ウェブベースのコラボデザインツールFigmaが日本法人を設立、今後数カ月をめどに日本語版をリリース

ウェブベースのコラボデザインツールFigmaが日本法人を設立、今後数カ月をめどに日本語版をリリース

ブラウザー上で共同編集できるデザインプラットフォーム「Figma」(フィグマ)を提供するFigma,Inc.は3月16日、アジアで初の拠点となる日本法人Figma Japanの設立を発表した。今後数カ月をめどに日本語版をリリースする予定。Figma製品が英語以外で公式に利用できるようになるのは、今回が初。またカントリーマネージャーとして、ブライトコーブのシニアバイスプレジデントおよび日本法人代表を務めていた川延浩彰氏が就任する。

これまでサンフランシスコとロンドンにオフィス拠点を設けてきたFigmaは、日本国内でも採用活動を強化するという。
Figmaの日本進出への背景には、2019年末にFigma本社の製品並びに営業チームが日本へ市場調査に訪れたことや、直近1年間で(ユーザーの登録数ベースで)約2倍に拡大した活発なデザイナーコミュニティの存在がある。

同社によると、日本について、デザインとテクノロジーのグローバルリーダーとしてのポジションだけでなく、デザイン思考を持つ多くの顧客が存在する重要な市場と位置付け。このため、アジア最初の拠点として日本でのFigma Japan設立を決定したという。

Figma共同創業者兼CEOのDylan Field(ディラン・フィールド)氏は、「日本法人を設立し、日本市場向けのローカライズを行うことにより、この重要なコミュニティにFigmaがより一層普及し、『すべての人がデザインを利用できるようにする』という私たちのビジョンの実現に近づけてくれると考えています」と述べている。

名刺・ウェブサイトから採用時のオンボーディングまで、様々なデザインの事例を集めたCocoda運営のalmaが1.3億円調達

デザインプロセスとデザインチームが集まるプラットフォーム「Cocoda」(ココダ)を運営するalma(アルマ)は3月7日、第三者割当増資により総額1億3000万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は坂田一倫氏(Mentally CEO)、関口裕氏(SmartHR コミュニケーションディレクター)、山下あか理氏(フリーランスデザイナー)といったエンジェル投資家。調達した資金は、プロダクト強化とマーケティング強化に向けた組織拡大にあてる。

Cocodaは、普段は見えにくい「デザインの裏側」をデザインケース(デザインの事例)として明らかにするプラットフォーム。2022年2月時点でのユーザー数は約3万4000人。掲載事例はウェブサイトや名刺のデザインをはじめ、採用時のオンボーディングデザイン、社内で運用するデザインシステムなど、見た目のデザインに限らない事例まで集まっているという。

デザインチームやプロダクトチームが利用者として参加しており、実際の設計過程やデザインの裏側をデザインケースとしてまとめ発信しているため、普段の業務における試行錯誤や制作プロセス、組織体制といった事例も知ることができるとしている。

また、チームのデザイン活動を支える新たなプロダクトも実験しているそうだ。そのうちの1つ「Cocoda Board」は、ユーザー情報をまとめ、ユーザーからの声や要望を集約し整理と可視化が行える管理するツールとなっている。

ファッションデザインと制作の合理化を目指すCalaの新しいモバイルアプリ

ニューヨークを拠点とするCala(カラ)は、ファッションデザインと制作のための新しいCalaモバイルアプリのローンチを発表した。企業やインフルエンサーにデジタルファッションデザインのインターフェースを提供する同社は、新しいアプリは製品制作とサプライチェーン管理のプロセスを合理化するために設計されたものだという。

2016年に立ち上げられたCalaは、コラボレーション、デザイン、製造などを可能にしながら、ファッションブランドや小売業者に、ファッションデザインとサプライチェーンのプロセスの各ステップを助けるオールインワンプラットフォームを提供することを目指している。Calaのパートナーネットワークには13カ国60以上の工場が含まれており、顧客はニーズにあうメーカーと繋がることができる。

Cala の CEO で共同設立者のAndrew Wyatt(アンドリュー・ワイアット)氏は TechCrunch のインタビューで、ファッション業界の製品作成プロセスはスケッチから始まることが多いが、このステップ以降は、開発と生産に関わるすべてがモバイルで行われると語っている。同社は、開発・生産プロセスをより迅速かつ容易にすることを目的として、新しいアプリをリリースするとのことだ。Calaの新しいアプリでは、ユーザーがデザインやコレクションを見たり作成したりできる他、デザインのインスピレーションをアップロードして文脈に応じたコメントを追加できるツールも含まれている。また、コメント、写真、ファイルの添付により、チーム間でアプリを通じてコミュニケーションをとることができる。また、アプリには通知センターがあり、重要な情報のみを表示し、ユーザーに多数の通知を浴びせないように設計されている。

「このアプリのターゲット層は、ファッションブランドで働く人たちです」と、ワイアット氏は語った。「年間10万ドル(約1148万円)以上の商品を扱っているブランドにフォーカスしています。私たちは、3-5人のチームでも、50人のチームでも、サプライチェーンをより効果的に運営する手助けができます」。

この新しいアプリケーションは、Apple App Storeでダウンロードできる。ワイアット氏は、Cala のモバイルウェブユーザーの80%以上がAppleデバイスを使用していると指摘し、それが iOSの発売を優先させた理由であると述べた。同社は、Androidでもこのアプリを提供する予定だが、現時点では、そのスケジュールは未定であると述べている。

画像クレジット:Cala

米国時間3月1日の発表の中で、Calaはデザインプロセスに3Dプロトタイピング機能を追加することも明らかにした。この新機能により、ユーザーはデザインの3D画像をリクエストすることで、フィット感や素材感をリアルに確認することができるようになる。Calaによると、この機能はサンプルを注文するよりも時間的に効率的な代替案として機能し、またデザインの最終決定にも役立つという。

「世界は間違いなく、3Dデザインとオンデマンド生産の世界に向かっており、我々はその最前線に立つことができると思っています」と、ワイアット氏は語った。「また、私たちには、物理的な製品を購入すると、metaverse(メタバース)で使用できるデジタルツインが手に入るという明確な未来が見えています。これが、私たちが3Dデザインを学んでいるもう1つの理由です。現在、3Dデザインは時間の節約になり、ブランドが開発面でより持続可能なものになるのに役立っています」。

Calaは、発売当初、オンデマンドのカスタムフィット3Dボディスキャンシステムで市場への進出を果たした。ワイアット氏によると、それ以来、Calaはファッションブランドの中核的なサプライチェーンパートナーであることに重点を置くようになり、ここ数年、小規模なファッションブランドやインフルエンサーと協力して、テクノロジーを使って物理的な製品を作り、顧客に販売するプロセスを合理化するソリューションを作り始めた。

Calaの直近の資金調達ラウンドは2020年7月で、Maersk Growth(マースク・グロース)とReal Ventures(リアル・ベンチャーズ)の共同主導で300万ドル(約3億4400万円)のシードラウンド拡張を実施した。同社は2018年にReal Venturesが主導する最初のシードを行った。この2つのラウンドにより、同社の資金調達総額は700万ドル(約8億400万円)に達した。

画像クレジット:Cala

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

デザイントークンやアセットを自動的に収集、保存、配布することでVIの統一を支援する「Specify」

Figma(フィグマ)とGitHub(ギットハブ)の共通言語を作るスタートアップ、Specify(スペシファイ)をご紹介しよう。Specifyは、あなたのデザイントークンとアセットのためのセントラルリポジトリとAPIとして機能する。言い換えれば、デザイナーは標準的なFigmaファイルを更新することができ、変更はGitHubリポジトリに反映される。

このスタートアップは、Eurazeoが主導する400万ユーロ(約5億1600万円)のシードラウンドを調達した。BpifranceのDigital Ventureファンド、360 Capital、Seedcampも同ラウンドに参加した。EurazeoのClément Vouillon(クレマン・ヴイヨン)氏やeFounderのDidier Forest(ディディエ・フォレスト)氏など、ビジネスエンジェルも出資している。

組織がデザインに本腰を入れ始めると、ボタン、アイコン、フォント、ロゴ、色など、統一したスタイルでデザインシステムを作りたくなるものだ。例えばログインページは、Facebook(フェイスブック)、Twitter(ツイッター)、Gmail、Pinterest(ピンタレスト)ではそれぞれまったく異なる印象を与える。

とはいうものの、デザイナーと開発者の双方がこれを手作業で行っていることが多いのが現状だ。デザイナーはConfluenceやNotionでデザイントークンやアセットを使ってドキュメントページを作成する。そして開発者は、手作業でドキュメントをチェックし、最新のエレメントを使用しているかどうか確認しなければならない。

画像クレジット:Specify

Specifyは、デザイントークンやアセットを保存するセントラルリポジトリとして機能する。ユーザーはまず、1つまたは複数のソースと1つまたは複数のデスティネーションでSpecifyを接続する。

例えばSpecifyを使い、Figmaファイルから情報やデータを直接取得することが可能だ。そしてデザイナーはFigmaで何かを更新することができ、その変更はSpecifyのリポジトリに反映される。Specifyは単一の真実のソースとして機能するわけだ。

だが、変更はアプリケーション内でより速く反映されることもある。何かが更新されると、Specifyは自動的にGitHub上でプルリクエストを作成することができ、コマンドラインインターフェイスもある。開発者はワンクリックで変更を受け入れることができる。このようにして、色、ロゴ、フォントなどが、手動で作業することなく更新される。

Specifyは、自社製品の対象をFigmaとGitHubに限定するつもりはないようだ。この先、Dropbox(ドロップボックス)やGoogleドライブなど、さらに多くのデータソースを導入する予定だ。そしてNotionなど、より多くのアップデート先に対応する予定もあるという。特に、1つのデザイン変更を複数の更新先にプッシュできる機能があれば便利だろう。

製品ビジョンは明確だ。Specifyは、デザインチームを一元化する接着剤になりたいと考えている。「当社のアプローチは、Segment(セグメント)とよく似ていますが、デザインのための製品だと考えています」と、共同創業者兼CEOのValentin Chrétien(ヴァランタン・クレティアン)氏は筆者に語った。

画像クレジット:Specify

画像クレジット:Balázs Kétyi / Unsplash (Image has been modified)

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(文:Romain Dillet、翻訳:Den Nakano)

MediumがグラフィックデザインツールのProjectorを買収、経営陣を強化

コンテンツパブリッシングプラットフォームのMediumが、Projectorという小さなスタートアップを買収する。これにともない13人のProjectorチーム全員がMediumにジョインし、Projectorの共同創業者でCEOのTrevor O’Brien(トレボー・オブライエン)氏がMediumの最高製品責任者になる。

Projectorについてご紹介しよう。同社はブラウザベースのグラフィックデザインツールを開発してきた。ポッドキャストのアートワーク、Facebookイベントのロゴ、Instagramのストーリーといったソーシャルの投稿に使うグラフィックスをわずか数回のクリックで作れる。

プロ級のデザインスキルがなくても、Projectorのテンプレートライブラリを利用し、テンプレートの画像とテキストを置き換えて自分のグラフィックスにすることができる。

ProjectorでアニメーションGIFやプレゼンテーションを作るユーザーもいる。他の人と一緒に作業をしたい場合はリアルタイムでコラボレーションできる。完成したら、プレゼンテーションやデザインをリンクで共有する機能もある。

Mediumは買収の条件を明らかにしていないが、Projectorは10万人のユーザーを抱え、3回の資金調達ラウンドで2300万ドル(約26億2000万円)を調達した。Projectorには、Upfront Ventures、Mayfield Fund、Foundry Group、Upside Partnership、Homebrew、Mantis VC 、Van Wickle Venturesが投資した。Mark Suster(マーク・サスター)氏とRishi Garg(リシ・ガルグ)氏がProjectorの経営陣として参加した。

画像クレジット:Medium

Projectorの共同創業者でCEOのオブライエン氏はこれまでにCoda、Twitter、YouTubeでプロダクトチームを率いてきた。同氏がMediumの最高製品責任者になるが、Mediumには今回の買収まで最高製品責任者はいなかった。

Projectorの共同創業者でエンジニアリング担当VPのLuke Millar(ルーク・ミラー)氏は、Mediumのエンジニアリング担当VPになる。

オブライエン氏は「Mediumは、長期的にはProjectorを独立したプロダクトとして運営し続けることはありません。Mediumのコアのプラットフォームに集中し、Projectorのテクノロジーと専門性を活かして世界有数のクリエイターツールと読者のエクスペリエンスを構築します」と述べている。

さらに同氏は「Projectorは、既存のお客様が今後の利用を停止し、停止前に作品を書き出せるようにするために、2022年3月まで運営を続けます」と補足した。

MediumがProjectorの実績を今後活用していけば、ユーザーが自分のMediumサイト、投稿、ニュースレターをカスタマイズするデザイン機能の充実が期待できるだろう。リアルタイムのコラボレーション機能も増えるかもしれない。

Mediumの投稿エディタは多くのコンテンツマネジメントシステムからヒントを得て、すっきりとした直感的なデザインになっている。Mediumが文章だけでなくさまざまなメディアのコンテンツにも同様にデザインを重視したアプローチをとるか、注目される。

画像クレジット:Medium

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)

【コラム】知られざるデザインの事実とユーザーエクスペリエンスの偏りに対処する方法

最近とある巨大テック企業と話をする機会があった。彼らが知りたがっていたのは、彼らが手がける人間中心設計は、エクスペリエンスの偏りを防ぐことができるかどうかというものだった。簡単にいうとその答えは、おそらくノーである。

エクスペリエンスの偏りといっても、何も私たち自身の認知的な偏りのことではない。デジタルインターフォースのレイヤー(デザイン、コンテンツなど)における偏りのことを指しているのだ。人々が接しているほとんどのアプリやサイトは、制作したチームの認識や能力に基づいて設計されているか、ごく数人の価値の高いユーザーのために設計されている。もしユーザーがデザインにおける慣習を知らなかったり、デジタルへの理解が足りなかったり、技術的なアクセスがなかったりすると、そのエクスペリエンスは彼らにとって不利なものになると言えるだろう。

解決策としては、多様なユーザーのニーズに合わせ、デザインやエクスペリエンスを複数バージョン作るという考え方にシフトするというのがある。

前述のテック企業の話に戻ると、共感できるデザインへの投資はどんな企業にとっても不可欠だが、デザイン機能を立ち上げ運営してきた者として、ここで知られざる事実をいくつか打ち明けておく必要があるだろう。

まず第一に、UXチームやデザインチームは、戦略やビジネス部門から非常に限定されたターゲットユーザーを指示されることが多く、エクスペリエンスの偏りはすでにそこから始まっている。事業があるユーザーを優先しなければ、デザインチームはそのユーザーのためにエクスペリエンスを作る許可も予算も得られない。つまり、企業が人間中心設計を追求したり、デザイン思考を採用したりしていたとしても、多くの場合は商業的な利益に基づいてユーザープロファイルを繰り返し作成しているだけで、文化、人種、年齢、収入レベル、能力、言語などの多様性の定義からは程遠いものとなっている。

知られざる事実の2つ目に、人間中心設計ではUX、サービス、インターフェースのすべてを人間が設計することを前提としていることが挙げられる。エクスペリエンスの偏りを解決するために、ユーザーのあらゆるニーズに基づいてカスタマイズされたバリエーションを作成する必要がある場合、特にデザインチーム内の多様性が豊かでない場合には手作りのUIモデルというだけでは十分でない。ユーザーのニーズに基づいた多様なエクスペリエンスを優先させるには、デザインプロセスを根本的に変えるか、デジタルエクスペリエンスの構築に機械学習や自動化を活用するかのどちらかが必要であり、これらはどちらもエクスペリエンスの公平性へのシフトのためにはとても重要なことである。

エクスペリエンスの偏りを診断し、対処する方法

エクスペリエンスの偏りに対処するには、どこに問題があるかを診断する方法を理解するところから始まる。下記の質問は、デジタルエクスペリエンスのどこに問題が存在するかを理解するためにはとても有用な質問だ。

コンテンツと言語:このコンテンツは個人にとってわかりやすいものか?

アプリケーションには、技術面で特別な理解を必要としたり、企業や業界に特化した専門用語を使ったり、専門知識を前提としたりするものが多い。

金融機関や保険会社のウェブサイトでは、閲覧者が用語や業界、名称を理解していることが前提となっている。代理店や銀行員が事細かに教えてくれる時代でないのなら、デジタルエクスペリエンスがそれに代わって説明してくれるべきではないだろうか。

UIの複雑さ:自分の能力に基づいたインターフェースになっていないか?

障がいがあっても支援技術を使って操作ができるだろうか。またはUIの使用方法を学ぶ必要があるか。1ユーザーがインターフェイスを操作するために必要とする力量は、その人の能力や状況に応じて大きく異なる場合がある。

例えば高齢者向けのデザインでは、視覚的効果が控えめで文字の多いものが優先される傾向にあり、逆に若者は色分けや現在のデザイン規則を好む傾向にある。新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチン用ウェブサイトでは、操作方法や予約方法を理解するのに皆苦労したのではないだろうか。また、各銀行のウェブサイトは同じような情報でも操作方法が大きく異なっている。かつて、スタートアップ企業のUIは非常にシンプルなものだったが、機能が追加されるにつれベテランユーザーにとってさえも複雑になってきている。Instagramの過去5年間での変化がその良い例である。

エコシステムの複雑さ:複数のエクスペリエンスをシームレスに操作する責任をユーザーに負わせていないか?

私たちのデジタルライフは単一のサイトやアプリを中心としているわけではなく、オンラインで行うことすべてにおいてあらゆるツールを使用している。ほとんどのデジタルビジネスやプロダクトチームは、ユーザーを自分たちの庭に閉じ込めておきたいと考えており、ユーザーが達成しようとしていることに基づいて、ユーザーが必要とするかもしれない他のツールを考慮してくれることなどほとんどない。

病気になれば、保険、病院、医師、銀行との連携が必要になるだろう。大学の新入生の場合は学校のさまざまなシステムに加えて、ベンダー、住宅、銀行、その他の関連組織と連携しなければならない。このように、ユーザーがエコシステムの中でさまざまなエクスペリエンスをつなぎ合わせる際に困難に直面しても、結局のところユーザーの自己責任となってしまうのである。

受け継がれるバイアス:コンテンツを生成するシステム、別の目的のために作られたデザインパターン、エクスペリエンスをパーソナライズするための機械学習を使用している場合。

このような場合、これらのアプローチがユーザーにとって正しいエクスペリエンスを生み出しているかどうかをどのようにして確認しているだろうか?コンテンツ、UI、コードを他のシステムから活用する場合、それらのツールに組み込まれたバイアスを引き継いでしまうことになる。例えば、現在利用可能なAIコンテンツやコピー生成ツールはいくつも存在するが、自身のウェブサイトのためにこれらのシステムからコピーを生成した場合、そのバイアスをエクスペリエンスに取り込んでしまうことになる。

よりインクルーシブで公平なエクスペリエンスエコシステムの構築を始めるには、新しいデザインと組織的なプロセスが必要だ。よりカスタマイズされたデジタルエクスペリエンスの生成を支援するAIツールは、今後数年間でフロントエンドデザインやコンテンツへの新しいアプローチにおいて大きな役割を果たしてくれることだろう。しかし、どんな組織でも今すぐ実行できる5つのステップがある。

デジタルエクイティをDEIアジェンダの一部とするということ:多くの組織がダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの目標を掲げているものの、それらが顧客向けのデジタル製品に反映されることはほとんどない。筆者は大企業でデザインチームを率いたり、デジタルスタートアップで働いたりした経験があるが、問題はどこでも同じで、組織全体の多様なユーザーに対して明確な説明責任を果たしていないということなのである。

大企業でも中小企業でも、各部門が影響力の強さやどちらが顧客に近いかを競い合っている。デジタルエクスペリエンスや製品の出発点は、ビジネスレベルで多様なユーザーを定義し、優先順位をつけるところから始まるが、上級職レベルでデジタルとエクスペリエンスの公平性の定義を作成することが義務付けられているのなら、各部門はそれらの目標にどのように貢献できるかを定義すれば良い。

デザインチームやプロダクトチームは、経営陣や資金面でのサポートがなければインパクトを与えることができないため、経営幹部レベルはこの優先順位を確保するという責任を負う必要がある。

デザインチームと開発チームの多様性を優先すること:これについてはこれまでにも多くの記事が書かれてきたが、多様な視点を持たないチームというのは、自分たちの恵まれた経歴や能力だけに基づいたエクスペリエンスを生み出してしまうということを強調しておく必要がある。

さらに、多様なユーザーに向けたデザイン製作を経験したことのある人材を採用することが不可欠であるということも付け加えておきたい。デザイナーや開発者のグループを改善するため、採用プロセスをどのように変えているのか。多様な人材を確保するためにどういった企業と提携しているか。DEI目標は採用用紙上のチェックボックスに過ぎず、すでに思い描いていたデザイナーを採用していないだろうか。使用しているエージェントは明確かつ積極的なダイバーシティプログラムを持っているか。そして、彼らはインクルーシブデザインにどの程度精通しているか。

Googleの取り組みには模範的なものがいくつかある。人材パイプラインにおける代表性を向上させるための取り組みとして、機械学習コースへの資金提供を白人の多い教育機関からより包括的な学校に移し、TensorFlowコースへのアクセスを無料にし、またBIPOC(黒人、先住民、有色人種)にあたる開発者にはGoogle I/Oなどのイベントへの無料チケットを送付している。

何を、誰にテストするかを再定義する:ユーザーテストが実施される場合、収益性の高いユーザー層や特に重要なユーザー層に限定してテストが実施されることがあまりにも多い。しかし、お年寄りやデスクトップコンピュータをまったく使用しない若いユーザーに対してそのサイトはどのように機能するだろうか?

エクスペリエンスにおける公平性と平等性の重要な側面として、複数のエクスペリエンスを開発し、テストすることが挙げられる。ほとんどの場合、デザインチームは1種類のデザインをテストして、ユーザーからのフィードバックに基づいて微調整を行っている(テストを行ってさえいない場合もかなり多い)。手間はかかるものの、高齢者やモバイルしか持っていないユーザー、異なる文化的背景を持つユーザーなどのニーズを考慮したデザインバリエーションを作ることで、デザインをデジタルエクイティの目標に結びつけることができるのである。

「1つのデザインをすべてのユーザーに」届けるのではなく「複数バージョンのエクスペリエンスを立ち上げる」ということにデザイン目標を変更する:通常、最も重要なユーザーのニーズに基づいて、あらゆるエクスペリエンスを単一バージョンに絞り込むというのがデジタルデザインや製品開発の常識である。アプリやサイトのバージョンを1つではなく、多様なユーザーに合わせて複数バージョンを用意するというのは、多くのデザイン組織のリソース確保や製作の方法に反するものである。

しかし、エクスペリエンスの公平性をもたらすためにはこの転換が不可欠だ。簡単な自問をしてみると良い。そのサイト / 製品 / アプリには、高齢者向けのシンプルで大きな文字のバリエーションが用意されているだろうか?低所得世帯向けのデザインに関しては、デスクトップに切り替えて作業する人と同様に、モバイルのみ使用のユーザーでも難なく作業を完了できるだろうか?

これは、単にレスポンシブバージョンのウェブサイトを用意したり、バリエーションをテストして最適なデザインを見つけたりすることに留まらない。デザインチームは、優先されるべき多様なユーザーや十分なサービスを受けていないユーザーに直接結びつくような、複数の視点を持ったエクスペリエンスを提供するという目標を持つべきなのである。

自動化を導入し、ユーザーグループごとにコンテンツやコピーのバリエーションを作成する:デザインのバリエーションを揃えたり、幅広いユーザーでテストしたりしていたとしても、コンテンツやUIのコピーは後回しにされているということがよくある。特に組織の規模が大きくなるにつれてコンテンツが専門用語で溢れ、洗練されすぎて意味をなさなくなることがある。

既存の言葉(例えばマーケティングコピー)からコピーを取ってアプリに載せた場合、そのツールが何のためにあるのか、どうやって使うのかなどの、人々の理解を制限してしまっていないだろうか。エクスペリエンスの偏りに対するソリューションが、個々のニーズに基づいたフロントエンドデザインのバリエーションを用意することであるならば、それを劇的に加速させるスマートな方法の1つは、どこに自動化を適用すべきかを理解することである。

私たちは今、UIやコンテンツの制作方法を根本的に変えてしまうであろう新たなAIツールが、静かな爆発のように広がり続けている時代にいる。ここ1年でオンラインに登場したコピー駆動型のAIツールの量を見てみると良い。こういったツールはコンテンツ制作者が広告やブログ記事をより速く書けるようにすることを主な目的としているが、大規模なブランド内でこのようなツールをカスタム展開し、ユーザーのデータを取得してUIのコピーやコンテンツをその場で動的に生成するということも容易に想像ができる。例えば、年配のユーザーには専門用語を使わないテキストによるサービスや商品の説明が展開され、Z世代のユーザーには画像を多用したコピーが表示されるという具合だ。

ノーコードのプラットフォームでも同様のことが可能である。WebFlowからThunkableまで、すべてが動的に生成されるUIの可能性を持ち備えている。Canvaのデザインは物足りなく感じるかもしれないが、すでに何千もの企業がデザイナーを雇う代わりに、ビジュアルコンテンツ作成のため、Canvaを利用している。

多くの企業がAdobe Experience Cloudを利用しているが、その中に埋もれているエクスペリエンスの自動化機能を蔑ろにしていないだろうか。デザインの役割は最終的に、カスタムメイドのエクスペリエンスを手作りすることから、動的に生成されるUIのキュレーションへと変化していくことだろう。過去20年間にアニメーション映画が遂げた進化が良い例である。

機械学習とAIがもたらすデザインバリエーションの未来

上記のステップは、組織がエクスペリエンスの偏りに対処し、現在のテクノロジーを使って変えていくための方法を示したものである。しかし、エクスペリエンスの偏りに対処する未来が、デザインやコンテンツのバリエーション作成に根ざしているとすれば、AIツールがかなり重要な役割を果たすようになる。すでにJarvis.aiやCopy.aiなどのAI駆動型コンテンツツールの波が押し寄せており、またFigmaやAdobe XDなどのプラットフォームに組み込まれた自動化ツールも存在する。

フロントエンドデザインやコンテンツを動的に生成できるAIや機械学習の技術は、多くの点でまだ初期段階にあるものの、今後の展開を物語る興味深い事例があるため以下に紹介したい。

1つ目は、Googleが2021年初めに発表したAndroid端末向けのデザインシステムのMaterial Youである。このシステムではユーザーが高度なカスタマイズを施すことができ、また高度なアクセシビリティも内蔵している。ユーザーは色やフォント、レイアウトなどを自由にカスタマイズでき、自在にコントロールすることができるが、機械学習の機能により、場所や時間帯などユーザーの変数に応じてデザインが変化するようになっている。

パーソナライゼーションは、ユーザーが自分でカスタマイズできるようにするためのものと説明されているが、Material Youの詳細を見てみるとデザインレイヤーにおける自動化と多くの可能性が交差していることが分かる。

人々がAIを体験する際のデザイン原則やインタラクションについて、これまで各企業が取り組んできたことも忘れてはいけない。例えばMicrosoftのHuman-AI eXperienceプログラムでは、AI主導のエクスペリエンスを構築する際に使用できる、インタラクションの原則とデザインパターンのコアセットを、人間とAI間のインタラクションの失敗を予測して解決策を設計するためのプレイブックとともに提供している。

これらの例は、インタラクションやデザインがAIによって生成されることを前提とした未来の指標となるものであり、これが現実の世界でどのように機能していくかについてはまだ実例がほとんどない。重要なのは、偏りを減らすためにはフロントエンドデザインのバリエーションとパーソナライゼーションを根本的に増やすというところまで、事を進化させる必要があるということであり、またこれはAIとデザインが交差するところで生まれつつあるトレンドを物語っている。

こうしたテクノロジーと新たなデザイン手法が融合すれば、企業にとってはユーザーのためのデザインのあり方を根本的に変えるチャンスになるだろう。エクスペリエンスの偏りという課題に今目を向けなければ、フロントエンド自動化の新時代が到来したときには、その問題に対処するチャンスがなくなってしまうだろう。

編集部注:本稿の執筆者Howard Pyle(ハワード・パイル)氏は、デジタルエクスペリエンスに公平性を持たせることを目的とした非営利団体ExperienceFutures.orgの創設者であり、これまでにMetLifeやIBMでブランドサイドのデザインイニシアチブを主導してきた。

画像クレジット:naqiewei / Getty Images

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(文:Howard Pyle、翻訳:Dragonfly)

注文住宅の間取りをスマホで建築家に依頼できる「madree」を運営するスタジオアンビルトが1.3億円調達

注文住宅の間取りをスマホで建築家に依頼できる「madree」を運営するスタジオアンビルトが1.3億円調達

スマートフォンで建築家に注文住宅の間取りを依頼できる「madree」(マドリー)など運営するスタジオアンビルトは10月13日、第三者割当増資による総額1億3000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はUTEC(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)、マネーフォワードベンチャーパートナーズのHirac Fund、ほか個人投資家。

調達した資金は、エンジニアなどの人材獲得やマーケティング費用にあて、既存事業の改善や蓄積された間取りデータを活用した新しいサービス開発を行なうとのこと。また、ハウスメーカーや住宅関連企業との連携強化していくという。

madreeは、自分の暮しに合った間取りをスマートフォンから登録建築家に作成してもらえるサービス。間取りを軸とした独自の注文住宅プラットフォームという。作成した間取りは、提携住宅会社での概算見積もりをサイト上から依頼可能。同じ間取りについて複数社から概算見積もりを取ることもできる。会員登録ユーザーは4万2000人、定型住宅会社は200社以上となっている。

2017年6月に設立されたスタジオアンビルトは、「日本でいちばん多くの建築デザインを届けるプラットフォームをつくる。」をビジョンに掲げる建築デザイン領域のスタートアップ。madreeのほか、建築設計の仕事をオンラインで全国の建築系デザイナー・エンジニアに依頼できる設計事務所や工務店向けサービス「STUDIO UNBUILT」(スタジオアンビルト)も運営している。7000名を超える建築設計関連の専門家が利用しているという。

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アクセシブルなソフトウェアデザインのためのハブ「Stark」がMacアプリのベータ版を開始

Stark(スターク)は現地時間9月28日、Macアプリ「Stark」のプライベートベータ版を立ち上げた。プロジェクトに関わる誰もが簡単にコラボできるようにする一方で、プロダクトをより包括的なものにするためのアクセシビリティの規則遵守を簡素化するものだ。企業はデザインファイルをStarkのツールにアップロードすると、Starkがアクセシビリティの問題を特定し、変更を提案する。

Starkは、作品をアクセスしやすく包括的なものにするデザイナー向けの簡単なソリューションがないことにCat Noone(キャット・ヌーン)氏と同氏のチームが気づいた2017年に創業された。いまや50万人超が、Adobe XD、Figma、Sketch、Google Chromeのようなアプリ向けのStarkの統合されたプラグインを使った。これは、ビジュアル素材を視覚障害者のためのアクセシビリティ基準に合うよう、チェックしたり提案したりする。

「まずプラグインで始めました。あなたのプロダクトで起こっている問題を表面化することで意識を高めるすばらしい方法であり続けています」とヌーン氏はTechCrunchに語った。「しかしプラグインは大規模に、あるいは誰もがプロダクトに関われるようにする方法でアクセシビリティの問題を解決しません」。

ただ、ヌーン氏はMacアプリ用のStarkが多くのデザインファイルにある抜本的な問題を簡単に解決できるようにすることで「アクセシビリティを高める」と話す。例えばTwitterのようなアプリがフォントを変更すると(つい最近変更し、アクセスしやすいデザインにおけるカスタマイゼーションの必要性について議論を呼んだ)、デザイナーはアプリ内の何百ものスクリーンの書体を根気強く変更しなければならない。しかしStarkはこのプロセスをかなり迅速化する。

関連記事:ウェブデザイン変更後のツイッターはアクセシビリティが不十分と専門家は指摘

Starkに表示される可能性のあるアクセシビリティに関する警告メッセージ(画像クレジット:Stark)

「Starkがしようとしているのは、問題が起こったときに、あなたが提案された変更を受け入れ、デザインファイルを開き、変更し、そのまま進めてシンクさせるということです」とヌーン氏はいう。「ですので、その時点で1つのスクリーンだけでなく、全デザインシステム、あらゆるスクリーンで並行して表示されます。それはすごいことです。というのも、あなたのデザイン開発時間を短縮するからです。そして我々の目標は、これがなぜ修正されたのかあなたに教えながら、規則遵守にかかる時間を抑制することです」。

Starkがシードで150万ドル(約1億6800万円)を調達した2020年以来、プロダクトは消費者レベル、企業レベルどちらでも機能するアクセスしやすいデザインのGrammarlyだとヌーン氏はいう。Starkはまだ黒字になっていないが、同社の既存顧客にはMicrosoft、Pfizer、Instagram、ESPNなどがいる。加えて、Starkはアクセスしやすいデザインや、ヌーン氏いわくインターネット上で最大だというアクセシビリティリソースに興味がある人のSlackでのコミュニティもホストしている。同社はユーザーがプロダクトを試してSlackに参加できる限定無料プランを提供しているが、既存の一連のツールを利用するには年60ドル(約6700円)かかる。一元化された請求書へのアクセスや複数メンバーによる管理を加えるカスタムプランの見積もりを依頼することもできる。

関連記事:インクルーシブデザインの制作に役立つツールを提供するStarkが約1.6億円を調達

StarkのMacウェブサイトのスクリーンショット(画像クレジット:Stark)

アクセシビリティはテック企業にとって重要なものだ。というのも、障がいを持つ人が自社のプロダクトを使えなければ、巨大な顧客ベースを失うからだ。しかし包括的であることが十分な動機付けでなくても(ため息)、お金はそうだろう。

関連記事:【コラム】アクセシビリティを最初からスタートアップのプロダクトと文化の一部にする

「特にこのところ、パンデミックによって多くの企業がデジタルの活用を増やしました。プロダクトをすべての潜在ユーザーにとってアクセスしやすいものにしていないテック企業がマーケットから排除され、思いがけない大きな機会を逃すようになっています」とヌーン氏は述べた。しかしStarkは古いデザインファイルをアクセシビリティ基準に沿うものに変えるのを簡単にしている。「Macアプリ向けのStarkは、あなたがコンサルタントを10人も20人も雇わなくてもいいようにします。なぜなら、プロダクトを構築している個人は教育を受けていて、そばに使えるツールがあるからです」。

差し当たり、Macアプリ向けStarkのプライベートベータ版はSketchで使えるが、ほどなくFigmaやAdobe XDのような他の人気デザインツールでも使えるようになる、とヌーン氏は話す。その後、プロジェクト管理ツールを統合することで、ユーザーはアプリ内でタスクを他の人に割り当てることができるようになる。プライベートベータ版を試したい人はウェブサイトでアクセスをStarkにリクエストできる。ベータ版は無料だが、正式展開するときには料金プランが発表される。

「かなり意見を主張するコミュニティとともにこれを構築する余裕がありました」とヌーン氏は話した。「プライベートベータ版ですが、エンジニアやデザイナーにとってもかなりメリットのあるものです」。

Starkのチームは8カ国からリモートで働く17人だ。

「チームのメンバーは世界中に散らばっています。多くの言語、さまざまな肌の色、さまざまなバックグランドを持っています。我々自身のとらえ方、世界を誘導する方法はそれぞれの中にある包括性であり、かなりマジックのようなものだと考えています」とヌーン氏は語った。StarkがVRやARのような新手のテクノロジーに受け入れられることを同氏は願っている。その一方で、文化によってアクセシビリティが異なるという問題も解決して欲しいと思っている。例えば英語で書体を読みやすくすることはアラビア語やタイ語で書くことに必ずしも当てはまるとは限らない。「我々は構築したプロダクトを反映する存在であり、思うにそれが口でいうだけでなく行動で示すことを極めて簡単にしています。というのも、我々は毎日共同で暮らしているからです」。

画像クレジット:Stark

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

必要なファイルが見つけられないストレスを軽減させるPlaybookの「デザイナー」向けクラウドストレージを

Jessica Ko(ジェシカ・コ)氏がGoogleの、次いでOpendoorデザイン責任者であった時、彼女は部下たちがDropboxからアセットを探すのに彼らの時間の90%を費やしているのに気がついた。

多くの場合、彼らは古いバージョンのものしか見つけられないか、または探しているものを見つけられないでいた。また、さらに悪い場合には、別のアセットを間違って手に入れていた。

「それは非常に混沌としたプロセスでした」と、コ氏は回想する。「だれもがシステム内へアクセスし、何かに手を加えたりフォルダのストラクチャーを変えてしまうことができたために、大変なことになっていたのです。しかし他の選択肢がないために、そうした状態が続いていました」。

コ氏によると、Opendoorの規模が拡大するに連れ、問題はまずます大きくなっていったという。

「デザイナーはストレスを抱えて辞めていきました。Dropboxは今もこの問題を解決できていません。Googleドライブも優れた代替手段とはいえません。デザイナーは最も多くファイルを扱い、常にファイルを交換しています」。

ファイルストレージやファイル共有の問題に起因する不満やストレスに加え、適切なアセットが見つけられないこともエラーに繋がり、それは金銭的な損失にもつながっていた、とコ氏はいう。

「私たちは、新しいバージョンのものを見つけられないために、写真を撮ったり、デザインを再度作成しなければならず、そのために多くのお金を使いました」。

また、アセットにアクセスする必要があるのは、なにもデザイナーだけではない、という問題もある。財務チームもセールス用のプレゼン資料を作成したりするために常にアセットにアクセスする必要がある。

そこで2018年、コ氏は彼女を悩ませていたこの問題を、現在のデザインワークフローとプロセスに適したファイルストレージを作ることで解決すべく、Opendoorを離れた。より簡単な言葉で言えば、彼女はDropboxやGoogleドライブに替わる「デザイナーにより構築されたデザイナーのための」新しいクラウドストレージを構築したいと考えたのだ。

2020年初め、コ氏(CEO)はAlex Zirbel(CTO、アレックス・ザーベル)氏 と組んでサンフランシスコに拠点を置くPlaybookを立ち上げた。これを彼女は問題を解決するための「デザイナー向けDropbox」と説明している。そして米国時間8月26日、同社は突然姿を表し、Founders Fundが主導するシードラウンドで400万ドル(約3000万円)を調達したことを発表した。資金調達後の評価額は2000万ドル(約22億円)である。

この資金調達には、Abstract、Inovia、Maple、Basis Set、Backend、Wilson Sonsiniや、Opendoorの共同創設者兼CEOのEric Wu(エリック・ウ)氏、Gustoの共同創設者Eddie Kim(エディ・キム)氏、SV AngelのBeth Turner(ベス・ターナー)氏といった、多くのエンジェル投資家が参画している。

手短に言えば、Playbookは、組織のメディアライブラリ全体を数分で自動的にインポート、タグ付け、分類できるということを売りにしている。

立ち上げ後、Playbookがまず着手したのが、アセットのフォルダの管理方法を再考し、フォルダの下にサブフォルダを配置することだった。そして、同社はファイルの共有方法を変えようることに取り組んだ。

「現在、本当に多くのことがメールやSlackを通して行われているため、バージョンコントロールが一層難しくなっています」とコ氏はTechCrunchに語った。そこでPlaybookはファイルをさまざまなチャンネルを通して送るのではなく、当事者全員がアクセスできるストレージシステムを構築してきた。

「何年もの間、これらのアセットはファイルキャビネットのようなものに放り込まれてきました。しかし、今日、アセットの共有は、フリーランサーや下請け業者といったさまざまな関係者が関わるものになりました。そのため誰がこれらのファイルやバージョンの管理をするかはとても複雑な問題になりつつあります」。

Playbookは4TBの無料ストレージを提供している。これはコ氏によると、無料バージョンのGoogleストレージの266倍、Dropboxの2000倍に当たる。これでユーザーをひきつけ、ストレージ容量がなくなることを心配せずにオールラウンドのクリエイティブハブとしてこのプラットフォームを使ってもらいたいという狙いがある。また、ファイルを自動的にスキャン、整理、タグ付けし、ファイルやフォルダを視覚的に簡単に参照できるようにした。

画像クレジット:Playbook

Playbookが3月にデザインコミュニティに対しベータ版を公開したところ、2カ月で1000人のユーザーを獲得した。登録者数はその後も伸び続けたため、新たなユーザーに対処するために同社はベータ版を閉じなければならないほどだった。

現在、約1万人のユーザーがデータ版に登録している。初期のユーザーには個人で活動するフリーランサーからFast、Folx、Literatiといった企業のデザインチームが含まれる。

コ氏によると、9人の社員を擁する同社は、収益化をはかり、エンタープライズ版を出す前に(2020年になる可能性が高い)、製品を「適切なもの」にすることに力を注ぎたいと考えている。

当座Playbookは、フリーランサーのニーズに的を絞っている。同社はパンデミック後にはフリーランサーが爆発的に増えると考えており、そのためには「クラウドストレージはよりスマートになる必要がある」と確信している。

「私たちはまずフリーランサーが感じている問題を取り上げ、ボトムアップ式にこれを解決したいと考えています」とコ氏はTechCrunchに語った。

また、現在Playbookがフリーランサーに焦点を当てている背景には、 彼らが仕事の請負先にPlaybookを紹介してくれるだろう、というマーケティング上の戦略もある。

「彼らがPlaybookを通しクライアントにアセットやファイルを渡すと、クライアントはこれを採用する傾向があります」とコ氏は語る。

Playbook は現在、320万件のアセット管理に使用されており、毎月「登録を待っている人が何百人もいる」とのことである。

ザーベル氏は今後、画像スキャン、シミラリティ、コンテンツ検出、プレビュー、長期的なクラウドストレージ、そして数々のインテグレーションに進出することを考えている、と述べた。

「クラウドストレージのクリエイティブな側面に注目すると、興味深い技術上の課題がたくさんあります」。

Founders FundのJohn Luttig(ジョン・ルティグ)氏は、2020年に初めてコ氏やザーベル氏に会った際、Founders Fundが今まで見たことのないレベルで「彼らがファイル管理に関し深い理解と考えを持っていることが明確でした」と語った。また彼の見解では、Dropboxが2007年に立ち上げられて以降、クラウドストレージにおけるイノベーションはほとんど起こっていない。

「Playbookのプラットフォームは最新のデザイン、コラボレーションの原則、人工知能を取り込んだもので、これを用いることでファイル管理をはるかに早くしかも簡単に行うことができます。Playbookにはデザインの世界に深く関わってきたという強みがあり、ユーザーの視点でファイルシステムを再考する、という意味で同社は非常によいポジションにいると考えます」とルティグ氏はメールで伝えてくれた。

同氏は、Playbookはコンピュータービジョンやデザインの最新の進歩を活用し「今までのものよりもずっと優れた、ファイルを管理し共有するための製品を構築する」能力がある、と語った。

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画像クレジット:Playbook

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

17歳で開発、ディズニーも使うベクターデザインツール「Vectornator」が約22億円調達

企業が自社の問題を解決するためにツールを開発し、そのツールの方が実は今やっている事業よりも価値があることに気づく、というのはテック業界では昔からある話だ。Linearityは同じような状況から生まれた。17歳だった創業者のVladimir Danila(ウラジーミル・ダニラ)氏は、2017年にベクターデザインをより簡単にするために「Vectornator」ツールを考え出した。今ではApple(アップル)、Disney(ディズニー)、Wacom(ワコム)、そしてMicrosoft(マイクロソフト)でも使われている。Disney(ディズニー)は実際、ディズニーランドのホテルのアートワークを作るのにVectornatorを使っている。

このベクターに特化したプラットフォームはこのたび、EQT Venturesと468 Capitalが共同で主導したラウンドで2000万ドル(約22億円)の資金を調達した。また、Google(グーグル)の製品担当VPであるBradley Horowitz(ブラッドリー・ホロウィッツ)氏、Google ドライブ・ドキュメント・スプレッドシート・プレゼンテーションの共同創業者であるJonathan Rochelle(ジョナサン・ロシェル)氏、元Microsoftのコーポレート・ストラテジー部門責任者Charles Songhurst(チャールズ・ソンガースト)氏、GoogleのグループプロダクトマネジャーLutz Finger(ルッツ・フィンガー)氏といったエンジェル投資家も参加している。

今回の資金調達は、同社のモバイルファーストの製品であるVectornatorをさらに発展させ、AIを活用した自動化やコラボレーション機能の追加、新製品の開発、米国や欧州、アジアでの事業拡大などに充てられるという。

Linearityの創業者兼CEOであるダニラ氏は次のように述べている。「10年以上前に私が10歳でデザインを始めたころは、ツールはどれも使いにくく、取っつきにくいものでした。ベクターがピクセルよりも重要性を増してきており、写真以外のあらゆる面で優れていることから、すぐにその問題を解決する独自のツール群を作りたいと思いました。Vectornatorは、カスタマーエクスペリエンス、シンプルさ、そしてソフトウェアを複雑にしすぎないことを重視しています。テッド(・パーション)やチームと一緒に仕事をすることで、知識や市場への理解を深め、当社のプラットフォームの成長に貢献できることをうれしく思います」。

EQT VenturesのパートナーであるTed Persson(テッド・パーション)氏は次のようにコメントしている。「私にとって、Linearityチームと手を組むことには2つの明確な側面がありました。ウラジーミル(・ダニラ)は非常に明晰な創業者であり、彼は優れた製品を作り上げたということです。デザインツールは作るのが最も難しいツールの1つですが、ウラジーミルと彼のチームは何でも可能であることを示してくれました」。

デザインツールに対する投資家の関心は、現在150億ドル(約1兆6457億円)の評価を受けているCanvaの成功以来、爆発的に高まっている。

画像クレジット:Vladimir Danila

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

所有する家具を活用しプロが部屋をバーチャルでデザインしてくれるPancakeが約3800万円調達

すでに家にある家具を活用し、デザイナーの新鮮な目で空間をデザインするホームデザインプラットフォームを開発するPancake(パンケーキ)が、35万ドル(約3800万円)のシードラウンドを獲得した。

コスタリカ出身のMaria Jose Castro(マリア・ホセ・カストロ)氏、Roberto Meza(ロベルト・メザ)氏、Alfred Enciso(アルフレド・エンシソ)の3人は、在宅勤務に移行して部屋の空間を飾る必要に迫られた自分たちの経験をもとに、2020年に会社を立ち上げた。デザインサービスは高額であるため、誰もが利用できるものではなかった。

Pancakeは、部屋をデザインするインテリアデザイナーとユーザーの関わり方を再構築しており、ユーザーは自分の部屋のスペースのレンダリング画像を手に入れることができる。ユーザーは、ウェブサイト上でデザイナーとのオンラインセッションを予約し、部屋の寸法と写真を提供する。

 

次にデザイナーが、空間のレンダリングと、デザインとその方法を説明する資料を用意する。また、持っていない塗料や家具が必要な場合は、Pancakeがユーザーに購入できる場所を教えてくれる。このサイトの将来的な機能として、家具販売業者との連携も予定していると、カストロ氏はTechCrunchに語っている。

メザ氏はこの会社を「ファニチャー・アズ・ア・サービス(サービスとしての家具)」と呼び、すでにあるものを再利用して、そこで働き、住み、楽しむことができるような健康的で持続可能な空間づくりを主眼としている。それは一見難しいことのように思えるかもしれないが、世界的なパンデミックでみんなが突然同じ空間で一緒に過ごすようになると、人間関係というのは、好きな空間にいるときの方がより良くなるものだと彼はいう。

「私は建築におけるウェルネスを仕事にしていますが、Pancakeではそれを実現したかったのです。些細なことが余裕を生み、気分を良くしたり、もしくは悪くしたりすることがあるのです」。と彼は付け加えた。

Pancakeは今回の資金調達により、プラットフォームをさらに発展させ、エコロジカルフットプリント計算機などの新機能を追加して、顧客が自分のデザインがどれだけサスティナブルなのかを確認できるようにする予定だ。また、同社は透明性の高い価格設定を誇りとしている。デザイナーとの平均的な2時間のセッションは199ドル(約2万1800円)で、ペンキや新しい家具などのアイテムが必要な場合は、デザイナーがそこに予算を追加する。

今回のシードラウンドでは、OkCupid(オーケーキューピッド)の共同設立者であるChristian Rudder(クリスチャン・ラダー)氏がリードインベスターを務めている。同氏は、通常、シード段階での投資は行わないが、Pancakeが短期間で成し遂げた進歩に感銘を受けたと述べている。この中には、ソーシャルメディアプラットフォームでのマーケティングテストも含まれており、立派な投資効果が得られたと付け加えた。

一方、Pancakeはこれまでに100回以上のデザイナーセッションを行い、紹介や家の中の別の部屋のデザインも希望するリピーターが増えてきているという。パンデミックで4カ月間中断したにもかかわらず、前月比で平均200%の収益増を達成したとメザ氏はいう。今後は、2022年のシリーズAラウンドに向けて、ブランドと収益モデルの構築を進めていく予定だ。

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画像クレジット:Pancake

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

デザインをコードに変えるノーコードツールAnimaが約10億9900万円のシリーズAを調達

デザインをコードに変換するプラットフォームを提供しているAnima(アニマ)は、米国時間9月1日、1,000万ドル(約10億9900万円)のシリーズA資金調達を完了したことを発表した。このラウンドは、MizMaa Ventures(ミズマー・ベンチャーズ)がリードし、INcapital(インキャピタル)とHetz Ventures(ヘッツ・ベンチャーズ)が参加した。

私たちは、昨年までブートストラップで運営されていたAnimaをしばらくの間、追ってきた。

このスタートアップは、ボトムアップ式のアプローチや、ローコード/ノーコードの人気など、コーディングにおける現在のトレンドを指標にしている。

その仕組みはこうだ。

ほとんどの開発者は、デザイン要素をコードに変換するのに膨大な時間を費やしている。しかし、この作業は、アプリやウェブサイト、プラットフォームなどを実際に動かすコードを書くことほどワクワクする仕事ではない。

そこでAnimaを使うと、デザイナーがFigmaからアップロードした要素やデザインが、React、Vue.js、HTML、CSS、Sassをサポートした高品質なコードに自動的に変換される。また、デザイナーは自分の作品のプロトタイプをAnimaの中で作成することができ、静的な外観だけでなく、動きまでシステムで処理することができる。

共同設立者のAvishay Cohen(アビシャ・コーエン)氏とMichal Cohen(ミシェル・コーエン)氏、そしてOr Arbel(オア・アーベル:アプリYoを開発した輝かしい時代から聞き覚えのある名前かもしれない)は、資金をどのように使うか明確なビジョンを持っている。チームの規模を3倍にすると同時に、Figma、SketchなどのプラットフォームやGitHubとの統合を進め、Anima自体が効果的に機能し、デザイナーや開発者がこれらの要素をすでに存在しているプラットフォームから引き継ぐことができるようにすることを計画している。

サービス配信に関しては、Animaはそのボトムアップ型のアプローチを最大限に活用している。デザイナーは誰でも無料でAnimaに登録でき、現在60万人以上のユーザーが登録している。これは、2020年10月のユーザー数がおよそ30万人だったことと比較すると、大きな差だ。アビシャ・コーエン氏は、アクティブユーザーも増加しており、1年前には1万人だったプラットフォームの月間アクティブユーザー数が、現在は8万人であることを明かした。

さらにコーエン夫妻は、無料ユーザーの5%以上が有料ユーザーに転換し、有料アカウントの15%が、有料ユーザーになってから1~2カ月の間にチームに有機的に拡大していると説明した。共同創業者たちによると、今回の資金調達を機に、ビジネスの次の段階である企業用アカウントの依頼をすでに受けているという。

アーベル氏はTechCrunchに対し、いまの最大の課題は、リモートでの雇用であり、Animaにとってのその答えは、世界規模で人材を探すことであったと述べている。コーエン夫妻は、ハイパースケーリングを行い、1年間でチームを4人から30人に増やし、採用を続けるとし、企業文化を維持・育てるのが課題であると付け加えた。

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ウェブ向けクリエイティブの制作・改善をAIとデータを活用し実現する「AIR Design」のガラパゴスが約11億円調達

ウェブ向けクリエイティブの制作・改善をAIとデータを活用し実現する「AIR Design」のガラパゴスが約11億円調達

ウェブマーケティング・ウェブ広告に必要なクリエイティブ(バナー・ランディングページ・動画)の制作および改善をAIとデータを活用し実現する「AIR Design」を手がけるガラパゴスは9月1日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による約11億円の資金調達を発表した。引受先として、既存株主のArchetype Ventures、みずほキャピタル、Globe Advisors Venturesに加え、新たにSTRIVE、THE FUND(シニフィアン が運営するグロース・キャピタル)、DIMENSION、THE GUILDの計7社が参加した。調達した資金は、AIR Designのプロダクト開発とマーケティング、採用強化にあてる。

AIR Designは、2019年秋にサービスを開始。2年弱で300社以上の広告制作に導入されたという。この成長を加速させるべく、今後は「デマンド・サイド(顧客開拓)」「サプライ・サイド(制作キャパシティ)」「プロダクト・サイド(システム開発)」の3方向に注力するとしている。

ウェブ向けクリエイティブの制作・改善をAIとデータを活用し実現する「AIR Design」のガラパゴスが約11億円調達

  • デマンド・サイド(顧客開拓):AIR Designの導入パートナーとしての代理店ネットワーク構築
  • サプライ・サイド(制作キャパシティ):社員や外注パートナーとしてのデザイナーネットワーク構築
  • プロダクト・サイド(システム開発):AIとデータを活用したSaaSプロダクトの開発

ガラパゴスは、「プロセスとテクノロジーで人をよりヒトらしく」をフィロソフィーに、属人性が強く再現性に乏しいデザイン領域のDXを推進し、コストパフォーマンスに優れたクリエイティブを広告主に提供するとともに、デザイナーがルーチンワークから解放され、スキルアップと付加価値向上に専念できる環境作りを目指すとしている。

UXチームのためのDesignOps(デザイン運用)プラットフォームを目指すzeroheight

ウェブサイトやアプリの高品質なUXは、企業が成功する上で、あった方が良いといったものではもはやなく、なくてはならないものになっている。だが、UXチームの影響力を拡大することは容易ではない。近年、UXチームはDesignOps(デザイン運用)プラットフォームと呼ばれるものに注目している。

このたび、UXチームにとって重要なDesignOpsプラットフォームとなることを目指し、そのスケールアップのための資金を調達したスタートアップが登場した。

zeroheight(ゼロハイト)は、Tribe CapitalがリードするシリーズAラウンドで1000万ドル(約11億円)を調達した。ラウンドには、Adobe、Y Combinator、FundersClub、Expaの他、エンジェル投資家からTom Preston-Werner(トム・プレストン・ワーナー)氏(GitHubの共同創業者)、Bradley Horowitz(ブラッドレー・ホロウィッツ)氏(GoogleのVP Product)、Irene Au(アイリーン・オー)氏(GoogleでUXデザインを開発・運営)、Nick Caldwell(ニック・キャルドウェル)氏(TwitterのVP Engineering)などが参加した。

ロンドンを拠点とするzeroheightは、今後、サンフランシスコ・ベイエリアにも進出し、チーム全体を拡大する。これまでは、UXにおける文書化に注力してきたが、今後はデザインと開発のギャップを解消するなど、他の分野にも取り組む。

共同創業者のJerome de Lafargue(ジェローム・ド・ラファーグ)氏は次のように述べた。「zeroheightがUXにもたらすのは、GitHubのようなDevOpsプラットフォームがコードの開発とリリースに果たしている役割と同じです。UXコンポーネントを文書化・管理するための中心的な場所を提供し、デザインAPIと組み合わせることで、チームはデザインの受け渡し段階を完全に省略し、UXの提供プロセスを高速化できます」。

同社はUXチームのスケーリング問題に対処していると同氏は語る。「UXチームがここ数年で劇的に成長したことにより問題が発生しました。ほとんどの企業にとって、競争に勝つためにUXが非常に重要になっているからです。そのため、集中化や再利用可能なコンポーネントが必要となり、チームがリリースを続けても効率性や品質を落とさずに済むようになりました」。

zeroheightの1300社を超える顧客の中には、AdobeやUnited Airlines(ユナイテッド航空)などのフォーチュン500企業も含まれている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:DesignOpsUXzeroheight資金調達ロンドンデザイン

画像クレジット:zeroheight team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

ルイ・ヴィトンから35個のLEDが光るポータブルスピーカー「ホライゾン ライト・アップ・スピーカー」、価格35万2000円

ルイ・ヴィトンから35個のLEDが光るポータブルスピーカー「ホライゾン ライト・アップ・スピーカー」、価格35万2000円

Louis Vuitton

スマートウォッチやワイヤレスイヤホンなどテクノロジー製品にも積極的なルイ・ヴィトンが、ポータブルスピーカー「Louis Vuitton Horizon Light Up Speaker」(ルイ・ヴィトン ホライゾン ライト・アップ スピーカー)を発売しました。

直径18cmほどの独楽のような形状で、立てれば360度オーディオ、倒せば傾いた方向に指向性を持つユニークな仕組みです。

ライト・アップの名のとおり、天面のトップリングや周縁部のミドルリングに35個のLEDを搭載。音楽にあわせ、LOUIS VUITTON の文字やフラワーモノグラムがカラフルに光ります。

ルイ・ヴィトンから35個のLEDが光るポータブルスピーカー「ホライゾン ライト・アップ・スピーカー」、価格35万2000円

Louis Vuitton

素材はステンレススチールと強化ガラス、牛革。Bluetooth 5.1とAirPlay 2, Qplayに対応しており、iPhoneほか一般的なスマートフォン、ワイヤレスオーディオ機器と接続できます。

スピーカーとしての構成は0.75インチ径ツィーター x2 と3インチ径ウーファー。アンプ出力は2 x 30W。

ルイ・ヴィトンらしい旅のおともとして内蔵バッテリーで最大15時間再生できるほか、部屋に飾って使うために充電ドック兼スタンドが付属します。内蔵バッテリーは12V 3A USB-C高速充電に対応するのも優秀。

中身にはクアルコムのスマートスピーカー向けSoC QCS 404を採用。3つのマイクを搭載しスピーカーホンとしても機能します。

ルイ・ヴィトンから35個のLEDが光るポータブルスピーカー「ホライゾン ライト・アップ・スピーカー」、価格35万2000円

Louis Vuitton

サイズは直径18センチ、高さ14センチ。重さ約1kg。モノグラムも含めてSF映画に出てくる古代のエイリアン・アーティファクトのようですが、形状としてはルイ・ヴィトンが以前から販売している独楽型のバッグ「トゥピ」そのものです。

ルイ・ヴィトンから35個のLEDが光るポータブルスピーカー「ホライゾン ライト・アップ・スピーカー」、価格35万2000円

Louis Vuitton

価格は35万2000円。国内向けにもすでに販売しており、7月30日以降に順次出荷予定です。

(Source:ルイ・ヴィトン ホライゾン ライト・アップ スピーカー |ルイ・ヴィトン 公式サイト – QAC000Engadget日本版より転載)

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タグ:オーディオ / 音響機器(用語)ガジェット(用語)スピーカー(用語)デザイン / デザイナー(用語)ファッション(用語)Bluetooth(用語)Louis-Vuitton / ルイ・ヴィトン

機械学習を活用してマーケッターのコンテンツ制作を自動化するSimplified

マーケティングに特化してCanvaに対抗しようとしているデザインソフトウェアのSimplifiedが、Craft Venturesが主導するシードラウンドで220万ドル(約2億4000万円)を調達した。このラウンドには他にSuperhumanのRahul Vohra(ラフル・ボーラ)氏とTodd Goldberg(トッド・ゴールドバーグ)氏、UberのCPOだったManik Gupta(マニック・グプタ)氏、Roomie創業者でPelican VenturesのAjay Yadav(アジェイ・ヤダブ)氏、Form Capital、8Bit Capital、Early Grey Capital、GFR Fund、MyAsia VCなども参加した。

Simplifiedは幅広いチャネルに向けて大量のコンテンツを作る必要に迫られているマーケッターをまさにターゲットにしている。このプラットフォームは機械学習を利用して、コピー、画像、フォーマット、サイズ調整などコンテンツ制作のプロセスを可能な限り自動化する。

例えばマーケッターがソーシャルメディアに心を動かすような引用を投稿したいとする。ソーシャルメディア向けのコンテンツであることを指定し、心を動かすような引用を見つけて、システムに対して適切な背景を自動で作るように指示する。その後はタイプフェイスや画像のトリミングなど何でも好きなように微調整すれば、すぐに公開できる。

画像クレジット:Simplified

Simplifiedは組織全体で作品やアセットを共有する共同作業ツールも提供している。ストックフォトやストックビデオのサービスとも統合できる。

Canvaなどの製品ですでに単純化されているプロセスを、機械学習とGPT-3を利用して次のレベルへ引き上げるのが、この製品の基本的な考え方だ。

創業者のKD Deshpande(KD・デシュパンデ)氏は、とにかくスケールが重要だという。コンテンツを1つだけ作るのがこれまでより簡単になったとしても、量の問題は残る。Simplifiedは機械学習の自動化アルゴリズムを活用してコンテンツ制作のプロセスをスピードアップすることを目指している。

Simplifiedは、ここ数年デザイン分野が大幅に進化している中で登場した。InVisionやFigma、Canvaなどが、新世代のデザイナーやデザイン指向組織の要求に合う新鮮なデザインツールを提供して進化を引っぱっている。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Simplified資金調達機械学習マーケティングGPT-3デザイン

画像クレジット:Simplified

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(文:Jordan Crook、翻訳:Kaori Koyama)

高機能マスク「Xupermask」が商品化、換気ファン・HEPAフィルターやノイキャン対応イヤホンを搭載

高機能マスク「Xupermask」が商品化、換気ファン・HEPAフィルターやノイキャン対応イヤホンも搭載

Xupermask

実業家としても知られるミュージシャン will.i.am が、デュアル換気ファンや交換可能なHEPAフィルタ、アクティブノイズキャンセル対応イヤホンを組み合わせた高機能マスク『Xupermask』を商品化しました。当然(?) LEDで光ります。

デザインを手掛けたのは映画バットマンやスパイダーマン等の衣装で知られるコスチュームデザイナー ホセ・フェルナンデス氏。映画『トロン:レガシー』に出演したダフト・パンクのヘルメットや、SpaceXの有人宇宙船Falcon 9用宇宙服も担当しています。

高機能マスク「Xupermask」が商品化、換気ファン・HEPAフィルターやノイキャン対応イヤホンも搭載

Xupermask

見た目だけのアクセサリというわけでもなく、HEPAフィルタや換気ファンといったマスクとしての機能については、航空宇宙事業から産業用・家庭用の空気清浄機も手掛けるハネウェルとのパートナーシップによる製造です。

イヤフォンはBluetooth 5.0通信とアクティブノイズキャンセリングに対応。マイクはマスクを着けたままでもクリアに通話できるよう、マスク内の音を拾う構造になっています。

全体としては、柔軟なファブリック素材のマスクと、口と鼻を覆う部分は密閉性を高めるシリコン製の樹脂素材に換気ファンとHEPAフィルタ、LEDライト等とバッテリー内蔵、さらに個別に外せるイヤホンから構成されています。

マスク自体は換気フィルタ部分の重さや長時間の着用を考慮して、耳掛けではなく後頭部まで回すバンド式。イヤホンは取り外したときもポケットにしまう必要なく、マスクに固定できます。カラーはブラックとホワイト。

高機能マスク「Xupermask」が商品化、換気ファン・HEPAフィルターやノイキャン対応イヤホンも搭載

Xupermask

will.i.am は人気グループ BEP (Black Eyed Peas)のフロントマン。成功したミュージシャンが自身のパブリシティと資金調達力を活かして起業にも手を出すのはよくある話ですが、will.i.am は重度のテクノロジー愛好家・ガジェットおたくとしても知られています。

これまでもインテルの「クリエイティブイノベーションディレクター」に就任したり、自身のテクノロジー企業 i.am+ を通じてヘッドフォンやスマートウォッチなどの製品をリリースしてきました。Xupermask のイヤホン部分は、以前 will.i.am が自身のブランドで販売したワイヤレスイヤホン BUTTONS に似た形状です。

高機能マスク「Xupermask」が商品化、換気ファン・HEPAフィルターやノイキャン対応イヤホンも搭載

Xupermask

Xupermask は公式サイトを通じて299ドルで販売予定。読みは普通に「スーパーマスク」のようです。

XUPERMASK – Modern tech for the modern world

Engadget日本版より転載)

カテゴリー:ハードウェア
タグ:ガジェット(用語)デザイン / デザイナー(用語)ファッション(用語)ヘッドフォン / イヤフォン(用語)

アクセシビリティを重視したオープンソースの新デザインシステムをOktaがローンチ

アイデンティティとアクセス管理サービスを提供するOkta(オクタ)は米国時間2月4日、新しいデザインシステムをローンチした。これは社内と自社ブランドで使用するためのシステムだが、Apache 2.0ライセンスの下でオープンソース化されている。同社がOdyssey Design Systemと呼ぶこのシステムは、Google(グーグル)のマテリアルデザインやMicrosoft(マイクロソフト)のフルーエント・デザインなどと同類のものだ。機能の数ではおよばないものの、アクセシビリティを重視している点で市場では際立っている。このデザインシステムのあらゆる要素が、W3CのWeb Content Accessibility Guidelines(ウェブコンテンツ・アクセシビリティー・ガイドライン)に準拠している。

Oktaのデザイン担当上級副社長Brian Hansen(ブライアン・ハンセン)氏は、これまで同社には統一されたデザインシステムがなかったと私に話してくれた。だがその代わりに「栄光のパターンライブラリー」がある。エンジニアたちは新しいUIがすばやく作れるためとても気に入っていたのだが、新しいパターンの追加が難しかった。「そのため、できることに制限があったのです」とハンセン氏。「そのため最後には、特にデザイナーですが、丸い穴に四角いものを無理矢理入れ込むような妥協を強いられることもあります」。

画像クレジット:Okta

すでにOktaは若いスタートアップの段階から脱却しているが、今こそ社内用に機能を完備したデザインシステムを原点に戻って構築するときだと彼らは考えた。それはまもなく、ほとんどのユーザーが目にするOktaのサインインウィジェットに現れるはずだ。さらに注目すべきは、Oktaのプラットフォームが、ほとんどのユーザーは決して見ることがなかった管理者用のバックエンドツールを大量に公開したことだ。管理者たちは、情報の濃いユーザーエクスペリエンスと、仕事がよりはかどるデザインを求めるものだ。Oktaのサードユーザーは開発者であることを、ハンセン氏は強調する。開発者が最も気にかけるのは、細部の技術的なできもさることながら、説明資料だ。それは(あくまでデザイナーにとって)読みやすいものでなければならない。

ハンセン氏も認めているが、すべてのインターフェイスを一気にOdysseyに切り替えるのは現実的ではない。「デザイナーとしては、すべてを完ぺきに揃えてほしいと思います。しかし同時に現実的な態度として、完ぺきでないものと共存していく必要もあります」と彼は話す。そのため、Oktaブランドでは現在その更新を進めている最中であり、一部のユーザー向けインターフェイスも移行中だが、すべてのOktaサービスが移行を終えるまでには時間がかかる。

たとえば管理者用のコンソールに関しては、ハンセン氏のチームはUIの移行を数年かけて行うことに決めた。そこで中継戦略を立て、Odesseyの基本デザインを真似たスタイルシートを制作した。「そこから、私たちはOdysseyネイティブのコンポーネントへの切り替えが可能になり、徐々に組み込んでいけるようになります。アプリの切り貼りはできません。2つの異なるUIを共存させることもできません。それをすれば信頼を失うと私は考えています。そんなことで満足してくれる人はいません」とハンセン氏は語る。

開発者は、自身のプロジェクトでOdysseyを試すことができる。また提供されているさまざまなコンポーネントを見ることもできる。デザイナーはFigmaでの試用が可能だ。

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タグ:Oktaデザインアクセシビリティオープンソース

画像クレジット:Okta

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:金井哲夫)

ロゴなどのデザイナーとデザインをDIYで選べるDesignCrowdとBrandCrowdがIPO目前

DesignCrowdが今日(米国時間2/1)、IPO前の資金調達として1000万豪ドル(米ドルで約760万ドル)を獲得した。この資金は新規雇用と製品開発に使われ、同社のDIYプラットホームBrandCrowdの成長加速を目標とする。

この新たな投資は、DesignCrowdがオーストラリア証券取引所における近い将来のIPOを準備しているときに訪れた。主な投資家はPerennial Value Management、Alium Capital、Ellerston Capital、Regal Funds Management、およびCVCで、以前からの投資家であるStarfish VenturesとAirTree Venturesも参加した。これでDesignCrowdの調達総額は2200万豪ドルあまりとなる(約1700万USD)。

2007年にオーストラリアのシドニーで創業したDesignCrowdは、デザインをクラウドソーシングするプラットホームとして評判になった。ユーザーは、世界中のデザイナーからデザインの案をもらえる。BrandCrowdはDesignCrowdのクラウドソーシングでマーケットプレースのようなモデルを補完するもので、ユーザーベースを広げ、99designsやFiverrのようなデザイナーを見つけるための他のサイトとの差別化を狙っている。

大小さまざまな企業がデザイナーを見つけて、ロゴなどを作ってもらえるサイトには、Design HillやCanva、Tailor Brandsなどいろいろあるが、BrandCrowdにはDesignCrowd傘下の80万以上のデザイナーにアクセスできる有利性がある。そのライブラリから好きなものを選んでもよい、と共同創業者でCEOのAlec Lynch氏は言っている。BrandCrowdで好きなデザインを見つけたら、使用料を払う。そうすると、そのデザインはライブラリから削除される。

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BrandCrowdでは、ロゴなどのデザインをダウンロードするのに一回かぎりの料金を払うだけでなく、月額ないし年額の料金でサブスクライブもできる。Lynch氏によると、両方のプラットホーム(DesignCrowdとBrandCrowd)を使っているユーザーが多いそうだ。

Lynch氏はこう語る: 「たとえば、小企業がDesignCrowdのデザイナーにロゴのデザインをもらったら、そのロゴをBrandCrowdのDIYツールを使って、名刺やInstagramのポスト、メールのシグネチャなど、いろんなものに応用できる。ロゴのエディターツールもあるから、デザインに変更を加えることもできる」。

企業としてのDesignCrowdの年商は2020年に前年比で54%伸びたが、それは主にBrandCrowdのおかげだ。同社によると、BrandCrowdの登録ユーザー数は過去12か月で500万を超えた。その売上の半分以上は米国からだ。

新型コロナウイルスで2020年の3月と4月には逆風を経験したが、しかしLynch氏によると、オンラインデザインに対するグローバルな需要はその後回復して増加傾向に転じた。

それについて、氏は次のように述べている: 「あくまでも仮説だが、パンデミックによって2020年の後半には起業する人が増えて、その結果、ロゴなどのデザインの需要も増えたのだろう。また、起業ブームと並ぶもう一つのブームは、デザインをデザイナーに実際に会ってオフラインで依頼する人が減り、オンラインで探す人や企業が増えたことだろう」。

(文:Catherine Shu、翻訳:Hiroshi Iwatani)

画像クレジット: DesignCrowd

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa