核融合技術の開発企業General Fusionの支援にShopifyとAmazonの創設者が参加

本日(米国時間1月14日)、簡単な発表があり、カナダの核融合技術開発企業General Fusion(ジェネラル・フュージョン)は、Shopify(ショピファイ)の創設者Tobias Lütke(トバイアス・ルーク)氏が立ち上げた投資会社が、同社の資本政策表に加わったと伝えた。

ルーク氏のThistledown Capital(シスルダウン・キャピタル)からの投資額は公表されていないが、この追加資金によってGeneral Fusionは、その資本政策表に、西側世界のeコマース業界における2つの最大手企業の創設者2人の名前を載せることとなった。

Amazon(アマゾン)の創設者であり最高責任者のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏は、10年近く前にGeneral Fusionに投資した最初の人物だ。それ以来、同社は安定して資金調達ができるようになった。2019年には、同社は1億ドル(約103億円)を獲得した。その資本コミットメントは、Crunchbaseによれば少なくとも総額1億9200万ドル(約20億円)という資金の一部となるが、実際にはもっと多いと思われる。

事実、General Fusionは、実証用の核融合炉建造に向けて、2020年は資金調達を続けていた(General Fusionリリース)。

General Fusionの方式は、1970年代に米国海軍研究試験所が提唱し開発された磁化標的核融合(MTF)という技術に基づいている。

同社の方式では、約100電子ボルト(可視光線の光子エネルギーのおよそ50倍)という適度な温度に温められたプラズマをフラックス・コンサーバー(磁場を閉じ込める容器)に磁気を使って封じ込める。そして、そのフラックス・コンサーバーとその中でプラズマを包んでいる磁場を高速で圧縮することで、プラズマは超高温になり、高速な核融合燃焼が始まり、核融合が引き起こされる。General Fusionの最高科学責任者で創設者のMichel Laberge(ミシェル・ラバージュ)氏は、2017年に同社の技術をそう解説していた。

同社が使用するのは、直径およそ3メートルの球体。そこに溶融鉛と液体リチウムを入射し、空洞を作る。この空洞に、磁気によって閉じ込められたプラズマ燃料を断続的に送り込む。すると、球体を取り巻くピストンが球体の中心に向けて圧力波を発生し、プラズマを圧縮して核融合の条件を整える。

核融合反応から逃げ出した中性子は液体金属に取り込まれ、それにより液体金属が発する熱で蒸気タービンを回して発電を行う。熱交換器と蒸気がタービンが動力を生み、蒸気はリサイクルされてピストンを動かす。

近年、General Fusionと北アメリカで最大のライバル企業Commonwealth Fusion Systems(コモンウェルス・フュージョン・システムズ)は、共に技術を大きく進展させ、小型核融合技術の商用化に近づいた。

過去においては、核融合技術は常にあと10年だというジョークが語られていたが、現在これらの企業は、大々的にとはいかないまでも、4年後には初の市場投入ができると見込んでいる。

それに向けてCommonwealth Fusion Systemsは、MRIマシン20台分の磁力を生み出す重さ10トンの磁石を製作している。「この磁石が稼働すれば、投入するよりも多くの電力を引き出せるようになります。核融合のキティーホークの瞬間を迎えるのです」とCommonwealthの最高責任者Bob Mumgaard(ボブ・マンガード)氏は昨年のインタビューで話していた。

その他にも、たとえば2025年を目標に定めるイギリスのTokamak Energy(トカマク・エナジー)など、この技術の商用化を目指すスタートアップ企業が競争を繰り広げている。

General Fusionと同じく、Commonwealthにも潤沢な資金を有する支援者がついている。Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏が支える持続可能な技術に特化した投資会社Breakthrough Energy Ventures(ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ)もそのひとつだ。2018年に公式に設立されたこの企業は、Commonwealthに2億ドル(約20億7000万円)の投資を約束している。

これらの企業が核融合技術の市場投入を目指す間、政府もその商用化が円滑に進むよう下地の整備を行っている。

昨年末、トランプ政権は新型コロナ経済救済および包括的予算充当のための法案(米国議会資料)に署名したが、これにはアメリカでの核融合エネルギーの開発を支援するための修正案も含まれていた。

その新しい修正条項が米エネルギー省に実施を指示したのは、核融合エネルギーの科学研究と開発計画、慣性核融合エネルギーおよびその他の新方式を対象とした将来の新しい核融合発電方法を探るエネルギー省公認の計画、国の研究所と核融合技術開発企業による官民の協力体制を作るINFUSEプログラムの再認可、そして、企業の研究開発のみならず本格規模のシステム建造を支援する段階的開発計画の策定だ。

Fusion Industry Association(米核融合工業会)が12月に出した声明によれば、これは同団体がアメリカに求めていた政策活動の、ひとつの礎石となる重要な計画だ。

5年間で3億2500万ドル(約340億円)という予算の放出は、実際にアメリカ政府は核融合業界の貢献に見合うだけの研究に力を入れることの表れだ。そこで作られる実証施設は、核融合技術の導入促進に向けた長い道のりを支えることになる。

2019年創設のThistledown Capitalは、産業界の脱炭素化を実現する技術への投資を目的として結成された。オタワに拠点を置く同社は、すでに大気中の二酸化炭素を回収する技術CarbonCure(カーボン・キュアー)を支援している。

「General Fusionには、世界でもっとも影響力のあるテクノロジー界のリーダーたちから資金協力を引き出してきた頼もしい経歴があります」とGeneral Fusionの最高財務責任者Greg Twinney(グレッグ・トゥイニー)氏は言う。「核融合は地球を救うテクノロジーです。私たちは、よりグリーンな未来を追究するThistledown Capitalのミッションに協力できて、大変に誇りに思います」

関連記事:90億円の新規投資でCommonwealth Fusionの2025年核融合実証炉稼働に道筋

画像クレジット:Oleg Kuzmin/TASS / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

Blue Originが軌道上生活に実現に向けたスタッフを募集中、商業目的で滞在する人向けの居住空間目指す

Blue Origin(ブルー・オリジン)の創業者でアマゾンのCEOであるJeff Bezoz(ジェフ・ベゾス)氏は、最終的には人々が生活したり仕事をしたりする場所として機能する軌道上の宇宙ステーションを作りたいという野心を持っている。そして現在、Blue Originは「軌道上の居住地の定式化」を中心とした取り組みをリードする人材を募集する求人広告を出しているSpace News記事)。

この求人広告では「何百万人もの人々が宇宙で生活し、働く」という最終的なビジョンの策定を担当する人材を募集しているが、近い将来の目標は既存の国際宇宙ステーション(ISS)をヒントにしながらも、「価値創造的な経済活動」を促進することによって、既存の国際的な共有研究構造を「超えた」ものにすることのようだ。

以下に募集リストからの重要な点を抜粋した。

Blue Originの軌道上居住空間ラインの設計リーダーとして、技術コンセプト、製品戦略、ビジネスケース、顧客関係、市場形成のアウトリーチ、産業パートナーシップ、実装アプローチ、サプライチェーンの開発をリードしていただきます。事業開発の専門家と協力して、NASAやほかの政府機関、企業のニーズを詳細に理解し、製品戦略の反復的な開発を導きます。2020年代に実行可能なLEOデスティネーションシステム(観光資源の有効活用を促進するための手法)を確立するために、外部および内部のスポンサー資金を獲得する責任があります。あなたは、人類の宇宙飛行の歴史に直接影響を与えることになります。

Blue Originはまた、彼らが作っているのはISSのようなステーションとは「根本的に異なる」だと説明している。ISSは「小さいうえ、プロの訓練を受けた乗組員」のために設計されているが、同社が考えているものは、専門家でないユーザーにとっても、居住性が高く実用的なものにしたいようだ。つまり、宇宙飛行士になるためではなく、主に商業目的で滞在する人向けの居住空間を目指す。

ベゾス氏が昨年5月のイベントで語った理想的なコンセプトビジョンには、現実とはまだかなりの距離があると思われる。しかし、同氏がどれだけ実現させたいのかによってはBlue Originの商業宇宙居住区を軌道上に置くことができるようになるかもしれない。

画像クレジット:Blue Origin

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(翻訳:TechCrunch Japan)

米下院司法委員会がAmazonのベゾス氏に不当競争問題について証言を要求

Amazonに難題が持ち上がった。米下院の重要な委員会がAmazonに不当競争行為があったのではないかと疑っている。

先週、5月1日に下院司法委員会はAmazon創業者でCEOのJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏に超党派で書簡を送った。これはベゾス氏に対して、自身の以前の発言とWall Street Journal(WSJ)の最近の記事との矛盾について説明を求めるものだ。この書簡はAmazonが自身のデータベースからサードパーティーのビジネスやプロダクトに関する情報を収集し、Amazonブランドの競合プロダクトを開発するという慣行を特に問題にしている。

WSJの記事は「Amazonは自社ブランドのプロダクトを製造、販売する際、自身のプラットフォームでサードパーティのマーチャントから得た競争上の秘密と考えられるような情報を使用していないと議会その他に対して主張してきた」と述べている。

しかしWSJは多数の元社員から得た文書やインタビューによって、Amazonがこうした情報を利用してきたことを発見した。同社はビジネス上で最も有望な製品のジャンル、価格、機能などを決定するにあたって競合プロダクトの情報を参考にしていたと指摘している。

下院司法委員会は書簡で、過去のビジネス慣行に対する委員会の質問に対してベゾス氏は「誤解を招き、あるいは犯罪を構成するような虚偽ないし宣誓違反の証言をした」疑いがあるとしている。

さらに委員会は書簡で「当委員会の本来的活動の一環であるデジタル市場における競争の実態を調査、認識する作業にあたって、Amazonのデジタル市場での競争慣行についての質問に同社が正しく回答することは不可欠だ」と述べ、必要であればCEOに対して召喚状を発行するとしている。

新型コロナウイルス危機は米国のハイテク企業に対する規制強化の動きにある程度ブレーキをかけた。しかし今回の司法委員会の書簡は、我々の生活が大混乱に陥っている中でも、多くの議員が依然としてハイテク企業の責任に強い関心を抱いていることを明らかにした。

以下のScribdで書簡の全文を読むことができる。

画像クレジット:David Ryder / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ベゾス氏がアマゾン全従業員の新型コロナ検査の詳細を株主へのレターで説明

世界が新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに苦しんでいる中、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏は4月16日、毎年恒例のAmazon(アマゾン)株主へのレターを発表した。同社はほぼあらゆる面で新型コロナの影響を受けており、当然のことながらオープンレターの中身は、現在も続いている新型コロナウイルス危機への対応が中心となっている。

その中でも特に細かく言及しているのが、先週発表されたAmazonが独自に設置するテストラボについてだ。ベゾス氏はレターの中で、同社が「まったく症状のない人を含め、全社員の定期的なテスト」を検討していると記している。多くの患者は症状がないため、定期的なテストは感染拡大を止めるのに理想のものだ、とレターにはある。

そうしたテストが義務となるのかどうかは明らかではない。また、症状のない従業員のテスト義務化が法的にどうなのかもはっきりしない。米雇用機会均等委員会が最近公表した新型コロナ流行に関するADAガイドラインには、「パンデミックの間、雇用主は従業員が新型コロナの症状を示していたらテストを尋ねてもよい。症状には発熱、悪寒、咳、息切れ、喉の痛みなどが含まれる」とある。

もちろん、テスト提供に限りがあることは議論すべき問題だ。しかしAmazonが準備しているのは、社内でのウイルス拡散、また社外にウイルスを広げるのを阻止するための従業員テスト専用のラボだ。結局のところ、自宅に閉じこもっている多くの米国人にとってAmazonはなくてはならない小売となっている。少なくとも同社の74の倉庫・配送センターの従業員でウイルス陽性が確認された。このウイルスはボール紙の表面で24時間、プラスティック表面だと数日間生きることができる。また、箱などの表面を介してうつることもあり得る。

「テスト対応能力を上げるべく取り組んでいる」とベゾス氏は書いている。「研究科学者からスペシャリストを引っ張ってくるプログラムマネジャー、ソフトウェアエンジニアに至るまで、Amazonチームは通常の業務を離れてテストラボの設置に専念している。初のラボを設置するために必要な装置の組み立てを開始し、フロントラインの従業員へのテストを間もなく少数で始めたい。どれくらい作業が進められるか確かではないが、試す価値はあると考えている。何か明らかになれば情報を共有する」。

同社はまた、従業員がウイルスを保有していないかを判断するため、世界中の同社の建物で体温チェックを導入した。その他の対策としては、定期的な消毒、マスクの支給、社会的距離維持の義務化がある(こうした手段をとればウイルスに感染する可能性は低いとするWHOのポリシーのアップデートをTechCrunchに案内してきた)。

今週初め、同社の危機対応を声高に批判した従業員2人が解雇されたことが明らかになった。2020年3月に解雇されたスタテン島の従業員を含めると、解雇者は計3人になる。同社は、解雇と社会からの批判の関連性を否定し「内部規則を繰り返し破ったためにこれらの従業員を解雇した」と主張した。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Mizoguchi

ジェフ・ベゾス氏がホワイトハウスと新型コロナ対策で密に連絡

米国時間3月16日のホワイトハウスのブリーフィングで、政権の新型コロナウイルス対策タスクフォースと、CDC(米疾病予防管理センター)からの公衆衛生に関する新しい勧告について、詳細が語られた。その中でトランプ大統領は、ホワイトハウスがAmazon(アマゾン)のCEOJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏とCOVID-19の流行に関して「毎日」のように連絡をとっているという報道について、報道陣から真偽をたずねられた。

トランプ氏の答えは、それを明確に確認するものではなかったものの、アマゾンの創立者兼最高経営責任者とホワイトハウスが、状況の変化に応じて一定程度協力していることを示すもののように思われた。明確な答えを求めたTechCrunchに対して、アマゾンの広報担当者は、新型コロナウイルスの流行に関して「ジェフ・ベゾスはホワイトハウスと連絡を取り合っています」と明かしている。

「まあ、それは本当だと聞いているよ」と、トランプ氏もブリーフィング中に語っている。「ホントかどうかはわからないが、我々のスタッフがアマゾン、あるいはベゾス氏本人と関わっていると、私は理解しているよ。素晴らしいことじゃないか。我々は多くの人達から多大なサポートを受けているんだ。彼もその1人だと思っているよ」

先週Fox Businessは、ウイルスを封じ込める対策にについて話し合うため、ホワイトハウスは大手IT企業と会合を持つことになるだろうと報じた。その対象としては、Facebook(フェイスッブック)、Google(グーグル)、アマゾン、Twitter(ツイッター)、Apple(アップル)、Microsoft(マイクソフト)が挙げられていた。

ベゾス氏が、どの程度ホワイトハウスと協力し、コロナウイルスのパンデミックに対処するのかは、まだよくわからない。とはいえ、アマゾンとしても世界的なウイルスの流行によって大きな影響を受けていることは確かだ。その証拠にアマゾンは、米国内で10万人の雇用を追加して、倉庫と配送に配備することを模索している。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Blue OriginのNew Shepardによる宇宙旅行代金は数十万ドルになる見込み

Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が立ち上げたロケット製造・打ち上げサービスのBlue Originは2019年に初の有人ロケット打ち上げを明言していたが、2020年へと後ろ倒しにせざるを得ないようだ。

サンフランシスコで開催中のTechCrunch Disruptのステージで、Blue OriginのCEOであるBob Smith(ボブ・スミス)氏は有人フライトの2019年の打ち上げウィンドウは狭まってきていると話した。「我々は日付を優先させようとはしていない」とも語った。

しかし商業打ち上げは近づいてきていて宇宙船New Shepardによる宇宙フライトのチケットは「数十億ドルになる」ようだ。今年末までに有人打ち上げを計画していた企業はBlue Originだけではない。6月にNASAはBoeing(ボーイング)とSpaceX(スペースエックス)がそれぞれ9月と11月に有人飛行を行うスケジュールを立てた。8月時点の発表文でも、SpaceXは今年後半に国際宇宙ステーションに人を送り込む計画だと述べていた。

Blue Originも計画に沿った打ち上げに向けて作業をまだ進めていて、目下の計画停滞は世界一の金持ちが支援する企業にとっては大した問題ではないだろう。Blue OriginのCEO(そして出資者でもある)にとって、同社の究極的な目標は人間が住むもうひとつの惑星を確保することだ。これは達成するのに数十年かかることのようにも思える。スミス氏やその他の人も、宇宙産業の商業面での潜在能力を確信している。

「打ち上げの回数は増えるだろうし、これまでも増加してきた」とスミス氏は語る。Blue Originの創業者によると、宇宙産業における打ち上げ回数は年3%の割合で増えてきていて、一部のマーケットアナリストはこの数字が50〜80%になる可能性がある、とみている。そしてこうした数字には、ロケットの軌道投入を考えているFacebookやAlphabet、Amazonのような企業のものは含まれない。

「打ち上げ回数は今後10年間でかなりのものになるだろう」とスミス氏は話す。何十年もの間、政府が主な顧客だった宇宙産業が変わりつつあり、「基本的に、より商業的なモデルに移行している」と同

氏は指摘した。

画像クレジット:Flickr under a license.

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(翻訳:Mizoguchi)

ベゾス、Blue Originの月植民計画と着陸船を公開

今日(米国時間5/9)、ホワイトハウスからほど近いワシントンの会場で、Amazonのファウンダー、ジェフ・ベゾスが2024年までに有人月旅行を実現する計画の詳細を発表した。聴衆にはプレス、企業と政府の幹部に加えて大勢の中学生も招かれていた。同時にBlue Moonと呼ばれる月着陸船も公開された。

ベゾスによれば月は資源の宝庫だと言う。ベゾスが私費を投じて運営している宇宙企業、Blue Originは、今年中にNew Shepardロケットで有人宇宙旅行を行う予定だ。

イベントのステージは最初に月を歩いた人間、ニール・アームストロング宇宙飛行士の「人類にとって大きな一歩」という有名な言葉をモチーフにしていた。ここでベゾスは「人口が1兆人に達したとき人類はどこに生存のための資源を求めるべきか?」という非常に深刻な問題に答えようとした(こちらはベゾスの過去のビジョン関係の発言)。

宇宙というユートピアに進出する上で最大のハードルは、巨大通販会社のファウンダーとして熟知している問題、すなわちロジスティクスとインフラのコストを実現可能なレベルに削減する方法だ。

ベゾスは「われわれの世代の役目は宇宙旅行のインフラの構築だ。われわれは宇宙への通路を開かねばならない」と述べた。

アメリカ政府機関と特にNASAの研究によれば宇宙への道は月を経由するという。ベゾスが今日のイベントで月着陸船を披露した)理由の一つはそこにある。

アメリカのペンス副大統領はこの3月、国家宇宙委員会(National Space Council)の総会でNASAに対し、「2024年までにアメリカの有人宇宙船を月周回軌道に乗せ、月の南極に着陸させるためにあらゆる手段を活用する」よう指示した。

南極が目的地として選ばれた理由は氷だ。NASAのジム・ブライデンスタイン長官は「われわれの科学者の調査によれば、4.5億トンの氷が月の南極に存在する」と述べている。

月の自転軸の傾きにより南極には太陽の光が射さない極めて低温の場所がある。南極のクレーター中に摂氏マイナス160度という低温により蒸発を免れた大量の氷が埋まっているとNASAの科学者は推定している。氷はロケットの推進剤に利用することができる。

マイク・ペンス副大統領は3月の国家宇宙委員会総会で大統領のコミットメントが裏付けだとしてこう述べた。

今世紀、われわれは新たな野心を抱いて月に戻る。単にそこに行くだけではなく、永久に日照のない南極のクレーターの底の氷から原子力によって水をつくり、酸素や宇宙ロケットの推進剤を得る。そうした補給があればわれわれの宇宙船は数年ではなく数ヶ月で火星に到達できるだろう。

Y Combinatorが支援するスタートアップ、Momentusは水を推進剤とするロケットを建造中だ。このロケットは原子炉から得られた電力で水を加熱し、水プラズマによって推進力を得る。

しかしこれまでNASAの有人宇宙プロジェクトは予算の削減などにより遅延を重ねてきた。月に戻るというのは非常に高価な事業となる。NASAもアメリカ政府も推定金額がどれほどになるか明らかにしていない。(略)

「アメリカは月に戻る」というのは2017年にトランプ大統領が署名した宇宙政策指令1号(Space Policy Directive 1)に基づくものだが、NASA のプランの具体的内容は不明だ。

これがBlue Originが重要な役割を担って登場した背景だ。

今日披露されたBlue Moon月着陸船に加えて、Blue Originは2種類の宇宙ロケットを開発している。New Shepardロケットは低軌道を短時間飛行して宇宙飛行に関するテクノロジーやノウハウの収集を行うことを目的としている。ペイロードを地球周回軌道に打ち上げるのはNew Glennロケットの任務だ。 2021に最初の打ち上げが予定されており、45トンのペイロードを地球周回低軌道に投入できる。ロケットはどちらも垂直着陸によって回収され、複数回利用される。

先週、Blue OriginのNew Shepardは低軌道を弾道飛行して各種の実験を行うことに成功している。これは11回目のミッショだった。New Shepardは成層圏と宇宙の境界である高度100キロメートルまで上昇してカプセルを切り離した後、逆噴射と垂直着陸によって回収された。カプセルは慣性で上昇を続け、こちらはパラシュートによって無事回収された。

ベゾスはこのカプセルを一般人向け宇宙観光旅行にも利用する計画で、昨年のReutersの記事によれば、チケットは20万ドルから30万ドル程度だという。

一方、イーロン・マスクのSpaceXはこれとは異なるアプローチを採用してきた。SpaceXは大型ロケットを開発し、さらに超大型ロケットの開発に進んでいる。同社として「最新、最大のロケット、Falcon Heavyは63.8トンのペイロードを地球周回軌道に投入できるSpaceXではさらに惑星間飛行を視野に入れた次世代宇宙船、Starshipを開発中だ。こちらは100トンのペイロードを低軌道に乗せることができるという。Starshipの最初の打ち上げは2020年に予定されている。.

これ以外にも活動中の民間宇宙企業は数多い。スタートアップとしてはリチャード・ブランソンのVirgin Galacticを始め、Rocket Lab、Vectorなどが打ち上げプラットフォームの開発に取り組んでいる。スタートアップは現在の衛星打ち上げ事業の主流となっているロシアのソユーズ、アメリカのロッキード・マーティンとボーイングの合弁企業ULA、EUのアリアンスペースといった巨大企業のロケットと競争しなければならない。またロケット以外にも衛星、着陸船、制御システムなどの重要部分を開発、製造するスタートアップも多数現れている。

ベゾスはイベントで「月に戻るときが来た。単に旅行するのではなく、われわれはそこに留まるのだ」と宣言した。

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滑川海彦@Facebook

ゲイツやベゾスが率いるファンドが世界の地熱発電プロジェクト開発に投資

Breakthrough Energy Venturesは、ジェフ・ベゾス氏、ビル・ゲイツ氏、ジャック・マー氏らの億万長者が出資した投資会社で、社会を脱炭素化するテクノロジーを開発する企業に投資している。このほど同社は、地熱プロジェクト開発会社のBaseload Capitalに1250万ドル(約14億円)を投資した。

Baseload Capitalは、スウェーデンの親会社 Climeonが開発した技術を利用した地熱発電所を開発するための資金を提供するプロジェクト投資会社だ。

Googleの親会社であるAlphabet(アルファベット)からのスピンオフで最近の調達ラウンドで1600万ドル(約18億円)を集めたDandelion Energyと同じく、Climeonは地熱エネルギーを利用するための標準化された機械を作っている。しかしDandelionが消費者をターゲットにホームヒーティングを提供しているのに対して、Climeonは地熱エネルギーを電気に変換する。

同社のモジュールはおよそ2メートル立方の機械で、150キロワットの電力を供給する能力を持つ。これはヨーロッパの約250世帯を賄うのに十分だと同社の広報担当者は言っていた。

2011年創立のClimeonは、自社技術を利用した発電所を作るための特別目的事業体としておよそ1年前にBaseload Capitalを設立した。Baseloadは、出資先企業から株式を譲り受けることと引き換えに負債金融を行う。

Breakthrough Energy Ventures はBaseload Capitalへの投資を通じて、全世界の小規模発電所の開発資金提供を支援している(すでにBaseloadは、日本で開発中のプロジェクトに向けに特別目的事業体を結成した)。

ClimeonとBaseload Capitalは3つの主要産業に焦点を当てている。地熱、流通、および重工業だ。「われわれは海運業者に機械を販売してエンジンの廃熱を電気に変えているほか、おなじく大量の廃熱を出す鉄鋼業、さらには地熱発電所を開発、運用する企業にも販売している」とClimeonの広報担当者がメールに書いた。「対象は新たに設立されたSPVでも、既存のエネルギー会社でもよい。たとえば米国では、既存の地熱発電所でわれわれのモジュールが使用されている」

同社の説明によると、そのモジュラーユニットを使うと施設のスケールアップや廃止が容易になるという。モジュールの価格は35万ユーロ(約4450万円)で、ほかにClimeonの発電所管理ソフトウェア利用料としてモジュール毎に年間5000ユーロ(約64万円)を支払う。

現在約8800万ドル(約98億5000万円)の受注残高があると同社は言っている。

Baseload Capitalへの投資は、Breakthrough Energyにとって地熱業界への2番目の取組みとなる。昨年同社はFervo Energyに投資し、既存技術を利用して1キロワット時5~7セントのコストで生成する地熱発電所の開発促進を支援した。

「低音地熱電力のようなベースロード資源はエネルギー情勢を変えるものだと確信している。Baseload Capitalは、Climeonの革新的技術とともに、温室効果ガスのない電気を大規模かつ経済的、効率的に生み出す潜在能力をもっている」とBreakthrough Energy VenturesのCarmichael Robertsが声明で述べた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Amazon第2本社建設都市、年内発表へ

Amazon第2本社の建設について、このところ情報がなかった。今年初めにこのオンライン小売大企業は第2本社建設候補地を20都市に絞り込んだが、それ以降、一切情報はなかった。しかし、最終的な決定が年末までに下されるようだ。

今週ワシントンで開かれたエコノミック・クラブで行なったスピーチで、CEOのジェフ・ベゾスが年内に最終決定されると明言した。しかし、どのような結果になるのか、一切予断を与えなかった。

Amazonが5万人の雇用、50億ドルもの投資を行うとしたことから、北米中の都市が名乗りをあげた。こうした動きにより、Amazonが本社を置くシアトルはAmazonを綿密な調査下に置いた。そして7月、Amazonは低所得者向け住宅とホームレス用のシェルターの費用を賄うための企業を狙った税案を葬った。

Amazonが最終的にどこに拠点を構えるかを検討するとき、税というのは間違いなく決定を左右する大きな要素となる。

ベゾスはこのところ国レベルで批判の的となっている。先週、上院議員バーニー・サンダースが“企業福祉”を抑制するためにStop Bad Employers by Zeroing Out Subsidies(ベゾス)法案を提出した。

法案提出に伴い、サンダースの事務所は「Amazonの創業者ジェフ・ベゾスは地球上で最も裕福な男だ。今年の初めから、彼の富は毎日2億6000万ドルずつ増えている」と声明で述べている。「一方で、何千というAmazonで働く労働者が賃金があまりにも低く、フードスタンプに頼っている」。

また、理由は違えどもトランプ大統領もベゾスに対して批判的だ。ベゾスはワシントンポスト紙のオーナーであり、同紙は明確に政権を批判する記事を展開してきた。

ベゾスはワシントンで開かれたエコノミック・クラブでのスピーチでトランプについても触れ、「メディアを悪とするのは本当に危険なことだ。メディアを犯罪者呼ばわりし、メディアは人々の敵だと言うのも危険だ」と述べた。

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(翻訳:Mizoguchi)

ジェフ・ベゾス、幼児教育とホームレス支援で20億ドルの基金設立

Amazon創業者(そして世界一の富豪)であるジェフ・ベゾスは今朝、非営利のプレスクール施設網構築のため、そしてホームレス支援団体に資金を寄付するための基金を夫妻で設立するとツイートした。

ベゾスは「Day 1 Families Fundは、緊急に助けを必要としている若い家族を支援するためにシェルターを用意したり食糧を提供したりと、実際に思いやりを持って動いている団体や市民グループに毎年リーダーシップ賞を授与する」と述べている。

それとは別にDay 1 Academies Fundがあり、低所得者が多く住むエリアでモンテッソーリ教育に基づく無料の幼児教育施設網を展開する。

ベゾスは、この教育施設は“Amazon と同じ理念”で運営するとしている。その理念とは、ベゾスにとっては顧客中心を意味する。

この基金の名称 “Day 1”は、ベゾスの哲学“初心を忘れない”からきている。

経済的に恵まれていない子どもたちのための無料の教育施設網を築き、ホームレスのニーズに応える組織を支援するために資金を拠出するのは紛れもなく善行だ。しかし、こうした個の取り組みが、ホームレスや教育機会の欠如という全体にかかる問題を改善するのに効果的かは定かではない。

おそらくベゾスは、Amazonの従業員だったVickie Shannon Allenが職場での事故により職を失い、ホームレスになったことに関するレポートを目にしたことで、国に広がるホームレスの苦境に向き合う気持ちになったのだろう。

ホームレスのためのシェルターや低所得者向けの住宅の費用を賄うことを目的とした新税の導入をシアトル市が検討したが、Amazonがこの税の標的になった後に、ベゾスがこうしたホームレス問題に取り組むのはなんとも深遠だ。

法案を廃止にするためのAmazonの取り組みについてはFortuneが詳しく報じている。

Amazonは、原案では従業員1人あたり500ドルを課すとしていた税に反対した。不満の意を表明するために新タワーの建設を中止し、ダウンタウンにある立派なビルに確保していた72万2000平方フィートもの賃貸を又貸しするかもしれない、とほのめかした。そして市議会が275ドルに減額した税を承認したのち、Amazonはタワーの建設を再開した。しかし、法案に反対したグループNo Tax on JobsにはStarbucksや他の地元企業も資金を提供し、グループは税廃止の投票のために署名活動にかかった費用30万ドルを調達した。採決後の声明で、Amazonの副社長Drew Herdenerは「雇用創出への税を廃止するという今日の市議会の採決結果は、地域の経済発展のために正しい判断だった」と述べた。

今回の基金設立で、ベゾスは社会貢献のための基金活動をしている途方もなく金持ちの人々(参照:チャン・ザッカーバーグ、ゲイツ基金、そしてウォーレン・バフェット)の長いリストに加わった。

億万長者が社会への貢献を義務ではなく贈り物として行うのは、構造的問題の壁を超えた博愛精神の長い歴史の一部である。

新基金に関するベゾスのツイートは以下の通りだ。

イメージクレジット: Drew Angerer

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(翻訳:Mizoguchi)

トランプ大統領、郵政公社にアマゾン配送料の倍増を要求

ワシントンポスト紙の新たな報道によると、トランプ大統領は郵政公社(USPS)のトップMegan Brennanに、アマゾンや他の企業の商品の配送料を上げるよう、個人的に圧力を加えた。

ネタ元は匿名だが、これまでのところ郵政公社の総裁はトランプ大統領の圧力に抵抗しているという。もし値上げが実施されると、オンライン小売やその他の企業にとって何十億ドルもの負担増になる。

ご存知の通り、いつからかアマゾンはトランプ大統領の攻撃の的となっている。3月下旬、大統領は自身のツイッターに「郵政公社に“何十億ドル”も負担させているのは“詐欺”だ」「もし郵便局が配送料を上げれば、アマゾンの送料負担は26億ドルに増える。この郵政詐欺をやめさせなければならない。アマゾンは本当のコストを(税金も)今すぐ払え!」と書き込んだ。

Brennanは、アマゾンのような企業との契約は郵政事業にとっていいものではない、という考えに反対の姿勢をとっているとされる。トランプ大統領とのミーティングで、アマゾンとの契約のメリットについて証拠を示し、また複数年にわたる契約を反故にするのは簡単ではないことも指摘している。

トランプのアマゾン攻撃は明らかに個人的な要素を含んでいる。何回にもわたって、少なくとも3月下旬に大統領がアマゾンとそのオーナーであるジェフ・ベゾスをツイッターで攻撃したことについての要約はこちらにうまくまとめられている。大統領のアマゾン批判は実際には2015年ごろに始まっている。ベゾスはワシントンポスト紙のオーナーでもあり、トランプは同紙の報道を事あるごとに“フェイクニュース”と声を大にして批判している。

郵政公社がアマゾンとの契約の料金体系について具体的に明らかにしていないのも、この問題を不透明なものにしている。公表していないのは、競合他社に“不当なアドバンテージ”を与える恐れがあるからだ。しかしながら、郵政事業が2017年に27億円の損失を出したという事実はあるものの、郵政公社はアマゾンとの契約で収益をあげているとも主張している。

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(翻訳:Mizoguchi)