日本発ステーブルコインはじめブロックチェーンが公正な社会を支える技術基盤に貢献、BCCC年頭所感

日本発ステーブルコインはじめブロックチェーンが公正な社会を支える技術基盤に貢献、BCCC年頭所感

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、過去1週間分について重要かつこれはという話題をピックアップしていく。今回は2020年12月27日~2021年1月2日の情報から。

ブロックチェーン推進協会(BCCC)は2021年1月1日、平野洋一郎代表理事による年頭所感を発表した。新型コロナウイルス感染拡大によりデジタルおよびバーチャルな「ニューノーマル」へのシフトが加速する中、ブロックチェーンは公正な社会を支える技術基盤としての貢献度が高まる1年になるなど、業界における所感を述べた。また、同協会が開発を進めている独自のステーブルコイン「ZENX」についても言及した。

日本発ステーブルコインはじめブロックチェーンが公正な社会を支える技術基盤に貢献、BCCC年頭所感

BCCCは、ブロックチェーン技術の幅広い普及推進を目指す業界団体。暗号資産など金融を起点に発展してきたブロックチェーンの健全な発展と普及のために、金融にとどまらず流通・製造・公共事業など幅広い分野での活用、ブロックチェーンの最新情報や技術者・企画者の育成、ネットワーク形成などブロックチェーン関連ビジネスを広く市場に告知し、様々なビジネスへの普及・推進を目指す。現在、ブロックチェーン業界のみならず、270社を超える様々な分野の企業が加盟している。

コロナ禍におけるニューノーマルの流れによって、BCCC会員企業においても金融のみならず電子契約、株主総会、貿易、ゲームなどの領域でブロックチェーンを使った新たな試みが展開される年になった。また、2020年は中国政府のデジタル人民元の実証実験、EUのデジタル通貨規制案、日本銀行におけるデジタル通貨発行に向けた取り組みの発表など、法定通貨のデジタル化やステーブルコインに関する議論も深まったとしている。

BCCCは、2021年は金融や決済のイノベーションにも通じるこの動きがさらに具体化し、実現への第1歩を築いていくと見ている。ブロックチェーン技術はますます進化を続け、フィンテックのみならず様々な領域の企業活動、そして社会インフラへと進化を遂げていくという。またさらに、ブロックチェーン技術が企業や社会のDXを支える技術として、「自律・分散・協調」を主軸とした公正な社会への進化に貢献していくと確信していると、年頭の所感を述べている。

日本円と連動した独自ステーブルコイン「ZENX」発行に向けた準備

ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)は2020年年末、GMOインターネットが設立したGMO-Z.com Trustが海外で発行を予定している日本円と連動した初のステーブルコイン「GYEN」を認可した。これにより、円ペッグのステーブルコインが話題になっている

所感では、BCCCも日本円と連動した独自ステーブルコイン「ZENX」の発行に向けた準備を進めていることに触れた。BCCCは、各国の動向をモニタリングしていきながら、法規制にマッチしたかたちでステーブルコインの早期発行を目指すことを明らかにした。

BCCCは、2017年7月に円と連動した暗号資産(仮想通貨)「Zen」の社会実験の第1フェーズを実施。まずは、BCCCの運営するプライベート版Ethereum上のERC-20準拠トークンとしてZenを発行し、取引所にて同一価格の買い注文を入れ続けることで価格を安定させる手法を実証。結果、取引に伴う価格変動率(ボラティリティ)を、一部オペレーションが間に合わず20%ほど変動したポイントがあったものの、ほぼ1ZEN=1円を維持できたという。ちなみにビットコインの価格変動率は2000%ほどになる。

ここで開発したスマートコントラクトのコードは、パブリック版のEthereumネットワーク上に配置することで、すぐに動作するよう設計されており、将来パブリックに展開できることになれば、日本円に対して価格が安定している暗号資産Zenを実現することもできるという。

またBCCCは、2020年2月に「ステーブルコイン部会」を新設し、社会実験の第2フェーズとして、グローバルに流通するステーブルコインの仕様を策定し、日本円や米ドル、欧州ユーロを含む各通貨とそれぞれペッグした複数のステーブルコイン「JPYZ」「USDZ」「EURZ」などを発行していくことを発表している。

さらに同部会は、米Facebookの「Diem」(ディエム。旧Libra)を意識し、これらの複数のステーブルコインを担保にした通貨バスケット型のステーブルコイン「ZENX」を発行する構想を公表している。同構想は実装期間を経て最大30社での企業間決済実験を実施する計画で、この実験を通じて日本発ステーブルコインの発行の実現に寄与していくという。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:ステーブルコインブロックチェーン(用語)ブロックチェーン推進協会 / BCCC日本(国・地域)

Facebookがステーブルコインを始める? その前に知っておくべきこと

Bloombergが伝えるところによると、Facebookは、独自のステーブルコインの投入計画をひっさげて、ブロックチェーンの波に飛び乗ろうとしているようだ。

次から次へとプライバシー流出問題で騒がれ足元に火が点いた状態のソーシャルネットワークの大手Facebookは、5月にブロックチェーン部門を内部に設立したが、さまざまな憶測を呼びながらも、その本当の狙いは不明のままだ。

Bloomebergの記事は、その新部門から何が現れるのかを明確に示した最初のものとなった。さらに、それは「メッセージングアプリWhatsAppを使ってユーザー同士で金銭の移動ができ、最初はインドの送金市場にフォーカスをあてた」ステーブルコインであるという。

Facebookは、これに対して曖昧なコメントを返した。

「他の多くの企業と同様に、Facebookもブロックチェーン技術の力を役立てる方法を模索しています。この新しい小さなチームでは、さまざまな応用方法を探っています。私たちからは、これ以上は申し上げられません」と、FacebookはBloombergに対する声明の中で答えている。

もしこのアメリカの巨大企業が、Bloombergが報じたとおりの計画を実行した場合、それは時価総額3760億ドル(約41兆7600億円)、年間収入は400億ドル(約44億4000万円)にのぼり、事業規模においてもユーザー基盤においても、(たちまち)一般消費者向けブロックチェーン・サービスの最大手となる。Facebookには、その中核的ソーシャルネットワークに22億人以上、WhatsAppに15億人、Messengerに13億人、さらにInstagramに10億人のユーザーを擁している。

これは、しっかり知っておくべき話だ。

Facebookのブロックチェーン部門を率いるPayPalの元CEO、David Marcus。彼は、暗号通貨交換所Coinbaseの役員でもあった。

またひとつ新しいステーブルコイン

ステーブルコインは、今年の後半にブロックチェーンの世界で大流行した。数多くのプロジェクトが飛び出して、いろいろなソリューションを提示したのだが、まずその理由を考えてみよう。

ステーブルコインの考え方は簡単だ。法定通貨と連動する暗号通貨なので、価格の乱高下の影響を受けないというものだ。

プログラム可能で国境のない通貨としてのブロックチェーンには可能性があるが、安定性が大きな問題になっている。たとえばBitcoinは、1年前には2万ドル(約222万円)という高値をつけたが、現在は4000ドル(約44万4000円)をわずかに上回る程度だ。ただ注意すべきは、この数カ月間にそれよりも価格が下がっていたことだ。「アルトコイン」の場合は、さらに変動が激しい。

ステーブルコインは、Bitcoin、Ethereumなどのトークンを、銀行口座よりも早く買い入れることができる預け入れ方法を提供している。また、不安定なトークンからの利益の移動も可能になり、とくに、暗号通貨を他者(他の企業)に経費をかけずに送ることができることが大きい。

しかし、大変にシンプルな前提で、しかも多くの人たちが参入しているにも関わらず、実際に成功し、その価値を証明できたステーブルコインはいまだに存在しない。

もっとも注目を集めているTetherですら、経済的支援にまつわる心配に追い回されている。その背後にある組織は、そのトークンの価格が1ドルを下回っても、市場でその裏付けとするのに十分な法定通貨を用意しているか否かを明らかにしていない。

Tetherが苦戦する中、仮想通貨取引所がライバルのステーブルコインをローンチ


TechCrunchが11月に報告したとおり、いくつもの「Tetherキラー」が登場したが、王座を奪ったものはない。USD Coinは、CounbaseやBinanceなどの大手取引所で取引されるEthereumをベースとする暗号通貨で、時価総額2億3000万ドル(約255億5000万円)と二番目に広く利用されている。驚くべき規模だが、それでもTetherの180億ドル(約2兆円)の15パーセントにも満たない。そのギャップの大きさは明らかだ。

そして、規制の問題がある。

Andreessen HorowitzやBain Capitalといった大物投資家から1億3000万ドル(約144億4000万円)以上を調達したBasisは、設立から18カ月後の今月、廃業した。「ボンドトークンもシェアトークンも、有価証券ではないと認めざるを得ない」と判断したのが理由だ。

フィンテックのサービス

詳細はまだはっきりしないが、Facebookが推進するステーブルコインは、安定を強く望む暗号通貨の所有者に、技術を使ってそれ以上のものを提案することになりそうだ。

Facebookは、もしかしたら、膨大なユーザー数を誇るメッセージングサービスに、金融サービスや製品を追加する可能性がある。フィンテックは、信用力の調査方法が限られ、為替市場の価格が低いといった問題の改善にデジタル・プラットフォームやデータが有効な新興市場で急速に発達している。しかし、Facebookはそこに本格的に足を踏み入れたことがない。唯一あるのは、WhatsAppだ。インドではピア・トゥー・ピアの取り引きができるようになっているが、それを世界的に広げ、新しい金融機能を追加すると考えれば筋が通る。

安くて速い海外送金は、FacebookのCEO、Mark Zuckerbergがブロックチェーンの可能性に注目していると書いた1年前の記事で私が提唱したことだ。2017年の新年の抱負を聞いたとき、彼は暗号通貨とブロックチェーンを勉強して「我々のサービスにどう使うのがベストかを見たい」と話していた。

WhatsAppは、月間のアクティブユーザーが15億人を超える。そのうち約2億人を占めるインドでは、それは巨大な単一市場だ。インドはまた、世界銀行のデータによると、2017年には690億ドル(約7兆6660億円)を受け取った世界最大の送金先にもなっている。

送金以外にも、ステーブルコインはもっと多くの利点がある。デジタル製品やサービスの購入から、ピア・トゥー・ピアの支払い、もっと本格的な暗号通貨による取り引きや融資などだ。

明らかなのは、Facebookのブロックチェーン部門の仕事はまだ初期段階にあるということだ。現時点では、30名ほどの社員が配属されている。

チャットアプリが暗号通貨とブロックチェーンに参入

Bloombergが推測するようにプロジェクトが継続された場合でも、WhatsAppがブロックチェーン機能を持つ最初のメッセージングアプリとなるまでには時間がかかるだろう。しかし皮肉なことに、WhatsAppやFacebookのMessengerといった独占的地位にあるサービスに対抗するための手段として、他社が暗号通貨の機能を採り入れている。

カナダのチャットアプリKikは、2017年のICOを通じて1億ドル(約111億円)を調達して、独自のトークン「Kin」と、開発者用アプリをサポートするブロックチェーンを開発した。昨年、KikのCEO、Ted LivingstonがTechCrunchに話したところによれば、基本計画は、Facebookのような広告モデルではなく、ユーザーの注意や関わりを通して「ボジティブ」に利益をもたらすアプリを開発できるようにすることだという。収益は、さまざまなユーザー本位の基準で、Kinで支払われる。

Livingstonは、暗号通貨の弁明をするどころか、ブロックチェーン技術を「役立たず」だとする意見を批判した。Kikのアプリはまだブロックチェーン化されていないが、昨年の夏からベータ版のリリースを開始した。

KikのCEO、Ted Livingstonは、ブロックチェーンと暗号通貨が広告ベースのモデルに置き換わると信じている。つまり、より多くのアプリや製品が、金儲けのためではなく、消費者のために作られるようになるということだ。

日本のLINEアプリは、アジアの一部で人気が高いが、ブロックチェーンを導入し、独自の取引所暗号通貨投資ファンドを設け、「Link」というアプリ内トークンを使えるようにしている。ICOは行わず、Linkトークンをユーザーの間で流通させてさまざなに利用してもらい、売買も可能にしてゆく計画がある。Linkは、事実上LINEのサービスや製品の購入の手段となり、サードパーティーのサービスでも使えるようにしたいと同社は話している。

ロシアのFacebook的存在であるVKontakteの創設者Durov兄弟が開発したメッセージングアプリTelegramもそうだ。Telegramは暗号通貨業界で人気を高めており、ICOを通じて17億ドル(約1888億円)を調達した。大変に期待された公開だったが、結局のところ、対象は認定投資家に限られることになった。

しかし、非常に野心的な「非中央集権的」プラットフォームの目標について長々と書かれた白書に批判が集まっている。プロジェクトは目立たない形で進められ、一部には製品がリリースされる前に投資金を現金化した投資家もいると見られる混乱した現状は、ほとんど明かされていない。

もうひとつ、暗号通貨を採り入れたチャットアプリで注目すべきものが、Statusだ。非中央集権的チャットアプリとエコシステムを開発し、2017年にEthereumで1億ドル(約111億円)以上を調達した。Statusは現在使用可能だが、Coindeskによると、資金繰りがうまくいかず、100名いた写真のうち25パーセントを、今月、一時解雇したとのことだ。

その一方で、韓国最大のメッセージングアプリKakaoは、ブロックチェーン企業を所有している。将来の計画の詳細は不明だが、Kakaoはブロックチェーン企業に投資を行っている。

[原文へ]
(訳者:金井哲夫)

ステーブルコインに1億3300万ドルの資金を調達したBasisが事業を泣く泣く断念し投資金を返還へ

18カ月前にニュージャージー州ホーボーケンに設立された暗号通貨のスタートアップが、供給を柔軟化して、価値を野放しにするのではなく、およそ1ドルを維持できるように見かけ上伸縮させる「ステーブルコイン」を提供するという話を、今年の初めに伝えた。この会社は、「投機目的ではなく、実際に使える新しいトークンを作る」という大志を抱いていた。

投資家たちは(すべてではないが)この考え方に惚れ込んだ。事実、8カ月前にBasisは、1億3300万ドル(約150億8800万円)の資金を手に入れた。投資を行ったのは、Bain Capital Ventures、GV、名うてのヘッジファンド・マネージャーStan Druckenmiller、元連邦準備制度理事Kevin Warsh、Lightspeed Venture Partners、Foundation Capital、Andreessen Horowitz、WingVC、NFX Ventures、Valor Capital、Zhenfund、Ceyuan、Sky9 Capital、Digital Currency Groupなどといった顔ぶれだ。

CEOのNader Al-Najiがプリンストン大学のクラスメイトだったLawrence Diao、Josh Chenと共に設立したこの会社は、本日(アメリカ現地時間12月14日)、事業を停止すると発表した。そしてBasisは、事業の推進に使用されなかった資金を、投資家たちに返却するという。

Al-Najiが、少し前にBasisのウェブサイトに投稿した説明によれば、彼らの技術的ロードマップとアメリカの証券法の規制との折り合いがつかなかったようだ。具体的には、散発的に入る規制の指導に、創業者たちも予想できない影響があったとAl-Najiは書いている。

そのひとつとしてBasisが即座に気がついたのは、「ボンドトークンもシェアトークンも、有価証券ではないと認めざるを得ない」ということだ。さらに、「未登録証券という性質上、ボンドトークンとシェアトークンは規制対象となり、発行から1年間はアメリカ国内の公認投資家のみが所有できるようトークンを管理し、海外の利用者の合法性を審査する責任を(Basisが)負う」という。

Al-Najiはこの状況の問題点をこう話している。「譲渡制限を実行するためには、集中化したホワイトリストが必要になります。これでは検閲に反対する私たちのシステムが意味を失うばかりか、オンチェーン取り引きの流動性が大幅に失われます」

結果的に、オンチェーン取り引きの参加者が減れば、それが不利に作用してBasisの安定性が低下する。そこが重要だと彼は言う。

いわゆるステーブルコインが単に実現不可能なものなのか、または価格を一定に保つことでアセットアプローチを行うという考え方そのものが間違っていたのか、Basisに起きた今回の事件からは判明されない。しかしこの夏、ステーブルコインの人気が高まったとは言え、いまだに実証されていない暗号通貨支払いアプリ技術の導入に、Basisが力を入れた理由はよくわかる。暗号通貨サービス企業Blockchainの研究主任Garrick Hilemanが、9月、Technology Reviewに話したところによると、2017年には準備中のステーブルコインはわずかに一握り程度だったものが、この秋には60に迫る勢いだという。

我々は、Basisに投資した一部の人たちに接触し、詳しい話を聞いた。その間、Basisは巨額の資金を獲得しながら、Al-Najiは、いつBasisが流通するのかわからないと正直に述べていたことは注目に値する。つまり彼は、Basisが守れない約束は口にしなかったということだ。少くとも、我々には直接言わなかった。

下は、投資家と支援者に向けた彼の手紙の全文だ。

18カ月前、私たちは、よりよい通貨システムを構築するという野心的な目標に向けて出発しました。それは、ハイパーインフレに強く、中央集権的支配を受けず、従来の通貨システムよりも安定的で頑強なものです。これが成功すれば、社会に多大な恩恵をもたらすと私たちは感じていました。そして、私たちはそれを行う絶好の立場にあると感じていました。

私たちは、安定的で非中央集権的な暗号通貨Basisを提案する白書を作成し、その構想の実現可能性を示しました。

Basisは、需要の変化に応じて売買したいというトレーダーに動機を与えることで安定します。この動機は、定期的に行われる「ボンド」トークンと「シェア」トークンのオンチェーン取り引きを通じて引き起こされます。Basisのエコシステムが発展するためには時間がかかるため、まずは私たち自身がトレーダーの役割を果たすことで、大きな資本を集める必要があると感じました。

そうして、私たちは白書でお伝えしたとおり、1億3300万ドルの資金を調達できました。これにより、さまざまな投資家をと関係を築き、事業の価値を高め、大きな安定化基金を構築して、システムの強化が可能になりました。そして私たちは、素晴らしく優秀な人材を集め、システムの立ち上げを目指して始動しました。

しかし残念なことに、私たちのシステムをアメリカの証券法の規制に準拠させようとしたとき、Basisの発行に重大な問題が起こりました。

規制の指導が時間をかけて少しずつ入るようになると、弊社の弁護士たちは、ボンドトークンもシェアトークンも有価証券ではないと認めざるを得ないとの合意に達しました(Basisには中央組織が存在しないため)。

未登録の証券という立場のため、ボンドトークンとシェアトークンは譲渡制限の対象となり、Intangible Labsと共に、発行から1年間はアメリカ国内の公認投資家のみが所有できるようトークンを管理し、海外の利用者の合法性を審査する責任を課せられました。

譲渡制限を実行するためには、集中化したホワイトリストが必要になります。これでは検閲に反対する私たちのシステムが意味を失うばかりか、オンチェーン取り引きの流動性が大幅に失われます。

オンチェーン取り引きの参加者が減れば、それが災いしてBasisの安定性が損なわれ、利用者はBasisのそもそもの魅力を感じなくなります。さらに、ボンドトークンとシェアトークンの取り引きに譲渡制限をかければ、私たちはBasisのエコシステムを構築する力を実質的に失います。

譲渡制限は発行後12カ月で失効するのが一般的ですが、ボンドトークンとシェアトークンの取り引きは私たちの金融方針に従って続けるならば、譲渡制限と集中化したホワイトリストは、いつまでも必要となります。

私たちは、私たちの製品の魅力と競争力を保ちつつ、規制に準拠した形でローンチできる道をいくつも探りました。そのなかには、ボンドトークンとシェアトークンの金融的性質を抑えた機能を追加して、海外でローンチするというものや、中央集権的な安定したメカニズムでスタートするというものもありました。しかし、結局それらの代替案は、利用者にとっても投資家にとっても魅力が欠けるものであり、私たちのビジョンに矛盾し、事業を進める正当性にも欠けます。

そのようなわけで、大変に残念ながら、私たちは投資家のみなさまに資金をお返しする決断を下したことをお知らせしなければなりません。これは、まことに無念ですが、Basisの事業の中止を意味するものでもあります。

誰にとっても望まれない結果となりましたが、私たちは、承知の上で、規制環境が味方してくれるほうに、いちかばちかの掛けをしていました。この世話に絶対にはなりたくないと思っていたトークン販売契約の冒頭に資本金返却の条項を加えたのは、まさにそれが理由です。私たちが望んでいたシステムを立ち上げることはできませんでしたが、このような状況でも、少くとも正しいことができたことを投資家の皆様に感謝したいと思います。

最後に、私たちと、私たちの事業を支えてくださったみなさまに、心より感謝申し上げます。私たちを信じてくれた、寛大なる支援者、パートナーのみなさま、私たちの目標のために集まってくれた素晴らしいチームのみんなに。みなさんは、世界を変えるチャンスを与えてくれました。また挑戦できる日を楽しみにしています。

それではまた。

CEO Nader Al-Naji

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(翻訳:金井哲夫)