シンガポールを拠点とするコワーキングスペースのデスク予約アプリ「Deskimo」がジャカルタに進出

コワーキングスペースを見つけて分単位で支払うオンデマンドアプリで、シンガポールを拠点とするDeskimoが現地時間11月17日、シードラウンドで300万ドル(約3億4200万円)を調達したと発表した。また、インドネシアのジャカルタでソフトローンチし、これまでのシンガポールと香港に加えて3つのマーケットでサービスを提供する。今回のラウンドにはY Combinator、Global Founders Capital、Pioneer Fund、Seed X、Starling Ventures、TSVCが参加した。DeskimoはY Combinatorの2021年夏学期に参加していた。

Rocket Internetのアジア責任者だったRaphael Cohen(ラファエル・コーエン)氏と、FoodpandaやHotelQuickly、GuestReadyの共同創業者であるChristian Mischler(クリスチャン・ミシュラー)氏が、2021年前半にDeskimoを創業した。Deskimoはアプリを消費者に直接提供するのではなく、ハイブリッド勤務を採用する企業と連携している。通常は在宅勤務をしているが集中するため、あるいは電話をするために家を離れたい従業員に対して、福利厚生としてアプリが提供される(ミシュラー氏によれば、Deskimoのユーザーはデスクを平均3時間利用するが、終日滞在するケースもあるという)。DeskimoはWeWork、The Hive、Executive Centre、Garage Societyなどのコワーキングスペースと提携し、コワーキングスペースの新たな収入源となっている。

ミシュラー氏はTechCrunch宛のメールで、交通渋滞が激しく、香港やシンガポールの都市と比べて不動産インフラがあまり充実していない都市をターゲットにするという方針から、ジャカルタに進出すると述べた。「インドネシアは東南アジア最大の市場で、ジャカルタはシンガポールの企業が最初に進出する都市の1つです。そのため当社の多くの顧客からDeskimoをジャカルタで利用できるようにして欲しいと要望がありました。そこで、東南アジアの他の大都市に先駆けてジャカルタを優先したのです」(ミシュラー氏)。

Deskimoはソフトローンチにあたり、ジャカルタで40カ所以上のワークスペースとすでに契約し、2021年末までにさらに10〜20カ所を追加する予定だ。サービスを展開するいずれの都市でも、同社はユーザーが自宅に近いデスクを見つけられるようにビジネス街の中心以外でもワークスペースを探している。例えば香港とシンガポールでは、Deskimoのスペースのおよそ3分の1は住宅地にある。ミシュラー氏によればジャカルタではスペースは市内全域に広がり、パートナーのワークスペースの約60%はビジネス街の中心以外にあるという。

同氏は「コロナ禍にともなう制限が続けばスペースはさらに混雑すると予測しています。そのため我々はDeskimoユーザー全員が近隣でスペースを利用できるようにオプションを増やしていきます」と補足した。

Deskimoはサービス開始からの3カ月間で、中心地にある会議室の予約などの新しいサービスもユーザーの需要に応えて追加してきた。現在の従量制料金モデルに加えて、固定料金のサブスクリプションも試行している。他に、アカウント所有者がゲストを同行できる機能、月末締めの請求だけでなくプリペイドのクレジットの利用、スペースに終日滞在したいユーザー向けの最大料金設定なども準備中だ。

画像クレジット:Deskimo

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

インドネシアで卸売りマーケットプレイスを運営するUlaにアマゾン創業者が出資

インドネシアのeコマース企業であるUla(ウラ)は、2020年の創業以来、3000万ドル(約33億3000万円)以上の資金を調達し、多くの著名な投資家と関係を築いてきたが、さらにこの度、世界で最も裕福な人物の信頼を獲得したようだ。

Amazon(アマゾン)の創業者が、この1年半前に創業したスタートアップの新たな資金調達ラウンドに出資したと、関係者やこの件に詳しい多くの人物が語っている。

ジャカルタに本社を置くUlaには、B Capital Group(Bキャピタル・グループ)、Sequoia Capital India(セコイア・キャピタル・インディア)、Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パトナーズ)、Quona Capital(クオナ・キャピタル)がすでに出資しているが、現在は8000万ドル(約88億8000万円)以上を調達する新ラウンドの確定に向け、交渉を進めているところだ。

アマゾン創業者のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏は、自身のファミリーオフィスであるBezos Expeditions(ベゾス・エクスペディション)を通じてUlaに投資することに合意したと、関係者が語っている。B Capital Group、Tencent(テンセント)、Prosus Ventures(プロサス・ベンチャーズ)が主導するこのラウンドは、早ければ2021年10月中にもクローズする見込みだ。

ベゾス氏は、企業間電子商取引プラットフォームを運営するUlaに関心を示しているが、現在のところ、アマゾンはほとんどの東南アジア諸国には進出していないか、あるいは限定的なプレゼンスを維持しているのみである。

Ulaの広報担当者は、米国時間10月2日に求められたコメントの要請に応じなかった。

Ulaは、小規模な小売店が直面するサプライチェーン、在庫、運転資金などの非効率性を解決するための支援を行っている企業だ。卸売り電子商取引マーケットプレイスを運営し、店舗オーナーが必要な在庫だけを仕入れられるようにするとともに、運転資金も助成している。

このスタートアップは、インドのFlipkart(フリップカート)の元幹部で、Sequoia Capital Indiaの元パートナーであるNipun Mehra(ニプン・メーラ)氏、以前はアマゾンで働いていたAlan Wong(アラン・ウォン)氏、一般消費財大手P&Gのインドネシア事業を監督していたDerry Sakti(デリー・サクティ)氏、Lazada(ラザダ)とaCommerce(エーコマース)に勤務していた経歴を持つRiky Tenggara(リキー・テンガラ)氏によって設立された。

画像クレジット:Pradeep Gaur/Mint / Getty Images

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

個人宅の台所をクラウドキッチンにして家で働けるようにするDishServeがジャカルタで事業拡大中

クラウドキッチンは、配達用の食事を準備するための集約された施設で食事を提供することで食品・飲料ブランドにかかるインフラの負担を減らす。これは、クラウドキッチン運営側にはレストラン顧客からの需要を満たすだけの十分な施設をもつ責任があり、その一方で消費者への素早い配達も確保しなければならないことを意味する。

インドネシアのDishServe(ディッシュサーブ)は、資産保有を最小限にするクラウドキッチンネットワークを運営する方法を考案した。格安ホテルスタートアップのRedDoorz(レッドドアーズ)の元COOによって立ち上げられたDishServeは自社施設を借りたり購入したりする代わりに個人宅の台所であるホームキッチンと提携している。現在はジャカルタの約100のホームキッチンと協業し、中小の食品・飲料ブランドのラストマイル配達ネットワークになることに注力している。2020年秋に創業されたDishServeは額非公開のプレシード資金をInsignia Ventures Partnersから調達した。

DishServeは2020年9月にRishabh Singhi(リシャーブ・シンギ)氏によって創業された。シンギ氏は2019年末にRedDoorzを去ったのち、ニューヨークに移った。あらゆる商業スペースをSoho Houseのような会員クラブにすばやく変えることができる新たなホスピタリティスタートアップを立ち上げようという計画だった。新生スタートアップはサンプルのプレハブの部屋を作り、2020年3月に新型コロナウイルスによってニューヨーク市がロックダウンとなったまさにそのときに不動産のリースを始めようとしていた。シンギ氏は、何をすべきか、東南アジアに戻るべきかどうか、数カ月の間「自己分析にふけった」と話した。

そして同氏は、多くのレストランがパンデミック時代を生き残るためにオンライン注文と配達に切り替えなければならず、これがMcDonald’s(マクドナルド)のような大手と競っている小規模の食品・飲料ブランドにとって平等をもたらす機会になるかもしれないと気づいた。しかしロックダウンは多くの人が住まいの近くにある限られたレストランから食事を取らなければならないことを意味した。と同時に、お金を稼ぎたいが、主婦のように家の外で働くことができない人が大勢いることにも同氏は気づいた。

DishServeは3者を結びつけるために立ち上げられた。多額の資金をかけずに事業を拡大したい食品・飲料ブランド、在宅起業家、そしてより多くの食事の選択肢を求めている消費者だ。同社の他の創業者はRedDoorzの初期従業員でフィリピンの責任者を務めたStefanie Irma(ステファニー・イルマ)氏、連続起業家のVinav Bhanawat(ヴィナブ・バナワット)氏、スリランカのオンデマンドタクシーサービスPickMeの共同創業者Fathhi Mohamed(ファティ・モハメド)氏だ。

1〜15店舗を運営し、新しく店舗を開設することなく配達を増やしたいと考えている食品・飲料ブランドとDishServeは協業している。DishServeの顧客にはまた、配達とケータリングのサービスのカバーエリアを拡大するためのラストマイルの配達でホームキッチンネットワークを活用するクラウドキッチン企業も含まれる。

「ブランドは前払い費用を払う必要はありません。また商品を配達する安価な方法でもあります。というのもブランドは電気代や配管作業費などを払う必要がないからです」とシンギ氏は話した。「そして業務を請け負う代理店(ホームキッチン運営者)にとっては家にいながら稼ぐチャンスとなります」

仕組み

ネットワークにホームキッチンを加える前、DishServeはまず一連の写真を送ってもらい、その次に実際に直接訪れてキッチンをチェックして申込者をふるいにかける。そしてキッチンがOKであれば、DishServeはネットワーク内の他のホームキッチンと同じ機器や機能性をもたせるべく申込者のキッチンをアップグレードする。アップグレードにかかる費用は同社が負担する。アップグレードの所要時間は通常3時間、費用は500ドル(約5万5000円)だ。機器の所有権は同社が持ち、ホームキッチンオーナーがDishServeを辞めると決めると、DishServeが機器を回収する。通常、キッチンの運営が始まって4カ月で同社はアップグレードの費用を回収できる、とシンギ氏は述べた。

ホームキッチンはまずトライアルとして、他のブランド向けに展開する前にDishServeの自前のホワイトレーベルブランドにサービスを展開することから始める。各ホームキッチンは追加で3つのブランドにサービスを提供することができる。

重要な留意点は、通常1人が運営するDishServeのホームキッチンは実際には調理しないということだ。食材は食品・飲料ブランドが用意し、ホームキッチン運営者はピックアップと配達のために手順に従って食事を温めてまとめ、包装する。

DishServeのホームキッチン運営者と顧客向けのアプリのスクリーンショット

DishServeは、頻繁に行うオンラインでの監査を通じて標準的な運用手順と衛生基準が保たれるようにしている。キッチン運営者はチェックリスト(食品準備エリア、フロア、壁、手洗いエリア、冷凍庫内)に基づき定期的にキッチンの写真とビデオを提出する。キッチン運営者の90%が年齢30〜55歳の女性で、平均世帯収入は1000ドル(約11万円)だとシンギ氏は話した。DishServeで働くことで、4つのブランドの業務を引き受けるようになればキッチン運営者は通常1カ月あたり600ドル(約6万6000円)稼ぐ。DishServeは食品・飲料ブランドに課金し、それをキッチン運営者と分け合う売上共有モデルを通じて収益をあげている。

食品・飲料ブランドはDishServeに加わると、協業したいホームキッチンを選び、食材を届ける。そしてDishServeのリアルタイムダッシュボードを使ってストック状況を確認する。一部の食材は保存可能期間が6カ月あり、その一方で農産物や乳製品、卵といった腐りやすいものは毎日配達される。新たに利用を始めるブランド向けのDishServeの「スターターパック」ではキッチン5カ所を選ぶことができるが、大半のブランドは、ジャカルタでより多くのエリアに配達し、また大量の食事を準備することで節約できるよう、通常10〜20のキッチンで開始するとシンギ氏は説明した。

DishServeは少なくとも2021年末までは他都市に事業を拡大せず、ジャカルタでのネットワーク成長に注力する計画だ。「当社が食品・飲料産業で変えようとしていることの1つは、現在あるようなかなり集中・集約された食品事業の代わりに、マイクロ起業家をディストリビューションネットワークとして作用させて事業を分散させるというものです」とシンギ氏は述べた。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:DishServeジャカルタインドネシアクラウドキッチン

画像クレジット:DishServe

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi