買取価格比較サイト「ヒカカク!」やトレカ専門フリマアプリ「magi」運営のジラフが6.6億円調達

買取価格比較サイト「ヒカカク!」などを展開するジラフは4月2日、DGベンチャーズなどを引受先とした第三者割当増資および金融機関からの融資により総額約6.6億円を調達したことを明らかにした。

ジラフは2017年秋から2018年3月にかけて実施したシリーズBラウンドで約5億円を調達していて、今回の調達はそれに続くシリーズCラウンドという位置付け。同社では本ラウンドでVCなどから追加の調達も検討しているという。

今回ジラフに出資・融資した企業は以下の通りだ。

  • DGベンチャーズ
  • DK Gate
  • オー・エル・エム・ベンチャーズ
  • Donuts
  • AG キャピタル
  • 吉田正樹事務所
  • みずほ銀行、りそな銀行(融資)

トレカのフリマ「magi」は月間流通総額が約1億円規模に

現在ジラフではヒカカク!のほか、匿名質問サービス「Peing-質問箱-」やトレカ専門フリマアプリ「magi」を展開している。特にここ1年ほどで力を入れてきたのが昨年4月にローンチしたmagiだ。

個人間でトレカの取引ができる同アプリのインストール数は現時点で約30万件ほど。直近では若干コロナウイルスの影響も受けてはいるそうだけれど、最高値としては月間の出品数が11万件、取引回数が7.2万件まで成長し、月間の流通総額も約1億円まで拡大しているという。

トレカ自体はこれまでもフリマアプリやオークションサイトなどを通じてオンライン上でやりとりされてきたが、magiの場合は細かいカテゴリごとにカードを検索できるのが1つの特徴。たとえば遊戯王やポケモンカードなどタイトルを絞るのはもちろん、モンスターの属性(ドラゴン、魔法使いなど)やカードの種別(モンスター、魔法、罠など)ごとに細かい軸でカードを探せる。

また「募集」カテゴリを通じて買い手側から欲しいカードを募集する機能を取り入れることで、出品者側の売れ残りの課題を解消するための仕組みを整備。カード特化のフリマアプリならではの取り組みとしては、水漏れや破損を防ぐべく梱包キットの開発・販売なども行なっている。

これらの施策とともに手数料の安さ(当初は無料で昨年10月から3%、この4月からは7%に変更)などもあいまって、序盤からユーザー獲得が進んだようだ。

「熱量の高いユーザーが多いことに加え、買い手と売り手が転換しやすいのがこの領域の特徴だ。平均単価が2000円ほど、1人あたりの月間購入回数も6件ほどとアクティブに使ってもらえていて、良い形で立ち上げることができた。ユーザーの増加に対してなかなか機能整備が追いついていない時期もあったが、そのバランスが取れてきたので今回の調達を機にさらに投資をしていく」(ジラフ代表取締役の麻生輝明氏)

直近ではコレクションニーズに応えるための取り組みとして、プロがカードの真贋鑑定を行う「あんしん取引」機能をリリース。特に遊戯王やマジック:ザ・ギャザリングなどの人気タイトルでは偽物が出回っていることも多いそうで、高価なものだとオンライン上で取引するハードルも高くなる。この機能ではプロの鑑定を挟むことで、高価なカードの流動性を上げていくことが目的だ。

麻生氏によるとリリースから約3週間であんしん取引機能を使って7度の売買が行われたそう。もっとも高額のものは1枚13万円だったという。

ヒカカク!とmagiにさらなる投資へ

創業事業であるヒカカク!はすでに単月黒字化を達成しており、月間利用者数はセッションベースで300万人、見積もり依頼件数は4万件を超える規模に成長。現在もジラフの収益の7割ほどを占める根幹事業となっていて、今後も引き続き強化をしながら伸ばしていく計画だ。

もう1つのPeing-質問箱-については、多くの新規ユーザーを獲得しにいくというよりは、いかに既存ユーザーに継続して使ってもらえるかを現在は重視しているそう。その中で新機能や有料機能・商品などを取り入れながら収益化に向けた取り組みにも力を入れるとのことだった。

今回調達した資金は特にヒカカク!とmagiに投資をする方針。特にmagiについては事業基盤が整ってきた中で、今後はユーザー拡大やマネタイズに向けた動きも進める。大きいところでは、トレカのみならずボードゲームやフィギュア、シールなどコレクターズアイテム領域に広げていく計画もあるようだ(すでに取り扱いがスタートしているものもある)。

直近では元モブキャストゲームス取締役CMOの松本晃宏氏が執行役員として参画するなど経営体制の強化も進んでいるそう。さらなる事業成長に向けて人材採用への投資も引き続き行なっていくという。

ジラフがトレカに特化したフリマアプリ「magi」を公開

買取価格比較サイト「ヒカカク!」や中古スマホのフリマサイト「スマホのマーケット」など複数の事業を展開するジラフ。同社は4月24日、新サービスとしてトレーディングカードに特化したフリマアプリ「magi(マギ)」をリリースした。

magiは「遊戯王」や「ポケモンカード」などのトレカをオンライン上で売買できるC2Cサービス。出品されているトレカはタイトルごとにカテゴリー分けされているほか、各タイトルに応じて細かくタグが設定されているので、目当てのカードを探しやすいのが特徴だ。

たとえば遊戯王であればモンスターや魔法、罠などカードの種別で検索したり、ドラゴンや昆虫などモンスターのタイプごとにカードを探すことが可能。目当てのカードが決まっている場合はもちろん、「ドラゴンデッキを作りたいので該当するカードをいくつか手に入れたい」といった時にも使えそうだ。

ジラフによるとトレカは2011年に国内市場が1000億円を突破していて、冒頭で触れた遊戯王やポケモンカードなど国産の人気タイトルも多い領域。長年に渡って親しまれている王道タイトルのほか、現在でも新たなタイトルがリリースされ続ける“息の長いエンタメコンテンツ”と言えるだろう。

すでにトレカユーザーの多くが公式販売のパック購入だけでなく、カードショップやオークションサービス、フリマサービスなどの二次流通サービスを利用しているが、この領域に特化したC2Cアプリはまだ登場していない状況だ。プレミア価値の高いカードが存在することに加え、売買の取引頻度が高く利用者間で買い手と売り手が転換しやすいことに着目し、今回のサービスローンチに至ったという。

本日時点ではiOS版のみとなるが、今後Android版もリリースする予定とのこと。5月下旬にはコミュニティを活性化する新機能として掲示板機能も実装する計画だ。

「トレカ市場は二次流通が活発でファンコミュニティが分厚く 、その性質上取引も活発です。二次流通のオーソドックスなサービスとしてまずはスタートしますが、ファンコミュニティの情勢やこの領域における『GameWith』のようなメディアの立ち上げ、オフラインでの対戦相手のマッチング機能などの展開も予定しています」(ジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏)

“ググって調べる”ではなく“LINEで気軽に相談” ーージラフが通信やインフラ領域にLINE相談サービス拡大へ

格安スマホに興味はあるけれど、わざわざ店舗に行ったりいちいち比較サイトなどで調べたりするのは面倒——そんなユーザーがLINEのチャットを通じて、気軽にスマホの乗り換え相談をできるサービス「携帯かえるくん」。

6月15日にジラフが「ズボラ旅 by こころから」にならって開発した同サービスは、10時のリリース直後からユーザー登録が増え、すぐに数百人に到達。対応キャパシティの限界もあり当日16時時点で新規の受付を一時停止していた。

そしてジラフは6月22日、携帯かえるくんの新規受付を再開することを発表。合わせて複数のLINE相談サービスを水平展開する「かえる群構想」を明らかにした。

ジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏によると、携帯かえるくんには当初の想定を超えて約800名からの相談申し込みがあったという。新規の受付を一度停止して以降は、相談があったユーザーの対応を進めつつ、急ピッチで体制を整備してきた。

相談内容については「かなりおおざっぱなものが多く、ユーザーは単純に安いものを求めつつも、実際にはほかにも要望がある」そうで、ユーザーごとに提案内容もバラつきがあるとのこと。相談を聞いてみると「今の携帯料金を自覚してる人は少ない」ともいう(そういえば僕自身も毎月いくら携帯料金を払っているのか、大ざっぱにしか把握していない)。

数百人のユーザーとやりとりを重ねる中で、LINEを活用した相談サービスに可能性を感じたということなのだろう。ジラフでは今後このモデルを格安スマホだけでなく、プロバイダーやポケットWiFiといった通信回線の乗り換え、電気やガスの乗り換えといった他の領域にも広げていく方針を発表している。

「可能性を感じているのは潜在ニーズの大きさ。(格安スマホの買い替えだけでなく)おそらくほかの領域もそうだろうなと。特にいわゆるモバイルでの比較領域はリプレイスする余地があるとずっといわれていて、(LINEを用いた相談サービスが)それに相当するものになるのではないかと考えている」(麻生氏)

確かにこの話については思い当たるふしがある。近年さまざまな分野で比較サイトやレビューサイト、体験ブログ、まとめサイトのようなものが登場し、ひとまずググればたくさんの情報がでてくる時代になった。

ただ、PCであればまだしも、スマホから同じような流れで気になるトピックを検索し、ひとつひとつ比較サイトなどで情報を見比べて意思決定をするというのは、「正直面倒」だと感じる人も多いのではないだろうか。

もはや検索するのですら面倒くさいと思う人や、検索して調べるほどではないという潜在顧客に対して、気軽に、かつズボラに相談できるチャネルを作るというのは一定のニーズがありそうだ。冒頭で紹介したズボラ旅だけでなく、少し仕組みは違うもののLINEも自社で恋愛やダイエットの相談ができるチャットサービス「トークCARE」を提供していたりもする。

最近では格安スマホの登場、通信や電気などの市場自由化・サービスの多様化、シェアリングエコノミーサービスの普及などによって、安くスマートに消費する選択肢が格段に増えた。これらの選択肢を認知してはいるものの、消費スタイルの転換にまだ不慣れな潜在層をジラフでは「スマート消費潜在層」と定義。LINEの相談サービスを複数展開することで、意思決定のサポートをしていく狙いだ。

まずは体制を整えながら、7月前半にプロバイダーやポケットWi-Fiなど通信サービスの乗り換えに関するサービスを、同月後半には電力・ガスの乗り換えに関するサービスをリリースする予定。麻生氏いわく「カカクコムの比較を代行してくれるようなイメージ」だという。

もちろん人員体制の構築やコスト構造を含め、このモデルにもまだまだ未知数な部分はある。麻生氏も「契約の最後のクロージングまでとなると現状は検証しきれてない」と今後の課題をあげる(各サービスのマネタイズについては制約時の送客手数料を想定していて、現時点でユーザー課金等はまだ考えていないそうだ)。

ただこのスマホ時代において、そして日本国内ではLINEがインフラとなっている時代において「自分であれこれ検索するよりも、ひとまずLINEで相談してみる」というスタイルが、多方面に広がっていく可能性は十分にありそうだ。

LINEでスマホ乗り換え相談、ジラフが「ズボラ旅」そっくりな新サービス

LINEのチャットで出発地を伝えるだけ——行き先や予算、宿が決まっていなくてもスタッフがおすすめの旅行プランを考案してくれることで話題を呼んだ「ズボラ旅 by こころから(以下、ズボラ旅)」。

同サービスがリリース後わずか数時間で数千件の相談を集め、パンク宣言をしたのは2018年5月22日のこと。あれからまだ1ヶ月も経っていないが、早くも別の領域でズボラ旅そっくりなサービスが生まれたようだ。

買取価格比較サイト「ヒカカク!」や中古スマホのフリマサイト「スマホのマーケット」を運営するジラフは6月15日、LINE上で格安スマホへの乗り換えについて相談できるサービス「携帯かえるくん」をリリースした。

ズボラ旅のモデルを格安スマホの買い替え相談に持ち込んだもの、端的に言うと携帯かえるくんはそんなサービスだ。コンセプトは「ズボラのりかえ」。ユーザーはLINEで友だち登録をして、現在使っている端末の通信会社と要望を伝えると、チャット形式でスタッフから最適なプランの提案を受けられる。

相談内容としてはオススメの端末や格安SIMの基本的な仕組み、利用料金や買い替えの手順など。スマホの買い替えに関する幅広い相談について、ズボラ旅と同様システムではなく人力で受け答えするという(かえるが対応すると言ったほうが正しいのかもしれない)。

ジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏の話では、これまでも格安サイトの比較サイトや診断サービスはあったが、多くのユーザーにとってわかりやすい状況とは言えず課題を感じていたという。

乱立する比較サイトとは違った形で「従来の携帯ショップのように相談できるサービスがあったらいいなと考えていた」ところ、ズボラ旅を見て「これだ!」と思い急ピッチで準備を進めてきたそう。ちなみにズボラ旅の運営元であるHotsprings代表取締役の有川鴻哉氏はジラフの株主。麻生氏によるとTwitter上で相談後、許諾を得て立ち上げに至ったようだ。

なお携帯かえるくんについては、相談料は無料。まずはサービスの検証を進める方針ではあるものの、実際にチャット上で提案したプランにユーザーが加入した場合に、送客手数料を取るような仕組み(アフィリエイトのようなモデル)は検討しているそう。

いずれはスマホのマーケットなど自社サービスへの送客なども視野にいれつつ、現状は「とにかくズボラに相談できるというサービスのフレンドリーさ」をウリに、「悩んだ時にこれを使おうと思いついてもらえる、格安スマホ関連サービスのマインドシェア1位」(麻生氏)を目指す。

ジラフがスマホの即時買取サービスから撤退——虚偽申込などがネックに、通常の買取形式へ移行

スマホ端末のフリマサイト「スマホのマーケット」内で、即時買取サービス「スママDASH」を2018年1月から始めていたジラフ。同社は4月26日、スママDASHのビジネスモデルを転換したことを明らかにした。今回の変更により即時買取から撤退し、物品の送付後、確定した金額を振り込む通常の買取形式でサービスを提供する。

虚偽申込の多さや商材との相性を踏まえて撤退へ

買取価格の査定申込後、与信審査などもなく即座に商品を売却できることで昨年広がった即時買取モデル。ただその一方で実際に査定金額を振り込んだもののユーザーから商品が送られてこない虚偽申込など、事業者側にリスクもある。

スママDASHの場合は、この「虚偽申込の多さ」に加えて「スマホ端末という商材の特性」上、このビジネスモデルがあまりマッチしなかったという2点が撤退に要因となったようだ。

ジラフによるとスママDASHにて買取、査定金額の振込を済ませたスマホ端末が送られてこないケースが頻発。最も高い時では80%が虚偽申込だったという。特に買取単価が2万円を超える端末において虚偽申込率が高く、買取未着荷リスクを回避するために買取価格を想定以上に下げざるを得ない状況だった。その影響で善良なユーザーとも価格面でマッチせず、期待に沿えなくなっていたという。

またスマホ端末は単価が高いため、買取価格も高価格になるという認識がある。そのため安価で即時買取されるよりも、一定時間待ってもより高い金額で売却したいユーザーが多かったというのがジラフの見解だ。

加えてスママDASHではスマホ端末のみに特化していたことで、基本的に1人のユーザーが何度も売ることがない。2回目以降に信用が蓄積され、段階的に買取価格を上げていくサービス設計も実現できていなかったという。

高額買取モデルへ転換しサービス継続

このような背景もあり、ジラフではスママDASHの設計を変更。ユーザーはアプリから仮査定をした後に端末を送り、本査定後に金額を受け取る仕様になった。商品の送料や振込手数料、キャンセルの場合の返送料などは全て無料だ。

ジラフ代表取締役の麻生輝明氏の話では、もともと2018年3月から1つのオプションとして通常買取形式の「スママDASHプラス」というサービスを提供していたそうだ。これは上述したような「待ってもいいから少しでも高く売りたい」ユーザー向けの機能。実績も出ており、同社が展開する既存サービスを活かすことで高額買取を実現できる判断し、今回の決断に至った。

「(ジラフが展開する)『ヒカカク!』から送客をしているため、広告費など集客コストを抑えられているので、買取価格を高めにしても利益を出せる状況を作れる。ここにスマホのマーケットというC向けのマーケットプレイスによる再販力を利用すれば、高額買取が実現できると考えた」(麻生氏)

合わせてスマホのマーケットにてフリマ形式で出品したものの売れ残ってしまった場合、スママDASHで高額買取をする仕組みも同時に開始する。

「売れ残っている出品であると運営側で判断した際に、買取のオプションをメッセージで連絡する。(一般的なフリマアプリやオークションサイトのように)売れ残らず、さらに言うと相場が下がっていってしまう前に売ってしまう、ということを実現したい。再出品するコストや他のサービスでまた見積もりを出する手間も省ける。近日中にきちんとした機能として実装する予定だ」(麻生氏)

なおジラフでは3月にMacBookの即時買取サービス「パソダッシュ」をリリースしていた。こちらについては現在ノートパソコン全体に範囲を広げていて、引き続き即時買取モデルで継続していくという。

 

広がる“即時買取”モデル、ジラフがMacBook特化の「パソダッシュ」をGoogleフォーム上で公開

2018年に入って「○○(ジャンル名)の即時買取サービス」を紹介する機会が少しずつ増えてきた。

たとえばジラフが提供する「スママDASH」はスマホ端末を対象としたもの、ウリドキネットが提供する「PICOL(ピコル)」はゲームや書籍、DVDなどメディア系商材を対象としたものだ。即時買取の先駆けとも言える「CASH(キャッシュ)」がリリースされたのは2017年6月。当時大きな話題となったこの画期的なユーザー体験も、徐々に浸透してきたように思う。

本日ジラフが新たにリリースしたのもジャンル特化型の即時買取サービス「パソダッシュ」。対象となるのはMacBookだ。

パソダッシュはジラフが運営する買取比較サイト「ヒカカク!」内で利用できる即時買取サービス。 査定申込をした後は与信審査などの手続きがなく買取金額を確認、売却が可能。MacBook内に残ったデータも無料で削除するという。

1日の総買取金額は100万円で、取引1回あたりの上限金額は3万円。申込は1台ずつとなる。液晶割れなど故障している商品でも買取の対象となるのも特徴だ(同社ではジャンク品を修理して再販するスキームがある)。

ヒカカク!の収益化を進める

冒頭でも触れたとおり、ジラフはすでにスマホ端末の即時買取サービス、スママDASHを提供している。同サービスの状況については「月間で数百台ペースの買取数となっていて(CASHなどのように)爆発的な勢いでは無いにしても比較的順調」(ジラフ代表取締役の麻生輝明氏)だという。

麻生氏によると特に画面割れなどのジャンク品の買取が進んでいるそう。MacBookは「スママDASHで勘所は掴んだジャンク買取を実現でき、スママDASHとユーザーを共有しやすいカテゴリーでもある」(麻生氏)ため、スマホ端末の次に取り掛かるジャンルとして選んだそうだ。

また再販売時の値崩れが起こりにくく買取市場の中でも単価が大きい部類であり、即時買取で通常の買取価格が下がる中でも比較的値付けしやすい点も相性が良かったという。

同社の今後の方向性について麻生氏に聞いてみたところ、”ヒカカクの収益化”がひとつの鍵となるようだ。

「ヒカカクで収益化をもっと進められるカテゴリーにおいて、即時買取サービスでユーザーの合計コンバージョンレートを高めていく、機会損失を埋めていくような戦略を考えている。(ヒカカクは)月間で150万人以上に利用されているので、ここで送客スキーム以外に即時買取で他カテゴリーも取りこぼしを減らしていきたい」(麻生氏)

パソダッシュに関しては、まずは初月1000万円の買取を目指していく方針だ。

ちなみに申込ページを見てもらうと分かるように、同サービスは現状Googleフォームで公開されている。これは一時的なものだというが、スピード感を重視してリリースした結果だそう。利用者が見込めれば今後はスママDASH同様、独自サイトでサービスを提供する方針だという。

パソダッシュの開発メンバー。同サービスは企画から100時間でのリリースなのだそう

 

「能力は誤差」スタートアップが見るべき人の資質、妥協しない採用とは——TC School #12

TechCrunch Japanでは2017年3月から4回にわたり、イベント「TechCrunch School」でHR Techサービスのトレンドや働き方、人材戦略といった人材領域をテーマとした講演やパネルディスカッションを展開してきた(過去のイベント一覧)。HR Techシリーズ第4弾として2017年12月7日に開催された「TechCrunch School #12 HR Tech最前線(4) presented by エン・ジャパン」では「スタートアップ採用のリアル」をテーマに、キーノート講演とパネルディスカッションが行われた。この記事では、パネルディスカッションの模様をお届けする(キーノート講演のレポートはこちら)。

パネルディスカッションの登壇者はプレイド代表取締役の倉橋健太氏、dely代表取締役の堀江裕介氏、ジラフ代表取締役の麻生輝明氏、エン・ジャパン執行役員の寺田輝之氏の4人。創業者、あるいはHRサービスの提供者の立場から、それぞれが体験した「スタートアップ採用のリアル」について話を聞いた。モデレーターはTechCrunch Japan副編集長の岩本有平が務めた。

始めに各社から、自己紹介も兼ねて事業の内容や現在の体制について簡単に説明してもらった。

まずは倉橋氏が2011年に設立したプレイドの紹介から。プレイドは従業員数約70人。ユーザーを「知る・合わせる」をコンセプトに、ウェブサイトの訪問者のリアルタイムな解析とアクションを可能にするカスタマーアナリティクスサービス「KARTE」を提供している。倉橋氏は楽天に2005年に入社、2011年まで約7年間在籍し、Webディレクション、マーケティングなどさまざまな領域を担当してきた。その倉橋氏が独立し、KARTEをリリースしたのはなぜか。

プレイド代表取締役 倉橋健太氏

ウェブサイトでは、ユーザーがいて、何らかのプロダクトやサービスを提供した結果、パフォーマンスが生まれる。倉橋氏は「残念ながら、インターネットのビジネスでは、ユーザーはトラフィック、サービスはサイトと捉えられていて、パフォーマンスから考える傾向が強い。この方法では『いかに高転換なサイトに人をたくさん流し込むか』ということだけ重視され、いろいろなところで疲弊してきているし、運営していても面白くない、ということになる」と述べる。

「昨日新規ユーザーが100人来た、と言っても、その100人は誰なのか。そういうことをしっかり可視化しながら、プロダクトやユーザー体験を良くしていきましょう、ということで、KARTEを提供している」(倉橋氏)

人の可視化が重要、と話す倉橋氏は、イベントの前の週にリリースしたKARTEの新サービス「K∀RT3 GARDEN(カルテガーデン)」を動画で紹介。これまでは、平面の管理画面で人を可視化していたところを、オンラインに来ているユーザーの行動をリアルタイムにVR空間で描画する試みだ(TechCrunch Japanの記事でも詳しく紹介している)。

カルテガーデンでは、人が商品を「手に取って」見ているところや売場を歩き回っている様子を、VRで見ることができる。「データを数字として見ることが多くの人は苦手なので、難しい。それを“人”として見ると、身近に感じて一気に簡単になる。(分かりにくい)データや数字はマーケティングから退けていきたいとの思いから、事業をやっている」と倉橋氏は話す。

続いて堀江氏から、delyの設立から今までの歩みについて紹介してもらった。堀江氏がdelyを立ち上げたのは2014年。2014年から2016年までは、現在とは違うサービスを提供していたがうまくいかず、2016年にピボットして、レシピ動画の「kurashiru」を作った。

dely代表取締役 堀江裕介氏

delyの従業員数は、現在130人ぐらい。うち社員は内定者を含めて60人だ。「昨年は十数人だったので、一気に増えた」と堀江氏は言う。「直近の四半期では50人採用した。このスピードで採用していると、相当失敗もしている。いい採用だけでなく、悪い採用もしているし、どういう採用チャネルがあるのか、どういった採用ハック方法があるのか、いろいろ試しているので、今日は参考にしてもらえると思う」(堀江氏)

正社員の採用チャネルは「基本的にリファラルとWantedlyで、7割近くを占める」そうだ。今のところまだ、エージェントと媒体を利用した採用は、それぞれ約10%で「社員の満足度が高いときには、やっぱりリファラルでの採用がガンガン効く」と堀江氏は話している。「Wantedlyの運用も、今は人事担当を1人つけて、がんばっている。あと、SNS経由については、僕が毎日どんどん発信しているので、これがかなり効いているかな、と思っている」(堀江氏)

ジラフ代表取締役 麻生輝明氏

次に紹介があったのは、ジラフの麻生氏だ。ジラフは2014年の創業。麻生氏が大学在学中に、買取価格の比較サイト「ヒカカク!」を始めたのが創業事業だ。その後、別のサービスもリリースしているが、会社として大きく人を増やし、組織も拡大するきっかけとなったのは、2017年3月にポケラボを売却したシリアルアントレプレナー・佐々木俊介氏が参画し、同時にポケラボのリードエンジニアだった岡本浩治氏がCTOとして参画したことだ、と麻生氏は言う。

「そこからビジネス側、開発側で人を一気に拡大し、だいたい8カ月ぐらいで2.5倍ぐらいの規模になった」と麻生氏は話している。現在は従業員全体で60人ぐらい、社員が30人ぐらいだという。

直近では、2017年10月に「スマホのマーケット」をリリース11月には資金調達も行ったジラフ。資金調達については「組織面が強化されていることも評価された」と麻生氏は言う。今後、スマホ即金買取サービスの「スママDASH」の公開も予定しているとのことだった(イベント後の12月21日、ジラフはTwitter経由の匿名質問サービス「Peing(ペイング)質問箱」を買収、さらに2018年1月15日にはスママDASHをリリースしている)。

エン・ジャパン執行役員 寺田輝之氏

エン・ジャパンの寺田氏は今回、スタートアップへ人材サービスを提供する側としての登壇だが、寺田氏自身もエン・ジャパンがスタートアップだった頃に入社している。現在はエン・ジャパンの執行役員を務める寺田氏の持論は「スタートアップは、成功するまではプロダクトづくりに専念しろ」というもの。自身がかつて直面した採用の課題に対して、先回りして解決できれば、ということで提供しているのが、クラウド採用ツールの「engage(エンゲージ)」だ。

engageでは「採用からエンゲージメントを意識してほしい」ということで、基本的に無料でサービスを提供。2016年8月のローンチから1年3カ月で5万7000社に導入され、「HRアワード 2017」では優秀賞も受賞した。

engageで提供する主要サービスのひとつが、スマホ対応の採用HP作成。寺田氏は「媒体やWantedlyで企業からの採用メッセージを発信することは絶対やった方がいい。その上で、メッセージを見た人は必ず企業のホームページも見に来る。これはエージェントを使っても一緒。そこで、事業内容やサービス内容に加えて、採用のページも充実させておくことで、面談や面接で会う前の魅力付けをすることが必要だ」と採用HPを用意することの意義について説明する。

「採用ページを個別に用意するのは結構コストがかかる。だったら僕たちの方で作ってしまって、ばらまいてしまおうと。さらに『エンジニアやデザイナーはプロダクトに集中すべき』という考えから、応募者管理のためのCMSや、ノンエンジニアがページを更新できるような機能も入れている」(寺田氏)

また、エン転職会員や提携するindeedなどを対象にした、採用のマーケティング支援もengageで実施。さらに性格・価値観テストと知的能力が測定できる「タレントアナリティクス」も月に3人分まで無料で提供している。

「スタートアップ採用あるあるとして、候補者のスキルは分かるが、カルチャーフィット、その人たちがどういう性格や価値観を持っているのかが、なかなか分からない、というのがある。特に創業初期の段階で、それが合わない人たちを入れてしまうと、結構苦労する。だから、カルチャーフィットの部分もしっかり見ていこう、というのがタレントアナリティクスのサービスだ」(寺田氏)

もうひとつ、寺田氏が紹介したサービスが、退職予測をアラートする「HR OnBoard」。入社して何年も経てば退職理由もいろいろ出てくるものだが、入社後1年以内に退職する人については傾向があると寺田氏は言う。エン・ジャパンでは3000社以上の企業の状況を分析した結果をもとに、「HR OnBoard」をリリースした。

「多いのは『思っていたのと違う』というギャップ、直属の上司とのリレーションのズレ、そして業務量が多すぎる、または少なすぎるというズレ。これらをずっと分析して『このタイミングで社員からこういう回答が出るときは、退職の危険性が非常に高い』『こういう回答なら大丈夫』というパターンを出し、ビッグデータからアルゴリズムを作って提供している」(寺田氏)

何もないところから日常的にコミュニケーションを取って、採用した人が退職しないようにフォローするのはなかなか難しいものだが、アラートが出て「このまま行けば辞められてしまう」となれば、一生懸命止めることができる。そのためのツールとして用意した、と寺田氏は説明する。

「私自身の経験も含めて、スタートアップでこれから起こりうるトラブルは絶対あるはず。そこに先回りできるツールを提供していく。さらにこうしたツールはこれまで、結構なコストを投入しなければ導入できなかったが、SaaSとして提供することで民主化した。ミスマッチのない、エンゲージメントの高い対応が実現できるように、ということで提供しているので、良ければ使ってみてほしい」(寺田氏)

「最初の5人」採用はやはり知人・リファラルが中心

各社紹介の後、話題は「創業して最初の5人はどうやって集めたか」へ移った。

ジラフの麻生氏が1人目の社員を入れたのは、創業1年ぐらいのタイミング。それまでは全業務の統括をひとりでやっていたという。「No.2が欲しい、ということで探していたが、そこにハードルがあった。COOを務められるNo.2人材は、起業しようという気力がある人でなければいけない。けれども、そういう気力のある人は、代表をやりたいわけで、ちょうど良い感じの人がなかなか見つからなかった。結果的に、VCから紹介してもらった人と会ったところ、その日に入社を決めてくれた」(麻生氏)

次に入社したのはエンジニア2人で、1人は業務委託で手伝ってくれていたメガベンチャー出身者。もう1人は「4月1日に会ったら、東大を卒業したところだけど就職が決まっていない、というちょっと変わった子で、その日のうちに採用を決めた」のだそうだ。

その後、現在は執行役員 兼 営業部長を務める人を採用。「彼は大手商社の出身で転職してきてくれたのだが、元々、大学時代にインターンが同じだったのが縁。最初の5人については、いずれも紹介や縁で入社してもらっている」(麻生氏)

delyの堀江氏は、サービスをピボットして実質2回の創業を経験しているが、1回目のサービスがうまくいかなかった際には、20人ぐらい一気に辞めたという。「唯一残っている最初からのメンバーは、現CTOの大竹(大竹雅登氏。TechCrunch Tokyo 2017でCTOオブ・ザ・イヤーにも選ばれた)。自分は『プライベートの友だちは絶対に誘わない』と決めていた。またエンジニアの友人もいないので、Facebookのプロフィールに『エンジニア』と書いてある人に片っ端から連絡を取った。100人ぐらいに声をかけたのだが、一番最初に引っかかってしまった(笑)のが彼だ」(堀江氏)

その後、第2創業期のメンバー集めでは「一度チームが崩壊してしまったので、チームメイキングができる人間が欲しいと考えた」という堀江氏。「大学時代に一度、VCのピッチの場で会った人が、起業をやめて大手消費財メーカーに就職したと聞いていた。彼に久しぶりに連絡をしたところ、話して3日後に辞表を出して、2分の1の給料で入社してくれることになった」と次のメンバー入社のいきさつを話してくれた。

「彼も大竹も一度起業を目指した起業家で、その後のメンバーも10人ぐらいまでは元起業家。タフなメンバーが今でも活躍している」と言う堀江氏に、元起業家を口説くときの方法を聞いた。「『自分で事業をやるより、俺とやった方が勉強できるだろう?』という謎の雰囲気を出す(笑)。本当は何も教えることなどなくて、自分が教えてもらってばかりですが」(堀江氏)

プレイドの倉橋氏は、ビジネスマンを7年弱経験してからの起業だ。楽天を辞め、初めはコンシューマー向けのアプリ提供やECコンサルを行っていた。最初のメンバーは役員4人。すべて知人、リファラルでの採用だった。

「取りあえずやりたいことをやるために会社を作ったが、会社ってそんなにうまくいくわけがない。他の仕事を持ちながら4人が集まったということもあり、サービスをローンチした後、初動は良かったが、なかなか伸ばすことができなかった」(倉橋氏)

そのため1年目に一度切り替えよう、ということでメンバーもリセット。同じ会社を器として使いながら、今のCTOと楽天時代の同期の紹介で知り合い、現在に至っているという。

「だから僕も2回創業があって、1年目はウォーミングアップだったと捉えている。その後、役員以外の社員が入りはじめてから20人弱ぐらいまでは、全員リファラル採用を行ってきた」(倉橋氏)

「スキル」よりは「学習能力」「フィットネス」を重視

では「最初の5人」のフェーズを終え、そこから拡大していくときに、各社はどういう基準・指標で人を採用していったのだろうか。

従業員70人、うち社員として60人を抱えるプレイドの倉橋氏は、社員の採用チャネルについて「まだリファラルが半分強。残りの半分のうちの半分がWantedly経由で、もう半分がエージェント」と概観を説明。「つまり信頼できる人を確実に誘っていく、ということをやってきた。社会人経験があることから、人を介して人につながる、ということはやりやすかった」と話している。

倉橋氏は「役割ごとの人数を(採用)計画に落とし込むということは、これまでほとんどやってきていない」と言う。「僕らの事業はまだまだ、これから立ち上がるフェーズだと思っている。だから人材を(初めから)見極めて採るという市場感ではなく、いい人をできる限り採る、それだけでやってきた。エンジニアかビジネスか、ぐらいの区分はあるが(細かい)役割を決めて採用するということは、いまだにほとんどしていない」(倉橋氏)

人材のフィット感を確かめる方法として「全員にアルバイトか契約社員で入社してもらい、3カ月見る」ということもやってきた、という倉橋氏。「中には9カ月ぐらいアルバイトしてから社員になった人もいる。そこで妥協しなかったことが、今の(企業)文化構築につながったと考えている」とのことだ。

採用基準については倉橋氏はこう語る。「新しい価値観を提供していくときに、一番重要なのは学習だ。個々人として、組織として、またプロダクトとして学習していく、という中では個人の役割なんて簡単に変わる。だから変化への許容度が高い人をいかに採るか、ということを優先してきている」(倉橋氏)

人の良し悪しの判断については「社内でも、CTOなどと話しているのは『能力は誤差だ』ということ」と言う倉橋氏。「そもそも新しいことをやっているのだから、その人の経験が100%ダイレクトに生きる、なんていうことは、まずない。経験や成功体験を疑える人にまず来て欲しい、というのが前提だ。だから『人間として好きかどうか、人間性が信頼できるか、真面目か』といったところを見ているのと、自分の言葉として事業に共感してくれているかどうか、能力よりも『一緒にやりたいかどうか』といった“人”っぽいところを基準に見ている」(倉橋氏)

採用チャネルの3割がリファラル、というdelyの堀江氏は「採用の基準は超簡単」と面白い視点を紹介してくれた。「会ったときに『この人とサシで飲みに行く約束をした1時間前に、イヤにならないか』ということを見ている。カルチャーフィットする人なら、気軽に飲みに誘える。定性的ではあるけれども、採用してからの感覚ともだいたい合っている」と堀江氏は言う。

「能力に関して言うと、見てはいるが、入社してから半年も経てば、そのジャンルに対する知見などは周りと変わらなくなってくる。だから過去の経験よりは、学習意欲の高さや学習スピードの速さを重視している」(堀江氏)

ここで寺田氏が「Googleでは『エアポートテスト』、つまり採用基準として『次に乗る飛行機が飛ばなくなり、空港の近くのホテルで泊まらなければならなくなったときに、一緒に泊まって会話ができるか』というテストを、科学的に行っている」と紹介。堀江氏に「イヤになるかならないか」を判断するときには、何を見ているのか尋ねた。

堀江氏は「うさんくさくない人かどうか」が基準だと話す。「前年比1500%達成!といった経歴を書く人がいるが、そもそも前年の運用期間が少ない、とか、話を盛っちゃう人はうさんくさいので、飲みに行きたくなくなる。自分の失敗や弱みまで含めて語れるような人は、僕はいいな、と思っている。カルチャーフィットというのは、ある意味、自分の彼女に対して『性格も良くて料理もできて、謙虚で』といった全部の条件を求めているようなものだけど、別に『会社に合わせろ』ということではなくて、何か間違ったときに素直に認められるような能力というのを、僕らは見ている」(堀江氏)

ジラフの麻生氏は、スタートアップとしての「採用のフェーズが変わってきた」という実感があるようだ。「創業から1年半ぐらいまでは、精神論的だが(基準が)『頑張れる人』みたいな感じだった。起業家プラス5〜6人、というときには、その温度感を一緒に持ってやれる人かどうか、というところを見ていた」と言う麻生氏。

「そこから規模が大きくなるにつれて、不器用な人というか『必殺技は持っているんだけど、今いる会社では上司から好かれない』とか、ちょっと変わった人が入ってくるようになってきた。ジラフではそういう人が多いので、みんなお互いに認めあっている、という環境になってきた」(麻生氏)

フェーズが変わったタイミング、きっかけについては「資金調達をして、大きめのオフィスに移転して、人をどんどん採用していくという中で、業務を回すために『頑張れない人』、定時に来て定時で普通に帰る、という人を入れていく時期は来る。今はそういう時期だな、と思っている」と麻生氏は言う。

また、倉橋氏や堀江氏と共通する点として「ポテンシャルがある人、過去の経験にとらわれず、会社が求めていることの説明を素直に受け止めてもらえて、うまくいかなくてもすぐに違う挑戦ができる、試行錯誤できる人を採用するようにしている」と麻生氏は言い、「そういう人は若い人に多い。今は20代の人を採用させてもらっている」と話している。

「ただ、20代は能力差が結構あって。すごく優秀な人を1人採るのと『普通に仕事ができます』という人を2人採るのでは、優秀な人を1人採った方がいい。そういう人は他の人も連れてこられるし、正の循環が回るというイメージがある。そこの質をどう担保するのか、ということも同時に意識はしている」(麻生氏)

リファラル採用、それぞれの「巻き込み方」「口説き方」

続いては、リファラル採用について。それぞれ、知り合いをどう巻き込むのか、成功している事例を各社に聞いた。

堀江氏は「自分事として考えること」が大切だという。「経営者は自分事として考えないことが多いけれど、もし自分が社員だったとして、この会社に本気で親友を誘えるか、と考えると、それは『この会社が好きかどうか』にかかっている。あとは、業績・社風的に信頼できるかどうか。僕らは、業績を上げることはもちろんだが、サービスの魅力を上げることなどで、まずは社員に好きになってもらうように頑張ることが大事」(堀江氏)

好きになってもらったその後は、社員の中で紹介を頑張った人を積極的に表彰し、Slackなど全社員の見えるところで称賛する文化を作ったことで、リファラル採用が加速した、と堀江氏は説明する。

「僕は学生起業家だったので、(自分の周りには)まだそれほど人材がいない。社員経由のリファラル採用のほうが最終的には増えてくると思う。また、1人の知り合いよりも100人の知り合いを探した方が圧倒的によいので、自分の紹介での採用もあるが、社員の紹介もかなりある」(堀江氏)

麻生氏は、基本的には自分がつかまえてきた人材が多い、と言う。「僕の場合は、採用したい人は2年かけて追いかける、ということをやっていた。3カ月おき、半年おきに飲みに行ったり、ごはんを食べたりして、定期的に会う。これはDeNA(創業者)の南場さんが『SHOWROOM』プロデューサーの前田さん(現在はSHOWROOM代表取締役社長の前田裕二氏)を採用するときに数年かかった、という話を聞いたのだが、それを真に受けてやっている感じだ」(麻生氏)

実際に2年かけて採用したエンジニアや、半年以上かけて口説いて入社した人事責任者が、現在ジラフでは働いているそうだ。

面談からどう踏み込ませるかについては、社員に会わせることが強い武器として機能している、と麻生氏は説明する。「うちは現場に自信があるので、口説いた上で『じゃあ、実際働く人に会いに来てみなよ』と来てもらい、社員に会わせるとだいたい一緒に働きたいと思ってもらえる」(麻生氏)

またジラフでは比較的早い段階で、CxO経験者を採用している。その手法について麻生氏はこう話している。「優秀な人ほどキャリアアップを真剣に考える。スタートアップに挑戦したいが、考えた結果、不安が大きくなることも。そういう方に対しては、今のキャリアから次のキャリアに進むときに『ステップアップしてるよね』という状態をちゃんと作るために、ポストや部署を用意する。その代わり、『そのポストで、これ以上の人は採れない』というギリギリの一番いい人を採用する、ということは毎回やっている。そこは妥協しているつもりはない」(麻生氏)

スタートアップでは「今後それよりいい人を採れなくなる」ということを恐れて、ポストを用意しない起業家も多いが、麻生氏は「僕はちゃんとポストを用意し、ストックオプションなども提示して、僕らの会社に普通なら来ないような人を取り込む、ということを連続的に繰り返している」と言う。

倉橋氏はリファラル採用について「仕組み化するのが難しい」と述べている。「社員が少ないときは一通り候補に当たり終わると、どうしよう、みたいな話になるので、あまり効率的な仕組みではない。ただ、僕らの場合は社員の平均年齢がだいたい30〜32歳ぐらい。そこで『日本酒を飲みまくる会』など、お酒の力を借りて、ガードが弱くなったところで仲良くなるようにしている(笑)。月に1〜2回、外の人を気軽に呼んでこられるような場を用意する、これだけはちょっとした仕組みとしてやっている」(倉橋氏)

もうひとつリファラルに効くテクニックとして、倉橋氏は「今のフェーズまでは、現実的な話を社内でもあまりしない、というのを貫いてきた」と言う。「夢のある話の方が、みんな楽しそうに話すので、外にも伝播しやすい。いざその話が外に伝わって新しい仲間が増えたときにも、はじめに夢で共感している場合、現実化するところでも人はなかなかぶれない。だから入社した後も安定しやすい」(倉橋氏)

こうして、とにかく夢を社内全員で語るようにしている、というプレイドで、倉橋氏が「ここまで来たか!」と思ったエピソードがあるそうだ。「採用候補者に『みんなものすごいレベルで夢を語りますね。これって事前に準備しているんですか?』と質問された。それほど、気持ち悪いぐらいに、それぞれの口から夢が出てくる。そういう会社って強くなれるんじゃないかな、と信じている部分はある」(倉橋氏)

ここで寺田氏から「メンバーと一緒に採用にチームとして取り組んで動き、ありがたかったこと、うれしかったことは?」と質問があった。

麻生氏は「僕の場合は学生起業ということもあり、中途採用のときに『スタートアップに転職するのはいいですよ』と僕の口から言うと、ポジショントーク感が強くなる。それを大手企業から転職してきた人に説明してもらうと、説得力が変わる、ということはある。また、口説きに行く、というやり方は一般の従業員では難しいケースが多いが、僕以外でもCFOなど、目的意識が強い人間が説得して『逃さず採りに行く』という採用ができる人がいるのは、すごく助かっている」と言う。

また倉橋氏は、人事採用の責任者から日々聞いていた苦しみとして「求人票を作れない」という話を紹介。「要は『こういうことができる人が欲しい』という求人を一切出してきていないわけで、エージェントも困るだろうし、人事採用担当もこのギャップを埋めるのは大変だったと思う。けれども、会社の成長も含めて、時間をかけながら、採用責任者がエージェントとコミュニケーションをしっかり取ってきてくれたおかげで、『変だけど、めっちゃいい会社があります』という感じで紹介してもらえるようになった。難しかった部分ではあるが、突破できると逆に強みになるのではないか、という気が最近ではしている」(倉橋氏)

採用失敗エピソード、やっておけば良かったことは?

この後は、会場からの質問で「一番の採用失敗エピソード」を各社に教えてもらった。

麻生氏は「経験者を採りたい時期に中途採用をしたが、あまり一緒に頑張ろう、という気持ちでやってもらえなかった事例があった」ことを紹介。「今では明確な採用失敗というのは起こらなくなってきた。社内で選考フローも作り始め、『こういう項目を見ましょう』というのも体系化されてきている。あとは、必ずどんな人でも僕が面接に1回は入るようにし、自分で見て『この人なら』という人だけを採るようにしている」(麻生氏)

堀江氏からは、採用の失敗ではないが初期メンバーとそれ以外のメンバーとのギャップについての悩みが打ち明けられた。「最初の10人がものすごくファイタータイプというか、タフな人間が多かった。となると後半に入ってくる100人目、120人目とかが、それを見てビックリしてしまう。そういうわけで、あらかじめ『めっちゃ働いている人もいれば、18時に帰ってる人もいるよ』とある程度、現実とのすりあわせが僕らにも必要なのかな、とは思っている」(堀江氏)

倉橋氏も失敗ではないが、やっておけば良かったこととして、採用すべき人材の順序・時期について述べた。「僕のようなビジネス系、マーケティングやディレクション系人材の採用は、スタートアップでも比較的困らないケースが多いと思う。だが、難しいのがエンジニアやデザイナーの採用。特に僕たちのようなB2Bのプロダクトの場合、デザイナーが一番難しい。うちはエンジニアについては初期から良い人材がいて助かっているけれども、デザイナーとして中核になる人間を、社員数5人10人のフェーズで1人でも採れていたら、立ち上がりはもう少し早かったのではないか、という気はする」(倉橋氏)

最後に、寺田氏からの「採用PRとして、こういうことを発信すべき、また注意すべきという点は?」との問いにも各社に答えてもらった。

堀江氏は、四半期に50人を採用したときの話として「僕自身が一番、社内だけでなく社外にも夢を語りまくっていた」と話す。「社長の思い、ビジョンを元々知った状態で面接に来てもらう、ということをとにかく心がけている。採用の確度も高まるし、社長自身が発信することは大事だ」(堀江氏)

麻生氏からは「僕らはストレッチして、優秀な人を採っていくようにしている。けれども優秀な人ほど、いろいろなことがすぐにできてしまい『褒められるのが当たり前』という環境になって、仕事が面白くなくなっていくことが多い」と“良い人材”を採用することに対しての注意点を述べた。

「僕らの環境では『いろいろなところで褒められてきた人たちが真剣にやらないといけない』という状況にするようにしている。30歳になろうという人たちが、真剣にキャッチアップしていく、という環境を作っていこうと思っているし、そこに挑戦的な気持ちで参加できる人に来て欲しい」(麻生氏)

倉橋氏は「採用広報、PRは正しく伝えることだと思う」と言う。「採用広報、PRを考え始めると、伝え方を間違えそうになるというか、自分たちらしくない伝え方や、いいところを探そうとして、そんなに大した話ではないのに外に出そうとしてしまうなど、自分たち自身が迷い始めることがいろいろある。でも、プロダクトも採用も、自分たちの努力以上のものは外には伝わらない。だから良く思われたいんだとしたら、本当に努力するしかないかな、と思っている」(倉橋氏)

買取価格比較サイト「ヒカカク!」や「Peing-質問箱」提供のジラフが7000万円を調達

買取価格比較サイト「ヒカカク!」や匿名質問サービス「Peing – 質問箱(ペイング)」などを提供するジラフは3月1日、アドウェイズと梶原大輔氏および匿名の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により、約7000万円を調達したことを明らかにした。

合わせて個人投資家として参加している梶原大輔氏が同社の技術顧問になることも発表している(梶原氏はヤフーを経てグリーに入社後、執行役員に就任。インフラストラクチャ本部長や開発本部長を歴任した人物)。

今回の調達はジラフが2017年11月に実施したシリーズBの追加増資という形で、調達金額は総額で約5億円となる。シリーズBでジラフに出資した投資家陣は以下の通りだ。

  • アイ・マーキュリーキャピタル
  • アドウェイズ
  • アドベンチャー
  • 梶原大輔氏
  • グリー
  • 佐々木俊介氏
  • ドリームインキュベータ
  • メルカリ
  • ベンチャーユナイテッド
  • その他個人投資家1名

アドウェイズ、ドリームインキュベータ、佐々木俊介氏はシリーズAに続いて2度目の出資となる。

なおジラフは2017年8月に「CASH」運営のバンクから数百万円規模の資金調達をしているほか、同年3月に1.3億円を、2015年10月にも複数の投資家から4120万円を調達している。

これまでTechCrunch Japanでも紹介してきたように、ジラフでは2014年9月にリリースしたヒカカク!を始め、修理価格比較サイトの「最安修理ドットコム」や中古スマホに特化したフリマサイト「スマホのマーケット」、スマホの即時買取サービス「スママDASH」などリユース領域で複数のサービスを展開してきた。

昨年12月には匿名質問サービスのPeingを買収。累計120万アカウントを突破し、2018年2月にはスマホアプリの提供も始めている。

ジラフでは今回の調達を踏まえて引き続き各事業の成長を目指す方針。加えて同社代表取締役社長の麻生輝明氏によると、現時点で詳しい内容は非公開だが「直近で即時買取の横展開を考えている」とのこと。

これまでもひとつのプロダクトに固執するのではなく、機会があれば積極的に新規事業にチャレンジしてきたジラフ。近いうちにまた新たなサービスが生まれるのかもしれない。

“スマホの即時買取”サービス「スママDASH」をジラフがリリース、自宅に眠るスマホを手間なく現金化

目の前にあるアイテムが一瞬でキャッシュに変わる――このコンセプトで昨年大きな話題を集めた「CASH」。その最大の特徴ともいえる”即時買取”というフォーマットは、今後様々な分野を変えていくのかもしれない。

スマホのフリマサイト「スマホのマーケット」を提供するジラフは1月15日、同サイト内で不要になったスマホ端末の即時買取サービス「スママDASH」をリリースした。

スママDASHは「不要になったスマホ端末を処分したいけれど、面等な手続きはしたくない」というユーザー向けのサービスだ。各ユーザーはこれまで通りフリマ形式で自分の希望する金額のもとスマホを販売するだけでなく、スママDASHを通じて手間暇かけずに即現金化することも選べるようになる。

同サービスでは買取依頼をしたい端末の情報を入力し、写真を撮影することで査定申込がスタート。即座に買取金額が提示される。集荷日を設定した後、本人確認に必要な個人情報資料を提出。内容に不備がなければ査定額が振り込まれる仕組みで、未成年は利用できない。

1日あたりの買取り金額は100万円、1台あたりの買取り金額は4万円が上限。金額の査定にはスマホのマーケット、買取価格比較サイト「ヒカカク!」といったジラフが提供するサービスを通じて培ってきた知見を活かすという。

また端末に残っている個人情報の流出を防ぐため、スマホのマーケットで提供しているデータ削除オプション(端末に保存されている各種データをジラフが消去)を無料で提供する。

ジラフ代表取締役の麻生輝明氏によると「CASHやメルカリNOWなどが立ち上がってくる中で、市場の面白い変化のタイミングに絶好の位置にいたので、始めるしかないという判断になった」のがスママDASHリリースの背景だ(ちなみにCASH運営のバンクメルカリはともにジラフの株主だ)。

スママDASHで買取った端末については、ヒカカクの運営を通じてできた中古業者とのコネクションを通じて収益化するほか、スマホのマーケットのラインナップ充実に活用することも検討するという。また同サービスでは画面割れや水没などのジャンクスマホの買取にも対応。こちらは業者間取引などで収益化することを想定している。

「今後は『スマホのマーケット』のブランドを広げていきたいが、スママDASHだけでも大きなインパクトがありうる。特にスマホは売りたい人のニーズが強く(家に埋蔵されている)、これを素早く手間なく現金化できるというコンセプトはユーザーに刺さるのではと考えた。またスママDASHを経由して市場に流れた端末を、個人の方が非常に安く購入できる可能性もある。そうなればただのCtoCマーケットプレイスではなく、即時現金化によってCtoCのマッチングの流動性を上げるという新しい試みにもなりうると考えている」(麻生氏)

ローンチ1ヶ月で月間2億PVペースの「Peing – 質問箱」をジラフが買収、世界展開目指す

ここ数ヶ月、匿名質問サービスがちょっとしたブームになっている。その火付け役となったのは以前TechCrunchでも紹介したサウジアラビア発の「Sarahah(サラハ)」。自分に寄せられた質問に対する回答を、Twitterやインスタグラムのストーリーで公開して楽しむ。

ただ最近ではSarahahに似た「Peing – 質問箱(ピング)」が急速に利用者を増やし盛り上がりをみせている。同サービスは1人の日本人がわずか6時間で作り、11月22日にリリースされたばかり。1日当たりのPVが800万を超える日もあるなど、1ヶ月で月間2億PVを目指せる規模のサービスになっている。

そんなハイスピードで成長するPeingだが、売却に至るスピードも非常に速かった。

買取価格比較サイト「ヒカカク!」やスマホ特化型フリマ「スマホのマーケット」などを提供するジラフは12月21日、Peingを買収したことを明らかにした。同社はすでにPeingの開発・運営者せせり氏からPeingを譲受しており、今後はポケラボの創業者でジラフ執行役員の佐々木俊介氏が事業責任者に就任。佐々木氏のもとでサービスの拡大を目指していく。またせせり氏はアドバイザーとして同社に参画するという。

Peingは質問箱に届いた質問に対する回答がTwitter上に投稿され、広がっていく

1人で作ったサービスは1ヶ月で月間2億PVペースに成長

「どんどん増加するユーザーやアクセスに個人レベルで対応するのに限界を感じ、自分で運営するより組織的に運営できる所に託した方がユーザーさんも幸せになると思い売却を決めた」—— せせり氏が1ヶ月前に立ち上げたばかりのPeingを譲渡した理由だ。

現在26歳のせせり氏は19歳の時から7年かけて、1人で30個のWebサービスを開発し売却も経験。これまでの経緯を記したブログ記事はかなり拡散されたため、実際に読んだ人もいるかもしれない。

この記事をきっかけにせせり氏のもとには、「流行るサービスの作り方」に関する質問が増えた。そこで参考になるサービスを実際に作って説明しようと、開発したものがPeingだ。同サービスはSarahahに似ているが、Twitterログインを取り入れ登録時の手間を削減。画像投稿とリンク投稿を選べるようにしてTwitterのメディア欄を圧迫しないなど、使いやすい設計を意識されている。加えて日本語に対応していることもあり、国内でユーザーが急激に増加した。

以下はPeingの開発に着手してから1週間の推移だ(日付は全て2017年11月)。

  • 21日:「Peing – 質問箱」の開発に着手
  • 22日:サービスの公開(1000PV/日)
  • 23日:3000PV/日達成
  • 24日:1万PV/日達成
  • 25日:5万PV/日達成
  • 26日:10万PV/日達成(日本トレンド4〜5位)
  • 27日:40万PV/日達成(日本トレンド1位)
  • 28日:60万PV/日達成(TwitterAPI一時停止)

当初はクリエイターやIT業界界隈のユーザーが中心となっていたが、徐々にユーザー層が拡大。お笑いコンビNON STYLEの井上裕介さんなど著名人も利用し始めている。現時点でアカウント数は80万を超え、リアルタイムで2〜3万人が閲覧し、12月の月間PVも2億に到達するペースだ。せせり氏が個人で運営するには負担が大きく、今後のサービス拡大も見据えて売却に至ったという。

TwitterのDMから始まりほぼ2日でディールが成立

ジラフ代表取締役の麻生氏によると、上述したブログ記事をきっかけにせせり氏と一度話をしたことがあったとのこと。その時はPeingが今ほどの規模になっておらず買収の話は一切なかったが、その後せせり氏がTwitter上でnanapi創業者の古川健介氏に事業譲渡の可能性について打診している現場を発見。「(ジラフで)買収するチャンスもあるのではないかと考えた」という。

「匿名質問サービスというフォーマット自体は真新しいものではないかもしれない。ただフリマアプリを筆頭に個人間をつなぐサービスが注目され、普及している時代だからこそ広がっていく可能性もある。ライトなサービスなので海外展開もスピーディーにできるし、チームで開発・運営することで機能面などもっとよくできる部分も多い」(麻生氏)

写真左が「Peing – 質問箱」開発者のせせり氏、右がジラフ代表取締役の麻生輝明氏

事業譲渡について実際に話し始めたのは12月17日の夜。Twitterのダイレクトメッセージで麻生氏から提案し、2日ほどで大まかな契約が成立したそうだ。買収金額については非公開だが、過去に面識があり一定の信頼感があったことに加え、スピード感も決めてとなって折り合いがついた。現状Peingではマネタイズを強化していないがすでに収益も出ている状態で、このまま伸ばせれば「半年程で回収可能な額での買収」(麻生氏)だという。

後発だがSarahahに比べてユーザー登録の手間が少なく、うまくバイラルの波が作れれば一気に拡大できるチャンスもあるというのが麻生氏の見立てだ。海外からの流入もあるが“質問箱”では意味がわからないのが現状のため、アジア圏や英語圏から他言語対応を始める方針。合わせてバイラルを生み出す仕組みの研究や、Twitter以外のSNSに合わせた横展開の検討も進めていく。

ヒカカク!やスマホのマーケットなどジラフの既存事業とPeingの親和性は決して高いとはいえないだろう。ただその点については「リユース領域しかやらないということはなく、枠にはめすぎずにチャレンジの機会があればやりたい」というのが麻生氏の回答。今回の買収についても既存株主からの異論はなかったそうだ。

「C向けのサービスですぐに世界展開を狙えるサービスはそんなに多くはない。そのようなチャンスを得られたことをポジティブに捉えている。まだまだ施策としてやりきれてない部分も多く可能性はあると考えているので、挑戦していきたい」(麻生氏)

買取価格比較サイト「ヒカカク!」運営のジラフがミクシィ子会社やメルカリ等から4億円調達——月間140万人以上が利用

買取価格比較サイト「ヒカカク!」やスマートフォンの修理価格比較サイト「最安修理ドットコム」、スマホ特化型フリマ「スマホのマーケット」を提供するジラフは11月2日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資により総額4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回ジラフに出資したのはアイ・マーキュリーキャピタル、グリー、メルカリ、アドベンチャーに加え既存投資家であるドリームインキュベータとポケラボ創業者でジラフ執行役員の佐々木俊介氏だ。

ジラフは8月に「CASH」運営のバンクから数百万円程度の資金調達をしているほか、3月にアドウェイズ、アナグラム、個人投資家から1.3億円を、2015年10月にEast Ventures、TLM、個人投資家から4120万円を調達している。それ以前にもシードラウンドで資金調達をしていて、今回の調達により同社の資本金は約6億円となる。

「ヒカカク!」の月間利用者数が140万を突破

2014年9月に開始したヒカカク!が好調で月間利用者数は140万人を突破。3月の時点では100万人を突破したという話だったので、約半年で1.5倍近く伸びたことになる。

ジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏いわく「シブい事業」である修理価格比較サイトの「最安修理ドットコム」も同様に伸びていて、月間利用者数は30万人を超えた。会社全体では3月時点ですでに黒字化をしているという話だったが、事業全体でみても約半年で2倍近く成長しているそうだ。

直近の成長について麻生氏は「SEO経由でのトラフィックの伸びだけでなく、営業サイドやマーケティングサイドなど含めて組織として利益を出せる体制、スピーディーに事業展開できる体制が整ってきたのが大きい」と話す。

ジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏

ヒカカク!では査定申込数(見積もり数)が重要な数値となっているが、トラフィックの増加に加えて申込率も増加したことで全体の数値が底上げされているそうだ。麻生氏の話では申込数を最大化するうえで、特にこの半年は細かいサイト改善など含めた申込率の改善施策を実施。結果としてこの申込率が1.5倍〜2倍近くになったという。

申込率を押し上げる要因のひとつとなったのが、一括で最大5社の見積もりが出せる「一括査定機能」だ。「ユーザーが自分で買取業者を選ぶのはハードルが高い。査定したい商材や住んでいるエリアを入力することで、ニーズに合った店舗の結果が複数返ってくるようになった」(麻生氏)。これによりユーザーの使い勝手が向上し、査定申込をする率が高くなった。

スマホ特化型フリマもリリースし、C2C領域も拡大

冒頭でも紹介した通り、ジラフは8月にCASH運営元のバンクから資金調達をしている。今後はCASHとヒカカク!の連携、協業も進めていくほか、買取事業者向けのマーケティング支援や電話代行といったサービスも充実させる予定だ。

とはいえ既存事業についてはかなり自走できる状態であり、今回調達した資金は主に10月に開始したスマホ買取サービスの「スマホのマーケット」に使うという。スマホのマーケットはスマホに特化したC2Cサービスではあるが、ジラフが間に入って動作チェックや品質サポート、個人データの削除などを行い安全面を担保していることが特徴だ。

今回のラウンドには複数の事業会社が新たに参加しているが、既存の価格比較サイトの伸びを評価している投資家と、C2Cの新サービスを評価している投資家がいるそう。ちなみにメルカリはスタートアップへの投資スキームである「メルカリファンド」を7月に打ち出しており、今回の発表に合わせてサイトも立ち上げている。先日自社の傘下に入れたLabitの「ブクマ!」のように、特化型のC2Cサービスとしてジラフに興味を持ったということだろう。

スマホのマーケットでは購入した端末の修理補償サービスなど未着手だった機能の開発から始めるというが、その先の展開について麻生氏に聞くと「単なるフリマサービスに見えるかもしれないけれど、そこを起点にいろいろな領域に広げていけると考えている」と話してくれた。

「CASH」運営のバンクが売買価格比較サイト「ヒカカク!」へ出資、サービス連携へ

バンク代表取締役兼CEOの光本勇介氏(左)とジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏(右)

サービス再開、そして約2時間で1000万円のキャッシュ化完了と、何かと話題を振りまいている買取アプリ「CASH」。その運営元のバンクは8月25日、買取価格比較サイト「ヒカカク!」運営のジラフへ出資したことを明らかにした。金額は非公開だが数百万円程度。ジラフは今回のラウンドで数千万円規模の調達を目指す。

ヒカカク!は2014年9月スタートの二次流通品の買取価格比較サイト。スマートフォンやカメラ、ゲームソフトなどの買取価格を比較・検索することができる。現在、月間利用者数は120万人を突破。買取商品数は90万件以上、買取口コミ数は1.5万件以上の日本最大級の買取比較サービスとなっている。ジラフによると、月間流通総額(見積もりから推定成約率を加味した金額。見積もり自体はもっと大きい規模で行われているとのこと)も1億円を超えているという。

今後はヒカカク!が持つ各種二次流通企業の買取価格データをCASHの査定などに活用していくほか、CASHとヒカカク!の連携、協業を進めていくとしている。現在CASHでキャッシュ化(買取)に対応するのはファッションアイテムが中心だが、今後は他ジャンルに拡大する際、ヒカカク!の持つ買取価格データは査定額の算定などにも影響する貴重なデータになるだろう。なおこの発表に先かげて、オークション売買価格データを持つオークファンがバンクとの提携を発表している

買取価格比較サイト「ヒカカク!」運営のジラフが1.3億円の資金調達、ポケラボ創業者が参画

左から)ジラフ執行役員の佐々木俊介氏、ジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏

買取価格比較サイト「ヒカカク!」やスマートフォンの修理価格比較サイト「最安修理ドットコム」を展開するジラフは3月15日、アドウェイズアナグラムおよび個人投資家(フリークアウト・ホールディングス代表取締役社長の佐藤裕介氏ほか2人)に加え、新たに執行役員として参画する佐々木俊介氏などから合計1.3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回調達した資金はプロダクトの開発強化および、広告に充てるとしている。

月間利用者数が100万人を突破、事業は黒字化を達成

ヒカカク!のサービス開始は2014年9月。リリース以降、順調にユーザー数を伸ばし続け、現在は月間ユニークユーザー数は100万人を突破。会社も黒字化を達成しているという。ここまでの歩みを振り返り、ジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏は「SEOで流入数を増やしつつ、サイト内のコンテンツを充実させていき、トランザクションしてもらえるような仕組みを作っているのが大きい」と言う。

例えば、自動車買取領域では中古車買取・査定サイト「Goo買取」を運営するプロトコーポレーションと業務提携を結んだり、バイク買取領域では一括査定サイト「バイク比較.com」を運営するインターファームと業務提携を結んだり、取り扱う商材は広げていってるそうだ。

「ヒカカク!はもともと、買取価格を比較し自分でどこの買取業者に売るのかを選んで、見積もりを出す形式を想定していたのですが、運営していく中で自分で買取業者を選ぶのはハードルが高いな、と感じました。買取価格の比較以外にもユーザーニーズに適した機能やサービスは提供していきたいと思っています」(麻生氏)

今後は一括で最大5社の見積もりが出せる「一括見積もり機能」や、ユーザーが売りたいものを記述するとその商品を売る時に最適な買取業者や宅配買取サービスを過去のレビューや過去の実績に基づいてリコメンドし、レポーティング・申込代行を行ってくれる「おまかせ買取機能」などの提供を予定しているという。

それ以外にも、ヒカカク!はGMOイプシロンと業務提携し、買取業者向けに振込手数料や配送料の削減サービスの提供も行っていく予定だ。麻生氏は「取業者が仕入れて売る、というバリューチェーンの中で関われる部分には関わっていきたい」と語り、買取業者の負担を減らしていくことでヒカカク!内に良質な買取業者を獲得していきつつ、ユーザーの選択肢も増やす。これにより、プラットフォームの価値を高めていくことを狙っているそうだ。

「将来的には提携先を開拓していき、買取代金が振り込まれるのではなくポイント制にして次の消費に利用してもらえるようにしたり、決済の領域に入っていったり、経済圏になることを目指していきたいです」(麻生氏)

ちなみに、以前指摘されていた商標権の問題は解決し、口コミの削除依頼には適宜対応しているという。

佐々木氏の知見を活かし、組織力を強めていく

以前、TechCrunch Japanが取材した際、資金調達に併せて柴田雅人氏がCOOとして参画していたが、今回は佐々木俊介氏が執行役員として参画している。念のため、佐々木氏について紹介しておくが同氏はポケラボ創業メンバーの1人。最近ではトレーディングカードのフリマアプリ「magi(マギ)」の開発を手がけていた。

麻生氏によると、ビジネスマッチングアプリのyentaで知り合い、話をしていくうちに意気投合し、共に会社を経営していくことになったと言うが、なぜ佐々木氏はジラフにジョインすることにしたのだろうか?

「個人的に中古(リユース)市場に注目していて、中でもCtoCのサービスを手がけていたのですが、寡占化が進んでいて勝者がある程度決まっている。一方で、CtoBの領域は明確な勝者が決まっておらず、今後の伸び代もある。実際に麻生さんと話をする中で、ヒカカク!」というサービスが面白いなと思いましたし、会社の雰囲気も若くてエネルギッシュ。ポケラボを創業したときのような経験をまた味わえればいいな、と思いジョインすることにしました」(佐々木氏)

今後、佐々木氏のポケラボを数百人規模へと組織を成長させ、エグジットした経験をもとに、ジラフは開発力強化および経営基盤の強化の実現を目指していく。