プロダクションと化した大手ストリーミングサービスの労働条件をめぐってストライキが起きそうだ

NetflixやDisney+、Apple TVなど、いわゆる「ニューメディア」企業の労働条件をめぐる紛争で、今後の組合の票決によっては、国中のプロダクションが閉鎖になるかもしれない。何千人もの労働者たちがこれまで折りに触れて、不当な給与や休憩時間、安全対策などの要求を訴えてきた。それら不当な扱いの原因となってきた契約上の抜け穴がこれらの企業に、既存の映画やテレビのプロダクションの労働基準を無視させてきた。

この紛争はエンターテインメント業界の報道が大きく扱い、またセレブたちや制作スタジオも支持を表明、そして無数の労働者たちが、これらのプロダクションにおける仕事のホラーストーリーを共有した

この問題の起源は、国際映画劇場労働組合(International Alliance of Theatrical Stage Employees, IATSE)の説明によると、Netflixなどの企業が、既存のスタジオのような労働インフラストラクチャを持たないまま、独自のプロダクションで映画等の制作を始めたときの、2009年の合意にある。これら「ニューメディア」企業の経済性は「不確実」で、そのため、未知数の参入者たちを組合の規則が邪魔するような現場の状況では、彼らには「より大きな柔軟性」が認められるとされた。

しかしその同じ合意が、これらのサービスの経済性がある程度確立してきたときには、そのことを認めた上で、新たな合意に替えられるべし、と言っている。そしてIATSEによると、その時が来た

そして今や、それに異論を唱える者はいない。今のNetflixはメディア産業の強力な企業であり、DisneyやApple、Amazonなども、これまででもっとも高名なメディアプロダクションに数十億ドルを投じている。それでも彼らは「ニューメディア」だから、Lord of the Ringsの新作でも、Bridgertonの次のシーズンでも、照明さんや小道具さんには「オールドメディア」のプロダクションのようなお昼の休憩時間や、妥当な給与計算が保証されない。


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もちろん、これらの企業のプロダクションがすべて地獄ではない。多くはプロデューサー次第だ。しかし保証が何もないので、多くの労働者たちが体質としての搾取と呼ぶ状態が生まれる。公式の給与額よりも長時間働かされ、休日週末労働が当たり前になる。しかも収入は、UniversalやA24で同じ仕事をしたときより少ない。

これらの企業の超大作プロダクションは、いつも賑やかに報道され、お金持ちのサブスクライバーを取り合って数十億ドルの制作費が投じられる。各社が、つねに一社で数十件の企画を同時進行していて、コンテンツに対する底なしの需要を満たすために異様な過密スケジュールで製作が行われている。Stranger Thingsの新シーズンが間に合わなかったら、別のものが「新Stranger Things」になり、Netflixの投資対象になる。

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それに対してテクノロジーの世界では、これらのプロダクションの人的コストについてはあまり書かれない。それは、エンターテインメント業界の話だ。でも、テクノロジー企業が「イノベーション」の有利性を強調して、その反動に関して口をつぐむのは常套手段だ。FacebookやGoogleやAmazon、Uber、DoorDashなどなどの機能やポリシーがもたらす怖ろしい結果のニュースが一つもなくて、最近の一週間が終わることはない。

そんな企業の一部が搾取的な労働環境を育てていたとしても、意外ではない。むしろ、すでに多くの企業がそれに依存しているだろう。

いずれにしても、IATSEと経営者団体である全米映画テレビ制作者連盟(Alliance of Motion Picture and Television Producers, AMPTP)の交渉は頓挫し、そして組合はストライキの可否を労働者の投票に尋ねている。数日後に出る投票の結果が「イエス」なら、大量のプロダクションが閉鎖する前に「ニューメディア」 が十分な提案を行なう最後のチャンスになる。

IATSEの理事長Matthew Loeb氏は今日のプレスリリースでこう述べている: 「私たちは一致団結して、業界全体にわたる、もっと人間的な労働条件を要求している。AMPTPを構成する巨大企業が、私たちの中核的なプライオリティへの対応を怠り、労働者を人間の尊厳をもって扱うことをしないならば、彼らの心を変えるために私たち全員の連帯が必要になるだろう」。

もちろん、関係者の全員がストライキを避けたいだろうが、もし実現すればそれは、誰がどう見ても敵対的な業界を変えようとする、組織労働者たちの感動的なデモになるだろう。交渉が成功してほしいし、プロダクションのプロフェッショナルたちは今後、メディアの新しい君主たちに踏みにじられることなく、彼らにふさわしい休憩をもらってほしい。

(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)
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