ザンビアから初めてY Combinatorに入学したスタートアップがアフリカ初のカード発行APIを開発

過去10年間、40以上のスタートアップがアフリカの国々からY Combinator(ワイ・コンビネーター)にやってきた。米国時間8月5日、ザンビア共和国がそのリストに加わり、初の参加企業となった Union54(ユニオン54)は最初をかざるにふさわしいスタートアップだ。

Union54(54はアフリカの国家数にちなんだもの)は、Perseus Mlambo(パースース・ムランボ)氏とAlessandra Martini(アレサンドラ・マーティニ)氏が立ち上げたフィンテック企業だ。同社はアフリカ初のカード発行APIの提供を目指して今年創業したばかりだ。しかし、Union54は突如現れたわけではない。2人が以前たちあげたスタートアップ、Zazu(ザズ)から生まれたたプロジェクトだ。

Zazuは2015年にザンビアでチャレンジャー・バンクとして設立された。アフリカ大陸のフィンテックがみなそうであるように、Zazuはユーザーがウォレットにつなぐことのできるデビットカードを自ら発行しなければならなかった。Zazuは国の提携銀行がカードを発行するまで数ヶ月またされることがほとんどだった。18ヶ月待たされたこともある、とムランボ氏は言った。

そんな中、2人のファウンダーは自身でカードを発行するために地域の銀行と交渉を開始した。しかし、銀行の対応は無気力だった。「処理業者や銀行には私たちの質問に答える能力も、私たちが求めていたプロダクトを提供する能力もないことがわかりました」とムランボ氏が本誌のインタビューに答えて語った。

そこでスタートアップはMastercard(マスターカード)を直撃した。カードを発行する会社と交渉できるのに銀行を待つ必要などない、ということた。最終的に同社は、Mastercardプリンシパル・メンバーシップを獲得した自称アフリカ初のフィンテックになった。

プリンシパル・メンバーになったZazuはカード発行銀行として活動する資格を得た。言い換えれば、彼らはデビットカードを発行できるようになり、それはアクワイアラーとして取引処理サービスを提供できることを意味する。

その過程でファウンダーらは、アフリカのフィンテックを本格的に推進するためには、どの国のフィンテックでも簡単にバーチャルまたはプラスチックのデビットカードを発行できるようにすることが不可欠だと気づいた。そこでチームはZazuからUnion54をスピンアウトさせた。 現在同プラットフォームには、プログラム可能なデビットカードをどのフィンテックでも発行できるAPIがいくつかある。

「私たちはメンバー資格を利用して、自身でカードを発行したいアフリカのフィンテックの支援もできるようになりました。当社に来てAPIを手に入れるだけで、長い時間交渉することなく今すぐ行動に移せます」とアフリカの他のフィンテックにサービスを提供することについてムランボ氏は語った。

同社のターゲットは、バーチャルまたはプラスチックのカードを発行するために数十万ドルもの初期費用を使いたくないフィッテックだとCEOは語る。Union54は、BIN(銀行識別コード)の付与、管理・調停プログラムなどを行うAPIを通じて数週間でカードを発行できると言っている。

こうしてUnion54は、アフリカ初のカード発行APIを謳う権利を得た。このチャンスに目をつけたフィンテックはほとんどない。多くの会社が決済ゲートウェイからウォレットまでその他のさまざまな分野に焦点をあててきた。興味深いのは、これらの分野の大物たちが結局は自社顧客にバーチャルカードやプラスチックカードを作ろうとして複雑な作業に直面していることだ。Union54はそのギャップを埋めようとしている。現在まだベータ段階だが、すでに数多くのお得意様がウェイティングリストに名を連ね、プラットフォームを利用していることを同社は誇っている。

「素晴らしいことに、利用しているのはただの企業はありません、アフリカでトップ5%に入るフィンテックです。そして私は常に、自分たちがアフリカ・フィンテックの黄金世代だと言っています。だから、この分野のリーダーとされる人たちが使うためのカード発行プロダクトにとって今は最適の時期です。これは、人々が毎日使いたいものを私たちが持っている、という意味なのです」とCEOは付け加えた。

ウェブサイトには、 同社のAPIのユースケースが8種類紹介されている:Ledger based(帳簿ベース)、アクワイアラー/ゲートウェイ、バイ・ナウ・ペイ・レイター(後払い)、信用組合、運送会社、デジタルバンキング、クレジットカード管理、および法人カード。

Union54を使用するフィンテックは、カードのデザイン、使用する通貨の設定ができるほか、誰が使うか、何に使うか、いつ使うか、どう使うかが書かれたカタログを作ることもできる。

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フィンテックはUnion54の利用料金をAPIを使用する毎に支払う。プラスチック・カードを作るためには7〜9ドルの固定料金および取引が成立したときの固定料金(非公開)を支払う。

ムランボ氏はYCの2021年夏組に参加したことで、初期の顧客をYCのネットワークから獲得することができたと語った。彼はYCについて、初日から役に立つプログラムだと説明している。

「Union54がザンビアで最初Y Combinatorに参加を許されたフィンテックであることを誇りに思います。アフリカ南部では2番目です。ご存知のように、世界の投資家がアフリカを見る時、アフリカ西部から考えることがほとんどです。私たちがY Combinatorに入ることで私たちの幅広い仮説のごく一部が実証されました。ザンビアのようにフレンドリーな国がアフリカの役に立てるのです」

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画像クレジット:Union54

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ファーウェイ社員がウガンダ、ザンビア政府のためにスパイ活動か

中国の有力テクノロジー企業であるファーウェイは、すでに世界的に厳しい視線にさらされているが、さらに打撃となる可能性がある報道が出ている。Wall Street Journal(WSJ)によれば、ファーウェイで働く技術者たちがウガンダとザンビアで政府高官が政敵をスパイすることを手助けしていたという。

記事には匿名の監視組織幹部の証言を伝えている。WSJは「調査では中国政府ないしファーウェイ幹部との直接の結びつきの証拠は得られなかった」としている。しかしファーウェイ職員が通信の盗聴で役割を果たしたことは確認しているようだ。

ファーウェイ社員が関わったとされるデータのリストには暗号化メッセージ、 WhatsAppやSkypeアプリの利用履歴、携帯電話利用記録などがある。

ザンビア与党の代表は反政府的見解を流すニュースサイトと戦ううえでファーウェイの技術者の手助けを得たことをWSJに認め、「我々はフェイクニュースを追跡する場合、ZICTA(ザンビア情報通信技術庁)が実行する。この組織はファーウェイと協力してわれわれのテレコミュニティー・インフラがフェイクニュースを拡散するために使われないよう手を打っている」と述べた。

当然だが、ファーウェイ自身は全面的に関与を否定し、「我々はいかなる『ハッキング』も行っていない。われわれのビジネスを攻撃する根拠なく不正確な報道を断固として否定する。我々の内部調査はファーウェイ社員は報道で主張されているような活動に関与したことは一切ないと結論した。我々はいかなる(情報機関と)契約も結んでおらず、また(スパイ活動の)能力もない」とコメントしている。

この間、ファーウェイは米国、英国、ヨーロッパを含む各国で調査の対象となっており、同社のコミュニティー機器は中国政府によるスパイ活動のために用いられるのではないかという安全保障上の疑いが持たれている。これについてもファーウェイは強く否定、反論している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook