ロボット工学と統合されたeコマース配送プラットフォーム「Paack」が約257億円調達

Paack物流センター・マドリードの仕分けロボット(画像クレジット:Paack)

今や多くの人が、Amazon(アマゾン)などの広大なスペースに設置された倉庫ロボットを見慣れていることだろう。特にAmazonは、この技術のパイオニア的存在だった。しかし、2021年の今、倉庫ロボットとソフトウェアロジスティクスプラットフォームの連携は、もはや一企業の専売特許ではなくなっている。

後発のスタートアップで、このアイデアで「成功」しているのが、現代の物流業務に不可欠なロボット工学と統合された高度なソフトウェアプラットフォームを持つeコマース配送プラットフォームのPaack(パアック)である。

Paackは、SoftBank Vision Fund 2(ソフトバンク・ビジョン・ファンド2)が主導するシリーズD資金調達ラウンドで、2億ユーロ(約257億円)を調達した。この資金は、製品開発とヨーロッパでの事業拡大に充てられる予定だ。

このラウンドには、Infravia Capital Partners(インフラビア・キャピタル・パートナーズ)、First Bridge Ventures(ファーストブリッジ・ベンチャーズ)、Endeavor Catalyst(エンデバー・カタリスト)も新たに参加した。また、Unbound(アンバウンド)、Kibo Ventures(キボ・ベンチャーズ)、Big Sur Ventures(ビッグ・サー・ベンチャーズ)、RPS Ventures(RPSベンチャーズ)、Fuse Partners(フューズ・パートナーズ)、Rider Global(ライダー・グローバル)、Castel Capital(キャステル・キャピタル)、Iñaki Berenguer(イニャキ・ベレンゲール)といった投資家も参加している。

今回の資金調達は、本国スペインで収益性の高いポジションを確立した後に行われたが、Paackは、英国、フランス、ポルトガルなど、ヨーロッパ全域で同様の目標を達成する予定であると主張している。

Fernando Benito(フェルナンド・ベニート)氏、Xavier Rosales(シャビエル・ロサレス)氏、Suraj Shirvankar(スーラジ・シルヴァンカー)氏の3人が設立したPaackは、現在150の海外顧客から毎月数百万の注文を受け、1サイトあたり1時間に1万個の小包を処理しているという。そのうちの17社は、スペイン最大級のeコマース小売業者である。

同社のシステムは、eコマースサイトと統合されている。そのため、消費者はチェックアウトの際に配送スケジュールをカスタマイズすることができる、と同社はいう。

CEO兼共同設立者のベニート氏は「便利でタイムリーで、よりサステナブルな配送方法に対する需要は、今後数年間で爆発的に増加すると思われ、Paackはその解決策を提供しています。私たちはテクノロジーを使って、消費者に配送のコントロールと選択肢を提供し、配送にかかる二酸化炭素排出量を削減します」と述べている。

SoftBank Investment Advisers (ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ)の投資ディレクターであるMax Ohrstrand(マックス・オルストランド)氏は「eコマース分野が繁栄を続け、消費者にとって当日配送がますます当たり前になる中、Paackはその技術とサステナビリティへの取り組みの両面において、カテゴリーリーダーになるための好位置につけていると考えています」。と述べている。

世界経済フォーラム(WEF)の調査によると、ラストマイル・デリバリー事業は2030年までに78%成長し、そのうち3分の1近くで、CO2排出量が増加すると予想されている。

そのため、Paackは、電気自動車を使用し、環境負荷を測定することによって、すべての小包をカーボンネットゼロで配送することを目指していると主張している。現在、カーボントラストと国連の認証取得を目指している。

ベニート氏はインタビューで「私たちは、短期的なビジョンとして、ラストワンマイルデリバリーのための、おそらく最も先進的な技術によるデリバリープラットフォームを通じて、ヨーロッパにおける持続可能なeコマースデリバリーをリードすることを目指しています。例えば、当社のCTOは、Google Cloud(グーグル・クラウド)のCTOであり共同設立者でした」と答えている。

「最高の配送体験を実現するために、倉庫の自動化、時間帯、ルーティングの統合など、あらゆるものを開発しています」と語る。

Paackによると、複数のロボットパートナーとの提携が可能だが、現在は中国企業GEEK(ギーク)のロボットを使用している。

同社は、ヨーロッパのDHL、Instabox(インスタボックス)、La Poste(ラ・ポステ)のような大規模な既存企業に対抗できるようにしたいと考えている。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Akihito Mizukoshi)

スペインの給与前払いスタートアップPayflowが約10.4億円獲得、スーパーアプリの成長戦略を促進

バルセロナを拠点とし、ネオバンクへの進化を目指すYC出資の給与前払いフィンテック企業Payflow(ペイフロー)が、シリーズA資金調達ラウンドで910万ドル(約10億4200万円)を調達した。それにより、事業設立の2020年1月からの調達額は1360万ドル(約15億5800万円)に達した。

このラウンドの投資家には、Payflowの新たな支援者であるスペインのSeaya Ventures(シーヤ・ベンチャーズ)や、C. Entrepreneurs Fund(C. アントレプレナーズ・ファンド)を通じたCathay Innovation(キャセイ・イノベーション)が共同リードを務め、Force Over Mass Capital(フォース・オーバー・マスキャピタル)、Y Combinator(Yコンビネーター)、Rebel Fund(リベル・ファンド)が参加するなど、国内外のファンドが混ざり合っている。

このスタートアップは、雇用主が従業員に提供するための給与前払いサービスを販売している。(他の給与系スタートアップが行っているように)給与の一部を早期に引き出すために利用者に手数料を課すのではなく、技術に対して雇用主に手数料を課しているのである。

Payflowによれば、このモデルは労働者評議会や労働組合の支持を得ているという。

また、同社は、このモデルは他の給与前払い系のスタートアップとの差別化要因であるとアピールしている。

共同創業者のAvinash Sukhwani(アビナッシュ・スクワニ)氏は「我々が他のオンデマンド型企業と異なるのは、従業員にサービス利用料を請求したことがないことです(我々のサービスは、全額会社負担の、初の真の従業員福利厚生です)」と語る。

また、共同創業者のBenoît Menardo(ブノワ・メナルド)氏は「(Payflowは)ユーザーにとって無料であり、今後もそうあり続けるでしょう。私たちのビジョンは、ブルーカラー労働者のための初の真の福利厚生を提供することであり、従業員がそれを支払わなければならないのであれば、それは本当の特典とは言えないと考えています」と述べている。

ユーザーの間ではダウンロード率が平均40%、一部のクライアントでは90%と、高い普及率を示しており、他のオンデマンド給与プラットフォームや他の社会福利厚生に比べて5〜10倍高いとしている。

また、同社のアプローチは、雇用主にとっても適切な条件を満たしているようで、すでに175以上のクライアントが契約している(10万人のユーザーをカバー)。

本製品はSaaS型のビジネスモデルで、利用する従業員の数に応じて段階的に料金を徴収する。

Payflowは大企業をターゲットにしている。同社によれば、顧客はあらゆる業界にわたるが、予想通り、ブルーカラー労働者の間で最も利用が多いとのことだ。

「レストランからスタートアップ、病院まで、あらゆる業種に対応していますが、ブルーカラーの人たちが一番利用しています」とスクワニ氏はいう。

給与前払い制度は、低所得者にとっては、急な出費に備えて月に何度も給与を受け取ることができるため、借金をする必要がなくなる。しかし、給料をすぐに受け取れるということは、例えば、給料をすぐに使ってしまい、月末にお金がないといった負のスパイラルに陥る可能性がある。

この点についてPayflowは「利用を制限したい場合に備えて」雇用主のダッシュボードに「安全限度額」を設けているという。

「ほとんどの企業はこの上限を50%程度に設定し、従業員が毎月の給与で少なくとも残りの50%を常に受け取れるようにしています」とメナルド氏はいい「そうすれば、家賃など毎月の必要経費を十分に確保することができます」と付け加えた。

同社のシリーズAの資金調達は、Payflowの海外展開に充てられる。

また、ネオバンクへの進化という目標を達成するために、製品開発にも費やす予定だ。

もちろん、ネオバンクの中には、給与前払いを追加機能として提供する企業もある(例えば、Revolutなど)。

フィンテックの場合、スタートアップの勝負は、顧客の取り込みを最大化するためのさまざまな戦略やアプローチに集約される。その後、十分な牽引力があれば、人気のある機能のユーザーを、先の機能の成功によって資金を得た、より本格的な銀行サービスにアップセルするチャンスがあるのだ。

つまり、フィンテックの競争は非常にダイナミックであるということだ。

特定のユーザー層は、他のユーザーよりも忠実で乗り換えが少ないかもしれない。もし、そのような層に、同社のサービスを知ってもらい、忠誠心を高めるような粘着性の高い機能を通じて銀行サービスを売り込むことができれば、今後何年にもわたって一連のサービスをクロスセルできる、解約の少ない銀行顧客基盤ができるかもしれない。もしくは、それがフィンテックの夢というものだろう。

製品開発の面では、Payflowは「スーパーアプリ」を開発し、機能セットの拡張を始めている。

「2022年には、ブルーカラーの従業員にファイナンシャルウェルネスをもたらすことを通じて、B2Bの価値提案を強化する2つの機能が追加されます。その後、多くのB2C機能を開発することで、(アプリの計画は)本質的にネオバンクに変わります」とメナルド氏はいう。

Payflowは、給与前払いSaaS事業を消費者直結のネオバンクに進化させるスケジュールを明らかにしていないが、メナルド氏は、顧客ベースを10倍以上に拡大したいと示唆し「このコンセプトは、数百万人のユーザーを獲得したときに、特に威力を発揮します」と述べた。

「2022年中に最初のD2C機能を開始する予定です」と彼は付け加えた。

スペインで顧客基盤を5倍に拡大することを目標に、市場統合のために新たな資金調達のうち300万ドル(約3億4300万円)を費やす計画である自国市場から、かなり大きな成長を期待している。

市場拡大の面では、Payflowは、すでにサービスを提供しているチリとコロンビアに加え、スペイン以外の2つの市場に進出することを計画している。

拡大は欧州と中南米が中心になる予定だ。

現在、イタリアとポルトガルで試験運用を行っている。また、ラテンアメリカでも2022年中にもう1市場開設する予定というから、2022年中に(現在の)3市場から合計5市場に拡大することになりそうである。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

スペインがスタートアップ法成立へ前進、税制面で優遇や手続きを簡素化

スペイン政府は、スタートアップ法草案の詳細に同意し、議会へ提出した。議会は法案採択の議決に先立ち審議を行う。内容を修正する可能性もある。

閣僚理事会が現地時間12月10日、草案採択を発表した。この草案には、スペインでスタートアップを設立したり、スタートアップに投資したりする際の官僚主義的な障害を取り除くための重要な措置が含まれているという。

また、起業家やデジタル人材にとってスペインをより魅力的な場にするための、ストックオプションやビザの取得に関する改革も含まれている。

スペイン政府はリリースで、今回のパッケージには「ストックオプションのリターン関してEUで最も有利な扱い」が含まれていると述べた。

閣僚らは、ストックオプションの所得に対する非課税枠を、年間1万2000ユーロ(約153万円)から5万ユーロ(約640万円)に引き上げることで合意した。

また、この草案は、株の売却と会社の上場のいずれかの日まで課税を繰り延べると規定している。

その他の注目すべき税制措置としては、法人税および非居住者所得税の4年間の引き下げ(25%から15%へ)がある。これは、大きな障壁への取り組みだ。スタートアップは普通、創業期に売り上げの計上に力を注がないからだ(現行の規則では、一般的な企業と同じ税率が適用される)。

閣僚会議が採択した草案によると、新規 または最近設立された企業への投資に対する控除額の上限も年間6万ユーロ(約768万円)から10万ユーロ(約1280万円)へ引き上げられた。控除率も30%から50%になり「最近設立された」とみなす期間も延長される。

また、この改革は、スペインの創業者が抱えるもう1つの不満、スペインでの起業にかかるコストと官僚的手続きにも対処することになりそうだ。それらのせいで、スペイン国内にオフィスを構えて製品を開発したとしても、ヨーロッパの他の場所で事業を立ち上げる創業者もいる。

今回の法案では、会社設立の手続きが「合理化」され、公証人や登記の費用が不要となり、オンラインで完了できるようになるという。

スタートアップは、オンラインポータルで各種申告を提出し、特典を受けることもできる。

キーボードスタートアップであるThingThingの共同創業者であるOlivier Plante(オリビエ・プランテ)氏は、スペインの高いコストのせいで、2015年に英国でスタートアップを法人化した際、そうせざる得ないと感じたと話す。同社は、スペインにオフィスを構え、Fleksy(キーボードSDK事業)を開発している。

「私たちは3年間、1ユーロも稼げませんでした」と同氏は説明した。「最初の数カ月は、登記簿、株式、銀行、公証人(彼らは寄生虫のようなものです)など、事業の開始に多額の資金が必要でした。スペインでは最大5000ユーロ(約64万円)かかるところ、英国では70ポンド(約1万500円)で済んだのです」。

プランテ氏は、改革パッケージを歓迎している。同氏にとって最も重要な2つの点は、スタートアップの設立手続きを簡素化することと、初期段階での法人税率の引き下げだ。

現在のアプローチは、基本的に「起業家精神を初日から殺すものです」とプランテ氏はいう。あるいは、創業者となりうる人々を、創業するのに十分な資金を蓄えられる立場にある人々に限定しているという。「本当の起業家は、往々にして手段を選ばないものなのです」と指摘する。「そしてスペインでは、根本的に、貧しい人々が豊かになることができません」。

スペインのスタートアップ団体であるスペインスタートアップ協会も、閣僚会議による草案採択を歓迎したが、全文発表後に詳細を確認したいとしている。

また、議会がこの提案をさらに改善することを期待していると述べた。企業がスタートアップとみなされる年数をさらに長くすることや、(草案がそうなっていないとの仮定で)制限する条件を変更する可能性も示唆した(例えば、スタートアップが適格となるために、スタッフの60%がスペイン国内にいる必要がある、売上高がたった500万ユーロ[約6億4000万円]までであるなど)。

同協会は、スタートアップ投資家に対する税控除の拡大については「成功している他のエコシステムと同等になるすばらしいニュースだ」と、非常に高く評価している。

また、この改革案には、起業家精神を刺激するさまざまな施策が盛り込まれている。例えば従業員として別の仕事にも就いている起業家は、社会保障制度へ2回拠出する必要がなくなる(これはブートストラッピングを阻害する要因となる)。また、規制業種では、新しいサービスやMVP(実用最小限の製品)の開発を促進するため、サンドボックスやトライアルライセンスの新設が計画されている。

ただし、具体的な内容が国会でどのように修正されるかは注目だ。

法案可決の時期は、政府関係者がTechCrunchに語ったところによると2022年前半だが、可決期限は同年末までだという。

資金面では、スペイン政府は最大40億ユーロ(約5120億円)の投資目標を掲げている。欧州連合(EU)のコロナウイルス復興資金の活用も含め、スタートアップの成長を促す。

スペインのスタートアップ改革のための10カ年計画については、TechCrunchが2021年初めに行った、スペインの起業家戦略を担当するFrancisco Polo(フランシスコ・ポロ)高等弁務官へのインタビューをチェックして欲しい。

関連記事:スタートアップを経済の推進役に据えるスペインの10年計画

画像クレジット:AntoinePound / Flickr under a CC BY 2.0 license..

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

モバイルキーボードソフトウェアFleksyがシリーズAで約1.8億円調達、10倍の成長を遂げたキーボードSDK事業を拡大

バルセロナを拠点とするモバイルキーボードソフトウェアメーカーのFleksy(フレキシー)が160万ドル(約1億8250万円)のシリーズAを獲得し、AndroidおよびiOS向けのホワイトラベルSDKのB2Bへの移行を進めている。

今回のラウンドはスペインの資産管理会社Inveready(インベレディ)が主導。また、既存の投資家であるSOSVとSimile Venture Partners(シミールベンチャー・パートナーズ)からも資金提供を受けている。

今回のシリーズAにより、2015年の創業以来のこれまでの総調達額は300万ドル(約3億4200万円)弱となった。

AIキーボードメーカーである同社は、スマートフォンのサードパーティ製キーボードの分野で長く活躍しており、当初は生産性向上に特化したキーボードThingThing(シングシング)を開発していた。その後米国で有名なカスタムキーボードFleksy開発チームがPinterestに買収された後、停止状態となっていた)のアセットを買収し、以来Fleksyの開発に全力を注いでいる。

しかし、コンシューマー向けカスタムキーボードの分野で収益化を図るのは至難の技である。今や単語予測やスワイプ入力などの機能がスマートフォンのネイティブキーボードに組み込まれているため、サードパーティ製のアドオンの価値は低下しているからだ。

また、AppleやGoogleのような大手企業も独特の方法でこの分野で幅を利かせている(例えば、iOSにおける頼りないサードパーティ製キーボードの実装状況によって、ユーザーはAppleのネイティブキーボードから乗り換えられないでいる。また、GoogleのPlay Storeは一時期に不愉快なポリシーを実施していた)。

Fleksyは2020年SDKを発表して以来、カラーチェンジやブランド化などさまざまな方法で適応させることができ、強力な予測機能や文脈に応じたカスタムAIキーボードソフトウェアを必要とする他のアプリメーカーや企業に、同社キーボード技術のライセンス供与を行ってきた。

キーボードSDKは、サードパーティがユーザーをより深く知るために、あるいは自社の販売促進のために使用することも可能だ。

またFleksyがウェブサイトに掲載している、SDKを介してクライアントが実装できる機能としては、キーボードに文脈に応じた広告を埋め込む機能(文脈に応じて製品やサービスを提案し、トリガーを設定して適切なタイミングであらゆるアプリにブランドを表示する機能)や「ショップがキーボードからマーケティング資料、請求書、更新情報、タスクを送信したり、支払いを徴収したりできるようになる」という近日公開予定のCRM機能などが挙げられる。

セキュリティ関連の機能も「近日公開」とされており「データ漏洩や機密情報の流出防止、リスクを抱えた従業員の監視、メッセージの保護、不正行為の防止」などを実現するカスタム機能も完備する予定だという。

このようなB2B戦略と並行して、同社はコンシューマー向けソフトウェアの分野にも注力しており、GoogleのGboard(ユーザーの検索データをGoogleに送っている)のようなソフトウェアとの差別化要因としてユーザーのプライバシーを強く強調している。また最近では「アートキーボード」で顧客の心を掴もうと試みていた。

しかし、同社の重心がB2Bに移行しているというのは明白だ。「Fleksy for Business」のメッセージがウェブサイト全面に押し出され、ディープテックな雰囲気を放つデザインに一新されている。

それでもコンシューマー向けキーボードはコアなファンのためにも、また、ショーケースやテストベッドとしての有用性を考えても残り続けることだろう。

「Google やAppleなどの大手企業が公平に競争してくれないため、消費者分野は厳しいものになっています。そこで私たちは、他の企業が優れたキーボード体験やそれを超えた体験を構築するのをサポートしてライセンス料によって提供するという、収益性の高いニッチな分野を見つけたのです」と、FleksyのCEOであり、ThingThingのCEO兼共同設立者でもあるOlivier Plante(オリビエ・プランテ)氏はいう。「我々が作り上げたものはなかなか簡単に作れるものではないので、こういったデジタル企業にとっては非常に使いやすい製品になっています」。

サードパーティが同社のキーボード技術を使ってユーザーをデータマイニングしようとするのではないかというプライバシーに関する疑問を投げかけたところ「FleksyのSDKは、各企業が独自の原理で成功するために必要なすべてのツールを提供します。Fleksyは技術的な役割を果たしているだけで、クライアント自身のプライバシースタンスには関与していません」と同氏は答えている。

ただし「誤解のないようにいうと、Fleksyのコンシューマー向けアプリは常にプライベートを守ります。その原理を変えることはありません」と付け加えている。

Fleksyによると、同社の技術をライセンス供与している企業は現在「数十社」にのぼり「パイプライン」にはさらに50社が含まれているという。また、SDKビジネスの収益は1年で10倍になったという。

シリーズAの規模が比較的小さかったのは、このような背景があったからだとプランテ氏は考えている。

「現在かなりの収益を生み出しているため、この程度しか必要なかったのです」とTechCrunchに話しており、今シリーズAを調達する理由は「より早く拡大するため」だという。

今回得た資金は、成長、雇用(現在13人のチームを拡大するため)、および顧客ポートフォリオの拡大のために使用される予定だ。

Fleksyにとってキーボード技術のライセンス供与に最適な市場は、現在米国と欧州となっているが、プランテ氏は世界中に顧客がいると考えている。

SDKはまた、デジタルヘルスやフィンテックからゲームまで、幅広い顧客層を惹きつけている。

「あらゆる企業が新たなキーボード体験を探し求めています。ウェブサイトの/solutions/にあるように、これらの業界、さらにはますます多くの業界がFleksy技術によって支えられるようになるでしょう」。

「当社にはさまざまなニーズを持つあらゆるタイプの顧客がいますが、サードパーティのブラックボックスではなく、すべてを自社で構築しているため、顧客に合わせてすべてを修正することができます。これは現在、他の企業では実現できないことです。そのため、例えばデジタルヘルス分野の企業は、技術スタックを完全にコントロールできる収益性の高い企業と提携することができるのです」と同氏。

「Fleksy SDKは、レイアウトや辞書からオートコレクトや予測、センチメントなどを支えるコアエンジンに至るまで、さまざまな方法で変更を加えることができます。これこそがFleksyが選ばれる理由なのですが、将来的には『画面入力と言えばFleksy』という、より大きなビジョンを実現できるよう取り組んでいます」。

シリーズAの資金調達の一環として、InvereadyのIgnacio Fonts(イグナシオ・フォンツ)氏がFleksyの取締役に就任する。

フォンツ氏は声明中で次のように述べている。「私たちは、パーソナル・コンピューティング(携帯電話、モバイル、デスクトップ)デバイスのコントロールポイントの1つであるキーボード技術において、世界的なリーダーの地位を獲得したFleksyチームに参加できることを大変うれしく思います。今回のラウンドにより、ユーザーにはデバイスとの新しい関わり方を、企業には顧客に関する新しい洞察を提供する、非常に魅力的なロードマップの開発を加速させることができるでしょう」。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

Netflixがポーランド、イタリア、スペインにて会員限定でモバイルゲーム3作品を新たに提供

Netflix(ネットフリックス)は、欧州のいくつかのマーケットで会員だけが利用できるゲーム3作品を投入し、モバイルゲーム促進にさらに注力している。同社は現地時間9月28日、カジュアルゲーム3作品「Shooting Hoops」「Teeter Up」「Card Blast」の提供をスペイン、イタリア、ポーランドで開始した。同社はポーランドでこのほど、初の会員専用モバイルゲームの販促をAndroidアプリ内で始めていた

新しい作品も同じモデルで利用できるようになる。Netflixアプリ内にある新しい「ゲーム」タブから、対象国の会員は居住国のGoogle Play Storeにあるゲームのリストに案内される。そして他のアプリでもそうするように、そこでゲームをダウンロードインストールする。ただ、ログインするとき、プレイを開始するのにNetflixのクレデンシャルが必要だ。

関連記事:Netflixが会員向けにモバイルゲームのテストを開始、まずはポーランドで

新しいゲームは無料でプレイでき、広告やアプリ内購入もない。Netflixのゲームタブで利用できるようになった最初の2つの作品は人気シリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」と結びついていたが、今回の新しいゲームは同社の映画や番組とは無関係だ。新しいゲームはシンプルで、さまざなまゲーマーにアピールするカジュアルなゲームだ。こうした動きは、同社が単なるストリーミングコンテンツを超えて、幅広いエンターテインメントの一部にモバイルゲームを含めようと注力している投資の拡大を表している。

ポーランドでは9月28日から、すでに展開されている2つの「ストレンジャー・シングス」作品に新しいゲームが加わる。一方、イタリアとスペインのNetflix会員は新しいゲーム3作品と既存の2作品がプレイできるようになる。

ゲームは正式には太平洋標準時間9月28日午前8時、イタリアとスペインでは同日午後5時から、Netflixのサービスで利用できるようになる。

同社は第2四半期決算会見時にゲーム分野へと事業を拡大する計画について言及した。その際、このモデルをどのようなものにするか試行錯誤している初期段階だと述べた。

「オリジナル映画やアニメーション、脚本のないテレビへの進出と同様に、ゲームは当社にとって新たなコンテンツカテゴリーだととらえています」と株主にあてたレターには書かれ、そしてまずはモバイルデバイス向けの無料ゲームに注力すると付け加えている。「オリジナルのプログラミングに注力して10年近くがすぎ、当社の会員がどのようにゲームを評価しているかを学んでしかるべき時だと考えています」と説明した。

Google PlayにあるTeeter Uのスクリーンショット

Netflixは8月下旬、テキサス州アレン拠点のゲームスタジオBonusXPが制作した2つの「ストレンジャー・シングス」作品をNetflixの独占コンテンツに移したときに、そうした発言を履行した。ただ、これらのゲームは以前Play Storeで利用できたもので、すでにインストールした人は引き続きプレイできる。しかし新しいゲーマーは「Stranger Things:1984」と「Stranger Things 3:The Game」をNetflixのアプリでしか利用できない。

同じモデルが新たにリリースされる作品でもとられる。「Card Blast」は米国拠点のRogue Gamesからライセンス貸与され「Shooting Hoops」と「Teeter Up」はカナダのデベロッパーFrosty Popからのものだ。

これらのデベロッパーの名前はPlay Storeの一覧には表示されず、ゲームそのものはNetflixのGoogle Playアカウントのもとで公開されている。

TechCrunchが偶然新タイトルの1つを見つけてNetflixにコメントを求めたところ、同社は立ち上げ計画を認め、モバイルゲーム拡大についての次のような声明を出した。

「現在進めているゲームの展開の一環として、スペイン、イタリアのNetflix会員は今日からAndroidで5つのモバイルゲームをプレイできます」と同社の広報担当は述べた。「この5つのゲームは『Stranger Things:1984』『Stranger Things 3:The Game』『Card Blast』『Teeter Up』『Shooting Hoops』で、これらはポーランドでも現在利用できます。まだかなり初期段階ですが、広告もアプリ内購入もないNetflix会員制の一環としてこうした当社独占のゲームを導入することに興奮しています」。

この前に同社は、ポーランドはアクティブモバイルゲーミングのオーディエンスを抱え、初期のフィードバックにうってつけであることから、モバイルゲームの初期テストマーケットとして同国を選んだと説明していた

同社は同様の理由で、そして欧州マーケット全体が同社にとって重要なものであることからイタリアとスペインを選んだとしている。

米国を含む他のマーケットでも将来どこかの時点でゲームを導入する計画だとNetflixは話しているが、それがいつになるのか言及はなかった。また、ゆくゆくはiOSでもゲームを展開することを目指している。

一連のゲームはポーランド、イタリア、スペインのNetflixのAndroidアプリにあるゲームタブで米国東部時間9月28日午前8時(太平洋時間午前11時、中央ヨーロッパ時間午後5時)から利用できるようになる。

画像クレジット:Netflix

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

スペインのInternxtは「分散型ストレージのCoinbase」を目指して約1.1億円を調達する

バレンシアを拠点とするスタートアップInternxt(インターネクスト)は、インターネットに接続している人なら誰でも大容量のアクセスが可能な分散型クラウドストレージを実現するという意欲的な計画を静かに続けている。

Internxtは、Juan Roig(フアン・ロイグ氏、スペインで最も賑わうスーパーマーケットチェーンの経営者であり2番目の億万長者)が所有するヨーロッパのVCファンドAngels Capital(エンジェルズキャピタル)と、マイアミに拠点を置くVenture City(ベンチャーシティ)を中心に、100万ドル(約1億1000万円)のシード資金を調達した。同社はこれまで、初期の開発資金として、トークンセールで約50万ドル(約5500万円)を調達していた。

このシード資金は、次の成長段階に向けて投入される。同社の前月比成長率は30%で、少なくともそれを維持できる自信があるとし、また、製品開発を加速させるために、大幅な人員の増強も計画している。

このスペインのスタートアップは、その短い歴史のほとんどを分散型インフラの開発に費やしてきたが、同社はそのインフラを、Google(グーグル)をはじめとする大手テック企業が提供する、主流のクラウドベースのアプリケーションよりも本質的に安全でプライベートなものだと主張している。

これは、データへの不正なアクセスを防ぐためにファイルが暗号化されているだけでなく、情報が高度に分散化されて保存されているためだ。小さなシャードに分割された情報は、複数のロケーションのストレージに分散されるが、そのストレージスペースはネットワーク上の他のユーザーから提供されるものだ(そして、そのスペースに対する報酬は、予想に違わず暗号資産で支払われる)。

創業者でもあるCEOのFran Villalba Segarra(フラン・ヴィラルバ・セガラ)氏は「これは分散型アーキテクチャであり、世界中にサーバーがある」という。そして「このアーキテクチャは、企業や個人が提供するストレージスペースを活用している。当社のインフラに接続したストレージ提供者は、データシャードをホストし、当社は提供者がホストするデータに対する報酬を支払う。これは、従来のアーキテクチャのようにデータセンターを借りて固定のストレージ料金を支払うという方法ではないため、より手頃な価格でサービスを提供できる」と語る。

そして「これは、Airbnb(エアビーアンドビー)やUber(ウーバー)と同じようなモデルであり、ストレージを大衆化したものだ」と付け加える。

Internxtは、2017年から3年間の研究開発を経て、1年前に最初のクラウドベースのファイルストレージアプリ「Drive(ドライブ)」を公開し、そして今回、Googleフォトのライバルとなる「Photos(フォト)」を発表した。

ヴィラルバ・セガラ氏によると、これまでのところ、マーケティングには重点を置いていないものの、約100万人のアクティブユーザーを集めているという。

Internxt Mailは、次にリリースを控える製品で、GoogleのフリーミアムウェブメールクライアントであるGメールや、そのGmailにプライバシー保護で勝ることを謳うProtonMail(プロトンメール)に対抗するためのものだ(同社に勝算がある理由については後述する)。

また、Internxt Send(ファイル転送アプリ)も近々発表される予定だ。

「Google Workspaceに置き換わる製品を開発しており、Googleとの競争ではGoogleと同じレベルになるように取り組んでいる」と同氏はいう。

1つの場所にしか保存されていないファイルは、他の人からアクセスされるという脆弱性がある。Internxtのアーキテクチャは、その問題を解決しようとしている。それがストレージプロバイダー自身であろうと(Googleのように、ユーザーのデータをデータマイニングすることでプライバシーを侵害するビジネスモデルかもしれない)、またはプロバイダーのセキュリティを突破しようとするハッカーや第三者であろうと、結果として、ユーザーのファイルを盗み見たり改ざんしたりするなど、不正なアクセスを許すことになる。

ネットワークが不正アクセスされた場合のセキュリティリスクには、ここ数年増加傾向にあるランサムウェア攻撃などがある。これは、ネットワークに侵入した攻撃者が、保存されているファイルの正当な所有者のアクセスを遮断し、情報を身代金として要求するものだ(通常、攻撃者独自の暗号化レイヤーを適用し、データを解除する代わりに支払いを要求する)。

Internxtは、サーバーやハードドライブにまとまって保存されているファイルは、格好の標的になるという考えに基づき、分散化を推進している。

この問題に対するInternxtの答えは、ゼロ知識暗号化と分散化を組み合わせた新しいファイルストレージインフラだ。つまり、ファイルを複数のセグメントに分割して複数のストレージに分散し、さらにミラーリングすることにより、ストレージの故障やハッキング攻撃、スヌープに対して高い耐性を実現する。

このアプローチは、クラウドサービスプロバイダーによるプライバシー侵害に対する懸念を低減する。というのも、Internxt自身さえもユーザーデータにアクセスできないからだ。

Internxtのビジネスモデルはシンプルで、段階的なサブスクリプションだ。既存および計画中のすべてのサービスをカバーする(現在は)1つのプランを提供し、必要なデータ量に応じていくつかのサブスクリプション料金を設定している(つまりこれも、無料の10GBから始まるフリーミアムだ)。

インターネットにおけるコアアーキテクチャを見直すことがユーザーにとって重要であると考えたのは、もちろんInternxtが初めてではない。

スコットランドのMaidSafe(メイドセーフ)は、10年以上も前から分散型インターネットの構築に取り組んでおり、10年間のテストを経て、2016年に初めてSafe Network(セーフネットワーク)と呼ばれる代替ネットワークのアルファテストを開始した。同社のインターネットを再発明するという長期的なミッションは今も続いている。

分散型クラウドストレージの分野におけるもう1つの(まだベテランとはいえない)競合企業は、企業ユーザーをターゲットにしているStorj(ストージ)だ。また、Filecoin(ファイルコイン)Sia(シア)も挙げられる。両社は、Bitcoin(ビットコイン)が暗号資産やブロックチェーン・分散化に対する起業家の関心に火をつけた後に生まれた、ブロックチェーン関連スタートアップの新しい波の一旦を担っている。

関連記事:クラウド上の余剰容量を活用する、分散ストレージサービス運営のStorjがエンタープライズに進出

では、Internxtのアプローチは、この複雑な最先端技術に長く取り組む、これらの分散型ストレージのライバル企業とはどのように違うのだろうか。

ヴィラルバ・セガラ氏は「欧州を拠点とするスタートアップで分散型ストレージに取り組んでいるのは当社だけだ(欧州連合ではない英国のメイドセーフを除いて)」とし「Storj、Sia、Filecoinなど……知る限りでは、他の企業はすべて米国を拠点としている」と、データ保護やプライバシーに関する欧州連合の法体系が米国の競合他社に対して優位に働いていると主張する。

同氏が挙げるもう1つの大きな差別化の要因は、ユーザビリティだ。前述の競合他社のサービスは「開発者が開発者のために作った」ものだと指摘する。一方、Internxtの目標は「分散型ストレージのCoinbase(コインベース)」に相当するものだという。つまり、非常に複雑なテクノロジーを、専門知識のないインターネットユーザーでも容易に使えるようにすることだ。

「ブロックチェーンの分野は、計り知れない可能性を秘めているにもかかわらず、非常に大規模なテクノロジーであるため、使用するのが非常に難しいという状況がよく見られる」と同氏はTechCrunchに語る。「本質的にコインベースがやろうとしていることは、より簡単に暗号資産に投資できるように、より使いやすいブロックチェーンをユーザーに提供することだ。だから、Internxtでも同じように、クラウドストレージのブロックチェーンを人々に届けようとしている。とてもわかりやすいインターフェイスで使いやすくすることなどだ」。

「分散型クラウドの分野では、事実上唯一の利用可能なサービスであり、それがStorjなど他社との大きな差別化要因となっている」。

「インフラの面では、SiaやStorjとよく似ている」と同氏は続ける。さらに、Proton Drive(プロトンドライブ。エンド・ツー・エンドの暗号化メールサービスであるプロトンメールのメーカーが提供するファイルストレージサービス)の「ゼロアクセス」暗号化アーキテクチャになぞらえ、Internxtの「ゼロ知識」暗号化も、クライアント側で暗号化されており、サービスプロバイダーがユーザーの情報を盗み見ることができないことを技術的に保証しているという(だから、プライバシーを侵害しないと会社を信じる以上の安心が得られるということだ)。

Internxtのゼロ知識暗号化は、既成のAES-256暗号を使用しているようだが、同社はスペインの大手サイバーセキュリティ企業S2 Grupo(エスツー・グルーポ)の監査を受けた「ミリタリーグレード」であり、クライアントサイドで暗号化を行い、オープンソース暗号を使用しているという。また、それに加え、暗号化されたデータを分散化するというステップも踏んでいる。そのため、セキュリティ面で付加的なメリットがあると、ヴィラルバ・セガラ氏はいう。

「暗号化に加え、データを断片化し、世界中に分散させている。つまり、基本的にサーバーがホストしているのは、暗号化されたデータシャードであり、たとえハッカーがそのようなサーバーにアクセスしても、そこにあるのは根本的に意味を成さない暗号化されたデータシャードであるため、さらに安全だ。当社でさえ、そのデータにはアクセスできない」。

「これにより、ハッカーや第三者によるデータアクセスに対するセキュリティが格段に向上した。そしてその上で、非常に優れたユーザーインターフェイスを構築している。これはユーザーが使い慣れたGoogleとほとんど同じインターフェイスであり、その点でもStorjやSiaとは大きな違いを生んでいる」と同氏は述べる。

Internxtのユーザーファイルを保存するストレージスペースは、ストレージスペースが余っているユーザーから提供されるものだ。ストレージスペースを提供しデータシャードをホストするユーザーには、暗号資産のマイクロペイメントでインセンティブが与えられる。つまり、単にノートパソコンでInternxtに接続している個人ユーザーからも、大量の未使用ストレージ容量を持つデータセンター企業からもストレージスペースが提供される可能性があるということだ(ヴィラルバ・セガラ氏によると、OVH[オー・ヴィ・エイチ]など、いくつかのデータセンター企業が同社のネットワークに接続しているという)。

「当社は(ストレージを確保するための)直接的な契約はしていない。誰でもInternxtのネットワークに接続することができる。つまり、提供可能なストレージ容量を持つデータセンターは、Internxtのネットワークに接続すれば、報酬を得られる。当社は、従来の方法でデータセンターにストレージ料金を支払うことに比べれば、それほど多くの料金を支払うことはない」と同氏はいい、このアプローチを、ホストとゲストの両方を持つAirbnbや、ドライバーとライダーを必要とするUberに例えている。

「当社はユーザーとデータセンターをつなぐプラットフォームだが、当社自体がデータをホストすることはない」。

Internxtでは、ネットワークのアップタイムとサービスの質を確保するために、レピュテーションシステムを使ってストレージプロバイダーを管理している。また、ブロックチェーンの「プルーフ・オブ・ワーク」チャレンジを適用して、ノードオペレーターがクレームするデータを実際に保存していることを確認している。

同氏は「分散型アーキテクチャの特性上、一定の信頼性を確保する必要がある」とし「そのため、ブロックチェーンテクノロジーを利用する。自社のデータセンターにデータを保管する場合は、信頼性を確保するという点では簡単だ。しかし、分散型アーキテクチャにデータを保存する場合は、プライバシーの保護や価格の安さなど多くのメリットがあるものの、データを実際に保存しているかどうかの確認が必要であるなど、デメリットもある」と述べる。

ストレージスペースの提供者への支払いもブロックチェーンテクノロジーによって行われる。ヴィラルバ・セガラ氏によると、世界中の約1万人に及ぶノードオペレーターに対して、大規模なマイクロペイメントを自動化するには、ブロックチェーン技術が唯一の方法だという。

ブロックチェーンの基盤となるテクノロジー「プルーフ・オブ・ワーク」は、計算にともなうエネルギー消費の問題を指摘されている。同氏は、エネルギーコストの問題について、Internxtの分散型アーキテクチャが、データセンターによる従来のアーキテクチャよりもエネルギー効率が高いことを示唆している。これは、データシャードがアクセスをリクエストしたユーザーの近くに配置される可能性が高いためであり、パケットを取得するために必要なエネルギーは、常に世界の数カ所に集中しているデータセンターから取得するのに比べて低減される。

「エネルギー消費の観点から見ると、Internxtは、従来のクラウドストレージサービスよりもはるかにエネルギー効率が高いことがわかった。なぜか?考えてみて欲しい。Internxtでは、ファイルをミラーリングし世界中に保存している。Dropboxなど特定の場所から送信されたファイルにアクセスすることは、実際には不可能だ。基本的に、DropboxやGoogleドライブにアクセスしてファイルをダウンロードする場合、テキサス州などにあるデータセンターから送信される。そのため、データ転送には膨大なエネルギーが消費されるが、人々はそれについて考えていない」と同氏は主張する。

「データセンターのエネルギー消費量は、記憶が正しければすでに全世界のエネルギー消費量の2%*に達している。そのため、レイテンシーが利用可能で、ユーザーの近くからファイルを送ることができれば、ファイル転送はより速くなり、その結果はすべて当社のレピュテーションシステムに反映される。したがって、Internxtのアルゴリズムは、ユーザーに近いファイルを送ることで、多くのエネルギーを節約することができる。これを数百万人のユーザーと数百万テラバイトの単位で計算すると、実際にはかなりのエネルギー消費と当社のコストを削減できることになる」。

では、ユーザーから見たレイテンシーはどうだろうか。Internxtへのファイルのアップロードや、保存されているファイルのダウンロードのため、ユーザーがアクセスする際、Googleドライブなどと比べて顕著な遅延はあるのだろうか。

ヴィラルバ・セガラ氏によると、断片化されたファイルをユーザーの近くに保存することで、遅延を補うことができるという。しかし、主流のクラウドストレージサービスと比較して、若干の速度差があることも認めている。

「アップロードとダウンロードのスピードについては、GoogleドライブやDropboxにほぼ匹敵する」と同氏はいい「また、そういった企業は10年以上の歴史があり、サービスは非常に最適化されている。加えて従来型のクラウドアーキテクチャを採用しており、比較的シンプルで構築しやすく、何千人もの従業員を抱えているため、スピードなどの面では明らかに当社のサービスよりもはるかに優れている。しかし、当社は主流のストレージサービスに追いつきつつあり、Internxtのスピードをそのレベルに引き上げるとともに、当社のアーキテクチャとサービスにできるだけ多くの機能を組み入れることを目指して、全力で取り組んでいる」と述べる。

「基本的には、使いやすさという点ではプロトンドライブやTresorit(トレソリット)のレベルにあると考えている」とし、遅延について「Googleドライブに非常に近づいている。しかし、平均的なユーザーにとってはそれほど大きな違いはないはずだ。そしてすでに述べたように、当社のサービスを文字通りGoogleと同じように利用できるようにするため、できる限りの努力をしている。しかし、InternxtがStorj、Sia、メイドセーフの何年も先を行っていることは確かだ」と述べる。

Internxtは現在、わずか20人のチームでこのような複雑なネットワークを構築している。しかし、新たなシード資金を手にしたことから、今後数カ月の間に雇用を拡大することで、製品開発を加速させ、成長を維持し、競争力を高めていくことを計画している。

「シリーズAを実施する頃には、Internxtの従業員は約100人になっているはずだ」とヴィラルバ・セガラ氏はいう。そして、次のように続ける。「シリーズAの準備はすでに進めている。シードラウンドを終了したばかりだが、成長の速さから、米国やロンドンの有力なVCファンドから声がかかっている」。

「かなり大きなシリーズAになるだろう。スペインで最大のシリーズAになるかもしれない。シリーズAまで、これまでの成長率である前月比30%以上の成長を計画している」。

同氏はまた、シリーズAでは5000万ドル(約55億円)の評価額での資金調達を目指すとTechCrunchに語る。

「まさにシードラウンドを終えたばかりのため1年後に行う予定だったが、多くのVCから声をかけてもらっているので、年内に実施することになるかもしれない」といい「しかし、時間は問題ではない。最も重要なことは、目標とする最低評価額を達成できるかどうかだ」と語った。

注記:IEA(イー・アイ・エー)によると、2019年の世界の電力消費量のうち、データセンターとデータ伝送ネットワークは、それぞれ約1%を占める。

画像クレジット:Internxt

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

スタートアップを経済の推進役に据えるスペインの10年計画

スペインはスタートアップを支援する法案の成立を目指して準備を進めている。最近ベールを脱いだこの大規模かつ大胆な改革計画は、2030年までに同国を「スペイン起業国家」(若干ぎこちない西和翻訳だが)に作り変えるという、実に壮大な目標を掲げている。

ペドロ・サンチェス首相は2020年12月、ウェブサミットの壇上で、間近に迫ったスタートアップ法の導入を発表し「高等長官」という役職を新たに設置することを発表した。高等長官の任務は、関連するすべての政府省庁と協力して全国規模の企業経済変革を成し遂げることだ。

この戦略は主に、スタートアップ投資を増やし、人材を惹きつけて確保すること、さらに、スケーラビリティを促進し、公共部門のイノベーションを進めてスペインのデジタル開発を支援できるようにすることを目指している。

上記のスタートアップ法は、スタートアップ分野に特化した同国初の法律である。スペインでの起業を簡便化することを目的とし、税の軽減や、海外からの投資に対する奨励金も導入するこの法律は、画期的なものになるだろう。

スペインの創業者と話してみると、行政、税金、資金調達など、彼らが不満を感じている問題が嫌になるほどたくさん出てくる。さらに、より大きな問題には文化が関係している。例えば、スタートアップが大きな視野で考えていない、リスクを冒して投資する貪欲さが投資家に欠けている、さらには、起業家に対する嫌疑心のようなものが投資業界に限らず社会全体に存在している、といった問題だ。一方で、スペインを本拠地とする投資家たちは、行政面での改革およびストックオプションの改正を待ちきれずにウズウズしている。こうした問題すべてを改善することが、スペイン政府が自ら決めた当面の使命だ。

TechCrunchは、スペインの起業国家戦略を監督する高等長官に任命されたFrancisco Polo(フランシスコ・ポロ)氏に、スタートアップエコシステムの成長計画に関する詳細と、起業家が最初に目にすることになる変化について話を聞いた。

「スペイン起業国家機関は首相直下の新設機関だ。つまり、国家使命を果たすという1つの目的のために各省庁間の調整を図ることができる首相権限の機関がスペインで初めて設置されたことになる。今回の国家使命の目標は、スペインを起業国家に作り変え、歴史上最大の社会的インパクトを生み出すことだ」とポロ氏はいう。

「我々の仕事はすべての省庁間の連携を図ることだ。機関として目指す一連の目的がある。第一に社会的インパクト、つまりスペイン起業国家戦略に含まれるさまざまな対策だ。第二に、この国家ミッションを軸として全員を一致団結させ、さまざまな派閥政党間の調整を図るという仕事もある」。

「最後に、『2030年までに、誰も置き去りにすることのない起業国家になる』というスペイン政府の決断を国民に周知することも注力している。以上が我々の仕事だ」。

大手企業の肩に乗ってスケールアップ

南ヨーロッパ諸国は、英国、フランス、ドイツなどの近隣諸国と比較して、スタートアップ投資を惹きつける力が弱い。その中でスペインは、そうした地理的に優位な国々となんとか渡り合っている。バルセロナ、マドリードなどの主要都市は、創業者たちにとって魅力的な場所として常に上位にランクインしている。これには、コストが比較的安いことや、地中海的ライフスタイルの人気が高いことが大きく貢献していると思われる。

スペインは、各都市の密集性、若者の失業率の高さ、オンラインでのコミュニケーションを喜んで受け入れる社交的な文化などが相まって、消費者向けのアプリを利用したビジネスにとって魅力的なテスト市場となっている。実際、スペイン市場は、2008年の金融危機で大打撃を受けた後、十数年にわたり、潜在的なディスラプト(創造的破壊)能力を実証してきた。

この期間に、(少なくとも成長速度と展望の大胆さという点で)世界的に注目を集めたスペインのスタートアップとしては、 Badi(バディ)、Cabify(キャビファイ)、Glovo(グロボ)、Jobandtalent(ジョブアンドタレント)、Red Points(レッド・ポインツ)、Sherpa.ai(シェルパ)、TravelPerk(トラベルパーク)、Typeform(タイプフォーム)、Wallapop(ワラポップ)などが挙げられる。

スペインの中道左派の連立政権は今、スタートアップ分野の指揮に本腰を入れることにより、経済と生産基盤における広範なデジタル化を推進しようとしている。ただし、ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)を織り込んだ形で、という条件付きだ。このデジタル化は「誰も置き去りにしないという断固とした原則」に基づいたものになる、とサンチェス首相は2020年12月に語った。

このため、サンチェス政権が長期間にわたって民間および公共部門の関係者に相談して絞り込んだ、エコシステムの支援と成長に必要とされる一連の政策措置は、社会的インパクトに細心の注意を払ったものになっている。つまり、デジタルセクターの規模拡大のみを大急ぎで推し進めてしまうと、同時に達成すべき目標であるさまざまなギャップの解消(地域格差、性別格差、社会経済的格差、世代間格差など)が実現されず、これらの格差がかえって開いてしまうのではという懸念を抱いているのだ。

「我々は政権内でも若い世代だ。我々の世代では、新しい革新的なシステムまたは産業経済システムを構築する際に社会的な影響を考慮しないということは考えられない。戦略モデルの根幹にインクルージョン政策も組み込んでいるのはそのためだ。つまり、この戦略全体は、男女間格差、地域格差、社会経済的格差、世代間格差を埋めることも目標にしている。歴史上最大の社会的インパクトを生み出せる起業国家を2030年までに構築することが最終目標だ」とポロ氏は説明する。

財源も確保されている。スペインは、EU全体の財源から受け取った「Next Generation EU」コロナ復興基金の一部をこの「起業国家」戦略に注ぎ込むつもりでいるからだ。

「具体的にいうと、2021年度には、戦略のさまざまな目的に予算が割り当てられる。策定を始めようと考えている主要な対策に15億ユーロ(約1950億円)以上を確保している。その後、2023年までに、45億ユーロ(約5860億円)以上が残りの対策に割り当てられる。つまり、基本的には、2021年から2023年までの期間でスペイン起業国家の基盤が形成されるということだ」とポロ氏はいう。

戦略の実施は関連省庁(必要に応じてプロジェクトの策定、法案の通過などを行う)に委ねられるが、そこでポロ氏の機関が政府のさまざまな部署や部門に「働きかけ」を行う。つまり、スタートアップと同じ立場に身を置いて「戦略が具体的に実施されるように支援する」わけだ。

この国家戦略では、起業家精神とスタートアップのイノベーションを、スペイン経済の既存セクターを形成するピラミッドの頂上で推進力となり「スペインが目指す革新的システムで陣頭指揮を執る」存在として位置づけている。「革新的な起業にのみ注力するつもりはない。スタートアップエコシステムと、実際にスペイン経済の推進力となっているセクターとの間で好循環を生み出す方法についても考えている。スペインのGDPの60%以上に相当する部分を動かしている10のセクターを挙げた理由もそこにある。これは最も重要な点だ」とポロ氏はいう。

リストに挙げられたセクターは、政府が支援を集中させて育てたいと考えているセクターだ。つまり、デジタル改革に熱心に取り組むことでより多くの利益を得られるセクターでもある。具体的には、観光と文化、モビリティ、ヘルス、建設と材料、エネルギーと環境保護、バンキングと金融、デジタル化と通信、農業・食品、バイオテクノロジーの各セクターだ。

「対象とするセクターをどこかの時点で絞り込む必要があると判断し、スペインのGDPの60%に相当するセクターを挙げることで、我々が求めている変化を加速するための明確な方向性を示すことができると考えた。基本的に、このモデルで実現したい変化とは、これまで封じ込められていた革新的な起業家精神が、原動力となるセクターで機能し始め、これらのセクターが互いに助け合うことでさまざまな問題を解決できるようになる状況のことだ」とポロ氏は説明する。

「例えば、投資の場合、大手企業が現在よりも投資を大幅に増やし始めたら、これも革新的スタートアップシステムへの道筋として加速していく。あるいは、スペインのスタートアップ企業とスケールアップ企業が、人材を惹きつけて維持するために海外企業と協力するようになったらどうだろうか。国として、より有利なポジションに立てるようになるだろう」。

「私が考える最高の例はスケールアップだ。大手企業の肩に乗っかってスケールアップするのが一番ではないだろうか。スペインにはさまざまな市場で世界クラスの国際的な企業が多数存在している。すでに市場に存在していて、ノウハウを持っており、短期間でスケールアップとして成熟するのを支援してくれる企業と一緒にスケールアップできるなら、それが一番ではないだろうか。このように、生み出すことができる好循環は多数存在している。推進力となるさまざまなセクターに広くアピールしていきたいと考えているのはそのためだ。これを実現するためにすべての国民の力が必要であることを国全体に知ってもらいたいと考えている」。

マドリードのEl Retiro Park公園の外に置かれたLimeのシェア用電動スクーター(画像クレジット:Natasha Lomas/TechCrunch)

デジタルデバイド

もちろん、デジタル化自体も格差を作り出す。これは、世界的なパンデミックではっきりと示されたことだ。このような状況では、学校に行けなくなった子どもたちの成長は、インターネットアクセス環境があるかどうか、コンピュターが使えるかどうかに大きく左右される。

すべての年齢層の働き手にデジタル化という同じ道を進んでもらうためにはある程度の再教育とスキルの向上が必要となるが、そのような大規模な産業転換を成功させるのはもちろん簡単なことではない。だが、たとえそうだとしても、ソーシャルインクルージョンを前提として起業家の育成を進めるという原則は重要なことのように思える。

「スペイン起業国家」を10年計画にしたということは、インクルージョンには時間が必要だという事実を政府も認識しているということなのだろう。

ポロ氏によると、このような長期の計画を策定することには、スペインの政策は短期的なものばかりだというよくある批判に対応する意図もあるという。同氏は「特にスペイン国内では、政策がいつも短期的な視野でしか考えられていないという批判が絶えなかった。この国家戦略は、現政権が短期的視野の問題に対応するだけでなく、スペインの将来にも備えようとしている証拠だ」と指摘し「長期的なビジョンを提示することは良いことだと確信しているし、それが社会の要求に応えることだと思っている」と付け加えた。

スペインには別の側面もある。この10年ほどで、デジタル技術の進歩が明確な社会的影響を与えたという申し立てを欧州の法廷に持ち込んで勝訴した国というイメージが定着したのだ。例えば、2010年には、あるスペイン人が自分に関する古い情報をインデックスから削除するようGoogle(グーグル)に要求したが拒否されたため、訴訟を起こした。その後、2014年に、欧州最高裁判所は俗に「忘れられる権利」と呼ばれる権利を支持し、原告勝訴を言い渡した。

Uber(ウーバー)の規制回避行為に対して訴えを起こし、勝訴したのもスペインのタクシー業界だった。このケースでも、2017年、欧州の最高裁は、ウーバーは同社が主張してきたような単なるテクノロジープラットフォームではなく輸送サービスであり、地元の都市の輸送規則に従う義務があるという判決を下した。

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それからしばらくの間、反ウーバー(および反キャビファイ)を主張するストライキが、スペインの路上でたびたび行われるようになった(ときには暴力沙汰になったこともある)。不正な競争を行っているアプリベースの同業者2社に対して法が適正に執行されていないと思われる、というのがタクシー業界の主張だった。

ギグプラットフォームは(欧州発のプラットフォームでさえ)こうした抗議行動を保護主義(または反イノベーション的)であるとして一笑に付す傾向があるが、彼らは自社のビジネスモデルの合法性に異議を申し立てる訴訟で頻繁に敗訴してきた(最近では英国最高裁で、ドライバー / ライダーは自営業者であるとするウーバーの分類を却下する判断が下された。これによりウーバーは多額の福利厚生費を支払う責任を負うことになる)。

これらすべての事例から言えるのは、スペイン社会には不公正に断固として抗議する気持ちが強い部分があり、華々しい最新のテックツールであっても、それが不公平な扱いの源泉になっているなら許すべきではないと感じると、積極的に、ときには本能的にこうした示威行動に出るということだ。つまり、スペイン人は自分にとって本当に重要なものとは何かを正確に把握しているようだ。

スペイン政府がスタートアップにやさしい政策を推進する国家戦略を発表した際に、誰も置き去りにしないこと(ソーシャルインクルージョン)をわざわざ強調した理由も、これで説明がつくかもしれない。

起業国家戦略に含まれる約50の支援政策の中では「スマートな規制」という考え方が言及され、(まずは規制準拠について頭を悩ませずに)製品を公にテストできるサンドボックス環境というアイデアが提案されている。

サンドボックス環境を公開するというアイデアは地元のギグプラットフォームGlovo(グロボ)から高い評価を得ている。グロボの共同創業者であるSacha Michaud(サーシャ・ミショー)氏は次のように述べている。「この考え方はとても重要だと思う。テスト段階で規制の悪夢に悩まされることなく製品やサービスをテストできる革新的なアイデアだ。これにより、イノベーションが大幅に促進される。この方法は金融サービスで効果的に機能するだけでなく、広範なテック領域にも適用できる可能性がある」。

ミショー氏によると、より多くの投資をスペインに惹きつけ、ストックオプションを改正し、地元企業の競争力を高めて人材を惹きつけられるようにすることも重要な優先課題だ。

同氏は、政府の起業国家戦略とスタートアップ法については全面的に支持するが、立法化には時間がかかると予想されるため、すぐに結果が出るとは思っていないという。

一方で、ミショー氏は、ギグプラットフォームを規制するために政府がすでに策定した計画には不満を持っている。そこでは、宅配業務がやり玉に挙げられていて不公平だと同氏はいう。労働省が取り組んできたこの改革は、ギグワーカーを自営業者として分類するギグプラットフォーム側に対して近年起こされた多くの訴訟を考慮に入れて策定されたものだ。それには、2020年スペインの最高裁でグロボが敗訴したケースも含まれる。

「グロボのケースでは、政府はライダーと宅配プラットフォームを規制することにのみ目を向け、その一方で、物流、サービス、搬入といった約50万人の自営労働者については現状維持を許している」とミショー氏は指摘し、このような扱いは「極めて差別的だ。ひと握りのテック企業のみを規制対象とし、IBEX35に含まれる従来のスペイン企業については現状維持を認めている」と語る。

労働法の改革の進捗状況について聞かれたポロ氏は、作業は進行中であるとだけ答えた。「彼らが行っている作業をすべて把握しているわけではない。私が知っているのは、おそらく君たちマスコミが知っているのと同程度のことだ。さまざまな企業に話を聞いているし、ギグプラットフォーム企業ともオープンな対話を続けている」と同氏はいう。

しかし、テック主導による働き方の変化を考慮に入れて規制改革を進めることが、より広範な意味での起業国家戦略における重要な要素ではないのか、と問われると、同氏は、この国家転換計画の「最終目標」は「雇用の量と質を上げることだ」という点も強調した。

「我々は常に、そのような質の高い雇用を継続して創出できる企業を育むよう努めている。スペインのさまざまなギグプラットフォーム企業が、この最終目標を理解していると認識している。彼らは、この目標の実現に向けて進むことで、企業も国も利益を享受することができることも理解している。そして、彼らが積極的に変革を行い、進化すれば、国も進化することになる」とポロ氏は語る。

本記事の執筆中、バルセロナの通りは、ラッパーのPablo Hasél(パブロ・ハーゼル)氏が自身のソーシャルメディアへの投稿(警察による暴行を非難するツイートなど)が原因で収監されたことに抗議するデモで大変な騒ぎになっている。スペインの裁判所は、ハーゼル氏の行為がテロリズムを美化するもので、刑法に違反していると判断した。

スペインの法律は長い間、テロリスト関連の領域において不当に厳しすぎると非難されてきた。例えば、Amnesty International(アムネスティ・インターナショナル)は、ハーゼル氏の収監を「表現の自由に対する過度かつ不当な制限」であると非難している。近代化を進める起業支援国家に変わろうとする一方で、裁判所がツイートの発言内容を根拠に容疑者を収監するというのは矛盾しているように思えるが、ポロ氏はその点を一蹴する(この法律に違反したアーティストや市民はハーゼル氏だけではない。いずれも、不面目なことに、ソーシャルメディアで発したジョークから始まっている)。

ポロ氏は次のように反論する。「矛盾するところは何もない。スペインは世界でも最も堅牢な民主主義国家の1つだ。これは何も我々自身が言っているのではなく世界的なランキングがそれを示している。さらに、スペインでは法の支配が機能している。このケースの場合、被疑者が法律で定められている一線を越えたことは明らかだ。言論の自由は無制限に認められるわけではない。他の人の権利を侵害しない範囲で、という条件がある。つまり、このケースは言論の自由とは残念ながら何の関係もない。パブロ・ハーゼル氏が収監されたのは、同氏がテロリズムを助長する発言をしたからだ」。

「ツイートでの発言が原因で収監」と聞いて国際社会はどう反応すると思うかと問われると、ポロ氏は、刑法を修正したいと考えているという最近の政府の発言を繰り返し「修正したい条項は確かにある。時代は進んでいるからだ。現在の我が国は1980年当時よりもはるかに成熟している。刑法にも修正すべき条項はある。しかし、そのことと、最近の事例とは何の関係もない」と付け加えた。

ラッパーのパブロ・ハーゼル氏の収監は言論の自由に反するとして抗議する、バルセロナ市内の街角の落書き(画像クレジット:Natasha Lomas/TechCrunch)

マインドセットを変えるための手段

より広範な文化的な課題、つまり、国家的なマインドセットをより起業家精神にあふれたものに変革する方法について、ポロ氏は、同氏に課せられたミッションの実現に自信を見せる。問題の全体像と国が提示している未来のビジョンにおける国民の位置づけの両方を国民自身が理解していること、そして政府が誰も置き去りにしないよう積極的に取り組んでいることを国民に分かってらもうことが重要だと同氏はいう。

ポロ氏は次のように説明する。「この点については自信がある。私が政界に入る前に従事していた職で蓄えた知識を活かせるからだ。マインドセットを変えるのに役立つと思う。私は以前、自分では到底できないと思っていたことが実はできることを理解する、つまり、マインドセットを変える方法を大勢の人に教えることを仕事にしていた。私の理解では、そのような文化的な変化を起こすためにまずやらなければならないことがある。それは、未来のビジョンを描くことだ」。

2030年までにスペインは起業国家になると同時に、歴史上最大の社会的インパクトを与えること、そしてそのための計画があることを我々が強く主張するのは、そのためだ。その計画では、起業に注目し、この新しい革新的モデルを引っ張ってもらう役目を果たしてもらう。経済の原動力となっているあらゆるセクターの力を活用して、世界的な経済国家としての成功を積み上げながらこの計画を実現していく。男女間格差、地域格差、社会経済的格差、世代格差をなくすために、この国家的戦略の基本部分にインクルージョン政策を含める理由もそこにある。

「文化的な側面を変えるには、国民を今の自分たちよりも優れた何かの構築に向けて団結させる必要がある。スペイン起業国家戦略によって、そのための最初の一歩を踏み出したと思っている。スタートアップ法がこの戦略と同じくらい重要だと言っているのは、そのためだ」とポロ氏はいう。

まもなく、スタートアップ法(別称anteproyecto de ley)の草案が提出される。この草案が閣僚会議で承認されると、国会での広範な審議を経て、必要に応じて修正が行われ、起業国家戦略と足並みをそろえて策定される最初の法律となる。これが、同戦略の最初の成果物となりそうだ。

ただし、この新しいスタートアップ法が成立するまでに、あとどのくらい時間がかかるのかは、まだわからない(スペインの政治には長い間、合意が欠如してきた。サンチェス首相の「革新連立政権」も、与党であるスペイン社会労働党による過半数の確保に2回続けて失敗した後にやっと確立された)。

法案可決に要する時間についてポロ氏は「それについてはまだ何とも言えない。承認までに要する期間は法案によって異なるからだ。ここで重要なのは、スタートアップ法にはすべてのプロセスが含まれているという点だ。つまり、承認に至るまでのすべての過程で完全に同意が得られるようにすることで、今後も堅牢な安定した法律になる」と説明する。

ポロ氏によると、エコシステムが「長年」求めてきたこの待望の法律が成立すれば、スタートアップの法的定義(他のタイプの企業との相違点を明確にするもの)から、スタートアップが人材を惹きつけて維持するための手段まで、多くの問題が解決されるという。

「ストックオプションを改正して、世界市場での人材確保競争で勝ち抜くための道具として使えるようにする必要がある」と同氏は言い、要するにスペインが、英国、フランス、ドイツなどの他の欧州諸国にはすでに存在している体制と競争できるようにすることが目標だと付け加えた。

「ビザも改正してそうした人材を再度、惹きつけ維持する必要がある。首相は投資の奨励、ある程度の減税についても話していた。エンジェル投資家にはより大きなインセンティブが必要であることは我々も理解している。プレシードおよびシードステージの投資については、法律で規定されたロジカルなシステムの導入が必要だ。他にもやるべきことはたくさんある。最終的な法案は経済産業省で作成され、その後閣僚会議に回される」と同氏は続ける。

ポロ氏は、スタートアップ法によって、スペインの創業者と投資家が持つあらゆる不満が即座に解消されるわけではないと警告する。当然だが、そこに至るまでには相当な時間がかかる。

「我々が戦略を立てるのもそのためだ」と同氏は強調する。「スタートアップ法への関心が高まっていることはわかっているが、私は常に、スタートアップ法と同じくらい重要なのがスペイン起業国家戦略であると言い続けている。スペインのエコシステムが抱える大きな問題を解決してくれるのは、まさにこの戦略だからだ。この戦略は、スペインが抱える4つの大きな課題に挑むものだ」。

「第一の課題は投資だ。我々はスペインでの投資の成熟速度を加速させる必要がある。投資件数は年々増えているし、状況は悪くない。今必要なことは、投資件数を加速度的に増やして、より早く成長し、近隣国(基本的にはドイツとフランス)との差を埋めることだ。この両国の投資件数はスペインの4~5倍にもなる。10年後には、スペインが欧州本土での革新的な起業家に対する投資をリードする存在になっていたいと思う」。

「第二の課題は人材だ。起業国家を構築するには、持てる人材をすべて注ぎ込む必要がある。そのため、国内の人材を育成することはもちろん、海外の人材も惹きつけて、その人材を維持する必要がある。さまざまなツール(仕組み)をスタートアップ法に含めることを検討してきた理由もそこにある」。

「第三の課題はスケールアップだ。スペインには、成功とはすなわち自社を売却することであると考えている企業がたくさんある。それはそれでまったく問題ない。だが、スペインが国として求めているのは、会社の売却を成功と同じ意味とは考えずに、世界中の他のスタートアップを買収することを考える企業が今後どんどん増えていくことだ。つまり、成長する企業、スケールアップする企業が増えていくことだ。今、大企業の構築を始めれば、2030年までには、スペインで質の高い数千の雇用が創出される。これが起業国家戦略の最終目標であり、最も重要な点だ」。

「第四の課題は、政権を起業家精神を持つ政権に変える、つまり、政権内において敏捷性を向上させ、ポジティブなベンチマークを打ち立てていくということだ。さらには、高リスクを厭わないベンチャーキャピタルファンドでさえできない投資をときには公的部門が行うことも意味する。こうしたビジョンを提示し、そのビジョンを達成するための手段を用意することこそ公的部門の役割だからだ。スペインのエコシステムが抱えるすべての課題のうち、この課題は戦略の中で組み立てる必要がある。スタートアップ法という1つの法律だけでなく、スペイン起業国家戦略に含まれる50の対策すべてを使って対処すべき課題だ」。

より包括的な起業国家戦略では、特定のプロジェクトによって今後2年間で策定すべき9つの優先アクションについて説明されている。ポロ氏は、このプロジェクトは、EUのコロナ復興基金によって近々に加速化されると見ている。

同氏は2つの優先プロジェクトを目玉として挙げている。1つは、起業家と政策立案者を広範なエコシステムに結びつけるネットワークを作ること。もう1つは、インキュベーターとアクセラレーターをつなげて創業者向けの国家支援ネットワークを構築することだ。どちらも、他の欧州諸国で採用されているアプローチから着想を得たものだ。

これらのプロジェクトの中にOficina Nacional de Emprendimientoというプロジェクトがある。これはフランスのLa French Techに強く触発されて立案したもので、起業家、投資家、およびエコシステムの他の構成要因が、中央政府、地域、CP評議会のあらゆるコラボレーション機会に参加するためのワンストップショップを作ることにより、それぞれの領域での起業家精神を向上させることを目的とする。

「また、Renace(Red Nacional de Centros de Emprendimientoの略)のようなプロジェクトもある。これもやはり、とても興味深い取り組みを行っているポルトガルのネットワークから着想を得たものだ。目的は、スペインのさまざまなインキュベーター、アクセラレーター、ベンチャービルダーをつなげることだ。まずはつなげて、そこから価値を付加していくのだが、その際にさまざまな格差に焦点を当てる」。

「Renaceでは、特に、地域間格差の解消に焦点を当てている。例えば、バルセロナに本社を置く企業に所属するカセレス在住のエンジニアと仕事をするとか、マラガで創業した会社に所属するバスク自治州在住のデザイナーのチームと仕事をするといったことができたら非常におもしろい。Renaceでは、国レベルで一体化することを目的としており、単に個々の都市だけでなく、起業国家になることを見据えている。スペインにはこうした仕組みを構築するポテンシャルがある。それと同時に、他にも多くの問題がある」。

フランスだけでもR&Dとデジタル分野の直接支援に年間数十億ドル(数千億円)を費やしている。スペインは、EUからの調達資金を加えても、財政的に豊かな北ヨーロッパ諸国の「エコシステム」の支出レベルにはおよびそうもない。しかし、ポロ氏によると、スペインの計画では、現在の予算と、集めることができるリソースを最大限に活用するという。したがって、Renaceプロジェクトでは既存のインキュベーターとアクセラレーターをつなげること(そして官民パートナーシップの形成などによって「新しい価値」を追加すること)が重要となる。

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「スペインの起業国家戦略を読めば気づくと思うが、この計画は、起業国家の構築を開始するために億万長者がテーブルの上に用意した資金で始めるといった安易なものではない。そうではなく、ビジョンを作成し、手持ちのさまざまなピースを組み合わせて堅実に築いていくものだ。スペインという国が持っているさまざまな資産をうまく連携させて、今手元にあるすべてのものを最大限に活用できるようにする、そんな計画だ」。

スペインはすでにスタートアップクラスターの最前線でよく健闘している、とポロ氏は主張する。欧州で「起業に最も適した都市」といった類のリストで同一国内の都市がいくつも上位10位にランクインしているのは、ドイツ以外ではスペインだけだ。「イノベーションを起こす起業家を求める世界的な競争」に参戦するスペインの都市が増えているため、こうしたリストにおけるスペインの順位はさらに上がっている、と同氏はいう。

同氏はまた「スペインのあちこちに、起業家がこの種の経済を形成するのを支援する場所になりたいと渇望している都市や地域が多数存在している。これからもっと増えるだろう」と指摘し、Renaceのソーシャルインクルージョンがもたらす価値に期待を寄せている。

「Renaceを通じて、前述の国家支援ネットワークを形成し、付加価値を生み出したい。ここでいう付加価値とは、サービスを提供し、公共部門と民間部門のパートナーシーップを形成して、国内に存在するさまざまな場所の価値を高めることだ。例えば、バルセロナにある会社が、カセレスなどの都市でたくさんのエンジニアを見つけることができたらどうだろう。カセレスは給与が安いためバルセロナの会社の競争力が高まる。カセレスで最高水準の給与を支払ったとしてもバルセロナで支払う給与の3分の2ほどで済む。こうしてバルセロナの会社は競争力を高めることができるが、効果はそれだけではない。カセレスの都市に住んでいて、ずっとカセレスにいたい、家族と一緒に暮らしたい、カセレスで一生かけてやりたいことがある、と思っているエンジニアはカセレスに残ることができる。これが、地域間格差を解消して、真の意味で統合されたスタートアップ国家として歩み続けていく方法の一例だ」。

「スペイン起業国家戦略の最終目標は、スペインをさまざまな危機の影響を回避できる国家に作り変えることだ。例えば、2008年のリーマンショックでは大半の脆弱な雇用が一夜にして失われた。失業者数が数万人単位で増えたほどだった。若者は特に大きな打撃を受け、失業率は55%を超えた。移民や50歳以上の人たちも同じだった。あのような事態は二度と起こしたくない。そのためにスペインには何が必要か、という点について深い議論が行われ、国の生産基盤を変える必要がある、という結論に達した」と同氏は続ける。

「革新的な起業セクターが先頭に立ってスペインの新しい経済モデルを推進する戦略を組み立てる理由もそこにある。このモデルでは推進役となるさまざまな経済セクターを活用することになる。つまり、この戦略に記載されている10のセクターだ。どのセクターも21世紀の戦略には欠かせないものである。これが、新世代の政治家によって立案された、新世代の野望に応えようとする戦略であることを考えるとなおさらだ。しかし、その戦略ではこの現象の社会的影響が考慮されていない。我々がインクルージョン政策の策定にも注力しているのはそのためだ」。

ポロ氏はスペインを旅して回ったときに出会った特に有望なスタートアップについて、具体名を挙げることはせず、その代わりに、近い将来必ずスペイン国内および(政府が望むように)海外でビジネスをディスラプトすると同氏が信じている「多数の超革新的企業」(バッテリー充電会社から、衣類の新しい製造方法に取り組んでいる小売りディスラプタまで、広範囲に及ぶ)に言及した(同氏は簡潔に「想像が追い付かないほどの多様なイノベーション」と表現した)。

ポロ氏は、自分の最重要使命は「世界中にスペインの存在を知らしめること」だと認め、次のように付け加えた。「我々があらゆる機会をとらえて取り組んでいるのは、これらの企業の認知度を高めることだ。スペインには、国として成功するために、そして、歴史上最大の社会的インパクトを生み出す起業国家になるために必要なものがすべてそろっていることを、スペイン人だけでなく世界中の人たちに知らせることが我々の使命だ」。

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タグ:スペインコラム

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

会話型AIからプライバシー重視のフェデレーテッドラーニングに拡大するスペインのSherpaが約9.3億円調達

スペインのビルバオに本社を置くSherpaは、スペイン語話者向けの音声デジタルアシスタントと予測検索を早くから開発していたスタートアップだ。そのSherpaが新たな取り組みのために資金を調達した。新たな取り組みとは、企業を対象とするプライバシーファーストのAIサービスだ。

同社は850万ドル(約9億2800万円)を調達し、創業者でCEOのXabi Uribe-Etxebarria(シャビ・ウリベ – エトシェバリア)氏はこの資金で既存の会話型AIと検索サービスに加え、フェデレーテッドラーニング(連合学習)モデルに基づくプライバシー重視の機械学習プラットフォームを引き続き開発していくと述べた。スペインの保健行政が初期ユーザーとしてSherpaのサービスを利用し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報を分析して国内の救急医療機関の需要とキャパシティを予測していた。

今回の資金はApax DigitalマネージングパートナーのMarcelo Gigliani(マルセロ・ギリアーニ)氏、British Airways会長のAlex Cruz(アレックス・クルーズ)氏、スペインの投資会社であるMundi VenturesとEkarpenから調達した。今回はすでに完了していたシリーズAの1500万ドル(約16億3800万円)の追加だ。ということは、Sherpaは現在、さらに大規模なシリーズBも調達中であると考えられる。

会話型AI事業に失速が見えてきた中で、フェデレーテッドラーニングサービスの構築と商用化に方針転換することになった。

Sherpaはスペイン語の音声アシスタントで早い時期に注目を集めた。同社のアシスタントが初めて登場したのは、AppleのSiriやAmazonのAlexaなどが英語圏以外の市場への取り組みをそれほど強力に進めていない時期だった。

同社サービスのユーザー数は2019年時点で500万人を超えた。同社の会話型AIと予測検索サービスを利用している顧客には、スペインのメディア企業のPrisa、Volkswagen、Porsche、Samsungなどがある。

しかしウリベ – エトシェバリア氏は、アシスタント事業は現在も着実に成長してはいるものの難しい事実に直面したと語る。それは英語の音声アシスタント大手は結局スペイン語を追加し、大手が会話型AIへの投資を継続していけばSherpaがこの市場に長くとどまるのは不可能だろうということだ。

同氏は「どこかの企業と大きな取引をするのでない限り、我々がAmazonやAppleなどと闘っていくことはできないでしょう」という。

こうしてSherpaは、自社のAIエンジンを活用する新たな方法を探り始めた。

ウリベ – エトシェバリア氏は、同社の予測検索サービスを生産性向上アプリケーションに拡張するにはどうすればいいかと検討を始めたときにフェデレーテッドプライバシーが浮上したという。

同氏は「完璧なアシスタントはメールを読み、取るべき行動を理解できるでしょう。しかしこの動作に関してはプライバシーの問題があります」と説明する。同氏はある人から、アシスタントにメールの扱い方を「教える」手段の1つとしてフェデレーテッドラーニングを検討するよう助言を受けた。「我々が20人のスタッフを投入すれば、メールを読んで返信するようなものが作れるのではないかと思ったのです」という。

ウリベ – エトシェバリア氏によれば、Sherpaが開発したプラットフォームは予想より出来が良く、メールに優先順位をつけるだけでなくもっと利用できそうだと1年後に判断したという。つまりプライバシーに配慮して機密データから機械学習モデルをトレーニングするエンジンとして製品化し、販売するということだ。

このようなアプローチをしているのはSherpaだけではない。GoogleのTensorFlowもフェデレーテッドラーニングを活用しているし、Fate(Tencentのクラウドコンピューティングセキュリティ専門家が貢献している)や、フェデレーテッドラーニングのオープンソースライブラリであるPySyftも同様だ。

Sherpaは機密保持契約を交わした上でヘルスケアなどの分野でいくつかの企業と連携している。ウリベ – エトシェバリア氏は、近い将来に通信、小売、保険などの分野の顧客を公表する予定だと述べた。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Sherpa音声アシスタント資金調達スペイン

画像クレジット:Jose A. Bernat Bacete / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Kaori Koyama)

スペインがデリバリープラットフォームの配達員を従業員と区分する労働改革に合意

スペイン政府は現地時間3月11日、デリバリープラットフォームの配達員を従業員とする労働改革をめぐり、労働組合ならびに業界団体と合意に達したと明らかにした。

法案が可決されればDeliveroo、Glovo、UberEatsなどスペインマーケットで事業を展開しているプラットフォームに大きな影響が及ぶ可能性がある。

「労働社会経済省、労働組合のCCOOとUGT、業界団体CEOEとCEPYMEはデジタルプラットフォームを通じて消費財や商品の配達、流通を専門的に行っている労働者の雇用形態を確立することで合意しました」と労働社会経済省は声明で述べた。

「最高裁判所の裁定に沿って、合意はデジタル配達プラットフォームを通じてサービスを提供している労働者の雇用の推定を認めます」と付け加えた。

「雇用の推定は、サービスや労働条件のアルゴリズミックマネジメントでこの仕事を管理している企業を通じて有料の配達サービスを提供する労働者に認められます」。

厳密にどのように労働法を変更するか何カ月も交渉してきたが、労働改革での合意は政府がいま立法のプロセスを前に進められることを意味する。

欧州連合もより広範なギグワーカーの待遇を改善するか検討中であり、スペインでの合意のタイミングは特に興味深い。他のEU諸国に先駆けて、ギグワーカーの一部を従業員と認めるスペインの法制化計画はより広い地域政策の形成に影響を及ぼすかもしれない。

デジタル事業の成長のサポートを目的としたスペインにおける広範な改革は、政府が近代化への動きで誰も取り残されるべきではないと述べたために社会をかなり巻き込んだ。

労働改革の合意は、配達員の分類をめぐって近年スペインで展開された数多くの訴訟に続くものだ。裁判所によって訴訟の結果は異なっていたが、2020年最高裁判所が配達員の雇用分類に関する裁判で、スペイン発の配達プラットフォームGlovoの訴えを却下してこの問題に終止符を打ち、欧州の最高司法府への諮問も却下した。

スペインの配達プラットフォームは、計画されている改革が何千人という配達員の収入源喪失という結果を引き起こしかねないと主張した。

スペインでは最大3万人が配達プラットフォームでサービスを提供していると報道されている。

自営労働者によって提供されている労働に頼っているより確立された産業よりも、プラットフォームは政治的に簡単なターゲットとして不公平に標的にされているという非難もあった。

しかしながら配達スタートアップは、配達人を雇うための法的要件が自分たちのビジネスモデルにとって意味すること、あるいは(継続中の)収益性の追求についてあまり主張してこなかった。

スペインの労働改革合意のニュースについて、ギグプラットフォームビジネスモデルに対し長らく批判的だったMangrove Capital PartnersのCEOであるMark Tluszcz(マーク・トルシュチ)氏はTechCrunchに次のように述べた。「我々はギグプラットフォームが各国の法律による大きな構造改革を経なければならないだろうという考えを示してきました。ギグワーカーが従業員とみなされなければ、十分な権利や社会保障を持たない労働者のサブクラスをつくるリスクがあります。パンデミックは明らかに全労働者が保護されていることを確かなものにする必要性を示し、ギグプラットフォームが反対のことを主張するのはますます難しくなっています」

アルゴリズミック管理に要注目

今日発表された改革の合意の興味深い追加構成要素の中で、今後の法制化では労働者を管理するのに使われているアルゴリズムやAIシステムの基準について労働者の法定代理人が通知される必要があると政府は述べた。これは労働条件に影響を及ぼすかもしれない。

ここには雇用へのアクセスに関連している、そして労働者の成績やプロフィールをモニターしている評価制度のためのアルゴリズミックシステムが含まれる、と声明は明確に述べている。

この要素は欧州における最近の数多くの訴訟から刺激を得ているようだ。これらの訴訟は配車プラットフォームのアルゴリズミック管理と、プラットフォームが持っているデータへのドライバーのアクセスにフォーカスしていた。

英国でUberの雇用分類についての訴訟で勝訴した元UberドライバーのJames Farrer(ジェームス・ファラー)氏は、団体交渉のためにドライバーのデータトラストを確立する目的で非営利団体を立ち上げた。英国の最高裁判所はこのほどドライバーは従業員だと裁定した。同氏はまた直近のアルゴリズムとデータアクセスに関する訴訟にも加わっている。

スペインの労組は、プラットフォームと労働者の間にある力の不均衡に取り組むためのツールとして配達人を管理するのに使われているアルゴリズミックルールへのアクセスを要求することで似たような動きを取るようだ。

Uberの広報担当は、スペイン政府の発表に対し次のような声明を出した。

過去数週間、スペイン中の何千人という配達人が、彼らが最も価値を置いている独立性を奪うかもしれないこの提案された規制に反対するために団結してきました。Uberは労働者のフレキシビリティとコントロールを守りつつ、仕事の基準の向上と独立労働者へのより多くの便益提供に完全にコミットしています。当社は独立した労働をなくすのではなく改善するためにスペインの関係団体と協業したいと考えています。

DeliverooもまたTechCunchに次のような声明を送ってきた。

この提案はフレキシブルな業務に価値を置いている配達人、配達サービスの恩恵を受けているレストラン、オンデマンド配達を評価している顧客の利益に反しています。自営業者のままでいたいと抗議活動を行った何千人もの配達人の声は無視されました。

配達プラットフォームは、配達人が追加のセキュリティを持ちつつフレキシブルに働けるようにするために建設的な提案をし、強制的な再分類は配達人の仕事減につながり、レストラン業界にダメージを与え、プラットフォームの運営エリアを制限すると警告してきました。残念ながらこうしたメッセージもまた見落とされてきました。

何も確定していません。我々は引き続き、配達人が求めているフレキシビリティとセキュリティを政府が提供すべきだと主張します。前進する別の方法を模索するために今後もスペイン政府に働きかけます。我々は、配達人に耳を傾けてすぐに再考するよう政府に促しています。

Glovoの共同創業者Sacha Michaud(サシャ・ミショー)氏は以下の声明を出した。

労働省の姿勢はかなり過激で、同様の問題を解決するためにイタリアやフランスのような他のEU諸国が取っている動きと一致しません。

今日、政府は小売業者向けの財政援助11Bについて議論しています。にもかかわらず史上最も困難な経済混乱期の1つであるいま、その同じ小売業者にとって生命維持システムとして機能してきたサービスにさらなる障壁を設け、新たな難題を作っています。法案の通過は配達プラットフォームの運営にマイナスに影響します。

2020年、配達プラットフォームは新型コロナウイルスによってもたらされた多種多様な困難に対応する必要不可欠なサービスでした。そしてパンデミックはすぐに過去のものになるという兆しはありません。当社のパートナーの90%はローカルの独立したレストランや店舗ですが、彼らは生き延びるために当社のもののようなプラットフォームに頼ってきました。

規制は必要ですが、プラットフォームと労働者の両側の意見を考慮する必要があり、いずれもソリューションの一部になるようにアプローチされていません。

ギグワーク改善に関するEUの協議プロセスを前に、Uberはこのところ欧州のプラットフォーム労働者のために規制緩和を求めてロビー活動してきた。汎EUフレームワークの可能性を、現代の労働パターンと調和させるために地域の雇用規則を作り直す機会としてとらえている。しかしこの動きはEUの基準を下げようとしているという批判につながっている。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:スペインギグワーカー労働フードデリバリー

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

「ノーコード」チャットボットビルダーのLandbotがシリーズAで約8.3億円調達

「ノーコード」チャットボットビルダーを提供するバルセロナのLandbotが、スペイン・イスラエル系VCファームのSwanlaabが主導するシリーズAで800万ドル(約8億3000万円)を調達した。イノベーションを対象とするスペインの公的機関であるCDTIからも支援を受けた。以前に投資していたNauta Capital、Encomenda、Bankinterもこのラウンドに参加した。

Landbotは2018年にシードラウンドで220万ドル(約2億3000万円)を調達し、顧客数が900社を超えた。そのときにTechCrunchは同社に話を聞いている。それ以降、有料で利用している顧客が2200社、同社のツールを使っている人数は5万人となった(無料と有料のアカウントの合計)。

シードラウンド以降に経常収益も10倍になり、新たな資金を得てさらに成長が続くと期待されている。

Landbotによれば、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大により会話型ランディングページの需要は急増したという。あらゆる業種の企業がインハウスのIT部門に多額の投資をせずに、増加しているデジタルの来訪者とのコミュニケーションを自動化しようとしているためだ。

中小企業から大企業内のチームや製品まで、さまざまな企業がLandbotを利用している。Landbotの顧客にはNestlé、MediaMarkt、CocaCola、Cepsa、PcComponentes、Prudentialなどが名を連ねる。

LandbotのCEOで共同創業者のJiaqi Pan(ヒアキ・パン)氏はTechCrunchに対し「eコマース、金融サービス、マーケティング代理店などの業界から強力な引きがあります。eコマースは新型コロナウイルス感染拡大以降、我々にとって最も成長が大きく、この業界の顧客は2倍になりました」と語る。

今回調達した資金でセールス、マーケティング、エンジニアリングの人材を雇用して、社員数を2倍にする計画だ(現在の社員数は40名)。

Landbotは2017年にチャットボットビルダーの「ノーコード」版をリリースした。本社は以前、バレンシアにあったが、人材確保のためにバルセロナに移転した。

Landbotの登場以降、急成長している「ノーコード / ローコード」の動きは本格的なトレンドになっている。これは生産性を上げ見込み客を増やすデジタルサービスが求められ、インハウスの技術者が構築できる分量を超えてしまっていることによる。

このような背景で、技術系ではないスタッフが技術的な機能をカスタマイズできるサービス構築ツールが台頭している。

新型コロナウイルス感染拡大がこうした傾向に拍車をかけ、Landbotのような抵抗の少ないツールは明らかに恩恵を受けている。

サンフランシスコを拠点とするManyChatなどの会話型チャットボットビルダーの競合企業と同様に、Landbotもウェブのフォームをもっとエンゲージメントの高いチャットインターフェイスに置き換えようとしている顧客からの引き合いがあると述べている。この点は興味深い。

Landbotのチャットボットビルダーはドラッグ&ドロップで操作でき、Landbotのいう「GIFやビジュアル要素が多くエンドユーザーの注目を集めるような、没入できるウェブページエクスペリエンス」をインフォメーションワーカーが作成できるようにするものだ。古くて退屈な動きのないフォームを、スマートフォンユーザーにはWhatsAppなどのメッセージングアプリでおなじみのエクスペリエンスに置き換えられるとなれば、中小企業にとって魅力があることはおわかりいただけるだろう。

パン氏は「ノーコード分野の主な競合についていうと、チャットボットの直接的な競合としてManyChatと重なる部分があります。一方、フォームを置き換えるために我々のプロダクトを利用している顧客が多数いるので、Typeformなどのフォームビルダーとも競合しています」と語る。Typeformもバルセロナを拠点とするスタートアップで、Landbotと同様に「会話型」で「インタラクティブ」にデータを収集するプラットフォームを謳っている。

Landbotは最近、インドを拠点とするチャットベースのマーケティングオートメーションツールのMorph.AIを買収した。Morph.AIはソーシャル、ウェブサイト、広告のトラフィックを見込み客に変換するツールだ。アジア市場でのプレゼンス拡大という狙いもある。

これまでのところLandbotの顧客の90%はスペイン以外で、60%を米国、英国、ドイツが占めている。

シリーズAの発表の中でSwanlaabのゼネラルパートナーであるJuan Revuelta(ホワン・レべルタ)氏は次のようにコメントしている。「Landbotの利点はドラッグ&ドロップのソリューションです。このプロダクトをさまざまな企業の誰もが使えるようにするにはシンプルさが不可欠です。中小企業にはカスタマーサービスの問題を解決したり豪華なマーケティングキャンペーンを実施するために贅沢に使える時間や資金はありません。Landbotはあらゆる企業が抵抗なく顧客と会話し必要なデータをやりとりして、スマートな決定を下し成長できるようにします。Landbotは2020年に素晴らしい成果を上げました。我々は、2021年にはさらに多くの企業に役立ててもらうためにこのチームを支援できることを楽しみにしています」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Landbot資金調達ノーコードスペインチャットボット

画像クレジット:Landbot

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(翻訳:Kaori Koyama)

スペインのAll Iron Venturesが約82億円の初ファンドをクローズ

B2Cマーケットプレイスとeコマースに出資するスペインのAll Iron Ventures(AIV、オールアイロンベンチャーズ)が計6650万ユーロ(約82億円)の初ファンドをクローズした。初ファンドとしてはスペインにおいて最大規模の1つと同社はうたう。

このファンドに出資を約束している親グループの出資パートナーや他の投資家からの資金により、投資能力は約1億1000万ユーロ(約135億円)となる。

ファンドへの支援は個人投資家によるもので、公的なサポートはない。AIVは自らを、欧州で出現している起業家が支援するVCの「新種」とみなしている。

ビルバオに拠点を置く同ファンドは2017年後半に創設され、2人の共同ディレクター、Hugo Fernández-Mardomingo(ヒューゴ・フェルナンデス・マルドミンゴ)氏とDiego Recondo(ディエゴ・レコンド)氏が運営している。All Iron Group(オールアイロングループ)の一部であり、傘下には他に上場不動産ホールディングカンパニーもある。All Iron GroupはTicketbis(チケットビス)創業者によって設立された。Ticketbis創業者はチケット再販マーケットプレイスを2016年に1億6500万ユーロ(約202億円)でeBay(イーベイ)に売却した。これはスペインのエコシステムの中でこれまでに最も成功したエグジットだ。

AIVのFund Iには150もの投資家が出資しており、 Iñaki Ecenarro(イニャキ・エセナロ)氏やフィンテックスタートアップEbury(エブリー)の共同創業者でCEOのSalvador García(サルバドール・ガルシア)氏、後にMasMóvil(マスモビル)と合併したIbercom(イベルコム)の創業者Jose Poza(ホセ・ポザ)氏といったスペインの起業家も含まれる。

同ファンドは主にシリーズA、プレAの投資ラウンドをリードあるいは共同投資する。ただし、シード期の投資にも柔軟に対応するとしている。通常、最初の小切手は最大200万ユーロ(約2億5000万円)で、ポートフォリオ企業のその後のラウンドもサポートする。

地理的には、AIVは自らをスペインやその他の国でも投資を行う国際VCのパートナーとして位置付け、中でも欧州と米国にフォーカスしている。

直近の投資にはウクライナ拠点のオンライン指導マーケットプレイスPreply(プレプリー)やスペインのオンデマンドランドリーサービスMr Jeff(ミスタージェフ)などがある。

他には、スペインのLookiero(ルッキエロ)、Lingokids(リンゴキッズ)、Spotahome(スポタホーム)、Seedtag(シードタッグ) 、ポルトガルのBarkyn (バーキン)、オーストリアのRefurbed(リファーベッド)、ドイツのPaul Camper(ポールキャンパー)、フィンランドのKodit(コディット)、米国のRebag(リバッグ)、ブラジルのZenklub(ゼンクラブ)といったスタートアップがポートフォリオに名を連ねている。

カテゴリー: VC / エンジェル
タグ:All Iron Venturesスペイン

画像クレジット:All Iron Group/All Iron Ventures

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(翻訳:Mizoguchi