、サウジアラビアの諜報機関がKhashoggiに何かをしたとする説が拡散されると(Khashoggiが建物を出たという証拠もない)、サウジアラビアの皇太子Mohammed bin Salman Al Saud(ムハンマド・ビン・サルマーン・アール・サウード)は、世界中の怒りの視線を集めることになった。たしかに、この顧問委員会の発表は、MBSという愛称で知られる皇太子が、アメリカに数多く暮らし、皇太子の実力を疑い始めていた同程度の人数のアメリカ人実力者の友人の心をかき乱すには、よい方法だったのかも知れない。

昨年6月に皇太子に即位し、MBSの名声を追い求める態度が封印されて以来、彼はずっと、批判に対してもライバルに対しても、短気になっていた。そのことを、私たちはもっと早く考えておくべきだった。MBSは、その改革派的な行動から賞賛を受けていた。「宗教指導者に反抗して、女性の自動車の運転、コンサートや映画の解禁など、息を飲むような社会改革を断行した」と、この夏のウォール・ストリート・ジャーナルの意見記事にあった。だが彼は同時に、イエメンに空爆を行い、数千人の一般人を殺害している(これはホワイトハウスが支持しているが、両政党の議員を落胆させた)。

またサウジアラビアは、この夏、女性の権利を求める活動家12名以上を拘束している。カナダ外務省が「深く憂慮している」と、逮捕に対してリヤドに激しい抗議を伝えると、サウジアラビアはカナダ大使を国外追放し、トロントとの航空路線を停止、カナダ在住のサウジ人がカナダの医療を受けることを禁止し、カナダとの数十億ドル規模の新規の貿易と投資を凍結した。さらに、サウジアラビアの奨学金でカナダに留学している学生を、カナダから退去させる計画もある。

その一方でMBSは、昨年、サウジアラビア当局に対して300人以上のビジネスマンと王家の家族を、数カ月間、監禁するように命じた。これは腐敗防止キャンペーンの一環という名目になっている。これにより、押収した1000億ドル(約11兆2000億円)の資産がMBSの支配下に入った。ニューヨーク・タイムズは後にこう報じている。拘留されている中の少なくとも17人は「身体的虐待を受け、1人は死亡したが、首がねじ曲がっているように見えた。体はひどく腫れていて、別の虐待があったことを示していると、遺体を目撃した人は語っていた」

こうした策略がアメリカのメディアで大きく報道されたが、その大騒ぎの1カ月後にMBSはアメリカを訪れ、大歓待を受けた。ドナルド・トランプは彼をホワイトハウスに招待し、両国の友好を深めた。それを国際関係学者たちは、「異常で下品」と評価した。

シリコンバレーのCEOたちも、MBSの春の訪米を歓迎した。そのときMBSは、Googleの共同創設者Sergey BrinとCEOのSundar Picha、Magic LeapのCEO、Rony Abovitz、Virgin Groupの創設者Sir Richard Bransonたちを訪ねている。彼らだけでなく多くの面々が、彼の社会的な進歩性を褒め称えた。彼らが本当に欲しているものは明らかだ。MBSは、サウジアラビアの石油依存度を下げるという野心を持っている。その手段のひとつとして、王国の資金をアメリカ企業に大量につぎ込むという考えがあるのだ。

事実、MBSのその他の振る舞いは、こと金に関する限りでは大きな障害はなかった。TeslaのElon Muskは、この夏のことは問題にしていないSoftbankも、気が咎めている様子がない。孫正義CEOは、Softbankの1000億ドル(約11兆2000億円)という巨大ファンドへの450億ドル(約5兆円)の投資を、MBSにわずか45分で決めさせたと自慢していた。そして先週、MBSは第二のビジョン・ファンドに450億円を投資すると話した。

最近までワシントン・ポストのコラムニストとして活躍していたKhashoggiの不穏な疾走で、こうした計算が狂ったとしても、それを口に出す者はいない。Softbankのビジョン・ファンドの代表者と、Softbankが支援しているおよそ10人の企業創設者に、昨日、コメントを求めたが、答えはなかった。

Softbankから資金を調達している数多くのベンチャー投資家にも、昨日、Softbankについて、また、Khashoggiの疾走がスタートアップの資金調達に対する考え方にどう影響するかについて質問したが、答えてもらえなかった。ビジョン・ファンドからレイターステージの資金を調達した2つのポートフォリオ企業(DoorDashと最近株式公開されたGuardant Health)を見てきたPear VenturesのPejman Nozadだけが、唯一返事をくれた。「技術分野では、シードからプレIPOまで、資本が溢れています。シード資金として50万ドル(約5600万円)を必要とする企業が300万ドル(約3億4000万円)を調達してしまいます。5000万ドル(約56億円)が欲しい企業は5億ドル(約560億円)を調達できます。これが健全なことかどうか、時間だけが知っています」とNozadは電子メールで答えてくれた。

長年、ボストンのFlybridge Capital Partnersでベンチャー投資家を続けてきたJeff Bussgangは、Khashoggiの件には特に触れずにMBSについて尋ねたとき、微妙なニュアンスの返事をくれた。ベンチャー投資家も未公開株式投資会社も、長い間、中東の資金源から資金を調達してきたことを踏まえ、「一般的に、起業家は政治や歴史のことを深く考えるのが好きではなく、資金の出所についても、あまり気にしていない」という。「PLOやイラン」は別として、とのことだ。

さらにBussgangは、電子メールにこう書いている。「そう、すべてのベンチャーキャピタルの金が貧しい未亡人や孤児から集まるのなら素晴らしいことだが、それはあり得ない。その金が公正な資金源からのものなのかを判断するのは、主観的な作業です。スターバックスの資金源は公正でしょうか?」

Bussgangは、フィラデルフィアのスターバックスで起きた事件のことを言っている。店員が警察を呼んだところ、店にいた2人の黒人男性が誤って逮捕されたことがあった。恐ろしいことだが、イエメンで罪のない市民が殺戮されたり、人権活動家を拘留したり、MBSの憂さ晴らしと言われているようなこととは比べ物にならない。

公正を期して言うなら、アメリカやその他の国々の多くの人たちは、Khashoggiが現れてくれることを待ち望んでいる。その可能性は、日を追うごとに低くなっているが、何が起きたかを知らずにいることは、人殺しの暴君ではなく、改革者と手を組みたいと考える多くの人間に最良の結果をもたらすに違いない。ワシントンポストのコラムニストKhashoggiの失踪は誤算だったように見えるが、日が経つにつれて、こんな言い方はなんだが、それは古新聞(過去の話)となる。そして、みんなは仕事に戻れる。

その同じ人たち、そくにシリコンバレーのリーダーたちが、性的多様性に逆行するメモを読んで激怒したという話は、まるで漫画だ。

とは言え、かなり気分が滅入る話だ。

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(翻訳:金井哲夫)

イーロン・マスク、Tesla非公開化の資金はサウジの政府系ファンドと発表

昨日の記事で、Teslaの非公開化にあたってイーロン・マスクがサウジの政府系ファンドの資金を使える可能性は十分あると私は推測した。今日(米国時間8/13)、マスクは声明を発表し、Teslaの非公開化に関してサウジアラビアの政府系ファンド、PIF(Public Investment Fund)と2年近く前から話し合いを続けてきたと明らかにした。

実際、提案してきたのはサウジ側だったようだ。マスクは「Teslaの非公開化に関して(PIFから)複数回の接触があった」と述べている。

マスクによれば、Teslaに関してサウジのPIFと最初に会談したのは2017年初頭で、PIFが「脱石油を図る必要を感じた」ことがその原因だったという。その後1年でさらに数回の会談を重ねた。「サウジの政府系ファンドは(Teslaの非公開化に必要な)資金を十分持っている」とマスクは述べている。前回の記事で指摘したとおり、PIFの資金は2兆ドルに近づいている。

PIFが株式市場でTesla株の5%を買ったとき、PIFはマスクとさらに話し合いを求めてきた。マスクによれば、この会談は今年の7月31日に行われ、マスクは「もっと早くPIFと協力して非公開化に取り組むべきだった」と述べたという。このときPIFの責任者はTeslaの非公開化にあたって「資金協力の意思を強く表明した」ということだ。

マスクは「サウジ政府系ファンドの協力が疑いなく得られることとなり、あとは実行あるのみとなった」と述べた。マスクが8月7日のツイートで「資金は確保してある」と書いたのはこれを指していたという。

マスクによれば「(PIFとの)契約はほぼ完了しており、ロジスティクスを含めた若干の詳細を詰めるだけだ」という。

もちろんこの声明は多少割引して聞く必要がある。 SEC(証券取引委員会)はTeslaの非公開化に関するツイートについてマスクに質問をしたみられている。質問は必ずしも正式な調査の開始を意味しないが、万一、非公開化の意図をツイートで公開したことがなんらかの違反に問われることになれば、数億ドルの罰金から刑事訴追までの可能性が考えらえる。

この声明を「面子を保つための虚勢だ」とする声も一部にありそうだが、そうではないだろうと思っている。私自身、この地域のビジネス文化には直接の経験があるが、それからしてもPIFがTeslaの非公開化にあたってマスクと協力していくことは間違いはずだ。【マスクの声明は原文参照】

画像:Chris Saucedo/Getty Images for SXSW / Getty Images

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滑川海彦@Facebook Google+

Uberが過去最大の調達、サウジアラビアから35億ドルの出資

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Uber は本日、サウジアラビアの主要な投資ファンドPublic Investment Fund (PIF)から35億ドルの出資を最新ラウンドの一環として獲得したことを発表した。

このライドシェアリング大手にとって今回の資金調達は最大の調達となる。Uberの調達額はキャッシュとデットファイナンスで合わせて110億ドル以上となるが、同社の625億ドルという評価額は変わらない。

Uberのライドシェアリングサービスはアメリカ市場を席巻し、世界展開も積極的に行っている。そして中東地域はUberの今後の発展において鍵となる。

Uberは中東地域でサウジアラビア以外にもエジブトやアラブ首長国連邦でサービスを展開している。それらの国では政府組織と協力し、ドライバーの教育と採用を行っている。Uberによると、この地域には39万5000人以上のアクティブな乗客がいるという。

「サービスをグローバル展開するにあたり、私たちのビジネスにこのような後押しがあることに感謝します」とUberのファウンダーTravis Kalanickは声明で伝える。「サウジアラビアでの経験はUberが乗客、ドライバー、街にとって利益をもたらす好例となります。国の経済と社会の発展に向けてサポートできることを嬉しく思います」。

Uberによると、サウジアラビアのUberへの出資は同国が近年発表した石油と石油関連業界への依存度を減らすVision 2030の内容に沿うものだという。

「高い目標を掲げたこの野心的な計画には、旅行やエンターテインメントといった戦略セクターの活性化、雇用機会の創出、職場での女性の活躍の促進、起業家精神の後押しといった複数の目標があります」とPIFのYasir Al Ruymayyanは声明で伝えている。

しかし、サウジアラビアは女性に運転を禁じていることから批判を浴びていて、人口の半分はそのために交通手段において大きな課題を抱えている。Uberが女性にオンデマンドの交通手段を提供することでサウジアラビアはその課題の解決につながることを期待している。Uberは2014年から同国でサービスを展開し、乗客の約80%は女性だという。

Featured Image: Uber blog

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter