LG Energy Solutionが豪州企業とニッケルとコバルトの購入契約を締結、EV用バッテリー製造のため

韓国のLG Energy Solution(LGエナジーソリューション)は、豪州の鉱山会社と6年間にわたるコバルトとニッケルの購入契約を締結し、電気自動車用バッテリーの製造に必要な主要鉱物の安定供給を確保した。

LG Chem(LG化学)の子会社であるLG Energyは、2024年末からAustralian Mines Limited(オーストラリアン・マインズ・リミテッド)から7万1000ドライメトリックトンのニッケルと7000ドライメトリックトンのコバルトを購入する。これは、1回の充電で310マイル(約500キロメートル)以上の走行距離を持つ130万台のEV用のバッテリーを作るのに十分な原材料だ。

LGエナジーソリューションのCEOであるJong-hyun Kim(ジョンヒョン・キム)氏は「近年、世界中で電気自動車の需要が高まる中、重要な原材料を確保し、責任あるバッテリーサプライチェーンを構築することは、業界内での支配力を高めるための重要な要素となっています」と述べた。

この材料は、Australian Minesがクイーンズランド州で15億豪ドル(約1200億円)を投じて開発中のスコーニプロジェクトから調達する。このプロジェクトでは、ろ過した尾鉱を保管するために「ドライスタッキング方式」を採用している。鉱石を地域の水源に投棄したり、地下の採石場に埋めたりするのではなく、ドライスタッキングによって廃棄物から水分を取り除き、砂状の物質にして管理施設で安全に保管する。

LG Energyは声明で「ドライスタッキング法は、建設費や維持費などがかかるため、従来の方法に比べてコストは高いものの、環境に優しい原料採取方法だと考えられています」と述べた。

本契約の唯一の条件は、Australian Minesが2022年6月末までに本プロジェクトの建設資金を確保することだ。融資が確保された場合、この契約は同サイトの予想生産量のすべてを占めることになる。

なお、両社は相互の合意により、契約をさらに5年間延長するオプションを有している。

LG Energyは、世界最大級のバッテリーおよびバッテリー材料メーカーであるLG Chemの子会社だ。同社は2021年7月にバッテリー事業、特に負極材、分離膜、正極バインダーの生産に6兆ウォン(約5570億円)を投じたと発表した。また、2021年夏の初めには、Queensland Pacific Metals(クイーンズランド・パシフィック・メタルズ)と、10年間にわたり年間7000トンのニッケルと700トンのコバルトを購入する契約を締結した。契約は120億ウォン(約11億円)の価値があるとされている。

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LG Chemは、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、General Motors(ゼネラルモーターズ)、Tesla(テスラ)などを顧客としている。LG Chemは、世界のバッテリー市場が今後数年間で拡大し、2021年には39兆ウォン(3兆6200億円)、2026年には100兆ウォン(9兆2800億円)になると予想している。

原材料確保を目指すのは大手企業だけではない。Teslaはバッテリー原料を独自に確保するため、7月にコモディティ生産大手のBHPと西オーストラリア州の鉱山からニッケルを調達する契約を結んだ

また、LG ChemとGeneral Motorsとの合弁会社であるUltium Cells(アルティアム・セルズ)のように、OEMメーカーがバッテリーメーカーと提携してバッテリーを開発するケースもある。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラが高まるニッケル需要に備え鉱山大手BHPと供給契約を締結

Tesla(テスラ)は、鉱業資源の巨人BHPからのニッケル供給を確保した。今後10年で需要の急増が見込まれている原材料の直接提供元を確保しようとする同社の最新行動だ。

BHPのNickel Westディビジョンは、オーストラリア西部の同社鉱山から非公表の量のニッケルを提供する。両社はバッテリーサプライチェーンの持続可能性の向上、および再生可能エネルギーと組み合わせたエネルギーストレージを使ってそれぞれの事業運用における炭素排出量削減方法でも協力する。

ニッケルはリチウムイオン電池の主要な鉱物であり、Teslaの次世代バッテリー化学の主役だ。リチウムイオン電池の多くがニッケル、マンガン、コバルトから成るカソードを使っているのに対して、Teslaは異なる戦術を取っている。TeslaのBattery Day 2020カンファレンスでElon Musk(イーロン・マスク)氏は、一部のモデル向けに、ニッケルが多くコバルトを使わないカソードに投資すると語り、エネルギー密度を高くするためであることを理由に挙げた。

Teslaは、次の10年にバッテリー生産を増強する意向に迷いがない。2022年までに100ギガワット時、2030年までには年間3テラワット時相当のバッテリーを生産する計画だ。

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それに向けて同社は、ニッケル生産最大手との購入契約締結にすばやく動いている。2021年Teslaは、フランス領ニューカレドニアのニッケル製造企業との提携を発表した。そのわずか数カ月後、TeslaのRobyn Denholm(ロビン・デンホルム)会長は、同社がオーストラリアからだけで年間約10億ドルのバッテリー用鉱物を購入するつもりであることを認めた。

マスク氏は、鉱山会社にもっとニッケルを生産するよう再三要請してきた。7月の投資家向け電話会見で同氏は生産者に対して「Teslaはニッケルを効率よく、かつ環境を重視した方法で採掘する会社と長期の大型契約を結びます」と語った。Battery Dayカンファレンスでも同氏は同じ立場を繰り返した。「スケーリングするためには当社のニッケル総入手量が制約を受けないようにする必要があります」と彼は言った。「実際私は世界最大の鉱山会社のCEOに『もっとたくさんニッケルを作ってください、非常に重要なのです』と言ったほどです」。

しかし、環境に優しいニッケル供給源を見つけるのは容易ではない。現在の回収、精錬技術特有の問題も関係しているし、採掘会社が直接管理可能な問題もある。例えば世界最大の金属生産国であるインドネシアのニッケル採鉱事業は、石炭への依存と廃棄物処理技術に関して非難の的になっている。

BHPは同社の活動は世界最大級に持続可能だと謳っており、Teslaがパートナーとしてこの会社を選んだことはその事実を裏付けるものと見ることができる。同社は2021年2月に、あるニッケル精錬所の使用電力の50%が太陽エネルギー由来であると述べている。

現在、世界のニッケル供給の大部分が鉄鋼産業によって消費されている。現在のEVとエネルギー貯蔵分野のニッケル需要は比較的少ないが、International Energy Agency(国際エネルギー機関)は2020年の81トンから2040年には3352トンへと、今後20年間に4000%以上増加すると予測している。

歴史的にNickel Westは、BHPの鉄鉱、銅、および石油事業と比べて全事業のごくわずかな部分でしかない。BHPは2015年前後にNickel Westを数度に渡って売却しようとしたが、EVとエネルギーストレージ分野の需要の高まりから方針転換したようだ。

業界アナリストのBenchmark Minerals(ベンチマーク・ミネラルズ)は、Teslaとの契約は年間1万8000トンのニッケルに相当する価値があると推測した。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook