その企業にとって価値の高いユーザーフローをノーコードで作れる豪Upflowyが約4.6億円調達

新型コロナウイスルによるパンデミックが消費者の行動と購入パターンに影響を与え、この不確実性の時代にはデータドリブンな意思決定が、プロダクトやサービスがユーザーにとって本当に利益になるために重要になってきた。UpflowのCEOであるGuillaume Ang(ギヨーム・アン)氏によると、その上でオンラインのトランザクションを行えるSaaSプロダクトの需要が激増しているという。

Upflowyには、企業が価値の高いユーザーフローを作り出すためのツールがある、と同社は考えている。このオーストラリアのスタートアップは、最近400万ドル(約4億6000万円)を調達したばかりで、ドラッグ&ドロップでA/Bテストができるツールや、企業は利用に際してコーディングを一切行わなくていいウェブやモバイル上の個人化ツールを提供ししている。上記最新の投資はCounterpart Venturesがリードし、これまでの投資家であるTidalやGlobal Founders Capital、Black Nova、およびAntlerが参加した。

ウェブサイトやアプリ上で売上に結びつくサインアップを獲得するためには相当な時間と費用を要し、そのために多くの企業が苦労している、とアン氏は語る。起業家やマーケター、そして特にスタートアップがコンバージョン率とユーザーフローを上げるために、アン氏と2人の共同創業者Matthew Browne(マシュー・ブラウン)氏とAlexandre Girard(アレクサンドル・ジラール)氏は2020年にUpflowyを創業した。同社によると、これまでの企業は、開発チームや技術者チームに頼んでプロダクトを改良することに追われ、マーケティングに力を入れることがお留守になっていたという。

Upflowyの創業者。左からCTOのアレクサンドル・ジラール氏、CIOのマシュー・ブラウン氏、CEOのギヨーム・アン氏。

新たな資金の大部分は、予測的個人化など、主にデータサイエンス方面の能力拡大や新機能の開発に充てたいとのこと。さらにまた、人員を増やし、フルタイムの社員を30人以上にしたいという。

「エンゲージメントの貧しいフォームがコンバージョン率を60%も下げ、広告費の大きな無駄遣いになってることに気がつけば、そこから上昇が始まる。それが、最初のステップです。ユーザーの見込み客としての選別をもっと効果的に行っていけば、勧める製品や個人化もより適切になり、見込み客が購入客になります(コンバージョンする)。Upflowのデータ視覚化とA/Bテストを利用すれば、客離れのような行動がどこで起こるのか明確に把握することができ、その後の実験や最適化もより効果的になります」とアン氏は語る。

アン氏によると、現在のUpflowのユーザーは数百社で、ファッションのブランドやスポーツチームなど消費者対象だけでなくB2BやSaaS、ヘルスケア方面の企業もいる。過去数週間で毎週、ユーザー数が増え、アクティベーション率が40%増加し、月間ユーザー数は倍増している。

「オーストラリアのテクノロジー業界は世界のイノベーションを動かしている」とアン氏は声明で語っている。「私たちもすでに、活動もテストも世界レベルで行いプラットフォームの有効性を確信しています。見込み客が企業で最初に行うことはサインアップのフオーですが、私たちは初めて、そのフローを作りやすく、そしてライブにすることができました。そのためには情報の流れを改善し、見込み客があらゆるルートをスマートに動き回れるようにしています」。

パンデミックのおかげでUpflowは、最初からリモート企業としてスタートすることができた。初期の2020年には、リモートファーストの企業はまだ珍しいコンセプトだったが、それでも世界中から人材が集まった。2022年は米国に進出して、そこでのプレゼンスを大きくしたいとアン氏はいう。

Upflowyに投資しているAPAC OptimizelyのsoマネージングディレクターであるDan Ross(ダン・ロス)氏は次のように語る。「Upflowは、ほとんどすべての企業が直面している問題を解決しました。完全なサインアップフローを迅速に作って、何回もテストしながら改良していけるツールは他にはありません。しかも、他のプラットフォームへデータを供給して、ビジターを顧客にコンバートする過程を見ることもできます」。

また、Counterpart VenturesのゼネラルパートナーPatrick Eggen(パトリック・エゲン)氏は、声明で次のように述べている。「現代の企業は、データ収集と顧客体験の間にある摩擦を取り除くシンプルなノーコードのソリューションを必要としています。技術者がウェブ体験を作り出す、テストも改良もできない雑なソリューションが市場に多い中で、Upflowyはこの市場の見方を変えて、消費者が求めるウェブ体験をチームが作れるようにしています」。

原文へ

(文:Kate Park、翻訳:Hiroshi Iwatani)

シドニーのQ-CTRLは量子センシングを活用した「サービスとしてのデータ」市場を目指す

Q-CTRLは、量子制御エンジニアリングソリューションを提供するシドニーのスタートアップ企業だ。同社はオーストラリア時間11月30日、Airbus Ventures(エアバス・ベンチャーズ)が主導するシリーズBラウンドで、2500万ドル(約28億円)の資金を調達したことを発表した。このラウンドには、Ridgeline Partners(リッジライン・パートナーズ)、Main Sequence Ventures(メイン・シーケンス・ベンチャーズ)、Horizons Ventures(ホライズンズ・ベンチャーズ)、Square Peg Capital(スクエア・ペグ・キャピタル)、Sierra Ventures(シエラ・ベンチャーズ)、DCVC、Sequoia Capital China(セコイア・キャピタル・チャイナ)、In-Q-Tel(インキューテル)も参加した。

Q-CTRLの創業者兼CEOであるMichael Biercuk(マイケル・ビアキュック)氏は、この資金調達がスタッフの雇用を支援し、量子センシングを活用した新しいデータ・アズ・ア・サービス(サービスとしてのデータ)市場を実現すると述べている。同社はまた、量子コンピューティングのための量子制御や、加速度、重力、磁場を計測する量子センシングの開発にも引き続き投資していく。同社はこれまでに、総額6000万豪ドル(約49億円)以上の資金を調達している。

「Q-CTRLのビジョンは常に、量子技術のあらゆる応用を可能にすることです。今回の新たな資金調達は、宇宙、防衛、商業の分野に真の価値を提供するという当社のミッションを実現するために不可欠なものです」とビアキュック氏は述べている。

Q-CTRLは、この分野で最も差し迫った課題であるハードウェアのエラーや不安定性に対処し、量子コンピューティングのパフォーマンスを向上させるインフラストラクチャソフトウェアを提供していると、ビアキュック氏はTechCrunchに語った。

今回のシリーズB資金調達は、Q-CTRLが最近行った主要な技術および製品開発の発表に続いて実施されたものだ。それらの中には、量子論理ゲートとして知られるQ-CTRLのコア技術を用いて、実際の量子コンピューター上で実行される量子アルゴリズムのパフォーマンスを2680%向上させる技術デモが含まれている。

同社はまた、Fleet Space Technologies(フリート・スペース・テクノロジーズ)を中心としたオーストラリア企業のコンソーシアムと共同で、宇宙に適した量子センサーや、地球と月や火星の探査技術を開発している。その量子センサーの顧客には、Advanced Navigation(アドバンスド・ナビゲーション)、オーストラリア国防総省、空軍研究所、オーストラリア宇宙庁などが含まれる。

「このチームのすばらしい量子制御ソフトウェア群は、量子産業全体が急速に加速している今、速さと機敏さを可能にします」と、東京に本拠を置くAirbus Venturesのパートナー、Lewis Pinault(ルイス・ピノー)氏は述べている。「Q-CTRLは、月面開発、地理空間情報、地球観測など、先進的なアプリケーションやソリューションの幅を広げています。これらはすべて、現在我々が直面している加速的な惑星システムの危機に対処するための世界的な取り組みにおいて、ますます重要になっているものです。私たちが特に期待しているのはそこです」。

ビアキュック氏によれば、Q-CTRLの2020-2021年度の収益は前年比3倍となり、2020年後半に開始したばかりの新しい量子センサー事業の売上と予約で900万ドル(約1億円)以上を計上したとのこと。

多くの企業がそうであるように、新型コロナウイルスの影響で成長が大幅に停止したため、予定していた海外での販売・マーケティング活動に大きな損失が発生したと、ビアキュック氏は述べている。にもかかわらず、同社のチームは2020年1月以降、約20人から60人に増えたという。

ビアキュック氏は、同社が量子制御の専門家による大規模なチームを運営しており、30人以上の博士レベルの研究者が、量子コンピューティングと量子センシングの研究と製品開発を推進していると付け加えた。

Q-CTRLは最近、誰でも量子コンピューティングを学ぶことができるインタラクティブでアクセスしやすいオンライン学習プラットフォーム「Black Opal(ブラック・オパール)」を起ち上げた。ビアキュック氏によると、これは10日間の販売目標を2日半で突破したという。

Q-CTRLは2017年に、ビアキュック氏が量子物理学および量子技術の教授として勤務するシドニー大学からスピンオフした。

マイケル・ビアキュック氏(画像クレジット:Jessica Hromas)

現在はシドニーとロサンゼルスにオフィスを構えているが、年内にはベルリンにもオフィスを開設し、最初の従業員を雇用する予定だと、ビアキュック氏は述べている。

Boston Consulting Group(ボストン・コンサルティング・グループ)の報告書によると、量子コンピューティング産業は、2040年までに年間評価額で8500億ドル(約9兆6000億円)以上になると推定されている。BCC Research(BCCリサーチ)の報告では、世界の量子センサー市場は、2019年の1億6100万ドル(約182億円)から、2024年には2億9990万ドル(約338億5000万円)に増加すると予測している。

画像クレジット:Q-CTRL

原文へ

(文:Kate Park、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Investibleがアーリーステージの気候変動対策テックスタートアップを対象とした約80.6億円のファンドを設立

Canva(キャンバ)をはじめとするオーストラリアのトップスタートアップ企業への投資で知られる、シドニーを拠点とする「Investible(インベスタブル)」は、1億豪ドル(約80億5900万円)のClimate Tech Fund(気候変動対策技術ファンド)を調達することを発表した。Investibleがセクターに特化したファンドを立ち上げるのは今回が初めてだ。2021年初めにクローズした5000万豪ドル(約40億2800万円)のファンドを含む最初の2つのファンドは、いずれもセクターを問わないものだった。

また2021年8月、Investibleは、シドニー市と共同で、気候変動対策技術を持つスタートアップのための成長とイノベーションの拠点とする「Greenhouse(グリーンハウス)」を立ち上げると発表した。2022年のオープン時には、Investibleのポートフォリオに含まれていない気候変動対策企業を含め、スタートアップ、研究者、学者、企業を集める予定だ。

気候変動対策技術ファンドの代表であるTom Kline(トム・クライン)氏は「スタートアップ企業がスケールアップするのを支援します。具体的には、技術を向上させるための研究を行ったり、何を求めているかを理解するために大手企業を巻き込んだり、次の顧客を見つけたりすることになるでしょう」と述べている。

このファンドは、シードラウンドにも投資する、資本金の半分はフォローオン資金として確保する。また、主にオーストラリアの企業を支援するが、最大で30%を海外の企業に充てる予定だ。このファンドは、国連環境計画が気候変動や地球温暖化の抑制に最も重要としている6つの分野、すなわち、エネルギー、輸送、産業、建物・都市、食料・農業、森林・土地利用に焦点を当てている。

ファンドは、再生可能エネルギー運用会社New Energy Solar(ニュー・エナジー・ソーラー)の元最高経営責任者であるクライン氏と、2014年からテック企業に投資し、2019年からは気候変動対策のテックスタートアップに特化した投資を行っているPatrick Sieb(パトリック・シーブ)氏が主導する。

「年を追うごとに、私たちはこの空間でもっと何かをしなければならないことに気づき始めており、Investibleでは、年間1500~2000件の取引が行われていますが、そのうち気候に焦点を当てたものが増えています」と、クライン氏はTechCrunchに対し語り、セクターにとらわれず、気候に焦点を当てたファンドを立ち上げることを決めたことについて語った。

クライン氏は、気候変動に関心を持つ人が増え、それが消費者の選択を促し、企業に透明性を求めるようになってきていると付け加えた。また、より多くの政府が、達成に多大な技術と資本を必要とする目標を設定してきている。

Investibleの気候変動ファンドは、通常、150万豪ドル(約1億2000万円)程度からのシードラウンドに参加し、最大で30%、つまり50万豪ドル(約4000万円)程度を拠出する。追加投資は、最大で数百万ドル(数千億円)になる可能性がある。

このファンドは、Investibleのセクター不問ファンドと同じ投資プロセスを採用するが、気候変動に焦点を当てた基準を設けることになる。例えば、どれだけの排出量を削減できるか、設立チーム、機会の大きさ、技術の開発と収益化にかかる時間などが考慮される。

「科学者たちは何十年も前から気候変動について語っており、多くの議論がなされてきました。しかし、ようやく議論が終わり、これは人為的なものであり、この10年間で本当に行動を起こさなければならないということを人々が認める段階になったと思います」と、クライン氏は述べている。

画像クレジット:Mint Images / Getty Images

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ブロックチェーンベースの暗号化でサイバー侵害のパンデミックを終わらせるTide Foundation

グローバルパンデミック、そしてグローバルパンデミックが加速させたデジタルトランスフォーメーションは企業の攻撃対象領域を急激に広げた。その結果、2021年上半期に公になっているものだけで約1800件もの情報漏洩があり、188億件の記録が流出している。中でも、消費者の名前や連絡先の詳細、財務記録などが漏れて深刻な被害が発生した大規模な漏洩事案には現在も続いているAccellionの件があり、100以上の企業や組織、政府機関に影響が及んだ。そして顧客4700万人の情報が漏れたT-Mobileの件もある。

関連記事:T-Mobileがハッキングで少なくとも4700万人の現・元顧客が影響を受けたと発表

シドニーを拠点とする5人のスタートアップで、今週TechCrunch Disrupt Startup Battlefieldで競っているTide Foundation(タイドファウンデーション)は「この手のものとしては初となる」暗号化プロトコルがいわゆる「サイバーブリーチパンデミック」を過去のものにできると主張する。サイバーブリーチパンデミックは、世界的な危機が襲う前に非営利団体が使っていた言葉だ。

しかしサイバー犯罪対策の取り組みは必ずしもTideの共同創業者であるMichael Loewy(マイケル・ローリー)氏とYuval Hertzog(ユヴァル・ヘルツォーク)氏のミッションだったわけではない。実際、Tideは前の事業である、企業と消費者をモノのインターネット(IoT)デバイスでつなげるのをサポートするZivaというマーケティングプラットフォームから生まれた。事業は急速に成長し、多くの有名な企業を顧客としてひきつけた。しかしZivaはほどなくしてKellogg’sのキャンペーンを設計しているときにプライバシーの問題に行き当たった。問題のキャンペーンは「Special K Fitness Challenge」で、ウェアラブルの情報を共有する参加者が走行距離に基づいて報酬を得るというものだった。

「我々は何万人ものアカウントを集めました。そして参加者自身が知っていること以上に、習慣や健康状態、栄養状態など参加者の暮らしのすべてを知りました」とTideでテクノロジー面を受け持つヘルツォーク氏は話した。「これは企業にとって宝箱でしたが、非常にセンシティブな情報を扱っているという事実から逃れられませんでした」。

Tideはこのデータを守る必要があると認識したが、要件を満たす既存のソリューションを見つけられなかった。ブロックチェーンベースの暗号化手法をTideが思いついたのはそのときだった。

「真に」ゼロトラストの認証法としては初のものだと同社が主張するプロトコルは、組織が顧客記録や財務情報などセンシティブな情報を暗号化するのに使うことができる。各記録にはそれぞれ暗号キーがあり、各キーは分散している監視者によって管理される。

「誰もきちんとしたゼロトラストのモデルを見つけていませんでした。トラストモデルでゼロの人はいないからです。完全にゼロトラストモデルを提供しているのは当社だけです」とローリー氏は話した。

Tideの創業者たち。左からドミニク・ヴァラドイド氏、マイケル・ローリー氏、ユヴァル・ヘルツォーク氏(画像クレジット:Tide Foundation)

同社によると、ハックするのは「事実上不可能」だ。キーはグループに分散し、誰も完全なキーへのアクセスや知識を持たず、当局も自力では無理だ。そのため、あなたのキーへの悪意あるアクセスはほぼ不可能になる。

「もし、ではなくあなたがハックするとき、世界中の20のロケーションで少なくともコンピューター20台にリソースを投資しなければなりません。実際にそうしたとしても、手に入るのはデータの断片です」とヘルツォーク氏は話し、Tideがテクノロジーをハッカーを防ぐものにしようと取り組んでいた一方で、同社は「グランパ・テスト」をパスできるものにすることにも注力した、と付け加えた。

「人間の世界とコンピューターの世界をつなげるのは非常に難しいものです。我々は人間のインタラクションに特に力を入れ、現存する最もシンプルなメカニズム、つまりユーザーネームとパスワードを通じてシステムを使い始める人のための方法を構築しました」とヘルツォーク氏は話した。「これは絶対的に完璧なものではありませんが、少なくとも我々にとってはパスワードを使えば何十億倍も攻撃するのが難しくなります。当社のテクノロジーはユーザーネームとパスワードのサポートから始まりますが、生体認証にも対応します」。

Tide Foundationはこれまでに主にエンジェル投資家から200万ドル(約2億2000万円)相当を調達し、創業5年の同社はサイバーセキュリティ業界における大手からの出資も獲得した。オーストラリア・ウロンゴンのコンピューティングとITの学校の特別名誉教授Willy Susilo(ウィリー・スシロ)氏、そしてMicrosoftの元ディレクター Peter Ostick(ピーター・オスティク)氏、M&C Saatchiの元グローバル会長Tom Dery(トム・デリー)氏がTideのアドバイザーを務めている。

サポートを十分に受けているTideはいま、マーケットに売り込もうとしている。パンデミック、それに続くサイバーセキュリティカオスの結果、需要はすでにある。

「パンデミックの前に当社はプライバシー保護の企業に話をしていました。反応はというと『もしハックされたら、我々はいい会社にいるということだ』というものでした」とヘルツォーク氏は語った。「新型コロナの後で会話は変わりました。教育界、ヘルスケア、法務、重要インフラなど、情報漏洩に接した全エリアから問い合わせを受けています」。

画像クレジット:Tide

原文へ

(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi