“日本未発売”のオーガニック商品が買える「ナチュラカート」運営が2.6億円を調達

世界中の質の高いナチュラル&オーガニック商品を、日本にいながら“日本語”で、“日本の決済手段”を使って購入できるマーケットプレイス——cartが運営する「ナチュラカート」を簡単に紹介するとそんなところだろうか。

近年日本でも健康面や安心面に気を使う消費者を中心に、オーガニック商品が注目を集めている。ただcart代表取締役の橋本雅治氏いわく、日本は関連商品の流通量が非常に少ない「オーガニック後進国」だ。

予防医療の発達などの影響もあり良質な商品が豊富に出回っている欧米やオセアニアに比べ、日本では様々な規制なども影響して購入できる商品の数が限られているそう。そんな状況を変えるために橋本氏は2016年にcartを創業し、ナチュラカートを立ち上げた。

そのcartは2月13日、SMBC ベンチャーキャピタル、りそなキャピタル、三菱UFJキャピタル、アライドアーキテクツ、BEENOSを引受先とする第三者割当増資により総額約2.6億円を調達したことを明らかにした。

今回調達した資金を活用して開発面やデザイン面を中心に組織体制を強化するほか、プロダクトの改善やマイクロインフルエンサーと連携した集客モデルの構築などを目指す方針。cartは2016年11月にもジャフコなどから3億円を調達していて、累計の調達額は約5.6億円になる。

海外で注目浴びる“日本未発売”のオーガニック商品を掲載

ナチュラカートは海外在住の個人や国内外のメーカーが出品するさまざまなナチュラル&オーガニック商品を購入できるプラットフォームだ。C2CとB2Cを組み合わせたハイブリッドモデルを採用していて、商品の出品者は大きく個人のバイヤーとメーカーの2タイプに分かれる。

C2CのモデルはファッションECの「BUYMA(バイマ)」を知っている人にはわかりやすい。海外にいるバイヤーが自分の気に入った商品を出品し、購入者から注文が入ったものを実際に買い付けて配送する。買い物代行にも近い仕組みで、ナチュラカートは双方を仲介する役割を担う。

一方のB2Cはブランドと消費者を繋ぐシンプルなマーケットプレイス。現在はオーガニック食品やコスメ、ナチュラルサプリなどを扱う国内外のメーカー約150社が出店している。橋本氏によると海外メーカーについてはほとんどが日本に進出していない企業なのだそう。「規制や流通面の複雑さなどが障壁になって、進出したくてもできなかった」メーカーが日本へ参入する際の選択肢として、ナチュラカートを選んでいるのだという。

サイト全体では約2000ブランド、3万点以上の商品を掲載。幅広いジャンルを扱っていて日本では未発売の商品も多い。マヌカハニーやハーブトニック、オーガニック粉ミルクなど海外で人気を集める商品を、現地に行かずともネットを介して気軽に購入できるのが特徴だ。

創業者はイデアインターナショナルを立ち上げた連続起業家

cart創業者の橋本氏はインテリア雑貨などを扱うイデアインターナショナルの創業者でもあり、2014年まで同社の代表取締役を勤めていた人物。上場も経験している、いわゆる連続起業家(シリアルアントレプレナー)だ。

イデアインターナショナル代表時には自社でオーガニックのコスメブランドを立ち上げたりもしていたが、「今に至るまでいろいろな参入障壁があり、なかなか日本国内に良質な商品が流通していかなかった」(橋本氏)ことを課題に感じ、cartを設立した。

創業時からcartに関わっているエグゼクティブ・アドバイザーの田中禎人氏は、上述したBUYMAを運営するエニグモの共同創業者。田中氏もオーガニック商品の流通面における日本と海外のギャップに目をつけ、BUYMAと同じようなモデルでこの問題を解決できたら面白いと考えていたのだという。

結果的にはB2Cモデルに知見がある橋本氏と一緒に、両者の得意領域を組み合わせるような形でスタート。ナチュラカートがC2CとB2Cの両方を取り入れているのはそんな背景があるからだ。

そのようにして始まった同サービスはもう少しでローンチから丸3年を迎える。その間にも「マーケットは間違いなく拡大している」というのが橋本氏の見解。たとえばイオンが食品やコスメの領域を中心にオーガニックのブランドを立ち上げたり、フランスのオーガニック専門スーパーであるビオセボンに出資したニュースなどは話題に上った。

オーガニックブランドを扱うアメリカ発のECサイト「iHerb(アイハーブ)」などの地名度も若い世代を中心に高まってきてはいるが、まだまだ海外の良質な商品が十分に流通しているとは言えない。cartでは今後もその土壌作りを継続していく計画だ。

今後はウェルネス視点を融合、将来はD2Cの展開も

cartのメンバー。前列左から2番目が代表取締役CEOの橋本雅治氏、後列左から2番目がCOOの越智幸三氏

今回の資金調達はまさにナチュラカートを一層拡大させるためのもの。調達した資金を活用して組織体制の強化やプロダクトの改善を測るほか、調達先のBEENOSとは越境ECノウハウの提供や海外の倉庫機能と連携した物流⾯での効率化など、事業上の連携も見据える。

合わせてこれまで着手していなかった新しい取り組みも計画中だ。ひとつは従来のナチュラカートで中心となっていたナチュラル&オーガニックジャンルに、ウェルネスの要素を取り入れること。cartでCOOを務める越智幸三氏は「近年オーガニック商品を求める消費者のニーズが変わってきている」ことがこの背景にあるという。

「家族や自分自身の健康を考えて、体に良い商品を使いたい。そんな健康志向でオーガニック商品を買う人たちが増えていて、(オーガニック商品を)ファッションで買う時代ではなくなってきている」(越智氏)

その要望に応える形で、ナチュラカートではより医療や科学的な視点から商品を選別する取り組みを考えている。具体的には「たとえばこの商品には水溶性食物繊維がどのくらい含まれていて、それにはどのような作用がある」など専門家の正しい解説を加えることで、各ユーザーが本当に欲しい商品を見つけやすい仕組みを目指す。

「医者やアスリートなど、エキスパートと連携することでユーザーにとってより価値のあるサイトにしていきたい。今まではユーザーの顕在化したニーズに依存していた側面が強かったが、何かぼんやりとした悩みがあった時に訪れても適切な解決策が見つかる場所を目指す」(越智氏)

この点については共同創業者の湯本優氏が医師/医学博士で、なおかつスポーツ医科学トレーニングやフィットネスの専門家であるため、湯本氏の知見やネットワークも活用できそうだ。

またもうひとつ、さらに将来的な構想としては「日本にない良質なものを取り扱うだけでなく、そもそも世にないものを作るというアプローチ」も検討していくという。いわゆる「D2C」的なアプローチだ。

もともとcartのメンバーはものづくり系のバックグラウンドを持つメンバーが多い。橋本氏はもちろん、COOの越智氏もユニリーバや西友でリアルな商品の企画や製造、販売に携わってきた。そこにナチュラカートで蓄積された販売データと、原料メーカーなどとのネットワークを合わせることで、cartオリジナルの商品を作ることも橋本氏の頭の中にはあるようだ。

「ナチュラカートはリサーチの場にもなる。どんな商品が人気なのか、どんな商品が求められているのか。その要望に十分に応えるものがないのであれば、自分たちで作ってしまってもいい。まだ会社として具体的な話が決まっているわけではないが、自分としては世の中にないものを作るチャレンジもしたい」(橋本氏)