創業1年目で共同創業者が去り一人に、絶望の日々を抜け出し美容D2Cで再挑戦

「仕事が忙しくて肌荒れしてしまっていた」という自身の経験から、カスタマイズサプリのD2Cブランド「FUJIMI」(フジミ)を始めたトリコの藤井香那氏。

FUJIMIはサイト上で無料の肌診断が受けられる。約2000億とおり以上の診断結果から、ユーザーの肌状態に合ったサプリメントやフェイスマスクをカスタマイズされ自宅に届く仕組みだ。

藤井氏が起業家を志したのは2017年。インターン先での社内起業を経て、自己資金で独立・起業した。共同創業者のエンジニアとメディア事業を展開していたが、伸び率が悪く早々に解散。「一人になってしまったときは絶望しかなかった。アニメを見て引きこもりの日々でした」と話す。

その後にピボットを決意。事業ピボットから10カ月間のプロダクト開発を経て、どのようにFUJIMIが誕生したのか。その道のりを聞いた。

藤井香那(@yuzukosyo_oden
1995年生まれ。横浜国立大学在学中にスタートアップの立ち上げに参加しセルアウトを経験する。その後、ユナイテッドの子会社を設立しアプリを運営。2018年4月よりトリコを立ち上げ、2019年3月にカスタマイズサプリ「FUJIMI」をリリース。

インターン先のセルアウトを経験し、起業家を志す

「大学1年生の冬に、大学の先輩が起業したゴロー(スマートフォン向けのアドテク事業やコンテンツ事業を展開)でインターンをはじめました。デザイナー志望だったので、学生時代はDeNAやGoodpatch、Cookpadのデザイナーインターンも並行して参加していて。今思えばかなり忙しい学生生活でしたね(笑)」。

大学4年生になった2017年、ゴローがユナイテッドにの子会社になり、アラン・プロダクツに社名が変更されることになった。この出来事が起業家を志す大きなきっかけとなる。

「入社当時は数人だった会社がたった2〜3年で大きな組織になったのを目の当たりにして、とても衝撃を受けました。それから、自分も経営に携わる立場になってみたいと思うようになったんです」。

起業家意識が芽生えた藤井氏はユナイテッドの社内起業支援制度を利用し、チャット型小説アプリ「ちょこっと」を立ち上げたが、うまくはいかなかった。

「『DMM TELLER』をはじめ、同タイミングで競合が一気に出てくる中、ユーザー数を伸ばすことができず。収益化に時間がかかってしまったため、1年でクローズしユナイテッドに回収されました」。

この経験から「事業にも採用にもすべて自分で責任を持って全うしたい」と思い、自己資金で起業することを決める。

初めての起業も方向性が合わず共同創業者が去り、アニメを見て引きこもる日々

2018年4月、エンジニアと共同出資をして創業。メディア事業を展開していたが売上が伸びず、プロジェクトの進め方で方向性が合わないのも相まって、1年も経たず解散してしまう。

「このときは本当にどん底で……。絶望の中、ずっと引きこもってアニメを見ていました。一人の期間中は、インターンの経験を生かし美容に関するキュレーションメディアを運営していました。

アフィリエイトで月100万円以上の売上はあったのですが、自分の納得できる事業ではなかったです。なぜなら、やっていることがインターン時代と変わらず何も成長していなかったから。自分はどうしたいのか、ユーザーはどのようなことを求めているのか、そんなことを考える日々でした」。

そんななか自身が肌荒れにも悩んでいたことから「本当に自分が使いたいと思うからこそお客様にも心の底からおすすめできる美容スキンケアアイテムを作りたい」と思い、再び事業を構想する。

「約10カ月かけてカスタマイズサプリを開発しました。その間にアラン・プロダクツがバイアウトされる前くらいの時に、同じシェアオフィスにいて当時から仲の良かった他社の女性デザイナーから久しぶりに連絡がきて。彼女と仕事の話をしているうちに事業に参画してくれることになりました。さらに彼女が紹介してくれた女性デザイナーも創業メンバーとしてジョインしてくれました」。

全員デザイナーという異色のメンバー。バンドで言ったらベースが3人のようなもの。

「そうですね(笑)。でも人がいないと事業は動かせません。デザインにとどまらず、それぞれがメディア運用、マーケティング、ディレクター、在庫管理などいろいろな業務を兼任したことで、一人ひとりのパフォーマンスの幅を広げることができました。また、全員デザイナーだからこそプロダクトやコーポレートサイト、InstagramやLPのクリエイティブはすべてインハウス。こだわりを持って作ることができています」。

起業家やVCが集まるシェアハウスのコミュニティからアドバイザーを見つける

サプリのD2Cは商品開発から製造、加工、流通までかなりの時間と費用を要する。その中でも特に欠かせないのが欠かせないのは製品のクオリティだが、FUJIMIは開発段階から機能性表示食品検定協会の理事を務めるサプリの専門家がアドバイザーとして関わっている。

プロダクトのない段階でなぜ、知名度のまだ低いスタートアップ企業がアドバイザーから協力を得ることができたのだろうか。

「当時、起業家やVCが多く集まるシェアハウスに住んでいました。そのコミュニティで事業の相談をしたら、まずアドバイザーの方を紹介してもらうことができました」。

「そして、『サプリはうさん臭くてダサいというイメージが根強い。でももっとおしゃれで効果的で、自分も飲みたいと思えるものを作りたい』と素直に話したんです。そしたら、『自分が挑戦したかったけれど実現できなかったことだから応援したい』と言ってくれました」。

アドバイザーの方とは論文なども参考にして、どのような組み合わせに効果があるのかを一緒に分析。10カ月かけて何度も試行錯誤を重ね開発に取り組んだ。

プロダクトが存在しないときに3000万円を調達

写真に向かって左端がXTech Venturesの手嶋浩己氏、右端がバルクオム代表の野口卓也氏

さらにプロダクトが存在しない2018年の段階で3,000万円の資金調達に成功している。調達先はXTech Venturesとバルクオム代表の野口卓也氏だ。

「XTech Venturesの手嶋さんはインターン時代の企業先でずっとお世話になっていました。私の事業へのコミットメントや経営方針などをずっと見ていていただいたので、出資の依頼をした際すぐに前向きなお返事をいただきました。手嶋さんから野口さんを紹介していただき、累計3000万円を調達。お二人のおかげで商品開発とマーケティングを強化することができました」。

2019年2月にクラウドファンディングを実施し集まった資金は254万円。目的はニーズ調査だったが美容感度の高い女性たちがSNSで話題になり、初期ユーザーを獲得にも成功した。

2020年2月にはカスタマイズできるフェイスマスクが誕生し、3月には初のポップアップストアも出店している。

「徐々にブランド認知が上がっているのを感じます。今後はリアル店舗展開も見据えていますが、集客に関しては引き続きオンラインでのリーチを徹底しようと思っています。今後もユーザーに寄り添いながら最適な方法で商品を届けていきたいです」。

肌診断を軸にしたカスタマイズサプリD2Cの「FUJIMI」が新商品としてフェイスマスクを発売へ

肌診断を軸にカスタマイズ処方を提案するD2Cブランド「FUJIMI」を展開するトリコは2月27日、新プロダクトとしてカスタマイズフェイスマスク「FUJIMI BEAUTY FACE MASK」の予約販売をスタートした。

FUJIMIの特徴はオンライン上で実施する約20問の肌診断の結果をもとに、ユーザーごとにカスタマイズした商品を届けていること。睡眠時間や食生活などに関する質問を通じて今の肌の状態をチャートやスコアでわかりやすく可視化し、なりたい肌の方向性を見極めた上で個々にあった処方を提案する。

今回FUJIMIが開発したカスタマイズフェイスマスクは2層式となっていて、肌診断の結果に合わせて処方された2種類の美容液を使用直前に自身で混ぜ合わせて使用する。

パッケージ上部の第一美容液に含まれるのは、今の肌の課題に対して効果的にアプローチする「トラブル修復特化型」の美容液成分。たとえば保湿成分の”ヒアルロン酸”や肌荒れ防止効果などを持つ”パンテノール”などが該当する。

もう一方のパッケージ下部の第二美容液には「なりたい肌を叶えるため」に必要な美容液を配合しており、保湿力の高い”シロキクラゲ多糖体”、肌を正常な状態に戻す鎮静効果の高い”ボタンエキス”などが含まれるという。

香りについてもフレッシュマンダリンやフローズンフローラルなど3種類の中から好みや気分に合わせてカスタマイズできる。肌の状態に応じて肌診断を再度実施することはもちろん、同じ診断内容で香りだけ変更して楽しむことも可能だ。

料金は1箱6枚入りで6400円(税、送料別)、定期購入の場合は4980円(税別、送料は無料)。本日から予約販売をスタートし、3月16日より一般販売を始める予定だ。

FUJIMIが第一弾プロダクトとして昨年4月に提供を開始したカスタマイズサプリメントでは、2020年1月末までに約40万人が肌診断を実施済み。昨年10月に1.5億円を調達した時と比べても、ユーザーの翌月継続率は引き続き90%以上を保っているほか、新規顧客も純増しサプリメント単体で月間売上は約3倍に伸びているという。

第二弾となるフェイスマスクではその40万人の診断結果をベースとしてユーザーが必要としている成分を厳選。サプリメントが体の内側からアプローチする商品だったのに対し、今回は外側からケアできるアイテムとして開発した。

トリコによるとフェイスマスクを選んだ理由としては、サプリと同様に既存のスキンケアにプラスケアとして使用できるのも大きいそう。加えて他ブランドへのスイッチングコストが低い商品のため、このプロダクトをきっかけに新規ユーザーの獲得も見込んでいる。

もちろんFUJIMIにおいても乗り換えのリスクはあるが「肌診断で処方を提案するので、その時の悩みに合わせた処方に組み直すことが可能になり、その分LTVをあげることができると考えている」とのことだった。

「調達のタイミングから仕込んでいたFUJIMIの第二プロダクトであるフェイスマスクは、価格的にもサプリより幅広い年齢層の方にアプローチできると考えています。またFUJIMIの共通の肌診断を通して、サプリだけでなく複数プロダクトを提供できることによるCPA改善・クロスセルを狙います。今後も、カスタマイズスキンケアの領域で新プロダクト開発を進め、FUJIMIのブランド認知拡大を目指します」(トリコ代表取締役社長の藤井香那氏)

肌診断を軸にカスタマイズした美容サプリをサブスク型で提供、「FUJIMI」運営が1.5億円を調達

肌診断を軸にしたカスタマイズサプリ「FUJIMI」を展開するトリコは10月23日、ポーラ・オルビスホールディングスとXTech Venturesを引受先とした第三者割当増資により1.5億円を調達したことを明らかにした。

同社では調達した資金を活用してFUJIMIのさらなる販売促進と認知拡大を目指していく計画。ポップアップストアやリアル店舗などオフラインチャネルの開設に加えて、新商品の開発やメディア事業にも力を入れていくという。

トリコは2018年4月の創業。今回の資金調達はプレシリーズAラウンドに当たるもので、今年4月にはXTech Venturesとバルクオム代表取締役の野口卓也氏から3000万円を調達している。

約20問の肌診断で、肌に合ったサプリをカスタマイズ処方

冒頭でも触れた通り、FUJIMIは肌診断の結果を基にユーザー1人1人の肌に合わせた美容サプリをカスタマイズ処方し、サブスクリプション形式で提供する。

使い方は簡単で、ユーザーはオンライン上で「ほおに触れた時の肌の感触は?」「化粧のノリは?」など約20問の質問に答えていくだけだ。FUJIMIではビタミンACE、ビタミンB、コラーゲン、プラセンタなど11種類のサプリを用意していて、肌診断の結果からユーザーごとに5種類をピックアップ。それを1袋5粒入りのパック(1日分)にして、30日分を1箱にまとめて届ける。

料金は1ヵ月分が6400円の定額モデル(単発で購入することも可能)。現時点でユーザー自身がサプリの内容を選ぶことはできないけれど、肌診断をやり直すことでその時々の肌の状態に合わせたサプリを購入することができる。

トリコ代表取締役社長の藤井香那氏によると「くすみや乾燥、ニキビ、シワ、シミなど人ごとに様々な肌の悩みを抱える中で、適切なアプローチができるようにサプリの開発や種類の絞り込みにはかなり時間をかけた」そうで、開発前には120人以上の女性にヒアリングして悩みを研究してきた。

その上で米国ISNFサプリメントアドバイザー資格を持ち、機能性表示食品検定協会の理事を務めるサプリメントの専門家をアドバイザーとして迎え、1万以上ある国内外の肌に関する研究論文などをもとにしながら11種類のサプリを調合。肌診断のアルゴリズムについても同様に専門家の知見を借りながら開発を進めてきたという。

現在のメインターゲットは美容に気を使う30〜40代の女性。年齢と共に肌の状況が変わり、スキンケアの方法もステップアップが必要になる中で「外側だけでなく内側からのケア」に意識を向けている層に訴求をしていく。

「そもそも何を飲めばいいかわからないという人にとっては、肌診断を通して自分の肌に合ったサプリが見つかるのが特徴。美容意識が高く自身でビタミンやミネラルなどのサプリを取っている場合でも、それぞれボトルが分かれているので毎回何箱も開けて飲むのは大変だし、自分に合うものを何種類も試しながら探すのは手間もかかる。FUJIMIでは必要な5粒のサプリを1日分ごとに包装しているので持ち運びやすいし、飲みやすい」(藤井氏)

診断を実施するとその結果に合わせた5つのサプリのほか、肌の状態を示したチャートやアドバイスなどが表示される

今年の4月からスタートしたサービスのためまだまだ認知度は限られるものの、実際に使ったユーザーの翌月継続率は90%以上。参考までに、これまで提供してきたサプリの数は累計で100万粒を超えているそうだ。

トリコではInstagramで12万人以上のフォロワーを抱えるメディア「SkieNa(スキーナ)」も展開していて、同メディアも強化しながらより多くのユーザーにアプローチしていくことを目指す。

今後は新商品の開発やオフライン展開を強化

FUJIMIのアイデアはもともとトリコで美容系のメディアを展開していた時に生まれたものだ。

藤井氏は学生時代に「ヘアラボ」などメディア事業を手がけるアラン・プロダクツ(当時の社名はゴロー、2016年にユナイテッドが子会社化)でインターンをした後、ユナイテッドにジョイン。同社の社内起業支援制度を活用して子会社の代表を務めた経験もある。

トリコのメンバー。前列左から2番目が代表取締役社長の藤井香那氏

自己資本で立ち上げたトリコでは化粧品やダイエット食品、健康食品などの情報を扱うWebメディアから事業をスタート。そのサイトでたくさんの商品の記事を書くうちに「美容への興味が高まる一方で、自分自身が本当に買いたいという商品があまりなかった」ことから、それならば自分で作ってしまおうとFUJIMIの構想が生まれた。

「スキンケアに関する商品は外側からつけるタイプのものが多いが、それだけでは0.02ミリの角質層までしか届かずケアとしては足りないのではないかと体感的に思っていた。ビタミンやオイルといった必要な美容成分を(サプリを通じて)内側から取れることを勉強して、『内側からのスキンケア』は市場としてもまだ空いているし、チャレンジできる余地があると考え開発を進めてきた」(藤井氏)

グローバルで見ると、サプリのパーソナライズD2Cとしてはゴールドマンサックスなどから累計で4000万ドル以上を調達している「Care/of」のようなプレイヤーも出てきていて、トリコでもベンチマークの1つとしているそうだ。

商材としてもパーソナライズ化やECでのサブスクリプションモデルとの相性が良いこともあり、現在のビジネスモデルを採用。構造はシンプルだが、その分プロダクトの設計やデザインにはかなりこだわりを持って作ってきた。

トリコは藤井氏を含めて3人の共同創業者が全員デザイナーで、プロダクトやWebサイトなどのクリエイティブは全て社内のメンバーが担当。「サプリメントについては『ダサい』『胡散臭い』などマイナスなイメージを持っている人もいるが、ビジュアルを変えて『持っているだけで女性のテンションが上がるようなもの』を目指している」(藤井氏)という。

まずは美容領域からスタートし、今後はFUJIMIブランドの商品ラインナップを増やしていく方針。すでに現在の肌診断結果を用いてサプリとは別の商品を提案するための準備も始めている。

またトリコではラインナップの拡大と合わせて、ポップアップストアやリアル店舗の出店などオフラインでの顧客との接点作りも進めながら、強固なブランドの確立を目指していく。

「OEMで工場にお願いして作ってもらっているので、他社が似たような商品を開発することもできる。そういう意味では中長期的に独自のブランドを確立させていくことが重要。今はまだブランドにもなっていないので、まずは今回調達した資金も活用しながらブランド化に繋がるような取り組みに力を入れていきたい」(藤井氏)