細胞量産技術開発の東京大学発セルファイバと京都大学iPS細胞研究財団がiPS細胞増殖の効率化を目指す共同研究を開始

細胞量産技術開発の東京大学発セルファイバと京都大学iPS細胞研究財団がiPS細胞増殖の効率化を目指す共同研究を開始

iPS細胞を培養中の細胞ファイバー

東京大学発の細胞量産技術開発スタートアップのセルファイバは、iPS細胞増殖の効率化に関する研究を、京都大学iPS細胞研究財団(CiRA_F:サイラエフ)と共同で開始した。CiRA_Fの理念である「最適なiPS細胞技術を、良心的な価格で届ける」の実現を後押しするという。

セルファイバは、「細胞ファイバ」という技術を有している。髪の毛ほどの中空ハイドロゲルチューブの中に細胞を封入して培養するというものだ。細胞はゲルに保護されるため、従来の培養方式に比べて、細胞を良好な状態で長時間維持することができる。また細胞から分泌される物質はチューブの外に放出されるため、物質生産にも有用となる。この細胞ファイバ技術を使うことで、製造施設の省スペース化、品質と回収率の改善、プロス開発工数の短縮、製造工程の簡略化などが期待できるという。

共同研究では、この細胞ファイバ技術開発の知見を活かし、iPS細胞増殖技術の検討が行われることになる。安全で効率のよい製造手法が確立されれば、高額な再生医療費用の低価格化や、今よりも早く治療法を患者に届けることが可能になると、CiRA_Fは話している。

細胞治療に向けた細胞量産技術開発に取り組む「セルファイバ」が1.05億円を調達

細胞治療に向けた細胞量産技術開発に取り組む「セルファイバ」が1.05億円を調達

細胞ファイバ技術を用いた細胞大量培養ソリューションの開発を手がけるセルファイバは10月14日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資として1.05億円の資金調達を実施したを発表した。引受先は、リアルテックホールディングス運営のリアルテックファンド3号投資事業有限責任組合(グローカルディープテックファンド)。

セルファイバではこれまでに、高生産細胞培養技術を構築。すでに小規模試験における技術評価を完了し、2020年10月より事業会社1社と共同開発を開始した。さらに2020年度内に異なる細胞種類・用途の共同開発の開始も予定しているという。

今回調達した資金は、主として実験環境の拡充に伴う設備投資、開発加速のための専門人材採用、研究開発に充てる予定。2020年10月より実験室面積を2倍に拡張し、間葉系幹細胞およびiPS細胞の培養技術について、実製造へと移行するためスケールアップ、加えて規制への適合に取り組む。

細胞治療に向けた細胞量産技術開発に取り組む「セルファイバ」が1.05億円を調達

2015年4月設立のセルファイバは、ひも状の細胞塊を形成する世界初の技術「細胞ファイバ」をコア技術とする東京大学発スタートアップ。「『細胞をつかったものづくり』で地球規模の課題解決に貢献する」をミッションに掲げ、現在は主として細胞治療用途の細胞量産技術開発に取り組んでいる。

細胞医薬品はがん免疫治療などを中心に注目が集まる一方で、依然手作業に依存した製造工程が主流となっており、製造の合理化が喫緊の課題とされる。セルファイバは、ファイバ培養技術を用いて高額な細胞医薬品の製造コストの削減・大量製造を可能とし、誰もが手の届く細胞治療の実現を目指していく。

細胞ファイバ技術は、髪の毛ほどの細さの中空ハイドロゲルチューブ内に細胞を封入し、培養する技術。周囲のゲルが内部の細胞を保護しつつ過剰な凝集を防ぐため、従来の懸濁培養(フラスコやタンクを用いて細胞を培地に浮遊させた状態で培養する方法)では困難だった、高品質な細胞を高密度で培養する「高生産培養」を実現した。また、細胞の分離回収が容易なことから、自動培養装置と組み合わせることによって1ロットあたりの生産量を飛躍的に高めることが可能となる。

ハイドロゲルで被覆されたひも状細胞塊「細胞ファイバ」の顕微鏡観察像

ハイドロゲルで被覆されたひも状細胞塊「細胞ファイバ」の顕微鏡観察像

カテゴリー: バイオテック
タグ: 細胞ファイバ資金調達セルファイバ日本