SlackやMS Teamsでの日常のやり取りから従業員コンディションを解析する「Well」開発のBoulderが1億円調達

SlackやMicrosoft Teamsを利用して従業員のコンディションを確認・解析できるエンプロイーサクセスプラットフォーム「Well」(ウェル)を開発・運営するBoulderは7月28日、プレシリーズAラウンドで総額1億円の資金調達を発表した。第三者割当増資による調達で、引受先はジェネシア・ベンチャーズとOne Capital。ちなみにOne Capitalは、元Salesforce Ventures代表の浅田氏が創設した新ファンドだ。

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資金調達にあわせて、これまで一部企業にクローズドで提供していたWellのベータ版をパブリックベータとして一般公開する。Wellは、SlackやMicrosoft Teamsでの応答速度や内容などの行動データを機械学習で解析し、従業員や組織のコンディションを客観的かつリアルタイムに可視化できるのが特徴のSaaS。普段のメッセージのやり取りだけではわからない部分については、より調査が必要な従業員だけに向けてアンケート(サーベイ)を実施することで正確性・信憑性を補う仕組みだ。

2015年12月に「労働安全衛生法」が改正され、従業員50人以上は同じ場所で働くオフィスや営業所、支店などを持つ企業は、ストレスチェックや面接指導が法律で義務づけられている。多くの企業は、ウェブページやSlackなどのコミニュケーションツール上で従業員のコンディションをチェックするためのアンケートを実施し、それを基に上司や人事、総務、産業医との面接というのが一般的だ。

この場合、アンケートの頻度を上げることで従業員のコンディション見極めの精度も上がるが、アンケート頻度が多いと総務・人事側も従業員側も大きな負担になる。アンケートに適当に回答する従業員も増えてしまい、逆に精度が下がってしまう恐れもある。

Wellはまさにこういった問題を解決してくれるサービス。Slackなどでやり取りされているメッセージとサーベイを通じて、従業員の業務負荷やコミュニケーション・人間関係、モチベーションなどを解析してくれる。解析結果を基に適切な解決策を提案してくれるレコメンド機能も備える。なお、サーベイ機能とレコメンド機能、Microsoft Teams対応はベータ版からの新機能だ。なお、部署ごとに使っているツールがSlackとMicrosoft Teamsに分かれている企業については、今後解析データの一元管理も可能になるとのこと。

料金については個別対応となるが、導入初期費用不要で従業員数300名まで一律、その後1アカウント追加ごとに数百円が加算される体系だ。実際にベータ版を導入している企業の多くは月々数万円のコストで運用できているとのこと。正式版のリリースが気になるところだが、同社によると12カ月~18カ月後のリリースを目指しているという。

電話、FAX、メールの受発注をクラウドに集約「CONNECT」運営のハイドアウトクラブが1.2億円調達

ハイドアウトクラブは11月22日、9⽉に1億2000万円の資⾦調達を実施したことを公表した。第三者割当増資による資金調達で、リード投資家のGMO VenturePartnersと既存株主のジェネシア・ベンチャーズが引受先となる。

同社はクラウド型の受発注システム「CONNECT」を開発・提供している2015年6月設立のスタートアップ。同社はこれまで、1日1杯に限って渋谷・新宿エリアを中心とする提携バーでウェルカムドリンクが無料で飲める会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」を開発・提供していたことから、飲食店と仕入先の受発注が依然としてアナログで、主な連絡手段がFAXや電話という問題を身近に聞いていたそうだ。

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飲食店の従業員は店舗のFAXやPCから発注書を送信しなければならず、仕入先は多数の飲食店からさまざまな発注書が送信されてくるため紛失のリスクがある。しかも、アルコール類、魚介類、肉類、野菜類、冷凍食品、備品などで発注先が異なり、発注書もさまざま。このような飲食店と仕入先のペインを解決するためにCONNECTの開発に着手したという。

CONNECTはウェブサービスなので、いつでもどこでも発注が可能だ。飲食店をはじめとする小売店の従業員は、閉店後も店舗に留まる必要がなく帰宅時に時分のスマホやPCを使って電車内や自宅で発注作業が行える。もちろん発注履歴は記録されているのですぐに参照可能だ。最大の特徴は、発注書の送信方法を仕入先の環境に応じて柔軟に変更できる点。CONNECTを導入済みの仕入先の場合は、リアルタイムに発注書を受け取れるほか、納品書や出荷伝票の自動作成が可能になる。FAXやメールでの発注しか受け付けていない仕入先に発注する場合は、CONNECTがテータを生成・送信してくれる。電話発注の場合のみ従来と同様の手間はかかるものの、もちろん通話した時間や発注内容は記録されているので重複発注などのミスは防げる。

CONNECTはすでに90万点の商品の受発注に対応しており、飲食店だけでなくアパレルやメガネ店などさまざまな小売店で利用可能とのこと。

同社は今回の資⾦調達により、AIによる商材の需要予測、⾳声解析による⾳声発注などの機能開発を進め、CONNECTのサービスを拡充していくという。具体的には、スマートスピーカーと連動した受発注などを検討しているそうだ。受注から出荷、請求までの業務を⼀気通貫で管理できるシステムを構築するのが同社の狙いだ。

ジェネシア・ベンチャーズがシード・アーリーに特化した80億円規模の2号ファンド組成へ

左からPortfolio Manager水谷航己氏、Relationship Manager吉田愛氏、General Partner鈴木隆宏氏、General Partner田島聡一氏、Principal河野優人氏、Associate一戸将未氏

創業者でジェネラル・パートナーの田島聡一氏率いるジェネシア・ベンチャーズは12月23日、2号ファンドとなる「Genesia Venture Fund 2 号投資事業有限責任組合」(以下2号ファンド)のファーストクローズを行い、総額約45億円規模で同ファンドを設立したことを発表した。

なお同ファンドは2019年9月末をメドにファイナルクローズを行う予定だ。最終的なファンド総額は80億円程度を予定している。

2号ファンドの主なLPは以下の通りだ。

  • みずほ銀行
  • みずほキャピタル
  • TFHD Open Innovation Program
  • 丸井グループ
  • ミクシィ
  • JA三井リース

主な投資対象事業領域は大きく分けて3つ。まずは「リアルとITの融合によるデジタル・トランスフォーメーション周辺領域」。この領域はアナログデータのデジタル化、ローカルデータのオープン化・クラウド化等を通じたデジタルデータの集約により、金融、通信、出版、医療、不動産、製造業、農業など既存産業の産業構造の再定義をもたらすXaaS、直接取引プラットフォームなどのデジタル・トランスフォーメーション周辺領域を指す。

次は「ニューエコノミー/デジタルメディア・コンテンツ周辺領域」。これにはC2C、シェアリングエコノミー、クラウドソーシング、非中央集権型プラットフォーム周辺領域、ビデオ、AR、VR、MRなど新たなメディアやコンテンツフォーマット周辺領域が含まれる。

最後は「フロンティアテック周辺領域」。これはAI、ロボット、ドローンや低軌道衛星など、新たな産業のソフトウェア領域において生み出される革新的なデジタル・イノベーション周辺領域だ。

ジェネシア・ベンチャーズの「ジェネシア(Genesia)」という単語は、創生という意味を持つ「Genesis」という単語に「Asia」を掛けあわせたもの。2016年8月の設立後、2017年8月に1号ファンドの組成を発表している。

1号ファンドからは、2018年11月末の段階で、原則リード投資家として日本・東南アジア地域のシード・アーリーステージのスタートアップ47社(日本35社、海外12社)に投資を実行。ジェネシア・ベンチャーズはTechCrunch Japanで紹介してきたスタートアップでいうとJob RainbowタイミーNon Brokersなどに投資してきた。

2号ファンドも1号ファンドと基本的なコンセプトは変えずに投資を実施していく方針だが、2号ファンドより東南アジアでの投資実績・トラックレコードを有する鈴木隆宏氏が新たにジェネラル・パートナーとして参画する。インドネシアのジャカルタに駐在事務所をすでに準備中であり、鈴木氏の参画により、東南アジア全域へ投資エリアを拡大、グローバル・スタートアップを目指す日本人起業家へのサポートもより充実させていく。