NASAがビッグなアイデアを持つスモールビジネスに合計55億円の助成金を支給

NASAは300以上の企業に対して、貴重なアーリーステージ資金となる新たなスモールビジネス向けの助成金を合計5100万ドル(約55億円)提供したことを発表した。今回選ばれたフェーズ1のプロジェクト(SBIRリリース)は、1つの企業が最大で12万5000ドル(約1350万円)を受け取り、新しいテクノロジーの商品化を進めることができる。

この「Small Business Innovation Research/Technology Transfer(スモールビジネス・イノベーション研究/テクノロジー移転、SBIR)」プログラムは、起業家や発明家のアイデアを研究段階から商品化へと移行させる手助けをするものだ。この資金は投資ではなく助成金に近い。さらにフェーズ1で資金を獲得した企業は、条件を満たすことでより規模の大きなフェーズ2助成金の申し込み資格を与えられる。

2020年も例年のように、数多くの学術分野、幅広い業種が対象となった。ニュースリリースで紹介されたNASAが注目するアイデア(NASAリリース)には、高出力ソーラーアレイ、都市上空飛行のためのスマート航空管制システム、月面で使用する水浄化システム、改良型リチウムイオン・バッテリーなどがある。

さらに医療現場でも使える「宇宙船素材に使用するコンパクトな殺菌装置」を開発した企業には、個別の賞も贈られた。

関連記事:NASAが月での採鉱や太陽レンズなど奇抜な研究開発に7億円超の助成金

受賞者リストを見て、放射線の耐性を持つチップからソフトウェア技術に至るまで、神経形態学的コンピューティングの研究が数多くあったことに私は衝撃を受けた。これらは実際にニューラルネットワークのスパイクや可塑性を導入するというより、機械学習手法を活用し促進させるためのヒントやアプローチなのだと私は理解した。

NASAは2019年のフェーズ2を先月発表(SBIRリリース)したばかりなので、2020年のフェーズ2の発表はまだ先になるだろう。

SBIRプログラムは、10ほどの政府機関に数十億ドル(数千億円)が割り当てられスモールビジネスに分配されるという、図らずも米連邦政府の穴場的プログラムとなっている。詳しくはSBIR.govをご覧いただきたい

画像クレジット:VICTOR HABBICK VISIONS/SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

リソース不足のスモールビジネス向け高品質ビデオ制作ツールVimeo Createがスタート

Vimeoは2019年にビデオの編集アプリのMagistoを買収したことでソーシャルメディア向けビデオ制作・編集市場に参入する構えを見せていた。今回、Magistoの買収完了後数カ月にわたって続いていた開発の成果が明らかになった。

Vimeoは、スモールビジネスがソーシャルメディア上のマーケティングのために制作する高品質なビデオ制作を助けるツールを発表した。スモールビジネスは予算やノウハウなどのリソースが不足しているため、ソーシャル・マーケティング向けビデオの制作ができないことが多い。

Vimeo Createはデスクトップとモバイルアプリの双方で提供される。アプリにはビジネス向けの高品質なテンプレートが用意されており、ユーザーはこの中から自分のニーズに合ったテンプレートを選んでカスタマイズすればよい。スキルのあるユーザーはゼロから新しいビデオを作ることもできる。

Vimeoによれば、アプリにはHDビデオクリップ、写真、また商業利用のライセンスを得ている楽曲など大量のストックコンテンツが用意され、追加料金なしで利用できるという。ユーザー企業はカラーテーマ、フォント、レイアウトなどを編集し、自社のロゴや必要なテキスト、動画を加えて容易にマーケティングビデオを完成させることができる。ビデオをクリックしてショッピングに移るコール・トゥ・アクションを加えることも簡単だ。

Vimeo Createは写真、動画、音楽、テキストをスムーズに一体化するためにAIテクノロジーを利用しており、経験のないユーザーでも短時間で高品質のソーシャルビデオビデオクリップが制作できる。

ソーシャルメディアはプラットフォームごとにビデオのフォーマットが異なっているが、Vimeo Createはコーデック、サイズ、アスペクト比などをプラットフォームの要求に適合させる。アップロード先を選択するだけでFacebook、YouTube、Instagram、Twitter、LinkedInでビデオを公開できる。

ソーシャルビデオ制作分野への進出は、個人、企業に対して動画の制作とオンラインでの公開のためのワンストップ・ショップになるというVimeoのさらに大きな戦略の一環だ。Vimeo はかなり前にYouTube のライバルになるという野心を捨て、ビデオ制作という市場の逆側に大きな可能性を見出している。

現在の同社におけるビジネスの中心は、大小のユーザー企業に対してビデオ制作ツールとサービスを提供することだ。最近、Vimeo は多数のソーシャルメディアに横断的にライブでビデオストリーミングができるツールをスタートさせた。またこれまでデスクトップのビデオ制作アプリにしかなかった機能を追加するなどモバイルビデオアプリのアップデートも行っている。

Vimeoがソーシャルビデオをビジネスの中心とする戦略を採用したのは、同社の独自調査に基づいている。その調査によればソーシャルメディアに、ビデオを十分にアップロードできていると考えているスモールビジネスの経営者はわずか22%しかいない。オーナーたちはビデオが十分にアップロードできていない理由として、時間やコスト、制作過程の複雑さを挙げている。またほとんど全員(96%)がこうした障害が取り除かれれば、さらに多数のビデオをアップロードしたいと答えている。

今回発表されたVimeo Createは、買収したMagistoのAIとバックエンドのテクノロジーを利用しているが全体のデザイン、機能、インターフェース、Vimeoの各種ツールへの統合の容易さなどはすべて新たに独自開発されたものだという。

Vimeo Createはスタンドアローンで提供されるサービスではなくVimeo PRO、Vimeo Businessなどのサブスクリプションに含まれる。同社ではCreateの追加によりサブスクリプションメンバーの増加を期待している。

VimeoのCEOであるAnjali Sud(アンジャリ・スッド)氏は「【略】このサービスはスモールビジネスにも十分なビデオ制作の能力を与えることでビデオ業界を変革するようなプロダクトだ。誰でもアイデアを簡単にビデオとして実現できる。スモールビジネスは新しいビデオ戦略をとることができる」と声明で述べた。

もちろんスモールビジネスのソーシャルビデオのニーズに注目しているのはVimeo だけではない。2019年秋、Facetuneを提供しているLightricksも新しいプロダクトのシリーズをリリースしている。これはスモールビジネスがソーシャルメディア向けにマーケティングキャンペーンを行う際に簡単にビデオを制作できるツールだ。これ以外にもAdobeやAppleなどの巨人に加えてCanva、PicsArtなどのスタートアップからも、テンプレートから簡単にソーシャルビデオを制作できるツールが提供されている。こうしたサービスにはテンプレートの他に各種のストックコンテンツが含まれており、ワンクリックで多数のソーシャルメディアにビデオが公開できる。

Vimeo Createは2020年1月にベータ版として公開されたが、今回の正式公開でウェブ、 iOS、Androidの各バージョンも利用可能となった。

[原文へ]

滑川海彦@Facebook

Apple、批判の的のテンプレート・アプリ禁止条項を修正――実質はほぼ変化なし

Appleは昨日(米国時間12/20)、App Storeにおけるアプリ・レビューのガイドラインを修正した。このガイドラインはテンプレートその他を用いるアプリ・ジェネレーション・サービスによって作成されたアプリの登録を禁止するもので、大きな議論を引き起こしていた。

Appleが今年に入ってApp Storeの利用規約を改正したのは低品質のアプリやスパム・アプリが登録されるのを防ぐ狙いがあった。しかしこの方針は 当初の目的を超えてはるかにおおきなマーケットに影響を与えることになった。つまりレストラン、NPO、クラブ、その他、オリジナルかつ高品質のアプリをインハウスで開発する専門知識、資金その他のリソースを持たない各種スモールビジネスがネガティブな影響を受けている。

Appleの新しいガイドラインは「App Storeで受け入れられないアプリ」の定義をさらに詳しく述べている。

改正前のガイドラインの当該部分、4.2.6 App Store guidelineは以下のとおりだった。

4.2.6 商用のテンプレートによって作成されたアプリ、またはアプリ・ジェネレーション・サービスによって作成されたアプリは受け入れられない。

これに対して、今回改正された文言は以下のとおり。

4.2.6 商用のテンプレートによって作成されたアプリ、またはアプリ・ジェネレーション・サービスによって作成されたアプリは受け入れられない。ただし、アプリの登録がアプリのコンテンツ提供者自身によって直接申請される場合はこの限りではない。〔アプリ・ジェネレーション・〕サービス等はクライアントを代理して登録の申請を行ってはならない。また〔これらのサービスは〕クライアントがカスタマイズしてイノベーティブかつ独自のユーザー体験を提供するアプリを作成できるツールの提供に努めなければならない。

テンプレートのプロバイダーはクライアントのコンテンツを一つのバイナリーに統合するいわゆる“picker”モデルを利用することもできる。たとえばレストランの情報アプリであれば、それぞれのクライアントのレストランがが独立のカスタマイズされたページを持つ単一のアプリを登録申請することは可能であり、イベント情報アプリであれば、それぞれのクライアント・イベントが独立のページとして表示されるような単一のアプリを登録することはできる。

これによってAppleがテンプレート・アプリについてどう考えているかがよく分かる。

根本にある考え方は、スモールビジネスがテンプレートや仲介者(アプリ作成サービス事業者)を通じてアプリを作成するのはかまわないが、テンプレートのプロバイダーが実際のビジネスに代わってアプリを登録することをは許されない、というものだ。

AppleはApp Storeに登録されるアプリはコンテンツの元となるビジネス自身が登録申請すべきだと考えている(この考え方は以前も述べられていた)。つまり、地域のピザショップであれ教会であれフィットネス・ジムであれ、アプリを登録しようとする組織はApp Storeのガイドライン、規約その他の文書を熟読し、登録プロセスに積極的に関与しなければならないということだ。

Appleでは2018年早々にもアメリカ政府・自治体諸機関およびNPOについて99ドルのデベロッパー手数料を免除してこの新方針を受け入れやすいものにするという。

またテンプレート・サービスのような仲介者もすべて排除されるわけではない。テンプレート・サービスがアプリを作成する手助けをするのはけっこうなことだ―Appleはアプリが「どのようにして」作成されたかにはさして興味を抱いていない(ウェブページを単にアプリ化したものでないかぎり)。Appleが審査するのは「その結果」だ。

App Storeに登録されるためには、アプリは高品質で優れたユーザー体験をもたらさねばならないというのがAppleの考え方だ。つまりアプリにはそれぞれ独自性が必要であり、多数のアプリがそっくりな外見を呈してはならない。つまり互いにクローンであってはならない。また、されに重要な点は、ウェブページやFaceookページをそのままアプリ化したものであってはならないということだ。

Appleは「アプリは単なるウェブページ以上の深く豊かな体験をユーザーに与えるものでなければならない」と信じている。

上図:AppMakrで作成されたThe Official Lumineersアプリ

ただし、このルールが適用されるべき範囲を巡っては見解の相違が残る。

たとえば、現在多くのユーザーが「テンプレート・アプリ」を使っている。お気に入りのタコショップ、所属する教会、地元の音楽クラブ、学校、その他のアプリだ。ユーザーはこれらのアプリが単一のテンプレートから作成され、相互にそっくりだと知らないし、知ったところでそもそもそんなことは気にかけないだろう。

またある種のアプリが互いにそっくりであることはユーザーにとってかえって使いやすくなっているという議論もある。たとえば「モバイルから注文」がそれぞれ独自のデザインで独自のプロセスだったら使いにくいだる。どこからメニュー表示をさせればいいのかアプリごとに探す必要があるのがユーザー体験の向上だろうか?

しかしAppleはApp Storeに無数のコピーキャット、クローン・メーカーがはびこっっているのを強く嫌っている。クローン・アプリが優勢になれば、わざわざ高品質のアプリを作成するデベロッパーが不利になる。テンプレート・プロバイダーが単一のデベロッパー・アカウントで一挙に2万件ものアプリを登録するといった事態はApp Storeを窒息させかねない、と考えている。

しかし低品質のアプリの大群を規制する必要があるにせよ、App Storeにおけるテンプレート・アプリ全般の禁止は行き過ぎでありエコシステムにネガティブな影響を与えるとする意見も強い。

この問題はTed W. Lieu下院議員( カリフォルニア、33選挙区) の注目を引いた。Liew議員はAppleについて「〔規制の〕網を広げ過ぎている」と述べた。スパム・アプリ、違法アプリの排除の必要は認めるものの、「App Storeに対しなんら危害を加えておらず、これまで長年にわたって役立ってきた正規のデベロッパーを排除するものだ」とLiew議員は批判している。

しかし一方でAppleはネット中立性を支持して、何人も平等かつ自由なインターネットへのアクセスの権利を持つと主張している。にもかかわらずApp Storeレビューの新しい方針はスモールビジネスや小規模なNPOに対して不利に働く。しかもモバイル・デバイスからウェブへのアクセスは次第にモバイル・アプリを経由する傾向を強めている(上記グラフ参照。ブラウザは時代遅れになりつつある)。【略】

なるほど、ピザショップはUber Eatsを使うこともできる(高額な手数料を払えばだが)。ネールサロンは店をYelpに掲載できるし、パパママ・ストアもFacebookページを作れる。また事実作っているだろう。しかし全体としてこれはスモールビジネスが巨大アグレゲーターの支配下に置かれるるという傾向をますます強めるトレンドだ。

最近、TechCrunchはApp Storeにアプリを登録している多くの会社が 2018年1月1日という締め切りを言い渡されたことを報じた。この期限までにアプリを新しいガイドラインに対応させないかぎり、レビュー・チームはアプリをApp Storeから排除するという。一部のアプリはすでにこの禁止条項を適用され、登録申請を却下されている(すでにライブであるアプリは次のアップデートまで適用を除外されているが、この状態がいつまで続くのかは不明だ)。

Appleの新方針のために一部の会社は運営停止に追い込まれている。

今回修正された後の字句をみても、影響を受けた会社が以前のとおり運営を続けられるようになったとは思えない。 こうしたサービスはやはり「クライアントがカスタマイズしてイノベーティブかつ独自のユーザー体験を提供するアプリを作成できるツール」を新たに提供する必要がある。

言い換えれば、Google Sites のようなシンプルな構成ではなく、Squarespaceのような凝った構成にせよ(ただしアプリだが)ということだ。

テンプレート・ベースのアプリの例。 一般ユーザーはテンプレートだと気づくだろうか?

しかし今回影響を受けた会社は、すべてがスパム・メーカーというわけではない。一部はウェブページをラップしてアプリにするだけのツールを提供していたものの、一部はグレーゾーンだった。

これにはChowNowのような、特定のバーティカルに属するスモールビジネスがApp Storeを利用することを助けようとするものが含まれる。CowNowは近隣のレストランがモバイル経由で注文を受けるためのアプリだが、同様のアプリはフィットネス・ジムや教会、スパ、コンサート、政治家など非常に幅広い分野に存在する。

こうしたビジネスはApp Storeガイドラインの4.2.6(ときおり4.3)項によって登録を拒絶されつつある。こうしたアプリの申請者によれば、Appleに対し電話などで直接説明を求めようとしても困難だという。

修正以前の4.2.6項は、テンプレート・ベースのアプリ全般を禁止し、4.3項はスパム・アプリ全般を禁じる網羅的条項だった。4.3項はAppleがあるアプリを排除したいが、アプリ作成ウィザードやドラグ・アンド・ドロップなどによって一挙に作成されたものだということを証明できない場合に用いられることを意図したものだということだ。

  1. screen-shot-2017-12-20-at-3-41-33-pm.png

  2. screen-shot-2017-12-20-at-3-41-42-pm.png

Appleがこの方針をWWDCで発表したとき、テンプレート・プロバイダーの多くは自分たちに影響が及ぶとは考えていなかった。この禁止方針はクローン・アプリ、スパム・アプリを締め出すためのものだと考えたからだ。そのため、App Storeのレビュー・ガイドラインがテンプレート・プロバイダー自身もApp Storeから締め出されれることを明らかにしたためパニックが広がった。これらのテンプレート・プロバイダーは自分たちがスパマーだとは考えていなかった。

修正後のApp Storeのガイドラインは、字句の訂正により明確化されているものの、本質的なAppleの意図は変わっていない。

ともあれアプリが実質的にはウェブページそのものである場合、あるいは他のアプリとデザインがそっくりである場合、申請の手間をかけるには及ばない。App Storeがそういうアプリを排除することは動かない。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ソフトバンク、小規模事業者向けローンプラットフォームKabbageに2.5億ドル投資

Kabbageは、種々のデータに基いた信用情報を使って小規模事業者や個人に少額の資金を自動で貸し出すプラットフォームを運営している。11万5000人の顧客と35億ドルのローン金額を誇る同社は、本日(現地時間8月3日)大型資金調達について発表した。

Kabbageはこの度開催されたシリーズFで、ソフトバンクから2億5000万ドルを調達。Kabbageの共同ファウンダーでCEOのRob Frohweinによれば、調達資金はアメリカ国内での事業拡大や各業種の状況にあったローンを提供するための分析ツールの開発、アジアをはじめとする新市場への進出、決済サービスのような新たなプロダクトを獲得するためのM&Aなどにあてられる計画だという。

これでKabbageの累計調達額は5億ドル(+35億ドル分の借入)に達し、同社の10億ドル超の評価額にもさらなるはずみがつくだろう。

Kabbageを知らない方のために説明すると、同社は2015年のシリーズEで1億3500万ドルを調達した際に、評価額が10億ドル超のいわゆる「ユニコーン」企業の仲間入りを果たした。今週本誌が行ったインタビューでは、CEOのFrohweinが具体的な評価額に触れることはなかったが、今回の資金調達が「有意義なアップラウンドだった」と彼は語っていることから、おそらく現在の評価額は12億5000万ドルから20億ドルの間といったところだろう。

アトランタで2009年に設立されたKabbageは、ビッグデータを使ったローンサービスを提供する企業の中では草分け的な存在だ。同社は企業や個人のソーシャルメディア上のプロフィールから、QuickBooks(会計ソフト)のアカウント情報、さらには大局的なマクロデータまで、何百という情報源から顧客のデータを入手し、貸出の可否やローン金額を決めている。

OnDeckCan Capitalをはじめとする小規模事業者向け貸出プラットフォームの疑わしいビジネスモデルが取り沙汰され、オンラインローン業界全体が揺れ動く中、Kabbageはそれをものともせずに成長を遂げた。Frohweinはビッグデータの活用をその理由に挙げ、150万以上のデータポイントをもとに借主の信用力を判断しているからこそKabbageのビジネスはうまくいっているのだと語った。

「少し前にオンラインローン業界が窮地に立たされたとき、Kabbageの社員はみんな不安な表情を浮かべていました。でも私はそこで『ようやくだな!』と言ったんです」とFrohweinは当時の状況を語る。「そのとき何が起きたかというと、自分たちのソリューションを差別化しようと努力していた企業とそうでない企業の間に明確なラインが引かれたんです。つまり、業界全体がむやみに持ち上げられる流行期を過ぎたということです。その結果、少数の優秀な企業だけが生き残ったと。Kabbageはその中に含まれると考えています」

また彼は、Kabbageのローン事業は黒字だが、プラットフォーム事業はまだ利益が出ていないと語った。後者は2015年にローンチされた新事業で、Kabbageを含むローン事業者にオンラインプラットフォームを提供するものだ(顧客にはKarrotと呼ばれる消費者向けローン事業を運営するKabbage自体に加え、ING、Santander、Scotiabankといった大手金融機関も含まれている)。「会社全体としては第4四半期にはGAAPベースで黒字になる計画です」とFrohweinは付け加えた。

Kabbage以外にもビッグデータ戦略を採用しているフィンテック企業が存在する。具体的にはKreditech(銀行のサービスを受けられない人に対してクレジットスコアを作る手助けをしており、Peter ThielとNaspersを株主に持つ)やFundbox(こちらもJeff Bezosを含む多くの面白い投資家を株主に持つ)、BlueVine(Citi Groupらの投資先)がその一例だ。しかしKabbageはデータの活用方法を次のレベルへ引き上げようとしている。

ひとつめの戦略が業種やビジネス形態に基づいたローン商品の開発だ。例えば建設業と飲食業では、キャッシュフローにかなり大きな違いがある。そこでKabbageは各企業の実態に合ったローンを提供し、不必要なデフォルトや障壁といった、借主に関する十分な情報があれば避けられるはずの問題を解消したいと考えているのだ。

また、Kabbageの顧客は他社に比べてロイヤルティが高いと同社は話す。Frohweinによれば、平均的なユーザーは3〜4年間に20回もKabaggeからローンを借りる一方、業界平均は2.2回だという。

調達資金の使途として挙げられた、M&Aや新プロダクトのローンチにも注目だ。Kabaggeが業界統合を狙ってOnDeckを買収するのではという話もあったが、情報筋によればこれは単なる憶測に過ぎず、M&Aの狙いは業界統合よりもプラットフォームに新たなサービスを追加することなのだという。

Frohweinから新プロダクトのローンチやM&Aに関して具体的な話はなかったが、彼は決済が現在興味を持っている分野であることは認めた。

「PayPalとSquareは単なる決済サービスから発展して、今では企業向けのローンサービスを提供しています」と彼は語る。「この2種類のサービスの間にはかなり深い関係がある、と考える企業が存在するのは間違いありません。そう考えると、私たちが決済事業を始めるのも全くの的はずれではありませんよね」

最近ソフトバンクは1000億ドル級の巨大な「ビジョン・ファンド」を通していくつかの大型投資を行っているが、今回のKabbageへの出資はソフトバンクグループが直接行ったものだ(不思議なことに1000億ドルと比較すると2億5000万ドルという額が大したことないように感じられてしまう)。将来的にはビジョン・ファンドとも関わるようになるかもしれないが、少なくとも今のところは、ソフトバンクによる投資がかなり面白いチャンスに繋がる可能性がある。

両者のコラボレーションは大きくふたつの形をとることになるだろう。ひとつめはKabbageのローン事業・プラットフォーム事業のさらなるアジア展開だ(現在アジアではホワイトラベルのプラットフォーム企業として営業している)。

ふたつめは、ソフトバンクグループの投資先との協業だ。この点に関してはまだ何も発表されていないが、ソフトバンクはSpring(多くの小規模事業者を顧客に持つ)、Lyftをはじめとするライドシェアリング企業各社(個人事業主という小規模事業者に依存)、SoFiなどさまざまな企業の株主を務めている。

そう考えると、Kabbgeへの出資は、ソフトバンクのネットワークを活かせそうな企業を狙った賢い投資だと言える。

「ソフトバンクは新しいテクノロジーやデータの力を使って、顧客体験を変え、市場を拡大しようとしているマーケットリーダーに投資しています」とソフトバンクグループで役員を務めるDavit Thevenonは声明の中で述べた。「Kabbageへの投資を決めた理由は、同社がオープンデータを利用したユニークな自動ローンプラットフォームを運営していること、そして世界中の小規模事業者を支える存在としてのポジションをうまく確立したことです」

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake

MicrosoftがOffice 365にオンライン予約管理サービス「Bookings」を追加

bookings-1-1

Microsoftは本日、Office 365の一連のサービスにBookingsという名の新サービスを追加することを発表した。Bookingsはカスタマーがオンラインソフトウェアを使用して事業者との予約を取ることを可能にするサービスだ。ビジネスとカスタマーが電話でのやりとりなしで予約が取れる機能以外に、Bookingsは予約管理に関連する他のこともまとめて行うことができる。例えば、予約の確認メールやリマインダーの送信、予約の変更やキャンセルの管理、事業者の社員が使うカレンダーのアップデートなどだ。

オンライン予約は例えば、レストランの席予約、医者への受診予約、地元の美容院の予約など、いくつかの業界で普及している。それに加え、スモールビジネス向けの汎用的なソリューションを提供しているところもいくつかある。例えば、SquareのAppointmentsSchedulicityGrouponの店舗用ソフトウェアなどだ。

ただ、Microsoft Bookingsの目的はビジネスにOffice 365のプラットフォームと連動するソリューションを提供することだ。

ビジネスには個別のウェブページを提供し、これはデスクトップとモバイルの両方で動く。カスタマーはそこから、予約可能な日付と時間を選択して、連絡先を入力すると予約が取れる。あとは、システムが予約管理周りのプロセスを自動で処理する。

Bookings-2

カスタマーにはすぐに予約確認メールを送信し、予約時間の前にはリマインダーのメールを送る。また、予約の変更もカスタマーが自分で行うことができる。カスタマーはメールのリンクをクリックして予約サイトへと戻り、別の時間を選択するか、予約をキャンセルすることができる。

ビジネス側は、予約直前のキャンセルを防ぐために、予約時間のどれくらい前までにキャンセルの連絡をしなければならないかを設定できるとMicrosoftは言う。

一回予約サイトを設置すると、全ての情報がまとまったカレンダーに予約内容が同期される。ビジネスはそこでスケジュールの変更やキャンセルを行ったり、必要であれば予約の担当をスタッフに割り振けたりすることができる。新規予約をカレンダーに入力することも可能だ。カスタマーの口頭での予約や電話での予約にも対応できる。

特徴的な機能は「スプリット・ビュー」ができることだ。この機能では、隣り合わせでスケジュールを表示させることができ、どのスタッフがどこに予約が入っているかを把握することができる。

予約はそれぞれのスタッフのカレンダー、Office 365のOutliook、Outlook.com、さらにGoogle Calendarにも同期可能だ。

Bookings-tryptic-b

予約管理がBookingsの主な使い途だが、このシステムはビジネスがカスタマーリストを構築することにも活用できる。なぜならカスタマーが予約の際に個人情報を入力すると、自動でリストを生成するからだ。連絡先カードには、カスタマーの名前、住所、電話番号、メールアドレスといった個人情報とメモ書きも記載される。

Microsoftは、Bookingsのスタンドアローンアプリを数週間内にローンチし、ビジネスが予約やカスタマーの連絡先をいつでも管理できるようにする。

ビジネスが成長した時には、システムにスタッフを加えたり、予約ページを追加したりをすることを無料でできる。さらに、事業者のスタッフはOffice 365にサブスクライブしていなくても、サービスの一部を使用することができるとMicrosoftは伝える。事業者が1つ、Office 365 Business Premiumアカウントを持っていればいいということだ。

MicrosoftはOffice 365 Business Premiumプランにサブスクライブしていて、なおかつFirst Releaseプログラムに参加している人たちに最初にこのサービスを提供する。今後数カ月で、世界中のユーザーに展開する予定だ。利用可能になった際にはOffice365アプリランチャーから利用できるようになる。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website