アフリカのシリコンバレーに?同地域のテック企業向けに憲章都市を構築するリン・アボジ氏の計画

アフリカの都市、特にサハラ郊外の都市は、世界でも最速の都市成長速度を誇っている。しかし、超過密、混雑、インフラ、電力、貧弱な統治などの課題を抱えているため、都市環境でアフリカの平均的な生活水準を提供するという点で、これらの都市は限界に達してしまった感がある。

一部の専門家は、憲章都市が解決策をもたらしてくれると考えている。憲章都市には新しい統治システムを作成するための特別な権限が付与され、都市の役人は経済規制におけるベストプラクティスを採用できる。

憲章都市は通常、都市開発業者とホスト国間の官民パートナーシップによって実現される。世界には憲章都市として成功している例がいくつかあるが(シンガポール、深セン市、ドバイなど)、大半は予想を下回る成果しか上げていないか、失敗に終わっている。ナイジェリアでは特にそうだ。

例えばEko Atlantic(エコ・アトランティック)というラゴス近郊の特殊な構造の都市は、150万人の人口の大半が家を買う余裕がないエリアで25万人以上に住宅を供給する計画だ。2009年に始まったこのプロジェクトは現在も継続中で、住宅を供給するためとはいえ、新規開発区域周辺の沿海部に住む数万人に立ち退きを迫っている。

ナイジェリアの経済特別区(SEZ:国内の他の地域と異なるビジネスや商取引に関する独自の法律が施行され、税の優遇措置、企業活動への刺激策、規制面での改革などが実施される地域)も苦戦を強いられている。例えば16500ヘクタールのLekki(レッキ)自由貿易地域は期待されたような成果を上げられていない。

この2つの計画が作った前例は、実はもっと重要な問題を浮き彫りにしている。それは、憲章都市とSEZはホスト国の危機や景気低迷による影響から逃れられないという現実だ。特に貧困国ではその傾向が強い。

Talent City(タレントシティ)プロジェクトに対して懐疑的な見方があるのもそのせいだ。タレントシティプロジェクトは、テックプロフェッショナル向けの未来型憲章都市のことで、アフリカのスタートアップに投資するファンドや共同体の管理企業Future Africa(ヒューチャーアフリカ)によって2020年1月に発表された。しかし、このような懐疑的な見方に対し、タレントシティは、この計画都市は「雇用を創出し、アフリカのテクノロジー、イノベーション、デジタル経済を推進する人材を引きつける」ことに重点を置いているため成功すると確信している。

タレントシティの声明には、タレントシティプロジェクトの都市は自由貿易地域内で、独自の「生産性を重視した、企業家中心の規制や条例」によって管理されると記載されている。

アフリカ諸国はテック向けの憲章都市を必要としているか?

この発表から2年が経過した。まだ建造物は1つも建設されていないが、 ヒューチャーアフリカのジェネラル・パートナー Iyinoluwa Aboyeji(リノルワ・アボジ)氏とパートナーたちは、Talent Cityの未来をさかんに宣伝し続けている。

プロジェクトの前進はゆっくりではあるが、 タレントシティは最初の場所Talent Cityラゴスの建設を開始するための土地を買収した。Alaro City(アラロシティ:Lekki自由貿易区域にある2000ヘクタール規模の開発エリア)にある72000平米の区域だ。

この最初のプロトタイプ都市には中央のコワーキングキャンパスとさまざまな住宅が建設される予定で、1000人の居住者と2500人のリモートワーカーのホームタウンになる。この数字は変わる可能性があると同社はいう。

TechCrunchとの電話対談で、このプロジェクトを立ち上げたアボジ氏とLuqman Edu(ラクマン・エデュ)氏およびCoco Liu(ココ・リウ)氏が、タレントシティが技術者のために解決したいと考えている3つの主要な問題について説明してくれた。

アボジ氏がAndela(アンデラ)に在籍していた期間、同社はまだテック系人材のインキュベーターで、ハブにエンジニアたちを住まわせていた。2014~2017年の間に、同社はオフィス環境と居住区に重点的に投資した。というのは、ラゴスの大半の不動産開発者はテック系人材向けの不動産を構築する方法を理解していなかったからだ、とアンデラとFlutterwave (フラッターウェーブ)の創業者でもあるアボジ氏はいう。

他のスタートアップたちと同様、アンデラも、電力、インターネット、通勤に関する問題に直面していた。その上、これらのスタートアップたちは、息が詰まるような政府の政策(2020年の配車サービスの禁止、2021年の暗号資産の禁止がすぐに思い浮かぶ)、不安定な政治情勢、安全の問題と戦っている。

「これはアンデラだけの問題ではありません」とアボジ氏はいう。同氏は決済ユニコーンFlutterwave(フラッターウェーブ)の共同創業者でもある。「私は現在、60のポートフォリオ企業(大半はテック企業)と2000万ドル(約22億9000万円)を超える資産を管理する投資会社を経営しています。これらの企業は口を揃えて、インフラの問題は悪化しているだけでなく、解決にかかる費用も上がっていると言っています」。

「この数年で、私がアンデラにいた頃に比べて産業は成長を遂げています。2021年、テック産業はベンチャーキャピタルから14億ドル(約1605億円)を超える資金を調達しました。都市建設の強い意欲はあるものの、ラゴスの起業家たちは平均以下の環境に留まったままであり、生活水準と機能しないシステムに対する大きなストレスを抱えています」。

タレントシティはこの問題を解決できる可能性があるとアボジ氏はいう。

アボジ氏によると、タレントシティはリモートワーク向けに設計されており、ニッチ市場のテック起業家やプロフェッショナル向けに建設されているという。この憲章都市は安定した電力と高速インターネット、イノベーションを実現するのに好ましいポリシー、お互い近接して生活し働く、同じ考えを持つ人々のコミュニティなど、テック系人材のためのインフラを提供する。

アボジ氏は、より大規模なエコシステムであるアラロシティ内に複合施設を建設することで、ポリシーの変更に対する政府のお決まりの反応から憲章都市とその住民を保護することができるといい、それが最終的な成功にとって必要不可欠であると指摘した。

「我々は自分たちが得意とする部分、すなわち、コミュニティとテクノロジーを支援する方向へ進もうとしています。政府と新たに何かを交渉して最初からやり直すつもりはありません」とGoogle(グーグル)とLine(ライン)の前デザイナーで、タレントシティの運営/エクスペリエンス担当責任者Liu(リュー)氏はいう。

「我々が大都市内の自由貿易地域に自身を戦略的に位置づけている理由もそこにあります。つまり、ポリシーとインフラの両面で、我々が属しているエコシステムの両サイドで発生するリスクの影響を受けないようにしたのです」。

アフリカの新しいシリコンバレー?

リュー氏の説明は印象的だ。官民パートナーシップとして建設される他の憲章都市と違って、ラゴスのタレントシティ最初のプロジェクトは政府の参加を排除する意向だ。

タレントシティは、アラロシティとラゴス州政府間ですでに形成されているパートナーシップを活かすことで、その側面(政府とのパートナーシップ)をある程度カバーするつもりだとエデュ氏はいう。そして、同社がこの方針を採用したのは、まずラゴスでさまざまなアイデアを試してから、それをプロトタイプとしてアフリカのさまざまな地域で試す必要があるからだと付け加えた。

「タレントシティ計画はアフリカ全土にスケールします。当社はすでに、現行のプロジェクトがうまく軌道に乗った後、次のプロジェクトをどこで始めるかについて戦略的な話し合いを始めています。当社はアフリカ全土に憲章都市をゼロから構築してきました」とエデュ氏はいう。同氏は不動産サービスと不動産テック企業のオーナーでもあり、現在ナイジェリアの12の州でこれらの企業を運営している。

チームがタレントシティプロジェクトを高く評価している理由は理解できる。だが、ナイジェリアのテックエコシステムは、最前線のラゴスだけでなく、地域都市でも(ラゴスはアフリカのスタートアップ首都であると、今月発行されたStartupBlink(スタートアップブリンク)レポートには記載されている)、ベンチャーキャピタルから数十億ドルの資金を調達しており、インフラ面のあらゆる課題と格闘しながらも、2021年は3つのユニコーン企業を輩出した。

であれば、そもそもTalent Cityは必要なのだろうか?

アボジ氏は、ナイジェリアのテック企業には大量の資金が投入されてはいるが、インフラ面が整備されていないため、オフィスや住宅の不動産価格は高騰しており、タレントシティが改善したいのはこの点だと指摘する。

昔は、創業者やテック系プロフェッショナルたちもラゴス郊外のYaba(ヤバ)をナイジェリアのシリコンバレーとして称賛していた。だが、アンデラやコンガといった大手企業がインフラ不足を理由に2017年に(その後数年で数社が相次いで)ヤバから出ていき、共同体意識が薄れたため、かつては未来のテック都市と言われたヤバの評判に傷がついた。

我々は今、リモートファーストの世界で運営しているが、企業は社員が快適な生活環境を自身で確実に実現するために必要なものを保証できないでいる。スタートアップとテックプロフェッショナルたちはラゴス内で繁栄する別の場所を、とりわけラゴスの島地域などに見つけているが、タレントシティはそうした人材を引き込んで「アフリカのシリコンバレー」になりたいと考えている。

価格設定は、世界の標準的な価格に匹敵する月額家賃と住宅ローンを用意しているため、個人および企業相手に十分に競争力のある価格になっているという。また、いっしょに働くことによる共同社会としての利点もある。

アボジ氏によると、同氏のベンチャーキャピタル会社ヒューチャーアフリカ(リモートファースト企業)も新しい都市に本社を移転する予定だという。ヒューチャーアフリカは今回のプロジェクトの過半数所有者だ。有名な創業者やVCなどの創業居住者(Yele Bademosi(イェレ・バデモシ)Timi Ajiboye(ティミ・アジボエ)Nadayar Enegesi (ナダヤル・エネゲシ)Kola Aina(コラ・アイナ)の各氏はすでに不動産を購入している)がいるため、都市が形を成してくれば、地域のテック企業も同じように移転するだろう。

アンデラとフラッターウェーブの共同創業者、ヒューチャーアフリカの創業パートナー、タレントシティの共同創業者であるリノルワ・アボジ氏。

タレントシティは、コミュニティおよび開発管理のため、アムステルダム本拠のデザイン/アーバニズム企業NLÉおよび不動産業者Jones Lang LaSalle(ジョーンズラングラサール)と提携する予定だ。

憲章都市は Pronomos(プロノモス)Charter Cities Institute(チャーターシティインスティテュート)Ventures Platform(ベンチャーズプラットフォーム)、およびLoftyInc(ロフティインク)の支援を受け、ラゴスプロジェクト用に1300万ドル(約14億9000万円)を超える資金を調達した。しかし、アボジ氏によると、資金調達の取り組みはまだ継続中だという。最初の建設工事は5月開始の予定で、2023年終わりまでには一部の建造物が完成する。

「普通、何もない広大な場所に14億ドル(約1606億円)規模の産業を構築することなどできません。現実離れしていますから。だからこそ、やってみたいという人たちがいます。私もそうした考えに賛同している1人です。しかし、エコシステムにはイメージが必要です」とアボジ氏はいい、イスラエルに行くことをTalent Cityを始める際の影響因子として挙げた。

「重要なのは、このプロジェクトがエコシステムのイメージになることです。人々が集まってテクノロジーに取り組む場所になることです。この場所は大きな可能性を秘めています。当社と反対側には海港があり、空港も約20分のところにあります。間違いなくラゴスの未来になります。ここに最初にやってくるテック企業は本当にワクワクすると思います」。

民間都市の建設を試みるテックリーダーはアボジ氏だけではない。Uber(ウーバー)の前幹部で電動自転車企業Jump(ジャンプ)をモバイルテック大手に売却したRyan Rzepecki(ライアン・レゼペッキ)氏は、2020年に、自治憲章都市に投資して、パンデミックでシリコンバレーに見切りをつけたテック系の人材を受け入れたいと語っていた。

ただし、レゼペッキ氏の目的はアボジ氏とは異なる。The Telegraph(テレグラフ)によるインタビューで同氏は、サンフランシスコのホームレス危機を解決することが目的だと語っている。

「これまでの地域や都市の構築方法は基本的にサステナブルではありません。もっと良い、サステナビリティが高く環境にも優しい新しい場所を構築できる可能性があります」と同氏はインタビューで語っている。

「本当にさまざまな人たちが、こうしたことに関心を持っており、多くの人が、少なくとも私は、広い意味でより良い世界を作りたいと思っています。今の地球は、すべての人にとって物事がうまく機能しているわけではありません。一部には「何か別のことを試してみよう。懐疑的に反応するのはやめよう」と考える人たちがいると思います」。

懐疑的ではない大物投資家も何人かいる。Peter Thiel(ピーター・ティール)氏とMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏はタレントシティを支援しているPronomos(プロノモス)に投資している。成功している憲章都市は政府の後ろ盾を得て建設されたが、未来のテックハブは民間資金を引きつけている。これは、憲章都市の青写真が描かれ世界中に複製されるのも時間の問題であることを示唆している。

画像クレジット:Talent City

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

世界最大級の暗号資産取引所Binanceのチャンポン・ジャオCEO、規制とアフリカでの活動について語る

「CZ」ことChangpeng Zhao(チャンポン・ジャオ)氏は2017年にBinance(バイナンス)を立ち上げたが、一部の情報によると同社はわずか180日で世界最大の暗号資産取引所へと成長した。

Wall Street Journal(ウォールストリート・ジャーナル)によると、Binanceの1日の取引額は760億ドル(約8兆6331億円)で、これはライバル4社の合計額を上回るものである。

2021年上半期、Binanceはアフリカと中東から1億5100万回、ナイジェリアから1100万回のクリックを集めたとWSJは伝えている。Chainalysis(チェイナリシス)によると、2020年7月から2021年6月までに1056億ドル(約12兆円)相当の暗号資産がアフリカ内で取引されており、アフリカにおける暗号取引の活発さがうかがえる。

額面としては1200%以上の成長を遂げているにもかかわらず、この期間に取引された世界中の暗号のうちアフリカはまだ2%しか占めていない。暗号資産、ブロックチェーン、分散型金融がアフリカ大陸で定着しつつある中、Binanceはこれらの活動を推進するリーダーになりたいと考えている。

しかしそれを実現するためには、アフリカ大陸で直面するであろう規制上の課題を考慮する必要がある。ナイジェリアとケニアという特に暗号が盛んな2つの国で、暗号活動が禁止されてしまったからだ。

米国、中国、英国、日本、マレーシア、タイ、EUの規制当局は、近年の無秩序な成長に懸念を抱いており、同社はすでに打撃を受けている。

今回のTechCrunchとのインタビューで、ジャオ氏は、アフリカでの暗号の使用と導入、Binanceの活動、規制に対する同社のスタンスなどについて語ってくれた。

このインタビューはわかりやすくするために編集されている。

TechCrunch:暗号は複数の政府が規制しようとしている産業の1つです。これについてどう思われますか?暗号は規制されるべきでしょうか?

ジャオ氏:規制は暗号産業にとって不可欠であり、この分野に関心を持つ消費者や機関との信頼関係を構築する上で大きな役割を果たします。結局のところ、暗号の大量導入を実現するためには適切な規制が必要不可欠です。私たちは現地の規制当局と積極的に協力し、ユーザーの利益と保護という共通の目的に向かって業界を導くことで、健全な形でこれを促進できると信じています。

当社の考えでは、10%、20%、80%、99%の(暗号)採用を目指すために規制当局が入って来るのは良いことだと思っています。しかし規制が暗号の成長を妨げるのではなく、補完することも同様に重要です。全体的に見て、効果的な規制は消費者を保護すると同時に成長とイノベーションを刺激しますが、一方で、不適切な規制政策は成長を阻害し、時代遅れで効果のないプロセスや制度を保護します。

世界最大の取引所であるBinanceは、なぜ米国やヨーロッパ、中国で多くの規制問題を抱えているのでしょうか?また、それらに対処するためにどのような措置をとっていますか?

どの暗号資産取引所も世界中の規制当局と密接に連携していると思います。業界のリーダーとして、多くの人がこの業界の代名詞のようにしてBinanceを見ています。模範となり、規制当局と連携して共通の目標を前進させる機会を得たという事実を、私たちは軽視することはありません。

私たちが最大の暗号化取引所であるのは、ユーザーが私たちを信頼してくれているからです。ユーザーを守るためのあらゆる決断と行動によって、その信頼を私たちは獲得してきました。私たちは、世界中の業界や規制当局とベストプラクティスを共有したいと考えています。それがより健全な業界の形成につながると信じています。

各国の規制ガイドラインへの対応の一環として、FATF(金融活動作業部会)の定める国際規制「トラベルルール」に対応するためのShyft NetworkのVeriscopeや、ユーザーが個人の納税義務を迅速に果たせるようにするためのTax Reporting Tool APIなどの新製品を発表しました。

また「Futures Leverage for New Accounts」を更新し、複数の市場でアクセスを制限したり、プラットフォーム全体でKYC(顧客確認)の義務化を開始したりするなど、既存のサービスを見直しました。また最近、コンプライアンスに精通したトップクラスの人材を数名採用しました。

私たちは最近、リーダーシップの一例として、標準的なKYC/AML(アンチマネーロンダリング)処置に加えて、業界のプレイヤーの長期的活動を推進し始め、創業者トークンのロック解除のスケジュールを、2~4年から8~10年に延長するよう働きかけています。どこかの規制当局に求められたわけでないのですが、これが業界の健全化につながると信じています。私たちは、ユーザーを保護する方法を常に模索しているのです。

政府はこの取り組みを正しく行っていると思いますか?また、政府はこの新産業についての知識を持ち、その優位性に磨きをかけることができているでしょうか。

ここには絶対的な正解や間違いといったものはなく、キャリブレーションとバランスが重要になります。暗号だけでなく、暗号への規制も新しい概念であり、多くの政府がこの分野をより明確にしようと試みています。

規制当局は、消費者を保護すると同時にイノベーションを促進するという同じミッションを私たちと共有しています。規制当局が業界との最も効果的な関わり方を模索する中、当社は全世界で100%のコンプライアンスを実現することを約束し、すべてのチームがこの実現に向けて休むことなく取り組んでいます。

暗号資産の導入と発展は、自動車のそれと多くの類似点があります。自動車が発明された当初は、道路交通法も信号機も、シートベルトさえもありませんでした。車が道路を走りながら法律やガイドラインが作られていったのです。今日、私たちが当たり前のように使っている枠組みや法律があるからこそ、この強力なテクノロジーが広く安全に使われることができるのです。

暗号は誰もがアクセスできるという点で似ていますが、誤用や悪質な行為を防ぐためにはフレームワークが必要です。業界の継続的な成長のためには、最初の基準を明確にして構築することが重要です。Binanceはそこに積極的に貢献していきたいと考えています。

暗号の規制が懸念されているアフリカに対してBinanceが強気に出ているのはなぜでしょうか。

アフリカ大陸は、暗号資産の導入と発展のためのユニークなチャンスを秘めているため、私たちは常にアフリカに強気で臨んでいます。暗号は国境を越えた支払いや送金(アフリカ国内や国外への送金)、通貨の切り下げなどの問題を解決してくれます。

多くのアフリカ諸国は高い失業率に悩まされていますが、暗号とブロックチェーンは、この若く優秀な大陸に革新的な雇用機会を提供し、アフリカの人々の経済的自由の獲得をサポートしています。

Binanceがローンチしたその初日からアフリカのユーザーが存在しましたし、実際に彼らは比較的アクティブでした。私がウガンダ、トーゴ、ナイジェリア、そしてエチオピアを訪問したのは2018年の初めだったと思いますが、市場のことを少しでも知っておこうと思ってアフリカを少し回りました。そのあとすぐにBinance Ugandaを開設して、これが最初のフィアットゲートウェイになりました。

アフリカでの利用で特に興味深いのは、多くの人は伝統的な金融サービスにアクセスできないため、銀行口座を持つ人の数がかなり少ないということです。しかしだからこそ、暗号が魅力的なのです。

確かに魅力的ですが、アフリカの中央銀行がここ数カ月間、暗号ユーザーを標的にして、銀行が取引を促進するのを禁止しているのはそのためかもしれません。米国や中国などと同様に、彼らが代わりにBinanceを狙い始めたらどうなるでしょうか?

Binanceは規制を歓迎していますし、規制当局や政府と協力してこの新興産業をナビゲートするアプローチをとっており、コンプライアンス義務を重じています。変化し続けるこの分野の政策、規則、法律を積極的に把握するよう常に取り組んでいます。

関連記事:ナイジェリアが中国の足跡を追ってデジタル通貨を試験的に導入

このように、Binanceは規制当局を支援し、公正な競争条件を設定するための最適な方法を見つけたいと考えています。消費者保護は私たち全員にとって重要なことです。私たちは組織として飛躍的に成長してきましたが、規制当局の要請に応じて、特定のプロセスやプロトコルの更新を行っています。

Binanceやその他の暗号プラットフォームが世界中で政府の規制を受けた場合、暗号の採用や成長は鈍化すると思いますか?

いいえ、そうとは思いません。スマートな規制はイノベーションを促進し、ユーザーの安全を守ります。また、規制とイノベーションは相反するものではないということを理解するのも重要です。暗号ユーザーは、NFT、ステーブルコイン、ステーキング、イールドファーミングなどの新しいテクノロジーや手法に安全にアクセスする権利があるのです。

これについては先日発表した「10 Fundamental Rights for Crypto Users(暗号ユーザーの10の基本的権利)」で触れています。暗号の規制は避けられませんが、ユーザーには、自分が選択したブロックチェーンプラットフォームで業界をどのように進化させるべきか、声を共有する権利があります。

アフリカでの暗号化導入を後押ししているものは何だと思いますか?

さまざまな要素が重なり合っているのだと思います。アフリカは独特の課題を抱えたユニークな大陸です。例えばアフリカの多くの国は、常に通貨の切り下げに悩まされているため、ユーザーは切り下げに対する防衛や価値の保存として、暗号やステーブルコインを使用する傾向があります。

送金や海外送金、決済など、国を越えた支払いはかなり困難ですが、暗号はこれを簡単にしてくれます。

アフリカの多くの人々は、富の創出と経済的自由を求めて暗号を始めます。東南アジアやラテンアメリカと同じく、何百万人もの人々が貧困ラインの下で暮らしています。そのため、富を生み出すための革新的で非伝統的な方法を求める人が増えるというのは自然なことです。

アフリカの総人口のうち、銀行口座を持っているのはわずか11%という報告もあります。銀行口座を持たない人の多くは、銀行を通さずに携帯電話を銀行として利用し、直接暗号にアクセスしているのです。

数字つながりの話ですが、最近のWSJの記事によると2021年上半期、ナイジェリアではBinanceに1100万回のクリックがあったそうです。これはアフリカ大陸におけるBinanceユーザーの数ですか?

ウォールストリート・ジャーナルは当社のシステムやユーザー情報へのアクセス権を持っておらず、第三者が提供した推測に基づく統計データを引用しています。外部の第三者が行った推測に基づく分析について、当社はコメントできません。

より多くのアフリカ人がこれまで以上にP2Pを利用するようになった今、Binanceはどのようにしてアフリカのユーザーがプラットフォーム上で暗号資産を安全に取引していることを確認しているのでしょうか?

アフリカの人々が確実に十分な教育を受け、守られていると確信を持てるようにするため、弊社にとってこれは大きなフォーカスになっています。

特にBinanceのP2Pでは、ユーザーの保護と安全が最優先されます。8月時点で40万人以上のアフリカ人を対象に、ユーザー保護からブロックチェーンでのキャリア構築まで、さまざまなテーマで無料の暗号クラスを提供しました。

最近では暗号エスクローサービスなどの新しいリスク管理手段を導入し、またユーザー保護を強化するためにグローバルKYC要件を拡充し、悪質な業者によるシステムの悪用を防ぐために新しいP2P機能を実装しました。

アフリカなどの新興国にとって、暗号資産やブロックチェーンにはどのような変革の可能性があるのでしょうか?

可能性は無限にあり、新興国ではそれがさらに顕著になります。新しい金融インフラ、システム、プロセスが構築され、人々の生活を変え、経済的自由の可能性を生み出します。

また個人的には、GameFi、Sports Fan Tokens、NFTなど、最近主流になっているイノベーションにも大きな可能性を感じています。これらが非常に大きな変革をもたらすことができるのではないでしょうか。

画像クレジット:Binance team

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

ナイジェリアがツイッターの業務停止処分を解除、「条件満たした」

ナイジェリア政府は、ソーシャルメディア大手Twitter(ツイッター)の取り締まりを宣言してから半年以上を経て、Twitterの業務停止処分を解除した。

ナイジェリアのテック監督機関である国家情報技術開発庁(NITDA)のKashifu Inuwa Abdullahi(カシフ・イヌワ・アブドゥラヒ)長官が現地時間1月12日、声明で発表した。アブドゥラヒ氏は、禁止措置後のナイジェリアとTwitterの協議を監督するためにナイジェリア政府が設置した委員会(Technical Committee Nigeria-Twitter Engagement)の議長を担っていた。

関連記事:ナイジェリアが大統領の投稿削除を受けツイッターを無期限停止に

同氏によると、同国の通信・デジタル経済大臣がMuhammadu Buhari(ムハンマド・ブハリ)大統領に宛てて書いたメモを受け、業務停止処分の解除が承認されたという。声明ではまた、西アフリカ時間2022年1月13日午前0時までに直ちに業務停止を解除することが明らかにされた。

「ナイジェリア連邦政府(FGN)は、ムハンマド・ブハリ大統領(GCFR)が、ナイジェリアにおけるTwitterの業務停止を今夜2022年1月13日午前0時から解除することを承認したことを国民に知らせるよう私に指示しています」と声明にはある。「この承認は、通信・デジタル経済名誉大臣であるIsa Ali Ibrahim(イサ・アリ・イブラヒム)教授が大統領に宛てて書いたメモを受けてのものです。メモの中で大臣は、ナイジェリアとTwitterとの協議を監督する委員会の勧告に基づき、解除に対する大統領の承認を要請しています」。

アブドゥラヒ氏はまた、Twitterが「2022年第1四半期中にナイジェリアに法人を設立する」ことに同意したと声明で述べている。声明によると、Twitterの法人設立は、同社が「ナイジェリアへの長期的なコミットメントを示す最初のステップ」とのことだ。

法人設立は、2021年4月にガーナにアフリカ初の拠点を設立したTwitterが、業務停止処分から数カ月後にナイジェリアでの事業を再開するために求められた10の要求のうち満たせなかった3つのうちの1つだ。これは同年8月にナイジェリアのLai Mohammed(ライ・モハメド)情報相が発表した。

ナイジェリアでの現地事務所あるいは法人設立に加え、Twitterが満たせなかった要求は現地での納税、コンテンツや有害ツイート規制のためのナイジェリア政府への協力だった。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nariko Mizoguchi

ナイジェリアのEdTechスタートアップTeesasがプレシードラウンドで約1.82億調達

自身の会社Imose Technologies(イモセ・テクノロジーズ)で7年間電子機器製造に携わった後、Osayi Izedonmwen(オサイ・イゼドンムウェン)氏は、以前から温めていたアイデアを実現するために休暇を取り、ナイジェリアでビデオ授業やその他のデジタル教材を提供するEdTechスタートアップ、Teesas(ティーサス)を立ち上げた。

立ち上げからまだ2カ月も経っていないTeesasは、160万ドル(約1億8200万円)のプレシード資金調達に成功したほど、急成長している。イゼドンムウェン氏は、この出資をもとに、新市場への進出を予定している。学習者と個人授業のチューターをつなぐマーケットプレイスの立ち上げ、製品ラインナップの拡充だ。

「2021年8月頃からベータテストを開始し、11月にAndroid版を本格的にローンチしました。すでにTeesasはGoogle Playストアで15万回以上ダウンロードされており、毎週少なくとも20%ずつ成長しています」とイゼドンムウェン氏はTechCrunchに語った。

Teesasのコンテンツはナイジェリアの国家カリキュラムに沿ったもので、月額6ドル(約680円)からのサブスクで、ライブと録画の両方の形式で学習者に配信されている。通常の学校の授業に加え、現地の言語クラスも提供している。

「ライブ授業では、学習者が苦手とする概念を扱います。学習者は10人、15人という少人数の遠隔授業で先生と一緒に授業を受けるので、個人的な取り組みができ、授業もより厳格になります」とイゼドンムウェン氏はいう。

近い将来、Teesasは12歳までの学習者向けにフルカリキュラムのモジュールを提供する予定だ。

「アプリで全カリキュラムをカバーし、中学受験の準備を整えることができるため、子どもたちが対面式の授業に出席する必要がなくなる未来を予見しています」と彼は述べた。

またTeesasは、2022年前半に学習者が自己発見するための準備をするライフスキルのクラスも導入する予定だ。これは、ナイジェリアではいじめが多発しており、死に至るケースもあることから、いじめ防止のための授業に加えられる。

Teesasは今後、チューターのマーケットプレイスを立ち上げ、フランス語圏、東アフリカ、南部アフリカの新市場への参入を計画している。

Teesasは今後、チューターのマーケットプレイスを立ち上げ、フランス語圏、東アフリカ、南部アフリカの新市場への参入を計画している(画像クレジット:Teesas)

製品開発

Teesasの開発は2020年3月に始まり、プラットフォームの設計と開発には、インドの同業他社のEdTechを大いに参考にし、コンテンツ構成やレッスン提供のベンチマークとした。

「インドに目をつけたのは、Byju(ビジュ)のような大企業がEdTech革命を起こしている先進的な国だからです。実際に現地に行き、時間をかけてモデルを理解し、彼らがやっていることを改善する機会も探しました。そして私たちは土着的適応を試みました」と彼はいう。

彼がここで触れた適応とは、その土地の芸術、食物、動物、文化的慣習、言語などを利用して、学習プロセスを補完することだ。

イゼドンムウェン氏は現在、TeesasのCEOを務める傍ら、携帯電話、タブレット端末、インターネットルーター、ノートパソコンなどの電子機器の製造・組み立てを行うラゴスのテック企業、Imose Technologiesの会長も続けている。

「Teesasは、アフリカの教育の未来に最も大きな影響を与えることになるでしょう。そして、その変革の先頭に立つために全力を尽くしたいと思っています。だからこそ、私はそれに完全に集中しています」と、イゼドンムウェン氏は述べ、次の計画の一部として、フランス語圏、東部および南部アフリカの新市場への参入を確認した。

Imose Technologiesを設立する以前、イゼドンムウェン氏はエンジニアとしての教育を受け、石油・ガス会社のExxonMobil(エクソンモービル)に15年間勤務し、出世し、ナイジェリアのオペレーション・マネージャーだった。

Teesasは、最近、新型コロナの追い風を受けて急成長しているアフリカの新興EdTech産業に賭けている投資家から資金を調達しているEdTechスタートアップの成長リストに加わった。

この分野では、ケニアのKidato(キダト)とCraydel(クレイデル)、ナイジェリアのEdukoya(エデュコヤ)とULesson(ユーレッスン)が新たなプレイヤーとして名を連ねている。

Teesasのラウンドは、Tolaram Group(トララム・グループ)のアフリカマネージングディレクターであるHaresh Aswani(ハレッシュ・アスワニ)氏が主導し、アフリカに特化したベンチャースタジオであるOlivegreen Advisory Partners(オリーブグリーン。アドバイサリー・パートナーズ)やその他のエンジェル投資家が参加している。

「私たちは、イゼドンムウェン氏とTeesasのチームが掲げているミッションを信じていますし、アフリカ全域で質の高い教育へのアクセスを向上させるためにテクノロジーを活用するという課題を解決するのに最も適していると確信しています」とアスワニ氏は述べている。

画像クレジット:Teesas founder and CEO Osayi Izedonmwen / Teesas

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(文:Annie Njanja、翻訳:Yuta Kaminishi)

ナイジェリアのMAXがアフリカ全域への展開とEVインフラ整備へ向けて約35億円を獲得

ナイジェリアのモビリティテクノロジースタートアップ企業、Metro Africa Xpress Inc.(メトロ・アフリカ・エクスプレス、MAX)は、シリーズBで3100万ドル(約35億円)の資金を獲得し、アフリカ大陸の交通セクターの一般化に向け、さらに多くの市場に参入する予定だ。

同スタートアップはTechCrunchに対し、2022年の第1四半期末までにガーナとエジプトに、同年末までにフランス語圏、東部および南部アフリカのその他の市場に進出するために、この資金を使う予定だと語った。また、この資金は、今後2年間で10万人以上のドライバーに車両融資クレジットを拡大するためにも使用される予定だという。

MAXは、2015年にオートバイを使って顧客の注文に応えるデリバリースタートアップとしてスタートし、その後ライドヘイリングに進出、さらに車両サブスクリプションや融資サービスなど、同社の当初のサービスのデータを基に考え出したソリューションを提供している。

同社は2018年に車両融資を導入し、わずか2年余りで、所属するドライバーによる解約率が「ゼロに近い」ほどに下がったとCFOのGuy-Bertrand Njoya(ギ=ベルトラン・ノジョヤ)氏はTechCrunchに語っている。

「我々はドライバーの業務を理解するのに時間をかけました。すると、彼らのほとんどが使用する車両を所有していないことが明らかになったのです」。とノジョヤ氏は述べた。

「そして、ドライバーが抱える根本的な問題は、車両への一貫したアクセスであることが明らかになりました。そこで、大陸全体のモビリティの課題を解決するためには、まず車両へのアクセスの問題を解決しなければならないと考えたのです」と語る。

MAXは現在、電動バイクの設計と組み立てを自社で行っている(画像クレジット:MAX)

MAXの商業銀行パートナーは現在、同社が提供するデータを信用リスク評価として利用し、ドライバーに車両購入ローンを提供している。

同社は、サービスの一部として、新市場で電気自動車のインフラを構築し、同社の顧客層に電気自動車を導入することを計画している。

「これは、高性能な技術とオペレーターを導入することで、モビリティを安全で手頃な価格で利用でき、多くの人に開けた持続可能なものにするという私たちの道のりにおける新たなマイルストーンです。この投資により、大陸の何十万人ものドライバーの生活を変え、国際展開を加速し、モビリティ分野における先駆的な取り組みを継続することができます」と、MAXの共同創業者兼CEOのAdetayo Bamiduro(アデタヨ・バミドゥーロ)氏は述べている。Chinedu Azodoh(チネドゥ・アゾド)氏は、このスタートアップのもう1人の共同創業者だ。

モビリティに関する課題へのソリューションを提供することは、常に同社の事業の中心であり、次に解決したいパズルは、運営コストを削減することでドライバーの収入を拡大することだった。

創業者たちは、電気自動車の導入が自然な次のステップであることをすぐに理解し、2019年にMAXは電気モビリティへの旅をスタートさせたのだ。同社は現在、さまざまなリースや融資オプションを通じて、2輪、3輪、4輪のEVをドライバーに提供している。

「ドライバーが最も気にかけているのは、収入を増やしてまともな生活を送ることなので、これは私たちが提供したかった追加オプションです。というのも、現在、EVはガソリン車よりも費用対効果が高いからです」とノジョヤ氏はいう。

MAXは現在、電動バイクの設計と組み立てを自社で行っている。ノジョヤ氏は、電動バイクを提供するために、大手二輪車メーカーのヤマハを含むエコシステム全体のパートナーと連携していると語った。

「ドライバーのためのクルマへのアクセスや、融資へのアクセスの分野でヤマハと協働しています。私たちの仕事とパートナーシップの成功の証として、ヤマハは今日、過去数年にわたり彼らと行ってきた仕事を背景に、アフリカ向けにドライバー向け車両融資の専門組織を立ち上げました」と同氏は述べている。

今回の資金調達は、グローバルなプライベートエクイティプラットフォームであるLightrock(ライトロック)が主導したもので、アフリカのモビリティ分野では初の投資となる。UAEに拠点を置く国際的なベンチャーキャピタル、Global Ventures(グローバル・ベンチャーズ)もこのラウンドに参加し、既存の投資家であるNovastar Ventures(ノバスター・ベンチャーズ)や、フランスの開発金融機関のProparco(プロパルコ)も、Digital Africa(デジタル・アフリカ)イニシアチブを通じてこのラウンドに参加している。

ノジョヤ氏は、このスタートアップがアフリカ大陸の何百万もの交通事業者のための、車両購入と金融サービスのプラットフォームとなることを目指している、と述べている。最近、エストニアのライドヘイリング会社Bolt(ボルト)と提携し、ナイジェリアのBoltのドライバー1万人がエネルギー効率の高い車両を購入できるよう、リース・トゥ・オウン方式を導入した。

画像クレジット:MAX

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(文:Annie Njanja、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Metaの実験的アプリ部門NPEの新仮説「次の大きなアイデアは米国市場で生まれるのではないか?」

Meta(旧Facebook)の実験的アプリ部門であるNPE(New Product Experimentation)チームがシフトチェンジしている。2019年半ばに初めて発足した当グループは、新しいソーシャル機能をテストし、人々の反応を測るための消費者向けアプリの構築に注力してきた。

カリフォルニアのメンローパークを拠点としたチームは、長年にわたりデートアプリ通話アプリミームメーカーからTikTokTwitterClubhouseのライバルカップル向けアプリなど、数多くの実験的アプリを始め、引退させてきた。そして今、NPEは、新たな仮説の検証を開始する。それも、大きなアイデアは米国以外の市場から生まれるのではないかというものだ。

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このような潜在性への投資として、NPEは最近ナイジェリアのラゴスにオフィスを開設し、近々アジアにもオフィスを開設する予定だ。また、小規模な起業家チームへのシードステージの投資を行うなど、戦略の調整を行っている。

そのような投資のうち1つはすでに行われている。Metaが最近行った投資で、バーチャルキャラクターを作るAI搭載の開発者向けプラットフォームであるInworld AIへの投資はNPEが主導した。しかし今後は、モバイルインターネットを新しい方法で活用しているスタートアップ企業など、より短期的な可能性を秘めたメタバース関連ではない企業にも投資を行う可能性がある。

Metaはもちろん、今日の普遍的な体験の多くが、最初はニッチなコミュニティから生まれたことを理解している。例えばWhatsAppは、世界中で導入される前に、SMSテキストメッセージが無料ではなかった地域で人気を博した。また、モバイルマネーのイノベーションの中には、東アフリカにおける従来の決済システムの欠如から生まれたものもある。

MetaのNPEチームは、このような未来のチャンスを逃さないために、シリコンバレー以外にも目を向けている。

NPEの責任者イメ・アーチボン氏(画像クレジット:Meta)

MetaのNPE(New Product Experimentation)の責任者であるIme Archibong(イメ・アーチボン)は、Metaに11年間勤務しており、NPEの前にはFacebookの開発者向けプラットフォームでの勤務経験がある。NPEに参加する前は、Facebookの開発者向けプラットフォームを担当し、世界中を飛び回って小規模なスタートアップから大企業の起業家に至るまでとつながりを作っていた。アーチボンは2年前にNPEに参加し、グループを同じような方向性に導いている。

「これは私が10年前にやっていたことと似ています。つまり、起業家や小さなチームを集めて、彼らのアイデアを実現するためのリソース、つまり人材、時間、技術にアクセスしてもらうのです。そしてもちろん、目標は私たちが構築できるアイデアの種のいくつかが、いつの日か非常に大きく育ってくれることです」と彼は説明する。

この新しい方向性を追求するために、チームはアジア、アフリカ、ラテンアメリカの市場に焦点を当てているが、米国ベースのプロジェクトを完全に放棄しているわけではない。だが、その中にはこれまでとは違って見えるものがあるかもしれない。NPEの現在の試みは、立ち上げても人気が出ずにすぐに終了してしまう新しいソーシャルアプリではなく、米国で投獄された人の社会復帰を支援するプロジェクトや、LGBTQの家族が親になるまでの支援を目的としたプロジェクトなどがある。これらは、単なるTikTokのクローンよりも明らかに内容が充実している。

グローバルな舞台に焦点を移すことで、NPEは最初は小さく、もしかすると十分なサービスを受けていない市場を対象にしているかもしれないが、規模を拡大できる可能性のあるアイデアを対象にしていくだろう。

アーチボン氏はこう述べる。「未来は、歴史的に見過ごされ、過小評価されてきた世界のいくつかの地域で築かれると思います。私は、問題、解決策、機会、そして新しい体験は、サービスを提供しようとしているコミュニティに最も近いところにいる人々によって構築されると確信しています」。そしてこのようなソリューションは、長期的には「より耐久力があり、より持続可能で、より実行可能な」ものになるだろうと彼はいう。

この論自体は堅実なものに聞こえる。何しろ、すでに歴史がそれを証明しているのだから。しかしMetaが中小企業からアイデアを「借用」してきたことを考えると、世界の起業家コミュニティがMetaによる投資を歓迎するかどうかには疑問が残る。

MetaがSnapchatのStoriesをコピーして、より大きな製品に成長させたことは広く知られている。同社はSnapchatのBitmojiの自社バージョンを公開した他、現在はClubhouseTikTokNextdoorSubstackのクローンを展開中だ。Phhhotoというスタートアップ企業は、最初にパートナーシップの機会を約束しておきながら、最終的にはPhhhotoの技術(InstagramのBoomerangになった)を独自に構築したとして、Metaを訴えているほどだ。Metaは、コピーしないものは買収した。例えばInstagramWhatsAppGIPHYのような将来のライバルから、tbhMovesのような新進気鋭の企業に至るまでだ。

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Inworld AIは、両者のVRにおけるミッションが緊密に一致していたことから、Metaとの連携に違和感を感じなかったかもしれないが、他のシードステージにあるスタートアップ企業は同じようには感じない可能性がある。しかしアーチボンは、このチャンスをものにする企業は十分に存在すると信じている。

「私は、(Inworld AIの)機会はもっと増えると思います。私たちのような、自分たちがやろうとしていることとミッションが一致した組織、つまり、類似したテクノロジーのトレンドや、新興のプラットフォーム、ユーザーの行動などにかなり力をいれている組織と一緒に仕事をする人々です」と彼はいう。

同社は、どのくらいの期間にどのくらいの資本を投入するかは明らかにしていないが、チーム自体と同様に、その規模は「本当に小さなもの」になるとアーチボンはいう。

画像クレジット:Meta

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

ナイジェリアが中国の足跡を追ってデジタル通貨を試験的に導入

中央銀行は世界中で通貨の流通と供給を統制しているが、暗号資産の驚異的な増加により、その権威、統制、権力が脅かされている。

そのため世界各国の中央銀行は現在、独自のデジタル通貨を生み出している。現地の活動や暗号資産への関心(米国に次いで2番目に大きな暗号取引市場)に支えられたアフリカ大陸の革新的な動きとして、ナイジェリアが2021年10月下旬、そのリストに名を連ねた。

ナイジェリアの中央銀行は過去3年間の開発段階を経て、現在アフリカ初のデジタル通貨の試験運用を行っているところだ。

これまでに中国、スウェーデン、韓国など14カ国が独自の中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)の試験段階に入っており、合計81カ国がその他の段階でCBDCを模索中である。

バハマ、グレナダ、セントクリストファー・ネイビス、アンティグア・バーブーダ、セントルシアの5カ国のみが正式にローンチしている。

eNaira(eナイラ)と呼ばれるこのデジタル通貨は、ナイジェリア中央銀行(CBN:Central Bank of Nigeria)が支援・発行する。ほとんどの政府と同様、ナイジェリアがデジタル通貨を導入する理由は、物理的な現金よりもコスト効率が高く、銀行口座を持たない人々の金銭へのアクセスを容易にし、違法行為をある程度制限できることにある。

しかし、中央銀行が発行するデジタル通貨には利点がある一方で、市民に対する監督を行ってきた、あるいは監督を試みてきた実績のある政府によってそれがどのように利用されるのかという懸念が存在する。

eNairaについてこれまでにわかっていること

この試験的なローンチに向けて、CBNは8月、デジタル通貨の開発と展開のための事業者としてバルバドスを拠点とするBitt Inc.(ビット・インク)を選定した。

同社は、東カリブ海諸国通貨同盟(ECCU:Eastern Caribbean Currency Union)に協力し、デジタル通貨DCash(Dキャッシュ)の設計とローンチを支援してきた実績を持つ。DCashは独自のCBDCを完全にローンチした5カ国のうちの4カ国、アンティグア・バーブーダ、グレナダ、セントクリストファー・ネイビス、セントルシアで使用されている。

9月27日、CBNはeNairaのウェブサイトを立ち上げ、ナイジェリア人がどのように同国のデジタル通貨にアクセスし、利用できるかについて必要な情報を提供した。

ナイジェリア人は最初にeNairaモバイルアプリをApple StoreかPlay Storeでダウンロードする必要がある。サイト上のQRコードをスキャンしてサービスにアクセスすることも可能だ。

ユーザー登録後、お金の保管や送受信を行うためのSpeed Walletと呼ばれるウォレットを登録・作成する。プラットフォーム上では、銀行口座を持つ、あるいは持たない、さまざまなIDレベルのユーザーに対応するために、複数層のウォレットが用意されている。

ウェブサイトには、eNairaの4つの主要機能が掲載されている。顧客がeNairaウォレットからお金を移動できる統一決済システム、ユーザーが残高や取引履歴を確認できる銀行口座管理機能、QRコードを読み取って店頭で支払いができる非接触型決済サービス、そしてユーザー同士がリンクされた銀行口座やカードを介して送金を行うP2P決済だ。

暗号資産がCBDCに移行

ビットコインのような暗号資産は、従来のグローバルな銀行システムの枠を超えて生み出されたにもかかわらず、お金のデジタルな未来についてのポテンシャルを際立たせている。そしてその普及率の急激な上昇は、お金の将来を決定づけることにおいて、伝統的な機関との衝突につながっている。

暗号資産に対する議論は、一般的には詐欺やボラティリティに関する懸念に焦点が当てられてきた。それでも、エルサルバドルのような一部の国では、ビットコインを法定通貨として使うことをやめていない。ビットコインや暗号資産を自国の銀行や金融システムへの脅威と考える他の国々にとって、CBDCは、法定通貨以外のものへの関心の高まりに直接代わるものとして機能する。

Blockchain Nigeria User Group(ブロックチェーン・ナイジェリア・ユーザー・グループ)の創設者でコーディネーターを務めるChimezie Chuta(チメジー・チュタ)氏は、TechCrunchの取材に対して次のように述べている。「CBDCの概念は、中央銀行にとって不可欠なものとなっています。お金は人々を統制するためのツールです。ビットコインやイーサリアムのような非公開で発行された暗号資産の流入は、世界中の中央銀行の権威に対する直接的な挑戦であり、中央銀行は主要な統制ツールが損なわれるのを許容することはできないと考えています。CBDCは、弱いながらもその対抗策として浮上してきたのです」。

暗号資産はかなり独立性がある一方、デジタル通貨は紙の通貨と同じ価値を有している。ナイジェリアの場合、eNairaはナイラに連動しており、ナイラと同様に米ドルに対して変動する。

CBDCと暗号資産のもう1つの重要な違いは、前者が規制と統制にさらされていることにある。これは中国とナイジェリアの政府の核心にある共通のテーマだ。

2014年以降、中国は中央銀行である中国人民銀行(PBOC:People’s Bank of China)が支援する国家デジタル通貨(デジタル人民元)の開発に取り組んできた。その前年に、中国政府は銀行や決済企業がビットコインなどの暗号資産関連サービスを提供することを禁止している。

2017年には、中国はマイニング、イニシャル・コイン・オファリング(ICO:Initial Coin Offering)、および暗号資産取引プラットフォームが法定通貨を暗号資産に変換することを禁止した。

しかしこの禁止にもかかわらず、ビットコインや他の暗号資産はそれ以降もこのアジアの国で大きな牽引力を得てきた。そのため、2021年5月には、フィンテック企業が暗号化プラットフォームに口座開設、登録、取引、清算、決済に関するサービスを提供することを禁止する、より厳格な法律を制定した。

これまで中国は、地元の暗号資産プラットフォームのみをターゲットにしており、個人がオフショア取引所で暗号資産を保有することは禁止していなかった。

しかし2021年9月、中国政府が暗号資産取引(マイニングを含む)に関するすべての取引を違法であると宣言したことで状況は変わった。同政府はまた、Binance(バイナンス)のような海外の暗号資産取引所が中国本土の人々にサービスを提供することも違法であるとしている。

「中国は過去に何度も暗号資産にまつわる『禁止』措置を取ってきましたので、驚くに値しませんが、今回は曖昧さがありません」とPwCの暗号資産リーダー、Henri Arslanian(ヘンリ・アルスラニアン)氏はツイートした。「中国では、あらゆる種類の暗号資産取引と暗号資産関連サービスが禁止されています。議論の余地はありません。グレーの領域は存在しません」。

一部のアナリストは、中国によるこれらの禁止や制限は、2022年にこのアジアの国が完全にデジタル人民元をリリースすることを目的としていると述べているが、その見方は妥当であろう。WeChat(ウィーチャット)とAlipay(アリペイ)が5回に4回のデジタル決済を行っているこの国で、流通している現金の一部を置き換えるためにデジタル人民元をローンチしたと中国政府は主張している。

暗号資産に対するさらなる取り締まりや監督の可能性

PBOCは政府の支援を受けて、上海、成都、北京で2020年4月から試験運用が開始されたデジタル人民元により、オンライン決済の市場シェアをAlipayとWeChatによる複占から取り戻そうとしているのかもしれない。

eNairaと同様に、ユーザーは中央銀行が開発・管理するモバイルアプリをダウンロードすることによってのみ、デジタル人民元にアクセスできる。これまでのところ、700万以上の個人のデジタルウォレットと100万以上の企業のウォレットがデジタル人民元を使用している。Business Insider(ビジネスインサイダー)によると、これらのトライアルから合計53億ドル(約6050億円)の取引が行われたという。

ナイジェリアは暗号資産マイニングの国ではないものの、国民は暗号資産のヘビーユーザーだ。Paxful(パックスフル)によると、多くのナイジェリア人がナイラの下落から自身の貯蓄を守るために暗号資産を利用しており、この西アフリカの国はビットコイン取引で米国に次ぐ2位に位置している。

Chainalysis(チェイナリシス)のデータに基づくと、ナイジェリア人は5月に24億ドル(約2700億円)相当の追跡可能な暗号資産を取引している。2月にナイジェリア政府がCBN経由で暗号資産取引の禁止やそのような取引への銀行の参加を制限し、暗号資産を使用するナイジェリア人の口座を閉鎖するよう銀行に命じたことを考えると、これは驚くべき数字である。

そして、中国と同様に、ナイジェリアのその後の行動は自国のデジタル通貨を試験導入する方向に傾いた。しかし中国とは異なり、ナイジェリアは現金中心の社会だ。バハマのような小国がデジタル通貨を導入した主な理由(金融包摂性の改善の可能性を含む)の1つがここにある。こうした目的に照らしてみると、ナイジェリアでのデジタル通貨の導入は紙面上では理に適っている。

しかし、それが暗号資産を使用したい人々へのインセンティブを減らすための政府の策略であることを理解する人がいる一方で、多くのナイジェリア人はその有用性に疑問を抱いている。だが、懸念すべき微妙な要素は他にもある。同国における暗号資産活動の監督や全面的な取り締まりに対するものだ。

典型的には、政府は金融取引を監視し、疑わしい、あるいは異常な金銭活動に関する情報を収集するために、金融インテリジェンスユニットを使用する。しかし、CBDCは事態を1段階引き上げるかもしれない。

複数の出版物が、中国政府はデジタル人民元を使って国民に対する監督を進める可能性があるとほのめかしている。中央銀行であるPBOCの説明では、デジタル人民元サービスを運営している機関は「非同期伝送によって中央銀行に取引データを適時に提出」することが期待され、それにより中央銀行は「データを追跡し、マネーロンダリングと犯罪の取り締まり」ができるようになるとされている。

CBNも同様の目的を持っており、eNairaは「各eNairaの追跡可能な固有ID」により詐欺行為やマネーロンダリングを最小化する、と以前に述べている。

「銀行や通信会社はすでに検証プロセスを通じて必要な情報を持っています」とチュタ氏はいう。「しかし、CBDCは監視と監督を強化するでしょう。なぜなら、デジタル環境で実際にお金の流れを追跡することができ、配備している台帳上で各ユーザーの取引に対するフォレンジック分析を行えるからです」。

6月に現地メディアが報じたところでは、ナイジェリアはインターネットファイアウォールを構築するために中国と協議中のようだ。同報道によると、中国の「グレート・ファイアウォール」は政府のオンライン検閲と監督の中枢になっているという。ナイジェリアにはこうした監督用のファイアーウォールを構築するリソースがないが、eNairaは規模こそ小さいものの、同じ目的のために設計されたのではないかと考える向きもある。

「CBDCは追跡可能であり、政府が不当な監督を行うことを決定した場合に有用になると思います」と匿名を希望する暗号資産ユーザーはTechCrunchに語った。

また、中国のケースと同様に、eNairaの採用が計画通りに進まない場合や、政府がeNairaを国内で取引される唯一のデジタル通貨として強制する場合には、暗号資産の取り締まりがさらに強化される可能性がある。

その典型的な例が、中国の新たな命令により、世界最大の暗号取引所であるHuobi(フォビ)とBinanceの2カ所でユーザーの新規登録が停止されたことだ。Huobiは年末までに現在のアカウントを廃止することを明らかにしている。

ナイジェリア政府がこのような権限を行使できるかどうかは定かではない。それでも、ナイジェリア人に対するサービス提供や雇用をオフショア暗号プラットフォームから禁止し、成功した場合、ピア・ツー・ピアの活動(ナイジェリアで暗号資産を繁栄させてきた)は深刻な打撃を受けるだろう。

「政府は概して、暗号資産に脅威を与えています。現実世界の権力をつ人がいるような状況では、暗号資産の取引で投獄される可能性があります」とナイジェリアの暗号資産交換プラットフォームで成長リードを務める人物は述べている。「政府が本当に自国内での暗号資産の使用を禁止することを決定した場合、暗号資産は抑圧され、ある時点でそれを使用する価値がなくなる恐れがあります」。

しかし現時点では、ナイジェリアと同国の頂点にある銀行は、eNairaに対して高潔な意図を持っているようだ。CBNのGodwin Emefiele(ゴッドウィン・エメフィーレ)総裁は、eNairaはより安価で迅速な送金流入と国境を越えた貿易の増加につながると述べている。

送金に関しては、eNairaは国外にいるナイジェリア人が故郷に送金するためのより良い代替手段を提供すると思われ、長期的にはナイジェリアへの送金が増加傾向にあり、2020年は170億ドル(約1兆9400億円)に達している。

中国の銀行がナイジェリアでの業務を拡大しているとのニュースが2021年9月に広まったが、この事実は、両国間のクロスボーダー貿易の有効性に対する極めて重要な要素を示しているのかもしれない。中国はナイジェリアの最大の貿易相手国で、両国間の2021年の貿易額は200億ドル(約2兆2800億円)を超え、2020年の192億ドル(約2兆1900億円)から増加している。3年前、両国はより良い貿易を目指して通貨スワップ協定を試みたが、何も具体化しなかった。しかしチュタ氏は、両国のデジタル通貨は完全な代替物として機能できると主張する。

「両国にとって有益な相互運用性があると思います。ナイジェリアから中国に送金したい場合、少なくとも4つの異なる手続きを踏まなければなりません。それには3、4日かかります」とチュタ氏。「ですが、中国とナイジェリアのCBDCが相互運用することを想定してみましょう。中国のサプライヤーに送金したい場合、アプリ上の簡単な操作でeNairaを中国人民元に交換してサプライヤーに送信すれば、サプライヤーは従来の送金機関で通常行う手続きに比べてごくわずかな時間で支払いを受けることができます」。

ナイジェリアの中央銀行は、eNairaは「支払い効率、歳入と税徴収、そして対象を絞った社会的介入」の改善にもつながるだろうと述べている。

ナイジェリアの頂点に立つ銀行は、これらすべてを達成できるだろうか?パイロットモードでも完全にローンチされたモードでも、大規模な成功を収めた国はまだ存在しないため、断言するには時期尚早である。eNairaはポートハーコート、アブジャ、カノ、ラゴスの4都市で段階的に展開される予定だ。しかし、政府主導の同様の取り組みが過去にどのように行われてきたかを考えると、本格的な展開が実現する見込みはほんのわずかしかない。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

グーグルがケニアでクラウドソーシングアプリ「TaskMate」を展開、グローバル展開も検討

米国時間10月18日、Googleは、ケニアにTaskMateを立ち上げた。これはスマートフォンを利用して仕事を見つけ賃金をもらうというクラウドソーシングなアプリで、同社は成長途上のギグ経済を活用する。Googleはケニアで1年間の実験を経てこれからベータテストを行い、この大陸の他の国にも導入するための準備をする。このアプリはインドでもパイロットとして利用できる。

アプリTaskMateのユーザーは、企業が求める翻訳や写真撮影など、スキルを要する、あるいは要しないタスクを充足するが、求人が載るためにはGoogleの承認を必要とする。

TaskMateのような、人びとがサービスを実行して代金をもらうというタイプのGoogleのアプリは、他にもある。たとえば有料でアンケートの回答者になるというアプリや、またLocal Services Adsというアプリは企業に、その会社のサービスを必要としている知人等を見込み客として結びつけて謝礼を得る。

TaskMateのプロダクトマネージャーであるMike Knapp(マイク・ナップ)氏は「TaskMateをローンチしましたが、アフリカだけでなく、も世界でオープンするのもこれが初めてです」と挨拶している。

パイロット事業は2020年後半に始まり、ユーザーはペンシルベニア州立大学の研究プロジェクトのために植物の写真を撮ったり、その他いろいろな仕事をした。このアプリのギグワークには、在宅と現場仕事の両方がある。

ナップ氏は、パイロット事業について「パイロットでは1000名の人たちがアプリを使用し、とてもポジティブなフィードバックが得られました。そこで、今日からはベータ段階に移行します。より大規模な実験になるでしょう」と述べている。

「今は、実験に協力してくれる企業やスタートアップを探しています。彼らの難しい問題の解決にどれぐらい役に立つか、それを検証したい」。

このプラットフォームに求人をポストする企業は、求職者のグループを指定できるし、また特定のスキルを持つ人を招待できる。ケニアのTaskMateのユーザーは、稼いだお金をモバイル決済サービスM-Pesaから引き出せる。M-Pesaを運用しているSafaricomは、東アフリカで最大の通信企業だ。

「クラウドソーシング方式なので、求人を広めるのも、仕事を達成するのもシンプルです。このアプリはケニアの人たちに仕事と収入を得るチャンスを提供し、コミュニティの創成と副収入の獲得の両方の役に立ちます。これはGoogleのアフリカに対するコミットメントであり、DX(デジタルトランスフォーメーション)の旅路でもある」とナップ氏はいう。

TaskMateの立ち上げと同時期にGoogleは、ガーナとケニアとナイジェリアと南アフリカの小規模企業を助けるための、1000万ドル(約11億4000万円)のローンを発表した。パンデミックによって停滞した経済の回復を助ける意図もある。ローンの提供は、サンフランシスコの非営利貸付組織Kivaを通じて行われる。この融資は、先々週に発表されたアフリカへの10億ドル(約1143億円)の投資の一部だ。

Googleの投資に含まれる海底ケーブルは、南アフリカとナミビアとナイジェリアとセントヘレナを貫き、アフリカとヨーロッパを結ぶ。それは高速インターネットを提供し、2025年までにナイジェリアと南アフリカに、デジタル経済の成長により170万の雇用を作り出す、と言われている。

アフリカのデジタル経済はこのような統合化の継続とともに一層の成長が期待され、接続人口の増加によっても成長の新たな機会が生まれる。アフリカのサハラ南部地域では、人口の28%、約3億300万人が現在、モバイルインターネットに接続している、と2021年のGSMAモバイル経済報告書はいう。そしてこの数字は2025年には40%にもなり、TaskMateのようなインターネット接続を利用するサービスや、アフリカの若い人口により、インターネットをベースとする企業やサービスにさらに大きな機会を提供する。

画像クレジット:SpVVK/Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Uberがアフリカで相乗りサービスをテスト、世界的には新型コロナで類似サービス停止中

Uber(ウーバー)は、同じ方向に向かう乗客が乗車料金をシェアできる機能「Pool Chance」をケニアでテスト中で、ガーナとナイジェリアでもこの低価格サービスを展開する予定だ。ケニアのナイロビで車を予約する際にこのオプションがあるのをTechCrunchが発見した。Uberの広報担当者によると、このサービスはパイロット版(ベータ版)の一部であり、小規模なテストの結果を踏まえてより広範囲に展開する予定とのことだ。

アフリカで初めて導入されるこの新サービスは、2014年にサンフランシスコのベイエリアで開始され、その後、世界の複数の都市で導入されたUberPoolに似ている。この低価格で人気のサービスは、米国やカナダを含む多くの地域で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)規制のために一時停止したままだが、Uberは一部の市場で徐々に復活させていて、これまで展開していなかった場所にも導入しつつあるようだ。同社は、この2つのプロダクトのコンセプトは似ているものの同じではないとし、さらなる詳細は明らかにしなかった。

しかし、Uberのドライバー向けフォーラムのこちらのスレッドでは、その違いを次のように説明している。Pool Chanceは、ドライバーが他の乗客を拾えば割引料金で乗車できるチャンスがあり、そうでなければ個別に乗車した場合に支払う通常料金が課される。UberPoolは、他に誰か乗車するかどうかにかかわらず特定の相乗り料金が適用される。

Pool Chanceオプションは、ナイロビでは格安サービスのChap Chapで利用でき、ナイジェリアの人口の多い都市ラゴスとガーナの首都アクラでは、UberXカテゴリーで利用できるようになる。

Uberの東・西アフリカ地域のコミュニケーション責任者であるLorraine Ondoru(ロレーヌ・オンドル)氏は「当社は現在、新しいUberライドであるPool Chanceを試行しています。これはナイロビ(ケニア)の乗客が同じ方向に向かう他の客と乗車を共有する場合、料金を抑えることができるというものです」とTechCrunchに語った。

「新しいサービスを導入する際には、このような方法を用いて、市場が健全でバランスのとれた状態を維持するようにしています。このサービスが正式に展開される際に詳細をお伝えします」と付け加えた。

Uberは、2020年10月にウクライナのキエフでPool Chanceを導入し、そして4月にはニュージーランドのオークランドでも展開を始めた。また、2021年初めにはオーストラリアのシドニーとパースでも低価格のライドシェアサービスを導入し、その後アデレードでも開始した。

Uberはアプリ上で、Pool Chanceにより乗車料金を最大30%抑えられ、客はさらにお得に移動できるようになる、と話している。

同社はこの新サービスについて、アフリカ3カ国のドライバーに向けたメッセージの中で「手頃な価格のシェアライドは、アプリを利用する乗客が増えることを意味し、より多くの移動、ダウンタイムの減少、そしてドライバーの全体的な収益につながります」と述べた。

Uberはアフリカで、エジプト、南アフリカ、ウガンダ、タンザニア、モロッコなど8つの市場でサービスを提供している。

エストニアを拠点とする配車サービスBoltのようなライバルとの競争が激化する中、Uberは顧客の維持と新規顧客の獲得を目的とした新戦略のもと、ここ数カ月の間にアフリカ大陸全体でサービスを拡大し、新プロダクトを導入してきた。

今月初め、Uberはナイジェリアのイバダンとポートハーコートの2都市に進出し、すでにサービスを展開していた他の3都市に加えた。

また南アフリカでは、2021年9都市に事業を拡大し、UberX、UberBlack、格安サービスのUberGoとともにプレミアムサービスのUber Comfortを導入した。また、8月には、世界の他の市場ではすでに提供されていた、1カ月前から乗車予約ができる機能を追加した。

Uberがアフリカの市場で乗車料金を割り勘にするサービスを導入する計画は、同社が最近のレポートで「ライドシェアは今後3~5年の間に公共交通機関の中でますます重要な役割を果たすようになるだろう」と述べたことを受けてのものだ。

バスや鉄道は大勢の人を運ぶことができるため、今後も公共交通の中核となるが、マイクロトランジットやライドシェア、マイクロモビリティなどの手段によって補完されていくだろうと同社は付け加えた。

「ライドシェアのようにコストが変動する新しい交通手段が加わり、オンデマンドサービスが普及することで、公共交通機関の効率化と低コスト化に新たな一石が投じられることになる」と述べた。

これにより「公共交通機関のネットワークの公平性、アクセス性、回復力、柔軟性」を確保し、改善することができる、としている。

公共交通機関にサービスを提供する部門であるUber Transitと、2020年買収した交通機関向けソフトウェアを提供する会社Routematchを通じて、交通機関がより効率的に運営できるような新しいツールを提供し、ライダーもサポートするとレポートで述べている。

2015年にUber Transitを設立して以来、同社は世界各地で公共交通機関をシームレスにすることを目指したサービスを展開してきた。

2019年初めには、デンバーの乗客が旅の計画やチケット購入ができるUberアプリ内サービスを開始し、カリフォルニア州のMarin Transitとの提携では公共交通機関を動かすソフトウェアを提供した。

2020年9月には、一部の市場で「Uber and Transit」を開始し、乗客が電車やバスといった他の公共交通手段と組み合わせて配車サービスを利用できるアプリ内機能を立ち上げた。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Nariko Mizoguchi

ナイジェリア大統領が「ツイッター禁止令」は現地オフィス設置や納税により解除すると発表

ナイジェリアのMuhammadu Buhari(ムハマドゥ・ブハリ)大統領は現地時間10月1日、現在行われているTwitter(ツイッター)の使用禁止措置を、同社が一定の条件を満たす場合に限り解除すると発表した。

ブハリ大統領は、ナイジェリアの61回目の独立記念日に、国民に向けたテレビ放送の中でこの意向を明らかにした。

大統領は、Twitterが情報発信に利用されていることを認めた。しかし、同プラットフォームを悪用して「犯罪行為を組織化、調整、実行し、フェイクニュースを広め、民族的・宗教的感情を助長する」悪質な行為者がいると警告した。

こうした理由から、政府は6月5日に同ソーシャルメディアプラットフォームの活動停止を決定し、これにより、政府はそうした課題に対処するための対策を講じることができたとブハリ氏は述べた。

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その一環として、同政府はTwitterチームと対話を行っていると主張している。

例えば8月、Lai Mohammed(ライ・モハメド)情報相は、ナイジェリアがTwitterの業務を再開するために同社と協議していることを明らかにした。

モハメド情報相によると、10件の要請があったものの、同政府がTwitterと合意に達したのはそのうち7件とのことだった。残っている課題としては、Twitterが現地オフィスを設置すること、現地で納税すること、コンテンツや有害なツイートを規制するためにナイジェリア政府と協力することなどが未解決となっていた。

それ以来、一見何も変わっていないようだ。大統領は1日、同じような姿勢を示したが、より微妙な表現になっている。

大統領によると、同氏が設立した委員会は、国の技術チームとともに、国家の安全と団結、登録、物理的な存在(オフィスの設置)と代表、公正な税金、紛争解決、ローカルコンテンツなどの問題についてTwitterと協議した。Twitterが政府から提示されたこれらの要件を満たすことに同意すれば、禁止措置は解除されるという。

「広範な協議を経て、私は、ナイジェリア国民がビジネスやポジティブな交流のためにプラットフォームを使い続けることができるよう、条件が満たされた場合に限り、停止措置を解除するよう指示しました」と同氏は述べている。

6月、ナイジェリア政府は、大統領が同国南東部の分離独立派集団(IPOB、ビアフラ先住民族)を処罰すると示唆した脅しにとれる投稿をTwitterが削除したことで、同社の活動を停止した。

それから4カ月が経過したが、国際社会からの圧力や、表現の自由を阻害する不必要な試みであると非難する活動家の声が高まっているにもかかわらず、ナイジェリア政府はこの禁止措置の解除に近づいていない。

ナイジェリア政府側は、Twitterと協力して禁止措置を解除すると2度にわたって表明しているが、Twitterはこの件について口を閉ざしている。

【更新】Twitterの広報担当者によると「ナイジェリア政府との協議は継続しており、ナイジェリアのすべての人々がTwitterを利用できるようにするための道筋をつけることをお約束します。ナイジェリア政府との話し合いは、敬意を持って生産的に行われており、サービスがまもなく復旧することを期待しています」とのこと。

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Aya Nakazato)

医薬品チェック技術と偽造医薬品排除技術の拡大を目指すアフリカのRxAll、約3.5億円獲得

ある研究によれば、偽造医薬品による事故が原因で年間100万人が死亡し、そのうち10分の1はアフリカで発生している。偽造医薬品は、発見、検査、定量化、排除が難しい。これは世界的な問題で、基準に満たない医薬品による不当な利益は年間1000億ドル(約11兆300億円)を超えている。

この問題を解決するためのいくつかの技術が開発されている。製品の容器に無線ICチップが埋め込まれたシリアルナンバーを付けて、そのデータを読み取る無線識別技術はその1つだ。最近では、RxAll(アールエックスオール)の技術のような、より現代的なアプローチも採用されている。RxAllは、深層技術を活用して医薬品の品質を確保する技術を展開するスタートアップ企業で、米国とナイジェリアを拠点としている。現地時間7月21日、同社は、既存の市場での規模拡大と技術の向上を図るべく、315万ドル(約3億5000万円)の資金調達ラウンドを発表した。

RxAllはAdebayo Alonge(アデバヨ・アロング)氏、Amy Kao(エイミー・カオ)氏、Wei Lui(ウェイ・ルイ)氏によって2016年に設立された。当時イェール大学の学生だった3人がRxAllを創設したのは、自分自身、または身近な人が直面した問題を協力して解決するためだった。

アロング氏は2006年、致死量のジアゼパムが含まれた偽造医薬品を飲んで生死の淵をさまよい、3週間の昏睡状態に陥った。

アロング氏はTechCrunchの電話による取材に次のように応える。「私は15年前、ナイジェリアで3週間昏睡状態に陥りました。共同設立者のエイミーは、タイで偽造医薬品を飲んで入院しました。ウェイは、汚染された偽造医薬品のせいで家族を失いました」。

アロング、カオ、ルイの3人は、イェール大学化学学部での研究開発プロジェクトをベースに、機械学習と分子分光法を医薬品や原材料の品質、品質保証に応用する方法を検討し始めた。3人には、安全で評判の良い医薬品の販売者を認証するマーケットプレイスを構築し、まず高品質な医薬品の入手が難しいアフリカの問題を解決し、次に全世界に広げていく、という大きなアイデアがあった。

アロング氏は続ける。「調べていくうちに、私たちが経験したことが一過性のものではないことがわかりました。これは現在進行形の問題です。毎年、10万人のアフリカ人が、偽造医薬品が原因で亡くなっています。世界中では100万人です」。

画像クレジット:RxAll

RxAllの独自技術であるRxScannerは、ユーザーが医薬品を検査するための携帯型検査装置である。同社によると、RxScannerは20秒で処方薬の品質を識別し、モバイルアプリですぐに結果を表示することができるという。

RxAllは、質の良い販売者を自社のマーケットプレイスに集め、RxScannerを提供する。対象の医薬品を分光分析して、機械学習モデルで基準となる医薬品(リファレンス)と比較した場合の同一性や品質を示す検査を行い、結果を送信する。バッチテストが終わると、販売者は製品をマーケットプレイスに出して、オンデマンドの注文や受け取りだけでなく、配送サービスも利用できるようになる。販売者はフィルターを使って探すことができる。

RxAllはマーケットプレイスでの取引による手数料で収益を上げ、RxScannerには、個人や企業を対象としたサブスクリプションモデルを採用している。

同社の革新性にもかかわらず、アフリカを重要視した多くのディープテック(最先端のテクノロジー)プラットフォームと同様に、RxAllは資金調達をほとんど行っていなかった。このようなスタートアップ企業は研究から商業化までのサイクルが長く、ベンチャーキャピタルはサイクルの後半に関与するから、というのが、その主な理由だ。RxAllはこれまで、助成金やコンテストでの賞金の他、アフリカに特化したアクセラレーター、Founders Factory Africa(ファウンダーズファクトリー・アフリカ)などから新株発行で資金調達してきた。

アロング氏は、RxAllはディープテックとヘルステックを組み合わせた世界の先駆者であり、少なくとも当面は、RxScannerのシステムと直接競合する他社は出てこないと考える。

「医薬品のeコマースとは別物です。薬物検査の分野で言えば、他のソリューションには実験室用の高価な機器しかなく、RxAllの市場、応用分野、価格帯、深層学習とスマートフォンを使ったソリューションとは比較になりません」とアロング氏。

しかし、技術的な優位性だけでは製品は売れず、ビジネスも成り立たない。アロング氏によれば、RxAllの技術を拡大するための鍵は、コストがかかっても市場に受け入れられる製品を作ることだという。同社は現在、投資家にわかりやすい技術の開発に加え、この課題にも取り組んでいる。

RxAllチーム(の一部)

RxAllは、自らをグローバル市場で活躍する企業と表現する。しかし、先に述べたように、同社の顧客と収益の大部分はアフリカ、特にナイジェリアにある。現在、RxAllは10都市にサービスを展開中で、西アフリカ諸国の2000以上の病院や薬局にサービスを提供し、100万人の患者に対する医薬品の真贋を検証している。2021年中にサービス提供範囲をさらに14都市拡大し、2022年にはアフリカ全土での展開を予定している。

今回の資金調達ラウンドは、最近クローズした200万ドル(約2億2000万円)のシードラウンド(申し込みが上回り、225万ドル[約2億5000万円]のオーバーサブスクライブとなった)と、2020年末に調達した90万ドル(約1億円)のプレシードを合計したものだ。Launch Africa Ventures(ローンチアフリカベンチャーズ)が主導し、SOSV(エスオースブイ)のアクセラレータープログラム「HAX(ハックス)」と本田圭佑氏のKSKファンドが参加した。

今回のラウンドについて、Launch Africa Venturesのマネージングパートナー、Zachariah George(ザカリア・ジョージ)氏は次のように話す。「Launch Africa Venturesは、RxAllの優秀かつ経験豊富なチームに対して、この資金調達ラウンドを主導できることをうれしく思います。RxAllは、医薬品販売プラットフォームのパイオニアとして、薬局や患者が検証済みの医薬品をオンラインで購入することを可能にし、アフリカで質の高いヘルスケアを受けられるかどうかという大きなギャップを埋めていると確信しています。偽造医薬品を排除するための独自のモバイル分光計技術と、医薬品販売のサプライチェーン全体と独自の決済手段を所有することで、顧客1人あたりで高い経済性を実現し、複数の収益源を獲得しています。アフリカ全土、さらに全世界での大きな成長と規模拡大の機会が見込まれます」。

SOSVのジェネラルパートナーであり、HAXのマネージングディレクターであるDuncan Turner(ダンカン・ターナー)氏も「私たちは、RxAllの拡張性と顧客の需要に対応する能力に非常に感銘を受けています。この1年間で、RxAllのチームは、世界レベルのハードテクノロジーと卓越したオペレーション能力を結集し、100万人以上のナイジェリアの人々の、緊急の課題を解決してきました」と続ける。

では、RxAllの次の展開は?アロング氏は、RxAllが次に力を入れるのはパートナーシップだという。同氏によると、RxAllがナイジェリア、アフリカ、その他の地域でマーケットプレイスやRxScannerの提供範囲を拡大するには、パートナーシップが不可欠だ。

「RxAllは、病院や薬局、患者さんだけでなく、政府や各国のFDA(食品医薬品局)にもRxScannerを販売しています。そのため、ナイジェリアだけでなく、アフリカ、東南アジア、北米、南米など、世界各地でしっかりとしたパートナーシップを確立したいと考えています。私たちが目指すのは、これらの主要市場への規模拡大です」。

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

ナイジェリアの自動車テックAutochekがROAM Africaからのオンライン自動車販売Chekiのケニアとウガンダ事業を買収

ナイジェリアの自動車テック企業であるAutochek(オートチェク)は、現地時間9月6日、Ringier One Africa Media(ROAM、リンギアー・ワン・アフリカ・メディア)からCheki Kenya(チェキ・ケニア)とCheki Uganda(チェキ・ウガンダ)を非公開の金額で買収することを発表した。

声明によると、Autochekは今後数週間のうちに取引を確定する予定だ。今回の買収により、Autochekは東アフリカへの進出を完了し、約1年前にChekiからナイジェリアとガーナの事業を最初に買収したのに続くものとなる。

Chekiは2010年に、ケニアのディーラー、輸入業者、個人販売者向けのオンライン自動車販売事業を開始した。ナイロビに本社を置くChekiは、その後、ナイジェリア、ガーナ、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエに事業を拡大した。

その後2017年にROAMに買収され、Jobbermanのようなネットワーク内のオンラインマーケットプレイスやクラシファイドの仲間に加わった。

ROAMのウェブサイトによると、Chekiはまだタンザニア、ザンビア、ジンバブエで事業を行っている。しかし、これらの市場はかなり不活発なため、実質AutochekはChekiの主な事業をすべて完全に買収したといっていいだろう。

Chekiのケニア市場は、双方にとってワクワクする市場だ。この子会社には70万人のユーザーがいて、毎月1万2000台以上の車両を掲載している。また、過去2年間で前年比80%の成長を遂げているとのことで、Autochekの地域拡大計画にとって貴重な資産となっている。

AutochekのCEOであるEtop Ikpe(エトプ・イッペ)氏は「Cheki Kenyaは、常に最重要部門のような存在でした。ナイジェリアとガーナの買収を完了した当時は、このようなことを意識していたわけではありませんでしたが、実現したことはすばらしいことです」とTechCrunchの取材に語っている。

ケニアでは、ナイジェリアやガーナに比べて、自動車金融におけるクレジットの普及率が高い。東アフリカでの普及率は27.5%であるのに対し、西アフリカ全体市場では5%だ。そのため、Autochekが東アフリカ市場を楽観視しているのも納得できる。今回の買収に先立ち、創業1年の同社は、ガーナやナイジェリアと同様の戦略で、ケニアのいくつかの銀行と共同で、クルマの所有者に資金を提供する試験的な取り組みを行った。今回の買収は、この市場における当社の地位を確固たるものにするものだとイッペ氏は述べている。

Chekiがすべての主要市場で事業を1年以内に売却したことから、4つの事業体の業績が悪かったためにROAMは適切な買い手を早く見つけざるをえなかったのではないか、と考える人もいるかもしれない。

しかし、CEOのイッペ氏は、窮地に追いやられたことによる売買の憶測については否定した。今回の買収が立て続けに行われたのは、Chekiが運営していたクラシファイドモデルが、より現代的な取引モデル(Autochekやアフリカの主要な自動車メーカーが採用している)に移行する必要があることを双方が理解していたからだと述べている。そのため、今回の取引をChekiにとって必要な移行であると捉えている。

イッパ氏は過去にRingier(合併前のROAMの1部門)との関係を築いており、Ringierが最終的に買収したクラシファイド型取引会社であるDealDey(ディールディ)を経営していたため、Autochekに会社を売却することは難しい決断ではなかったと、イッパ氏はTechCrunchに語っている。

「彼らにとっては長期的な戦略であり、私たちのビジネスモデルを信じてくれているのだと思います。そして、私たちが将来的に何かを成し遂げられるという希望を持っています。また、このビジネスと従業員にとって適切な場所を見つけてあげるということでもありました」と述べている。

ROAMのClemens Weitz(クレメンス・ヴァイツ)CEOは声明の中で「世界中で、デジタル自動車プラットフォームの新たな進化が見られ、深い専門性が求められています。特にアフリカでは、Autochekこそが、これまでにない消費者体験を生み出すための、最高のチームと専門知識を持ったプレイヤーであると考えています。ROAM Africaにとって、今回の売買は単に良い取引だったというだけではありません。我々の他の事業の戦略的なシナリオにさらに集中することができるようになります」と述べている。

Autochekの東アフリカへの進出はMoove(ムーブ)、Planet42(プラネット42)、FlexClub(フレックスクラブ)などの自動車関連企業が投資家から注目されている最中のことで、アフリカ大陸では柔軟な自動車金融のニーズが高まり続けている。

この大陸で最も重要な自動車金融市場は、間違いなく南アフリカだ。他の自動車会社も何らかの形でこの市場に進出しているが、Autochekもこの市場での事業拡大を計画している。その理由は明らかだ。

南アフリカは、大陸の中でも自動車ローンの普及率が最も高い、最良の市場だ。競争は激しいように見えるが、イッパ氏は、他社とは異なる市場に合わせたサービスを提供する機会が存在すると考えている。

「当社のプラットフォームの良さは、多様性があることです。例えば、我々は小売りやB2Bのアプローチが可能です。ダイナミックなたくさんのやり方ができるのです。だからこそ、すべての地域に進出することを目標とするのは当然のことだと思っています。東と西に進出しましたが、北と南のアフリカでも同じようでありたいと思って活動を続けていきます」と述べている。

Autochekによると、この目標を達成するための資金調達を現在行っており、年内には完了する予定だ。

画像クレジット:Autochek / Autochek

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Akiito Mizukoshi)

パンデミック後のアフリカのモバイルアプリ市場と急上昇するモバイルゲームアプリ利用率を読み解く

パンデミックは世界のアプリ市場に大きな影響を与えている。モバイルアプリに対する消費者の支出は2021年第1四半期および上半期にそれぞれ320億ドル(約3兆5200億円)、649億ドル(約7兆1700億円)となり、新記録を樹立した。

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アフリカの状況は世界のアプリ市場に関するレポートでもあまり言及されないので、正確な消費者支出を求めるのは難しい。それでも、Google(グーグル)とAppsFlyer(アップスフライヤー)が共同で発表した最新のレポートでは、2020年のパンデミック発生以降のアフリカにおけるアプリ市場の状況について、いくつかの重要な情報を読み取ることができる。

このレポートは、アフリカの3大アプリ市場(ケニア、ナイジェリア、南アフリカ)における、2020年第1四半期~2021年第1四半期のモバイルアプリのアクティビティを追跡している。

この3大市場における6000のアプリと20億のインストール数を分析したところ、2020年上半期から2021年上半期にかけて、アフリカのモバイルアプリ業界(主にAndroid)全体でインストール数が41%増加した。ナイジェリアは最も多く43%増、南アフリカ、ケニアではそれぞれ37%増、29%増となった。

ロックダウン期間の数字

アフリカでは2020年3月22日にルワンダが初めてロックダウンを実施。続いて、ケニア(3月25日)、南アフリカ(3月27日)、ナイジェリア(3月30日)でロックダウンが開始された。

2020年第2四半期からは自宅で過ごす人が増え、アプリのインストール数は3か国で20%増加。南アフリカではロックダウンの影響が最も早く表れ、インストール数は2020年第1四半期と比較して17%増加した。

一方、ナイジェリアとケニアにおける同時期のインストール数の増加は、それぞれ2%と9%だった。レポートによると、このような差は、各国の規制レベルの違いにより生じたものだという。南アフリカは規制レベルが最も厳しく、ロックダウンの頻度も高かった。

2020年第1四半期~第2四半期ではゲームアプリが好調に推移し、非ゲーム系アプリの販売が8%増であったのに対し、ゲーム系アプリは50%増となっている。これは、全世界で2020年第2四半期にゲームアプリのダウンロード数が急増(140億ダウンロード)し、過去最高を記録したトレンドと一致する。

アプリ内課金による収益と前年同期と比較した増加率

AppsFlyerによると、最も大きなトレンドとして注目されるのはアプリ内課金による収益だ。2020年第3四半期におけるアプリ内課金による収益の数字は、2020年第2四半期と比較して136%という驚異的な伸びを示し、2020年の総収入の33%を占めた。レポートによれば「アフリカの消費者が小売店での購入からゲームのアップグレードまで、アプリ内でどれだけ消費しているかがはっきりした」という。

アプリ内課金による収益は南アフリカで213%増加、ナイジェリアとケニアではそれぞれ141%、74%増加した。

スマートフォンの利用時間が増えたことから、アプリ内広告収入も前年同期比で大幅に増加し、2020年第2四半期から2021年第1四半期にかけて167%増加した。

先ほど2020年第1四半期~第2四半期で比較したゲームアプリと非ゲームアプリについては、2020年第2四半期と2021年第1四半期との比較では、それぞれ44%、40%増加している。

フィンテックとスーパーアプリ

過去5年間、アフリカのスタートアップに対するベンチャーキャピタルの投資は、フィンテック分野が圧倒的に多いが、それも当然である。フィンテックは、主にモバイルを利用する、大多数の銀行口座を持たない消費者、銀行口座を使いにくい消費者のみならず、銀行口座を持つ消費者にも多くの価値をもたらす。アフリカにおける10億ドル(約1100億円)規模のスタートアップのうち、1社を除いてすべてがフィンテックであるのは、この価値を踏まえてのことだ。

Disrupt Africa(ディスラプトアフリカ)のレポートによると、アフリカのフィンテックは、2017年から2021年の間に89.4%の成長を遂げ、現在、大陸全体で570社以上のスタートアップ企業が存在する。多くのフィンテックはモバイルベースで、アフリカの消費者が毎日利用するフィンテックアプリの数が反映されている。南アフリカとナイジェリアの消費者によるフィンテックアプリのインストール数は、前年比でそれぞれ116%、60%増加した。

AppsFlyerは、フィンテックアプリと同様に、スーパーアプリも増加していると報告している。スーパーアプリ、すなわち「オールインワン」アプリは、銀行業務、メッセージング、ショッピング、ライドヘイリングなど、さまざまな機能をユーザーに提供する。このようなアプリの増加は、大陸ではデバイスが限られることにも起因するが、フィンテックアプリの急増と同様、システム的な銀行口座の使いにくさも一因である。

レポートは「スーパーアプリは、ユーザーが直面する課題を解消し、顧客情報の取得や従来の銀行では実現できないレベルの利便性の提供を可能とする」と報告している。

AppsFlyerのEMEA & Strategic Projects担当リージョナルバイスプレジデント、Daniel Junowicz(ダニエル・ジュノヴィッチ)氏は、本レポートで取り上げられているトレンドについて次のように話す。「2020年来の(パンデミックによる)混乱にもかかわらず、アフリカのモバイルアプリ市場は盛況で、インストール数は増加し、消費者は今まで以上に多くのお金を費やしています。企業が収益を上げる上で、モバイルがいかに重要であるかがわかります」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:アフリカアプリケニアナイジェリア南アフリカフィンテックスーパーアプリ

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

【コラム】アフリカ諸国政府にブロックチェーンサービスを売って学んだこと

編集部注:本稿の著者Mohammed Ibrahim Jega(モハメド・イブラハム・ジェガ)氏は、Domineum Blockchain Solutionsの共同ファウンダー。連続テック起業家、スタートアップアドバイザー、フィンテック専門家でブロッチェーン推進者。

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アフリカ大陸の大きな魅力の1つは12億という人口であり、そこに獲得可能な巨大市場があることを意味している。しかし、ターゲット顧客が54カ国の政府だと何が起きるのか?

我々のケースがそれだ。Domineum Blockchain Solutions(ドミニエム・ブロックチェーン・ソリューションズ)を設立したのは、アフリカ諸国政府が貨物の出荷と記録管理に関わる問題を解決するのを手助けするためだった。

大変な仕事になることはわかっていたが、最初の顧客を獲得するのが最難関になるとは予想していなかった。

当社の最初のプロダクトは、貨物の出荷元と移動経路を追跡し、あらゆる国との輸出入製品の内容を特定する貨物サービスだった。我々は、貨物が非公式な裏経路を通ることによる収入減少問題を解決するためにこれを開発した。

サハラ以南アフリカに焦点を合わせていた我々は、2019年に4つの国に打診した。母国ナイジェリアとケニア、ガンビア、ギニア共和国の各国だ。

最初に話を持ちかけた時、どの政府からも期待した反応を得られなかった。我々のソリューションを試す準備が整っていなかった。提案は新奇であり、彼らがブロックチェーン技術に馴染みがなかったためだ。動揺した我々は、ターゲットに小国を加えた、シエラレオネだ。

首都フリータウンの港湾は、シエラレオネの貿易の主たる玄関口として貿易量の80%がここを通過している。同港には貿易中継地としての長い歴史があり、ヨーロッパとアメリカ大陸の中間という戦略的に重要な位置の恩恵を受けてきた。

しかし、フリータウンはアフリカはもちろん、サハラ以南アフリカの中でも主要な港湾都市とはいえない。この港を通過するのは、全世界の輸送取扱量の1%にも満たない。世界人口のおよそ0.1%が住むアフリカの小国はダイヤモンド、カカオ、コーヒーなどを輸出し、食糧、機械、化学薬品などを輸入している。

ある時この国は、一連の製品の輸出入に関して大きな課題に直面した。シエラレオネのあるサプライチェーンマネージャーが状況を説明した。「私たちは輸出手続きで大きな課題に直面しました。港で長期に渡る遅延が起きていたのです。深夜前に到着した私たちのトラックは、何時間、時には何日間も順番を待たせられました。書類手続きが非常に複雑でした」。

世界銀行によると、シエラレオネの「貿易問題はいくつかの要因に起因する。貿易情報の欠如、高レベルな現物検査、さまざまな手数料、ライセンス、許可証、証明書。手作業による手続き。当局部署間の連携の欠如など」。Domineumはこれを解決することを目指した。

シエラレオネ政府との最初の話し合いは順調に進んだ。幸運なことに、シエラレオネは国境を越える物品の移動に必要な時間とコストを減らすために、世界銀行グループの支援を受けて5年計画(2018~2023年)を展開していた。目標は、貿易コストの10%削減だ。3カ月に渡る検討の結果、当社の貨物追跡システムが導入された。

当社は2019年の終わりにこの提携事業を開始し、さもなければ失われていた200万ドル(約2億2000万円)の収益を獲得することに成功した。ビジネスモデルはシンプルだ。当社の貨物追跡システムによってシエラレオネ政府が獲得した追加収益の40%を手数料として我々が受け取る。

アフリカに参入する際、ナイジェリアや南アフリカ、ケニアなどの大きくて人気のある市場に焦点を当てたがるのが一般的だ。しかし、これまでに我々が学んだのは、この国々は会社にとって最初の参入国ではない可能性が高いということだ。ビジネス-政府モデルは一筋縄ではいかない。政府と仕事をするためには実にさまざまな政治活動が必要だ。

これまでうまくいっているのが、まずいくつかの国に接触して足がかりを得て、それをコンセプトが通用する検証として使うやり方だ。シエラレオネでの成功を受け、我々は他の国々に戻って、よりよい反応を得られることを期待している。

シエラレオネの成功は、我々が提供していたサービスを考え直すきっかけになった。当初の話し合いは貨物追跡サービスから始まったが、やがて我々は、始めにノーと言った国に別のサービスを提案すべきなのではないかと考えた。

アフリカでは土地登記が共通の問題であることがわかった。アフリカの農村部の90%以上が未登記であり、土地収奪の温床になっている。このことが農業その他の産業の成長を阻んでいる。紛争時に土地が他者に略奪されたり、政府に強制収用されるからだ。

我々は再び各国を訪れ、ブロックチェーンを用いた土地所有登記などのサービスを提案した。ナイジェリア政府から肯定的反応があり、パイロットプログラムを実施することになった。このパイロットフェーズが終わった暁には次のビジネス契約を獲得できることを楽観している。

アフリカ諸国政府とのビジネスはどんな感じだったか?小さくて獲得可能な市場である。もしあなたが、アフリカの国の政府に製品やサービスを売り込むつもりなら、最初の顧客は小さな国にいることを念頭に置くのがよいだろう。

その他のチャンスをつかむために、我々はこの発想に基づいて今後も他のアフリカ諸国への拡大計画を続けていくつもりだ。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:アフリカシエラレオネコラムナイジェリア南アフリカケニア

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(文:Mohammed Ibrahim Jega、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ナイジェリアのテレコム最大手MTNが治安悪化にともなうサービス停止を顧客に警告

ナイジェリア最大のテレコムプロバイダーであるMTNの加入者は、西アフリカの同国でまもなくサービス停止に直面する可能性があると、通知を見た一部のジャーナリストや報道機関が伝えている。

ロイター通信などは、カスタマーサービス担当者からの警告を引用して、ナイジェリアでの治安の悪化がMTNのサービスに支障をきたす可能性が高いと伝えた。2021年を通してナイジェリアの人々は、誘拐、農民と牧畜民の衝突、学生の大量誘拐、武装強盗などと闘うことを強いられている。

「残念ながら、ナイジェリアの各地で治安が悪化しているため、今後数日間、お客様の組織へのサービス提供に影響が出る可能性があることをお知らせします。これは、場合によっては当社のテクニカルサポートチームがお客様のサイトに行けず、障害管理における最適ターンアラウンドタイムをできるだけ早く達成できない可能性があることを意味しています」とMTNはメッセージの中で述べたと報じられている

MTNは現時点でコメントの求めに応じていない。

南アフリカのMTN Groupの子会社であるMTN Nigeriaが2021年第1四半期の財務報告書を発表した際、データ収入は前年同期比43%増の1060億N(約284億円)となり、総収入の28%に寄与するなど、力強い成長を示していた。

データ収入の増加は、有料データサブスクライバー数が前年同期比21%増の3250万人、スマートフォン普及率が前年同期比27%増の3630万人となったことなどに後押されている。これらの数字は、ナイジェリアにおけるMTNの優位性を反映している。ナイジェリア通信委員会(NCC、Nigerian Communications Commission)のデータによると、MTNはナイジェリアのインターネット加入者の43%、携帯電話加入者の38%を占めている。

ナイジェリアの他の通信事業者と同様に、MTNのサービスに関する体験談は、良いかまたは標準以下、と2分される。しかし、TechCrunchの取材に応じたナイジェリアの人々は、政府がTwitter(ツイッター)を禁止する決定を下した後のインターネット規制への懸念とともに、この数週間、後者を目の当たりにしてきた。

理由は異なるものの、現地メディアの報道もロイターの報道を裏付けるものとなっている。ナイジェリアの通信会社の幹部社員で構成されるPTECSSAN(Private Telecommunications and Communications Senior Staff Association of Nigeria)という組合は「恣意的な労働者の解雇と非正規雇用化」に抗議して、6月16日から3日間のスト権ストに入ることを発表した。

PTECSSANは声明の中で、いくつかの理由を挙げてナイジェリアの通信会社各社を非難している。第一に、結社の自由と労働者の組織化権の侵害、組合員の犠牲、そして低賃金と差別的報酬。また、通信事業者らが外国人枠を乱用し、脅迫行為を行い、従業員に嫌がらせや暴言を吐くなどの反労働行為を行っていると主張している。

TechCrunchが問い合わせたMTNのカスタマーケア担当者数人は、上記のメッセージを知らないと述べるか、否定した。「そのようなネットワーク不具合が起きる予定はありません」と1人はいった。別の担当者は「今後数日間のサービス停止に関する情報はありませんので、その旨ご了承ください。何か情報が入りましたら、できるだけ早くお客様にメッセージでお知らせします」と答えた。

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トランプ氏がナイジェリア政府のTwitter禁止を称賛、「他国も追随すべき」

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ナイジェリア労働組合

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Aya Nakazato)

トランプ氏がナイジェリア政府のTwitter禁止を称賛、「他国も追随すべき」

米国時間6月8日、Donald Trump(ドナルド・トランプ)前大統領は声明を発表し、ナイジェリア政府がる同国におけるTwitter(ツイッター)の事業を禁止する決定を支持した。

「自国大統領の利用を禁止したTwitterを禁止したナイジェリア国を祝福します」とトランプ氏が声明で述べた。

前大統領は他の国々に対しても、ナイジェリアにならってTwitterとFacebookを禁止するよう推奨した。

「もっと多くの『国』が、自由で開かれた言論を許さないTwitterとFacebook(フェイスブック)を禁止すべきです。あらゆる声を届けるべきなのです。一方でライバルたちは挙ってこの機会を捉えようとするでしょう。自分自身が悪だったら、果たして善悪を支配できるでしょうか?おそらく私が大統領だったときにそうすべきだったのでしょう。しかしZuckerberg(ザッカーバーグ)は何度も電話をしたりホワイトハウスにディナーにやってきては、どれだけ私が偉大だったかを話していたのです。2024年?」とトランプ氏は話した。

トランプ氏の称賛発言はナイジェリア政府が先週金曜日にTwitterを無期限中止した数日後に起きた。同国政府はTwitterがMuhammadu Buhari(ムハンマド・ブハリ)ナイジェリア大統領のツイートを、同社の虐待行為ポリシーに違反したこと、および国民から複数の削除要求があったことを理由に削除した。彼のツイートは、国の南東地区の分離独立論者を罰すると脅していた。

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ナイジェリア大統領は後に広報官を通じて、Twitter全面禁止は誤情報とフェイクニュースの拡散を防ぐための一時的措置だったと語ったが、新たな命令はそれと相容れない。政府は現地時間6月7日、放送メディアに対し、Twitterアカウントを削除し、Twitterをニュースソースとして使うのを止めるよう命令し、言論の自由を抑圧し、検閲を強制する政府の策略を確実にした。

「上記の命令に従い、放送局は自社のTwitterアカウントを削除し、Twitterをニュースの情報源とすること、および番組宣伝、特に視聴者参加のために使用することを中止するよう勧告する」と声明に書かれている。

トランプ氏はその一方で、1つならず2つの禁止措置を受ける側になっている。2021年1月初め同氏は、米国議会議事堂襲撃を扇動したことでTwitterを永久追放された。Twitterは「さらなる暴力誘因のリスク」への懸念を表明した。

その後トランプ氏はFacebookからも無期限追放された。6月4日、ソーシャルメディアの巨人は、トランプ氏の停止措置を2年以内(計算は1月から)に再検討する決定を下したことを発表した。

「当該期間終了後、当社は公共の安全のリスクが消滅したかどうかを専門家に評価してもらいます。私たちは外部要因、たとえば暴力事象、平和的集会の制限、その他の市民の不安を表す指標を評価します。その結果公共の安全への深刻なリスクが未だに存在すると判断した場合には、制限を一定期間延長し、リスクが消滅するまで再評価を続けます」とFacebookのGlobal Affiars and Communications担当副社長のNick Clegg(ニック・クレッグ)氏が語った。

最終的に停止が解除されたときには、将来トランプ氏がさらに違反を重ねた際に発動されるであろう強硬な制裁措置が施行され、同氏のページとアカウントの永久削除される可能性もある。

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ナイジェリアが大統領の投稿削除を受けツイッターを無期限停止に

ナイジェリア政府は現地時間6月4日、情報文化省を通じて、ソーシャルメディアプラットフォームTwitter(ツイッター)の国内での活動を無期限に停止すると発表した。

Lai Mohammed(ライ・モハメド)情報文化相が発表し、同省のメディア補佐官Segun Adeyemi(セグン・アデヤミ)氏によって承認されたこの声明により、国内の通信キャリアがナイジェリアの人々のTwitter利用を妨げる可能性がある。

同省が発表した声明は以下の通り。

連邦政府は、マイクロブログおよびソーシャルネットワーキングサービスであるTwitterのナイジェリアにおける運営を無期限に停止しました。ライ・モハメド情報文化相は、金曜日にアブジャで発表した声明の中で、ナイジェリアにおける企業の存続を脅かすような活動にこのプラットフォームが継続的に利用されていることを理由に、この停止を発表しました。

同大臣によると、連邦政府は国家放送委員会(NBC、National Broadcasting Commission)に対し、ナイジェリアにおけるすべてのOTTおよびソーシャルメディア事業のライセンス取得プロセスを直ちに開始するよう指示しました。

4日の発表は、この1週間に起こった出来事が積み重なった結果だ。Twitterは6月3日、Muhammadu Buhari(ムハマドゥ・ブハリ)大統領が、同国南東部のIPOB(Indigenous People of Biafra、ビアフラ先住民族)と呼ばれる分離独立派集団を政府施設への攻撃の原因とした後、報復を示唆したツイートと動画を削除した。その後、同氏は1960年代のナイジェリア内戦の出来事に言及し、多くのナイジェリア人の怒りを買ったようだ。

1980年代に同国の国家元首を務め、軍で分離独立派と戦った経験を持つブハリ氏は、同国南東部の若いナイジェリア人たちは若すぎて、戦争中に起きた恐ろしい出来事を覚えていないと述べた。同氏によると、現在の分離独立派の活動は戦争に向かっている可能性が高いため、事前に武力で阻止することが先を見越した良策だという。

「30カ月間現場で戦争を経験した我々(のような古参者)は、彼らが理解できる言葉で接します」と同氏は述べていた。

Twitterは、同氏のツイートが不適切な行為に関するポリシーに違反しており、ナイジェリアのユーザーから何度も削除を求められたため、ツイートを削除することを選択した。また、Twitterは同大統領のアカウントを停止し、12時間の間「読み取り専用モード」にした。

Twitterの決定を受けてモハメド情報相は、この決定は偏っているとソーシャルメディアの巨人を非難し、大統領には国に影響を与える出来事について自分の考えを述べる権利があると述べた。彼はまた、同国におけるTwitterの意図にも疑念を呈した。「Twitterには独自のルールがあるかもしれませんが、それは世界共通のルールではありません。世界のどこかで大統領がある状況について非常に悪いと感じ、懸念しているのであれば、そのような意見を表明する自由があります。ナイジェリアにおけるTwitterの使命は、非常に疑わしいものです」。

報復行為としてナイジェリア政府は、同国におけるTwitterの運営停止措置を進めた。Twitterは同国にオフィスを持っていないが、この発表はまださらに進展する可能性がある。ナイジェリアの現政権は、インターネットや特定ウェブサイト、ソーシャルメディアへのアクセスを制限するための策略を講じることで知られている。2020年10月にナイジェリアで起きた「EndSARS(SARSを終わらせろ)」抗議活動の際も、そのような手段がとられた。アフリカの他の国々でも何らかの形でインターネットが制限されたり禁止された過去の出来事を考えると、これはナイジェリア政府がこうした戦術をさらに強化し、通信事業者を使って言論の自由を抑圧しようとする明らかな策略だ。

アフリカ初のオフィスをガーナに開設したばかりのTwitterは、TechCrunchへのメールで、「ナイジェリア政府が発表した、ナイジェリアでのTwitterの業務を停止するという発表は、非常に憂慮すべき事態です。現在調査を行っており、情報が入れば追加で提供します」と述べた。

その後、同マイクロブログプラットフォームは公共政策アカウントを通じて、次のようにツイートした。

ナイジェリアでTwitterがブロックされていることに深い懸念を抱いています。自由な#OpenInternetへのアクセスは、現代社会において不可欠な人権です。

ナイジェリアでTwitterを利用して世界とつながりコミュニケーションをとっているすべての人々のために、アクセスの回復に努めます。#KeepitOn

2021年4月にTwitterは、アフリカでの本拠地をナイジェリアにすると思われていたところ、ガーナを選んだ。その理由として、ガーナが言論の自由、オンラインの自由、オープンインターネットを支持していることを挙げていたが、今回の出来事を見る限り、これは賢明な判断だったといえるだろう。

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Aya Nakazato)

アフリカでの銀行業務と決済のためのローカルソリューション構築を目指すナイジェリアのAppzone

アフリカのフィンテック分野は、ここ数年の投資で一定の注目を集めているが、スタートアップ企業の多くが、高品質な製品の提供を課題としている。それでも従来型のコスト構造や極めて低い業務効率などの課題を抱える伝統的な銀行と比較すると、スタートアップ企業の首尾は上々のようだ。

フィンテックソフトウェアを提供するAppzone(アップゾーン)は、伝統的な金融機関のバンキングサービス・決済サービス向けに独自のソリューションを構築している数少ない企業の1つである。2021年4月、同社は1000万ドル(約11億円)のシリーズA資金調達ラウンドを完了したと発表した。

アフリカの金融機関は、通常、問題が生じた際に海外の技術ソリューションを利用しているが、その場合、価格、変化に対する柔軟性、現地の技術サポートの不足といった問題が付きまとう。ここに目を付けたEmeka Emetarom(エメカ・エメタロン)氏、Obi Emetarom(オビ・エメタロン)氏、Wale Onawunmi(ウェール・オナウンミ)氏の3人は、2008年、ナイジェリアのラゴスを拠点としてAppzoneを設立した。

Appzoneの手法は他のアフリカのフィンテック企業とは明らかに異なる。他社と明確に差別化される要因の1つは、同社が銀行や決済におけるイネーブラ(enabler、手助けする存在という意味。ここでは決済レールやコアインフラ)として機能しているという点にある。

同社は、商業銀行にカスタムソフトウェア開発サービスを提供するサービス会社として設立された。2011年に、マイクロファイナンス機関をターゲットとした最初の勘定系サービスを発売。2012年に商業銀行向けの最初のサービス(ブランチレスバンキング)を発売し、2016年にはモバイルバンキングとインターネットバンキング向けのサービスを開始、2017年にカード即時発行サービスを発売した。2020年には、銀行の融資業務におけるエンド・ツー・エンドの自動化サービスとブロックチェーンの交換に対応したサービスを開始した。

AppzoneのCEOであるオビ・エメタロン氏はTechCrunchに次のように話す。「私たちは(アフリカ)大陸における銀行業務と決済のための革新的なローカルソリューションを構築することを目指してAppzoneを立ち上げました。焦点となったのは、イネーブラとしての力を活用して、この分野での独自技術を開発することでした」。

画像クレジット:Appzone

Appzoneのプラットフォームは、アフリカの18の商業銀行と450以上のマイクロファイナンス金融機関で利用されていて、年間の取引額は20億ドル(約2200億円)、年間の融資額は3億ドル(330億円)に達する。

Google for Startups Acceleratorにも参加した同社は、設立以来、アフリカのフィンテック分野をリードし、アフリカからいくつかの世界初の試みを行ったという。1つ目は、世界初の分散型決済処理ネットワークの構築。2つ目は、クラウドでの勘定系およびオムニチャネルソフトウェア。そして3つ目が、複数の金融機関での口座振替サービスである。

エメタロン氏は、Appzoneを独自技術に重点を置いたフィンテック製品のエコシステムと表現する。このエコシステムの2つの層、すなわち、金融機関の業務全体を動かすソフトウェアを提供するデジタル勘定系サービスと、ブロックチェーンを利用した分散型ネットワークに金融機関を統合する銀行間処理については上述のとおりだ。

Appzoneは、今回の資金調達で、エンドユーザー向けのアプリケーションに焦点を当てた第3の層を導入し、規模を拡大する。銀行とフィンテックの両方のレイヤーを構築してきた同社は、次に個人や企業と自社のサービスをつなげようとしている。新時代のフィンテックスタートアップのほとんどが参入している分野で、Appzoneは遅れて参入することにはなるが、エメタロン氏は優位に立っていると考えている。

「エンドユーザー向けのアプリケーションを提供する企業の多くは、自社サービスを提供するために、勘定系システムと銀行間処理サービスに頼らざるを得ません。私たちはすでに両方のレイヤーで事業を展開しており、コストや柔軟性の面で優位性があると考えています」と、エメタロン氏は他社との競合について話す。

10年以上もひっそりと活動してきたAppzoneだが、ここにきて製品やサービスの規模を爆発的に拡大しようとしている。450以上の顧客の大部分はナイジェリアを拠点としているが、同社はまず、アフリカ全土への拡大を真剣に取り組む。コンゴ民主共和国、ガーナ、ガンビア、ギニア、タンザニア、セネガルは存在感を増しているが、Appzoneには、これらの有望な市場に積極的に参入するためのリソースが不足していた。シリーズA資金調達ラウンドを完了した今、同社はこれらの国々を手始めに、さらにアフリカ全土に拡大していく計画だ。

また、Appzoneは規模の拡大を実現するために、同社が誇るエンジニアリングチームをさらに成長させることを計画している。すでに従業員150人のうち半数がエンジニアであるが、この数を2倍に増やす。ナイジェリアの多くのスタートアップ企業と同じように、Appzoneもシニアエンジニアを重視している。しかし、他の企業ではシニアエンジニアの不足が問題になっても、Appzoneでは有望な若手人材を育成して専門知識を身につけさせることができる、とエメタロン氏は話す。

「わずかなコストでイノベーションを起こすことができる私たちの独自の技術は、基本的に地元の優秀な人材によって構築されています。私たちのシステムは非常に複雑で、必要とされるイノベーションのレベルも別次元です。文字通りナイジェリアのトップ1%の人材を求めています」とエメタロン氏。「たとえ専門知識がなくても、最高の人材を育成すれば、専門性の高い人材をスムーズに得られることがわかっています。エンジニアを育てれば育てるほど彼らの専門性は高まり、私たちが期待する世界標準グレードの品質でサービスを提供できるようになります」。

Appzoneの共同創業者兼CEOオビ・エメタロン氏(画像クレジット:Appzone)

資金調達ラウンドに話を戻そう。注目すべき点は、参加した投資家のほとんどがナイジェリアを拠点としていることで、公開されている情報によると、ナイジェリアの投資家が主導したラウンドとしては最大規模であることは間違いない。主導したのは、ラゴスに拠点を置く投資会社のCardinalStone Capital Advisers(カーディナルストーンキャピタルアドバイザー)V8 Capital(V8キャピタル)Constant Capital(コンスタントキャピタル)Itanna Capital Ventures(アターナキャピタルベンチャーズ)の他、ニューヨークを拠点とし、アフリカに特化した企業であるLateral Investment Partners(ラテラルインベストメントパートナーズ)も参加した。

これまでにAppzoneは、南アフリカのBusiness Connexion(BCX、ビジネスコネクション)から200万ドル(約2億2000万円)のラウンドを2014年に獲得している。その4年後には、転換社債で250万ドル(約2億7000万円)を調達し、その過程でBCXから株式を買い戻した。全体としては株式発行による資金調達で1500万ドル(約16億3000万円)を獲得したことになるという。

CardinalStone Capital Advisersの共同設立者兼マネージングディレクターのYomi Jemibewon(ヨミ・ジュマイボワン)氏は、今回のAppzoneへの投資について、アフリカが将来的に世界クラスのテクノロジーの拠点となる可能性をさらに証明するものだと話す。

「Appzoneは、アフリカの金融業界のバックボーンとなる革新的なフィンテックエコシステムを構築しており、決済、インフラ、サービスとしてのソフトウェアにまたがる商品を提供しています。Appzoneは、アフリカ大陸全体の金融包摂(Financial Inclusion)を推し進めるサービスと同時に、金融機関に最適な低コストのソリューションを提供していて、この企業活動がもたらす影響は多岐にわたります。また、優秀な人材に重点を置くことで頭脳流出を防ぎ、アフリカの優秀な人材に最高の雇用機会を提供しています」とジュマイボワン氏。

アフリカのフィンテック分野は、2021年1月の低迷の後、Appzoneの資金調達も含め、ペースの速い投資活動を継続している。この2カ月を見ると、2月には南アフリカのデジタルバンクTymeBank(タイムバンク)(1億900万ドル、約119億円)、3月にはアフリカの決済会社Flutterwave(フラッターウェーブ)(1億7000万ドル、約185億円)による大規模な資金調達など、8社以上のフィンテック企業が100万ドル(1億900万円)規模の資金調達を行った。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Appzone資金調達アフリカナイジェリア

画像クレジット:Appzone

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

ナイジェリアの証券取引委員会が投資プラットフォームの「未登録」外国証券取引を禁止へ

ナイジェリアの資本市場規制機関であるSEC(証券取引委員会)が現地時間4月8日に公開した発表文によると、この国で外国証券を取り扱う投資プラットフォームは危機状態に陥るかもしれない。

最近明らかになったSECの規制によると、これらのプラットフォームは国に登録されていない外国証券を取引しており、中止するよう警告を受けている。彼らと提携している資産市場運用者も、外国証券向けの仲介サービス提供に関する規則に違反しているとして警告されいる。

この3年間、ナイジェリアのフィンテック分野にはRobinhood風の証券取引プラットフォームであるBamboo、Trove、Chaka、Riseなどが次々と登場してきた。これらの会社はナイジェリア国民向けに、現地および外国市場の株式、債権その他の証券取引サービスを提供している。こうしたプラットフォームは中流階級の間で人気があり、国の通貨であるナイラの切り下げから資産を守る避難場所として利用されている。

とはいえ、その運営方法はRobinhoodとは大きく異る。Robinhoodは取引アプリであると同時にオンライン仲介(紹介・清算)を行い、ゼロ・コミッション(手数料なし)取引業者でもある。ナイジェリアの投資プラットフォームはそれとは異なる。米国ではどの取引プラットフォームでも仲介ライセンスを取得できるのに対して、ナイジェリアでライセンスを得るのは非常に困難だからだ。そこで資産市場運用者(この場合は国内および外国の仲介企業)がプラットフォームと提携を結び、その結果ナイジェリアの人々は国内および一部の外国証券を売買することができる。

さまざまな政府機関がテックスタートアップに対して一連の規制攻撃をかけた後、2020年12月にSECが続いた。SECはプラットフォームの1つであるChakaを選び出し、株式の販売と広告を行ったとして告発した。SECの定義した容疑は、Chakaが「外国企業、たとえばGoogle、Amazon、Alibabaなどの株式を購入するプラットフォームを提供し、必要な登録を行うことなく委員会の規制範囲を超えた投資活動に関与した」こととしている。

ChakaのCEOであるTosin Osibodu(トーシン・オシボドゥ)氏は一切の不正行為を否定し、2021年に入ってからこの日の発表まで、この件についてSECから何も聞いていなかったと語った。当然規制当局は途切れていた捜査を継続し、今回初めて、Chakaだけでなく、仲介企業を含むすべての投資プラットフォームを標的にした。SECの厳格な指示は、ナイジェリアに登録済みの取引所に上場していない外国証券の販売、発行あるいは販売斡旋を中止せよというものだ。

これが示唆しているのは、今後投資プラットフォームは業務を縮小し、現地の株式と証券取引だけしか個人に提供できなくなるということだ。これは、こうしたスタートアップのビジネスモデルに影響を与える。そして彼らが提供する中心的価値である、ナイジェリア人がナイラ切り下げ対策として資産を預ける行為が打ち消される危機に瀕している。

しかし、SECとの小競り合いの末、先月Chakaは当局と交渉した結果、新たに制定されたライセンスを取得すれば、規制による危機から逃れられる可能性があることを発表した。これは他の投資プラットフォームがSEC規制下で運用するためにも必要となる手続きだ。

規制当局がウェブサイトで以下の情報を公開している。

証券取引委員会(以下「委員会」)は、いくつかのオンライン投資・取引プラットフォームが、異なる法域に登録された証券取引所に上場している外国企業の証券をナイジェリア連邦共和国の投資家が直接取引する手段を提供していることを察知した。当該プラットフォームは委員会に登録されている資産市場運用者(CMO)と提携して運営しているとも主張している。

委員会は、2007年投資証券法(ISA)第67~70条、およびSEC規約第414、415項の規定により、ナイジェリアに登録された取引所に上場されている外国証券のみがナイジェリア国民に対して発行、販売、あるいは販売または斡旋可能であることを断じて宣言する。このため、当該オンラインプラットフォームと連携して働いているCMOには、委員会の立場を通知するとともに、今後行為を中止するよう勧告する。

委員会は一般投資家に対し、通常およびオンライン媒体を通じて宣伝された投資商品に関して、確立された伝達経路を通じて要求された明確な情報を取得することを強く要求する。

カテゴリー:フィンテック
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画像クレジット:George Osodi/Bloomberg / Getty Images

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アフリカへの送金サービスを提供するAfriexがシード資金1.3億円を調達

米国からナイジェリアに送金するのは厄介な作業だ。Western Union(ウェスタン・ユニオン)のような送金サービスを使うと、送金手数料が必要で米国のデビットカードから送ったお金がナイジェリアの銀行口座に届くまでには1~5営業日かかる。

この国境を越えた支払いの問題を、時間と手数料を減らすことで解決しようと登場したのが仮想通貨送金プラットフォームだ。つい米国時間3月22日、本誌は現在Y Combinator 2021年冬組にいてこの問題を解決しようとしているFlux(フラックス)というナイジェリアのフィンテックを取り上げた。そして本日、3月23日にこれもYC出身のスタートアップ(こちらは2020年夏組)、Afriex(アフリークス)が1200万ドル(約13億円)のシードラウンドを完了した。

同社はTope Alabi(トープ・アラビ)氏とJohn Obirije(ジョン・オビリエ)氏が2019年に設立し、母国や離れ離れのアフリカ人たちに手数料無料の即時送金サービスを提供している。ユーザーはアプリで現金を入金し、別のユーザーの銀行口座に送金したり、登録した銀行やデビットカードに出金することができる。

仮想通貨送金プラットフォームと同じく、Afriexは自社ビジネスを米ドルとの交換レートが決められているステーブルコインに基づいて事業を構築した。要するにこの会社は仮想通貨をどこかの国で買い、レートの良い別の国で売っている。よく知られているWestern UnionやWiseのように伝統的銀行システムを使っているプラットフォームとは対照的だ。

2020年YCを卒業した時点で、このスタートアップは30か国以上にわたって月間約50万ドル(約5400万円)の手数料を稼いでいた。当時Afriexはナイジェリアと米国のみでサービスを提供していた。そしてガーナ、ケニア、ウガンダで事業を開始して以来、Afriexは毎月数百万ドル(数億円)を処理しているという。ただし同社ウェブサイトでAfriexは、利用者はナイジェリア、ガーナ、ケニア、カナダおよび米国の各国間のみで送金できると書いている。

新たな投資によってナイジェリア、ラゴスとサンフランシスコに拠点を持つ同社は、チームを拡大し、他の市場に進出することが事業規模の成長を目指している。

汎アフリカのVC会社であるLaunch Africaがシードラウンドをリードした。他に、Y Combinator、SoftBank Opportunity Fund、Future Africa、Brightstone VC、Processus Capital、Uncommon Ventures、A$AP Capital、Precursor VenturesおよびIvernet Holdingsが出資した。エンジェル投資家のRussel Smith(ラッセル・スミス)氏、Mandela Schumacher-Hodge Dixon(マンデラ・シューマッハ-ホッジ・ディクソン)氏、Furqan Rydhan(フルカン・リダン)氏およびAndrea Vaccari(アンドレア・ヴァッカリ)氏も参加した。

SoftBank Opportunity FundはSoftBankグループの子会社で、米国の有色人種ファウンダーをターゲットにしている。2020年6月の設立以来、22社のスタートアップに投資しており、Afriexは米国と他の大陸のユーザーを対象とした唯一の会社のようだ。

これはアラビ氏が移民の子として両方の世界を知っているという生い立ちによる。ナイジェリアへの送金は困難であり、Consensysでのブロックチェーン開発者としての経験から、自分なら問題を解決できると気がついた。

「当時私たちは2年毎に国に帰っていて、私はその頃から何が欠けていて、何が改善できるかを書き留めていました。あるとき、海外での出費を米国の銀行口座にあるお金で支払わなくてはいけないことに気づきました」とアラビ氏はいう。「伝統的送金会社は非常に遅い上に手数料が高く、仮想通貨でもっとうまくできることを知っていました。送金は最高かつ最重要仮想通貨の利用方法です。私たちの目標は世界最大の送金会社を作ることであり、新興国から始めます」。

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook