Mirukuは動物ではなく植物から乳製品を生み出す

Mirukuはニュージーランドのフードテック企業で、分子農業の手法を利用して植物の細胞を小さな工場へとプログラミングし、タンパク質や脂肪、糖分など、従来は動物が作ってきた分子を生産しようとしている。

同社は2020年にAmos Palfreyman(アモス・パルフリーマン)氏とIra Bing(イラ・ビン)氏、Harjinder Singh(ハージン・ダーシン)氏そしてOded Shoseyov(オデッド・ショセヨフ)氏ら、全員が乳業や植物科学の経験があるメンバーが創業した。現在、企業や研究開発者とのパートナーシップにより、Mirukuのラボや温室で開発されており、規模を拡大し、地域横断的に実施される予定だ。

CEOのパルフリーマン氏の説明によると、同社のアプローチには植物作物の増殖と工学的手法によりその細胞を乳製品に変える工程が含まれている。これは、精密発酵のような技術を利用する同分野の競合他社とは異なっている。彼らは培養室の中で乳タンパクを醸造し、外部からの動物の細胞を利用して、培養室の中で乳のビルディングブロックを作っている。

Mirukuがそれらと違うのは、植物作物を増殖して本物の乳のビルディングブロックを植物自身の中で、太陽のエネルギーを利用して作ることだ。その意味では同社は、タンパク質を乳牛よりも効率的に生み出し、乳牛の役割をなくすことによって、畜産への依存を減らし、それにより水や土壌や環境へのダメージを抑える。

「私たちのタンパク質成分は、本物の乳製品のような味と匂いだけでなく、本物の乳製品と同等の栄養価を持つ乳製品を作ります。それらは、おいしいチーズサンドイッチを食べて消化した後に体が使うのと同じアミノ酸構成要素で体を作り、修復するのを助けます。そして、チーズケーキや上等なペコリーノチーズのようなおいしいものを作ったり焼いたりする本物の乳製品のように機能します」とパルフリーマン氏はいう。

フードテックの課題は、十分な量のタンパク質や食品原材料を作れるほどの規模を実現することにあるが、Mirukuの場合それは「植物の正しいプログラミングにより、哺乳類のタンパク質と同等の構造と機能を作り出す技術的な課題が大きい」とパルフリーマン氏は語る。

彼によると、プラントの規模拡大は単純明快だ。目的とするタンパク質を作り出せる植物を作り出せたら、その種子で生産の規模拡大はできる。それは温室用の一握りでもよいし、農場用の大量の種子でもよい。

複雑で難しいのは、特定の特徴を作り出して、それを増殖することだ。それは往々にしてエネルギーの使用量と形質のレベルとのトレードオフを要する。しかしパルフリーマン氏が信じているのは、Mirukuの計算生物学の利用と技術の経済分析で作り出される最適形質が、スケーラビリティのその部分を解決するだろうという点だ。

同社はまだ開発途上だが、パルフリーマン氏の構想では、2〜3年後には同社のプロテインが商用化されているだろう。しかし、その前にはプロトタイプと概念実証が必要だ。彼の予想では最初の製品は既存の食品企業との提携によるものになり、企業が作る食品のタンパク質成分を提供することになるだろう。

それでも、パルフリーマン氏が主張するのは、Mirukuがアジア太平洋地域では初めての、分子農業による乳製品スタートアップであることだ。同社のような企業はすでに世界各地にあって、たとえばNobell Foodsはすでに分子酪農を手がけており、NotCoClimax FoodsPerfect Dayなどは、動物を使わない技術で5000億ドル(約60兆円)の酪農市場に挑戦している。過去半年以内では、下記の各社がベンチャー資金を調達している。

  • Better Dairyは精密発酵の技術でチーズを作っている。2月に2200万ドル(約26億円)を調達
  • The EVERY Companyは、植物を使って卵を作っている。12月に1億7500万ドル(約210億円)を調達
  • Perfeggtも、植物から卵を作っている。11月に280万ドル(約3億4000万円)を調達し、3月にシードラウンドを390万ドル(約4億7000万円)に拡張した
  • Stockheld Dreameryは、さや豆の野菜からチーズを作り、9月に2000万ドル(約24億円)を調達した。

Mirukuは最初の18カ月、創業者たちの自己資金でやってきたが、このほど240万ドル(約2億9000万円)のシード資金を調達した。投資をリードしたのはMovacで、Better Bite VenturesやAhimsa Investments、Aspire Fundらが参加した。

これにより同社は、本格的に拡大できることになり、パルフリーマン氏のいう正しいパートナーを見つけて同社を顧客に結びつけ、次のラウンドのための基礎を築くことになる。パルフリーマン氏によると、次の資金調達は2023年とのこと。

新たな資金は、技術者の増員とパートナーシップの開拓、そして開発プログラムのスピードアップに充てられる。Mirukuは2022年すでに社員を増員し、パルフリーマン氏としては、毎年倍増したいのことだ。

Mirukuはすでに大手食品企業と組んで、その製品開発に協力している。また、いくつかの国で開発事業に参加し、その中には環境や気候関連の事業もある。また、生産者や調合師、そしてブランドとの協力もある。

パルフリーマン氏によると「私たち確かにアーリーステージの企業だが、すでに消費者市場に近い戦略的パートナーと一緒に急速に進歩しています。イノベーションと成長により、資本が必要になり、最初のラウンドを閉じたばかりですが、そう遠くない未来にそれによる成長を経験するでしょう」という。

画像クレジット:iStock

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

巨大な電子レンジを使って短時間かつ安価に金鋳物を製造するFoundry Lab

Easy Bake Oveenを覚えているだろうか?色のついた粉と水を混ぜて生地を作り、それを型に入れてオーブンに入れると、いつの間にか「チーン!」と鳴って気持ちの悪いお菓子ができあがる。ニュージーランドを拠点とするスタートアップ企業のFoundry Lab(ファウンドリー・ラボ)は、化学物質と「オーブン」の代わりに、金属と電子レンジを使って同じようなことをする方法を発見した。

Rocket Lab(ロケット・ラボ)のPeter Beck(ピーター・ベック)氏から支援を受けているFoundry Labは、米国時間11月29日に800万ドル(約9億900万円)のシリーズA資金を調達してステルス状態を脱した。同社は「文字通り、巨大な電子レンジ」を使って、金属の3Dプリントよりもはるかに早く金属部品を鋳造すると、創業者兼CEOのDavid Moodie(デイヴィッド・ムーディ)氏は述べている。

「ユーザーにとっては非常に簡単です。文字どおりの型を取り、冷たい金属の粉末や金属の鋳塊を投入し、電子レンジに入れてボタンを押して立ち去るだけです」と、ムーディ氏はTechCrunchに語った。「出来上がったときには、チーンと音も鳴ります。電子レンジで夕食を温めるのと同じくらい簡単です」。

(Foundryの電子レンジは、ニュージーランドの典型的なミートパイの調理にも使用されたことがある。わずか数秒で出来上がったものの、ムーディ氏によるとすばらしい味ではなかったそうだ)

インベストメント鋳造、3Dプリント、ダイキャストなどの一般的な鋳造方法では、製造に1週間から6週間かかる。Foundryによると、同社ではコンピューター支援設計(CAD)で3Dプリントした金型と巨大な電子レンジを使って、自動車用のブレーキシューを8時間足らずで完成させたことがあるそうだ。現在は亜鉛とアルミニウムに対応しているが、ステンレススチールの試作にも成功しており、将来的には銅や真鍮などの他の金属にも挑戦したいと考えているという。

Foundryの技術は、将来的には金属の3Dプリントがカバーできない製造業に適用することが考えられるものの、当面の目標は、自動車メーカーの研究開発チームが量産に入る前のテストや試作に使用できる、量産型と同じように機能する金属部品を開発するのに役立つことだ。

「私たちが交渉中のある企業では、1台の自動車が市場に出るまでに600台もの試作車を作っています。その間に変更や改良を繰り返すため、あっという間に費用がかさむことになります」と、ムーディ氏は語り「そのための工具の費用は5万ドル(約560万円)から10万ドル(1120万円)以上になることもあります」と付け加えた。

ムーディ氏は、Foundryを設立する前、工業デザインのコンサルタント業を営んでおり、大量生産のための製品を設計していた。試作品では3DプリンターやCNCマシンで製造された部品を使用しているため、量産品とは物理的な構造が違っている可能性があるという理由で、試験機関から常に申請を却下されることに、同氏は不満を感じていた。

「そこで私は、ニュージーランド人らしく物置に行き、運良く機能する方法を見つけたのです」と、ムーディ氏はいう。最近のニュージーランドでロックダウンが行われていた期間には、ムーディ氏が作業場に入れなかったため、実験の多くは一般的な電子レンジを使って行われたという。「我々が解決しようとしているのは、実際の鋳造であり、ダイキャストをシミュレートしながら、それをより速く、安く行うことです。ダイキャストを作るために工具で機械加工をすると、3~6カ月かかってしまうのが普通です」。

Foundryはまだ設立から間もない会社だ。現在はその超大型の電子レンジを数台しか所有しておらず、潜在的な顧客に試用してもらっている段階だ。今回のシリーズAラウンドは、オーストラリアで設立されたVCのBlackbird(ブラックバード)を中心に、GD1、Icehouse(アイスハウス)、K1W1、Founders Fund(ファウンダース・ファンド)、Promus(プロマス)、WNT Ventures(WNTベンチャーズ)が出資している。同社ではこの資金を使って、2023年末までに生産体制を整える予定だ。

さらに資金の一部は、スタッフの増員にも充てられる。同社はここ数カ月で急速に成長しており、資金調達を開始した当初は6人だったスタッフが、現在は17人のフルタイム社員を擁するまでになっている。さらに今後数カ月で35人に増やすことを目標としているものの、ニュージーランドでは新型コロナウイルス感染拡大の影響で国境が閉鎖されているため、難しい状況だ。

「国境が閉鎖されていることが、私たちに打撃を与え始めています」と、ムーディ氏はいう。「この国にはマイクロ波の専門家が2人いますが、2人とも仕事を持っています。これが特に大変です。だから、誰かに助けに来てもらおうとしているところです」。

ニュージーランドでは、今週オークランドがロックダウンを解除し、12月中旬には都市の境界線が国内の他の地域に開放されるなど、内部的な開放が始まっている。オミクロンの新種が事態を悪化させない限り、2022年4月30日からワクチンを接種した旅行者の受け入れを始める予定だ。そうすれば、Foundryをはじめとするニュージーランドのスタートアップ企業は、海外から人材を採用するチャンスを得ることができる。

Foundryはニュージーランドを拠点に開発を進めながらも、米国や欧州の市場をターゲットにしている。同社のロングゲームは、電子レンジの研究を続け、大量生産に必要な台数を製造できるようにすることだ。

画像クレジット:Foundry Lab

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

さまざまな便利機能が使えるツイッターの有料サブスク「Blue」が米国とニュージーランドでも提供開始

Twitter(ツイッター)の有料サブスクリプションサービス、Twitter Blueが米国時間11月9日から米国とニュージーランドで始まる。Twitterに最も魅せられているユーザーにアピールするさまざまな機能を提供する。同サービスはiOS、Android、ウェブのいずれにおいても月額2.99ドル(約340円)で利用可能。Twitter Blueは2021年の夏、まずカナダとオーストラリアに登場し、ブックマークを整理したり、Twitterスレッドをきれいなフォーマットで読んだり、ツイートのタイプミスを投稿される前にすばやく修正するなど、さまざまなツールをサブスクライバーに提供した。今回の提供範囲の拡大にともない、Twitter Blueのユーザーは最近公開されたTwitter Labsを通じていくつかの新機能を早期に利用できる他、数百社のパブリッシャーが提供する無広告のニュース記事を読めるようになる。後者はScroll(スクロール)の買収によって可能になった。

そして、追加のボーナスとして、TwitterはScrollのニュース集約サービス、Nuzzel(ナッツェル)を「Top Articles」という名称の新機能として復活させる。

Nuzzelには少数ながら熱心なユーザーベースがおり、TwitterがNuzzelの親会社であるScrollを買収した後、同サービスを終了させたことを残念がっていた。同サービスはTwitterに欠けているツイートの集約レイヤーとして振る舞い、ユーザーのTwitterでつながっている人たちがプラットフォーム上で何を読み、何をシェアしているかを見せてくれる。Twitterのトレンドをただスクロールしていくのと比べて、何が話題になっているのかをよりパーソナルな形で提供する。

画像クレジット:Twitter

この日Twitterは、これと同じ機能をTop ArticlesとしてTwitter Blueサブスクライバーに提供すると発表した。ユーザーは過去24時間に自分のネットワークでもっともよくシェアされた記事を知ることができる。

他にも、保存したツイート(別名「ブックマーク」)をフォルダーで整理して見つけやすくしたり、Twitterのテーマのカスタマイズや、カスタムアプリアイコンの選択、Twitterの長いスレッドをワンタッチで読みやすくフォーマットされた形で閲覧する方法などがTwitter Blueで標準提供される。

画像クレジット:Twitter

そしてもちろん、Twitter Blueは、Twitterで一番求められてきた機能である「edit」(編集)ボタンに最も近いものとして、「Undo Tweet」(ツイートを取り消す)ボタンをサブスクライバーに提供する。これは、ツイートの投稿が完了する前にユーザーがタイプミスを見つけて修正できるもので、すでに公開されたツイートを修正することはできない。

画像クレジット:Twitter

Twitter Blueにはパーソナライズ機能もいくつかある。テーマの変更、カスタムアイコンに加えて、アプリ下のナビゲートタブを、Twitteスペース、ブックマーク、Top Articles、Monetization(収益化)など、好みのTwitter機能に変更できるようになった。これによってユーザーはTwitterがよりパーソナライズされたと感じられるだろうが、Twitterにとっては、今後推奨したい新機能を目立つ場所に設置する機会が制限を受けることになる。

画像クレジット:Twitter

BlueのサブスクライバーはTwitter Labsも利用できる。Twitterが初期段階の機能をまず実験する場所だ。Twitter Labsは当初、10分間の長いビデオをウェブからアップロードできる(一般ユーザーは最大2分)機能と、気に入ったダイレクトメッセージ(DM)の会話を受信箱のトップにピン留めする機能を提供する。いずれも以前発表されたものだ

画像クレジット:Twitter

他に、Twitterにシェアされているニュース記事を、広告や邪魔なものを見ることなく読める機能が追加された。この機能も、TwitterがScrollを買収したことで実現したもので、Scrollがやっていたのと実質的に同じように動作する。同社は数百社のパブリッシャーと提携して、リンクをクリックしたTwitter Blueサブスクライバーに、高速読み込み、広告無しの閲覧体験を提供する。主な参加パブリッシャーには、The Washington Post、BuzzFeed / BuzzFeed News、Rolling Stonre、Variety、Deadline、The Hollywood Reporter、IndieWire、Huffpost、The Atlantic、Insider、USA Today、MacRumors、BGR、Slate、Daily Beast、Miami Herald、Stylecaster、TV Line、Salon、Mother Jones、 The Sacramento Bee、The Philadelphia Inquirer、SEJなどがいる。

Twitter Blueメンバーが対象サイトにリンクされたニュースをクリックすると、広告のない閲覧体験を、Twitterではなく、パブリッシャー自身が提供する。現在300社の米国拠点サイトがTwitter Blue上にあり、今後「もっと増える」とTwitterは言っている。

画像クレジット:Twitter

高速読み込みや邪魔の入らないニュース閲覧は、FacebookのInstant ArticlesやGoogleのAMPなど他のテック巨人も提供している機能だ。しかしこれらの取り組みは、パブリッシャーを特定のフォーマットに縛り付けることで、プラットフォームにおける発見性を支配しかなねい、として議論になっている。プラットフォームが収益の増額などの約束を守らない、あるいはパブリッシャーに提供するユーザーデータが限られているなどという批判を受けたこともある。

しかしTwitterは、同社のニュース閲覧機能はサブスクライバーがお気に入りのサイトを支援する方法の1つであり、Twitter Blueのサブスクリプション料金の一部は協賛パブリッシャーに直接支払われると強調した。アプリには、ユーザー自身が閲覧したことでどのサイトが支払いを受け取ったか、いくら収益を上げたかがわかるグラフもある。

このプランは、少額支払いが広告よりも多くの収益を生むようにするためのものだとTwitterは言っている。

「私たちのゴールは、各サイトがユーザー1人あたり、その人に広告を配信するよりも50%多く収入を得られるようにすることです」とTwitterのプロダクト担当シアニディレクターのTony Haile(トニー・ヘイル)氏が新機能の紹介で語った。「Twitterでは、すぐれた公共の場での対話には、ジャーナリズムエコシステムの繁栄が必要であることを認識しています。そのためにBlueでは、サブスクライバーにとってのよりよいインターネットだけでなく、ジャーナリズムにとってもよりよいインターネットを実現しようとしています」と付け加えた。

しかしこうした少額支払いは、読者にサイトを直接訪れさせることで、広告だけでなくサイトが提供するその他のプロモーションや取り組みと出会うことから得られる潜在収益を完全に置き換えるまではいかない可能性がある。サブスクリプションや無料 / 有料ニュースレター、チケットなど、パブリッシャーが読者に見せたいものはいろいろある。Twitter Blueの読者は、一般ウェブ読者のようにサイトを再訪問できなくなり、総合的なエンゲージメントがを減らす可能性もある。

画像クレジット:Twitter

Twitterは、Twitter Blueの機能の一部は、開始当初、地域やプラットフォームによって変わる可能性があると語った。

Top Articlesは、Androidおよびデスクトップでまず提供される。アプリアイコンやテーマなどのパーソナライゼーション機能、カスタムナビゲーションとDM対話のピン留めはiOSのみだ。長時間ビデオのウェブからのアップロードは、当然、デスクトップのみ。

この日の公開によって、Twitter Blueは米国、カナダ、オーストラリア、およびニュージーランドで利用できるようになった。同社は今後このサブスクリプションを他の市場でも提供する予定だが、現時点では計画についてコメントできないという。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

学生の心のケアなどをサポートするNZのウェルビーイングプラットフォーム「Komodo」が約1.4億円調達

思春期というのは感情の浮き沈みが激しい時期であり、その難しさは新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによってさらに悪化している。個人的な問題や学校での問題を抱えている10代の若者は、どんなに良い時期であっても、普段それらのことについて口にするのが難しいと感じるかもしれない。ニュージーランドを拠点とするスタートアップのKomodo(コモド)は、学生がスタッフとコミュニケーションできる場を提供すると同時に、学校側がうつ病やいじめなどの問題を発見して対処するためのデータを提供する、学生向けのウェルビーイング・プラットフォームだ。

2018年にChris Bacon(クリス・ベーコン)氏、Matt Goodson(マット・グッドソン)氏、Jack Wood(ジャック・ウッド)氏によって設立されたこのスタートアップは、Folklore Ventures(フォークロア・ベンチャーズ)が主導し、Icehouse Ventures(アイスハウス・ベンチャーズ)とFlying Fox Ventures(フライング・フォックス・ベンチャーズ)が参加して、180万ニュージーランド・ドル(約1億3900万円)のシード資金を調達したことを米国時間8月30日に発表した。個人投資家としては、従業員エンゲージメント・プラットフォームCulture Amp(カルチャー・アンプ)の共同創業者Rod Hamilton(ロッド・ハミルトン)氏、Culture Ampのピープルサイエンス・ディレクターChloe Hamman(クロエ・ハンマン)氏、ラーニング・プラットフォームEducation Perfectのリーダーたちと、Auror(オーラ)のピープルエクスペリエンス・ディレクターのKristi Grant(クリスティ・グラント)氏などが参加している。

ニュージーランドとオーストラリアにおけるKomodoの顧客やパートナーには、クイーンズランド州のMarist College Ashgrove(マリストカレッジ・アシュグローブ)、クライストチャーチのSt.Andrew’s College(セント・アンドリュー・カレッジ)、Australian Boarding Schools Association(オーストラリア・ボーディング・スクール協会:ABSA)、Independent Schools of New Zealand(ニュージーランド・インディペンデント・スクール)、Council of British International Schools(英国インターナショナル・スクール協会)などが挙げられる。

Komodoは、もともとベーコン氏がカンタベリー大学で博士号を取得した際に行った研究をもとに、青少年アスリートの健康状態をモニターするために作られた。Komodoの顧客の多くは学校であり、そこで初めてチームはKomodoの対象範囲を広げていくこととなった。

「具体的な事例を目の当たりにしたことが、自分たちにとって大きな魅力でした。学校側から『過去3カ月間、いじめられていた子がいて、彼らはスタッフに相談する自信がありませんでした。それが、Komodoを使うことでようやくそのような話ができるようになり、彼らも自分たちの悩みを伝えるための内々の手段があることに満足しています』という連絡がありました」。とウッド氏はTechCrunchに述べている。

Komodoの共同創業者であるジャック・ウッド氏とクリス・ベーコン氏(画像クレジット:Komodo)

Komodoには、ウェブアプリケーション版と、ほとんどの学生が利用しているモバイルアプリ版がある。このプラットフォームは学校ごとによってカスタマイズすることができ、心理学者が作成したアンケートや、生徒が学校に行くことについてどう感じているか、社交性や人間関係、高校入学や大学入学の準備といった人生の大きな転機に関するトピックの質問が含まれている。生徒がKomodoにアクセスする頻度は、学校によって異なる。週に1回のところもあれば、2週間や1カ月に1回のところもある。例えば、リモートで授業をしている場合は、より頻繁にチェックインするなど、学校の環境に応じてプラットフォームの使い方が異なっている。

学校側は、アンケートで収集したデータをもとに、傾向を把握し、ネットいじめなどの潜在的な問題を早期に発見することができようになる。Komodoを導入する前、いくつかの学校では学生のウェルビーイング調査を年に数回行っていたが、その多くはスタッフや教師の勘に頼っていた。例えば、普段は外向的な生徒が突然内向的になった場合などがある。Komodoを使えば、より効率的に問題を特定し、対処することができる。しかし、ウッド氏とベーコン氏は、Komodoが人と人との直接的なコミュニケーションに取って代わるものではないと強調している。

「できるだけ早い段階で学生に精神的なサポートを提供することが、私たちの最終的なビジョンです」とベーコン氏は述べている。また、Culture Ampのハミルトン氏とは「データを受け取った相手がそれを本当に理解し、定期的に活用できることがいかに重要か」多くの時間をかけて話し合ったという。「私たちにとって重要なのは、学校のスタッフをサポートするために必要な、状況把握のための能力と心理学の専門家を今よりももっと多く提供することです」と付け加えている。

Komodoのシード資金は、社内チームに心理学者を増やし、プラットフォームを開発し、米国を含む他の市場に進出する前に、オーストラリアとニュージーランドのさらに多くの学校に展開していくために使用される。

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画像クレジット:natalie_board / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Akihito Mizukoshi)

電動ユーティリティバイクUBCOは持続可能性に優れるサブスクモデルで世界展開と循環型経済分野のリードを目指す

電動ユーティリティーバイクのスタートアップ企業でニュージーランドを拠点とするUBCO(ウブコ)は、米国市場を中心としたグローバル展開と商用サブスクリプションサービス事業の規模拡大のために、1000万ドル(約11億円)の資金調達を行った。

UBCOの主力製品である「UBCO 2×2」は、ダートバイクのような外観でありながら、モペッドのように乗ることができる全輪駆動の電動バイクだ。農家が牧草地や農場を簡単に、安全に、すばやく移動するためのソリューションとして始まったUbco製品は、今では配達業務用途の法人顧客や、ギグエコノミーワーカー、シティライダーに使用される都市部向けバージョンを含むラインナップにまで拡大している。

2015年に創業してから、同社は2つのバージョンの電動ユーティリティバイクを製造してきた。オリジナルのオフロード車である「Work Bike(ワーク・バイク)」と、街乗り用に作られているがオフロードにも十分に対応できる新バージョンの「Adventure Bike(アドベンチャー・バイク)」だ。

UBCOは、Seven Peak Ventures(セブン・ピーク・ベンチャーズ)、Nuance Capital(ニュアンス・キャピタル)、TPK Holdings(TPKホールディングス)が主導するラウンドで新たな資金を獲得したことで、フードデリバリー、郵便サービス、ラストマイル物流など、既存の垂直市場の分野を拡大していきたいと考えている。同社はすでに、ニュージーランドとイギリスのDomino’s(ドミノ・ピザ)と提携している他、ニュージーランド・ポスト、国防軍、自然保護局、Pāmuなどの国内企業や、地元のレストランや店舗などを顧客としている。

同社共同設立者でCEOのTimothy Allan(ティモシー・アラン)氏は「当社はニュージーランドで強力なエンタープライズ市場を有しており、国際的にも強力な販売パイプラインを構築しています」と、TechCrunchに語っている。

現在、UBCOの収益の大半は一般消費者向けの直販が占めているが、同社は企業向け、特にサブスクリプションサービスを積極的に推進している。2×2は、車両と電源システム、クラウド接続、データ分析などを含むインテリジェントなプラットフォームとして構築されているため、サブスクリプションモデルは車両マネジメントシステムとの連携が可能だ。

同社はサブスクリプションによる年間経常収益の増加を推し進めることで、2020年に210万ドル(約2億3000万円)だった収益が、2021年末には840万ドル(約9億3000万円)にまで上昇すると見込んでいる。UBCOのサブスクリプションモデルは、配達用途などで複数台の車両を使用する企業向けに、1台1週間あたり75~85ニュージーランドドル(約5800〜6600円)で提供するというもので、2021年から2022年にかけて、ニュージーランド、オーストラリア、英国、欧州、米国で展開を予定している。同社の広報担当者によると、一般消費者も今後2、3カ月以内にサブスクリプションを利用できるようになるという。

アラン氏は、EV業界の未来はサブスクリプションにあると考えている。それは、収益性が高いだけでなく、環境面でも持続可能性に優れるからだ。このビジネスモデルを拡大することで、同社は循環型経済の分野をリードしていきたいと考えている。

UBCOでは、サブスクリプションモデルで運用される車両の寿命は、販売される車両の4倍になると予測しており、内燃エンジン車と比較すると二酸化炭素の排出量を80%削減できるとしている。

「サブスクリプションとは、当社で車両を所有し、そのライフサイクルを管理することを意味します」と、アラン氏はいう。「例えば、製造されてから最初は、ピザの配達で6万キロメートル、あるいは農地で3万キロメートルといった過酷な状況に使用します。そしてその後、車両をもっと低強度の用途に転用させます。さらにその後は、バッテリーを取り出して、太陽光発電の蓄電池などの用途に利用することができます」。

耐用寿命後の問題を解決することは、個人としても職業上でも困難であり、誰も正しい方法を完全には理解していないため、創造の余地があるとアラン氏は考えている。彼はリサイクルを容易にするために、車両のエンジニアリングにはボトムアップのアプローチを取っていると語る。

「例えば、バッテリーを設計するときに、難燃性の発泡体を入れるのはやめた方がいい。寿命が尽きたときに元に戻せないからです」と、アラン氏はいう。「つまり、正しいラベルを貼ることから始まり、意図を持ってエンジニアリングを行い、そのような製造上のことも想定して設計し、さらに会社の事業や商業システムが、そのコンセプトをサポートする必要があります。現在、私たちは経済性と動機が一致しており、ニュージーランドのプロダクトスチュワードシップ法にも適合しているので、優位な立場にあります」。

実務で使用される車両を使って循環型経済を実現しようとするのは、単に環境のために正しいことをするというだけではない。アラン氏はこれが最終的にはビジネス上の賢明な決断であり、それが顧客を惹きつけ、法人顧客に競争力を与えるものになると考えている。

「当社の顧客はその一翼を担うことになります」と、アラン氏は語る。「私達がそれを可能にするためには、顧客が快適に利用できるようにサブスクリプションと車両の寿命を設計しなければなりません。ほとんどの人は正しいことをしたいと思っています。私たちは、論理的に経済に適合し、大規模に行うことができ、全体的に管理できるシステムを提供することができるのです」。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:UBCOサブスクリプション電動バイク循環型経済ニュージーランド持続可能性

画像クレジット:UBCO

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)