トヨタ、自動運転スープラがコースをドリフト滑走する動画を公開―非常時安全技術として開発中

トヨタ、自動運転スープラがコースをドリフト滑走する動画を公開―非常時安全技術として開発中

Toyota

Toyota Research Institute (TRI)は、プロドライバーのようにFR駆動方式の自動車でドリフト走行するAI自動運転システムを開発しています。その理由は、このロボットカーでD1グランプリに出場するため…ではもちろんなく、車が不意にスピンモーションに入ってしまったときに、いち早く自動運転システムが車の制御を取り戻せるようにする危険回避行動を可能にするためです。

テスラは交差点で多くのドライバーが一時停止標識で完全に停止しないのを見て、FSDベータソフトウェアにそれをマネするように教え込みました。それは自動運転システムに人間と同じように運転させようという発想にとらわれて、安全とは何かを見誤ってしまった例と言えます。

一方トヨタは、人間のドライバーと同じように運転する自動運転システムという発想は同じながら、トヨタは安全の確保のためにドリフト走行という高等テクニックを自動運転システムに教え込んでいます。

ドリフト走行といえば某マンガ/アニメに影響された人たちが大好きな、わざと車を横滑りさせてカーブを曲がっていく走法。しかし、自動車ラリー競技での走り方を見ればわかるように、ドライバーに力量があれば、高い速度で急カーブに進入しても難なくその場をクリアでき、また危機回避にも使えるテクニックとなります。

公開された動画では、改造されたトヨタ・スープラを使ってテストコース上のパイロンやその他障害物を自動的にドリフト走行でかわしていく様子が収められています。運転席は無人ではなく、生身のドライバーが搭乗しています。ただこれはあくまで非常時のためであり、ドリフト走行中もドライバーはハンドルを握らないままドリフト走行をキメています。

TRIは1年程前からスタンフォード大学のダイナミック・デザイン・ラボと共同でこのプロジェクトを開始しました。

研究者は「濡れていたり何らかの理由で滑りやすい路面に直面したとき、プロのドライバーならドリフトという選択ができるかもしれませんが、私たちの多くはプロドライバーではない」とし「だからこそ、TRIはクローズドなテストコースで障害物を識別し、自動的にドリフト走行でそれを回避する車両をプログラミングしている」のだと述べました。

この技術によって、たとえば、雪道や橋梁の凍結した路面で車が勝手に横滑りを始めたときに、自動運転システムがドリフトによって車をコントロールし、衝突を回避するといったことが可能になると想定されます。

TRIのスープラには、コンピューター制御のステアリング、アクセル、クラッチ、トランスミッション、ホイール個別のブレーキなどが搭載されており、これらを駆使してシステムは自動的にドリフト状態を発生させ、それをコントロールします。またフォーミュラ・ドリフト仕様に近いサスペンション、エンジン、トランスミッション、安全装置を使用してデータ収集に役立てています。

もちろん、安全なテストコースでわざとドリフト状態を生み出して制御するのと、狭い上に周囲に何があるかわからない公道でスライドした車を建て直すのとでは様々な条件が異なり、たとえばトヨタの次の世代の車が自動運転とドリフト走行を披露するようになるかと言えばそんなことはありません。しかし、トヨタは、車の能力の限界を超えた極限状態で「道路上での人間の能力を増幅」自動運転技術の研究を続ける予定です。

ちなみに、トヨタ・TRIは2016年に「運転中に事故に至りそうになった瞬間にステアリングをドライバーから引き取り、回避行動をとる」Guardian Angelなる自動運転機能の開発を発表していました。今回の自動ドリフト機能は、そのDNAを受け継いで開発されている技術と言えそうです。

(Source:ToyotaEngadget日本版より転載)

スタンフォード大学のヤモリに着想を得たロボットハンドが、ゆで卵や果物を(つぶさずに)掴む

スタンフォード大学は、ヤモリに着想を得たロボットハンドを開発し、長年かけて大きく進化させてきた。今年5月には、この「ヤモリグリッパー」の1つのバージョンが国際宇宙ステーションにも送り込まれ、デブリの収集や衛星の修理などの作業を行う能力がテストされた。

米国時間12月15日の「Science Robotics(サイエンス・ロボティクス)」に掲載された論文で、同大学の研究者たちは、この技術の地球向け応用例として、潰れやすい物体を掴むという能力を実証している。

硬いロボットハンドにとって、このような作業は長年の課題であり、柔らかいロボットグリッパーなど、これまで様々なソリューションが生み出されてきた。

今回発表された「FarmHand(農場労働者)」は、人間の手の器用さとヤモリのユニークな把持能力の両方からヒントを得た4本指のグリッパーだ。後者に関して、スタンフォード大学は、その吸着力のある手足の表面では「分子の外側にある電子の位置の微妙な違いから生じる弱い分子間力であるファンデルワールス力という微小なはためきを介して、強い保持力を生み出している」と述べている。

同大学のチームでは、この問題を「エアルームトマト問題」と呼んでいる。一般的なグリッパーは、同じような大きさの硬い物体を次々と拾い上げる反復作業に適しているが、今回のテストで、FarmHandはブドウの房、ゆで卵、バスケットボール、皿などを掴み上げることに成功した。

「ロボットの手が握力把持と精密把持をするのなら、その間にあるすべてのことができるということを示しているわけです」と、「生物模倣と器用なマニピュレーションに関する研究室」の卒業生であるWilson Ruotolo(ウィルソン・ルオトロ)氏は語る。「私たちが取り組みたかったのは、器用さと強さを同時に兼ね備えたマニピュレーター(ロボットハンド)をどうやって作るか、ということです」。

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画像クレジット:Stanford University
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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

慶応義塾大学、柔らかく伸縮性のある半導体デバイスで世界で初めて高周波数13.56MHz駆動に成功

慶応義塾大学、柔らかく伸縮性のある半導体デバイスで世界で初めて高周波数13.56MHz駆動に成功

慶應義塾大学は12月9日、柔らかく伸縮性のある半導体デバイスを、世界で初めて13.56MHzという高周波数で動作させることに成功したと発表した。伸縮性のある半導体デバイスはすでに発明されていたが、動作周波数は100Hz程度と低く実用化の壁になっていた。13.56MHzは交通系カードや携帯電話の無線充電などに使われる、とても重要な周波数だ。

慶應義塾大学理工学部電気情報工学科専任講師の松久直司博士と、スタンフォード大学化学工学科のポスドク研究員(研究当時)シミアオ・ニウ博士、ゼナン・バオ教授による研究グループは、薄いゴムのように肌に密着する柔らかい電子デバイスを使ったウェアラブル機器の実現につながる、柔軟で伸縮性のある半導体デバイスを開発した。これは、13.56MHzで駆動する伸縮性ダイオード。元の長さの1.5倍にまで引き伸ばしても、何度伸縮を繰り返しても、壊れることなく電気的特性が維持される。

開発の決め手になったのは「高周波駆動用に精密にチューニングされた様々な新しい伸縮性電子材料」だという。たとえば、割れやすい高分子半導体の化学構造の中に柔らかいシリコンゴムの化学構造を取り込んだり、導電性高分子材料や金属ナノ材料の一種である銀ナノワイヤなどの電子材料に伸縮性を付与し、電気特性が高周波動作の要件を満たすよう新しく設計した。

研究グループは、この伸縮性ダイオードを使ってセンサー・ディスプレイ・アンテナを備えた集積化したシステムを試作した。衣服に仕込まれたアンテナからワイヤレスで給電され、センサーの信号をリアルタイムでディスプレイ素子の色変化として表示する。こうしたデバイスは、肌に貼り付けても違和感なく使用できるため、長期間の生体情報の取得が可能となり、病気の早期発見などを行うヘルスケア分野のウェアラブルデバイスへの応用が期待されている。

慶応義塾大学、柔らかく伸縮性のある半導体デバイスで世界で初めて高周波数13.56MHz駆動に成功

心と体はどのように進化し成功するのか、スタンフォード大学がAI生物でシミュレーション

人工知能は、プログラムされた心を持ち、デジタルな空間に浮かんでいる実体のないものと考えられがちだ。だが人間の心は体と深く結びついている。今回紹介する、仮想生物がシミュレーション環境でタスクを実行する実験は、AIが心と体を与えられることで、何らかの恩恵を受ける可能性を示唆している。

スタンフォード大学の科学者たちは、私たちが未開の状態から道具を使う類人猿へと進化する際の、物理的・精神的な相互作用について興味を持っていた。脳が身体の機能から影響を受けたり、またその逆の現象も起きたりするのだろうか。実際には、これは以前から指摘されていたことだ(1世紀以上前から指摘されていた)。確かに、モノをつかむことのできる手を使うほうが、それほど分化していない付属器官を使うよりも、より早く物体を操作することを学ぶことができることは明らかだ。

同じことがAIにも言えるかどうかは、開発がより構造化されているので直ちにはわからない。とはいえ以下のような考えがもらたす疑問には説得力がある。つまり、AIが初めから世界に適応するように進化していけば、AIはよりよく学び世界に適応できるのではないだろうか。

今回科学者たちがデザインした実験は、何十年も前から進化アルゴリズムのテストに使われてきたシミュレーション環境に似ているところがある。仮想空間を設定して、そこにシンプルなシミュレートされたクリーチャー(生物)を配置する。この段階では複数の連結された幾何学的形状がランダムに動くだけだ。そんな千匹のうごめく個体の中から、一番遠くまでのたうちながら移動した10匹の個体を選び出し、そこから千匹のバリエーションを作り出して、それを何度も繰り返す。ほどなく、ひと握りの多角形が仮想表面を、まずまず滑らかに横切って歩くようになる。

しかし、それはもう古い話だ。研究者たちが説明するように、シミュレーションをより堅牢で可変的なものにする必要があった。単に歩き回る仮想的な生物を作るのではなく、それらの生物が行動をどのようにして学習したのか、そして他の個体よりも良く学習したり速く学習したりするものがあるのかを調べようとしているのだ。

それを確かめるために、研究チームは、以前のものと同様のシミュレーションを作成しunimals(ユニマルス、universal animal=「普遍的な動物」の意、果たしてこの用語が市民権を得られるかどうか)と呼ばれる生物たちを、まずは歩くことを学ばせるためにシミュレーションに投入した。このシンプルな形状たちは、球状の「頭」と数本の枝状の関節を持つ手足を持ち、それらを使っていくつものおもしろい歩き方を編み出した。ある個体はよろめきながら前進し、ある個体はトカゲのような関節歩行を身につけ、ある個体は陸上のタコを思わせるようなバタバタとした、しかし効果的なスタイルを身につけた。

見よこの動き!(画像クレジット:スタンフォード大学)

ここまでは以前の実験と同じだが、似ているのはそこまでだ。

これらのユニマルスの中には、起伏のある丘や低い障壁を乗り越えることが強いられる、いわば異なる母星で育ったものもある。そして次の段階では、これらの異なる地形出身のユニマルスが、しばしば言われる「逆境こそが適応力の母」という言葉が正しいかどうかを観察するために、より複雑な課題で競い合った。

論文共著者のAgrim Gupta(アグリム・グプタ)氏は「この分野の先行研究のほとんどは、単純な平地でエージェントを進化させてきました。さらに、環境との直接的な感覚運動の相互作用を通じて、エージェントの制御や行動が学習されていないという意味では、学習は行われていません」とTechCrunchに説明した。「この研究は初めて、段差、丘、尾根のある地形のような複雑な環境で、進化と学習を同時に行い、複雑な環境での操作を可能にするものです」。

各環境の上位10匹のユニマルは、新しい障害物の出現、ボールをゴールに運ぶ、箱を丘に押し上げる、2つの地点の間をパトロールするといった課題が与えられた。ここでは「グラディエーター 」(ローマの剣闘士)たちが、真にバーチャルな根性を発揮したのだ。変化に富んだ地形の上を歩くことを学んだユニマルは、平地で育ったユニマルよりも、新しい作業を早く覚えて上手にこなすことができた。

画像クレジット:スタンフォード大学

米国時間10月6日、学術誌「Nature」に掲載された論文で著者らは「要するに私たちが発見したのは、進化は学習速度の速い形態を急速に選択することで、初期の祖先が一生の後半で学んだ行動を、子孫が一生のうちで早い段階で発現させることを可能にしていることです」と述べている。

単に速く学習することを学んだだけでなく、進化の過程で、より速く適応し、より速く学習を生かすことができるような体型が選択されたのだ。平坦な場所では、タコのようにジタバタしても同じように早くゴールできるかもしれないが、坂道や尾根では、スピード、安定性、適応性に優れた体型が選択された。この体をグラディエーターの闘いの場に持ち込んでみると、苦境を乗り越えたユニマルスたちは競争に強かった。彼らの汎用性のある身体は、頭で考えたことを実践するのに適しており、ジタバタするだけの競争相手にすぐに大差をつけた。

3Dの棒人間がバーチャルな地形を疾走するGIFを多少楽しめること以外に、これは何を意味するのだろうか。論文によると、この実験は「環境の複雑さ、形態的な知性、制御タスクの学習可能性の間に、学習と進化がどのように協力して高度な関係を作り出すのかについて、科学的な洞察を得るための、大規模な仮想実験を行うための扉を開くものです」ということだ。

例えば、4本足のロボットで階段を上るような、比較的複雑なタスクを自動化したいとしよう。動きを手動で設計したり、カスタムメイドのものとAIが生成したものを組み合わせたりすることもできるが、一番の解決策は、エージェントが自分の動きをゼロから進化させることだろう。この実験は、身体とそれをコントロールする心を連動させて進化することに、潜在的に大きなメリットがあることを示している。

コーディングに精通していれば、自分のハードウェア上ですべての操作を行うことができる。研究グループが、すべてのコードとデータをGitHubに無償で公開しているからだ。そして、ハイエンドのコンピューティングクラスターやクラウドコンテナも用意しておこう。なにしろ「デフォルトのパラメーターでは、16台のマシンでコードを実行することを想定しています。各マシンが72個以上のCPUを持つことを確認してください」とのことなので。

関連記事:かくれんぼで遊んでいたAIが道具の使い方やルールの破り方を自分で発見

画像クレジット:Stanford

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(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

Apple Watchが心房細動以外の不整脈も検出できることを示す新たな研究結果

スタンフォード大学とAppleが2017年に実施した「Apple Heart Study」では、40万人を超える被験者の登録に成功し、この種の研究としては過去に実施された中でも最も大規模なものの1つとなった。継続的な研究により、Apple Watchは心房細動(AF)に加えて、その他の不整脈も検出できることが明らかになっている。Apple Watchは現在、心電図(ECG)センサーを追加したSeries 4アップデートにより、心房細動の検出と通知の機能をコアヘルス機能の1つとして提供している。

Apple Heart Studyの結果は、この機能の背後にある科学的根拠を証明している。Apple自身は、非常に正確な予測や実際の医療機器ではなく、自分の健康や心臓の健康に影響を与える可能性のある状態をより認識するための方法だと位置づけている。しかし何年も前からApple Watchユーザーの中には、心房細動の通知機能と医師によるフォローアップのおかげで無症状の問題を早期に発見できたという話が数多く確認されている。

今回のHeart Studyの追加調査では、収集したデータをさらに掘り下げ、Apple Watchから不整脈の可能性に関する通知を受けたものの、医療用心電図によるフォローアップ検査でAFが検出されなかった参加者の40%に、他の不整脈が存在していたことがわかった。これらの不整脈には、早発性心室複合体、非持続性心室頻拍などがある。これらの不整脈はごく一般的なもので、経験者の間では動悸として認識されることが多いが、特に早発性複合体は他の基礎疾患の指標となる可能性がある。

米国心臓協会の「Circulation Journal」に掲載された今回の研究では、通知を受けた後に心電図パッチを使って心房細動が検出されなかった参加者の約3分の1が、Apple Heart Study終了時には実際に心房細動と診断されていたことも判明した。これは、これまでの研究で示されたよりも、Apple製ウェアラブルデバイスの有効性が高いことを示唆している。

新世代のApple Watchに導入される新しいセンサーや技術的機能の可能性については、常にさまざまな憶測が飛び交っているが、Apple Heart StudyやApple Heart and Movement Studyといった大規模な研究から、既存のハードウェアやセンサーを利用した新機能への道筋が見えてきている。他の心臓の不整脈を検出するというApple Watchの有望な結果は、将来、より多くの「ヘルスケア」機能を生み出すかもしれない。

画像クレジット:Apple

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Dragonfly)

スタンフォード大とデューク大が投資家と企業幹部の多様性教育を推進する認証プログラムに参加

テック業界の多様な企業創設者の育成と支援を目的に、ノースカロライナ大学のKenan Flagler Entrepreneurship Center(ケアンフラグラー起業家精神センター)、Opportunity Hub(OHUB、オポチュニティー・ハブ)、100 Black Angels and Allies Fund(ワンハンドレッド・ブラック・エンジェルズ・アンド・アライズ)ファンドによって結成されたパートナーシップに、デューク大学とスタンフォード大学という強力なパートナーが加わった。

このパートナーシップの一環として、スタンフォード大とデューク大に所属する教員は、DEIS Practicum Certificate(DEIS実習修了認定)【訳注:DEISはDiversty(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)、ソリューションの頭字語】プログラムと、Black Technology Ecosystem Investment Certificate(ブラック・テクノロジー・エコシステム投資認定)プログラムの教師を務めることになる。前者は、単なる人材雇用や補償による公平化を超えて、企業の経営陣が多様性と包括性に組織的な形で関与する方法への取り組みであり、後者はより多くの黒人投資家がスタートアップの支援を行えるようにする取り組みだ。

「団体の組織的レベルで、DEIのような問題と、富の格差という根深い問題に対処するためには、私たちはそうした教育がより多くの人に開かれるよう、力を合わせる必要があります」とEntrepreneurship Centerの事務局長Vickie Gibbs(ビッキー・ギブズ)氏は声明で述べている。「ともに私たちはアクションを起こし、より公平な社会と起業家コミュニティの構築に向けて前進します」。

スタンフォード大学のTechnology Ventures(テクノロジー・ベンチャーズ)プログラム(STVP)とデューク大学からの教員の参加は、プログラムの有効性を高めるだけではないと、OHUBの会長であり、100 Black Allies & Angels(ブラック・アライズ・アンド・エンジェルズ)の共同創設者にしてジェネラルパートナーのRodney Sampson(ロドニー・サンプソン)氏はいう。ノースカロライナ大学とデューク大学で客員教授も務めている同氏は、2つの大学の加盟により、それぞれの大学の卒業生の間でプログラムの周知が行き渡るとも話している。

「これらのソリューションと見識が、この2つの名門大学の卒業生と、その起業家コミュニティの中の認識を高めます」とサンプソン氏は声明で述べている。

サンプソン氏が開発した枠組みには、多面的なアプローチが採用されている。そこでは、多様性、公平性、包括性が事業化されてる度合いを審査するための項目を、取締役会とガバナンス、雇用、昇進、人事における実践の評価、調達とベンダーサービス、イノベーションと製品開発、多様なオーディエンスに届く市場参入のための資源、黒人およびラテン系コミュニティへの投資、そのコミュニティでの事業のインパクトの監視と設定している。

この枠組みは、幸先良くも、他ならぬBrookings Institution(ブルッキングス研究所)から先日発表された、Amy Liu(エイミー・リュー)氏とReniya Dinkins(レニヤ・ディンキンス)氏の共同執筆による論文にも引用された。

「偏見をなくし、本当の帰属意識が持てる文化の創造への取り組みを最高責任者が自ら示すことで、他社との協力に必要な会社と企業幹部たちの高い信頼と信用が得られ、より大きな進歩と持続的な繁栄がその拠点にもたらされます」と同論文には書かれている。

特にスタンフォード大学にとって、多様性と教育実習を受け入たことは、大学での多様性教育の制限を要求する前政権の政策に急いで従わなければならなかった同大学が、汚名回復のためのリハビリに励んでいる今の時期には好都合だった。

「あまりにも長い間、多様性、公平性、包括性は、起業家精神とイノベーションにとって後付けの考え方でした。思慮深く、行動力のある仲間たちと組織的人種差別に対処できることを、とてもうれしく思っています。私たちが力を合わせることで、私たち団体間に重要にして新たなネットワークを構築でき、世界中の教育者や団体とで共有できる教育のための見識を磨くことができます」と、ノースカロライナ大学チャペルヒル校およびデューク大学コヘイン名誉客員教授、STVP主任教員であるTom Byers(トム・ベイヤーズ)氏は話している。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:DEIスタンフォード大学差別デューク大学多様性

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

スタンフォード大学の学生らがラップトップを最も必要としている全米の子供たちのため支援を急ぐ

情報格差(デジタルデバイド)は今更驚くような現象ではない。しかし、Covid-19の猛威によりアメリカ国内で学級閉鎖が始まりつつあった3月、学校関係者らはオンライン授業を進めることがいかに難しいかを目の当たりにし、そしてこの事実はアメリカ人に大きな驚きを持って受け止められた。

生徒たちへのカリキュラムを変更すればよいという話ではない。多くの生徒がインターネットへのアクセスやパソコン自体、またはその両方を持っていないという状況だったのだ。元Microsoft(マイクロソフト)CEOのSteve Ballmer(スティーブ・バルマー)氏が資金提供した無党派組織、USAFactsによると、パンデミックの間、子供のいる440万世帯の家庭がオンライン学習のためパソコンを継続的に使用できる環境になかったのだ。

この問題にスタンフォード大学の学生、Isabel Wang(イザベル・ワン)氏とMargot Bellon(マーゴット・ベロン)氏の2人が果敢に取り組んでおり、その努力が一部実を結んでいる。2人が6か月前に設立した501(c)(3)組織、Bridging Tech(ブリッジング・テック)を通し、彼らはすでに400台以上の修理調整済みノートパソコンを、それを最も必要とするホームレスシェルターに住む子供たちに提供している。サンフランシスコだけで推定2000人のホームレス生徒がいるとされており、2人はベイエリアからこの活動に着手した。

これは2人の純粋な情熱によって開始されたプロジェクトではあるが、当然のことながら2人は同組織を永続的に構築していきたいという強い意思を持っているようだ。彼らは常にデジタルデバイドの問題を気にかけてはいたものの、現状を知ってしまった今、ここからただ立ち去ることはできない。

オハイオ州クリーブランドに位置する裕福な郊外、シェーカーハイツで育ったワン氏は、そこには「常に人種的な緊張感があった」と振り返る(ベストセラー小説の『Little Fires Everywhere』も同様の理由からこの地を背景に書かれている)。「コミュニティに存在した人種差別」の影響もあり、ワン氏は早い時期から十分なサービスを受けられていない人々を対象とした公衆衛生に関する取り組みに関わるようになる。そこで同氏が熱心に取り組んだのは教育への公平なアクセスを中心としたものだった。

生物学専攻のベロン氏は、スタンフォード大学の学生らが主催するアウトドアをテーマにしたOutdoor Houseでワン氏と知り合った。同氏は2人が初めから同じような興味を持っていたと語る。カリフォルニア州サンマテオで育ったベロン氏は、高校とカレッジ時代にホームレスシェルターでボランティア活動をした経験から、テクノロジーへのアクセス不足がもたらす課題に気付く。多くの人にとって、Wi-Fiを使うためにはスターバックスの外で過ごさなければならないという事実があり、また彼らにとっては図書館の中にしか利用可能なパソコンがないと同氏は指摘する。

今年の春世界が閉ざされたと同時に、ベロン氏は多くの人にとってこのような選択肢さえもがなくなってしまったことに気づく。同様にワン氏も同じ心境を抱えていた。友人たちの力も借り、今ではほぼ全員スタンフォードの学生から構成される30名のボランティアとともにこの取り組みに力を注いでいる。

これまでBridging Techはテクノロジーにアクセスできない生徒のためにラップトップを確保することに大きな重点を置いてきた。Citrix Systems(シトリックス・システムズ)とGenetech(ジェネンテック)が大口寄付企業として存在するが、同新興組織がより多くのテック大手からの支援を必要としていることは容易に想像がつく。

状態の良い中古パソコンが手に入ると、Bridging Techが提携している数社の修理調整業者に渡される。どの業者も1年間の保証をつけている。そのうちの1社で、サンディエゴを拠点とするComputers 2 Kidsは、子供たちがあまり助けを借りずにすぐにパソコンを立ち上げて使えるように分かりやすい説明書を添えている。

ベロン氏によると、通常ベイエリアのホームレスシェルターには技術ボランティアがおり、子供たちがコンピューターの電源を入れたり設定したりするのを手伝っているという。ShelterTechという組織は、Bridging Techと提携してコンピューターを受け取ったこれらの子どもたちがWi-Fiにもアクセスできるように取り組んでいる。

これらのデバイスは贈り物として、子供たちに恒久的に使用してもらうことができる。

またBridging Techは、コンピューターサイエンスなどよりスキルに基づいた活動をベースとしたメンターシッププログラムの他、個人を指導するチュータープログラムも開始している。

つい最近まで次の課題をやり遂げることに主に力を注いでいた2人の大学生にとって、非常に大変な取り組みである。しかし北カリフォルニアに彼らがもたらした変化を、他の地域でも引き起こさない訳にはいかない。ベロン氏によると、ニューヨーク、ロサンゼルス、ボストン、ワシントン、アトランタを含むその他の都市のシェルターとすでに話を進めているそうだ。

パンデミックの影響でリモート教育を強いられた恵まれない子供たちが、さらに遅れをとる結果となっており、全米中でこの問題は日に日に深刻度を増している。

これは連邦政府や州政府が真剣に取り組まない限り、簡単に解決する問題ではない。Pew Research Center(ピュー研究所)による2018年の調査によると、アメリカのティーンエイジャーの約5人に1人がコンピューターやインターネット接続へのアクセスが不十分なために宿題を完了できないことが多い、またはそういったことが時々あると答えている。同じ調査内で、低所得層のティーンエイジャーの4分の1が自宅にコンピューターがないと答えている。

ワン氏とベロン氏にとっての最大の問題の1つとして、今後彼らの志をどのように広げていくかという点がある。例えば現在、Bridging Techが修理調整したコンピューターは、ボランティアによって車でシェルターに直接届けられている。Bridging Techは、他の都市でも同じことを可能にするためのネットワークやインフラをまだ備えていない。

2人とも自分たちの限界を認識している。ワン氏は、Bridging Techに必要なのはデバイスの寄付を増やすことだけではなく、助成金の申請書を準備してくれる人材やマーケターそして、他の潜在的なパートナー組織に同組織を紹介してくれる開発の専門家などが必要だと述べている。「私たちは大学生なので、何か教えてもらえることがあれば何でもありがたいのです」と同氏は言う。

また同氏は「Bridging Techは他の都市ではデバイス寄付のプロセスを確立できていないので、ほとんどの都市でデバイスの購入を始めている」と明らかにしている(Whistleと呼ばれる組織を通して購入するのが1つの方法である。この組織は古いデバイスをユーザーから買い取るだけでなく、ユーザーが売却で得た利益を寄付できるような仕組みをとっている)。

ワン氏の新学期が始まり、またベロン氏が来年から修士課程に移った後も、2人はこの活動を続けていきたいと考えている。

「より公平な社会を実現するためには、テクノロジーが公平である必要があります。Covid-19はこれらの問題を悪化させていますが、あらゆるものにテクノロジーが必要であり、これが変わることはありません」とベロン氏は語る。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:情報格差 アメリカ スタンフォード大学

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(翻訳:Dragonfly)