“出店ニーズDB”でテナントと店舗物件の最適なマッチングを実現する「テナンタ」が6000万円を調達

店舗物件を探しているテナントと物件を保有する不動産会社をマッチングする「テナンタ」開発元のテナンタは11月13日、Coral Capitalなどを引受先としたコンバーティブルエクイティにより総額6000万円を調達したことを明らかにした。

テナンタはテクノロジーの活用によって「店舗物件探し」に関する課題の解決を目指すBtoBの不動産プラットフォームだ。

特徴は物件を探しているユーザー(テナント)が希望条件をテナンタ上に登録しておけば、該当する物件を提案してもらえること。既存のポータルサイトなどは多くの場合「サイト上に掲載されている店舗物件の中から、テナントが自社にあったものを自分で探す仕組み」になっているが、テナンタではこの構造を変えることでテナントと不動産会社双方に新しい価値を提供する。

テナンタ代表取締役の小原憲太郎氏によると、店舗物件探しにおいては「良い物件ほど表に流通する前に決まってしまう」ことが多く、ほとんどのテナントが良い物件になかなか巡り会えないという課題を抱えているそう。募集中の店舗物件をまとめたサイトなどはあるものの、質の高い物件は人づてで決まるため、最終的には不動産会社とネットワークがあるかどうか次第になるのだという。

特に中小企業や創業間もないベンチャーであれば、不動産会社から認知されていなければ良い物件にアプローチすることはかなり難しい。とはいえ、どの不動産会社にどんな物件が入るかはわからないため、ネットワークを作るにしてもどうやってアプローチすべきか頭を悩ませてしまうのが現状だ。

一方で不動産会社側もまた、物件に合ったテナントがどこにいるかわからずその相手を探すのに苦労している。上述したように従来のサイトなどでは「不動産会社側が物件を登録してからテナントのアプローチを待つ」というのが基本で、誰がどんな物件を探しているのかがほとんど可視化されていなかった。

自社と繋がりのある顧客の中で物件にマッチする企業があれば問題ないが、該当者がいなければ自分たちの経験や勘を頼りに目ぼしい会社のサイトなどから出店状況や募集情報などを調べ、地道に顧客リストを作っていかなければならない。

テナンタの場合は「最初にテナント側が探している物件の情報を登録する」という従来とは逆のアプローチをとることで、「テナントの出店ニーズ」をデータベースをして可視化している点がポイント。不動産会社は物件の条件に合いそうな顧客を検索して自分たちから提案できるようになり、テナントも上手くいけばネットワークに頼らずとも良質な物件を獲得するチャンスを得られるようになる。

テナント側が入力する希望条件例

流れとしては、テナント側のユーザーが出店したいエリア、坪数、坪単価、出店希望時期などの条件をテナンタ上に登録。不動産会社はこれらの項目をベースにテナントを絞り込むことができ、マッチしそうな相手に対しては個別に物件を提案していく。

不動産会社の視点では「営業支援ツール」的な側面をもっていて、小原氏の話ではリーシング(物件に借り手がつくようにサポートする業務)がすごく楽になったという声が多いとのこと。膨大な時間がかかっていたリーシングを効率化できることに加え、これまで見逃していた“実は筋の良い顧客”の存在に気づけるようになるのがメリットだ。

「『自力でやった場合には2件しか候補が見つからなかったのに、テナンタを使うことで候補が8件まで増えた』といったような例があるように、リーシングの部分で価値を感じてもらえている。この業務は頭の中にデータを叩き込んでいないとできないので住宅などに比べても新卒が活躍しづらい領域だったが、テナンタを活用することで『新卒がリーシングの戦力になった』という声も頂いている」(小原氏)

不動産会社の視点ではテナントのニーズを集めたデータベースという位置付け。細かい条件に合わせてテナントを簡単に検索・絞り込むことが可能だ

テナンタは今年6月から東京・神奈川エリア限定のベータ版として運営。現在は約5000件のブランドが掲載されている状況だ(主体的に登録している正会員のテナントのほか、web上の情報を基にテナンタ側でリストアップしている企業も含む)。

今の所は無料で提供しているが、ゆくゆくは不動産会社側に対して営業支援SaaSのような形で定額制のサービスとしてマネタイズすることを考えているそう。そのほかテナント側の有料オプションなども検討していくようだ。

まずは今回調達した資金を活用して人材採用とプロダクトのアップデートを進める方針。不動産会社向けに物件と相性が良いテナントをレコメンドする機能などを取り入れていくほか、スマホ対応の強化やアプリ化も視野に入れつつプロダクト開発に力を入れていくという。

テナンタのメンバーと投資家陣

事業用物件とテナントをマッチングする「テナンタ」が東京・神奈川の地域限定でリリース

店舗物件を探すテナントと店舗物件を抱える不動産事業者をマッチングする「テナンタ」開発のテナンタは、同プラットフォームの提供を開始したと発表。東京・神奈川の地域限定・無料ベータ版となり、全国展開は秋頃を予定している。

テナンタは2019年4月の設立。同社の代表取締役、小原憲太郎氏はシェアハウスの同居人を探すColishも運営している。

同社の代表取締役、小原憲太郎氏によると、店舗物件はオフィスや住宅と比較すると極めて「人づて」に決まるケースが多く、ネット上で探せる物件には限りがある。優良物件はネットに出る前に決まっていることが多く、テナントは不動産事業者とのコネクションの強化に無駄な時間を費やし、不動産事業者もすぐに決まる物件以外だとテナントを見つけるのは容易ではなく、ファックスやメール、電話を繰り返すという非生産的なアクションを今なお繰り広げている。

「テナント側にとって、物件があってもリーチができなかったら無いも同然。不動産屋にとっても、良い事業があったとしても知らなければ契約には至らない。不動産屋は『この物件を借りる人は絶対にいる。だがどこに』と考えている」(小原氏)

テナンタでは上記の課題を解決。テナントは借りたい物件の条件や既存店の出店状況を登録し、不動産事業者はテナントから集まった情報をもとにマッチする物件を紹介する。

  1. テナント詳細画面2

  2. 希望条件例

小原氏いわく、テナント側は「自分が欲しい物件を伝える場所がない」状況、そして店舗を扱っている人たちは「非効率的な営業をしている状態」なので、双方からテナンタに対する強い需要がある。

加えて、テナンタでは、テナントがどこに出店したいかだけではなく、どこに出店しているのか、オリジナルのデータベースを作っている。ヒートマップのように「どこに需要があり、どこに無いのかが業態別にもエリア別にもわかる」(小原氏)

現在、塾や外食大手から小規模事業者がテナンタに参加を表明。テナンタの全国展開は秋となるが、同社は今回のリリースに合わせ、不動産事業者側のモニター会員参画企業を20社限定で募集を開始した。