スマートドライブとソラコムが国内外でプラットフォーム連携、モビリティ領域のIoT利活用を促進

スマートドライブとソラコムが国内外でプラットフォーム連携、モビリティ領域のIoT利活用を促進

モビリティデータ活用サービス「Mobility Data Platform」を提供するスマートドライブと、IoTプラットフォーム「SORACOM」提供のソラコムは10月30日、プラットフォーム間連携と協業ソリューションの開発を開始したと発表した。

今回の連携により、ソラコムのSORACOMから、スマートドライブのMobility Data Platformとのデータ連携が可能となった。ソラコム提供のIoT通信とSORACOM認定デバイスSORACOMリファレンスデバイスから得られたIoTセンサーのデータと、スマートドライブが収集・解析する移動データをかけ合わせることで、車両管理による業務効率化、移動データを利用した新サービス、さらには地域の移動をつなぐMaaSまで、幅広い分野における「IoT×移動」のアイデア実現をサポートする。

スマートドライブとソラコムが国内外でプラットフォーム連携、モビリティ領域のIoT利活用を促進

スマートドライブは、2013年の創業以来、「移動の進化を後押しする」をコーポレートビジョンに掲げ、移動にまつわるモビリティサービスを提供。Mobility Data Platformは、スマートドライブ独自のデバイスに限らず、様々なデバイスから収集したモビリティデータを蓄積・解析するサービスで、データを利活用して課題解決に役立てられる。これまで幅広い業種・業態の顧客と多くの実証実験を行ってきており、新しいサービスの創出などにも活用されている。

スマートドライブとソラコムが国内外でプラットフォーム連携、モビリティ領域のIoT利活用を促進

ソラコムは、SORACOMを通じてIoT通信とインターネットに「つなぐ」システム構築に必要なサービスを提供。SORACOMの利用で、少ない初期費用でIoT活用のアイデアをスピーディに実現でき、2020年6月時点で1万5000超の様々な業界・規模の顧客がビジネスの進化に利活用している。

スマートドライブとソラコムが国内外でプラットフォーム連携、モビリティ領域のIoT利活用を促進

スマートドライブとソラコムは、移動データ活用拡大をともに目指し、各専門分野技術をより使いやすく提供するとともに、MaaS分野での新たな協業ソリューションの開発・提供を目指し、連携を進めていく。

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カテゴリー: IoT
タグ: スマートドライブsmartdriveソラコムSORACOM日本

いよいよTechCrunch Tokyo 2018のチケット販売開始、今ならお得な「超早割チケット」が買えるぞ!

先日発表した通り、今年もスタートアップ・テクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」を11月15日(木)と16日(金)に渋谷ヒカリエで開催する。そして今日、今の時点でTC Tokyoに参加したいと思っているコアな読者のみなさんのために、「超早割チケット」を販売開始したのでお知らせしたい。

TechCrunch Tokyoは僕たちTechCrunch Japanが毎年開催している、日本最大級のスタートアップ・テクノロジーのイベントだ。今年で8回目の開催となり、昨年は約2500名が来場した。

ピッチバトルや展示ブースを通じて国内スタートアップのトレンドを知ることができるほか、国内外からの著名ゲストたちによる貴重な公演を見れる。多くの海外スピーカーによる登壇は、シリコンバレー発祥メディアの日本版が運営するTechCrunch Tokyoならではの特徴だ。

一般チケットの値段は4万円(税込)だが、本日発売の超早割チケットは半額以下の1万8000円(税込)だ。販売期間は9月18日までなので、このチャンスを逃さないでほしい。

TechCrunch Tokyoの最大の目玉は、何と言っても創業3年未満の新進気鋭のスタートアップがステージ上でピッチバトルを繰り広げる「スタートアップバトル」だ。例年100〜150社から応募が寄せられ、VCやTechCrunch編集部を中心としたメンバーが書類審査を行う。その書類審査をくぐり抜けたスタートアップだけが当日の本戦に進むことができ、11月の寒さを忘れるほどの熱いバトルをステージで繰り広げる。

また、TechCrunch Tokyoでは毎年、国内外のスタートアップ業界のコアにいるキーパーソンたちをお招きしている。昨年は海外からSlack共同創業者のCal Henderson氏やWeWorkのChris Hill氏、国内ではマネーフォーワードの辻庸介氏ソラコムの玉川憲氏らに登壇していただいた。かつてはUber共同創業者のTravis Kalanick氏メルカリ代表取締役会長兼CEO山田進太郎氏もお招きしている。

今年の登壇者も続々と決まっており、随時発表していくので期待して待っていてほしい。近日中に大きな発表がある、と一言だけ付け加えておこう。

チケット購入はこちらから

ソラコム玉川氏が語る起業、KDDIによる大型M&AとIoT通信の未来

11月16日・17日に渋谷・ヒカリエで開催されたTechCrunch Tokyo 2017。2日目の17日最初のセッションには、IoT向けの通信プラットフォームを提供するソラコム共同創業者でCEOの玉川憲氏が登壇し、KDDIによる大型M&Aの背景とIoT関連サービスの展望、今後のサービス展開について語った。聞き手はTechCrunch Japan編集長の西村賢が務めた。

ソラコム共同創業者でCEOの玉川憲氏(右)と聞き手のTechCrunch Japan編集長西村賢(左)

ソラコム誕生のきっかけは「仮想のプレスリリース」

まずはソラコム起業の経緯について。起業前の玉川氏は、Amazon Web Services(AWS)の日本のエバンジェリストとして知られていた。Amazonを辞めて起業をするのは自分でも「クレイジーだと思った」と玉川氏は明かす。

「新卒で日本IBMへ入社したときのキャリアゴールは、CTOになることだったが、それはかなわなかった。AWSでは、技術全体のリーダーと近いポジションだったので満足していた。しかし、ソラコムのアイデアを思いついてからは、それをやりたくて仕方がなくなってしまって」(玉川氏)

玉川氏はAWSを心から好きだった、と言う。「AWSの登場で、スタートアップがサービスを最初に始める時に,サーバーに6000万円とかかける必要がなくなった。パッションがあればスモールサービスで取りあえずやって、うまくいけばスケールする。インターネット上でサービスをやりたいスタートアップにとっては、そういうことができるというのは、劇的な変化だった。コンピューティングのような、みんなにとって必要なリソースを既得権益だけでなく、オープンにフェアに提供するというAWSの考え方が、僕は非常に好きだった」(玉川氏)

というわけで、日本でAWSのエバンジェリストを務めていた玉川氏だが、日本ではAWSを使って世界へ打って出るようなスタートアップは、なかなか生まれてこなかったという。そんな中、現ソラコムCTOの安川健太氏と出張先のシアトルでビールを飲んで話をする機会があった。「パブリッククラウドを使えば今、何でも作れる」という話で盛り上がった玉川氏は、ホテルに戻り、時差ぼけで寝付けない中で、Amazonの文化に則ってサービスのアイデアを仮想のプレスリリースに書き起こしてみた。翌朝起きて「リリース文を見たら、行けると思った」と玉川氏。クラウドスタートアップが出てくれないのなら、自分でやってみよう、と考えるようになったそうだ。2014年春のことだ。

「初めは起業しよう、と思っていたわけではなかった。(プロダクトを)作ってみたら面白いんじゃないか、ということでプロトタイプを試作していた」と話す玉川氏。Amazonの中でサービス化するという選択肢もあったというが、「ソラコムは通信の仕組みをクラウド上で作るという、AmazonにとってはAWSを利用するお客さん側にあたるので、自分たちで(起業して)やった方がいいんだろうなと思った」と起業に踏み切った理由を語った。

こうして2014年11月に、IoT通信プラットフォームを提供すべく起業したソラコムは、2017年8月、KDDIによる大型買収を決め、わずか2年半でイグジットを果たした。買収額は200億円程度と言われている(公表はされていない)。

買収先としては、Amazonもあり得たのでは?との西村の質問に、玉川氏は「クラウド上の通信サービスを提供するということから、買収先には2つの選択肢があった。ひとつは通信キャリア、もうひとつは(AWSのような)クラウドベンダーだ」と答える。「買収先は単に金銭的な条件だけが重要ではなく、パートナーでもある。お金も大事だが、M&A後のシナジーや、我々自身がモチベーションを保ったまま続けられる環境か、といったことも大切な条件だった」(玉川氏)

KDDIが買収先となった決め手のひとつは、KDDIが世界でもいち早く、ソラコムのクラウドベースの通信機関システムを採用し、ソラコムと共同開発したサービス「KDDI IoTコネクト Air」を提供開始したことだと玉川氏は話している。

「それにIoT向けの通信はまだ始まったばかり。乾電池で10年動くような通信など、モノに通信を入れるための規格は、これから本格化してどんどん出てくる。それをどこよりもいち早く取り入れて提供していこうとしたときに、やはり通信キャリアと組むのがいいだろうと考えた。もうひとつ、“日本発”でグローバルを目指したいというときに、一番やりやすいのはKDDIではないかと思った」(玉川氏)

スマホにおけるTwitterのようなキラーアプリがIoTにもいずれ来る

IoTとIoT向け通信の今後の行方について、もう少し詳しく玉川氏に聞いてみた。玉川氏によれば、携帯通信全体ではどんどん高速化・大容量の方向へ進んでおり、この方向性は変わらず進化を続けるが、IoT向け通信に限って見れば、それほど速度は必要なく、通信モジュールが小さく安く、どこででも電波が入って、低消費電力で動くことが求められるという。

「ちょうど昨日(11月16日)、KDDIがセルラーLPWA(Low Power Wide Area)通信サービスの提供開始を発表したところ。我々も今後ソラコムとどう組み合わせていくかを検討している」(玉川氏)

最近スタートアップでIoTサービスを提供する企業は、軒並みソラコムの通信サービスを利用している印象もあり、まさにIoT通信界のAWSのような状況と言える。現ユーザーはどういった傾向にあるのだろうか。「現在は8000件以上の顧客に利用されている。企業規模も大企業からスタートアップまで幅広く使ってもらっている」(玉川氏)

スタートアップでのソラコム活用例として挙げられたのは、TechCrunch Japanでも以前紹介したことがあるファームノート。農家へ牛の状態の管理をするアプリを提供する企業だ。「酪農家にとっては、子牛が生まれるときというのが非常に重要なタイミング。牛の胎盤の温度などを測ってモニターするのにソラコムが利用されている」(玉川氏)

またこちらもTechCrunch Japanで紹介済みのスタートアップだが、まごチャンネルもソラコムの顧客だ。スマホが操作できないシニア世代でも、テレビで遠くの家族の写真や動画を共有できるIoTデバイスを提供している。「テレビにくっつくセットトップボックスに(ソラコムの)SIMを入れてもらっている」(玉川氏)ということで、Wi-Fiの設定などインフラの心配なく、ユーザー体験を作り出すことができたという。

最近発表されて話題となった製品では、ソースネクストが12月14日に発売する通訳デバイス「POCKETALK(ポケトーク)」にも、ソラコムのグローバルSIMが採用されている。「世界61カ国で使えて、50言語以上に対応している。翻訳エンジンは、中国語ならバイドゥ、といった感じでクラウド上の最適なものを選んでいる。スマホはSIMの入れ替えや設定など、海外ですぐに使えないことも多いが、これはすぐ使える。また通訳目的に限定されているので、スマホと違って現地の人に渡すことにも躊躇しなくて済む」(玉川氏)

コンシューマーとインフラ系やセンサーネットワーク(かつてM2Mと言われた領域)とでは、どちらがIoT市場として大きくなるのだろうか? 玉川氏は「私自身も全く読めない」とこの問いに答えている。「“IoTのポテンシャルは無限大”みたいなところがある。日本だと2000年前後に“eビジネス”を切り口に企業がこぞってウェブサイトを作っていたが、それと似たような感じで各産業がIoTに取り組んでいる。今はクラウドがあって、IoT向け通信もある。そしてデバイスがメーカーのムーブメントで、どんどん安く小さくなっている。そうすると、そこら辺中のモノが通信でつながるかもしれないですよね」(玉川氏)

IoTにとってのキラーアプリは、どういったものになるのだろうか。玉川氏は「僕も分からない。ただ振り返ってみると、スマホが出てきたときにTwitterが出てきて『うわあ、これはキラーアプリだ』みたいな感覚があったでしょう。あれは誰も予測ができなかった。それと同じようなことがたぶん、IoTでも起こるんじゃないかと思う」と予想する。

ソラコムが「ブラック企業にしない」「ストックオプションを出す」理由

さて、ここからはスタートアップとしてのソラコムについて、玉川氏に聞いていく。まずはチームビルディングについてだ。スタートアップというと、若手のイメージがあるかもしれないが、ソラコムは比較的年齢層が高めだという。「平均年齢は36〜7歳。エンジニアが半分以上だ。日本だと『エンジニア35歳定年説』などと言われているが、うちは35歳以上のエンジニアが活躍している」と自身も起業当時39歳だった玉川氏が話す。

スタートアップあるあるとして、立ち上げ期の起業家や創業メンバーが配偶者に起業やスタートアップへのジョインを反対される、いわゆる“嫁ブロック”問題というのがある。ソラコムではどうだったのだろう。玉川氏は「我が家は大丈夫だったが、初期メンバーを集めるときに、ほとんどのメンバーがジョインを即決できなくて、家族に説明するために会いに行った」と明かす。

「給料などがちゃんとしていますよ、という話もそうだが、どちらかというと『こういうことがやりたいんです』というビジョンを説明した。また『ブラックな会社にするつもりはありません』といったこともお話しした」(玉川氏)

現在社員数45人のソラコムでは、子だくさんの社員が多いと玉川氏は言う。「自分も3人の子どもがいて、多い社員では5人の子どもがいる家庭も。最近、スタートアップ界隈では“憧れ”の関東ITソフトウェア健康保険組合(IT系企業が多く加入しており、寿司屋など保養・関連施設が充実していることで有名)に、ソラコムでも加入の申し込みをしたところ、子どもの数が多すぎて断られてしまった。でも『スタートアップで子どもが増えているのはいいことだ。日本(の少子化対策)に貢献しているし、メンバーが未来があると感じているから、子どもが増えているのであって、そのことを誇ろう』と思うことにした」(玉川氏)

会社の労働環境については、ブラックでないように心がけている、という玉川氏。「ソフトウェアテクノロジーで価値を作るスタートアップは、優秀なソフトウェアエンジニアがゼロからイチ(のサービス)を作れるか作れないかにかかっている。人数や時間をかければ作れるというものではなく、生産性で言えば今までの従業員と比べると、100倍にも1000倍にもなるエンジニアには希少価値があり、大切にしなければいけない」とその理由を説明する。

フルフレックスで、リモートワークもOK、基本的に社員を満員電車には乗せない、というソラコム。優秀な人材にジョインしてもらうために、玉川氏が待遇面で気を配ったのがストックオプションの付与だ。「テクノロジープラットフォームを作る会社でグローバルに展開したい。一気に投資をして一気に成長させる、いわゆるスタートアップをやりたかった」と話す玉川氏は、全員にストックオプションを付与したそうだ。「優秀なエンジニアはコアメンバーだ。給料を(前職の)半分しか出さないとか、ストックオプションを出さないとかいうことは僕にはできなかった」(玉川氏)

「我々の場合、少人数で価値の高いプラットフォームを作ろうとしていて、それは経験の浅いエンジニアだけではできないことだ。15年以上の経験・実績があって、サーバ側もアプリ側も分かるような、いわゆるフルスタックと呼ばれるようなエンジニアに入ってもらってやってきた。そうすると、きちっとした待遇でストックオプションも出してやりたいな、と。結果的にはそれがよかったと思う」(玉川氏)

大手企業で経験を積んできたエンジニアを採用する場合にも、基本的な給与についてはできるだけ前職と同じかそれ以上の条件を用意し、ただしインセンティブやボーナスに関しては「ストックオプション以上の可能性は(他には)ないので、がんばろう」と話しているそうだ。

また、ワールドワイドに事業展開を図るソラコムにとって、海外での採用にはストックオプションの提示が不可欠だったという側面もあったようだ。玉川氏はこう話す。「日本だと、ストックオプションの相場が分からない人も多いが、シリコンバレーでは会社のステージ(投資ラウンドのどの時点か)と、どのポジションでの採用になるか、というのがマトリックスになっていて、業界標準値のようなものがある。アメリカで入ってくるメンバーはそれをベースに交渉するのが普通となっているので、我々もその標準に合わせようと考えた」(玉川氏)

シリーズA段階でのストックオプションの付与は、保有する株の希薄化を避けたい投資家から見ると嫌がられることも多いはずだが、ソラコムではそのあたりはどのようにクリアしたのだろうか。玉川氏は「我々の場合はオプションプールを10%作った。投資家からは確かに嫌がられるのだが、『成長するために優秀な人材を確保するには必要なことだ』と説得すれば理解してもらえるので、オプションプールは作っておいた方がいい。特に海外ではストックオプションがなければ採用はできなかった」と話している。

ストックオプションの価値や相場について理解度が低い日本の場合でも、ストックオプションの付与は有効だったと玉川氏は言う。「ストックオプションはある意味、(会社の成長の仕方によっては)どういう価値が出るのか分からないものなので、細かい値(付与のパーセンテージ)にこだわっても仕方ない。それよりは、会社としてどこまで一気に成長させられるかという観点のほうが大事だ。そういう意味では、ソラコムの日本のチームも(ストックオプションの付与を)前向きに『これでがんばっていこう』ととらえてくれたかな、と思っている」(玉川氏)

ストックオプション付与の利点について、玉川氏は「説明コストが省けること」もあると説明している。「例えば、我々は2年ぐらいで買収ということになったので(イグジットまでの)時間はかからなかったが、通常スタートアップでは3年とか5年がんばっていかなければならず、疲弊してくる。そうすると、分かりやすいインセンティブやボーナス(が欲しい)という話になってくるのだが、それよりは、ストックオプションのほうが可能性としてはずっと高い。しかも全員ががんばればがんばった分だけ、プールは大きくなる。みんながひとつのビジョンに向かって突き進むには、非常にいい仕組みだなと思う」(玉川氏)

創業2年半、ソラコムの今後と起業を目指す中堅へのメッセージ

創業2年半の若い企業とはいえ、既にさまざまなサービスを展開するようになったソラコム。ゼロからイチを立ち上げる初期とは違い、ある程度ソフトウェアができてくるとメンテナンスタスクなども増え、新しいことがだんだんできなくなってきて、モチベーションが続かないこともあるのではないか。

「確かに最初は通信サービスのSORACOM Airとデータ転送サービスのSORACOM Beamの2つしかサービスがなかったが、今は10個以上ある。次に新たにサービスを出していく、となったときに、10個のサービスのメンテナンスもやっていかなければならないし、(新サービスとの)整合性、依存関係も考えていかなければいけないので、もちろん一番最初に比べると身重になっている、というのは正しい。またよく言われる“技術的負債”というのもあって、作ったときにはきちんと解決してきれいにしておかなかったところが、後々重荷になる、ということもある」と言う玉川氏。ただしソラコムの場合は「元々エンジニアを“作る”メンバーと“運用する”メンバーに分けていなかった」ことが功を奏しているとのこと。「(サービスを)作ったメンバーがサポートも受けているので、汚いコードをそのままにしておく、という人は誰もいない。汚いコードを書くと障害も出やすくなり、サポートもいっぱい受けることになって、自分に返ってきちゃうことになるので、きれいに作ろうという意識は高い」(玉川氏)

それでもサービス群が大きくなってくると、取り回しが大変になる部分もある。そこでソラコムでは、定期的に“お掃除の期間”を設けているそうだ。「この期間はディフェンシブに、技術的負債をクリアにしたり、運用を自動化したりするための開発期間に当てよう、ということで何度か期間を取ってきた。それにより、新しいものを作るときに技術的負債が重くのしかからないようにしている」(玉川氏)

今後のソラコムの動きはどうなっていくのか、KDDIとの今後のグローバル展開について聞いてみた。「今はアメリカの特にシリコンバレー周辺とヨーロッパ、それからシンガポールにもオフィスがある。アメリカはやっと立ち上がってきた感じがしている。既にソラコムの顧客に、C2Cの不動産売買プラットフォームを提供するOpendoorがいて、スマートロックを使って内見を自動的にできる仕組みに使っている。またカード型SIMではなく、基盤に埋め込めるように作った5mm×6mmのチップ型SIMを出したのだが、それもアメリカが一番採用が早かった。腕時計型デバイスに埋め込んでもらい、12月に発売される予定だ」(玉川氏)

日本のメーカーが海外展開するときに、ソラコムのサービスが採用されるケースも増えている、と玉川氏は言う。「ソースネクストのPOCKETALKもそうだし、IHIのグローバルでのプラントの遠隔監視に利用されていたり、旭硝子では工場で働いている人がどう動いているかログを取って、動きをより最適化するためにソラコムのグローバルSIMを使ってもらっている」(玉川氏)

最後に、これから起業しようという人たちの参考として、会社の立ち上げからこれまでで、苦しかったことは何かを玉川氏に聞いてみた。「スタートアップって、ずっと苦労してるものだと思うけど、それを言うと全部言い訳に聞こえるんじゃないか。だって自分たちでやりたくてやっているわけだから」と言いつつ、玉川氏は苦しかったフェーズは常にある、と話し、特につらかったのは資金調達だ、と打ち明けた。

「最初の資金調達は2015年のことだが、2015年初めのころは心臓が痛くなった。シリーズA調達が終わったら痛みがなくなったので、ストレスやプレッシャーはすごくあったのだと思う。手持ちの資金で始めてはいるものの、調達できなければせっかく“嫁ブロック”をくぐり抜けて参加してくれたメンバーが解散か、となるので責任感はあるし、引き下がれないし……。資金調達はいつでもつらいもの。調達のニュースがあったときに『まだおめでとうは言わないよ、これからだから』なんて言いたくなる気持ちは分かるが、KPIを達成してマイルストーンを超えているから調達できているわけで。『普通におめでとう、って言ってあげて』と思ってしまう(笑)」(玉川氏)

玉川氏のように、経験を積んだ上で中堅として起業する方へのメッセージももらった。「今、こうしてここに偉そうにすわらせてもらっているが、実際、2年半ほど前に起業を明かしたときには、こうなるとは全く思っていなかった。去年サービスインを伝える記事でTechCrunchに出たときにも、こうなると想像していなかったし、M&Aのことも全く考えていなかった。ただ、今ここにこうして座っている、というのはスタートアップの醍醐味だと感じている。チャレンジしたい、やってみたい、ということがあるならぜひ、チャレンジして欲しい」(玉川氏)

起業に際して最初にするべきことは何か。この質問に玉川氏は「私もTechCrunch Tokyoに来たり、起業家向けイベント、経営者向けイベントにAWSのエバンジェリストとして通っていて、顔見知りになっていて。これが結果的にはすごく役に立った。投資家の人に資金調達のお願いに行ったときにも、はじめてではなく、何度か会っていて、向こうにも『ああ、AWSの玉川さんね』と知ってもらっている状態だった。それは役に立っている」と答えてくれた。

農業IoTのファームノートが産革、JA全農などから5億円調達

酪農・畜産農家向けに牛個体管理センサーの開発などを行うファームノートは3月27日、産業革新機構全国農業協同組合連合会農林中央金庫住友商事を引受先とする第三者割当増資を実施し、総額5億円を調達したと発表した

ファームノートはIoTのちからで農業改革を目指すスタートアップだ。同社は現在、リアルタイムに牛の活動情報を収集できる首輪型ウェアラブルデバイスの「Farmnote Color」、そして取得したデータを管理するクラウド牛群管理システムの「Farmnote」を提供している。

画像:ファームノートWebページより

「Farmnote Color」は牛の首に取り付けるIoTセンサー。これにより、牛の発育状況の変化や病気の兆候などを早期に発見することができる。また、事前に登録したスマートフォンなどのデバイスをFarmnote Colorに近づけることで個体の情報をすぐに調べることも可能だ。同社は取得した情報を人工知能を用いて解析。牛の最適な管理の方法をユーザーに提案している。

そして、Farmnote Colorなどが取得したデータを管理するのが「Farmnote」だ。このシステムでは、スマートフォンやタブレット端末から入力された生産データ、および個体センサーから取得した情報をクラウドに集約。グラフやレポートなどを通して牛の発育状況をリアルタイムに管理することができる。

Farmnoteは大きなアイコンで作業が選べるユーザーインターフェースを採用している。ITリテラシーの低い高齢の農業従事者でも同システムを簡単に使うことができるように工夫した結果だ。同社の売上成長率は過去3年で約30倍と急速な成長を遂げており、これまでに1600の農家がFarmnoteを導入し、約16万頭の牛が同システムにより管理されているという。

これまでもソラコムのSIMカードを利用したシステムを提供してきたファームノートが、比較的新しい通信規格のLoRaWANの導入を進めていることは以前TechCrunch Japanでも紹介した。従来のシステムでは牛舎ごとにゲートウェイを設置する必要があったが、LoRaWANを利用することでゲートウェイなしでも約2キロメートルの農場をカバーすることが可能となっている。

今回調達した資金を利用して、ファームノートは昨年設立した「Farmnote Lab」での研究開発を進める予定としている。さらに、農業生産データの自動収集プラットフォームの「Farmnote Connect」を酪農・畜産以外の農業分野へも拡大していくようだ。

ファームノートは2013年11月設立。同社は2015年8月に約2億円、その翌年の2016年には約3億円の資金調達を実施している。今回の資金調達を含めた累計調達金額は11億円となる。