持続可能性データベースのHowGoodが個々の材料の環境影響を調べるツールLatisを公開

消費者製品の原材料の持続可能性に関するデータベースを提供しているニューヨークを拠点とするスタートアップであるHowGoodが、Latisという製品を公開し、すでにDanone North Americaと初期顧客契約を結んでいるという。

同社によるとLatisツールは、生物多様性、温室効果ガス排出量、労働リスク、動物福祉といった環境・社会的指標に照らし合わせて、あらゆる原材料や製品の影響を判断するために使えるという。

HowGoodのCEOで創業者であるAlexander Gillett(アレクサンダー・ジレット)氏は「消費者はもはや、最高の製品を最高の価格で提供することだけを求めていません。今日の消費者は、環境を保護し、支持するブランドが個人的な価値観に合うものであることに価値を置いています」という。

学術論文や産業界の文献、NGOやその他のソースの研究論文などから情報を集積しているLatisは、企業の研究開発グループが利用して、特定の原料を使うことの影響や結果を評価できる。

情報は企業が製品開発に情報を提供するためにのみ使用されるため、製品開発者が有毒、または環境に有害な製品を使用しないという保証はない。製品が生物多様性、温室効果ガスの排出、労働の危険性、動物福祉にどのように影響するかを確認する機会が与えられるだけだ。

声明によると、同社には現在、33000あまりの成分、化学物質、材料に関するデータを保有しているという。HowGoodを支援している投資家はFirstMarkやGreat Oaks Venture Capital、High Line Venture Partners、Joanne Wilson(ジョアン・ウィルソン)氏、そしてContour Venture Partnersなどだ。

Danoneのリサーチとイノベーション担当上級副社長であるTakoua Debeche(タクア・デベチェ)氏は声明で 「弊社各種製品の影響を評価するツールがあることで、製品開発者やブランドチームの持続可能性に対する意識を高めることができる。総合的なツールは、弊社のブランドの持続可能性への影響を改善する上で非常に重要です」と述べている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

三井物産流通とNTTコミュニケーションズがイーサリアム基盤のサプライチェーンDX実証実験推進で合意

三井物産流通とNTT Comがイーサリアム基盤のサプライチェーンDX実証実験推進で合意

三井物産流通ホールディングス(MRH)と、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は8月17日、ブロックチェーン技術を活用したサプライチェーンDXの実証実験を推進することに合意したと発表した。イーサリアム(Ethereum)をベースとしたブロックチェーン技術に、NTT研究所が開発したブロックチェーン活用技術を適用。今秋から実証実験を行う。

MRHは、2020年6月に設立した、三井物産100%出資の流通持ち株会社。小売・外食事業者向け食品・日用品雑貨の中間流通機能をになう、三井物産100%出資の子会社4社(三井食品、ベンダーサービス、リテールシステムサービス、物産ロジスティクスソリューションズ)およびその保有事業を傘下としている。

同実験では、MRHが持つ流通分野での需給管理ノウハウを活用し、両社はブロックチェーン技術の流通業界への適用に必要な技術研究をさらに進めるとともに、新たなサービス提供領域に向けたビジネスモデルの構築とサービス提供に向けた具体的な機能構築を進めていく。両社は、DXの具体的な活用方法を確立することで、様々な業界におけるサプライチェーン領域での事業化を目指すとしている。

また今回の取り組みは、イーサリアム(Ethereum)をベースとしたブロックチェーン技術に、NTT研究所が開発したブロックチェーン活用技術(トークン追跡効率化技術)を適用。RFIDなどのIoTの情報と組み合わせた情報プラットフォーム「サプライチェーン情報基盤」の構築により、情報の活用に向けた検証を行う。トークン追跡効率化技術とは、トークンを商品などの来歴の追跡に適したデータ構造として設計することで、追跡処理の時間を最大100倍程度高速化するNTT研究所が開発した技術という。トークンは、ブロックチェーン上で通貨や商品等の来歴や所有権などを管理するために定義されたデータ形式。

さらに、「サプライチェーン情報基盤」と、請求など企業間取引を電子化し業界横断的に利用できる、NTT Comの企業間取引データプラットフォーム(仮称)を活用。複数の企業間の請求データをデジタル化・一覧化可能な「コネクティッドバリューチェーンを実現する基盤」との連携を目指す。コネクティッドバリューチェーンとは、各企業間の取引を電子化することで価値をさらに創出するつながりという。

今回の合意は、2020年7月に三井物産(三井物産)および日本電信電話(NTT)とともに締結した、「ブロックチェーンおよびIoT技術等の活用によるサプライチェーンDXに関する共同実験協定書」に沿ったもの。商品や物の流れを管理する「サプライチェーン情報基盤」と、企業間取引をデジタル化する「コネクティッドバリューチェーンを実現する基盤」との連携を目指し、今秋から実証実験を行う。

MRHにとってビジネス領域におけるICT企業との共同実証実験は初の取り組みであると同時に、NTT Comにおいてもサプライチェーン領域におけるブロックチェーン技術の実務適用は初の取り組みとなる。

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ウェザーニューズが台風など荒天時の商品需要を予測する在庫最適化エンジンを発表、「いなげや」に試験導入

ウェザーニューズが荒天時の商品需要を予測する日本初の在庫最適化エンジンを発表、「いなげや」に試験導入

ウェザーニューズは8月3日、今夏の台風シーズンに備え、小売・製造事業者向けに荒天時における商品の急激な需要変化を予測する日本初の在庫最適化エンジン「PASCAL」(パスカル)を独自開発したと発表した。8月21日からスーパーマーケット「いなげや」で試験導入を開始する。

PASCALは、台風・大雪など荒天時の消費者行動を予測する在庫最適化エンジン。小売・製造事業者が保有する販売数や購買客数のデータと、ウェザーニューズの日々の気象や体感、荒天時のデータを基に構築されており、荒天時の来客数や、商品需要をカテゴリー・品目ごとに予測可能。日々の気温・体感の変化に伴う商品需要も予測でき、平常時から利用できるとしている。

また、8月からPASCALを搭載した商品発注支援サービスの提供を開始する。同サービスは、台風接近など荒天時の消費者行動を加味した7日先までの商品需要と来客数を「特需」「増加」「並」「減少」「特減」の5段階で判定。これにより、事前の備えによる食料品や防災品の「特需」や、台風接近時の来客数の「特減」を事前に把握することが可能になるという。

ウェザーニューズが荒天時の商品需要を予測する日本初の在庫最適化エンジン「PASCAL」を発表、「いなげや」に試験導入

さらに8月21日から、いなげやに商品発注支援サービスを提供する。いなげやでは、台風や大雪などの気象ニュースをもとに商品を送り込む場合、実際の影響が異なる場合があることや、影響を受ける店舗を把握できるタイミングが直前になり、メーカーとの調整が間に合わないことが課題となっていたという。同サービスの試験導入により、まずは実験店舗にて荒天時の来店客数や商品需要予測を活用し、店舗への最適な送り込みや、食品の廃棄ロス・発注のチャンスロスの軽減を狙う。

ウェザーニューズが荒天時の商品需要を予測する日本初の在庫最適化エンジン「PASCAL」を発表、「いなげや」に試験導入

ウェザーニューズはPASCALをプロモーションや荒天時の計画配送、計画生産など製造、小売業に向けのシステムに搭載し、様々なサービスに展開していくほか、自動発注システムとの連携も計画。小売・製造事業者が有するビジネスデータや既存システムと気象データを連携させることで、サプライチェーンにおける収益の最大化、廃棄ロスの最小化、気候変動リスクへの適応を目指す。

フードロスを減らすApeelがシンガポール政府やケイティー・ペリーから約270億円調達

食品廃棄と新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによるグローバルな食品サプライチェーンが圧迫が世界中の大きな関心事になっているが、カリフォルニア州の海辺の街、サンタバーバラの小さなスタートアップが、2億5000万ドル(約270億円)を調達して、その解決法を提供することになった。

Apeel Sciences (アピール・サイエンセズ)というその企業は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成金10万ドル(約1070万円)からスタートし、この8年間で成長を続けてきた。それが、トーク番組司会者であるOprah Winfrey(オプラ・ウィンフリー)氏や歌手のKaty Perry(ケイティー・ペリー)氏といった著名人を始め、シンガポールが所有する投資会社Sovereign Wealth Fund(ソブリン・ウェルス・ファンド)などの大手投資会社の支援を受け、今では10億ドル(約1070億円)規模の世界的企業となった。

こうした投資家や有名人を投資に導いたのは、Apeelが開発した食品を新鮮な状態で長期間、店の棚に陳列できるテクノロジーだ。これにより食品廃棄が減り、(気持ちとして抵抗はあるだろうが)店舗にもっと多くの野菜を仕入れさせることができる。

少なくともそれがこの8年間、Apeel Sciencesの創設者で最高責任者のJames Rogers(ジェームズ・ロジャーズ)氏が主張してきたことだ。これにより同社はトータルでおよそ3億6000万ドル(約390億円)の投資を集め、Upfront Ventures、S2G Ventures、Andreessen Horowitz、Powerplant Venturesといった投資会社を引き寄せてきた。

「(フード)システムの負荷は限界を超えています」とロジャーズ氏。「私たちはApeelの仕事を、フードシステムを築き、地球上のあと20億人ほどの人たちの体重を支えることだと考えています」。

ロジャーズ氏は、Apeelの主要製品となるこのテクノロジーの開発を、カリフォルニア大学サンタバーバラ校で博士号取得を目指していたときに開始している。初めて会社を興すことになる彼にひらめきが降りてきたのは、インターンとして働いていたローレンス・リバーモア研究所からの帰り道だった。

カリフォルニアの穀倉地帯をしばらく車で走っていたロジャーズ氏は、現在の食糧供給ネットワークは食糧生産能力が低いわけではなく、収穫した場所と供給する場所との間で発生する食品の劣化と廃棄に問題があるのではないかと気がついた。

かつて農業生産者は、作物を枯らす病害虫を防ぐための農薬に、保存方法としての使い捨てプラスティック包装や化学薬品処理に依存してきたが、それがまた別の深刻な環境問題の原因になっている。

「もう近道はありません。使い捨てのプラスティックも農薬も、それぞれの役割を終えました」とロジャーズ氏はいう。ロジャーズ氏は、今こそApeelの食糧保存テクノロジーがその役割を担うときだと考える。

ロジャーズ氏によれば、新たにApeelの金庫に入った資金すべて投じて事業の拡大を開始しアフリカ、中央アメリカ、南アメリカの大手農業系企業や生産者と連携するという。「店の棚に52週間、供給を維持するためには、北半球と南半球とで事業を行う必要があります」とロジャーズ氏は話している。

その壮大な目標に比べると、取り扱う生産物はアボカド、アスパラガス、レモン、ライムと限定的だが、同社のうたい文句とロジャーズ氏の展望は、もっとずっと広大だ。「オレンジが知っていることをキュウリに教えてやれば、プラスティックで包まなくてもよくなります」とロジャーズ氏。「その廃棄物を減らすだけで、膨大な経済的価値が世に現れるのです」。

現在のところ、この事業を進めるためには、今まさに出番を待っている経済的価値について小売業者にわかってもらう必要がある。

具体的にはApeelのテクノロジーを試してみようと同意した企業には、すべての野菜が届き、そこから各地に出荷されるサプライチェーンのバックエンドにApeelの処理システムを設置することになるとロジャーズ氏は話す。

Apeelのシステムは、1回運転するだけで10トンの食品を1時間で処理できるという。2020年は、現在までに果物200万個をコーティング処理する予定になっていると同社は話している。

Apeel Sciencesは、すでにアメリカとヨーロッパの食品小売業者で食品処理を行っている。平均してApeelを利用している業者はシュリンクラップの使用量が50%減り、売り上げは5〜10%増加、店内のマーケティングキャンペーンと組み合わせて販売することで、売り上げが2%ずつ増大していると同社はいう。

「食品廃棄は、食糧システムの中の人たち全員に課せられた目に見えない税金です。世界の食品廃棄をなくせば、年間2兆6000億ドル(約280兆円)が浮き生産者、流通業者、小売り業者、消費者そしてこの地球のための、よりよいフードエコシシテムを構築できます」とロジャーズ氏は声明の中で述べている。「私たちはともにこの業界に時間を取り戻し、食糧廃棄危機や食品業界を苦しめる数々の問題に対処して参ります」。

画像クレジット:Valeriya Tikhonova / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

新型コロナがサプライチェーンに影響を与えている場所を可視化する無料ツール

Assent Complianceは部品表(BOM)をアップロードすることで、あらゆる企業(顧客でなくてもOK)が新型コロナウイルス(COVID-19)がサプライチェーンに影響を与えている場所を地図上で確認できるツールを発表した。同社は、GEやロールスロイスなどの大手メーカーが、オンラインデータ交換を通じて複雑なサプライチェーンを管理することを支援するツールを開発していスタートアップだ。

オタワ拠点の同社の共同創業者であるMatt Whitteker(マット・ウィテカー)氏は、同社がサプライチェーンデータ管理に焦点を当てていると言う。すなわちWHOが発表する新型コロナウイルス流行地域の地図に基いて、データ駆動式サプライチェーンマップを作ることのできるデータとツールを保有しているということだ。こうしたことを行ったのは、自分の会社だけだと彼は考えている。

「サプライチェーンのデータを利用して、今回のパンデミックに適用したのは私たちだけです。そして、それは私たちのプラットフォームにとって本当にネイティブな仕掛けなのです。データはすべて手元に揃っています ― サプライヤーの位置データも持っています。よって、それをサードパーティのデータソース(WHOのデータなど)に適用し、そこから貴重なビジネスインテリジェンスを抽出するのです」と彼は言う。

もしツールを使いたい場合には、同社のウェブサイトにアクセスしてフォームに記入するだけだ。するとカスタマ担当社員が連絡してきて、データをプラットフォームにアップロードする手順について説明してくれる。ユーザーのデータがアップロードされると、サプライチェーンが混乱する可能性が最も高い世界の部分を示すマップが生成され、個別のデータに基づいてリスクのレベルが特定される。

同社は、現在プラットフォーム上で1000社の顧客と50万社のサプライヤーを相手にビジネスを行う活動の一環として、サプライチェーンデータを収集している。「企業が製品を製造するとき、彼らは一種のレシピのような、部品表(BOM)と呼ばれるものを持っています。そして企業が、基本的にすべての部品、コンポーネント、および購買品の全容を示す部品表と、それらの入手先ををアップロードすれば、それは基本的にその企業のサプライチェーンを表しています」とウィテカー氏は説明した。

企業が部品表をアップロードすると、Assentは企業がデータを交換するためのポータルを開く。ここには、税務申告書、調達証明書、またはメーカーが特定の部品の調達に際して法的・規制上のルールを遵守するために必要な、あらゆる種類の情報や書類が含まれている。

彼らは、今回の事態が、第二次世界大戦以来の世界に出現した、最大のサプライチェーンの危機になることを認識すると同時に、新型コロナウイルスのマップアプリケーションの構築の開始を決断した。構築には約1か月が必要だった。先週顧客に対してベータ版を公開し、最初の2時間でサインアップ数は350社に達した。今週、彼らはこのツールを、たとえ顧客でなくても一般ユーザーが無料で利用できるようにした。

ウィテカー氏によれば、同社は2016年に設立され、これまでに2億2000万ドル(約240億円)を調達してきた。

関連記事:Canada’s Assent Compliance raises $31.4M Series B round to help businesses stay in compliance(未訳)

画像クレジット: Mongkol Chuewong / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:sako)

IBMは魚介類の安全性をブロックチェーンで向上させる

画像クレジット:Ivan/Getty Images

IBMは、さまざまな業界と協力して、ブロックチェーン技術を応用した食品の安全性向上に取り組んできた。米国時間の10月17日、その最新の取り組みを発表した。マサチューセッツの会社、Raw Seafoods(ロー・シーフード)とのパートナーシップにより、そのアプローチをシーフードにも拡げるもの。まずはホタテ貝から始める。

最近では、ビジネスにおいてブロックチェーンを取り巻く騒ぎは落ち着いてきた。しかし、サプライチェーンは、依然としてその強固なユースケースとみなされている。農場、工場、さらに漁船などからの出荷が市場へ届くまで、関連する人たちが追跡できるようにしようというもの。課題は、そこにサプライヤーを参加させることだった。というのも、サプライチェーンのサポートに関しては非常に広範な技術的選択肢があるからだ。

今回の取り組みでIBMは、マサチューセッツ州のニューベッドフォードに本拠を置くホタテ貝漁の船団と協力する。そしてホタテ貝漁に関するデータを、いつどこで漁獲したのかを含めてサプライチェーンのすべての関係者と共有できるようにする。IBMの説明によれば「このプラットフォームでは、漁船が接岸したこと、帆立貝の個々のロットが手作業で等級に分けて選別され、梱包され、目的地に向けて出荷されたことなども、すべて追跡できます」とのこと。また、漁船が港に到着する前から、漁の画像やビデオも共有される。

アクセス権のある人ならブロックチェーン上の情報にアクセスして、漁船から市場までの間のどこにホタテ貝があるのかノードをクリックするだけで確認できる。このようなデジタル化をしていなければ、食品の追跡は時間のかかる作業となる。ブロックチェーンを利用すれば追跡は瞬時に可能となる。

「伝統的な方法では、特定の食品を原産地までたどるのは、もし可能だとしても何日もかかるものでした。特に天然のホタテ貝の場合は面倒でした。それにかかる時間を、ほんの数秒に短縮することで、消費者がシーフードを敬遠してしまいがちな3つの懸念を解消できると考えています。それは安全性、持続可能性、それに信ぴょう性です」と、IBM Food Trust(フード・トラスト)のゼネラルマネージャーを務めるRajendra Raom(ラジェンドラ・ラオ)氏は述べている。

Raw Seafoodでは、このプラットフォームに接続するアプリの開発も計画している。それにより、レストランを訪れた消費者が、メニューに記載されたQRコードをスキャンして注文の前にホタテ貝の詳細情報を確認できるようになる。

昨年IBMは、Walmart(ウォルマート)とも同様のパートナーシップを発表した。そちらは、緑色葉野菜を農場からスーパーの棚まで追跡できるようにするものだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

インドで新鮮な魚や肉、野菜を提供する電子商取引プラットフォームのFreshToHome

シャン・カダビル(Shan Kadavil)氏は、テックサポート企業であるSupportのマネージャーを務めたあと、ゲーム会社Zyngaのインド事業を率いていた。そんな彼が自分の息子が生まれたときに、天命のようなものを感じたのだと言う。カダビル氏は、インドで売られている食肉の多くが健康的ではないことに気が付いたのだ。傷みやすい食品たちが化学物質漬けにされ、表面的には6カ月もしくはそれ以上に消費期限を引き伸ばされていた。彼はその状況を改善したいと考えたのだ。

それから4年。本日カダビル氏は100%純粋で新鮮な魚、鶏肉、その他の食肉を提供するFreshToHomeが、シリーズAで1100万ドル(約12億円)を調達したと語った。同社は、これまでに1300万ドル(約14億2000万円)を調達している。

このラウンドはCE Venturesの主導によって行われ、Das Capital、Kortschak Investments、TTCER Partners、Al-Nasser Holdings、M&S Partners、そしてその他のアジアやシリコンバレーを拠点とする投資家たちが参加した。FreshToHomeの支援者の中には、Google東南アジアの元責任者であるラジャン・アナンダン(Rajan Anandan)氏、GVのCEOであるデビッド・クレーン(David Krane)氏、そしてZyngaの会長であるマーク・ピンカス(Mark Pincus)氏なども含まれている。

FreshToHomeはすでに、インドの4都市、 バンガロール、デリー首都圏(デリー、グルガオン、ノイダ、ファリダバード、そしてグレーターノイダ)、チェンナイ、ケララ(コーチ、トリバンドラム、カリカット、そしてトリチュール)で40万人の顧客を集めている。またスタートアップは、バックエンドでは125の沿岸地域で1500人の漁師たちと取引をしている。

TechCrunchとのインタビューで、カダビル氏はスタートアップが「インドの農民と漁師の皆さんを『Uber化』しようとしています」と述べた。「私たちは彼らに、商品取引のためのアプリを提供しています。なおこれに関しては米国特許を取得済です。農民や漁師の方々が行うことは、アプリを使って私たちに対して電子的な入札(地元の法律で定められている)を行うことです」生産者と直接やりとりを行うことによって、スタートアップは半ダースもの仲介業者を排除してコストを削減している。

またスタートアップは独自のサプライチェーンネットワークを構築している。「私たちは1000人の従業員、100台のトラック、40の収集ポイントを保有しています」。スタートアップはまた、列車や飛行機も使って在庫を移動させている。このことで、同社は航空会社であるIndigoとSpiceJetの最大の顧客の1つになったと彼は付け加えた。カドビル氏によれば、FreshToHomeは食肉を扱う最大の電子商取引プラットフォームでもあり、総流通総額(GMV)は毎月173万ドルに達するということだ。

もしこれが良く練られた戦略だと思えるならば、それはこれを運営している人たちの努力の賜物だ。カダビル氏が、一緒にFreshToHomeを設立したマシュー・ジョセフ(Mathew Joseph)氏は、30年以上にわたって魚の輸出に取り組んできた業界のベテランだ。ジョセフ氏は2012年に、SeaToHomeという名のインド初の魚と肉の電子商取引事業を開始した。

FreshToHomeは、共同農場を営んでいる農家にとっての、マイクロVCとしての性格も見せ始めている。そのモデルの中では、FreshToHomeは農家が特定の種類の魚を捕獲するために、最新の技術を使うように指導している。現時点では月間で、共同農場で生産され市場で販売される食材は60トンを超え、スタートアップが販売する全体の量は400トンを超える。

FreshToHomeは、新しく得た資金を使ってサプライチェーンネットワークを拡大し、8500軒もの新しい農家とつながり、野菜の配達を開始する。既にバンガロールでの野菜の配送は始まっている。カドビル氏は、さらにムンバイとプネの2都市に拡大する予定だと語った。

FreshToHomeの数少ない競争相手は、これまでに3500万ドル以上を調達しているLicious、ZappFresh、そして今月初めに15000万ドルを調達した BigBasketなどである。インドのコールドチェーン市場は、今後5年間で370億ドル(約4兆円強)に成長すると推定されている。

準備された声明文の中で、CE Venturesのディレクターであるチュシャ・シンビ(Tushar Singhvi)氏は、次のように述べている。「インドの食肉およびシーフード市場は、500億ドル(約5兆5000億円)規模の市場であると考えられています。しかし私たちは、それが極めて断片化された市場であることを忘れてはなりません。FreshToHome.comは、業界を合理化しようとしているだけでなく、テクノロジーを使って業界が機能する方法を刷新しようとしているのです。そしてサプライチェーンを単純化し、仲介業者を排除して、漁師や農民と市場モデルの中で直接取り引きを行い、大衆が新鮮で化学物質を含まない食材を手に入れられるようにするのです」。

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(翻訳:sako)

Citizens Reserveが、ブロックチェーン上にサプライチェーンプラットフォームを構築している

ベイエリアのスタートアップであるCitizens Reserveは、サプライチェーンをデジタル化するという大きな目標を掲げている。昨年秋、同社はブロックチェーン上に構築された、サービスプラットフォームとしてのサプライチェーンである、Sukuのアルファ版を開始した。本日同社は、アムステルダムに拠点を置く、RFIDタグ製造会社のSmartracとの提携を、プラットフォームの重要なアイデンティティ要素として発表した。

企業はRFIDを使用して、畑または工場から市場まで製品を追跡することになる。CitizensのCEOであるEric Pisciniは、サプライチェーンのデジタル化における重要な部分の解決に、この提携が役立つと語る。製品が市場に到達するまでの追跡手段を提供し、生産時に不当労働が行われていないこと、環境基準が遵守されていること、あるいは製品が鮮度を保つために適切な条件下で保管されていたことなどに関する情報を提供できる。

サプライチェーンの追跡における大きな問題の1つは、ある特定の瞬間に世界中で移動中であるアイテムを、単に全体的に特定することだ。RFIDタグは、そうした各アイテムにデジタルIDを付与する方法を提供する。デジタルIDは、不正を防ぐためにブロックチェーン上に配置することができる。もし確実なデジタルIDを手に入れることができれば、サプライチェーンのデジタル化に関する大きな問題が解決されることになる。

彼は、これはブロックチェーン上にプラットフォームを構築することによって、サプライチェーン全体をデジタルの領域に移動させるための、より広範な取り組みの一部であると語った。これは、確実で追跡可能なデジタル記録を提供するだけでなく、盗難や詐欺を減らし、履歴を確実にするなどの、あらゆる種類の追加の利点をもたらすことができる。

農家や製造業者から税関当局、海運会社、コンテナ会社、そして商品を市場から販売店舗まで輸送する物流会社に至るまで、数多くの関係者がこのプロセスには関与している。サプライチェーンに関わるさまざまな関係者のすべてを、ブロックチェーンソリューションに移行させることは、依然として大きな課題である。

本日発表されたパートナーシップは、Citizens Reserveのソリューションに対する、アイデンティティメカニズムの1つを構築する手段を提供する。同社はまた、倉庫管理や物流などの他の問題を解決するために、他のパートナーシップにも取り組んでいる。

同社は現在、カリフォルニア州ロスガトスに11人の従業員を擁している。Pisciniによれば、同社は1100万ドルを調達している。

画像クレジット: Mint Images / Getty Images

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(翻訳:sako)

GM、フォード、テスラ、トヨタなど、多数の自動車メーカーの企業秘密が誰でもアクセス可能状態になっていた

セキュリティを研究するUpGuard Cyber​​ Riskは、先の金曜日に、GM、フィアット・クライスラー、フォード、テスラ、トヨタ、ティッセンクルップ、そしてフォルクスワーゲンを含む100社以上の製造会社の重要ドキュメントが、Level One Roboticsが所有するサーバー上で誰でもアクセス可能な状態になっていたと発表した。

UpGuard Cyber Riskによれば、工業オートメーションサービスを提供するLevel One Roboticsのサーバーが、大量のデータセットのバックアップを行う際に使われるファイルプロトコルであるrsyncを通して、誰でもアクセス可能な状態になったいたのだ。このデータ漏洩を最初に報じたのはNew York Timesだった。

セキュリティ研究者によれば、このrsyncサーバーにはアクセス制限が掛けられていなかった。すなわち、どんなrsyncクライアントでも、rsyncポートに接続すればデータをダウンロードできたということだ。UpGuard Cyber Riskは、どのようにその情報漏洩状態を発見したのかをここで報告している。これを読めば、一見セキュリティがしっかり守られているように見える大企業のサプライチェーンの中の1企業が、全体にどのように影響をもたらすかがわかる。

このことが意味することは、もしどこを見れば良いかを知っていれば、自動車メーカーによって守られている企業秘密にアクセスできるということだ。今回悪意のある第三者が、実際にデータを手にしたのか否かは不明だ。影響を受けた自動車メーカーの少なくとも1つの情報源がTechCrunchに語ったところによれば、機密もしくは独占的なデータが公開されていたようには見えないということだ。

UpGuardによる教訓は次のようなものだ:rsyncのアクセスはIPアドレスによって制限されるべきである。研究者たちはまた、クライアントがデータを受信するためには認証を行わなければならないように、rsyncのユーザー設定を行うことを推奨する。こうした措置を行っていなければ、rsyncは誰からでもアクセスできる、と研究者は指摘する。

この事案は、157ギガバイトのデータをアクセス可能な状態にしていた。組立ラインの設計図、工場フロアプランとレイアウト、ロボットの配置やドキュメント、IDバッチ申請フォーム、そしてVPNアクセス申請フォームといった、10年分におよぶ情報の宝の山だったのだ。公開されていたデータの中には、テスラのものも含む重要な機密保持契約(NDA)も含まれていた。

他にもLevel Oneの一部の従業員の個人情報の詳細、例えば運転免許証やパスポートのスキャンイメージや、Level Oneのビジネスデータ、例えば請求書、契約書、銀行口座の詳細などがアクセス可能な状態になっていた。

セキュリティチームがこの問題を発見したのは米国時間7月1日である。彼らは7月9日にはLevel Oneへ接触を行い、翌日には問題に対する措置が行われ公開は停止した。

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(翻訳:sako)

画像: Guus Schoonewille/AFP / Getty Images

1兆ドルの物流業界の未来を、ブロックチェーン技術に賭けるUPS

【編集部注】執筆者のDeep Patelは、連続起業家、マーケター、そしてA Paperboy’s Fable: The 11 Principles of Successの著者である。

世界は取引(トレード)で運営されている。米国だけでも、貨物と物流にかかる費用は毎年約1.5兆ドル( 2015年のデータ )にも及んでいる。世界の経済規模が拡大するにつれて、その数字は増加の一途をたどることが予想されている、私たちが製品やサービスに関して、国際的なサプライチェーンにさらに依存するようになるからだ。

しかしながら、物流業界そのものは、その成長に耐えられる構造になっていない。現状では、構造的な非効率性と不正行為に晒されやすい、脆弱な基盤の上に載っているからだ。数え切れないほどの仲介業者が手数料を徴収し、輸送価格を引き上げている。問題は、こうしたプロセスの複雑さと不透明さが、適切な価格を算出することを困難にしているということだ。

FBIの推定によれば、貨物盗難により、米国では毎年約300億ドルの損害が発生していて、その平均盗難額は19万ドルに及んでいる。実際に、貨物盗難により、消費者にとっての製品コストは最大20%も増加しているのだ。こうした問題に関しては既に何十年にわたって、十分にレポートされているが、責任が分散していることよって、業界のステークホルダーたちには説明責任がほとんど生じていない。

しかし、いまやブロックチェーンテクノロジーの形で、大変革が業界に起きようととしている。この技術によって、より安く、より効率的な物流システムの登場が約束されているのだ。主要な既存企業たちだけでなく、革新的なスタートアップたちが、ブロックチェーンの開発に膨大な時間とリソースを投入している。

最近UPSは、ブロックチェーン技術標準の開発と貨物業界向けの啓蒙のためのフォーラムであるBlockchain in Transport Alliance(BiTA:輸送業向けブロックチェーン同盟)に参加することを表明した。BiTAは、セキュアなブロックチェーンシステムを導入することにより、運送業界全体向けの標準の開発を促進することを狙っている。

なぜ今なのだろう?なぜUPSは他の何百もの主要企業とともに、ブロックチェーンに賭けているのだろうか?

答:彼らは革命の一部になりたいから。彼らは、将来のスマートな物流ネットワークが構築される中で、重要な役割を果たすことを望んでいるのだ。そして彼ら自身が、自分たちで手を下さなければ、誰かがその役割を果たしてまうことを理解しているからだ。

物流と貨物の将来は、ブロックチェーンに大きく依存することになる。

ブロックチェーン技術の主な魅力は、分散されていて改竄(かいざん)されない台帳を作成できる能力にある。これは単一障害点を持たず、複数の関係者によって維持され、情報がハックされたり破損したりすることのないネットワークである。これにより、1つのトランザクションのライフサイクル全体が1つのブロックチェーンに格納されて、それら全ての情報に対するセキュリティと透明性が向上することになる。

現在貨物および物流業界は、大勢のブローカーと、複雑なサプライチェーンの中に隠された情報を、大量に抱え込んでいる。このチェーンのすべての側面にアクセスすることができる単一の事業者は存在しない。現在、貨物および物流業界は、荷主から運送業者への荷物の引き渡しを、円滑かつ容易にするために存在する、貨物ブローカーたちによって支配されている。ブローカーは荷物を探し出し、利ざやを乗せて、運送業者へと引き渡す。これは、運送業者のコストを上げるだけでなく、消費者に直接影響を与える下流価格の上昇にもつながっている。

現行のグローバルネットワーク全体にわたる効率性、透明性、セキュリティの欠如は、まさにブロックチェーンテクノロジーが解決するのにうってつけの問題なのだ。もしブロックチェーンが適切に活用されれば、より自由で透明性の高い世界的取引に参加する機会が顧客たちに与えられ、ブローカーの必要性が減り、仲介コストが削減される可能性がある。

こうした理由から、UPSのエンタープライズアーキテクチャならびにイノベーションディレクターLinda Weaklandは、ブロックチェーンにとても期待している。彼女は「物流業界の中での沢山の応用が考えられます。特にサプライチェーン、保険、支払い、監査、通関業務などがその対象となります」と語っている。この技術は、荷主、運送業者、ブローカー、消費者、ベンダー、その他のサプライチェーン関係者の間で、透明性と効率性を高める可能性を秘めていいる。

透明性と効率性を向上させる効果的な方法の1つが、Ethereumブロックチェーンを支える重要なイノベーションであるスマートコントラクトを活用することだ。スマートコントラクトは、本質的に、所定の規約が満たされたときに履行される自己実行型契約である。これによって、関連する仲介業者を排除または制限することが可能になり、途中で発生する利ざやを抑え、エスクロー(預託金)の運用効率性を向上させ易くなる。

ブロックチェーンはまた、サプライチェーンの追跡と透明性を高めることができる。荷主は、サプライチェーン全体の可視性を高めることができ、荷重、通過地点、そして基本的なコンプライアンス情報などの重要な情報を、運送業者との間で共有することができる。

一度出荷が確認され、ブロックチェーンに記録されると、それは不変である。つまり、誰も取引の正当性に異議を唱えたり、記録を不正に操作したりすることはできない。トランザクションがログに記録されると、スマートコントラクトはエスクローからの支払いを即座に行い、仲介処理に関連する時間とコストを削減する。

ブロックチェーンテクノロジーはまだ萌芽期であるため、世界中の企業やコンソーシアムが、商用化に先立ってソリューションをテストするために、実証技術を開発しているスタートアップたちに投資したり協業を始めたりしている。こうしたことに取り組むスタートアップの一例がShipChainだ。同社はブロックチェーン技術を物流業界に適用することを目指している。

BiTAの一員である同社は、現在物流プロセスの各段階についての洞察を与える、完全に統合されたサプライチェーン管理システムを構築している。さらに同社は、分散型の仲介システム(本質的に、荷主と運送業者のための公開市場)を構築することを目指している。ブロックチェーン上の情報の透明性を利用することで、荷主は各出荷のコストと時間を、公開市場の中で最適化できるようになる。

言い換えれば、荷主は、市場での決定を下す前に、特定の貨物について異なるルートの許容量、コスト、および推定納期を追跡することができるということだ。同時に、運送業者たちは、所有する輸送車両と輸送航路の、輸送能力に関する情報を継続的に入力し、供給と需要に基づいて最も公平な価格設定を動的に調整することができる。ブロックチェーンによってもたらされる透明性と効率性は、利潤を追求するブローカーによる人為的な利ざやを排除することで、最も効果的な方法でリソースを割り当て、すべての関係者に利便性をもたらす。

現行のグローバルネットワーク全体にわたる効率性、透明性、セキュリティの欠如は、まさにブロックチェーンテクノロジーが解決するのにうってつけの問題なのだ。

このプロセス全体を通しての可視性の向上は、業界を悩ましている盗難やハッキングを大幅に減少させる。ブロックチェーンテクノロジーと切り離せない特徴が、重要な輸送データの全てを記録する、分散型で暗号化された台帳を作成できる能力である。重要な情報を変更または削除することが誰にもできないため、ハッカーによって改変することもできないのだ。

ブロックチェーンの特徴は、非効率のはびこる業界に対しては有望だが、そのテクノロジーはまだ初期段階に過ぎない。現時点の実装では、東アフリカからヨーロッパへの出荷には、最大30箇所の異なる業者たちからの承認が必要となる可能性があり、また目的地に到達するまでには、最大200回の異なる相互作用が発生する可能性がある。

これらの相互作用の多くは、荷主と運送業者との間だけでなく、規制当局、小売業者、卸売業者、さらには顧客との間でさえも発生する。グローバルな物流ブロックチェーンネットワークが効果的に機能するためには、すべてのステークホルダーの参加が必要だ。

物流と貨物の将来は、ブロックチェーンに大きく依存することになる。世界各地の荷主たちは、現在でも、とりあえず輸送コンテナを追跡するための既存の手段は持っているし、ブロックチェーンに批判的な人びとは貨物輸送業界の追跡機能を完全に作り変えることは、大変過ぎる作業だと主張している。それでも業界のリーダーたちは、サプライチェーンを追跡するためのブロックチェーンの可能性を、既に認識している。

世界最大のコンテナ運送会社Maersk Lineは、既にIBMを提携を行い、それぞれの出荷に伴う膨大な事務処理を削減するために、貨物輸送の追跡へブロックチェーンを適用しようとしている。

荷主と運送業者たちは、ブロックチェーン技術の進歩が、この先何年もの間業界の成長を支えてくれるだろうと、楽観視している。

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES

ブロックチェーンがサプライチェーンにもたらす変革

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編集部記:Ben DicksonはCrunch Networkのコントリビューターである。Ben DicksonはソフトウェアエンジニアでありTechTalksのファウンダーだ。

2世紀ほど前、サプライチェーンという画期的な概念が発明された。サプライチェーンはA地点からB地点までの商品やプロダクトの移動を可視化し、把握するための概念だ。しかし、現在の製造経路及びサプライサイクルには適さなくなってしまった。それらはあまりに細分化し、複雑になって、地理的に分散してしまっているからだ。

現在のサプライチェーンは不透明で不完全なプロセスであり、すべてを把握するのは非常に難しい。

このサプライチェーンの問題はブロックチェーンで解決できるだろう。ブロックチェーンはすでにいくつかの業界で透明化と効率化に寄与している新興テクノロジーだ。

サプライチェーンの問題

サプライチェーンは原材料からコンシューマーが手にする最終的な商品に至るまでの製造と物流のすべてのつながりを表す。現代のサプライチェーンは100以上の工程と数十以上の地理的に異なる拠点をつなぐ場合もある。これにより、サプライチェーンで起きたことを遡って確認したり、問題を調査したりすることがとても難しくなっている。

カスタマーやバイヤーは購入したプロダクトやサービスの本当の価値を確認したり、立証したりできる確実な手段はない。サプライチェーンの透明性が失われているためだ。それはつまり、私たちが商品に支払う金額は、製造における本当のコストを正確に反映していない状態であるとも言える。

サプライチェーンに影響を受ける、あるいは連動する物事はさらにトラックしづらい。例えば、商品を製造する時の環境へのダメージなどをトラックする方法は現状ほとんどないと言える。

また、サプライチェーン上で行われる違法な行為の調査や責任追求をすることも非常に難しい。例えば、プロダクトの偽造、強制労働、工場の劣悪な労働環境、あるいはプロダクトの利益が戦争犯罪や犯罪グループの資金源になるといった問題だ。モバイル端末を始めコンシューマー向け電化製品の蓄電器を製造するために使用するコルタンの事例もこれに当てはまる。

ブロックチェーンでサプライチェーンを変える

分散型台帳は透明性とセキュリティーの両方を担保していて、ブロックチェーンは既存のサプライチェーンの問題を解決できる可能性がある。サプライチェーンにブロックチェーンを単純に適応する方法を考えた時、品物の移動を台帳に登録する方法があるだろう。ブロックチェーンには品物に関わる事業者や価格、日付、位置情報、品質、プロダクトの状態を始めとするサプライチェーンの管理に必要な情報を登録することができる。

台帳は広く利用可能であるため、すべてのプロダクトはそれを作るのに使用された原材料の出発店まで辿ることが可能になる。分散化した台帳の構造により、1社が台帳を占有したり、誰かが自分にとって有利になるようにデータを書き換えることはできない。さらに暗号化され、トランザクションは不変であるという特徴により、台帳を改ざんすることも不可能に近い。専門家の中にはブロックチェーンはハック不可能だと考える人もいる。

サプライチェーンのより良い管理のためにブロックチェーンを用いようとする取り組みも複数始まっている。IBMはカスタマーがブロックチェーンを安全なクラウド上で走らせ、複雑なサプライチェーンを要す高価な商品をトラックするためのサービスを展開している。Everledgerはこのサービスを活用している。Everledgerはブロックチェーンを使ってサプライチェーンを透明化することで、強制労働が横行し、またアフリカの犯罪組織の資金源となっているダイアモンド市場を正そうとしている。

ロンドンに拠点を置くProvenance はビットコインやイーサリアムの基盤となるブロックチェーンを活用し、原材料からコンシューマーに届くまでのサプライチェーンの透明化で人々の信頼を得ようとしている。企業はサプライチェーンやプロダクトの製造方法に関して透明性を保つことができる。また環境への影響、プロダクトの製造場所、誰が製造したかまでのすべてを開示することも透明性の内容に含まれる。

ブロックチェーンにはサプライチェーンを変革し、既存の商品の製造、マーケティング、購入、消費のあり方をディスラプトする力があるだろう。

Provenanceの取り組みは、社会的に認められた運用方法を促進することにもつながる。例えば、プロダクトを製造する段階で奴隷を用いたり、搾取が発生したりしていないことを保証することになるからだ。

BlockVerifyはまた別の取り組みを行っている。彼らはブロックチェーンの透明性を用いて、プロダクトの偽造に対抗する。特に多大な経済的なダメージをもたらし、毎年何百何千もの人命を奪う医薬品の偽造に対抗することに注力している。

BlockVerifyは箱に印刷されたQRコードを読み取るのと同じくらいの簡単さで真正な医薬品の認証ができるようにしたい考えだ。各プロダクトはブロックチェーン上に個別の認証があり、所有者の変更の履歴が記録される。その情報には誰もが簡単に確認することができる。

透明性の他にもブロックチェーン技術とサプライチェーンを掛け合わせることにより生まれる明確な利便性がある。

フィンランドのスタートアップKuovola Innovationはサプライチェーンにおけるスマートな入札を可能とする ブロックチェーンのソリューションに取り組んでいる。RFIDタグのついた荷物を台帳にA地点からB地点に運ぶ必要があると登録する。運送業社は、その仕事を獲得するためにアプリケーションに入札する。RFIDは最も適切な条件を提示した入札者に渡り、ブロックチェーンにその取引が登録される。荷物の移動は、タグがサプライチェーンを進んでいる最中でも随時トラックすることが可能だ。

ConsenSysのRebecca Migirovは、「サプライサークル」の青写真について説明している。これはブロックチェーンに基づいたコミュニティーの製造と消費のシステムを表す。コミュニティーの協力関係とコラボレーションを促進し、また消費者が「プロシューマー」(消費者であるとともに各自が製造者でもある)となることを促すシステムだ。

ブロックチェーンとスマート・コントラクトのインフラが整うことで、地域の製造事業者は分散化プラットフォームによりサードパーティーに頼らず、それぞれのスキル、リソース、プロダクトを共有することが可能となる。

サプライチェーンの未来

ブロックチェーンにはサプライチェーンを変革し、既存の商品の製造、マーケティング、購入、消費のあり方をディスラプトする力があるだろう。サプライチェーンに透明性、トレーサビリティ、セキュリティーが加わることで私たちの経済の安全性は高まることが期待できる。信頼と誠実さを促進することでより信頼できるようになり、また不審な活動を未然に防ぐことにもつながるだろう。

Featured Image: Bryce Durbin

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website