適切な温度になると拡大するソーラーパネル

太陽が出ているときだけ現れるソーラーパネルがあったらいいと思わないだろうか?それがこの研究プロジェクトのテーマだ。彼らは形状変化材料を使って圧縮された状態から大きくなるソーラーパネルを作ろうとしている。形を変えるきっかけは温度の変化だけだ。

この花のような形をしたプロトタイプは、「形状記憶ポリマー」と呼ばれる材料で作られていて、冷たい状態で、ある形状にしたものが加熱されると、元の自然な形状に戻ろうとする。ここでは冷却時の状態が圧縮された円板で、高温時は大きく広がったソーラーパネルだ。

変化には1分とかからない(デモンストレーションのためお湯につけている)。網状に配置された蝶番(ちょうつがい)によって別の形状へと誘導される。この仕組みのアイデアは、小さなウニ状のボールを放り投げると大きな球に変形するホバーマンスフィア(Hoberman Sphere)と呼ばれるおもちゃがヒントになった。

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この物質は冷却状態、例えば人工衛星に設置されたときには固定されたままでいる。太陽光を受けると、構造がフルサイズに拡大される。電力は必要ない。このため、パネルを広げるためのバッテリーも予備のソーラーパネルも置けない人工衛星で、場所の節約になることが期待できる。

今のところ変形は一方向で、大きくなった円板は手動で戻さなくてはならない。しかし、フル充電されたあと、次に太陽光を受けるときまで自身を折り畳むための機構を別途作ることが考えられる。

これが来年宇宙船に載ることを期待してはいけないが、将来小さな人工衛星などで少なからず役立ちそうな優れたアイデアに違いない。それに、もしかしたらその前に、小さなパネルの花園を屋根の上で見られる日がくるかもしれない。

カリフォルニア工科大学とスイス連邦工科大学チューリッヒ校による共同研究の詳細は、Physics Review Applied誌で発表されている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

機械学習を使用して米国全体のソーラーパネルをマッピングする

再生可能エネルギーには将来が約束されているが、現時点では誰がソーラーパネルを屋根の上や裏庭に設置したり、隣人と共有しているかについての追跡は行われていない。幸いにも、ソーラーパネルは一般に、光に晒されたときにもっとも良く働く。このことにより、パネルを衛星軌道上から発見し、数えることが容易になる。これこそが、DeepSolarプロジェクトが行っていることだ。

こうした情報を収集するための取り組みはいくつも存在している。規制によって行われているものもあれば、自主的なもの、自動化されたものもある。しかし、いずれの取り組みも、国家レベルまたは州レベルで、政策やビジネス上の決定を下すために十分な包括性はもっていない。

スタンフォードのエンジニアであるArun MajumdarとRam Rajagopal(それぞれ機械と土木が専門)はこの状況を、言われてみれば当たり前の方法で解決する決心をした。

機械学習システムは、それが「認識訓練された」ものならば、たとえ対象が猫、顔、車などであっても、画像を見て対象をきちんと認識することができる。ならばソーラーパネルも扱えない筈はない。

大学院生であるJiafan YuとZhecheng Wangを含む彼らのチームは、数十万枚の衛星画像を使って訓練を行った画像認識機械学習エージェントを用意した。用意されたモデルは、画像の中のソーラーパネルの存在を特定すること、ならびにそれらのパネルの形と設置場所を特定することの両者を学んでいる。

モデルを、ランダムに選んだ他の米国の衛星画像を使って評価したところ、(適合率と再現率が共に)およそ90%の正確性を達成した(どのように計算するかによって多少数字は上下する)。これは類似の他のモデルよりもかなり優れた数値である。またそのセルサイズの見積もりに関しては誤差はわずかに3%ほどだった(非常に小さなパネルの検知が主な弱点だとRajagopalは私に説明した。だがその理由の一部は、画像そのものの限界に起因している)。

そしてチームは、適切な画像を見つけることができた隣接する48州をカバーする、10億枚以上のイメージタイルをモデルに適用した。その中ではかなりの地域が除外されてはいるが、その大部分は、例えば山岳地帯である。そうした地域にはあまりソーラーパネルは設置されておらず、国立公園内にセルを置こうとしている者もほとんどいない。

こうしたエリアは合計で実際の国土の6%を占めている。だが都市部はわずかに3.5%を占めているに過ぎないので、それらは皆カバーされているとRajagopalは指摘した。彼は、システムがまだ処理できていない(現在取り組んでいる)地域に、おそらく全設置数の5%が存在しているだろうと見積もっている。

スキャンには1ヶ月かかったが、モデルは147万箇所の設置済ソーラーを発見した(この数には、屋根の上にある数枚のパネルから、大きなソーラーファームまでが含まれている)。これは他の取り組みによって数えられたものよりもずっと多く、最も成功したものであったとしても、DeepSolarのデータが示しているような、正確な位置は提供していない。

こうしたデータの基本的なプロットを行うことで、様々な興味深い新しい情報が得られる。ソーラー設置密度を、州、群、国勢調査区域、あるいは平方マイルのレベルでも比較することが可能であり、それを他の様々なメトリック(年間平均日照日数、家計収入、投票選好など)と比較することもできる。

いくつかのの興味深い発見を紹介しておくと、例えば、住宅レベルのソーラーシステムが100軒以上ある(設置密度が高い)のは、すべての国勢調査区域のわずか4%(約7万5000のうち3000)に過ぎない。あるいは、住宅レベルで設置されたソーラーは、総設置数の87%を占めているが、そのサイズの中央値は約25平方メートルに過ぎず、セル表面積の総合計の34%を占めているのに過ぎない。

設置密度のピークがあるのは、1平方マイル(2.56平方キロメートル)あたりの人口が約1000人のエリアだ。これは大都市ではなく、小さな町あるいは都市郊外だと考えれば良いだろう。そして人びとが設置を始める変曲点が存在している:それは1平方メートルあたり1日の日光照射量が4.5kWhを超える地域である。それが天気、場所、日照などと、どのように対応しているかは、より複雑な問題である。

こうしたことをはじめとするデモグラフィックデータ(人口統計データ)は、もしソーラーに投資を考えている場合には参考になる。なぜならそれらは、どの地域がソーラーを必要としているかに関する基本的な情報を提供してくれるからだ。

「私たちは皆さんにデータを眺めて貰えるウェブサイトを作成してリリースしました。データは消費者のプライバシーを考慮して集約されたレベルで示しています(私たちは元のデータは国勢調査レベルで保存しています)」とRajagopalは語る。「私たちはプライバシーに配慮しながら、個別のデータを公開する方法を検討している最中です(おそらく公的機関の参加の奨励とクラウドソーシングを行うことになるでしょう)」。

「私たちは、産業界やアカデミアに属する人びとにデータはもちろん方法論も活用して貰うために、それらをオープンソースとして公開することを決心しました。そこからより多くの洞察を生み出して欲しいからです。私たちは、変化が速く起こる必要があると感じていますが、これはそれを助ける一つの方法なのです。おそらく将来的には、この種のデータを中心に、サービスを構築することができるでしょう」と彼は続けた。

サービスを米国の残りの地域や他の国に拡大する計画も進んでいる。精査できるデータはここにある。あるいはここから地図として閲覧が可能だ。プロジェクトに関して説明したチームの論文は本日(米国時間12月19日)Joule誌に掲載された

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(翻訳:sako)

これがTeslaの素敵なソーラールーフだ

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Tesla創業者兼CEOのElon Muskが、新しいTeslaのソーラールーフ製品は普通の屋根よりも見栄えが良い、と言った言葉は冗談ではなかった:太陽エネルギーを収集するこの代替屋根は本当に素晴らしい見栄えを提供する。それは現在屋根に後付で載せられている、明らかにあるいはなにがしか奇妙な流通パネルからは程遠いものだ。

Teslaがイベントで紹介したソーラールーフは、4種類の異なるスタイルのものだ。それぞれ「テクスチャ・ガラス・タイル」、「スレート・ガラス・タイル、「トスカーナ・ガラス・タイル」、そして「スムース・ガラス・タイル」と呼ばれている。それぞれは、異なる美的外観を提供しているが、どれもかなり現在の屋根材のスタイルに似通ったものだ。それぞれは太陽に対しては透明だが、斜めから見たときには不透明なものにみえる。

0cf27641-f7f1-4ead-a8af-030e742088c9Elon Muskによれば、現在のバージョンのタイルは効率上2パーセントのロスがある、このため通常のソーラーパネルから得られるエネルギーの98パーセントを手にすることになる。しかし同社は、現在3Mと協力してコーティングの改良に取り組んでいて、通常以上の効率を目指している、これによって光を屋根の内側にトラップして内部で反射を繰り返させ、完全に拡散するまでのエネルギーロスを減らすことができるようになる筈だ。。

もちろん、価格の問題がある:Teslaの屋根のコストは、通常の屋根の建築コストと電気代よりも安いため、従来の屋根とソーラーパネルの電気代の組み合わせに対抗あるいはそれよりも安く提供できるとElon Muskは語っている。家ごとのインストールの仕様が含む要因の数にコストは依存するので、Teslaは現時点では具体的な価格設定を発表することはしなかった。

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標準的な屋根材は、家庭のランニングコストを改善する以外には、設置後は家主に対して財政的利益を提供しない。テスラの製品は、家庭の必要とされる十分なエネルギーを生成し、余剰がでた時にはこの目的のために設計された新しいPowerwall 2.0バッテリユニットの中に蓄えておくことができる。

ソーラールーフ製品の設置は、来年の夏までに開始する。Teslaは現在の4種のオプションのうち1、2種類のものから始めて、徐々に対応する種類を増やしていく計画だ。それらは石英ガラスで作られているので、アスファルトタイルよりも長期間の使用に耐える筈だ ‐ 少なくとも2から3倍の寿命が期待できる、とはいえ後ほどMuskは「家の寿命よりも長持ちします」と言ったのだが。

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(翻訳:Sako)

テクノロジーの分野で脚光を浴びる折り紙に注目!

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【編集部注:本稿の執筆者、Don Basileは起業家でテクノロジー、ヘルスケア、通信の分野で20年以上の管理職経験を持つベンチャーキャピタリスト】

3Dプリンターの出現よりはるか以前から、平らな紙を使って実物そっくりのモデルを作り出せる、折り紙と言う技術が存在した。折るということは構造を畳んだり、曲げたり、広げたりが思いのままにできるということだ。つまりこういった性質を利用すれば工学的に様々な局面での利用が考えられる。消化可能な折り紙でできた錠剤があれば侵襲的な外科手術を行わないで済むかもしれないし、ソーラーパネルに応用すれば、航空機で輸送する際は小さく畳んでおいて、打ち上げた後で広げてやれば良い。折り紙が現代において利用される要因は、折り紙の技術を使えば物の形を劇的に変化させることができるからだ。

折り紙自身、6世紀に仏教徒が中国から日本に紙を伝えて以来変化し続けている。紙は当時高級で広く普及はしていなかったため、最初の折り紙の利用法は宗教儀式においてであった。

もっとも初期に見られる形の1つは「紙垂(しで)」と呼ばれ、ジグザグに折って裁断された紙をいくつもロープや木に結わい付け、浄化の儀式を表すのに使われた。次に現れるのが「雌蝶」と「雄蝶」、つまりメスとオスの蝶の折り紙で、伝統的な神道の結婚式において日本酒の瓶に飾られた。17世紀までには折り紙は儀式の域を超えて一般的な娯楽として楽しまれるようになった。紙の大量生産が実現したおかげである。そして何百万という紙の折り鶴が作られることとなった。

それ以降、折り紙の様式自体に大きな変化がないまま月日は流れたが、1950年代に日本人の折り紙アーティストである吉澤章が現れ、その複雑かつ実物そっくりの動物の立体モデルは新しい世代の芸術家と科学者に強い印象を与えた。そして現れたのが物理学者のRobert Langである。彼はコンピュータ折り紙の発展において主導的役割を果たし、数学の公式と紙を折る技術を結びつけたのだ。Langは折り紙技術を実生活に応用する様々なアイディアを思いついたが、その中には自動車のエアバッグの安全性を向上させるものもある。

複数分野が交錯するこの領域では、現世に存在する種々の工学的問題を解決する可能性で満ちているが、このことは折り紙がコンプライアントメカニズムで作動するのが主な理由である。折り紙においては蝶番やベアリングではなく、曲げたりたわましたりすることで動きをつけ、そういった動きは紙自身の柔軟性に依存する。もしこういった強さや柔軟性の原則を紙よりも丈夫な素材に適用すれば、その可能性は無限大だ。

折り紙の「極小の」可能性

昨年スウェーデンのカロリンスカ研究所の科学者たちが示したのは、何重にも折りたたんだDNAは優れたドラッグ・デリバリーの手段と成り得るということだ。何度も巧妙にDNAを畳むことにより、コンピュータでデザインした、例えばウサギのような複雑な形も、合成DNAを使って組み上げることが出来る。

形状が多次元の場合、折り紙構造の全てのでDNA鎖は広がることになる。この方法はオイラー閉路と呼ばれる数学の方程式を利用したもので、環状のDNA分子を、その柔軟性を保ったまま簡単に折りたたむことができる。「この成果により、生理的塩濃度の環境下でも折りたたまれ、形が崩れないDNA折り紙をデザインすることが可能になりました。このことはDNAのナノ構造を生物学的に応用する上で非常に重要なことです」と、この研究をリードしたBjörn Högbergは述べた。この画期的方法により、既にこれまでより高効率でガン腫瘍に到達するドラッグ・デリバリー・システムが開発された。

一方で、MITの研究者は子供の間でしばしば見られる、バッテリーの誤飲問題に対して、新たな解決方法を見つけ出した。それはざっと以下の通りだ。小さな折り紙で出来た錠剤を飲めば、それが胃の中で開いて、さらに磁石と併用することでバッテリーを体外にすくい出してしまう。これまでのところ、この方法は豚の胃を使った実験で成功を収めているが、人間ではまだ試していない。こういった、麻酔も必要としない非侵襲的なアプローチは大きな可能性を秘めている。

MITは世界最小の(且つ最も気持ち悪い)、自己組み立て型ロボットも開発した。このロボットは歩いたり、掘ったり、泳いだりでき、終いには溶けてなくなってしまう。

このロボットはたったの1.7センチの大きさで、磁石とPVCがレーザー裁断された紙かポリスチレンの層に挟み込まれた素材で出来ている。加熱素子で加熱することでPVCは収縮し、あらかじめ切れ込みを入れておいた箇所が折れ曲がる。それが下面に設置した電磁コイルと協働し、ロボットが折れ曲がって動く為の動力源となる。

さらに研究を進めることでもっと小さな、より多くのセンサーを積んだ自律型ロボットの開発が期待される。これらのロボットは完全に溶けてしまう様にデザインされているので、がん細胞の退治や動脈詰まりの解消といった用途が想定される。

巨大折り紙も活躍中

折り紙が宇宙研究の分野に貢献できる可能性は極めて大きい。折り紙技術によって物体を折り畳めれば収納が簡単になり、いったん目的地に着いて展開すれば元通りにできる。ソーラーパネルを軌道に乗せ、宇宙空間からエネルギーを地球に向け照射する場合を考えてみれば良い。

Bigelow Aerospace

 ソーラーパネルの効率はその巨大なパネルサイズに依存しており、その様な大きなものを如何に宇宙に持ち出すかが常に問題だった。それに対する答えが、賢くたたみ込むことだ。この理屈に基づきNASAはソーラーアレイのプロトタイプの開発に取り組んでいる。このソーラーアレイは宇宙船に積み込むことができ、収納時は差し渡し8.9フィートにしかならないが、いったん設置すると直径82フィートもの大きさにまで広がる。

さらにNASAは新しいプロジェクトであるBigelow Expandable Activity Model (BEAM)を立ち上げたが、これは巨大なエアーバッグ状の物体で、膨らますことでスペースステーションの居住空間を拡張することができる。宇宙ステーションに拡張可能な居住空間が設置されるのは初めての試みであり、これから2年間に渡りISSで行われるテストがうまくいけば大きなブレークスルーとなるだろう。

もし人類の火星旅行を実現させようとするならばスペースシャトルの今のサイズでは不十分で、そのサイズを拡張することが必要になるだろう。それでは、この太古の技術である折り紙が未来の宇宙探査にできることとはなんだろうか。それについては、NASAが用意したorigaBEAMiを自分で作って確認してほしい。「乗組員による手順の説明」にしっかりと従うように。「しっかり正確に折らないと居住モジュールの空気が漏れ出す危険があります。安全第一を心がけましょう」

折り紙は何世紀もの歴史があるが、我々は世界を変えうる程の折り紙の潜在能力にやっと気づき始めたに過ぎない。あたかもドラッグ・デリバリーロボットやスペースステーションの拡張では十分でないかのように、折り紙はそれ以外にも建築、医学、ロボット工学などの分野での革新に貢献している。折り紙が工学の分野でこれ程までに新しいフロンティアを切り開くとは誰が予想できただろうか。

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(翻訳:Tsubouchi)