NVIDIAがイタリアの大学コンソーシアムが主導する欧州発の世界最速AIスパコン「Leonardo」にGPUを供給へ

NVIDIA(エヌビディア)は世界のスーパーコンピューティングを牽引するイタリアの大学コンソーシアム「CINECA」が開発中の世界最速AIコンピューターシステム「Leonardo」(レオナルド) に機材を供給する。LeonardoシステムはFP16(半精度浮動小数点演算)10 exaflops(エクサフロップス)のAI性能をもち、完成時にはNVIDIA AmpereベースのGPUを最大1万4000個搭載する見込みだ。

Leonardoは欧州横断で高性能コンピューターを開発する団体が支援している4つのスーパーコンピューターの1つで、科学、産業両分野のアプリケーションを処理するための最新AI機能を提供することを目的としている。エヌビディアは同社のMellanox HDR InfiBandネットワークもプロジェクトに供給しており、低遅延ブロードバンド接続によってクラスターを横断して高性能を実現する。

クラスターにはほかに、ルクセンブルグのMeluXina、スロベニアのVegaなどのコンピューターのほか、チェコ共和国で近々完成するスーパークーリングユニットも加わる。この欧州横断コンソーシアムは、ブルガリア、フィンランド、ポルトガル、スペインの4カ国でもスーパーコンピューターを計画している。ただし、時期は未定で、性能や正確な場所も決まっていない。

CINECAを始めとするこれらのスーパーコンピューターの利用分野には、ゲノム解析による新たな治療経路の発見、複数の宇宙探査結果のデータ分析、地球外天体研究、および異常気象を含む気象パターンのモデル化などが計画されている。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:NVIDIA、スーパーコンピューター

画像クレジット:CINECA

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ヒューレット・パッカード・エンタープライズがスパコン大手クレイを1430億円で買収

HPE(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)Cray(クレイ)を13億ドルで買収することを発表した。これによりHPEはCrayのハイパフォーマンスコンピューティングを取り込むことになり、おそらく将来の量子コンピューティングに向けて足がかりを得ることになる。

買収額は1株35ドルで、昨日の終値29.81ドルに5.19ドルのプレミアムを乗せた。

Crayは1970年代に設立され、一時は米国のスーパーコンピューター業界を引っ張っていたが、時代は変わってマーケットがシフトしたいま、今回の買収は理にかなうものだ。

Constellation Researchの創業者で主任アナリストのRay Wang氏は「買収はマーケットのハイエンド部分の統合となる。HPEにとっては賢い買収だ。Crayはしばらくの間損失を計上してきたが、素晴らしいIPポートフォリオと、量子時代の鍵を握る特許を持っていた」とTechCrunchに対し語った。

HPEの会長でCEOのAntonio Neri氏は買収をWang氏のようにはとらえていなかったが、両社を統合することにチャンスを見出した。「我々のワールドクラスのチームとテクノロジーを合体させることで、次世代の高度なハイパフォーマンスコンピューティングに向けて取り組むチャンスを手にし、また人々の暮らしや仕事を向上させるための重要な役割を担う」と発表文で述べた。

CrayのCEOで会長のPeter Ungaro氏もその意見に同意している。「CrayとHPEのコンビネーションで、急成長中のハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)業界とAI業界のリーダーになる。そしてどちらの社も単独ではつかめなかったであろう多くのチャンスを生み出せる」と、今回の買収を発表したブログ投稿に書いた。

Moor Insights & Strategyのプリンシパル・アナリストであるPatrick Moorhead氏は、HPCは急成長マーケットの1つであり、HPEはそこで存在感を出したいことを暗に示してきたと語る。「私はこの買収に驚いていない。この買収の成功度合いは2社の統合によって決まるだろう。HPEはスケールアップと消費モデルを持ち込み、Crayは専門性とコネクティビティのIPを持ち込む」と説明した。

買収が今後どのように作用するかは不透明だが、この手の買収は2社が1社になるため、通常オペレーション部門での解雇を伴う。また、CrayがHPEの一部になるため、この買収がCrayの顧客に影響するかどうかも不透明だ。しかしHPEは、新たに得る資産をCrayの新プロダクトと組み合わせて使いながらハイパフォーマンスコンピューティングのプロダクトをつくる計画を持っている。

HPEは、2014年にHPが2社に分割されたときに組織された。HPはプリンター部門を、HPEは企業部門を受け持っている。

今回の買収は今後、規制当局のチェックを経るが、すべて順調に進めばHPE会計年度の2020年第1四半期に完了すると見込まれている。

イメージクレジット: Courtesy of Cray

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(翻訳:Mizoguchi)

浮動小数点演算1回は100京分の1秒、IntelとCrayが超高速次世代スパコンを共同開発中

「今のスマホは昔のスパコンだ」とよく言われる。しかし今の本物のスーパーコンピューターの能力はもちろんスマートフォンなどとは比べモノにならない。Intel(インテル)と Cray(クレイ)はエネルギー省の5億ドル(約553億円)の契約を獲得し、最大級のスーパーコンピューターを共同開発している。このマシンがいよいよエクサフロッップスを実現する

Auroraプログラムはいわゆる「エクサスケール」のコンピューティングシステムで、2021年にアルゴンヌ国立研究所に納入される。エクサ(exa)という接頭辞はものすごく巨大な数、10の18乗を表す。浮動小数点演算1回に100京分の1秒しかかからないわけだ。

読者の手元のデバイスに使われている最新のCPUはおそらくギガフロップス級の速度だろう。 1000ギガが1テラであり、その1000倍がペタ、さらに1000倍でやっとエクサの単位に到達する。たしかに半導体回路製造テクノロジーの驚異的な発達によってわれわれは非常に高機能のスマートフォンやタブレットを使えるようになった。しかし本物のスーパーコンピューターは文字通り桁違いに強力だ(これはCPUの場合で、GPUはもう少し込み入った話になる)。

ただし、そのスパコンも現在の世界最速は200ペタフロップス程度で、昨年TechCrunchが紹介したオークリッジ国立研究所で稼働するIBM Summitシステムだ。

しかしなぜエクサスケールのスパコンが必要なのか?ペタフロップス級で能力は十分ではないのか?実はペタフロップスでは間に合わないのだ。地球温暖化が特定の地域の雲の発達に与える状況をシミュレーションするには現在のスパコンの能力では足りない。こうしたシミュレーションの必要性が新たなスパコンの能力拡張競争を生んでいる。

気候シミュレーションは特にコンピューターのリソースを消費する処理だ。モデルの各点ごとに複雑な計算を必要とするため、当初のモデルはきわめて目が粗いものだった((最近の成果はたとえばこちら)。こう考えてもいい。ボールが地面にぶつかってはね返る。この現象は簡単にシミュレーションできる。では巨大なスケールのシステムに含まれるすべての分子についてこの計算が必要だとしたらどうだろう? 気候シミュレーションとなれば各ノードの相互作用、重力、気圧、温度、地球の自転、その他あらゆる要素を考えねばならない。2つの恒星が衝突するしたら?

コンピューターの能力がアップすればシミュレーションはそれだけ正確になる。 Intelのプレスリリースによれば、「天文学上の巨大なスケールの現象をシミュレーションしたり、化学物質が個々の細胞に与える影響を再現することで新しい効果的な薬品を開発したりできる」ようになるという。

IntelによればAuroraはアメリカにおける最初のエクサスケールのシステムだという。ただし中国はすでに1年前からエクサスケールを目指して開発を始めていた。中国のスパコンは現在でも世界最速クラスであり、この目標が達成できないと考える理由はない。

アルゴンヌ国立研究所がこのシステムを使って何をするつもりなのか興味があるところだ。そこで同研究所のサイトで公表されている研究テーマ一覧ざっと眺めてみたが、「何もかもほとんどすべてのジャンル」という印象だった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

IBMと米国エネルギー省が世界最速のスーパーコンピューターを構築

IBMと米国エネルギー省(DoE)のオークリッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory、ORNL)は6月9日(米国時間)、同部門の最新のスーパーコンピューターであるSummitを発表した。IBMは、サミットを現在「世界で最も強力でスマートなサイエンススーパーコンピューター」であると主張しているが、そのピークパフォーマンスは毎秒20京回の計算(200ペタフロップス)という驚くべきレベルに達する。このパフォーマンスによって、今月末に発表されるスーパーコンピュータートップ500ランキングでは余裕のトップとなる筈だ。それはまた、2012年以来初めて、米国を拠点とするスーパーコンピューターが首位になるということを意味する。

Summitは数年前から稼働しているが、現在4608台の計算サーバーに、それぞれ22コアのIBMPower9チップを2個、そしてNvidia Tesla V100 GPUを6個搭載している。合計では、システムには10ペタバイトを超えるメモリが搭載されている。Nvidia GPUの存在を考えると、オークリッジ国立研究所で通常行われるエネルギーや先進素材の研究に対するハイパフォーマンス計算に加えて、このシステムが機械学習や深層学習アプリケーションに利用されることは意外なことではない。

IBMがSummitの元請け業者となり、Nvidia、RedHat、そしてInfiniBandのネットワーキングスペシャリストであるMellanoxと協力して新しいマシンを提供している。

画像クレジット:オークリッジ国立研究所

「SummitのAIに最適化されたハードウェアは、研究者たちに、膨大なデータセットの分析と、発見のペースを加速する知的なソフトウェア作成のための、素晴らしいプラットフォームを提供します」と発表の中で語ったのは、ORNLのコンピューティングならびにコンピューティングサイエンスのアソシエイトディレクターであるJeff Nicholsである。

Summitは、IBMがエネルギー省のために構築している次世代スーパーコンピューター2つのうちの1つである。 2つ目はSierraという名前で、ローレンス・リバモア国立研究所に設置される。今年運用が予定されているSierraは、予定されている計算能力は125ペタ(12.5京)フロップスとSummitほど強力ではないが、どちらのマシンも現在エネルギー省で使われているどのマシンよりも遥かに強力である。

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(翻訳:sako)

画像クレジット: オークリッジ国立研究所