三陸や北陸の朝獲れウニ・エビを品川で夕方買える、フーディソンとJR東日本が新幹線物流の実証実験

フーディソンとJR東日本スタートアップは6月11日、新幹線を利用した鮮魚輸送の実証実験を報道関係者に公開した。

写真に向かって左がJR東日本リテールネットが運営するエキュート品川で店長を務める清水 理三郎氏、中央がフーディソンの代表取締役を務める山本 徹氏、右がJR東日本スタートアップの代表取締役社長を務める柴田 裕氏

フーディソンは、ITを活用して市場流通システムを再構築し海産物に対する消費者の需要喚起を目指す、2013年設立のスタートアップ企業。具体的には、鮮度を保ったままでの提供はもちろん、適切な価格設定を実現している。そのほか、中目黒、都立大学、中延、エキュート品川店の都内4カ所で直営の鮮魚店も展開している。


JR東日本スタートアップは、JR東日本のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)。鉄道資源を活用した新規事業を支援しており、2017年からは「JR東日本スタートアッププログラム」を開催。これまでもさまざまなスタートアップとの実証実験を進めてきた。フーディソンはこのプログラムの採択企業の1社であり、20194月に同社とフーディソンが資本提携したことで今回の実証実験が実現した。

実証実験では、岩手県の三陸沿岸や新潟県の佐渡沖で水揚げされた海産物を新幹線で東京に運ぶことで輸送時間を短縮。ユーザーはショッピングサイト「ネットでエキ ナカ」もしくは店頭で事前予約すると、獲れたての海産物を鮮魚店「sakana bacca エキュート品川店」で受け取ることができるというもの。実証実験は、6月11日、13日、14日、18日、20日、21日の6日間となる。なお在庫状況によっては予約なしでも店頭購入が可能だ。

新幹線を使って輸送される海産物は、ウニと南蛮エビ(甘エビ)。ウニは、岩手県宮古市の田老漁港で前日に水揚げ・瓶詰めされたもので、当日朝7時30分にバスに乗せて盛岡駅に輸送。盛岡駅からは東北新幹線で東京に運ぶ。盛岡駅までのバス移送については、地元のバス会社の協力により実現したそうだ。

南蛮エビは、新潟県佐渡市の佐渡両津港で朝4時に水揚げされたものを、朝9時30分にジェットフォイル(水中翼船)で新潟港に。そして、新潟港からトラックで新潟駅に輸送する。新潟駅からは上越新幹線で東京駅に運ぶ。ちなみに新幹線内では、ウニ、南蛮エビともに発泡スチロールの箱に氷詰めされた状態で車内販売のバックヤードのスペースに格納されているとのこと。

東京駅からはウニと南蛮エビをまとめて品川駅までトラックで配送し、店舗(sakana baccaエキュート品川店)にその日の16時ごろに届けられる。今回新幹線で運ばれたのは発泡スチロールの箱が6つ。現地でフーディソンが委託している仲買人が買い付けたウニ2箱と南蛮エビ4箱だ。

エキュートでの売価は、160g入りのウニの瓶詰めが3600円。南蛮エビが200gで1600円。ネット注文では断然ウニが人気だったとのこと。なお、今回の実証実験には両社のほか、駅ナカ店舗のエキュート品川の運営元であるJR東日本リテールネット、東京駅から品川駅までのトラック移送を担うジェイアール東日本物流も協力している。

今回の実装実験の物流経路

新幹線物流を使う理由としてフーディソンで代表取締役/CEOを務めるの山本 徹氏は「これまでは鮮度落ちが早く主に地元で消費されていた地産品を、いち早く東京にとどけることで商品の価値を高めることが狙い」とのこと。今回の実証実験は消費者の反応やコスト感を見ることが目的だが、JR東日本スタートアップで社長を務める柴田 裕氏によると「小売りの海産物を新幹線で運ぶのは今回が初」だそうだ。

今後の展開についてフーディソンの山本氏は「魚種によっては熟成させたほうが旨味が増すこともあるので、今後取り扱っていく商品としてはウニと甘エビなど鮮度によって商品価値が高まるものが中心になる」という。需要があれば法人向けの販売も進めたいとのことだが、小売り中心で考えると大型魚などの新幹線輸送は現実的ではなさそうだ。東北・上越新幹線の終着駅である東京で販売してほしいところだが、今回の実証実験ではフーディソンの店舗がある品川エキュートが販売場所に選ばれたそうだ。

JR東日本スタートアップの柴田氏は「(JR東日本管轄の新幹線と)線路で繋がっている北海道・函館や石川・金沢で採れた海産物も新幹線物流に載せることはできるが、JR北海道やJR西日本との協議が必要になる。まずは今回の実証実験の反応を見極めたい」とコメント。

羽田空港を拠点とした飛行機を使った海産物輸送が実現している近年では、首都圏の居酒屋やレストランで朝獲れの魚介類が食べられるのはもはや珍しいことでない。しかし、首都圏から離れた地域の朝獲れ海産物を直送するには、空港から近い漁港でないと物流網の構築が難しく、現在のところ宮崎などの一部地域からの空輸に限られている。

今回の実証実験で、三陸沿岸や日本海沿岸の漁港で朝に水揚げされた海産物を最寄りの新幹線駅まで運び、はやぶさ、やまびこ、ときで東京駅に運ぶという新幹線物流網が整備されると、空輸よりも多くの産地の新鮮な海産物を、より多くの消費者が楽しめるようになるはずだ。

荷物預かりサービスのecbo cloakがJR新宿駅に土日祝に限定で新拠点

荷物預かりサービス「ecbo cloak」(エクボクローク)を展開しているecboは4月24日、東日本旅客鉄道、ジェイアール東日本物流と共同で、JR新宿駅構内の手荷物預かり所にecbo cloakを土日祝限定で導入することを発表した。

事前予約はすでにスタートしており、実際に預け入れができるのは4月27日朝11時からとなる。預かり場所は、JR新宿駅の中央東口改札内。中央東口改札から埼京線と湘南新宿ラインが停車する3、4番線に向かうと見えてくるトイレの手前あたりに預かり場所が設置されている。

JR東日本によると、東京を訪れる訪日外国人の約60%が新宿に立ち寄るそうで、新宿駅の乗降客数は1日あたり347万人と世界で最も多いとのこと。その一方で、コインロッカーの総数は2280個、スーツケースの入る大型サイズは386個しかないそうだ。JR新宿駅では、これまでも手荷物預かり所を設置して対応していたが、高い需要に対して十分なサービスを提供できていなかったという。この問題を改善するため、土日祝に限定でecbo cloakの導入に踏み切ったそうだ。

ecbo cloakは、駅だけでなく駅周辺の遊休スペースを活用することで大量の荷物の受け入れを可能にする。事前にスマホで予約・決済できるうえ、専用のスマホアプリは多言語対応しているため訪日外国人も利用しやすいというメリットがある。ecboは、同サービスによりコインロッカー不足や大型に持つによる鉄道や街中の混雑の解消に取り組む。

JR新宿駅でのecbo cloakのサービス概要は以下のとおり。土日祝のみの営業のため、複数日にまたがる預け入れが不可となっている点に注意したい。

利用開始日:4月27日(予約受け付け中)
取扱時間:11時~21時
利用料金(税込):荷物サイズに関わらず一律800円/日・個
営業日:土日祝
当日予約:可能
複数日予約:不可
荷物の預かり可能個数:30個

荷物預かりサービス「ecbo cloak」がJR上野駅・不忍口改札付近へ導入、3月2日から

ecboは2月28日、JR東日本(東日本旅客鉄道)とジェイアール東日本物流の2社と提携し、JR上野駅の手荷物預かり所に「ecbo cloak」を導入したことを発表。3月2日から不忍口改札外の山下口付近で荷物預かりサービスを開始する。

上野は成田空港からのアクセスもいいこともあり、日本で2番目に観光目的の訪日外国人の利用が多いそうだ。ecbo cloakだけで見ても、上野は他エリアと比べて外国人の利用割合が約20%以上多いとのこと。ecboでは上野エリアなど需要の高いエリアはecbo cloakの導入店舗を重点的に増やしてきたが、これまで供給が追い付いていなかったとのこと。

またJR上野駅でも、駅構内に独自の手荷物預かり所を設置していたが、外国語での対応に苦慮するケースもあったという。こういった問題を解決するためにecbo cloakの導入に至った。この荷物預かりサービスは、多言語対応で事前予約により並ばずに預け入れできるほか、複数日預かり可能なのが特徴だ。

同社はこれまでもJR東日本と連携して、2017年11月よりJR東京駅構内に4カ所、2018年12月より池袋駅構内1カ所と品川駅構内2カ所にecbo cloakを導入。今後も、需要の高い駅を中心にサービスをさらに拡大し、手ぶら観光を支援するとのこと。