暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.11.1~11.7)

暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.11.1~11.7)

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年11月1日~11月7日の情報をまとめた。NEM次期バージョン「Symbol」のローンチおよびスナップショット日程情報アップデート、必要項目を入力するだけでデジタル遺言書を作成しブロックチェーンに保存できる新アプリ「Husime.com」、NFTマーケットプレイスWAXとアタリの提携およびレトロゲームデジタルアイテム販売開始について取り上げる。

暗号資産NEMの次期バージョン「Symbol」、ローンチおよびスナップショット日程情報アップデート

暗号資産NEMの次期バージョン「Symbol」、ローンチおよびスナップショット日程情報アップデート暗号資産(仮想通貨)NEM(ネム)のコア開発者を含むNGL(NEM Group Ltd。NEMグループ)は11月6日、NEMの次世代バージョン「Symbol」(シンボル)のローンチ予定日およびスナップショットに関する最新情報を発表した。ローンチにおける重要ポイントとなる各スケジュールを明確にするために、情報のアップデートを行った。

Symbolのローンチは、12月17日を予定している。

Symbolのローンチ後も、現行のNEMブロックチェーンの運用は継続され、NEMのトークンである「XEM」(ゼム)はそのままに、新たにSymbolのトークンとなる「XYM」が発行される。NEMは、2ネットワーク/チェーン運用のもとで、2種類のトークンを持つことになっている。

Symbolのトークン「XYM」の付与とオプトイン

SymbolのトークンXYMの付与については、オプトインという意思表示が必要だ。このオプトインを行うことで、XEM保有者(最低100XEMが必要)は、保有量を確定するスナップショット時の保有量により、1XEM=1XEM+1XYMが付与されることになっている。スナップショットは、ローンチ日の2日以内、12月15日~17日間に行われる。

ちなみにスナップショットでは、特定のブロック高で、現行のNEMブロックチェーン上のNEMアカウントの状態(XEM残高、マルチシグ構成、ルートネームスペース)を記録するが、その日程は、ローンチ日に依存する。正確な日程は、少なくともローンチの14日前に、また正確なブロック高は5日前に公開される予定。

オプトインは、ローンチ前の事前オプトインとして、すでに9月15日より開始しており、いったんローンチの5日前に終了する。ローンチ後の事後オプトインについては、詳細がローンチ前に発表される予定だ。ちなみに、スナップショットにて保持されているXEM残高は、Symbolリリース後6年間請求が可能という。

オプトインの方法については、個人でXEMを保有している場合は、Symbolのオプトインモジュールが追加されている最新版のNEMウォレットをダウンロードし、オプトインを実施する必要がある。オプトインは、モバイル版のウォレットでも可能という。

日本国内の暗号資産取引所による対応

また、暗号資産取引所にてXEMを保有している場合は、取引所により対応が異なるので各自確認をする必要がある。日本国内においてNEMを取り扱うCoincheckGMOコインは、取引所にてオプトインを実施することが発表されている。両取引所を利用するNEM保有者は、特に何もする必要はない。bitFlyerZaifは、顧客の利便性を最優先に考え対応方針の検討中を表明、詳細を追って知らせるとしている。Huobi Japanは、2020年11月9日時点では未定。

ローンチ日は定期的にアップデート予定

Symbolは、ローンチとなる12月17日に向けて現在もなお作業中であり、コアサーバーの問題の解決、SDK+RESTの解決を進めている。その後、デスクトップウォレットのリリースや、現在も進行中となっているパブリックSymbolネットワークの作成、試運転、スモークテストなどが実施される予定だ。

今後もローンチ日については、定期的にアップデートされることになっている。万が一、ローンチ日の変更が発生した場合は、すみやかに報告されるが、その場合は、スナップショットとローンチ前のオプトイン終了についても変更されることになる。

必要項目を入力するだけでデジタル遺言書を作成しブロックチェーンに保存できる新アプリ「Husime.com」公開

クラウドデータやAIデータなどのデータアセットマネジメント事業を展開するAOSデータは11月4日、音声入力で簡単にデジタル遺言を作成しブロックチェーンに保存できるスマートフォン向けアプリ「Husime.com」(iOS版/Android版)の公開を発表した

「デジタル遺言」機能

「デジタル遺言」機能を搭載するHusime.comは、スマートフォンやタブレットを使用し、必要項目を入力するだけで誰でもデジタル遺言書を作成できるアプリ。音声入力による入力も行えるため、デジタル機器に不慣れなシニアもストレスなく操作できる。必要項目を順に入力していくことで、自動でデジタル遺言書ができあがるという。必要項目を入力するだけでデジタル遺言書を作成しブロックチェーンに保存できる新アプリ「Husime.com」公開

完成した遺言書は、ブロックチェーンに保存されるため、第三者には改ざんできなくなり、遺言書を永遠に残すことができる。ブロックチェーンにて保存された遺言書は遺族に伝えるまで安全に保管されると同時に、通知設定において使用者が遺族を指定してチェック頻度を選択し、健康状態をチェックしていく中で問題が発生した場合に遺族に遺言書を送付する仕組みになっている。

さらにファイル登録機能では、自筆、音声、ビデオなどで作成された遺言関連ファイルをアップロードすることも可能。

自分史として人生の記録を残せる「ライフストーリー」機能

また、遺言書のほかにも「ライフストーリー」機能では、自分史として人生の記録を残すことができる。人生の節目となったイベントなどを入力しながら作成した自分史もまた、遺言書と同様にブロックチェーンに保存することが可能。ライフストーリーは、本人や家族がいつでも見ることができるという。

Husime.comのサイト内には、他の人のライフストーリーも公開。それらを四dなり、コメントを残せるコミュニティとなっている。

ちなみにAOSデータは、ブロックチェーン技術にマルチブロックチェーンという手法を採用している。ブロックチェーンは、さまざまな種類があり、それぞれに性質や特徴、コストなどが大きく異なるため、同社はサービスや機能に応じて、ブロックチェーンを変えているという。ひとつのシステム内でも、複数の異なったブロックチェーンを採用することもあるという。

遺言や終活に関する情報を集めたポータル・サイトの機能も

アプリは、デジタル遺言やライフストーリー機能のほかにも、遺言や終活に関するニュースを集めたポータル・サイトの機能も備えており、シニア世代のセカンドライフに関連する情報の提供も行っている。関連ニュースでは、遺言書の作成方法や遺言書の法的な取り扱いについて学べる法令情報を提供している。

実用面においては、行政・専門家などに相談のコーナーにおいて、住まいの地域を指定することで、最寄りの公証役場や法務局情報、弁護士情報、司法書士・行政書士の情報を知ることもできる。

アプリは、AOSデータのデータ復旧サービスセンターとも連携しており、その他のサービスとしてデジタル遺品復旧・整理サービスを利用することも可能。デジタル遺品復旧・整理サービスでは、故人が残したデジタル遺品となってしまった生前の記録を復旧し整理、故人の思い出の写真や動画データ、アドレス帳、メールの履歴などを復旧させることができる。

なお、Husime.comを利用するには、メールアドレスによるIDとパスワードの登録が必要となる。また、遺言を残すという性質上、住所、氏名、遺言などを残したい相手や家族の氏名などの登録が必須になっている。

NFTマーケットプレイスWAXがアタリと提携、レトロゲームデジタルアイテムを販売

グローバルにNFT(Non Fungible Token。ノン ファンジブル トークン)マーケットプレイスを展開するWorldwide AsseteXchange(WAX)とビデオゲーム界の老舗メーカーAtari(アタリ)が提携。WAX上でNFTとして発行されるデジタルアイテム「Atari Collectibles」について、11月5日より販売を開始した。NFTマーケットプレイスWAXがアタリと提携、レトロゲームデジタルアイテムを販売

Atari Collectiblesは、約40年前にAtariから発売されたレトロゲームの黄金時代を築き上げた数々のゲームのオリジナルボックスアート、モーション、ゲームグラフィクスに3D要素を加え作成した、NFTデジタルグッズ。レトロゲームをモチーフにした、デジタル化されたトレーディングカードのような商品となる。

ユーザーは、WAXを通じてランダムに販売されるNFTデジタルグッズを購入し、コレクションとして収集できる。マーケットプレイスでは、重複したNFTデジタルグッズの交換・売買など、他のコレクターとの取引が可能。また、ブロックチェーン上に発行されたNFTであることから、発行数やレアリティの詳細、オーナー名、取引履歴(所有権の移転記録)などが記録され、誰でも閲覧できるようになっている。

ちなみにAtari Collectiblesには、そのレアリティからBase(コア)、Laminated(アンコモン)、Build Up(レア)、Spin(スーパーレア)、Gold Edition(スーパーレア)、Collector’s Edition(ウルトラレア)の6段階の希少度が存在する。マーケットプレイスでは、デジタルグッズの所有者に対してコレクションを取引したいといったオファーも出せる。NFTマーケットプレイスWAXがアタリと提携、レトロゲームデジタルアイテムを販売

Atari Collectiblesを購入するには、WAXにアクセスしWAXウォレットを作成する必要がある。Atari Collectiblesは、標準パック(10ボックス、9.99ドル)、メガパック(30ボックス、26.99ドル)、アルティメットパック(50ボックス、39.99ドル)が用意されており、それぞれ米ドルで購入できる。ちなみに手に入れNFTもすべて、WAXウォレットを介してコレクションを確認する仕様になっている。

また、WAXのマーケットプレイスにてコレクションを取引する場合は、WAXが発行している暗号資産WAXトークンが必要になる。WAXトークンは、WAXウォレットより決済プラットフォームMoonPayやSimplexを介し購入できるものの、現時点では日本からの購入は不可となっている。残念ながら、日本にてAtari Collectiblesを手に入れるには、まだまだかなりの障壁がありそうだ。

WAXの前身は、「CS:GO」のゲームスキンの売買・取引を手かげてきたOPSkins

数多くのNFTを取り扱うWAXは、これまでのべ75万点を超えるNFTを取り扱ってきた。マーケットプレイスの売上高は急増しており、まもなく総売上が200万ドル(2億円相当)に達するという。WAXの前身は、世界的に有名なFPS(一人称視点シューティング)ゲーム「カウンターストライク:グローバルオフェンシブ」(CS:GO)のゲームスキンの売買・取引を手かげてきたOPSkinsである。

CS:GOのスキンデータの取引などで拡大してきたOPSkinsは、CS:GOのパブリッシャーでゲーム配信プラットフォームSteam.comの運営会社Valveと競合。やがて多くの衝突を起こしてきたことから、プラットフォームの変更を余儀なくされた(詳細は割愛)。そのため、販売・取引が可能なその他のデジタルアイテムを模索することになり、ブロックチェーンおよびNFTにたどり着いた(OPSkinsはWAXに統合)。

EOSをベースとするWAXブロックチェーン

WAXは当初、イーサリアム(Ethereum)によるNFTを検討したものの、イーサリアムのボラティリティの激しさや手数料の高騰などが問題になることから、EOSのコア開発者の協力を経てEOSをベースとしたオリジナルのWAXブロックチェーンを開発した。

イーサリアムなどでは、ERC-721標準やERC-1155標準に準拠し発行されたトークンのみがNFTとして取り扱われるが、WAXはゲームアイテムなどの発行に特化したブロックチェーンとして設計されたこともあり、発行されたトークンそのものがNFTとして扱えるという特徴を備える。

WAXブロックチェーンのネイティブトークンが、WAXトークンである。マーケットプレイスにてWAXトークンを使用するのは、価格や手数料の安定が目的であり、ユーザーが暗号資産のボラティリティなどを気にせずに取引できる仕様になっている。

WAXは、ブロック生産を管理するためにWAXギルド(ブロックプロデューサーとも呼ばれている)のグループに依存するDPoS(Delegated Proof of Stake)をコンセンサスアルゴリズムとしている。WAXステーキングによりリワードを獲得できる。リワードは、ギルドの選択とブロックチェーン改善提案へのコミュニティの参加を増やすために設計された投票と報酬のシステムによって構成されている。トークン保有者は、投票することにより、WAXステーキングリワードにおいて毎日WAXトークンを獲得できるという。ゲーム業界においては、注目されるブロックチェーンのひとつになっている。

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カテゴリー: ブロックチェーン
タグ: AtariEOSEthereum(製品・サービス)AOSデータNFTSymbolDPoSデジタル遺言書NEM(製品・サービス)WAX

デジタル遺言のススメ

このような記事を書くことにならなければ、どんなによかったかと思う。でも、最近こういったことを意識せざるを得ない、不幸な状況に遭遇してしまった。この時代における死というものが、複雑で困難な、技術的にもやっかいな状況をもたらすことがあることにも気付かされた。言うまでもなく、遺言は書いておくべきだ。遺志は文書にしておくべきなのだ。しかしほとんどの遺言は、故人の財産の処分方法を指示するものに過ぎない。もしあなたがいなくなったとき、あなたの人生の一面でもある、デジタル世界のものはどうなってしまうのか?

「デジタル遺言」や「デジタル遺産相続」といったものについての優れたガイドは、ネット上にもいろいろある。その中には、FacebookやGoogleのアカウントをどうすべきか、といったことが書かれている。そうしたリンク先にアクセスして、このようなテーマについて詳しく調べておくことをお勧めする。とりわけ、2、3の点については、しっかりと意識しておく価値があると思われる。

1つは、こうした用途にも、LastPassや、1Passwordといったパスワードマネージャの利用が有効であるということ。まず、それによって、あなたが利用しているオンラインアカウントの一覧がすぐに分かる。またそうしたサービスは、リカバリ機能を内蔵しているので、あなたの遺族や相続人に後を託すことができる。私が個人的に利用しているLastPassは、実際に「パスワードのデジタル遺言を準備する」ための詳細なガイドを用意している。1Passwordの場合には、この目的で利用するためのサードパーティによるガイドが存在している。

もう1つは、2段階認証の問題だ。もしも、事故に遭って、スマホやYubiKeyなども破壊してしまったとしたらどうだろう? あるいは、相続人がスマホのパスコードを解除できない場合にはどうなるのだろう? そうした状況に対しては、2FAバックアップコードを作成して、パスワードマネージャーの緊急リカバリキットに追加しておくのが有効だ。

技術的なレベルが高い人ほど、デジタル的な後処理は複雑なものになる。ほとんどの人にとって、問題となるのは電子メール、ソーシャルメディア、写真くらいのもの。しかし、技術的な仕事をしている人、特にデベロッパーなら、状況はもっとずっと複雑だ。まず、独自のドメインを持っているか? あなたの相続人は、そのドメインについて、さらにそれを登録したのがどこなのか知っているか?その相続人は、技術に明るいか? そうでない場合、彼らが状況を把握する前に、ドメインの有効期限が切れてしまうことも考えられる。あなたは、AWSやGCP、あるいはDigital Ocean上で実行しているサービスを所有しているか? もしくは、プライベートのGitHubリポジトリを持っているか? あるいは無視できないほどの数のスター、フォーク、イシュー、そしてWikiページを伴ったパブリックなリポジトリを持っているか? また、Slackのワークスペースを管理しているか?

上に挙げたようなことに心当たりがあるのなら、独立した「技術的遺言執行人」を指名した方がいいだろう。そうしたことをどう処理すべきか、執行人に指示を預けておくのだ。技術に詳しくない人は、仮にそうしたものにアクセスできたとしても、指示の意味を理解できないだろう。事前のわずかな準備が、あなたが遺したものを処理しなければならない人の仕事を、大幅にやりやすくすることがあるものだ。

最後に、あなたが個人的に保有しているかもしれない暗号通貨はどうだろう? 一般的に、暗号通貨のウォレットには、何らかのリカバリシードが付属している。あなたは、それをどこかの貸金庫に保管しているだろうか? あなたの相続人は、その貸金庫について知っているだろうか? もしあなたが、相続人にビットコインを引き継いでもらいたいなら、それについて知らせておかなければならない。もちろん、これにはセキュリティ上の代償もある。相続の対象となる金額によって、どれくらい用心すればいいのか、という程度も変わってくるだろう。

まとめておく。デジタル遺言について、さらによく調べ、実際に作成しておこう。どれかのパスワードマネージャーを利用しよう。それは、あなたのオンラインアカウントの明細としても機能する。そして、相続人が緊急用のリカバリキーにアクセスできるようにしておこう。相続人には、2FAバックアップコードも渡しておこう。もしあれば、暗号通貨のウォレットのリカバリシードについても知らせておく。また必要に応じて、技術的な遺言執行者を指名する。そして、これは非常に重要なことだが、何人かの信頼できる人に、あなたがしたことをすべて確実に知らせておこう。そうしておかないと、あまり意味がないのだ。

場合によっては、何らかのハードウェアの消失や災害に遭遇し、このような対策を取っていたことに自ら感謝したいような気になることもあるだろう。そういうことがなかったとしても、あなたの相続人は、間違いなくあなたに感謝するはずだ。私たちは誰も、突然何の前触れもなく、自分がこの世からいなくなってしまうとは考えていない。しかし私は、はっきりと言っておきたい。私が最近経験した残酷な現実からも分かるように、そうしたことは起こるのだ。準備は怠らないように。

画像クレジット:パブリックドメインライセンスによるWikimedia Commons

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(翻訳:Fumihiko Shibata)