ニューヨークでジオフェンス令状とキーワード検索令状を禁止する法案の支持が高まる

ニューヨークで、州の法執行機関が論争の的になっている令状を使って、テクノロジー企業から住民の個人的なユーザーデータを入手することを禁止する法案が、最初に提出されてから2年後、再びチャンスを得ることになった。

この「Reverse Location Search Prohibition Act(逆位置検索禁止法案)」は2021年、ニューヨーク州議会と上院に民主党議員のグループによって再提出された。2年前に通過しなかったこの法案は、先日まず委員会に付託された。これは議場での投票が検討される前の最初の大きなハードルとなる。

この法案が可決されれば、米国の州法としては初めて、ジオフェンス令状やキーワード検索令状を禁ずることになる。これらの令状は、特定の時点に犯罪現場の近くにいたユーザーの位置情報データや、特定のキーワードを検索したユーザーの情報を、法執行機関がGoogle(グーグル)などのテクノロジー企業に提出するよう求めることができるというものだ。

ジオフェンス令状は「逆位置」令状とも呼ばれるもので、法執行機関が容疑者の特定に役立てるために、ユーザーの携帯電話やアプリから何十億もの位置情報を収集・保存しているGoogleに対し、犯罪が起きた際に一定の地理的範囲内にいた携帯電話の記録を引き渡すように、裁判官に令状を求めることができる。

ジオフェンス令状は、Google特有の問題である。法執行機関は、Googleの位置情報データベースが利用できることを知っており、Googleはそのデータベースを広告事業の推進に利用し、2021年は1500億ドル(約17兆円)近い収益を上げている。

Googleの検索についても同様だ。法執行機関は裁判官に令状を請求し、特定の時間帯に特定のキーワードを検索した個人の情報を、Googleに提供するよう求めることができる。あまり知られていないが、キーワード検索令状は広く使われており、Googleに限らず、Microsoft(マイクロソフト)やYahoo(ヤフー)からも、この種の法的手続きを用いてユーザーデータが収集されている

このような令状の使用は、電子フロンティア財団のようなインターネット人権団体から「漁猟」と呼ばれており、同財団はアメリカ自由人権協会(ACLU)とともにニューヨークの法案を支持している。この種の令状は、犯罪とは無関係の近くにいる無実の人々のデータも必ず収集するため、憲法違反と人権侵害であるとの批判がある。

TechCrunchは2021年、ミネアポリス警察がジオフェンス令状を使って、2020年に起きた警察官によるGeorge Floyd(ジョージ・フロイド)氏の殺害事件をきっかけに暴力行為に及んだとされる抗議者を特定したと報じた。その際、NBC News(NBCニュース)やThe Guardian(ガーディアン紙)の報道では、まったく無実の人々が、犯罪現場に近かったというだけで、暗黙のうちに犯罪の嫌疑をかけられていたことを明らかにした。

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Googleが公表しているデータによると、ジオフェンス令状は、同社が受け取る米国内の法的要求の約4分の1を占めているという。位置情報や検索語を現実の容疑者に結びつける情報源として、Googleが法執行機関の間で広く知られるようになってから、同社は2020年に1万1500件以上のジオフェンス令状を処理したが、この慣行がまだ比較的初期の段階にあった2018年には1000件に満たなかった。

ニューヨーク州は、ジオフェンス令状全体の約2~3%を占めており、その数は数百件にのぼる。

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ブルックリン中心部を代表するニューヨーク州の上院議員で、上院の法案を後援したZellnor Myrie(ゼルナー・マイリー)氏は、TechCrunchに次のように語っている。「私が代表を務めるブルックリンのような密集した都市コミュニティでは、単に犯罪現場の近くに住んでいたり歩いていたりするだけの何百人、何千人もの無実の人々が、個人の位置情報を引き渡すジオフェンス令状に巻き込まれる可能性があります。また、キーワード検索令状では、特定の言葉、名前、場所を検索したユーザーが特定されます。私たちの法案は、このような令状を禁止し、ニューヨーカーのプライバシーを守るものです」。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米国政府がグーグルに要求した令状の4分の1がジオフェンスに関するもの

Google(グーグル)が初めて、これまでに当局から受け取ったジオフェンス令状の数を公表し、以前から議論が多いこの令状の発行頻度などがわかるようになった。

その数字は米国時間8月19日に公表され、Googleが2018年以降の各四半期に数千件のジオフェンス令状を受け取ったことを明かしている。それは、Googleが受け取る米国の令状の約1/4を占めることもある。そのデータによると、ジオフェンス令状の大半は地方や州の当局が入手しており、国の法執行機関はこのテクノロジー大手が従ったすべてのジオフェンス令状のわずか4%を占めるにすぎない。

データによると、Googleは2018年に982件のジオフェンス令状、2019年には8396件、2020年には1万1554件を受け取った。しかしこれらの数字は受け取った令状の総数をざっと示すだけで、個々の要求の詳細はなく、またあまりにも広範な要求を断った例についても記述がない。Googleの広報担当は、この件についてコメントしなかった。

数十にも及ぶ人権団体がこの数字の公表をロビー活動によって求め、その活動のまとめ役だったSurveillance Technology Oversight Project(STOP)の事務局長Albert Fox Cahn(アルバート・フォックス・カーン)氏は、Googleが数字を公表したことを称賛している。

カーン氏は「ジオフェンス令状はその適用範囲の広さが憲法違反に相当し、侵害的であり、私たちとしてはそれが完全に違法と見なされる日まで活動を続けたい」と述べている。

ジオフェンス令状は、犯罪が行われたときに現場近くにいて関心を持っていた人びとを探そうとするので「リバースロケーション」令状(reverse-location warrants)とも呼ばれる。逮捕状などと同じく警察は、裁判所にGoogleにリバースロケーショを命じることを求める。Googleにはその広告事業の運用のために膨大な量の位置データがあり、令状に従って、ある地点から半径数百フィート以内にいた人の情報を警察に渡して、容疑者候補の特定を助ける。

Googleは長いアダ、これらの数字の公開を避けてきた。その理由の一端は、ジオフェンス令状がGoogleだけの案件であるためだ。法執行機関は以前からGoogleのSensorvaultと呼ばれるデータベースにユーザーの大量の位置データがあることを知っており、The The New York Timesが2019年にそのことを初めて明かしている

Sensorvaultには世界中の少なくとも数億台のデバイスの詳細な位置データがあると言われており、それらは、ユーザーがAndroidデバイスを使っていて位置データを有効にしている場合に収集される。あるいはGoogleマップやGoogleフォトといったGoogleのサービスを使っていてもよい。Google検索の結果ページでもOKだ。2018年のAssociated Press(AP)の報道では、ユーザーが自分の位置履歴を「停止」にしていても、Googleはそのユーザーの位置を取得できる。

しかし批評家たちは、当局はGoogleに、同じ地理的領域内にいる者全員のデータを渡すよう強要するから、ジオフェンス令状は憲法違反と主張してきた。

しかも、その令状によって完全に罪のない人でも罠にかけてしまうからだ。

TechCrunchは2021年初めに、ミネアポリス警察がジオフェンス令状を使って、2020年警察がGeorge Floyd(ジョージ・フロイド)氏を殺害したときに騒動を起こした人物を特定しようとしたと報じた。現場で撮影し抗議活動を記録しようとしていた1人が、暴力に近い場所にいたとして警察に位置データを要求された。NBC Newsの報道によると、フロリダ州ゲインズビルの住民が、その情報を住居侵入事件を捜査していた警察にGoogleによって渡されていたが、その時間にはフィットネスをしていたことがスマホに残っていたため無罪を証明できた。

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裁判所はまだ、ジオフェンス令状の合法性について広く審議していないが、一部の州はそれを禁ずる州法を準備している。ニューヨーク州の州議が2020年、ジオフェンス令状を禁止する法案を提出した。それは、ミネアポリスであったように、警察が抗議活動への参加者をターゲットにするためにそれを利用するかもしれないという危惧からだ。

そのときの法案作成を手伝ったカーン氏は、今回公表されたデータにより「この技術を違法化しようとする議員たちの動きが活発になるだろう」と述べている。

「はっきりさせておきたい。ジオフェンス令状の数はゼロ件であるべきなのだ」と彼は言っている。

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画像クレジット:TechCrunch/file photo

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)