AR謎解きゲーム「サラ謎」開発のプレティアが2.8億円の資金調達、大型IPとの連動企画や全国展開を視野に

プレティアの代表取締役CEO、牛尾湧氏

AR謎解きゲーム「サラと謎のハッカークラブ」シリーズを開発し運営するプレティアは7月25日、セガサミーホールディングス、TBSイノベーション・パートナーズ、そしてオー・エル・エム・ベンチャーズから合計で2.8億円の資金調達を実施したことを明かした。同社は2018年10月にも資金調達を発表している。

2014年7月設立のプレティアは前述のとおり、サラと謎のハッカークラブと題されたAR謎解きゲームを展開しており、2018年8月からは第1弾が開催され、今年の3月からは第2弾が開催中。第3弾の開催も既に決定している状況だ。

渋谷の街を歩きながらプレイする同シリーズでは、「HACK PAD(ハックパッド)」と題されたオリジナルアプリを使用し、渋谷の街を練り歩きながら謎解きをしていく。ARならではの仕掛けが多く展開されているのが特徴的だ。また、同社はコンテンツ以外にも、独自のARバックエンド技術を世界中のAR開発者に向けて開放するため「ARクラウド」というサービスも開発している。

サラと謎のハッカークラブをプレイするプレイヤーたち。同社いわく、「恋人と」もしくは「友人と」共にプレイする参加者が全体の74%を占めている。

狙いは大型IPとの連動企画と全国展開

プレティアの代表取締役CEO、牛尾湧氏は今回の資金調達に関して、「我々にはARエンターテインメント事業とクラウドというツールの事業という2つの事業があるが、前者のほうでの地位を強化し、お客様にもっと喜んでもらえるようなプロダクトを作るための組み方をした」と話す。

セガサミーとは、大型IPとの連動企画を進めていく見込みだ。現在展開しているAR謎解きゲームに加え、異なるフォーマットのコンテンツも共同で開発していく予定となっている。

また、セガサミーはアーケードゲームの施設を多く運営しているため、今後プレティアがコンテンツを全国展開する際にはその施設をゲームのスタート地点として利用することも視野にある。サラと謎のハッカークラブのスタート地点は渋谷駅前の岡崎ビルとなっており、プレイヤー達はそこに集まり、説明を受け、アプリをダウンロードしたりスマホをレンタルした後に街へと繰り出しゲームをプレイする。このような場所が必要なため、ゲームセンターの一角を利用できるようになることはプレティアにとって大きなメリットとなるだろう。細かく説明すると、同社いわく、商業施設でAR謎解きゲームを開催するには4坪程度のスペースがあれば、受付ブースとプレイヤー用のテーブルを設置することが可能だ。

TBSとはテレビやラジオと連動したようなコンテンツ制作企画していく。TBSは多くのイベントをスポンサーしているため、そのような場でプレティアのARコンテンツをサービスとして提供したり、ARクラウドの技術のデモンストレーションを行うことを考えている。

オー・エル・エム・ベンチャーズに関しては、LPとして入っているバンダイナムコや小学館などのIPと組んでいくことが視野にある。

B2Bを強化、そしてARクラウド開発を加速

プレティアと言えば、自社コンテンツのサラと謎のハッカークラブを渋谷のみで展開している印象が強いかもしれないが、今後は商業施設などへの他地域展開、受託政策や招致開催に積極投資していく。街や地方自治体から地域興しのために、そして商業施設からも誘客のためにプレティアのARコンテンツを使いたいという問い合わせが多く寄せられているという。「コンテンツを何か一緒に作りたい」、「既存のものを使わせてほしい」など、様々な要望が寄せられているそうだ。今後はその需要を大きく満たしていくため、体制を強化する。

体制を強化することで、B2Bは勿論、B2Cに関しても、自社コンテンツからタイアップものまで、これまで以上に開発のピッチを上げていく。そして、これまでの謎解き以外のフォーマットにも順次チャレンジしていく予定だ。

牛尾氏いわく、「秋冬にかけて今開発しているコンテンツが少しずつリリースされていく」。また、同氏は、「まだ公開はできていないが、大型IPとの連携に関しても、既に企画から仕様作成まで動いている」と明かした。そして、2020年には謎解き以外のフォーマットのコンテンツをリリースし、「コンスタントに数ヶ月に一本はコンテンツを出していけるような状態」を整えていく。

来年はプレティアにとって、開発中のARクラウドのお披露目の年にもなる。牛尾氏は「2020年にはサービスとして、まずはアーリーアクセスという形で限られた会社にアクセスをしていただく。フィードバックを得た上で、順次、オープンアクセスの段階に向けて落とし込んでいく」と述べた。

ARクラウドを準備しつつも、コンテンツ開発を加速させていくプレティア。牛尾氏は「我々がやりたいことは、日本初のグローバルなARプラットフォームを作ること。勝利していくためには、コンテンツブランドをしっかりと作り上げることが一番大事だ」と話し、プレティアの強みは「他社に関してはコンテンツ制作や運営に関してはパートナーシップを組むことが前提」である一方、同社は技術開発から、企画、コンテンツの開発そして運営まで全て行なっている点だ、と説明した。

「プラットフォームの選択同意は、結局はコンテンツ。例えば、ネットフリックスかアマゾンプライムかを選ぶ際には、『ドキュメンタル観たいからアマゾンプライムにしよう』といったロジックが働く。そして、コンテンツを作る時に合理的な立地は日本。コンシューマーゲームや漫画など、優れたIPがこの国には多く存在する。素晴らしい作品を生み出したクリエイターたちが作品をAR化したいと考えた時に、我々がパートナーとなり、様々なコンテンツが我々のプラットフォームに上がっていくようにしていきたい」(牛尾氏)

サラと謎のハッカークラブに登場するヒロインのサラ。プレイヤーと共にストーリーを進めていく