暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.10.18~10.24)

暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.10.18~10.24)

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年10月18日~10月24日の情報をまとめた。

IBMと米R3、LinuxサーバーIBM LinuxONEにブロックチェーンプラットフォーム「Corda Enterprise」を導入

IBMとビジネス向けブロックチェーンソリューションを提供する米R3は10月22日、ハイブリッドクラウドにおけるブロックチェーン機能とサービスの拡張に関する、新たなコラボレーションの実施を発表した

コラボの一環として米R3は、エンタープライズブロックチェーンプラットフォーム 「Corda Enterprise」をLinuxサーバーIBM LinuxONEに導入。IBM Cloud Hyper Protect Servicesを介し、IBM Cloudとオンプレミスで利用可能なオープンβ「R3 on IBM LinuxONE βプログラム」を11月2日より公開する。一般提供(GA)は、2021年第1四半期を予定している。

プライベート型ブロックチェーンCorda

米R3が開発するCordaは、オープンソースのプライベート型ブロックチェーンプラットフォーム。Corda Enterpriseは、Cordaの備えるスケーラビリティ、相互運用性、取引における秘匿性と同じ仕組みを擁し、かつ専門的なサポートを組み合わせた商用バージョンとなる。

IBMと米R3、LinuxサーバーIBM LinuxONEにブロックチェーンプラットフォーム「Corda Enterprise」を導入

Cordaの特徴は、取引において、ネットワーク内の第三者に対する秘匿性の高さにある。元々は金融取引に特化し、商用利用可能なプラットフォーム構築を目指したコンソーシアムチェーンだが、現在は金融業界に限らず幅広い分野での利用を想定。世界で300社を超える金融機関、規制当局、中央銀行、業界団体、システム・インテグレーターやソフトウェアベンダーにより構成されるR3エコシステムにより、設計・開発を行っている。

前述の通りCordaは、エンドユーザーである金融機関が主導し開発を始めたことから、金融分野のニーズに応えるものとなっている。たとえば、秘匿性においては他のブロックチェーンのように取引を全ノードで共有することはなく、必要なノード間でのみ共有する。取引内容を他社に知られることがない。

また、Corda上で動くアプリケーション(CorDapps)では、異なるブロックチェーン間でのデータのやり取りを実現。スケーラビリティに関しては、トランザクションが発生するごとにファイナリティ(finality)を与える設計により、ブロック生成を待つことなくトランザクションごとの並行処理が可能。

CorDappsは、Androidアプリ開発ですでにおなじみのKotlin(コトリン)、またはJavaでの開発が可能なため、開発者の調達が容易となっている。

ハイブリッドクラウドにおけるサービス

今回のコラボによりIBM LinuxONEとIBM Cloud Hyper Protectサービスは、米国連邦標準規格FIPS 140-2レベル4認証(暗号モジュールに関するセキュリティ仕様を規定)に準拠するワークロード分離暗号化機能「Keep Your Own Key」(KYOK。自分の鍵の保持)、特権ユーザーによる改ざん防止、使用の有無にかかわらず全データの暗号化など、堅牢な機密コンピューティング機能を、顧客に対し選択肢のひとつとして提供する。同サービスにて、業界で最も安全でオープンなビジネス向けパブリッククラウドを目指す。

IBMと米R3、LinuxサーバーIBM LinuxONEにブロックチェーンプラットフォーム「Corda Enterprise」を導入

IBM ZのGMであるRoss Mauri氏は、「ハイブリッドクラウド時代にクライアントに選択肢をもたらすIBMの取り組みにより、ブロックチェーンプロバイダーのオープンエコシステムをサポートします。米R3のIBM LinuxONEへの導入は、ハイブリッドクラウド全体にわたって最も機密性の高いデータ保護をできるようにした、高度に安全な機密コンピューティング機能を活用した画期的な一例です」と、今回のコラボについて述べた。

「この発表は、ブロックチェーンや暗号資産の管理など新興分野におけるLinuxONEとIBM Cloud Hyper Protect Servicesの新しいワークロードを導入するためのエキサイティングな取り組みです。次のステップでは、スタートアップ企業から大手グローバル企業まで、あらゆる規模のクライアントとこの勢いを継続していくことを楽しみにしています」と語っている。

またR3のソリューション導入を検討するIBMの顧客向けに、Corda認定ソリューション・アーキテクトによる戦略・設計コンサルティング、ネットワークとソリューションを迅速に展開できるデリバリー・プール、その他支援センターを準備するという。

この取り組みの一環としてIBMは、IBM LinuxONEのオープン性とセキュリティに裏付けされたハイブリッド・エコシステムのもと、バイヤーとサプライヤーという両者の役割で、業界のエコシステム全体でクライアントと協力し、ネットワークをハイブリッドに進化させることを目標としている。

IBM Servicesは、R3のCorda Enterpriseプラットフォーム向けにIBM LinuxONEのインフラをサポートするとともに、IBMの既存ブロックチェーンサービスやその他サービスをもって、市場にさらなる選択肢を提供していく。

IBM Blockchain Servicesは、組織に価値ある新しいチャネル、戦略的パートナーシップ、成長を加速させるためのリソースにアクセスするためのさまざまな機会を提供していくという。

日本においてR3は、日本や東アジアにおけるCordaの商用導入を促進するために、SBIホールディングスと合併会社SBI R3 Japanを設立。商用化に向けた実証実験やビジネスへの導入の推進、Cordaのトレーニングプログラムなどを提供している。

ブロックチェーンロック、スマートロックによるシェアリング機能搭載の個室ブース「KEYVOX Solo」を販売開始

ブロックチェーン活用のスマートロックシステム「KEYVOX」を提供するブロックチェーンロックは10月21日、アフターコロナの新たなオフィス形態をうたう個室ブース「KEYVOX Solo」を発表した。スマートロックによるシェアリング機能を標準搭載した個室ブースとなっている。

同社は、プライベート型ブロックチェーン(Ethereumベース)を基盤とするアクセス権管理プラットフォーム「KEYVOX」とIoTを組み合わせた、スマートロック製品を展開。新たに個室ブースKEYVOX SoloをKEYVOXサービスのラインナップに加えた。

KEYVOX Soloは、同社スマートロック「BCL-XP1」を個室ブースの鍵として採用。スマホ向けKEYVOXアプリを使い、鍵の管理・予約・決済・チェックインが可能なシェアリング機能を標準搭載している。ブースは、高遮音によりウェブ会議も行える。

ブロックチェーンロック、スマートロックによるシェアリング機能搭載の個室ブース「KEYVOX Solo」を販売開始
KEYVOX Soloは、自社用の個室ブースとして利用時間をスケジュール管理できるほか、事業者向け機能として、時間貸し・一日定額・月間定額などサブスクリプションの設定を用意。オフィスやホテルなどオープンスペースに設置するだけで、すぐにレンタルビジネスが始められる。スマートロックのため、鍵の受け渡し・チェックインなどがアプリのみで対応できるため、ほぼ無人での運用も可能となる。

個室ブースへの入室方法としては、管理者の承認後KEYVOXアプリを使用しスマートロックを解錠するほかに、管理者発行の専用NFCカード(別売)による解錠、PIN番号のテンキー入力による解錠にも対応している。ブース電源は100V電源で稼働し、出力として100Vコンセント4口、USBポート2口を装備、天井に換気扇を2基搭載する。

ブロックチェーンロック、スマートロックによるシェアリング機能搭載の個室ブース「KEYVOX Solo」を販売開始

KEYVOX Solo導入時の料金体系は、コロナ関連補助金や助成金を使った低コスト導入可能な買取プラン(各自治体により助成内容が異なる)、自社利用しながら空き時間をレンタルするプラン、公共の場での貸し出し用途かつKEYVOXの予約アプリKEYVOX Goへの掲載を条件に収益化物件にするレベニューシェアープランの3タイプがある。

スマートロックシステムKEYVOXは、利用者がウォレットに有するトークンでスマートロックを開錠可能。スマートコントラクトにより、利用期間が過ぎれば自動的に鍵が失効するといった仕組みなどを備えている。

同社は、宿泊施設をはじめとする空間管理業務の効率化を推進すべくKEYVOXサービスの機能を強化。これまで宿泊施設のスマートロック化や、コワーキングスペース運用の無人化、ロッカープラットフォーム「KEYVOX locker」などを展開してきた。今後もKEYVOXサービスの機能強化および関連サービスとの連携強化を進めるという。

シミックとサスメド、デジタルセラピューティクス開発支援における業務提携に合意

医薬品開発支援(CRO)事業を展開するシミックと、疾患治療用スマホアプリの研究開発を行うサスメドは10月21日、デジタルセラピューティクス(DTx。Digital Therapeutics/デジタル治療)開発支援における業務提携の合意を発表した発表した。国内DTx市場における治療用アプリ開発から製品化までの包括的なサービス提供を目指す。

両社は、互いの臨床開発の知見とデジタル医療の開発技術を融合させ、国内DTx市場の発展に貢献していく。治療用アプリの開発を目指す国内外の製薬企業やIT企業などを対象に、ワンストップでの治療用アプリの開発支援および臨床試験の受託を開始する。

また、治療用アプリ提供後のサービスとして、患者や医療従事者へのサポート体制の構築、流通・品質管理に関するシステム提供、データセキュリティ対策、資金調達の支援などを含めた新しいビジネスプラットフォームの開発を推進していくことを明らかにした。

シミックとサスメド、デジタルセラピューティクス開発支援における業務提携に合意

医療分野で徐々に浸透しつつあるDTxは、デジタル技術を用いて病気の予防や診断および治療も含めた医療行為を支援するアプリケーションのこと。治療に対する科学的根拠(エビデンス)があり、規制当局による承認を視野に入れ開発されたソフトウェアを意味する用語となる。海外での事例としては、覚醒剤やコカイン、アルコールなどによる依存症患者を治療するためのアプリ、また日本では禁煙アプリや高血圧治療における食習慣コントロールアプリなどがDTxアプリとして開発が進んでいる。

シミックとサスメドは、DTx開発経験を有する希少な企業。両社は、業務提携により、開発戦略コンサル、システム構築および臨床試験のオペレーションなどを包括的に提供していく。プロジェクトのタスクを両社で一元化することで、開発期間短縮やリスクの低減を目指すという。

またその他の役割分担として、シミックグループは同グループが提供するコールセンターや医療機関へのニーズ調査などのサービスを、サスメドは同社が有するDTx開発に関する特許技術を活用し、DTx市場における開発から製品提供後まで、すべての段階で支援が可能な体制を構築していくとした。

シミックは、1992年に日本で初めて医薬品開発支援事業を開始した、医薬品に関する総合的な支援業務を提供する大手CRO企業。その他にも医薬品開発、SMO(治験施設支援)、臨床からGMPに準拠した医薬品製造、薬事コンサルティング、営業およびマーケティングソリューションなどにおける包括的なサービスを提供している。

サスメドは、デジタル医療を推進する研究開発型企業。不眠治療用アプリ開発のほか、医療用アプリ開発の汎用プラットフォーム、臨床開発支援システムおよびAI自動分析システムの提供を行っている。また、医療用アプリやブロックチェーンの医療応用についての各種特許を取得するなど、技術に立脚しデジタル医療を推進している。

2019年には厚生労働大臣、経済産業大臣の認定を受け「ブロックチェーン技術を用いた臨床研究モニタリングの実証」に関する新技術など実証計画(規制のサンドボックス制度)を国立がん研究センターと共同で実施。実証実験では、ブロックチェーンを活用することで、モニターが医療機関を訪問せずともデータの信頼性が保証されることの立証を目指した。

2020年7月に内閣府サンドボックス制度に関する論文「Data Validation and Verification Using Blockchain in a Clinical Trial for Breast Cancer: Regulatory Sandbox」を発表している。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:IBMR3サスメドシミックデジタルセラピューティクスブロックチェーンロック

不眠症治療用アプリ開発のサスメドが7.2億円を資金調達——医療機器としての承認目指し、治験開始へ

医療機器として不眠症治療用アプリの研究開発を行うヘルステックスタートアップのサスメドは6月4日、総額7.2億円の第三者割当増資を実施したと発表した。引受先は既存株主のBeyond Next Venturesに加え、SBIインベストメント第一生命保険エムスリーSony Innovation Fund東京センチュリーの各社。

サスメドは2016年2月の設立(2015年7月に合同会社として創業)。2017年2月にはシリーズAラウンドでBeyond Next Venturesから約1億円を調達しており、今回の資金調達はシリーズBラウンドにあたる。

写真右から3人目:サスメド代表取締役 上野太郎氏

サスメド代表取締役の上野太郎氏は、睡眠医療を専門とする医師で、診療のほか睡眠の基礎研究も行ってきた。サスメドが開発する不眠症治療用アプリは薬を使わず、プログラムで睡眠障害の治療を行うというもの。ソフトウェア医療機器としての承認を目指して、2016年9月から複数の医療機関との臨床試験を進めてきた。

上野氏によれば開発・検証は順調に進んでいるとのこと。臨床試験の結果を受け、PMDA(医薬品医療機器総合機構)との協議や厚生労働省への届出を経て、6月からアプリの治験を開始する予定だ。

今回の調達資金の使途はこの治験実施にかかる割合が大きいということだ。そのほかにエンジニアを中心とした開発体制を強化し、アプリ開発やデジタル医療の開発を進めるという。

また上野氏は治験で得る実データを活用して、ブロックチェーン技術を臨床応用する実証実験も行っていくと話している。「医療データは重要なデータだが、過去に医薬品開発などで改ざんが行われたケースもあり、厚生労働省による規制が厳しくなった。ブロックチェーンを活用することで、データの信頼性を低コストで担保することができる。これは医療費の低減にもつながると考える」(上野氏)

上野氏は「ICTを医療の現場へ取り入れることで、医療の質を保ちつつコストを最適化し、持続可能な医療を目指していく」と語る。サスメドでは2020年をめどに、不眠症治療用アプリの医療機器としての承認を目指す。また治療効果のあるプロダクトを実現した上で、健康経営など法人向けサービスの提供にも応用していきたい考えだ。

医療機器としての治療用アプリ開発では、医療機関向けのニコチン依存症治療用アプリなどを開発するキュア・アップが2月に15億円の資金調達を実施している。また医療機器ではないが、法人向けに睡眠改善プログラムなどを提供するニューロスペースは2017年10月に約1億円の資金調達を行っている