有機無農薬にこだわったシンガポールのフードデリバリースタートアップが約11億円を調達

クラウドキッチンはフードデリバリーの重要分野だ、元Uber CEOのトラビス・カラニック氏が新たなビジネスでその分野に参入している、それはアジア、特に東南アジアに重点を置くものだ。そうした中で新参者にもかかわらず、よりしっかりとした事業を進めるシンガポール発のスタートアップが、地域拡大を目指して巨額の資金を調達した。

2014年に設立されたGrainは、クリーンフード(有機無農薬などの素材を使ったものを指す)に特化しており、カラニック氏のCloudKitchensや、Deliveroo、FoodPanda、GrabFoodなどのフードデリバリーサービスとは異なるアプローチを打ち出している。

人気のない不動産をキッチンとして活用し、配達にデリバリーサービスを使うクラウドキッチンモデルを採用してはいるが、それらを自分自身で運営しているのだ。CloudKitchensやその他の会社が、オンデマンドデリバリー顧客に向けて安価に調理を行うために、調理を行う会社に自社の作業所を賃貸している一方で、Grainは自社の調理人、メニューそしてデリバリーチームを使って運営している。もし陳腐になったテクノロジー用語を使うことをお許しいただけるなら、いわゆる「フルスタック」モデルということだ。

そしてなにより、Grainは利益を生み出している。新しい調達ラウンドは後述するように、成長を狙ったものだが、スタートアップ自身は昨年から利益を挙げていたと、CEOで共同創業者のイ・サン・ヨン(Yi Sung Yong)氏はTechCrunchに語った。

現在同社は、プロダクトをすべて支配下におくそのモデルの利点を享受している。他の会社がレストランや配達人を含む連携の複雑さを抱えている事情とは一線を画しているのだ。

私たちは以前、Grainが2016年にシリーズAで170万ドルを調達した件は報告していた。今回はタイのSingha Ventures(ビール会社の投資部門だ)が主導する1000万ドル(約11億円)のシリーズBを公表した。他にも多くの投資家たちが参加している。例えばGenesis Alternative Ventures、Sass Corp、K2 Global(Impossible Foods、Spotify、およびUberなどをサポートしているシリアル投資家Ozi Amanatが経営している)、FoodXervices、そしてMajuvenなどだ。既存の投資家であるOpenspace Ventures、Raging Bull(Thai Expressの創業者Ivan Leeの会社)、およびCento Venturesも参加している。

このラウンドには、株式だけではなくベンチャー融資も含まれているが、The Coffee Bean & Tea Leaf(Sassoon Investment Corporation)のオーナーの家族オフィスが関わっていることは注目に値する。

Grainはシンガポールの個人はもちろん、ビュッフェもカバーする。

前回と今回のラウンドの間の3年は長い年月だった、OpenspaceとCentoはその間にブランド名を変更している。そしてこの期間には非常に様々なことが起きていた。サン氏は、この期間のうちに、危うく資金がショートしそうになったこともあったが、資金が底をつく前にビジネスの基礎にテコ入れを行ったと語る。

事実、同氏によれば、現在100名を超えるスタッフを擁する同社は、自前で資金をまかなえるような準備を整えていたのだという。

「シリーズBでの調達は考えていませんでした」と彼はインタビューで説明した。「そうする代わりに、私たちは事業そのものと利益を挙げることに集中していました。私たちは投資家に完全に頼ることはできないと思っていたのです」。

それが、皮肉なことに、VCたちは自前で資金をまかなえる企業が大好きなのだ(なにしろビジネスモデルが上手く行くことが証明されているのだから)、そして資金調達を必要としないスタートアップに投資することは、魅力的な案件であり得る。

最終的には、利益を挙げられる力こそが魅力的に見える。特に食品分野では、無数の米国スタートアップが閉鎖に追い込まれていることを思えばなおさらである(MuncherySpigなどがその例だ)。だがこれまでの事業への集中はGrainにとってその拡大を棚上げすることを意味していた。だが同社は2017年に傷んだカレーによって20人の顧客に食中毒を起こしたことによって、内省する時間を得ることになる。

サン氏はこの事件について直接コメントすることは避けたが、現在会社はビジネスを全面的に拡大するための「インフラストラクチャ」を開発し、そこには厳しい品質管理も含まれていると述べている。

Grainの共同創業者兼CEOのイ・サン・ヨン氏(LinkedIn経由の画像)

Grainは現在、唯一の市場であるシンガポールで1日当たり「何千」もの食事を提供しており、その年間売上高は数千万ドルに及ぶと彼は言う。去年の成長率は200%だった、とサン氏は続け、いまや国外に目を向けるべきときだと語る。GrainのCEOによれば、Singhaと組むことで「バンコクで事業を立ち上げるために必要なすべてのもの」が手に入ると語る。

マレーシアを拠点とするライバルであるDahamakanが最初の拡大に選んだタイは、現在考えられている唯一の拡大先だが、サン氏は将来的には変わっていく可能性もあると語る。

「もし事態がより速く動くならば、私たちはより多くの都市へ、おそらく1年に1つのペースで拡大して行くでしょう」と彼は言う。「しかし、私たちは自分たちのブランド、私たちの食べ物、そして私たちのサービスをまず整える必要があります」。

その1つの要素は、供給者からの原材料や食品のより良い取引を確保することかもしれない。Grainは、街中で顧客になるべく速く提供を行えるように戦略的に配置された、その「ハブ」キッチンを拡大している。またデリバリーに用いる温蔵庫ならびに冷蔵庫を備えたトラック群の数も増やしている。

Grainの歴史は、この地域のスタートアップが試練と苦難を乗り越えることが可能なことを証明しているが、事態が悪化したときには基本に集中し、コストを削減することができることが大切なのだ。コストが積み上がったときに何が起きるかは、同じシンガポールに拠点を置いているHonestbeeに何が起きたかを見るといいだろう

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(翻訳:sako)

東南アジアで事業終了したUberがAPAC本部をシンガポールに残存させる理由

Uberは、昨年現地事業をGrab(グラブ)に売却して、東南アジアでの営業を終了したが、引き続きシンガポールに留まり、アジアパシフィック地域のための新たな地域本部を開設し、現在スタッフを雇用している。

近日中のIPOを目指している同社が、彼の地でサービスを再開するわけではない。しかしその新しい本部(HQ)が置かれたのはシンガポールの中でも興味深い場所だ。

だがここしばらくは行き詰まった空気が流れていた。昨年8TechCrunchは、Uberがシンガポールで大々的な採用活動を行っていると報じたが、結局その成果は新しい2000平方メートルのオフィスとして現れた。その場所は、シンガポールの中央ビジネス地区の近くである。これは、Uberがアジア太平洋地域で関わっている9つのマーケット(日本、韓国、オーストラリアなどを含む)のマネジメントセンターとして機能する。なおUberにとって2番目に大きいマーケットであるインドは、他の地域とは別に管理されている。

Uberの東南アジアでの売却(これによってUberはシンガポールのライバル企業の株式の27.5%を戦術的に取得した)では、Uberはその運営人材を、Grabにわたすことを基本的に拒否した。その代りにUberの大部分のコアマネジメントチームは、シンガポールの同社に留まったままなのである。例えば、2017年にアジアパシフィック地域の最高経営責任者として雇用されたたBrooks Entwistle(ブルックス・エントウィッスル)氏は、Uberの国際最高ビジネス責任者として留まっている。

シンガポールの地元紙であるStraits Timesによれば、シンガポールのUberの人員は少なくとも165人であり、現在さらに17人を募集中である。昨年報告したときには、同社はシンガポールに本拠を置くチームを100人以上にするために、少なくとも75のロールに対して雇用を行うことを目指していた。どうやらその目標は達成し、更にある程度の雇用も行ったようだ。

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(翻訳:sako)

Facebookは人権侵害する国にデータを保管しない、ただしシンガポールを除く

Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が3225ワードにわたる長文のブログ記事で、人権の守られていない国にはデータセンターを建設しないと宣言して間もなく、彼は約束を破った。

彼はシンガポールを例外扱いすることを選んだ。Facebookのファウンダーはわずか数ヶ月前の投稿で、「全員にサービスを提供」するために、同社にとってアジア初のデータセンターをこのミニ国家に作ると宣言した。

ザッカーバーグ氏は明快だった。「世界中に基盤を構築していく中で、われわれはプライバシーや表現の自由などの人権を侵害した歴史のある国にはデータセンターを置かないことに決めた」

シンガポールについて知られていることが2つあるとすれば、プライバシーも表現の自由もないことだろう。

その華やかさと経済力をよそに、シンガポールの人権の歴史は国際的認識のはるか下を行っている。人口500万人のこの国は人権団体による世界ランキングで最下位に近く、それは言論、表現、集会の自由に反対する圧政的法律と、 拡大する監視社会の元でのプライバシー権利の制限などが理由だ。さらに悪いことに、この国はLGBTQ+コミュニティーに対する残虐な扱いでも知られており、彼らの行動は極度に制限され、公衆でのあらゆる行動や表現は犯罪とみなされている。メディアさえも厳重な監視を受け、政府による懲戒や名誉毀損訴訟による脅迫が後を絶たない。

国境なき記者団は、シンガポールを「不寛容な政府」を持つ国であると言い、ヒューマン・ライツ・ウォッチはこの国の制限の厳しい法律を「ドラコンのように過酷」であると評している。

われわれはこうした指摘をFacebookにぶつけてみたが、同社はザッカーバーグ氏の発言が矛盾するとも偽善であるとも見ていない。

「データセンターをどこに新設するかは多段階のプロセスであり、再生可能エネルギー、インターネット接続、地元の強力な人材資源など、何十種類もの要素を考慮しなくはならない」とFacebookの広報担当者Jennifer Hakes氏は言った。「しかし最重要な要素は、その設備に保存されたあらゆるユーザーデータを、われわれが確実に守れることだ」

「これはザッカーバーグ氏が先週の投稿で強調した重要な点だった」とHakes氏は言った。「我々はシンガポールについてこれらの要素を慎重に検討した結果、アジア初のデータセンターに適切な場所であるという結論を下した」

皮肉なことに、Facebook自身のプラットフォームは、シンガポール政府によるよる口うるさい反対者の取締りの標的になっている。活動家のJolovan Wham氏は、Facebookページで 集会を組織した後に投獄された。集会許可申請が却下されたため、Wham氏は連絡手段をSkype通話に切り替えた。

Facebookに、どんな場合にある国の人権を容認できないのか尋ねたところ、ザッカーバーグ氏の投稿を再度指し示しただけだった。

シンガポールは今でもIT業界とビジネスにとって重要な拠点であり(特に欧米企業にとって)、そのため日頃プライバシーと言論の自由への強い意志を強調している会社も、人権を捨ててきた。AmazonMicrosoftGoogleDigitalOcean, Linode、およびOVHの各社はいずれもこのミニ国家にデータセンターを置いている。

しかし、現時点で人権の歴史に汚点のある国にデータを保存しないと公約しているのは1社だけだ。

なぜFacebookはシンガポールを例外にしたのか?これはザッカーバーグ氏にしかわからない謎だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ロボット・スワンがシンガポールの水質調査をお手伝い

シンガポールの国立シンガポール大学の研究者は自律航行が可能な水質検査ロボットを開発した。この水上ドローンはSmart Water Assessment Network、SWANと呼ばれる。実際、驚くほど本物のハクチョウそっくりだ。

ロボットはシンガポールの港湾や川、池に浮かべられセンサーで水温、汚染物質などを検査し、リアルタイムで情報を送り返してくるという。スワン・ロボットにしたのはむき出しのドローンに比べて親しみやすく、風景にもうまく溶け込むからだという。

現在スワン・ロボットはシンガポールの貯水池などで水質検査の実験を始めている。ボートその他の障害物と衝突しても耐えられるデザインだという。従来のようにボートを使って人手で水質サンプルを集めるよりはるかに低いコストで多数の地点の水質が検査できる。将来はまったく人手を介さず完全自動で水質を見張るようになるはずだ。

本物のハクチョウをびっくりさせないといいのだが。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Dysonがシンガポールに、AIとソフトウェアの研究開発に注力した技術センターをオープン

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Dysonはシンガポールでの業務を拡大している。掃除機とスマート家電のメーカーが新しい技術センターを本日(米国時間13日)オープンしたのだ。この英国生まれの会社は新しい施設へ5億6100万ドルを投資する。この施設は会社の成長するビジョンを推し進めるために、研究開発チームが様々なハードウェアとソフトウェアのノウハウを蓄積できるようにするものだ。

もしDysonの仕事にあまり詳しくないならば、どうして掃除機の会社が「人工知能、機械学習、そしてソフトウェア開発への集中」に5億ドルもの投資を行うのかを不思議に思うかも知れない。しかしDysonは、いつでも国内清掃機器マーケットでハイテクエッジであることを強調してきた。それが最近は推し進められているというだけのことだ。そこにはロボット工学、コンピュータービジョンシステム、機械学習を使うDyson 560 Eyeロボット掃除機などが含まれている。

施設内の写真から分かるように、Dysonはその最新のプロダクトであるSupersonicヘアドライヤーに多大なエンジニアリングを投入している最中だ。また、Dysonがその電気モーターやバッテリ技術の知見を自動車の世界に広げるのではという憶測もあったが、その件に関しては会社はまだ何も発表していない。

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    Dyson R&D by Gareth Phillips
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Dysonの新施設には、彼らがThe Control Towerと呼ぶ、サプライチェーンと物流のリアルタイムモニタができる設備も置かれる。これを使うことで世界的な生産と出荷がスムースに行われるようになる。そして新しいハイテクセンターはDysonのWest Park 工場の近くに位置している。同社によればこの工場では高度な自動生産ラインのおかげで、2.6秒に1台の割合でモーターが完成しているということだ。

Dysonは既に、ロボット計画のリーダーであるMike Aldredの下でロボットや機械学習に関する多くのことを行うと発表している。そして新しいハイテクセンターはその追求に役立つだろう。既にDysonは次世代ロボット掃除機の開発に取組んでいることを認めている。360 Eyeのために開発されたコンピュータービジョンやその他の技術が、より広い製品に適用されるだろうと語っている。

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(翻訳:Sako)

シンガポールのNugitが520万ドルを調達 AIを利用したビッグデータ分析サービスを提供

Colorful data graphs on glowing panel of computer screens

ビッグデータの時代が訪れ、データの組織化と処理の効率化が求められるようになった。それこそがマーケティングに特化したシンガポールのスタートアップであるNugitが得意とする分野だ。今週、同社はSequoia CapitalがもつIndia Fundから520万ドルを調達したことを発表した。Nugitは昨年、500社のスタートアップとThe Hub Singaporeから金額非公開のシード資金を調達している。

オーストラリア出身のマーケッターであるDavid Sandersonが創立したNugitは、顧客企業と顧客が持つデータ・プラットフォームの仲介役となり、そのデータが持つ意味を浮き彫りにする機能をもつ。現在はFacebook Ad Manager、Google AdWords、DoubleClickなど15個のデータ・プラットフォームをサポートしている。Nugitのアイデアとは、データに存在するノイズを排除するだけでなく、Nugit自体がPowerPointなどの「即座に意思決定につながる資料」を作りだすことで、デジタル・マーケッターの負担を軽減するというものだ。

マーケッターがデータを扱う際には、データのクリーニングやアラインメントなど数多くのプロセスを手作業でこなす必要がある。しかし、GroupMや他の広告代理店で勤務していたSandersonは、コンピューターを利用すればそのプロセスをただ完了させるだけでなく、データが持つ意味を浮き彫りにすることができると気づいたのだ。こうして、人間には相当の労力が必要なプロセスのオートメーション化を目的にNugitが設立されることとなった。

Nugit CEOのSandersonはTechCrunchとのインタビューの中で「そのようなプロセスは特にデジタル分野のマーケッターにとってエキサイティング時間でもあります。しかし、データの量が多すぎると質の高い分析を行うことが難しくなってしまいます。人間が処理できるデータの量は限られており、そのために置き去りにされるデータがあるのです。それに加え、人々はデータを集めることにうんざりしていて、代わりに即座に意思決定につながる情報を欲しがっています」と語る。

シンガポールを拠点とする25人のチームからなるNugitの顧客企業には、FacebookやJohnson & Johnson、Publicisなどがある。同社の料金体系はデータの量やソースによって利用料金が変わる会員料金型だ。会員料金は最低で500ドル、最高で2000ドルだ。また、特別なインテグレーションやホワイトラベル化された製品を必要とする顧客向けには、それぞれにカスタマイズしたオプションも提供している。

Sandersonによれば、元々は彼がよく知る広告代理店業界向けのビジネスとして始まったNugitではあるが、大量のデータを抱える他分野の業種にもビジネスの範囲を広げつつあるという。その最近の例として、金融業界の会計データの処理にNugitのテクノロジーを利用したいとのアプローチがあったとSandersonは話してくれた。

「多くの組織が大量のデータを保有してはいますが、社内に分析チームを抱えていてもデータを大規模に分析することができていません。そのような分析チームのほとんどが、多種多様なツールを使って人間の手でデータの分析を行っています」とSandersonは語る。「あと1年か2年もすれば、企業のコアとしてNugitが提供するようなデータマネジメント能力が必要だと気づくようになるでしょう。それはデジタルメディア向けのキャンペーンに関してのデータであっても、企業の財政データであっても、もしくは消費者の新製品購入に関するデータであっても同じことです」。

Nugitは今回調達した資金によって、R&Dを強化して同社のテクノロジーのさらなる開発に努めるとともに、新しい業種にもビジネスの範囲を広げていく予定だ。Sandersonによれば、来年の終わりまでに従業員の数を2倍に増やすことも考えているという。しかし、拠点はシンガポールのまま変わらず、今後もアジア地域の企業やグローバル企業にフォーカスしていくと話している。同社は顧客が利用できるSDKの開発にも取り組んでおり、これが実現すればNugitをベースにカスタマイズされたソフトウェアを顧客自身が構築することが可能になる。

Sequoia CapitalがアジアのAI系スタートアップに投資したのはNugitで2社目だ。今年の8月、Sequoiaはインドとアメリカを拠点にEコマース向けのサービスを開発するMad Street Denに対して金額非公開の出資を行っている。また、9月にはNugitと同じくシンガポールのAI系スタートアップであるViSenzeが楽天から1050万ドルを調達している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Websie /Facebook /Twitter

Funding Societiesが750万ドルを調達、東南アジアで個人出資ローンサービスを展開

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また新たに東南アジアのフィンテック系スタートアップが、注目の投資ラウンドを終えた!シンガポールを拠点とするFunding Societiesが、同社のマーケットプレイスを介したローンサービスのため、シリーズAラウンドで750万ドルを調達したのだ。

本ラウンドでは、Sequoia Capitalが設立した、東南アジアを拠点とするスタートアップが対象のファンドであるSequoia Indiaがリードインベスターとなり、エンジェル投資家もそれに加わった。

2015年6月にローンチされたFunding Societiesは、Lending Clubを例としたアメリカに既に存在する企業のように、誰でも利子狙いで貸出資金を出資できるプラットフォームを運営している。Funding Societiesは、自分たちのプラットフォームを「Peer to Business(個人から企業へ)」プラットフォームと呼ぶことで、競合他社との差別化を図っている。つまり、現状彼らは消費者向けではなく、中小企業向けにローンを提供しているのだ。しかしターゲットについては、取引のボリュームが増加してくれば変わってくる可能性もある。

Funding Societiesは、シンガポールと(Modalkuと同じ)インドネシアで営業を行っている。シンガポールは、東南アジアの国々の中でも経済発展ではトップの地位にあり、インドネシアも経済規模では同エリアのトップだ。なお、両国にはCapital MatchMoolahSenseといった競合が既に存在する。

同社は、これまでに96件で合計870万ドルのローンを実行している。返済率は94%と発表されており、Funding Societies CEOのKelvin Teoは、返済率こそボリュームではなく信頼度を測れる意味で、重要なデータだと語っている。

「Funding Societiesは、シンガポールにある他社と比べ、サイズでは劣っていますが実行したタームローンの数では1番です。これには、度を越した貸付を行うといつか不渡りの形で返ってくるという私たちの考え方が反映されています」と彼は説明する。

詳細を説明すると、Funding Societiesは主に運転資金の貸出を行っており、シンガポールの平均ローン額は9万シンガポールドル(6万7000ドル)で、インドネシアは2万5000シンガポールドル(1万8500ドル)だ。

借り主にはローン組成費用(シンガポールで3〜4%、インドネシアで5〜6%)が発生し、貸し主は月々1%の利用料を支払わなければならない。同社によれば、ローン申請の審査通過率は15〜25%とのこと。

拡大と規制対応

Teoは、TechCrunchの取材に対し、Funding Societiesがマレーシアへの参入準備を進めていると語った。マレーシアには既に数人の従業員がいて、現地での営業許可に関する当局のフィードバックを待っている状況だ。

マレーシアへの展開と全般的な規制対応のふたつが、今回調達した資金の主な使い道だ。さらに彼は、東南アジアではP2Pローン市場がまだ成長過程にあり、Funding Societiesは新たな規制導入の需要を考慮して資金力を増強したと説明した。

また、コンプライアンスの重要性を強調し、投資家から資金を調達するのにも「信じられない程の」数の法律事務所に相談しなければならなかったと話した。

「私たちのいる業界に対する規制がシンガポールで発表されましたが、これに対応するには別途資金が必要になってくるでしょう」とTeoは語る。

Funding Societiesは、インドネシアでも同様に、当局と協力しながら個人出資ローンに関する規制のフレームワーク導入に取り組んでいる。

競争の激化

Teoは市場の競争激化を見越している。そのせいもあって、彼と共同設立者であるReynold Wijayaは、去年アメリカのハーバード大学を卒業する前に、100日間でFunding Societiesを立ち上げた。

「今年の卒業まで待っていたら、市場に遅れをとることになっていたでしょう」とTeoは話す。

素早く動く以外にも、商機を掴む上でタイミングがとても重要だったと彼は主張する。というのも、規制対応にかかる費用のせいで、資金力の無い会社は事業を続けられない可能性があるとTeoは考えているのだ。

「このタイミングで資金調達を行っていない企業は、東南アジアにあるプラットフォームで規制にのっとった営業を続けられなくなる恐れがあります。私たちは、今後6ヶ月のうちに競争が激化し、その後業界再編が起きると予想しています」と彼は付け加えた。

規制対応と拡大(ここにはインドネシアの首都ジャカルタ外の都市への拡大も含まれる)の他にも、Funding Societiesは製品への投資を考えている。現在、同社はiOSのアプリを貸し主向けに、そしてAndroidアプリを借入希望の企業に対して提供している。この決断は、アジア社会においてApple製品は富裕層に人気があるという無視しがたい状況に基づいている。しかし、今後借り主と貸し主向けのサービスを整備し、「個々の投資家のニーズに合った投資オプションをつくりだすような」サービスを増やしていく予定だとTeoは話した。

まだまだやるべきことは多いようで、Funding Societiesは既に約70人規模の企業に成長したが、Teoは同社のスタートアップらしい成長と、金融商品を扱うことの責任をすりあわせようとしていると強調した。

「私たちと投資家の方々は、爆発的な成長を推し進めて不渡りを発生させる代わりに、ゆっくりと確実に積み上げていくという姿勢をとっています。利益を生み出すためには、時間をかけてスケールしなければいけません」とTeoは、Funding Societiesが「2、3年」のうちの損益分岐点到達を目指すと説明しながら語った。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

東南アジア拠点のフリマアプリCarousellが3500万ドルを調達

Southeast Asia based Carousell raises1  35M for its social commerce app   TechCrunch

Carousellはユーザーが品物を掲載して個人間売買できるアプリだ。Carousellを運営しているのは創業4年目のシンガポール発のスタートアップで、現在、東南アジアにおいてアプリを展開している。CarousellはシリーズBラウンドで新たな国への進出とプロダクト開発のために3500万ドルを資金調達した。

Carousellは、整い始めたシンガポールのスタートアップエコシステムから芽を出したスタートアップの内の1社だ。Carousellを創業したNUS(シンガポール国立大学)卒業生のLucas Ngoo氏、Marcus Tan氏、Siu Rui Quek氏ら3人は20代前半は「一般的な」仕事に就いていた。加えて、このシリーズBラウンドはシンガポール発のスタートアップにとって確実に注目に値する(そして最大の)ラウンドである。

当ラウンドは以前からの出資者Rakuten Venturesに率いられ、Sequoia(東南アジアの取引を担うインドのファンド経由)、Golden Gate Venturesと500Startupsが参加している。Carousellは以前の2014年のシリーズAラウンドで600万ドル2013年のシードラウンドで80万ドルの資金調達をしている。新たな調達ラウンドを早い段階から検討していたことが垣間見える。

実際、昨年12月TechCrunchは、CarousellがシリーズBラウンドで5000万ドルに近い額を出資者から調達しようとしていると記事で伝えた。当時、その記事に関してCarousellのコメントを得られなかった。そして、今回に関してもCEOのQuel氏はその記事に関しては「既存投資家の支援が得られることを非常に嬉しく思っています」と述べるに留まった。

Carousellのアプリは「私たち自身が抱えている問題を情熱を持って解決するプロジェクト」としてシンガポールで開始したとQuek氏はTechCrunchのインタビューで語った。簡単にCarousellを言い表すとiOS、Androidアプリ経由のモバイル版クレイグリストだ。写真をアップロードできる機能を持ったチャットスタイルのインターフェースを採用しており、品物の売買に興味のあるユーザー同士を結びつける。個々のユーザーが自ら販売、支払いの管理を行い、今のところCarousellはサービスから収益を得ていない。

Southeast Asia based Carousell raises 35M for its social commerce app TechCrunch

Carousell上には既に3500万の品物が掲載されており、1分間に70個の品物が新たに掲載されている。アクティブユーザーは平均で17分間アプリ内を回遊しているとCarousellは説明する。(これは悪くない数値だ。Facebookグループの3つのアプリFacebook、Instagram、Messengerでは、ユーザーは平均で1日50分間利用していると先日Facebookは公表した)。

Carousellは現在、シンガポール、香港、台湾、マレーシア、インドネシアの5カ国でサービスを提供している。さらにシェアを拡大する計画もあり、現在、重点を置く東南アジア以外の国への進出も含まれるとQuek氏は語った。

「Carousellが解決している問題はグローバルなものです」とQuek氏は説明した。「Carousellの事業は本質的に地域に縛られないものです。(Carousellが進出を予定している)次の市場は東南アジアの外であり、進出に向けて準備を進めています」。

Carousellは国際的な市場拡大に向けて、今年初めには東南アジアでAirbnbの事業を牽引してきたJJ Chai氏をヘッドハンティングした。

東南アジアにおけるEコマースの市場獲得を巡る競争は厳しい。オンライン市場は市場全体の3%未満を占めていると推定される。今年、Alibabaから10億ドルの資金調達を行ったLazadaの他にも東南アジアには各国固有のEコマース企業が存在する。ソフトバンクの支援を受けているTokopedia、インドネシアの小売コングロマリットLippoが運営するMatahari Mallなどだ。一方、ソーシャルネットワーク上で従来の枠に捉われないコマースも成長しており、Facebookも注力し始めている。アメリカの大手SNSは、Facebook Shopの機能と並行するソーシャル決済システムを検証している。これは、東南アジアのユーザーがFacebookの囲いから離れなくても、商品の売買をすることを促すものだ。また、いくぶん奇妙ではあるが、Rakuten Venturesの親会社である楽天はCarousellに似たRakumaという名前のソーシャルコマースアプリを東南アジアで展開している。

「Rakumaを開始したことを知りませんでした」とQuek氏は語る。「子会社のベンチャーキャピタルのRakuten Venturesを通じて楽天から出資を受けています。Rakuten VenturesのCarousellへの出資は本質的に戦略的な意味合いはありません。私たちは独立して事業を運営しており、楽天の戦略的な計画は把握していません」。

厳しい競争の渦中だが、今の段階でCarousellが収益についてあまり考えていないことは驚くことではないかもしれない。Quek氏は、Carousell(と出資者)は将来的にマネタイズを行うだろうが、今すぐそれを行う計画ではないという。現在はアプリをスケールさせることに重点を置いているとのことだ。

Quek氏は、その時が来たのならCarousellが利益を得ることに何ら問題もないと楽観的に考えていることを強調した。

「Carousellのビジネスモデルは、基本的にはマージン率およそ50%の旧来のクラシファイド広告と同じです」とQuek氏は言う。「ビジネスモデルを新たに発明しようとしているのではなく、新たな顧客体験を創造しようとしています。結果的にそれがマネタイズにつながるのです」。

「現在、重点を置いているのは、市場の国際展開、そして競争力のあるプロダクトとエンジニアチームの整備に力を入れて取り組むことです」とQuek氏は補足した。

Carousellには現在90人の社員がいて、そのうち24人はエンジニアだ。Quek氏は今年の末までに、エンジニアの人数を倍にしたいと語った。そのようなチーム体制によって検索の改善、売り手と買い手のマッチング、スパム的な商品掲載を減らすことを狙うと語った。

Carousellの最終的なエグジット戦略に関して、東南アジアで初の注目を集めるIPOになるかと気になるかもしれないが、それに関してコメントは得られなかった。

「私たちはCarousellのエグジットについてあまり議論してきませんでした。私たちが常に大事にしていることは大きなインパクトを生むことなのです」とQuek氏はTechCrunchにそう語った。「Carousellはちょうど動き始めたところです。国際展開が’最も重点を置くことの1つになるでしょう」。

原文

(翻訳:Shinya Morimoto)