ソフトバンクが投資を止め破産申請中の通信衛星OneWebを英政府とインドのBharti Globalが買収し再建へ

衛星コンステレーションによるコミュニケーション網を提供することを目指していたOneWebは経営破綻して2020年3月に連邦破産法11条による保護を申請していたが、このほど売却手続きが完了した(Twitter投稿)。OneWebを取得したのは英国政府が主導するコンソーシアムであることが判明している。

コンソーシアムはインドのBharti Globalからの資金提供を受けている。同社はインドのビジネス界の有力者であるSunil Mittal(スニル・ミッタル)氏のBharti Enterprisesの一社だ。BharatiはOneWebの衛星ネットワークによる世界的インターネット接続サービスの構築を続行させたいと考えている。一方、英国はブレグジットの結果、2020年1月からEUが運営する衛星ナビゲーションリソースにアクセスできなくなったため、PNT(位置情報、ナビゲーション、計時)サービスのためにOneWebの衛星コンステレーションを利用したいという背景があった。

今回の買収契約ではBharti Globalと英国政府がそれぞれ約540億円(約5兆8000億円)を出資した。英国政府がOneWebの株式の20%を所有し、BhartiはOneWebに今後のビジネス運営に必要な支援を行っていくという。

650基の衛星によるコンステレーションを構築することを計画していたOneWebは74基を打ち上げたところで事業継続に必要な追加資金の調達に失敗し、大規模なレイオフを余儀なくされ、連邦破産法11条申請に追い込まれた。資金調達の失敗では大口出資者であった日本のソフトバンクが経営する非公開企業向けファンドが追加資金の投資をキャンセルしたことが大きかったと報道されている。

BBCの報道によれば、買収契約が米国規制当局の審査で承認を得られば、OneWebはレイオフの撤回を含め従来のオペレーションを復活させる計画だという。将来は既存の設備の一部を英国へ移転する可能性もある。これまでOneWebはAirbusと提携してフロリダ州の施設で衛星を組み立てていた。

OneWebはもともとロンドンに本社を置く企業だ。計画している衛星コンステレーション事業は、地球低軌道を周回する多数のミニ衛星を利用してレイテンシーが低く、大容量のインターネットアクセスを提供するというものだ。これが実現できれば英国民は低価格かつ高品質で全土をカバーするという理想的なインターネット接続サービスを得られる可能性がある。英国のPNTナビゲーションに対応することはOneWebの既存の目標からかけ離れていない。少なくとも理屈の上からはこのサービス拡張は衛星資産の効果的な活用法であり、比較的安上がりに実現できるはずだ。

現在のところ、英国には自分たちで衛星を打ち上げる能力がないが、垂直離陸、水平離陸の双方に対応できるスペースポート構想に取り組んでいる。これによりVirgin OrbitSkyroraなどのスタートアップが英国内で小型衛星を打ち上げることができるようにするかもしれない。 つまりOneWebの衛星コンステレーションのような宇宙資産の構築、メンテナンスが英国内のリソースを利用して現在よりはるかに安上がりに実現できるわけだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクとWeWorkがEmergeアクセラレータの最初のスタートアップ14社を選定

ソフトバンクグループのベンチャーキャピタル、SoftBank Investment AdvisersWeWork Labsは共同でEmergeの最初のチーム14社を選定したことを発表した。Emergeは価値を過小評価されているスタートアップのファウンダーを支援するアクセラレータプログラム。

両社のプレスリリースによれば、Emergeは「ソフトバンクがWeWork Labsのサポートを得て立ち上げた」ものと述べている。WeWork Labsは「グローバルイノベーションの促進」を目的としたWeWorkのアクセラレータだ。

これは株式取得を求めない8週間のワークショップで、両社の関係者がメンターとなってアドバイスを行う。またソフトバンクのトップとのセッションも用意される。こうした準備の後、投資家、ソフトバンクのパートナー向けのデモやイベントでクライマックスとなる仕組みだ。

Emergeのサイトによれば、このプログラムはカリフォルニア州サンマテオを拠点としているが、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行のため、セッションを含めてすべのプログラムはオンラインで実施される。

SoftBank Investment Advisersのマネージングパートナーで最高人事責任者であるCatherine Lenson(キャサリン・レンソン)氏は声明に次のようにう書いている。

「ソフトバンクにとって、過小評価されている起業家とスタートアップを支援することは最優先事項だ。テクノロジー・エコシステム全般で、スタートアップに多様性を確保したい。この分野ではダイバーシティが不十分であり、欠けており、われわれにはなすべきことが多数ある。これがEmergeをスタートさせた理由だ。優れたファウンダーたちのインスピレーションがテクノロジー・コミュニティに多くのプラスの影響を与えることになるだろうと期待している」。

現在、WeWorkがソフトバンクグループを訴えるなど両社は法的、財務的に緊張した関係にあるが、一方では依然として緊密な協力も続いているわけだ。

Emergeの第1陣として選定されたスタートアップ14社は以下のとおり。

  • Aquagenuity:水質を分析し、環境をリアルタイムでモニターできるスマートデバイス
  • Bridge to College:学生の大学選択を助けるデータの提供と分析
  • Caldo:レストランチェーン各店舗にカスタマイズ可能な自動化とモバイル機能を提供する
  • GameJolt: 10万以上のゲームをフォローできるゲーマー向けプラットフォーム(開発中)
  • Koniku:呼気を分析して疾患を診断する
  • Mogul:雇用主が多様な人材を発見するのを助ける
  • Moment AI:AIがドライバーをモニタし運転の安全性を向上させる
  • Node:ユニークなキット部品から実際の家を組み立てる
  • OjaExpress:移民が出身国の食材を扱う近隣の食品店を探せるマーケットプレイス
  • Proven:MITの2018年の人工知能賞を受賞したThe Skin Genome Projectが提供する個人向けにカスタマイズできるスキンケア製品
  • Rebellyous Foods:植物性の肉を使った各種プロダクト
  • ScriptHealth:処方薬の購入を助けるサービス
  • Shyft:IoTデバイスとソフトウェアにより分散型エネルギー資源のインテリジェント管理ネットワークを構築する
  • SPS:米国の主要州とカナダから国際支払いをサポートする決済サービス

画像:WeWork

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクが出資するインドのOyoが追加で従業員を一時帰休に、役員報酬もカット

インドの格安ホテルスタートアップOyoは、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックにより売上高がおおよそ60%減っている。この対応策として経費削減を模索していて、グローバルでさらに多くの従業員を一時帰休とし、役員報酬を7月まで25%カットする。

OyoのCEOであるRohit Kapoor(ロヒット・カプール)氏は22日に開いたバーチャル対話集会の中で従業員にこのニュースを伝えた。ここ数カ月で同社は数千人を対象にした一時帰休と解雇をすでに実施している。

TechCrunchが入手した文書によると、カプール氏は「今日、当社はインドにとって困難だが必要なステップをとる。全てのOyoプレナーズ(役員会メンバー)に固定報酬の25%減を受け入れてもらう。これは4〜7月の支払いが対象となる」と述べた。

カプール氏は、影響を受ける従業員に同社が“限定された”福利厚生の提供を続けると強調し、今後追加の解雇は行わないと約束した。Oyoの広報担当はTechCrunchに対しそうした内容を認めたが、何人が一時帰休となるのかは明らかにしなかった。

Oyoの創業者で最高責任者のRitesh Agarwal(リテッシュ・アガーウォール)氏は今月初め、新型コロナ感染拡大がグローバルで同社の事業に深刻な影響を及ぼしていると話していた。その際、同社の客室稼働率と売上高は今年初めから50〜60%超落ち込んでいると述べた。

Oyoの2019年3月に終了する事業年度の世界全体の売上高は9億5100万ドル(約1024億円)で、3億3500万ドル(約360億円)の損失となった。

同社のこのところのパフォーマンスは孫 正義氏のソフトバンクにとって最新の打撃となる。ソフトバンクのポートフォリオにあるいくつかのスター企業は新型コロナで苦戦している。

ソフトバンクはすでに、昨年瓦解したWeWorkに訴訟を起こされている。そしてソフトバンクが強力にサポートしているもう1つの企業のUberは先週、2020年の業績予想を撤回した。ソフトバンクはこれまでにUberに19〜22億ドル(約2050〜2370億円)を株式投資している。

AIベースの貸し出しプラットフォームKabbage一時帰休を実施し、グローバルコミュニケーション企業OneWebは破産申請した。オンライン不動産売買スタートアップのOpendoorは先週、全従業員の35%にあたる600人を解雇すると明らかにし、eコマーススタートアップのBrandlessは今年初めに廃業した。不動産ブローカースタートアップのCompassも従業員を解雇した。

ソフトバンクは今月初めに2020年3月期決算が70億ドル(約7500億円)の赤字となり、営業損失は125億ドル(約1兆3000億円)に膨れるとの見通しを示した。

“新型コロナウイルス

画像クレジット: Akio Kon / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

ソフトバンクがWeWork株3210億円買い戻しの約束に尻込みか

Wall Street Journalによると、SoftBank(ソフトバンク)は、WeWorkの既存株主から30億ドル(約3210億円)相当の株を買い取る約束を回避する手段として、規制当局の捜査を利用している。

WeWorkの華々しいIPOの失敗は、数十億ドルの価値がある後期ステージ投資を行った人々にとって良い時間に終わりがくる前兆だった。そして株式の買取りプランは、ソフトバンクの数ある投資先の中で最も問題を抱える高額高価値の非上場スタートアップの問題を、少しでも軽減しようとする取り組みの一部だった。

買い戻し計画から外れることになる1人は、元CEOのAdam Neumann(アダム・ニューマン氏)で、自身のWeWorkの持ち株に対して9.7億ドル(約1040億円)を受け取ることになっていた。

Wall Street JournalはWeWork株主宛の通知を引用し、もしソフトバンクが買い戻し行わなければ、WeWorkに命綱の50億ドル(約5350億円)を与えるという同社の約束を守ることもなくなるだろうと報じた。

WSJの記事によると、株式買い戻しの契約自体は取り消されておらず、新型コロナウィルス・パンデミックによる世界経済の減速を鑑みて再交渉することになるとみられている。

これまでのところSEC(証券取引委員会)と米司法省、およびニューヨーク州議会はソフトバンクに対して、WeWorkのビジネス慣行および投資家との意思疎通に関する情報を提供するよう求めている。

画像クレジット:Theo Wargo / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

血液検査で新型コロナなどの病原体を特定し最適な治療法を見極める液状生検技術のKariusが183億円調達

「新型コロナウイルスのような新しい病原菌を感染が大流行する前に特定するのがKarius(カリウス)の得意技です」と、最高責任者のMickey Kertesz(ミッキー・ケルテス)氏は言う。彼のこのライフサイエンス系スタートアップは、つい先日、1億6500万ドル(約183億円)を新規に調達した。

この新規投資は、次第に脅威を増すCOVID-19のおかげで決まったように見えるが、同社の技術は、免疫不全の小児患者のための感染症を引き起こす病原体または複合体肺炎、真菌感染症、心内膜炎の潜在的原因の検査にすでに使われていると、同社の説明には書かれている。

液状生検技術は、癌の治療に広く用いられているものだ。患者の癌細胞から流れ出た血液中の微量な遺伝物質の有無から、患者にとって最適な治療法を見極めることができる。

Kariusは、患者の血液サンプルの中の遺伝物質の特定を行うDNAシークエンシングと機械学習技術を活用するためのハードウェアとソフトウェアを開発し、それと同じ原理を応用して血中の病原体を特定できるようにした。

同社の説明によると、人間の体に感染した病原菌は、血中にDNAの痕跡を残すという。これを微生物無細胞DNA(mcfDNA)と呼ぶ。Kariusの検査方法ではバクテリア、DNAウイルス、菌類、寄生虫といった臨床的に意義のある1000以上のサンプルの無細胞DNAを測定できる。この検査によって、無数にある病原菌の中から患者に悪影響を及ぼす恐れのあるものが提示される。

「現在私たちは、採択の段階を通過し、臨床研究によってこの技術が文字どおり人の命を救うものであることが示された段階にあります」とケルテス氏。

初期段階の成功だが、これはソフトバンクを惹きつけるのに十分だった。ソフトバンクは、ビジョン・ファンド2からの投資により同社を支援している。

ソフトバンクは、約束を果たせなかった消費者系スタートアップ(内部崩壊したBrandlessやZume、WeWorkに代表される壊滅的打撃を招きかねない企業)への投資が多すぎ、早すぎる(または遅すぎる)ことで激しい批判を浴びているが、ライフサイエンス分野の投資チームは目覚ましい実績を挙げている。「彼らには経験と専門知識とネットワークがあり、まさにそれが私たちにつながりました」とケルテス氏は、ソフトバンクからの支援を決めたことについて話していた。「彼らは以前、Guardant Healthと10X Genomics(テンエックス・ゲノミクス)の取締役会のメンバーでした」

どちらの企業も、公開市場で成功し、その技術の有効性を証明してきた。その同じ気質をKariusも備えている。同社は、その検査方法の分析的検証と臨床的有効性に関する記事を、同業者の審査を経てNature Microbiology誌に掲載。通常の方法と比較して、感染を引き起こす可能性のある病原菌をより早く、より正確に特定できることを示した。

その技術の有効性が初めて認められたことで新たな投資を獲得した同社は、その検査方法の商品化を急ぎ、技術の有効活用を推し進めつつ、新たな技術の開発を行うことにしている。

彼らが第一に考えている開拓分野に、新しい生体指標の特定がある。これはCOVID−19のような新しい病気の指標になることが期待される。

「人類はまだ、感染症を解明できていません」と、同社の最高技術責任者Sivan Bercovici(シビアン・バーコビッチ)氏は言う。「私たちの技術で特定できない病原体の痕跡について、今後も公共のデータベースにある高品質なゲノムの設計図をさらに取り込み、私たちがダークマターと呼んでいるそうしたグループのデータを個別にまとめて将来に備えています。最大の挑戦は、知らないものを、いかにして知るかです」

Kariusは、血液サンプルの中の病原菌の情報をデジタル化し、機械学習とDNAシークエンシングを使って病原体の指標を認識している。同社は、30万種類以上の病原体のデータが記録されている公共のデータベースを利用しているが、同社で特定できない種類については、そのための識別子も作成している。

1回の費用が2000ドル(約22万円)というKariusの検査は決して安くはない。しかしケルテス氏によれば、外科手術よりも安全で費用対効果も高いという。患者の体に穴をあけて組織を摘出する必要がなくなるばかりか、この技術はすでに100以上の病院と医療機関で使われていると同社は話す。

ここまで達成できたことを受けて、General CatalystやHBM Healthcare Investmentsといった新しい投資企業も、ソフトバンクのビジョン・ファンド、そして前回のラウンドに参加したKhosla VenturesやLightSpeed Venture Partnersなどの以前の投資企業とともに契約したい意向を示している。

「感染病は、死亡原因の世界第2位です。Kariusの革新的なmcfDNA技術は、感染病を正確に診断します。これは、既存の技術では判別できません」とソフトバンク投資顧問のDeep Nishar(ディープ・ニシャー)氏は声明の中で述べている。

画像クレジット:SCIEPRO

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(翻訳:金井哲夫)

ソフトバンクが支援するBrandlessがついに完全廃業

短いジェットコースターのような話だった。

サンフランシスコに本社を置く電子商取引企業Brandless(ブランドレス)は、美容、パーソナルケア、日用品、ベビー、ペットといったカテゴリーの「クルエルティフリー」(動物を傷つけない)製品を製造販売していたが、20177に正式オープンした後、少なくとも3年間、休業していた。

ニュースサイトProtocolで発表された声明では、Brandlessは小売り市場の「猛烈な競争」が原因だとしている。休業の影響により、同社は70名の従業員を解雇し、残る10人で未処理の注文に対処し、可能ならば在庫の販売方法を考えるという。

この会社が短命だったことは、業界ウォッチャーにはそれほどの驚きではなかった。2018年7月、Brandlessは、ソフトバンクの1000億ドル(約10兆9000億円)規模のビジョン・ファンドから2億4000万ドル(約264億円)の投資を受けたことを発表したBrandlessの企業価値を5億ドル(約550億円)強と見積もっての契約だ。比較的幼い企業にしては、びっくりするような出来事だった。

Wagなど、さらに最近ではWeWorkのようにビジョン・ファンドが支援したいくつもの企業に共通して起きたことだが、それは経営幹部の再編を意味した。実際、昨年3月には、Ido Leffler(イド・レフラー)氏とこの会社を共同創設したCEOのTina Sharkey(ティナ・シャーキー)氏が、取締役会の共同会長となって「より集中した役割」を果たしたいと、CEOの座を降りている。

それにより、Brandlessの当時のCFOであったEvan Price(エバン・プライス)氏が暫定CEOに就任。5月には、元Walmart.comのCOO、John Rittenhouse(ジョン・リッテンハウス)氏がその座を引き継いだ。Protocolによると、彼は、もっとたくさんのBrandlessの製品を実店舗に並べる計画を立てていたが、昨年12月、密かに身を引き、Brandlessから去った(その一方で、昨年秋、シャーキー氏も取締役会から退いている)。

影響

たしかにこの展開は、すでに抜け目ない取り引きで評判が揺らいでいるソフトバンクには追い打ちとなった。だが公正を期して言うなら、Brandlessは、その多くが質の高い製品にまつわるいいストーリーを有する新規参入者で溢れるようになった業界に踏み込み、さらに、同じ価格帯のブランドに属する似たり寄ったりのテイストと品質の製品で激しい競争に捲き込まれたのだ。

2018年に発表されたソフトバンクの投資金2億4000万ドルについても言及しておくべきだろう。Brandlessに近い情報筋によると、同社に入った資金はその半分以下だったという。

昨年のThe Informationが伝えたところによれば、Brandlessが利益を生むことを熱望していたソフトバンクは、約束した資金の一部を分割で提供し、Brandlessが一定の財務目標を達成するまで資金の大半を出し惜しみしていた。

目標達成が叶わなかったため、ソフトバンクは1億ドル分の投資を取りやめた。そしてProtocolによると、プライス氏、レフラー氏、ソフトバンクの業務執行取締役Jeff Housenbold(ジェフ・ハウスンボールド)氏、ベンチャー投資会社RedpointのJeff Brody(ジェフ・ブロディー)氏、ベンチャー投資会社NEAのColin Bryant(コリン・ブライアント)氏らからなるBrandlessの取締役会は、退職金が支払える間に会社をたたむことに決めたのだという。

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(翻訳:金井哲夫)

ソフトバンクの改革を求めてエリオット・マネジメントが同社株約2800億円取得

アクティビスト投資会社であるエリオット・マネジメントは着々とその株式を買い集め、取得金額は25億ドル(約2800億円)に達した。ニュースの見出しを踊らせてきた日本のテクノロジーコングロマリットであるソフトバンクは、一連の失策によって株価が低迷していた。

The Wall Street Journalの第一報によるとSlack(スラック)やUber(ウーバー)、また今や悪名高いコワーキングスペースのWeWork(ウィーワーク)に数十億ドル(数千億円)を賭けたことで名を馳せたソフトバンクは、エリオットの金融投資部門をひきつける目標を提示したという。

2019年11月、ソフトバンクグループは、かつて非公開市場で470億ドル(約5兆2000億円)と評価されたWeWorkの救済による影響もあり、65億ドル(約7100億円)の損失を計上した。

損失計上で株価は急落したが、数々のトラブルにもかかわらず、ソフトバンクは依然として非常に安定したポートフォリオを保有している。そのソフトバンクの資産には、エリオット・マネジメントの340億ドル(約3兆7300億円)もの運用資産の一部を切り出してソフトバンクに少数株主として投資するに値する魅力があると同社は考えた。

「エリオットによるソフトバンクグループへの多額の投資は、市場がソフトバンクの資産ポートフォリオを大幅に過小評価しているという我々の強い信念を反映している」とエリオットの広報担当者はメールで述べた。「エリオットはソフトバンクの幹部と直接対話しており、ソフトバンクの本質的価値に対するディスカウントを大幅かつ持続的に減らすべく建設的に取り組んでいる」

ソフトバンクは、1000億ドル(約11兆円)という巨額のビジョンファンドでテクノロジー投資の世界に波風を起こしてきた。このファンドは多額のキャッシュを必要とするテクノロジースタートアップに出資する目的で設立されたが、さまざまな業界を変革する可能性がある。

同社の大胆な投資戦略の資金は、Saudi Arabian Public Investment Fund(サウジアラビア・パブリック・インベストメント・ファンド、投資担当者はジャーナリストの暗殺を命じた上層部とつながりがある)のような政府系ファンドやApple(アップル)、Microsoft(マイクロソフト)などの企業と協力して調達された。

リミテッドパートナーと自身の現金により、ソフトバンクはさまざまな業界の企業の株式を大量に取得してきた。ただ、その規模を維持し、正当化するのが難しくなってきている。

2019年、ソフトバンクのポートフォリオ企業のいくつかがトラブルに直面した。エリオットがソフトバンクの上層部に変革をもたらすとしても、ポートフォリオのパフォーマンスに影響を与えるかどうかは何とも言えない。

実際、ソフトバンクの創業者である孫正義氏が22%の株式を保有していることを考えると、エリオットが開始または主張する活動には限界があるかもしれない。

ソフトバンクのポートフォリオには優れた企業があり、公開市場の投資家はエリオット・マネジメントによる投資の開示を受けてソフトバンクの株式を買いに走っている。

ただし、2018年にベンチャー市場に流入した資金の洪水は絶頂に達したようであり、ソフトバンクや同社の新規投資家はずぶぬれになってしまう可能性がある。

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(翻訳:Mizoguchi

GM傘下の自動運転車メーカーのCruiseがハードウェア部門を強化

10カ月前、Cruise(クルーズ)は昨年末までに少なくとも1000人のエンジニアを雇うと宣言していた。72億5000万ドル(約7950億円)の軍資金を有する企業であっても、スタートアップや自動車メーカーや巨大ハイテク企業が人材の熾烈な争奪戦を繰り広げる業界においては、かなり挑戦的な目標だ。

当時、そしてその後もCruiseは誰を雇うのかは話してこなかった。Cruiseはソフトウェアのエンジニアを狙っていて、認知と判断と操作、シミュレーションとマッピングの専門家を雇い入れ、自動運転車の「頭脳」を作らせるつもりだとの憶測も飛んだ。それも確かに目的のひとつではあった。

GMの子会社であるCruiseは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド、自動車メーカーのホンダ、T. Rowe Price(ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ)の支援も受け、現在、1700名の従業員を擁している。そのうち、ソフトウェアエンジニアはかなりの部分を占めている。

Cruiseは、この18カ月間、あまり知られていない活動に着手していた。大規模なハードウェアエンジニアのための部門の設立だ。うまくいけば、ビル1棟を割り当てるほどの規模になる計画だ。現在、その努力の最初の結果は、サンフランシスコのブライアント通りにあるCruiseの社屋地下の拡大を続ける研究室であくせく働いている。

もしCruiseの計画が思い通りに進めば、ビルの地下では収まりきれなくなる。Cruiseの計画に詳しい情報筋によれば、同社は、ブライアント通りのかつてCruiseの本社が置かれていた床面積約1万3000平方mの建物を、ハードウェア部門専用に割り当てるつもりだという。

ソフトウェアエンジニアは、一部がブライアント通りに残るものの、大部分は他の従業員とともにブラナン通り333に移動する。そこはDropboxの本社があった建物で、2019年にCruiseが買い取った。

Cruiseは、ハードウェアチームもソフトウェアチームも、具体的な従業員数を公表していない。現在の求人情報やLinkedInなどの情報を合わせて考えると、ハードウェア専門の従業員は300人以上いると思われる。LinkedInのデータベースを見る限り、少なくともその10%は過去90日以内に雇用されている。

それでもまだ求人は続いている。Cruiseのウェブサイトでは、あと160人分の職が空いている。およそ106名がソフトウェア関連で、ハードウェアエンジニアは35名だ。残る24名は、管理、広報、事務、保安など他の部門のものとなる。

ハードウェア本部

風通しのいい、陽光あふれるダイニングホールとCruiseの試験用自動運転車が保管されたガレージの下で、数百人のハードウェアエンジニアたちが、今の、そして将来の車のためのセンサーからネットワークシステム、演算システム、情報システムにいたるまで、あらゆる開発を進めている。

つまりCruiseは、未来の車を見据えてソフトウェアと同じぐらいハードウェアの開発に積極的になっているということだ。その手作りハードウェアは、サンフランシスコで1月22日の夕方から開かれるCruiseの「Beyond the Car」イベントで初披露される可能性が高い。

Cruiseの価値は、そのソフトウェアに寄るところが大きい。6年前、既存の車に後付けしてハイウェイで自動運転ができるようにするアフターマーケットキットを開発するという計画の下に創設されたときから、Cruiseはソフトウェアの会社だった。

Cruiseの創設当初の歴史に詳しい情報筋によれば、GMのベンチャーチームが2014年の初頭からCruiseに目を付けていたという。しかし、GMとの関係が花開いたのは、Cruiseがアフターマーケットキットを捨てて、市街地で使える自動運転車の開発に方向転換してからのことだ。

そのときCruiseは、ハードウェアとソフトウェアを統合させるためには、もっと高度な専門知識が必要だと気がついた。2015年後半には、GMとの話し合いは事実調査の段階を超えて発展した。そして2016年3月、GMはCruiseの買収を発表した。

GMが親会社となったCruiseは、突然、製造大手の便宜が得られることになった。GMの電気自動車であるシボレー・ボルトEVは、Cruiseが自動運転の試験車両として使えるプラットフォームになった。現在、Cruiseには180台の試験車両があり、そのほとんどをサンフランシスコの公道で見ることができる。

Cruiseは以前からハードウェア・エンジニアを雇ってきた。しかし、ハードウェア開発とシステム統合に力を入れ始めたのは、2018年の初めにCarl Jenkins(カール・ジェンキンス)氏をハードウェア部門副社長として、Brendan Hermalyn(ブレンダン・ハーマリン)氏を自動運転ハードウェアシステムの責任者として雇い入れてからのことだ。

それとほぼ同時期に、GMはCruiseの自動運転車の量産型を製造すると発表した。無人運転で、ハンドルもペダルも人のための操作系もない車を、ミシガン州オライオン・タウンシップの組み立て工場でイチから作るという計画だ。自動運転車の屋根のモジュールはブラウンズタウン工場で組み立てられる。GMは、このミシガン州の2つの工場に1億ドル(約110億円)を投じて生産に備えると話した。GMのオライオン工場では、すでにシボレー・ボルトEVと、Cruiseの第三世代の自動運転車の試験版が生産されている。

その6カ月後、GMは、GMとCruiseが新しい種類の自動運転車を開発するという包括合意の一環として、ホンダが27億5000万ドル(約3020億円)を出資することになったと発表した。

システムズアプローチ

システム統合は、以前にも増して重要になる。Waymo(ウェイモ)でカメラ部門を率いていたハーマリン氏は、システム統合の主要な牽引役の一人だ。

ハーマリン氏がシステム統合に情熱的だという表現は、控えめ過ぎるかも知れない。去年、1時間におよぶインタビューで、彼は繰り返しその言葉を強調していた。整列する試験車両の間に立ち、ひとつのことを力説した。「最もエキサイティングなのは統合です」と。彼はまた、Cruiseの理念とリアルタイムで即応し、安全第一の感覚知覚処理を可能にするシステムを、大きなスケールで製造するアプローチに関するブログ記事も執筆している。

ハードウェアとソフトウェアを統合する能力は、自動運転車の安全運用には不可欠であり、自動運転車を開発する企業はみな同様に追求している。しかし、Cruiseの力の入れようを見ると、ほとんどのハードウェア部品を自社開発しているという事実も相まって、この領域が同社にとって、どれほど大切なものかがわかる。

Cruiseのハードウェア開発の焦点は、センサー、コンピューター処理、ネットワークシステム、通信、インフォテインメント、ユーザーエクスペリエンスと、自動運転技術全般に当てられている。

Cruiseの自動運転車。2019年1月12日、ワシントン州シアトルにて(写真:Stephen Brashear for Cruise)

Cruiseは初期段階の製造を自社で行うが、1社だけですべてをやろうとは思っていないとハーマリン氏は強調している。

「GMとホンダをパートナーに出来て、私たちは幸運でした」と彼は、10月に行ったTechCrunchとのインタビューで話していた。「それらの会社の自動車工学の専門知識を活用でき、さらに開発工程から、その自動運転トポロジーを工場の生産ラインで組み立てられた完成車両に組み込むまでを彼らと共同で進めることができるからです」。

Cruiseの車に搭載されているカメラシステムのバッフルなどは、GMとの提携関係から生まれたごく小さな例に過ぎない。そこでは、自動洗浄システムが開発され組み込まれた。その他、共同開発されたハードウェアには、センサー、マンウト、ライダーの組み込みが容易なバンパーなどがある。Cruiseは、ライダーのスタートアップであるStrobe(ストローブ)を2017年に買収した。

「私たちの目標は、できるだけ早く作ることです。すべてを作ることではありません」とハーマリン氏は後に補足していた。「当然、私たちもサプライヤーに製造を委託します。ひとつひとつ手作りすることに拘束されるゼペット問題を抱えたくないのです」。

昨年10月、TechCrunchがCruiseのオフィスを訪れたとき、地下の研究室は落ち着かない様子だった。部分的にぎゅうぎゅう詰めのところがあり、拡張への準備が始まっていることが目に見えた。

研究所の増築は続いた。ハードウェア・チームはとくにセンサーの開発に集中しており、「ハードウェアの急速な成熟のための少量製造能力」を発揮していると、彼は追伸のメールに書いていた。

「これは、航空宇宙業界で行っているものと、あまり変わりません」とハーマリン氏はそのシステムズアプローチについて語っていた。「しかし、その解決方法に独自性が出るのだと私は思っています。私たちはパートナーたちと共に、そうしたシステムとしての問題を追求し、市場で対処することができます」。

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(翻訳:金井哲夫)

ソフトバンク出資のスタートアップが続々とレイオフを発表、最新はカーシェアリングのGetaround

カーシェアリング事業を展開するGetaroundは1月8日、従業員のレイオフを実施すると発表した。The Informationによると、解雇される従業員の数は約150人、全体の1/4程度だ。Getaroundはソフトバンク・ビジョン・ファンドから出資を受けている。

2009年に設立されたGetaroundは、2011年より個人間のカーシェアリングサービス「Getaround」を展開。Getaroundでは、Getaround Connectと呼ばれるコネクテッド・カー技術により、スマホでアプリから利用可能な車両を探し解錠することで、車両のオーナーから鍵を受け取るなど無駄なアクションが一切必要のない、優れた顧客体験を提供している。同社は米TechCrunchが開催したDisrupt 2011のピッチバトルの優勝社だ。

ソフトバンクが支援するスタートアップでは、2019年4月に犬の散歩代行サービスWag、10月にWeWork、ならびに車のサブスクリプションFair、12月に建設領域のKaterra、そして2020年1月にピザのロボットZumeのレイオフが明らかになっている。

また、2019年はソフトバンクにとって、WeWorkのIPOの失敗やWagの経営からの撤退を経験し、かつ、UberやOneConnectのIPOが期待はずれとなった年でもあった。そして2020年に入って早々、Axiosは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが複数のスタートアップに対する出資を、タームシート提出後に見送ったと報じた。複数のスタートアップとは、介護領域のHonor、B2BセールスソフトウェアのSeismic、ハンバーガー製造ロボットCreatorの3社だ。Paul Graham氏は、「起業家たち、気をつけろ。これはスタートアップに起こり得る、最も有害なことの1つだ」とツイートしている。

Getaroundは2018年8月、ソフトバンク主導のシリーズDラウンドで3億ドルを調達したと発表。同ラウンドにはトヨタの未来創生ファンドも参加している。Getaroundは2019年4月、調達した資金で、パリに本社を置くDrivyを3億ドル(約325億円)で買収したことを発表。同年5月に同社の創業者でCEOのSam Zaid氏をTechCrunch Japanが取材した際には、同氏はDrivyの買収を「アメリカとヨーロッパだけでなく、グローバルを狙える企業になるためのステップ」と説明し、アメリカと欧州以外の地域での展開も既に視野にあることを明かしていた。

Zaid氏は、1月7日に公開した投稿で、「成長と効率のバランス」の重要性を強調。同投稿に書かれている「500万ユーザー、300都市」は昨年に取材した際に開示していた数字と変わりないが、同氏は「我々は引き続き、全ての車がシェアされる世界を目指し、交通量の過多を解決することで、数十億人もの人々に良いインパクトをもたらしていく」と力強く綴っている。

「チームに感謝すると共に、影響を受けた従業員、そしてユーザーには大変申し訳なく思っている。個人的には耐え難く、不甲斐なく思っているが、この決断が、会社、そしてユーザーにとって最善策であることには自信がある」(Zaid氏)

ソフトバンク・ビジョンファンドがインドのメガネ小売Lenskartに300億円投資

オムニチャネルでメガネなどを販売するインドのLenskartは12月20日、事業拡大に向けソフトバンクのビジョンファンドから新ラウンドで2億7500万ドル(約300億円)を調達したことを明らかにした。

資金調達シリーズGラウンドの一環として、設立9年のLenskartの既存投資家の一部が株式を売却するとLenskartの創業者でCEOのPeyush Bansal(ピューイッシュ・バンサル)氏はTechCrunchに対し語った。ただ、その投資家の名前は明らかにしなかった。

ビジョンファンドの投資で、Lenskartの資金調達額は累計4億5600万ドル(約500億円)となる。今回の投資に詳しい人物はTechCrunchに対し、新ラウンドでLenskartのバリュエーションは15億ドル(約1600億円)超となると話した。

メガネやコンタクトレンズ、アイケア製品販売のeコマースサービスとして始まったLenskartだが、近年は実在店舗にも手を広げている。現在、インド国内100カ所余りの都市で500店を超える店舗を展開しているとのことだ。ただ、同社の全売上高の60%超をオンライン販売が占める。

「新たな資金は、テクノロジーインフラとサプライチェーンの改善にあてる」とバンサル氏は話した。「今後の展開でソフトバンク・ビジョンファンドの支援を得られることを嬉しく思う。Lenskartの次のエディションを構築する上で、コンシューマーとテクノロジーに対するビジョンファンドの理解は役立つ」と話した。

業界の予測によると、インドでは視力が悪くメガネを必要とする人が5億人超いるが、実際に視力を矯正しているのは1億7000万人のみだ。

Lenskartはインド国内にかなりの成長ポテンシャルを見出しており、訓練を受けた検眼医があまりいない小さな町や村では特に期待できる。

Lenskartは顧客となりそうなすべての人に無料の検眼テストを提供している。またユーザーがいくつかのメガネを自宅で試し、それから購入を決められるようにもしている。そして同社のウェブサイトでは、3D AIを使ってユーザーがいくつかのメガネをかけてどんなふうに見えるのかを試せるようになっている。

調査会社Euromonitor Internationalによると、インドのメガネ市場は46億ドル(約5000億円)だが、そのほとんどは手付かずだ。

画像クレジット:Nasir Kachroo / NurPhoto / Getty Image

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(翻訳:Mizoguchi)

信用取引が1日で完了するメキシコのフィンテック企業Konfioにソフトバンクが100億円超を投資

Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)がメキシコのフィンテック企業であるKonfio(コンフィオ)に1億ドルを融資した3カ月後、ソフトバンクも同社に1億ドル(約109億円)を投資した。このニュースは、ロイター通信が8月に報じたソフトバンクが同社と交渉を進めているという記事を裏付ける結果となった。Konfioはメキシコ最大級の資金調達を行っているフィンテック企業だ。

ソフトバンクはメキシコでの投資拡大を続けており、これまでにも中古車販売プラットフォームのKavakや決済システムのスタートアップのClipに出資している。メキシコ以外では、これまでソフトバンクは同社の50億ドルの中南米向けファンドの対象を主にブラジル絞っていたが、最近アルゼンチンにも進出し、金融サービス会社のUalaにTencentと共同で1.5億ドルを投入した。

既存の銀行が中小規模の会社への融資を渋るメキシコで、Konfioの信用引受サービスは迅速な代替手段として利用されている。Konfioはデータファーストの考え方で、事業の成長を目指す中小企業に対して迅速に信用調査を行っている。同サービスは1日で信用引取が可能だ。従来は承認プロセスに何カ月もかかり、抵当を要求されることが当たり前だった。

ところで、もしあなたのスタートアップが中南米で増え続ける中産階級のデータを集めているなら、ソフトバンクが長期投資に興味を持つかもしれない。この日本のコングロマリットは、消費傾向や携帯電話の利用からパーソナルバンキングのユーザー行動まで中南米の消費者に関するどんな情報でも欲しがっているようだ。

Konfioの創業者でCEOのDavid Arana(デビッド・アラナ)氏はブラジル、サンパウロで行われたTechCrunchイベントのパネルに登壇した。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

eコマース支援のVTEXがソフトバンクのファンドなどから約150億円を調達

現在、eコマースは全小売売上高の14%を占めている。業界の成長とともに、企業のオンライン販売を可能にするツールを開発するスタートアップの価値も増加している。また1つ新しいニュースが飛び込んできた。ラテンアメリカで創業したVTEXが1億4000万ドル(約150億円)を調達した。同社はWalmart(ウォルマート)のような企業の新興市場進出を支援する。注文、在庫管理、フロントエンドの顧客体験やカスタマーサービスなどをカバーするエンドツーエンドのeコマースサービスを提供している。今回調達した資金で、ビジネスをさまざまな国に展開する。

ソフトバンクが自社の中南米のファンドを介して投資ラウンドをリードした。Gávea Investimentos、Constellation Asset Managementも参加した。既存株主にはRiverwoodやNaspersなどが名を連ねる。VTEXによるとRiverwoodは引き続き株主として残るようだ。

VTEXをGeraldo Thomaz(ジェラルド・トーマス)氏と共同で創業したCEOのMariano Gomide(マリアーノ・ゴミデ)氏はバリュエーションを明かしていないが、創業者と創業チームが引き続き会社の50%以上を保有していると明言した。ウォルマートに加え、VTEXの顧客には、Levi’s(リーバイス)、ソニー、L’Oréal(ロレアル)、Motorola(モトローラ)などがいる。毎年、約2500の店舗で約24億ドル(約2600億円)の総流通価値(小売ベースの流通額)を処理しており、過去5年間で年平均43%増加した。

VTEXは1999年創業。この分野のビジネスに関わって久しいが、ようやく厚いバランスシートを持つに至り、成長に向け舵を切った。PitchBookのデータによると、これまでの調達額は1300万ドル(14億円)に満たなかった。

今年設立されたソフトバンク・イノベーション・ファンドにとっても大きなラウンドの1つとなる。同ファンドは、ラテンアメリカのテクノロジー企業への投資に特化したファンド。今年初めに20億ドル(約2200億円)でスタートし、50億ドル(約5500億円)まで拡大した。1000億ドル(約11兆円)のビジョンファンドには及ばないが、最近の論争損失とは逆の方向への発展が期待される。

ラテンアメリカでサービスを提供しているスタートアップにとっては巨額だ。ソフトバンクは他のラテンアメリカ企業にもすでに多額の投資を行っており、オンライン宅配ビジネスRappi、貸付プラットフォームCreditas、不動産テックのスタートアップQuintoAndarなどがある。

ソフトバンクの投資に共通するテーマは、さまざまな形態のeコマースに注目していること(貸付にせよピザの宅配にせよ)。VTEXは、その多くをより広い市場で可能にするプラットフォームプレーヤーとして位置付けられる。フロントエンドを構築するツールだけでなく、バ​​ックエンドで在庫、注文、顧客管理ツールも提供する。

「VTEXには成功を加速する3つの特徴がある。強力なチームカルチャー、業界最高のプロダクト、収益性を重視する起業家だ」と、ソフトバンクのラテンアメリカファンドの投資パートナーを務めるPaulo Passoni(パウロ・パッソーニ)氏は声明で述べた。「ブランドと小売業者は、信頼性とイノベーションを試せる基盤を求めている。VTEXは両方を提供して市場の期待に応える。 VTEXにより、同じデータレイヤーでアドオンを柔軟にテストできる、実績のあるクラウドネイティブプラットフォームにアクセスできる」

VTEXは米国(今年初めにUniteUを買収した)のような市場に進出したものの、収益の80%はラテンアメリカで稼いでいるとゴミデ氏はインタビューで答えた。

同社はラテンアメリカへの進出に関心のある小売業者やブランドのパートナーとしての役割を果たしてきた。店舗を現地化するための統合ツール、顧客やマーケットプレイスを管理を支援するプラットフォーム、さらにアナリティクスを提供し、SAP、Oracle、Adobe、Salesforce(セールスフォース)に対抗する。一方Commercetoolsは競争相手ではないと、筆者の質問に答えた。Commrcetools は中・大規模企業向けにShopifyスタイルのAPIツールを開発しており、先月1億4500万ドル(約160億円)を調達した。

eコマースは規模の経済が働くビジネスであり、VTEXはまさにその典型であるとの見方が以前からあった。同社は年間約25億ドル(約2700億円)の取引を処理しているが、その収益は6900万ドル(約75億円)と比較的小さい。これに加え、幅広いビッグデータ(これも規模の経済)をアナリティクスにかけられる利点が、VTEXが欧州や北米などの新市場への進出に賭けている大きな理由だ。規模があれば収益も増えるし、より多くのデータも手に入る。

「結局のところ、eコマースソフトウェアは知識の組み合わせだ。数千のグローバルな事例にアクセスできない場合、ソフトウェアに知識を吹き込むことはできない」とゴミデ氏は述べる。「特定の地域に注力する企業は、商取引がグローバルなものであることを認識している。 中国がそれを証明した。eコマースツールの既存プロバイダーが国際化に対応できないため、多くの企業が我々のところに来る。グローバルなアプローチに対応してきちんと役に立つ企業はほとんどない。当社は現在、各国の決済方法にあわせ122件の統合を進めており、その数は増える見込みだ」と同氏は語った。

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(翻訳:Mizoguchi)

世界で戦えるAIテックカンパニーを目指す、ヤフーとLINE経営統合の理由

Yahoo! Japanの親会社であるZホールディングスとLINEは11月18日、両社の経営統合についての共同記者会見を開催した。登壇者は、Zホールディングス代表取締役社長/最高経営責任者の川邊健太郎氏、LINE代表取締役社長/CEOの出澤 剛氏。川邊氏はLINEのコーポレートカラーのグリーン、出澤氏はYahoo!のコーポレートカラーのレッドのネクタイを締めて登壇した。

今後はZホールディングスとLINEが対等に統合するが、東証一部の上場企業であるZホールディングスが親会社となって、Yahoo! JAPANとLINEが子会社となる。具体的には、経営統合後はソフトバンクとNAVERが50%ずつ出資したJV(65%)と一般株主(35%)がZホールディングスの株主となり、その子会社としてYahoo!とLINEが対等の関係でぶら下がるかたちだ。取締役はZホールディングスが3名、LINEが3名、社外が4名とし、少数株主に配慮したガバナンス体制を敷く。

新生Zホールディングスはソフトバンクの連結子会社となるので、実質的にはLINEがソフトバンクのグループに吸収されることになる。川邊氏と出澤氏が共同CEO(Co-CEO)に就任するが、代表取締役社長が川邊氏が引き続き務める。経営判断については、川邊氏が代表取締役社長としてはリードはするが、経営陣できちんと議論して取り決めていくとした。

経営統合のスケジュールは最終的な統合手続きを2019年末〜2020年年始に完了することを目指し、遅くとも2020年10月ごろには統合する予定とのこと。統合の向けての話し合いは2019年の6月ぐらいに本格的な話が進み、両社の親会社とも相談しながら進めたとのこと。ちなみにソフトバンク側では社長の宮内氏との協議は重ねてきたが、ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長の孫氏は、Yahoo!とLINEの経営統合について陣頭指揮と執るといった直接的な関与はしていないとした。

「両社は切磋琢磨する関係で近しい想いを持ちながらライバル関係だったが、今後は経営統合によって最強のOne Teamを目指していく」と両氏。続けて、両社を合わせると2万人の社員がおり、日本、アジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指すとしている。「両社は年1度ほど話す機会があり、これまでも共同で取り組む事業を模索していた」と出澤氏。

また、両社とも現状に対する危機感があったという。それはグローバルテックジャイアントの存在で、米国ではGoogle、Amazon、Facebok、Appleなどが、中国ではバイドゥやテンセント、アリババなどのプレーヤーがいる。「優秀な人材、資金、データなどは強いところに集約されてしまい、それ以外のプレーヤーとの差が開くばかりとなる」と両氏。「2社が一緒になっても時価総額、営業利益、研究開発費、従業員数を含めても数字上では現在のところ大きく差をあけられている」と続けた。

両社は統合することによって、まずは日本の労働人口、生産性、自然災害などの問題をテクノロジーで解決したいと表明。日本に住む人に最高のユーザー体験を提供して社会課題を解決していくとした。

統合におけるシナジーとしては、利用者基盤、サービス、グループ、人財、年間投資額などを挙げた。利用者基盤として月間利用者数とビジネスクライアント数は、Yahoo!が6743万人と300万社、LINEが8200万人と350万社。またLINEはアジア各地で銀行業を開設するなど進出していることをアピールした。

サービス面については、川邊氏がメッセンジャーサービスとeコマースを例に挙げた。「Yahoo!ではメッセンジャーのサービスがないがLINEにはあり、Yahoo!はeコマースが強いが、LINEはYahoo!ほど事業規模大きくない」と述べ、補完しあえる部分があることを強調。

グループについては、Zホールディングス/Yahoo!はソフトバンク、LINEはNAVERの子会社であり、親会社はAIなどをはじめさまざまなサービスを展開しており、このあたりにシナジー効果があるとした。

人財については両社を合わせると約2万人、年間投資額は両社で合計1000億円以上。AIを基軸に積極的な中長期投資を行い、新たな価値を創り出すとした。そのほか統合後も引き続き、プライバシー保護、サイバーセキュリティについては力を入れていくとした。

質疑応答では、PayPayとLINE Pay、Yahoo!ニュースとLINE NEWSなど競合するサービスについての今後について質問が集中したが、経営統合後に議論・調整していくが、当面は今後も競合しながら事業を進めていくとした。ただし、最終的には最もユーザーに支持されているサービスに絞り込んでいく可能性もあると表明した。

経営統合のトリガーの1つとなったビックプレーヤーの存在について川邊氏は「GAFAの最大の脅威はユーザーが支持されていること」を挙げた。続けて「Yahoo!とLINEが経営統合することで、我々もよりユーザーに支持されるサービス、プロダクトを目指す。そして、オールジャパン体制で協業を呼びかけていく」とした。「ネット企業は強いところにすべてが集まる。気付いたタイミングでは手遅れ」とコメントした。

出澤氏は「LINE単独という思いはあったが、より強くなるための決断としてYahoo!との経営統合を選んだ」とした。LINEの事業については、トロイカ体制はLINE側の意思決定のプロセスは変わらないとのこと。

ヤフーとLINEが統合合意を正式発表

Yahoo Japanなどを運営するヤフーの親会社Zホールディングス(以下ZHD)とLINEは11月18日、経営統合することで基本合意したことを正式に発表した。11月13日に日本経済新聞などが両社の合併を報じていた

両社は18日に開催したそれぞれの取締役会で、両社グループの経営統合について、資本提携に関する基本合意書を締結することを決議したことを明らかにしている。今後、2019年12月をめどに最終資本提携契約の締結を目指して協議・検討を進めていく予定だという。

また経営統合の実現に向けて、ZHDの親会社であるソフトバンクおよび、LINEの親会社であるNAVER Corporationは、上場しているLINEの非公開化を目的とした株式の共同公開買い付け(TOB)を実施し、対象となる全ての株式を取得する意向を発表している。

経営統合後はソフトバンクとNAVER(韓国NAVERおよびその日本子会社)が50%ずつ出資する新会社を設立し、ZHDの親会社となる。ヤフーとLINE(の承継会社)はZHDの完全子会社としてその傘下に入る形となる。

経営統合の目的について両社は、「それぞれの経営資源を集約し、それぞれの事業領域におけるシナジーを追求するとともに、AI、コマース、Fintech、広告・O2O、その他の新規事業領域における成長を目指して事業投資を実行することで、日本及びグローバルにおける熾烈な競争を勝ち抜くことができる企業グループへと飛躍すること」と述べている。

両社は18日17時から、共同記者会見を開催。ZHD代表取締役社長の川邊健太郎氏、LINE代表取締役社長の出澤剛氏が出席し、統合について説明する予定だ。

ソフトバンクがWeWorkの経営権を握る、評価額は8100億円程度と6分の1以下

いっとき470億ドルの評価額を得たコワーキングスペースのWeWorkだが、わずか75億ドル(約8100億円)の評価額でソフトバンクの支配下に入ることになったとCNBCが報じた

ソフトバンクは当初からのWeWorkへの投資家であり、CNBCによれば今後40億から50億ドル(約4300億円〜5400億円)を出資する見返りに新規および既存の株式を含め、所有権の8割近くを得るという。この契約は早ければ米国時間10月21日にも正式発表される。この資金はWeWorkが運営を続けるうえでの命綱となる。 同社はあと数週間で資金が枯渇する状態にあり、キャッシュの流出をわずかでも減らすために資産の一部の売却を図っていた。

WeWorkは報道に対してコメントを避けた。報道によれば、経営権を取得するのはソフトバンク・ビジョン・ファンドの親会社であるソフトバンクグループであり、同社の最高業務責任者のマルセロ・クラウレ氏がWeWork再建の指揮を取るという。

日本のテレコムの巨人であるソフトバンクは、WeWorkの共同創業者でCEOのアダム・ニューマン氏が事実上解任されてからきっかり4週間後に経営権取得の動きに出た。ニューマン氏は非常勤の会長といいう暫定的な役職に就いている。今回の動きはWeWorkが期待されていた株式上場を中止してから3週間後にあたる。WeWorkの副会長、Sebastian Gunningham(セバスチャン・ガニンガム)氏とプレジデント兼CEOのArtie Minson(アーティー・ミンソン)氏が現在同社の共同CEOを務めている。

こうした劇的な人事異動ではWeWorkでは最高コミュニケーション責任者のJimmy Asci(ジミー・アスキー)氏、最高マーケティング責任者のRobin Daniels(ロビン・ダニエルズ)氏他数名の幹部が会社を去っている。同時にWeWorkでは数百人をレイオフし、同社の起業家スクールのWeGrowも2020年に閉鎖すると決定した。

WeWorkは2020年に上場を図るものと期待されていたが、JPMorgan(JPモルガン)に最後の瞬間まで資金注入を求めて交渉を続けていた。いい教訓になる話かもしれないが、同社はこの後何カ月にもわたって途方もない大盤振る舞いの運営を縮小し資金の流出を防ぐ努力を続けていく必要があるだろう。

WeWorkは80億ドル(約8600億円)以上の資金を株式発行と借入によって調達 した後、8月にかなり普通でない上場目論見を明らかにした。 今年6月30までの半期で10億ドル(約1086億円)近い損失を記録しているにもかかわらず、同社は470億ドル(約5兆1044億円)という途方ない会社評価額を維持していたが、これはもっぱらニューマン氏のカリスマ的な資金調達能力が支えていた。

ニューマン氏はCEO辞任を認めた声明でこう述べている。「WeWorkの共同創業者として、過去10年でこの素晴らしい会社を築き上げたチームを誇りに思う。我々のグローバルプラットフォームは今や29カ国の111都市にまたがり、毎日52万7000人以上の会員が利用している。事業はかつてなく好調だが、ここ数週間私自身に向けられた調査がわが社にとって大きな障害となっていた。そのたCEOの職を退くことが社にとって最善との結論に至った。同僚、会員、パートナーであるスペースオーナー、投資家のみなさんにWeWorkの事業を信じていただいていることに感謝する」。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクがWeWorkの経営権取得へ

日本の巨大ITコングロマリットで投資企業のソフトバンクグループは、コワーキングオフィスを手掛ける不動産会社であるWeWorkの親会社The We Company(We Co.)の差し迫った崩壊を救うべく準備をはじめた。 The Wall Street Journalが報じた

予定していたIPOが中止となったThe We Companyは財政危機に直面している。同社は上場直後に、数十億ドルの資金を負債調達して運用資金に充てる計画だった。

上場の中止は、The We Companyの共同創業者であるAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏のトップとしての立場と、およそ10年前に共同設立したコワーキング・レンタル事業を脅威にさらしている。ソフトバンクグループが計画している新たな財政再建計画は、ニューマン氏を会社の経営・運用からさらに遠ざけるものになるだろうとWSJは報じている。

ソフトバンクグループの提案はThe We Companyにとって唯一の命綱ではない。WSJによると、JPMorgan Chase & Co.の指揮のもとで数十億ドルの負債金融による資金調達が計画されている。

「WeWorkは、ウォール街の大手金融機関による資金手当の道を確保した」とThe We Companyの広報担当者がメールに書いた。「およそ60社の資金提供者が守秘契約に署名し、当社経営陣および銀行と先週から今週にかけて交渉を進めている」

ソフトバンクグループは同社の3分の1をすでに保有しており、今回の提案は株式および負債あわせて数十億ドル規模になる見込みだ。

The We Companyの苦戦は、Uber、Slackといった上場企業への投資の不調と相まって、野心的ビジョンファンドの第2弾を控えたソフトバンクに打撃を与えた。2017年に設立された同ファンドは、意欲的なスタートアップ企業に投資することを目的とした1000億ドル(約10.8兆円)の投資ファンドだ。

しかし、ファンドの経過は芳しくない。そして足を引っ張っているのはSlackやUberなどの上場企業だけではない。消費者向けビジネスの Brandlessや、ロボティクス・ピザ配達のスタートアップのZumeも、ソフトバンクによる数億ドル単位の支援にもかかわらず、目標を達成していない。

ソフトバンクグループは、TechCrunchのコメント要求の問い合わせに返信していない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ソフトバンクが従業員に新ファンド出資資金2兆円超を融資へ

ソフトバンクは、同社のビジョンファンドに再投資するための資金最大200億ドル(約2兆2000億円)を、CEOの孫正義氏を含む従業員に貸し出す計画だ。Wall Street Journal(WSJ)の最新記事が伝えた。

これは、ソフトバンクグループが全社を挙げてスタートアップ投資に賭ける高リスクで異例な行動だが、先ごろ同社が発表したビジョンファンド2号の目標額1080億ドルの約5分の1を、安定した投資家層から集められる可能性があるのは利点と言えるだろう。

ソフトバンクは先月ビジョンファンド2号の計画を発表し、同社自身が380億ドルを出資するほか、Apple、Microsoftらも参加を約束している。同社は初期のビジョンファンドでも同様のアプローチをとっており、調達金額1000億ドルのうち80億ドルを、融資を受けた従業員による出資で賄っている。

潜在的な見返りは大きい。同ファンドから本物の勝者が生まれて大きなリターンが得られれば、従業員は当初の融資を返済したうえで利益を手にすることができる。

ただし、当然リスクはある。現在の世界経済状況を考えればおさらだ。WSJによると、ビジョンファンド1号が購入したUber株の価値は、ソフトバンクが当初支払った金額を下回っており、ソフトバンクが賭けているWeWorkも、IPO後の投資家の利益は期待できそうにないという。

関連記事:ソフトバンクがマイクロソフトにビジョンファンド2号に参加を呼びかけ

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

インド最大のライドシェアOlaがソフトバンクから約270億円調達しユニコーンに

インドのOlaは同国で展開しているUberとの競争で、リードをさらに広げようとしている。それも共通の投資家のサポートを通じてだ。インド最大のライドシェア企業であるOla Electricは、同国での電気自動車によるビジネスをさらに拡大しようと、ソフトバンクから2億5000万ドル(約270億円)を調達した。

この件に詳しい情報筋によると、火曜日に当局へ提出した書類で詳細が明らかになったラウンドBで、Ola Electricの企業価値は10億ドルとなった。

インド政府が大気汚染と二酸化炭素排出を抑制しようと、タクシーやスクーターを電動化する取り組みを真剣に進めている中でこの投資は行われた。インドは2026年までに車の40%を電動化するという、野心的な目標を立てている。

ちょうどまさにOlaはここ数年、電気の乗り物に取り組んでいる。同社は現在、数台の電動二輪・三輪車パイロットプログラムを全国で展開している。同社はまた、こうした乗り物のために充電インフラとバッテリー交換システムも構築中だ。

今年初めに5600万ドルを調達したOla Electricは今年末までに電動車両1万台を、そして数年内に100万台を投入する計画だ。モビリティソリューションと電動車両プログラムを拡大するために、現在も進行中のJラウンドの一環として今年初めに現代と起亜から3億ドルを調達した親会社グループは、EV事業を展開するために部品メーカーとも提携している。

ソフトバンクのOlaへの積極的な関与は、インド企業がコングロマリットファンドから距離を置こうとしているという憶測を沈静化させるものとなる。Ola Electricはインド初のEVユニコーン企業となったが、同社の広報はコメントを却下している。

英国やニュージーランド、オーストラリアではすでに存在感のあるOla Electricは先月、Uberのお膝元に拠点を構えると発表した。サンフランシスコに新たな先端テクノロジーセンターを設け、エンジニア150人を置く計画だ。

「次の10年を考える時、我々はグローバルのビジネス前線に立ち、新時代の構築や将来の新たなビジネスモデルに影響を及ぼす最先端テクノロジーに携わっていたい。そのためにベイエリアほど最適の場所は他にはなく、今年ベイエリアで100〜150人を雇用し、展開していきたい」とOlaの共同創業者でCEOのBhavish Aggarwal氏は最近開かれたカンファレスで語った。

一方のUberは、現在インドでは電動車両をほとんど展開していない。ちょうど2カ月前、電動自転車シェアリングプラットフォームのYuluとバンガロールでトライアルを行うために提携した。しかしながら、グローバルではサンフランシスコ拠点のスピンアウト、Uber ATGが自動運転事業のために資本を調達している。中国のDidiも同じようにソフトバンクから資本を調達する手法をとろうとしていると報じられている。

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(翻訳:Mizoguchi)

PayPayが第三者割当増資で460億円調達、グループ一丸でキャッシュレス推進へ

QRコード決済サービスを提供しているPayPayは5月8日、第三者割当増資の実施を発表した。2019年5月以降に、ソフトバンクグループから460億円の出資を受け入れる。今回の増資により、PayPayの資本金は920億円(資本準備金を含む)となる。

同社は、ソフトバンクとヤフーの共同出資会社だが、両社の親会社(持株会社)であるソフトバンクグループが追加出資を決めたことで、グループ全体でさらに重要な位置を占めることになる。

PayPayは現在「第2弾100億円キャンペーン」などを実施中だが、今後は「ワクワクペイペイ」として1カ月ごとに店舗を絞った還元キャンペーンを実施する予定だ。6月はドラッグストアを対象に最大20%還元となる。今回の第三者割当増資で潤沢な資金を獲得したことにより、ソフトバンク全体でキャッシュレス決済を強力に推し進めていくと考えられる。

PayPayの囲い込み施策始まる、6月以降はソフバン、ワイモバユーザー優遇へ

まだ1カ月ほど先の話になるが、コード決済サービスを提供しているPayPayは特定のユーザー向けの優遇施策をスタートさせる。携帯電話の料金体系に比べるとシンプルだが、還元される条件がだんだん複雑になってきた。

具体的には、6月1日〜30日に開催される「ドラッグストアで最大20%戻ってるキャンペーン」では、PayPay残高、Yahoo!マネー、もしくはYahoo! JAPANカードを経由した支払いは10%還元、加えてソフトバンクもしくはワイモバイルの回線を利用しているユーザー、月額498円のYahoo!プレミアム会員ユーザーは20%還元(Yahoo! JAPANカードの場合は19%)になる。

同キャンペーンの1回あたりの還元上限額は、通常ユーザーは1000円だが、こちらもソフトバンクもしくはワイモバイルの回線を利用しているユーザー、Yahoo!プレミアム会員ユーザーは2000円に優遇される。累計上限額は共通で3万円。Yahoo! JAPANカード以外のクレジットカード経由でPayPayの決済をした場合は、ソフトバンクもしくはワイモバイルの回線を利用しているユーザー、Yahoo!プレミアム会員ユーザーであっても還元率は0.5%だ。

ややこしいので、まとめておこう。20%還元と1回の還元上限2000円の優遇を受けるには、まずソフトバンクもしくはワイモバイルの回線を利用、Yahoo!プレミアム会員のいずれかの資格を満たす必要がある。そのうえで、PayPayと紐付けている決済方法が銀行などからチャージできるPayPay残高、Yahoo!ウォレットからチャージできるYahoo!マネーの場合に20%還元を受けられる。

キャンペーンなどが開催されていない期間の通常還元率は、5月8日から現在の0.5%から3%に引き上げる。こちらの対象となるのは、PayPay残高、Yahoo!マネー、もしくはYahoo! JAPANカードを経由した支払いのみとなり、他のクレジットカードでの支払い時はこれまでのどおり0.5%だ。こちらは1回あたりの上限が3万円相当、1カ月の付与合計上限も3万円相当となる。3%還元の場合、上限の3万円の還元を受けるには1カ月で100万円を使う必要がある。

ただし「第2弾100億円キャンペーン」や前述のドラッグストア限定のキャンペーンなど、通常より高い還元率が適用される払いはそちらが優先される。つまり、23%、20.5%などの還元にはならず20%還元が上限となる。

とはいえ、還元率3%というのはクレジットカードを含めても高い部類に入るので注目。ライバルのLINE Payでは前月の支払実績によって通常還元率が変わるが、前月に10万円以上をLINE Pay決済すると得られる最高位カラーであるグリーンであっても還元率は2%だ。PayPayとは異なり、LINE Payの場合は各種キャンペーンの還元率とは別に計算されるので、例えば4月30日まで開催されている「平成最後の超Payトク祭」の場合は、超Payトク祭の15%還元にマイカラーの還元率がプラスとなる。

さらにPayPay残高、Yahoo!マネー、もしくはYahoo! JAPANカードを経由した支払いであれば、「PayPayチャンス!」として、20回に1回の確率で1000円相当があたる特典もある。Yahoo! JAPANカード以外のクレジットカードは対象外だ。

PayPayはLINE Payを意識してか、数カ月にわたる長期間のキャンペーンを廃止し、6月以降は1カ月ごとに還元内容や条件を変更する施策に方針転換。7月以降のキャンペーンについても順次発表される予定だ。同社はソフトバンクとヤフーの合弁会社なので、6月からの優遇処置は当たり前といえば当たり前だが、同様にauユーザーを優遇するau PAYに比べるとかなりの大盤振る舞いだ。