デジタルメディアは今後いかに生き延びるか

どの業界もタフだ。しかし2018年は、デジタルメディア業界にとって特にタフだった。

おそらく今年最も注目を集めた事業停止は、Bustleに買収される前にスタッフのほとんどを解雇したニュースメディア企業Micだった。Micはトータルで6000万ドル近くの資金を調達していた。Micのミレニアル世代の視聴者にニュースを届けるというビジョンを、Time WarnerやBertelsmannといった大手メディア企業が資金調達という形でサポートした。

しかしMicは、多くの操業停止や解雇の一つにすぎない。ヘッドラインを賑わしたもののいくつかを下に挙げよう:

・Viceは雇用者数を最大15%減らすとのゴールを掲げ、採用を停止した

・LittleThingsは、同社が主張するところのFacebookのアルゴリズムの変更によって、RockYouに買収される前に閉鎖に追い込まれたようだ。RockYouの自社のデジタル出版戦略は難題に直面しているもよう

Refinery29は全体の10%にあたる社員を解雇し、2018年の売上は5%減を予想していると発表した

BuzzFeedは社内のPodcastチームを解散した(しかし、“一握りの”社員の解雇だったと報道されている)

Vox Mediaは従業員約50人を解雇した。また、同社のニュースサイトRecodeを一般ニュースメディアVox.comに取り込む計画も発表した

Gizmodoメディアグループはバイアウトのラウンドで社員を解雇した

・UpworthyとGood Magazineを保有するGoodメディアグループは従業員31人を解雇した

Outlineは全てのスタッフライターを解雇した

Lena DunhamのLenny Letterは事業を停止した

Rookieも事業停止

Defy Mediaも事業停止

こうしたニュースをひとまとめにするのは完全にフェアではないかもしれないーいくつかの企業は特異なマネジメントや事業問題のために失敗し、一方で他の企業はより広範なシフトの犠牲となり、またいくつかの企業は問題を分析して立ち直った。しかし集合的には、こうした企業にとってかなり厳しい1年だった。

この分野のベテランで、TechCrunchでたまにコラムを書いているPeter Csathyはこのほど、メディア業界における変化を取り上げた本“Fearless Media”を出版した。

TechCrunchとのインタビューで、Csathyは世界で最高と最悪の企業がはっきり別れた、と主張した。最悪、というのは明らかだー“特定のビジネスモデルが荒廃”したため、特にFacebookのような大きなプラットフォームや現在“かなりのプレッシャー下”にあるオンライン広告事業に頼ってきたために苦しんでいる企業だ。

同時に彼は、「最高はNetflixやAmazon、Appleといったメディアを展開する企業で、いくつかは大きな新技術を伴っている」と語った。

もちろんAmazonやAppleは、ほとんどの売上をメディア以外の事業であげていて、Netflixが目立って大きな成功を収めている。しかし、Csathyは2019年に「Netflixは今までに経験したことのないような大きな困難に直面するだろう」と予測した。というのも、Netflixは多くの新手ストリーミングサービスと競争することになり、しかもそうしたサービスのコンテンツはNetflixにコンテンツを売ってきた会社によって制作されるからだ。

「究極的には、Netflixが ‘House of Cards’以上のものを展開できるか、ということが問題となる」と彼は電子メールで付け加えた。

まだ大きくなく、圧倒的なプレイヤーでもない企業や、次のNetflixやBuzzFeedを築きたい起業家についてはどうだろうか。それは、おそらくたやすいことではない。特にベンチャーキャピタリストが登場しそうなときにはそうだ。しかし、2018年に資金調達に成功したデジタルメディアスタートアップもある。Podcast network Wondery女性に特化したニュースレター発信元のSkimmだ。

そしてニューヨーク拠点のスタートアップスタジオBetaworksは最近、“synthetic media(合成メディア)”にフォーカスしたアーリーステージプログラムを発表した。同社のパートナーMatt Hartmanによると、得意とするグラフィックスと人工知能を活用しているエリアなのだという。ここには、ニュースストーリーとビデオを制作するという誤解を抑制する意味合いが含まれている。そうではなく、BetaworksはInstagramセレブLil Miquelaのような“バーチャル”キャラクターといった新たな種類のコンテンツの制作を試みている。

Hartmanはメディア世界におけるビジネスモデルは変わりつつあり、特にパブリッシャーはペイウォールを用いて実験を行い、またプロダクトをひとまとめにして展開しようと試みている、と語った。

「私が思うに、来年はこうした実験をより多く目にすることになるー少ないひとまとめ、多いひとまとめ、どちらもありで、あなたが一緒になると思いもしなかった企業がまとまる」と話した。

そして、もしこうした実験の多くが失敗したとしても、正しい方向に進んでいる、とHartmanはいう:過去10年は、我々の注意を集めるような企業を立ち上げる時代だった。これの本当に素晴らしいところは、ユーザーをより人間らしく扱うような企業、という点だ。我々を楽しませ、教育を施し、情報を提供し、なおかつ我々の時間や注意に敬意を払う企業に対し、我々はどのようにイオンセンティブを扱うべきだろうか。

Csathyもまた似たよう点を指摘している。「広告を扱うこうした新たな企業に選択肢はなく、ビジネスモデルを復活させようとしている。[そうしなければ]収益化ができず、彼らは波にのまれてしまう」。

それは読者、そして視聴者があちこちでペイウォールにぶちあたるということを意味するのだろうか。おそらくそれは、かなりありふれたことになるだろう(一例として、New Yorkマガジンはペイウォールを導入したばかりだ)。しかしParse.lyのCEO、Sachin Kamdarは購読制だけでは解決にならない、とみている。

「最もよいパブリッシャーはおそらく5つないし6つの売上源を持つことになるだろう」とKamdarは言う。「たった一つということにはならない」。

パブリッシャーに(マーケッターにも)プロダクトを販売する分析会社のCEOとして、Kamdarはメディア事業の継続的な健全性に関心を持っている。彼は、業界の“エコーチェンバー”において、パブリッシャーが単に最新トレンドを追いかけることを憂慮している。「なぜなら、みなが同じ方向に行くというのが、必ずしもあなたにとって意味あるものとは限らないからだ」と警告する。

鍵となるのは「すでにあるものーあなたがパブリッシャーとして何者なのかを理解すること」と彼は提案する。だから彼は、最近のプラットフォームやトラフィックのソースを追いかけるという“かなり短期的な視点”から離れることを期待している:「私が思うに、今人々はようやく持続性が最優先事項であるべきだ、という結論に至りつつある」。

最近のビジネス環境にかかわらず、Kamdarは楽観視する短直な理由がある、と言う。

「読んだり観たりするのにより多くの時間が割かれている」と彼は話す。「長期的視点に立ったビジョンを持つと、何が起きているのか、どこへ向かっているのか、そうした視聴者をいかにつかまえるかを理解する大きなチャンスがある」。

イメージクレジット: David Sim

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(翻訳:Mizoguchi)

アメリカの成人は、ますますニュースをソーシャルメディアに頼るようになっている

Pew研究センターによる新しい調査によれば、米国の大人がソーシャルメディアプラットフォームを介してニュースを受けている割合が、一段と増加したことが示された。

昨年の5月の同調査では、米国の成人の62%がテクノロジープラットフォームからニュースを入手しており、そのうちの18%は頻繁にそうしていると報告されていた。そして最新の調査では、米国の成人の3分の2(67%)が、少なくともニュースの一部をソーシャルメディアから得ていると報告されている。一方、5分の1(20%)は「頻繁に」そうしているという結果になった。

これは大幅な増加ではないが、それでも増加はしている(Pewはそれを「控え目な」増加と呼んでいる)。

そして懸念される存在 ―― ソーシャルメディアにおけるニュースの主たる提供者であるFacebookは、事実と無意味なフィクションをそのプラットフォーム上で区別することに、明らかに無関心あるいは無能(またはその両方)なのだ。

確かに、多くの人びとが既に指摘しているように、ユーザーエンゲージメントの増加によってFacebookのビジネス上の利益がもたらされること、そして人びとの偏見を助長し、乱暴な対立を招く社会的主張を含む捏造されたニュースの方が、実際のニュースの事実報告よりも、Facebookのビュー回数をはるかに稼ぐことができることが示されてきた。

なので、ソーシャルメディアにおけるニュース消費の増加は今一度立ち止まって考える必要がある。特にFacebook(とGoogle)は従来のメディアから広告予算を奪い続けており、これまで民主主義が機能する上で重要な役割を果たしてきたビジネスの存続を脅かしている。

Pewの調査は、同研究センターの全国組織American Trends Panelのメンバーである4971人の米国成人からの反応に基いている。この調査は、2017年8月8日から21日にかけて行われた。

それによれば、ソーシャルメディアプラットフォーム全体における、ニュース消費の伸びは、「高齢で、教育程度が低い非白人」のアメリカ人によって支えられていることがわかった。 Pew研究センターによる調査で初めて、50歳以上のアメリカ人のうち半分以上(55%)がソーシャルメディアサイトでニュースを得ていることが報告されたが、これは2016年に比べて10ポイントの増加である。

またPewは、2017年に質問対象とした3つのソーシャルメディア ―― Twitter、YouTube、Snapchat ―― のどのサイトでも、ニュースを受け取るユーザーの数が増えていると報告している。

Twitterユーザーの約4分の3(74%)が同サイト上でニュースを得ていると述べており、これは2016年初頭に比べて15ポイントの増加だ。

YouTubeユーザーの約3分の1(32%)が同サイトからニュースを得ており、これは2016年初頭の21%から11ポイント増となった。

また、Snapchatのユーザベースでのニュースを消費も増加している。現在ユーザーの29%がそうしていると回答したが、これは2016年初頭の17%から12ポイント増となる。

それでも、Facebookは、全米の人びとに対してニュースを提供する主要なソーシャルメディアプラットフォームである。アメリカの成人の半分近く(45%)が、同サイトからニュースを得ていると報告されている(Facebookのユーザーベースは68%という多数に上る)。

時代は変わる。ちょうど1年前、Facebookはソーシャルメガプラットフォームがメディア企業の役割を果たしているという考えを鼻で笑っていた。そのアルゴリズムが何十億というユーザーたちのために、ニュース関連のコンテンツを選択して整列させているにもかかわらず、「私たちは単なるテクノロジープラットフォームです」という言葉が2016年9月には繰り返された。

12月までに、米国の選挙結果後にフェイクニュースの反撃を受けて、その言葉は信頼性の限界へと近付いていた。ここに至ってマーク・ザッカーバーグCEOは、Facebookが本当にメディア企業であると渋々ながら認めた。但しそれは「旧来」のものではないと言いながら。

それは真実だ。地球上の他のメディアに、このような広大なリーチパワーを享受しているものはない。

今週Facebookが明らかにしたように、アメリカが派手な選挙活動に向かう中で、ロシアのエージェントたちが、Facebookプラットフォーム上で政治的広告を購入し、ターゲットを設定し、配信することで、アメリカ人の中の社会的集団を結びつけていったのではないかというささやかな疑いが持たれている。

2015年から2016年の間に、クレムリン(ロシア政府)を支持する団体が、政治的マーケティングのために、約10万ドルの広告枠をFacebookプラットフォーム上で購入したように見えるという社内の調査結果が報告された。

同社はこれまで、ロシアの団体によって購入された広告を公開せよという圧力に抵抗している

これは完全にナンセンスだ。第一に法を犯しポリシーに反したロシア人たちはその広告に関してプライバシーを主張することはできない。

Pewの調査に戻ると、YouTubeの(成長している)ユーザーベースの間でも、ニュースの消費が増えているということが明らかになった。このGoogle/Alphabet所有のユーザー生成ビデオプラットフォームは、今や2番目にポピュラーなニュース向けソーシャルメディアサイトとなった。全米の成人のうちおおよそ10人に2人(18%)がニュースをそこから受け取っている。

Twitterの場合、そのユーザーの74%がサイトを経由してニュースを取得しているものの、ユーザーベースがFacebookやYouTubeのニュースよりも遥かに小さいことから、全体のリーチも小さくなっている。結果としてアメリカの成人のうちTwitter経由でニュースを取得しているのは11%に留まっている。

調査担当者は、アメリカの成人はこれまで以上に複数のソーシャルメディアサイトからニュースを得るようになっていると結論付けている。アメリカの成人のおよそ4分の1(26%)が2つもしくはそれ以上のサイトから情報を得ているが、これは2016年には18%だった。

追加調査によれば、インターネットはニュースのソースとして、テレビに肉薄していることが示された。2017年8月現在、米国人の43%がニュースをしばしばオンラインで入手していると報告されているが、テレビでニュースを頻繁に入手する人は50%だ。その差は僅か7ポイントである。2016年の初めには、2つのニュースプラットフォーム間のギャップは19ポイントだった。

要するに、インターネットのソーシャルプラットフォームの大手企業は、印刷媒体だけでなく、放送/テレビのニュースメディアを急速に吸収しつつあるのだ。

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(翻訳:Sako)

デジガレと講談社が女性向けにキュレーションならぬコンピレーションメディア——「HOLICS」は雑誌記事を人とAIで再編して配信

デジタルガレージと講談社の合弁会社、DK Mediaは6月28日、女性誌のコンテンツとAI技術を組み合わせてコンテンツを再編、配信するデジタルメディア「HOLICS」を開設、公開した。

デジタルガレージと講談社は、2015年2月にデジタルコンテンツ事業の分野で資本業務提携に関する基本合意を締結。2016年8月には合弁会社のDK Mediaを設立し、デジタルメディアの共同開発を進めてきた。DK Mediaでは、新メディアの形態を「コンピレーションメディア」と呼称。人気雑誌のコンテンツをテキストや画像単位に細分化(マイクロコンテンツ化)し、自然言語処理によりキーワードの関連度をスコアリングしたデータベースを構築して、データベースを元に、デジタル端末向けに最適な形に再編集し、配信するかたちをとる。

デジタルガレージと講談社が1月に発表したコンピレーションメディアの概念図

DK Mediaでは「WEBメディア業界では、PV・UU数にひも付く広告収入を獲得する事を至上とした傾向が、昨今の無数のWebサイトからの無断転用や、フェイクニュースを含む信ぴょう性の低い情報で運営するキュレーションメディアの問題として顕在化した」として、従来型のキュレーションメディアの問題点を指摘。その上で「DK Media自体の設立は昨年夏だが、従来のキュレーションメディアがはらむ問題を払拭するために、出版社が保有する雑誌コンテンツを使用するコンピレーションメディアという概念を打ち出した。権利処理にも時間をかけた」と説明している。

HOLICSはローンチ時点では、版権処理作業を先行して進めてきた講談社の「ViVi」「with」「FRaU」「VOCE」「おとなスタイル」をはじめとする雑誌コンテンツを基に、再編集記事を制作。記事の再編集にあたっては、HOLICS編集部が独自の視点を加えるほか、検索エンジン上の人気キーワードも考慮する。また、AI技術を活用して、個人別の興味や目的に合わせた形で記事の配信を最適化する仕組みを現在検証中とのこと。今後はユーザーの反応を見ながら最適化してゆく予定だという。

また今後、他の出版社の雑誌の参画も予定している。現在、13社50誌について、コンテンツのデータ分解とデータの格納のテストを行っており、準備が整い次第データベースへ格納し、コンテンツのクオリティーおよびメディアの価値向上を図っていくという。

講談社では6月9日にもグルメアプリ「SARAH」と提携、雑誌「おとなの週末」に掲載された情報をマイクロコンテンツ化して提供を始めている。また他の出版社では、小学館が4月、キュレーションメディア問題でサイトを閉鎖したDeNAと共同でデジタルメディア事業を検討するための基本合意を締結して、両社で改めて編集体制や記事作成フローの研究を行うと発表している。

Verizon VenturesとR/GAが共同で、デジタルメディア「ベンチャースタジオ」を発表

投資会社のVerizon Venturesと広告代理店のR/GAは、Verizon Media Tech Venture Studioという名前の新しいプログラムを発表した。

R/GAのグローバルCOOおよびR/GA venturesのマネージングパートナーであるStephen Plumleeによれば、これまで同代理店による”venture studio”プログラムたちは、他のスタートアップアクセラレーションプログラムに似た形で始まったが、いまは「金融資本、クリエイティブ資本、そして顧客関係資本」へのアクセスを拡大しているということだ。言い換えれば、スタートアップたちは単に資金やアドバイスを得るだけではなく、R/GAの制作スタッフや顧客と一緒に、製品に取り組むことになるということだ。

今回、Media Tech Venture Studioが最大10社に対して提供する14週間のプログラムでは、各自に10万ドルの資金を与え、ニューヨークにあるVerizonの新しい「オープンイノベーション」スペースも作業場所として提供する。同社が探しているのは、コンテンツの作成や、パーソナライゼーション、仮想現実と拡張現実、人工知能、コンテンツ配信、インタラクティブ広告、そしてeスポーツ分野のスタートアップだ。

「Verizonの考えは、市場に本当に出てみて、そこで何が起きているのかを知りたいということなのです」とVerizon VenturesのPaul Heitlingerは語る。「参加企業たちにとって真に魅力的なのは、Verizonのビジネスユニットと直接仕事ができることです・・・私たちの技術、ネットワーク、そして舞台裏のものすべてに触れることができるのです」。

同時にHeitlingerは、プログラムに参加しても「Verizonの専属として働かなければならいということは意味しません」と語った。

これらのスタートアップたちが、この後更にVerizon Venturesからの追加投資を受けることができるのか、という質問に対して彼は「いいえ、とは言いませんし、はい、とも言いません・・・Verizonのビジネスに良く馴染む特定の会社があると感じた場合には、他のスタートアップに対するものと同様に、私たちは投資を行いますよ」と答えた。

Verizonはデジタルメディアへより深く入りこもうと努力を重ねてきた、そうした動きは、go90モバイルビデオアプリや、AOL(TechCrunchの親会社)の買収はもちろん、現在進行中のYahoo買収 などに現れている。

Verizon Media Tech Venture Studioへの申込み期限は5月30日である。プログラムの開始は7月31日が予定されている。

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: DAVID RAMOS/GETTY IMAGES