グッドイヤーとポルシェ投資部門が自動車が道路を「感じる」ようにするバーチャルセンシングTactile Mobilityに戦略的投資

イスラエルのスタートアップであるTactile Mobility(タクタイル・モビリティ)は、既存の車両センサーデータを利用して、自動車が道路を「感じる」ことを可能にし、クラウドプラットフォームを介して自動車と道路の両方に関する情報を提供している。同社は米国時間10月27日、2700万ドル(約30億円)のシリーズCを発表した。CEOのShahar Bin-Nun(シャハール・ビン-ナン)氏によると、同社はこの資金を、バーチャルセンサーのさらなる開発、製品ラインナップの拡大、クラウドプラットフォームの強化のために使う。目標を達成するために2021年、研究開発部門で最大20人の新規採用が必要になるという。


今回の資金調達により、Tactileの資金調達総額は4700万ドル(約53億円)になった。今回のラウンドはDelek Motorsが主導し、Goodyear Ventures(グッドイヤーベンチャーズ)とPorsche Venturesが戦略的投資を行い、Union Group、The Group Ventures、Zvi Neta(AEV)、Giora Ackerstein(ジョラ・アッカースタイン)氏、Doron Livnat(ドロン・リヴナト)氏も参加した。

ビン-ナン氏は「当社は基本的に、データの取得とデータの収益化の2つの部分に分かれています」とTechCrunchに語った。「データの取得は、シャシーのエンジンコントロールユニットに搭載されているTactile Processor(TP)と呼ばれる非常にユニークなソフトウェアで行います。TPを使用することで、安全性、パフォーマンス、運転の楽しさを向上させる、視覚に頼らない多数のバーチャルセンサーをOEMに提供することができます」と話す。

Tactileの2つめのビジネスモデルは、Tactile Cloud(TC)と呼ばれるクラウドプラットフォームを中心に展開されている。ここにバーチャルセンサーからのデータがアップロードされ、車両のDNAまたは路面のDNAを記述した触覚マップが作成される。これらのマップは、OEM、交通局、自治体、保険会社、タイヤ会社などに販売される。

ビン-ナン氏によると、Tactileが車両に搭載している23のバーチャルセンサーのうち、同社が取り組んだ主要なものはBMWとのタイヤグリップ推定で、これはクルマが走行している間に車両と道路の間のグリップを測定するというものだ。同氏によると、TactileのTPは年間250万台のBMW車に搭載されており、数百万台のクルマが受動的に路面をマッピングしていることになる。

タイヤのグリップ力を測定して道路をマッピングすることで、Tactileは道路の穴やひび割れ、滑りやすさ、降雪などをマッピングすることができる。これらの情報はリアルタイムに収集され、特定の地域を走行する他の車両にダウンロードされる。これにより、ドライバーは前もって劣悪な道路状況を知ることができ、安全性の向上につながる。また、分析結果は地図会社、道路管理者、車両管理者などの第三者が、道路のひどい場所を特定するためのレポートを介して共有することもできる。

Tactileは、クラウド上で収集したあらゆるデータで収益をあげるために、提携するOEM企業との売上高シェアモデルを採用している。ビン-ナン氏によると、Tactileはこれまでに自動車メーカー7社と30件以上の概念実証やパイロット試験を行ってきたが、量産レベルに達したのはBMWだけとのことだ。

「これまでは25人の会社でしたが、現在は40人になり、事業を拡大するには少し限界がありました」とビン-ナン氏は話す。「小さな会社がBMWのプロジェクトを進めていると、BMWへの実装や統合、要求を満たすためのテストなどで、すっかり忙しくなってしまうことが想像できるでしょう。これからは多くのOEMと並行して仕事ができるようにしたいのです」。

これは、より多くのサービスや知見を顧客に提供できるよう、他のセンサーも開発することを意味する。例えば、一部のOEMメーカーはタイヤの健康状態に関心を持っている。Tactileによれば、センサーは走行中のタイヤの溝の深さを極めて正確に測定することができ、タイヤの交換が必要かどうか、タイヤの種類や地形に応じてドライバーがどのような運転をすべきかをOEMに伝えることができるという。

「Goodyearがこの会社に投資した理由でもありますが、もう1つ重要なことはタイヤが硬すぎるかどうかを正確に測定できることです」とビン-ナン氏は話す。「彼らは今回のラウンドで投資した直後に、我々とテストを行いました。ですから、タイヤの健全度を測るバーチャルセンサーは、私たちが開発するバーチャル・センサーの中でも重要な種類のものであることは間違いありません。他のOEMは、重量推定や重心位置などを求めますが、これらは当社のバーチャルセンサーが感知し、機械学習や信号処理を使って多くのノイズを除去しています」。

その他のセンサーとしては、重量推定、アクアプレーニング、車両のヘルスセンサー、マイクロ衝突などがある。今回のシリーズCの資金調達により、Tactileはこれらのセンサーを構築し、OEMメーカーにアピールできるようにしたいと考えている。Tactileの目標は、すべての主要な自動車メーカーに入りこむことだ。そうすることで、大量のデータを収集、分析、収益化することができ、自律走行車など急成長中の技術との連携を図ることができる。

Goodyear VenturesのマネージングディレクターであるAbhijit Ganguly(アビジット・ガングリー)氏は声明文で「コネクテッドドライビングと自律走行は、ヒトとモノの移動の未来にとって重要な鍵となります。コネクテッドかつ自律走行の安全性と効率性を向上させるためには、タイヤデータが鍵となります」と述べた。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

RoboTireのタイヤ交換ロボットに米大手タイヤ小売企業が出資

RoboTire(ロボタイヤ)という会社が初めて我々の目に留まったのは、新型コロナウイルスによって世界の大半が完全に停止してしまう直前の2020年2月のことだった。当時、このデトロイトに本拠を置くスタートアップ企業は、まだごく初期の段階に過ぎなかった。

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だが、それから1年半、より多くの産業が自動化の利点を取り入れようとする間に、かつてSpark Robotics(スパーク・ロボティクス)でCEOを務めていたVictor Darolfi(ビクトール・ダロルフィ)氏が設立したこの会社は、着実に良好な、そして戦略的な関心を集めてきた。同社は米国時間10月7日、750万ドル(約8億4000万円)のシリーズA資金調達を実施したことを発表した。このラウンドを主導したThe Reinalt-Thomas Corporation(ライナルト・トーマス・コーポレーション)は、Discount Tire(ディカスウント・タイヤ)やAmerica’s Tire(アメリカズ・タイヤ)を運営する大手タイヤ小売会社だが、おもしろいことに、我々が2020年ダロルフィ氏から話を聞いた際に、後者は同氏から皮肉な賛辞を受けている。

画像クレジット:RoboTire

「America’s Tireで3時間も待たされていた時に、工場でロボットを使ってタイヤ交換をすればいいんじゃないかと思いついたのです」と、ダロルフィ氏は語っていた。「サービス業にもロボットを導入してはどうだろうか」。Reinalt-Thomas社は、それを聞いていたに違いない。今回の資金調達には、他にもAutomotive Ventures(オートモーティブ・ベンチャーズ)、Detroit Venture Partners(デトロイト・ベンチャーズ・パートナーズ)、640 Oxford Ventures(640オックスフォード・ベンチャーズ)が参加した。RoboTireは、この資金をデトロイトでの事業拡大に役立てると述べている。

RoboTireが開発した基幹技術は、1セットのタイヤを15分以内に交換することができるという。Discount Tireは、この自動化技術を採用する最初の企業となる予定だ。

「Discount Tireは、より良い顧客体験をもたらす新しく革新的な技術の開発において、RoboTireを支援できることを大変うれしく思います」と、Discount Tireのチーフ・エクスペリエンス・オフィサーを務めるTom Williams(トム・ウィリアムズ)氏は、リリースで述べている。「『オンラインで購入・予約』という体験に対するお客様の期待と、待ち時間の短縮を実現する当社の能力がますます高まるにつれ、当社はすべてのお客様にとって魅力的で簡単かつ安全な体験を保証するため、自動化と改良を引き続き追求していきます」。

画像クレジット:RoboTire

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)