ニューヨークでジオフェンス令状とキーワード検索令状を禁止する法案の支持が高まる

ニューヨークで、州の法執行機関が論争の的になっている令状を使って、テクノロジー企業から住民の個人的なユーザーデータを入手することを禁止する法案が、最初に提出されてから2年後、再びチャンスを得ることになった。

この「Reverse Location Search Prohibition Act(逆位置検索禁止法案)」は2021年、ニューヨーク州議会と上院に民主党議員のグループによって再提出された。2年前に通過しなかったこの法案は、先日まず委員会に付託された。これは議場での投票が検討される前の最初の大きなハードルとなる。

この法案が可決されれば、米国の州法としては初めて、ジオフェンス令状やキーワード検索令状を禁ずることになる。これらの令状は、特定の時点に犯罪現場の近くにいたユーザーの位置情報データや、特定のキーワードを検索したユーザーの情報を、法執行機関がGoogle(グーグル)などのテクノロジー企業に提出するよう求めることができるというものだ。

ジオフェンス令状は「逆位置」令状とも呼ばれるもので、法執行機関が容疑者の特定に役立てるために、ユーザーの携帯電話やアプリから何十億もの位置情報を収集・保存しているGoogleに対し、犯罪が起きた際に一定の地理的範囲内にいた携帯電話の記録を引き渡すように、裁判官に令状を求めることができる。

ジオフェンス令状は、Google特有の問題である。法執行機関は、Googleの位置情報データベースが利用できることを知っており、Googleはそのデータベースを広告事業の推進に利用し、2021年は1500億ドル(約17兆円)近い収益を上げている。

Googleの検索についても同様だ。法執行機関は裁判官に令状を請求し、特定の時間帯に特定のキーワードを検索した個人の情報を、Googleに提供するよう求めることができる。あまり知られていないが、キーワード検索令状は広く使われており、Googleに限らず、Microsoft(マイクロソフト)やYahoo(ヤフー)からも、この種の法的手続きを用いてユーザーデータが収集されている

このような令状の使用は、電子フロンティア財団のようなインターネット人権団体から「漁猟」と呼ばれており、同財団はアメリカ自由人権協会(ACLU)とともにニューヨークの法案を支持している。この種の令状は、犯罪とは無関係の近くにいる無実の人々のデータも必ず収集するため、憲法違反と人権侵害であるとの批判がある。

TechCrunchは2021年、ミネアポリス警察がジオフェンス令状を使って、2020年に起きた警察官によるGeorge Floyd(ジョージ・フロイド)氏の殺害事件をきっかけに暴力行為に及んだとされる抗議者を特定したと報じた。その際、NBC News(NBCニュース)やThe Guardian(ガーディアン紙)の報道では、まったく無実の人々が、犯罪現場に近かったというだけで、暗黙のうちに犯罪の嫌疑をかけられていたことを明らかにした。

関連記事:ミネアポリス警察がGoogleにジョージ・フロイド氏抗議行動者特定のため個人データを要求

Googleが公表しているデータによると、ジオフェンス令状は、同社が受け取る米国内の法的要求の約4分の1を占めているという。位置情報や検索語を現実の容疑者に結びつける情報源として、Googleが法執行機関の間で広く知られるようになってから、同社は2020年に1万1500件以上のジオフェンス令状を処理したが、この慣行がまだ比較的初期の段階にあった2018年には1000件に満たなかった。

ニューヨーク州は、ジオフェンス令状全体の約2~3%を占めており、その数は数百件にのぼる。

関連記事:米国政府がグーグルに要求した令状の4分の1がジオフェンスに関するもの

ブルックリン中心部を代表するニューヨーク州の上院議員で、上院の法案を後援したZellnor Myrie(ゼルナー・マイリー)氏は、TechCrunchに次のように語っている。「私が代表を務めるブルックリンのような密集した都市コミュニティでは、単に犯罪現場の近くに住んでいたり歩いていたりするだけの何百人、何千人もの無実の人々が、個人の位置情報を引き渡すジオフェンス令状に巻き込まれる可能性があります。また、キーワード検索令状では、特定の言葉、名前、場所を検索したユーザーが特定されます。私たちの法案は、このような令状を禁止し、ニューヨーカーのプライバシーを守るものです」。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】米国で増えている暗号資産市長

Bitcoin(ビットコイン)をはじめとする暗号資産の価格は、2021年に急騰した。パンデミックの時代、この分野では暗号資産で大富豪になったという話もよく聞く。

暗号資産といえば、元々は民間セクターの話である。ビットコインやその他の暗号資産プロジェクトは、非中央集権的で政府の金融政策の影響を受けない変更不能なデジタル通貨を作ることを意図して始まったものだ。

しかし、この市場の価値が2兆ドル(約230兆円)を超えた近年、公的機関も暗号資産に注目するようになった。初期の規制を導入した国、全面的に禁止した国、大規模な導入を行った国など、対応も国によってさまざまである。

自国の不換紙幣を印刷する国家政府と地方自治体とでは、暗号資産に対する見方は大きく異なり、最近では、暗号資産をこの新しい産業が持つ技術的、財政的、経済的発展の可能性を活用する機会と見る都市も増えている。

確かに、市役所でビットコイン、ブロックチェーン、NFT(非代替性トークン)といった言葉を聞くことはあまりない。しかし、マイアミ、タンパ、ニューヨーク、ジャクソン(テネシー州)などの4都市ではこれらの言葉を耳にすることも増えてきた。というのも、市長が自身の給与の一部をビットコインで受け取ることに合意するなど、暗号資産の分野に参入するためのきっかけを示したからだ。

都市のイノベーションに関する多くのストーリーがそうであるように、このストーリーも1人の市長が話題を先導し、他の市長たちに挑戦状を叩きつけることから始まる。今回のケースでは、マイアミ市長のFrancis Suarez(フランシス・スアレス)氏が、次の給料をビットコインで受け取るとツイートしたことに対抗して、次期ニューヨーク市長のEric Adams(エリック・アダムス)氏が複数回の給料をビットコインで受け取ると発言している。

スアレス氏は次のように話す。「教育は、暗号資産にまつわる恐怖や誤解を払拭するための最良の方法であり、アダムス市長と私の発言の根本は教育を狙ったものです。私たちが真っ先に水に飛び込む姿を見れば、おそらく他の人々も自信を持って水に足をつけることができるでしょう」。

1人目の市長は注目すべきで、2人目の市長はその模倣だろう。しかし、3人以上の市長がビットコインの勢いに乗るのであれば、これは明らかにトレンドといえる。

ジャクソンは人口約7万人。Scott Conger(スコット・コンガー)市長は、同市が選出した市長の中では最も若い部類に入るが、この友好的な挑戦に参加し、給与をビットコインで受け取ると発言した。コンガー氏とスアレス氏は、これについてツイッターでやりとりをしている。コンガー氏はジャクソンという小さな都市で、暗号資産分野のイノベーションを起こしてきた。

これに負けじとフロリダ州の別の市長も参入してきた。タンパの Jane Castor(ジェーン・キャスター)市長は、コンガー氏のツイートからわずか数日後、タンパで開催された暗号資産カンファレンスで、給料をビットコインで受け取ることを発表したのだ。最近、新興技術都市のトップに選ばれたタンパは、フロリダ州内の技術系雇用の25%を占め、暗号資産という新興分野と親和性が高い。

コンガー氏は、スアレス氏の行動は大都市だけに当てはまるものではなく、あらゆる規模のコミュニティで通用すると指摘する。彼は、大都市で起きているテクノロジーや暗号資産に関する興味深い出来事を観察し、それがジャクソンのような(小さな)都市にはどのように反映されるかを考え、(優れた市長なら当然だが)ジャクソンの経済発展の可能性に目を向けた。

彼は次のように話す。「マイアミや大都市に限定される必要はありません」「ジャクソンにはそのチャンスがあります。ジャクソンは、テネシー州で家庭にギガビットの光ファイバーを導入した最初の都市です。新しい技術をいち早く取り入れるのは当然でしょう?」。

ジャクソンでは超高速のインターネットサービスが普及しており、ハイテク企業の獲得競争に大きく貢献している。コンガー氏は、この結果としてジャクソンに暗号資産や分散型金融(DeFi)の企業が増えるはずだ、と考える。

「場所は存分にあります」とコンガー氏。小売業界が縮小し、既存の企業が使用する物理的な空間が減る中、彼はチャンスを見出している。「DeFi、暗号、技術系の企業が生まれれば、彼らには事業を行う場所が必要になります」。

この小さなコミュニティの利点を強調し、コンガー氏は次のように付け加える。「人口7万人の都市で十分なのに、なぜ数百万人の都市に行く必要があるのでしょうか」。

経済発展を重視する姿勢は、4人の市長だけでなく、暗号資産の世界を知ることとなった他の地域のリーダーたちも共通していて、彼らはそれぞれの都市で雇用の未来について考えている。マイアミでは、暗号資産分野における市長の取り組みの中核にそれが見て取れる。

スアレス氏は次のように話す。「マイアミは共通のテーマの上に成り立っています。マイアミに来る人たちは、自国の政府に取り残されたり、さらにひどいケースでは迫害されたりすることに嫌気がさし、より良い生活を求めてここに来ています。そしてお返しにとこの街をもっと良いものにしてくれます」「マイアミムーブメントは、質の良い、高収入の仕事をこの街にもたらしています。私は、マイアミの将来を見据え、次世代のリーダーたちをこの街から輩出したいと考えています」。

人材の誘致と定着に力を入れているのは、国内の多くの都市でも同じである。マイアミは、テクノロジー、金融、(そしてこの記事で紹介するようにその両方が融合した)暗号資産といったあらゆる分野を成長させることを目指している。

「マイアミムーブメントは、パンデミックなどの数々の要因で人々がマイアミに集まったことに起因するものですが、成長中の金融やテック部門への支援は何十年も前から行っています 」とスアレス氏。「多くの人が思っているほど『突発的』なものではありません。この街にイノベーションと成長を呼び込むことは、すべてのマイアミの住人にとって大きな利益となります」。

金融の分野で長年の優位性を持ち、テック部門も引き続き強化されているニューヨークのような都市が、暗号資産の分野で何ができるかは想像することしかできない。同様に、何年も前から成長を続けるタンパも、テック系の人材を惹きつける力と経済的なポテンシャルがますます高まっている。暗号資産分野が成熟するにつれて、興味深い違いが見えてくるかもしれない。

メタバースで重要なポジションを取る最初の都市は?最初に自治体のNFTを導入する都市は?このデジタル分野の成長に取り組む市長たちのリーダーシップが現場レベルで発揮されれば、その答えはすぐに出るはずだ。

編集部注:本稿の執筆者Brooks Rainwater(ブルックス・レインウォーター)氏は、Center for City Solutions and Applied Research at the National League of Citiesのディレクター。

画像クレジット:Alexander Spatari / Getty Images

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(文:Brooks Rainwater、翻訳:Dragonfly)

時代遅れなビルの暖房システムをスマートに変えコスト削減、9カ月で元がとれるRunwise

米国では、温室効果ガスの約13%が商業ビルや住居用建物から排出されている。なぜなのかと首をかしげたくなるかもしれない。典型的なニューヨークのビルを見学すると、レンガで覆われた巨大なビルの地下深くにある技術は、まるで1960年代にタイムスリップしたかのように見え、その上ひどい匂いがすることに気づくだろう。Runwiseはすでに4000棟以上のビルに導入されているが、米国時間12月21日、さらに多くのビルに同社の技術を導入するために1100万ドル(約12億6000万円)を調達したと発表した。この会社は、家主のコストを削減し、その過程で地球をいくらか救うという、双方にメリットのあるWin-Winアプローチを実現している。

Runwiseのセールスポイントは、センサーではなくON/OFFスイッチやタイマーで作動することが多い古い技術があるところに、建物が必要以上に暖房されないようにするための十分な技術を加えるということだ。同社は、10年の電池寿命を持つ電池で動作するワイヤレスセンサーと、ビルのボイラーや暖房を管理するコントローラーコンピュータを開発した。平均して約9カ月で、暖房費の削減という形で導入費用を回収できるという。

Runwiseの共同設立者兼COOであるLee Hoffman(リー・ホフマン)氏はこう説明する。「5、6年前は誰も環境のことなど気にしていませんでしたが、私たちは『だが、将来的に大きなインパクトがあるんだよ!』と言っていました。でも彼らは収益について尋ねてきて、それについては会話が始まるのです。当社の長期的なビジョンは、建物の運営を改善すれば、世界中のほとんどの都市の二酸化炭素排出量と経済性を変えることができるということです。米国には1200万棟のビルがあり、当社は現在そのうち4000棟に入っていまが、すべてのビルに導入できない理由はありません」。

同社は10年前からブートストラッピングしており、目覚ましい成果を上げている。同社の技術は、Related、Blackstone、Lefrak、Equity Residential、Douglas Elliman、Fairsteadなど、米国で最大級の不動産事業者が所有するビルですでに利用されている。Runwiseは、同社の技術を導入した約4000棟のビルに、30万人以上の人々が住み、働いているとしている。Runwiseは、会社を超成長期に突入させる時期だと判断し、Initialized CapitalSusa VenturesNotation Capitalから1100万ドル(約12億6000万円)を調達した。今ラウンドにはNextView Venturesと複数のエンジェルも参加した。

「ニューヨークにあるほとんどのビルは、1960年代から70年代に設計された、ひと握りの企業が製造した制御装置で動いていますが、米国各地や世界のほとんどのビルもそうです。真新しいバンク・オブ・アメリカの高層ガラスタワーに入ると、そこには派手なデジタル表示のコントロールボックスがありますが、それは文字通り1960年代や70年代の同じコントロールの中にあるのと一緒です」とホフマン氏は説明しながら、信じられないでしょう、とでもいうように弾みがつく。「屋外リセットと呼ばれるもので、基本的にはExcelの表を使っています。暖房時間が何分なら暖房を入れる。外気温がこれくらいなら、これをやる。建物の中で何が起こっているのかは把握していません。すべてがハードコードされているのです。完全に狂っています。そして、これがほとんどすべての建物で、何百万ドル(何億円)ものエネルギー消費をコントロールしているのです」。

画像クレジット:Runwise

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Aya Nakazato)

NYの都市型屋内水耕農業ゴッサムグリーンズがカリフォルニアに4万平米の研究農場開設

この数カ月間、かなりの時間を割いて垂直農法(vertical farming)について調査、執筆する中、あるキーワードが何度も浮かんできた。「近接」だ。近年の農業で使われている手法の多くが、農作物を遠距離に輸送することに注力し、結果的に炭素排出量を増やしている。Gotham Greens(ゴッサムグリーンズ)は厳密には垂直農法ではないが、地元生産農業の象徴になってたのは、ニューヨーク州ブルックリン、ゴーワヌス地区のWhole Foods(ホールフーズ)店舗の真上に立てられた都市型グリーンハウスのおかげだ。

創立10年の同社は、現在ニューヨーク市内の3カ所(ブルックリンに2つ、クイーンズに1つ)の他、東海岸(メリーランド州ボルチモアとロードアイランド州プロビデンス)に2カ所、中西部(ミシガン州シカゴ)に2カ所、山岳部(コロラド州デンバー)に1カ所所農場を所有している。米国時間12月8日、同社は西方向への拡大を進め、カリフォルニア州で初めてのグリーンハウスを、UC Davis(カリフォルニ大学デービス校)近くに設置したことを発表した。

画像クレジット:Gotham Greens

Gothamで9番目の農場は、広さが10エーカー(約4万平米、4ヘクタール)で、栽培に必要な資源を劇的に減らすように設計されている。同社は水耕技術を用いて、レタス1玉の栽培に通常必要な水、10ガロン(約37.9リットル)を1ガロン以下まで減らすことができるという。農場全体では年間2億7000万ガロン(約102万キロリットル)の水を節約でき、占有面積は従来型農業よりも300エーカー(121ヘクタール)少ない。

国の農作物のかなりの部分を生産しているカリフォルニアへの進出は興味深い動きであり、ニューヨークやシカゴに施設を開設するのとは明確に異なる戦術だ。もちろん、カリフォルニアの農作物栽培への誇り高き伝統にも関わらず、この州も気候変動の極めて深刻な影響を受けている。

画像クレジット:Gotham Greens

「カリフォルニアは北米の葉物野菜生産の中心であり、気候変動による水不足や山火事をはじめとするさまざまな影響が、農業に不可欠な資源を圧迫しています。私たちはカリフォルニアに拠点を置くことで、ますます深刻化する気候変動の影響に対する農産業界の解決策の1つになることを熱望しています」と共同ファウンダー・CEOのViraj Puri(ビラージ・プーリー)氏はリリースで語る。「カリフォルニア北部の当社最新のグリーンハウス施設は、地域全体の小売店やフードサービス提供者に商品を提供しながら、土地や水をはじめとする貴重な資源を保護するために、戦略的に選ばれた場所にあります」。

UCデービス校近郊という場所に間違いはない。同社は同大学の研究者と協力していきながら、将来の従業員との堅牢なつながりをつくるに違いない。さらに同社はこの機会を利用して、2024年までに同社がパッケージに使うプラスチックを40%(対2020年比)、使用電力を5%削減する計画も発表した。

画像クレジット:Gotham Greens

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

DoorDashがニューヨークでの「超速」配達開始でギグワーカーではなく正社員に頼る雇用モデルもテスト

DoorDash(ドアダッシュ)は米国時間12月6日、10〜15分で配達する「超速」配達をニューヨーク市のDashMart1店舗で始めることを発表した。まずはチェルシー地区の新店舗からスタートし、今後数カ月内にニューヨークや他の地域でも店舗や提携を増やしていく予定だ。そして、これらの新しい配達サービスを提供するために、同社はギグワーカーではなく正社員に依存する新しい雇用モデルのテストも開始する。

同社は、2020年4月にデジタルコンビニエンスストアチャネルDashMartを立ち上げた

DashMartでは、日用品やコンビニエンスストアにあるような商品を販売している。DashMartは商品約2000点を取り扱うマイクロフルフィルメントセンターで、DashMartの倉庫担当者が注文品をピックアップして梱包し、Dasherと呼ばれる配達員が注文品を集荷して顧客に届けるという仕組みになっている。本日から、デリバリーゾーン内のDoorDashの顧客は、DoorDashのアプリまたはウェブサイトにアクセスし、DashMartに注文して配達してもらうことができる。なお、DashMartチェルシー店の営業時間は毎日午前7時から午前2時までだ。

15分という配達時間を実現するために、超速配達ではDashMartからの配達範囲を狭くすることで配達員の配達移動時間を減らし、慣れ親しんだルートを通るようにしている。また、DoorDashによると、配達に使用する電動自転車の速度は時速20マイル(時速約32km)までとなっている。

そしてDoorDashは、超速配達では一定量の仕事とより多くの収入を求める配達員に新たな機会を提供すると発表した。DoorDashが新たに設立したDashCorpsは、定期スケジュールで働き、マネージャーに報告する配達従業員を雇用する。従業員には、時給15ドル(約1700円)〜の賃金に加えてチップが支払われ、医療・歯科・眼科保険、従業員支援プログラム、フレキシブルスペンディングアカウント、通勤手当など正社員の福利厚生が提供される。

DashCorpsの従業員は、特別にデザインされた新しいアプリを使用し、品出し、顧客サポート、管理業務など、配達以外の仕事も担当する。制服を着用し、平均週20時間の勤務となる。多くはフルタイムで働くとのことだ。

DoorDashは現在、ニューヨーク市内の400以上の地元のコンビニエンスストアや食料品店と提携していて、DashCorpsとのパートナーシップを通じて、より多くのローカル店舗に拡大していく予定だと話す。

この新しい雇用機会は、DoorDashが厳しいギグワーカーモデルから脱却し、戦略を転換していることを示している。同社はギグワーカーの雇用権を実現しようとする規制と戦ってきたいくつかのギグ企業の1つだ。今回の発表は、DoorDashが死守してきた既存のギグワーカーモデルからの脱却を意味している。

関連記事:ギグワーカーを非従業員とするカリフォルニアの条例Prop 22を高裁が憲法違反と判決

「当社は、多くの人々の生活に適した経済的機会を提供するリーダーであることを誇りに思っています。そして今、DashCorpsが提供する、これまでとは異なるタイプの新しい雇用機会に期待しています」とDoorDash社長Christopher Payne(クリストファー・ペイン)氏は声明で述べた。

配達従業員に安全トレーニングと装備を提供するのに加え、正社員向けの新しい配達アプリにはDoorDashのアプリ内安全ツールキットSafeDashも統合される。最近導入されたこのツールキットは、同社の配達員が安心して仕事ができるようサポートするためのものだ。SafeDashは現在、ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、デトロイト、サンフランシスコ、ロサンゼルスで利用でき、年内に全米の配達員がSafeDashを利用できるようになる予定だ。

同社はまた、ニューヨークの中小企業との今後のパートナーシップに反映させるため、新たに中小企業諮問委員会を設置したことを発表した。そしてニューヨークの中小企業擁護・社会支援団体であるYemeni American Merchant Association(YAMA)とも提携した。

画像クレジット:DoorDash

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

スターバックスがアマゾンのJust Walk Out技術を採用したレジなし店第1号をNYにオープン

Starbucks(スターバックス)がAmazon(アマゾン)と提携して、ニューヨークにレジなし店舗をオープンする。場所は59番街のParkとLexington Avenuesの間だ。その店舗では、スターバックスの注文アプリとAmazonのJust Walk Out技術を組み合わせて使用する。その店舗は、カフェとAmazon Goストアの折衷のようだ。後者は、このeコマース大手のレジなし技術を初体験する場所だった。

客はその店舗のラウンジに、Amazon Shoppingアプリの「In-Store Code」使って入店し、クレジットカードや端末上のAmazon Oneで登録した掌紋をスキャンする。入店するとそこは小さなAmazon Goのマーケットで、特別に選ばれた両社の商品が並んでいる。商品を手に取るとそれらはユーザーのバーチャルカートに入り、AmazonのJust Walk Out技術を使ってる店舗ならどこでも、出ると料金が確定する。

Amazonは、ここ1年半ほどの間、このレジなし技術の利用範囲を広げてきた。空港の売店と提携して支払いなし体験を実装したり、6月にはグロサリーストアFresh Marketの全店にこの技術を提供したWhole Foodsの一部の店にもこの技術を採用し、さらに最近では英国のスーパーマーケットチェーンSainsbury’sにも技術をライセンス提供している。今回のスターバックスとの提携も、Just Walk Outをどこでも使えるようにするための努力の一環だ。

スターバックスとAmazonの共同店は、ここを含めて2022年までに3店舗オープンする予定だ。第2の店舗は、ニューヨーク40番街のTimes Buildingを計画している。レジなしを体験してみたい人は、最初の場所である59番街へ行くべし。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のMariella Moon氏はEngadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Starbucks

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(文:Mariella Moon、翻訳:Hiroshi Iwatani)

同じ集合住宅に住む人のための超ローカルなソーシャルネットワークを構築するOneRoof

都市部の賃貸市場が回復し、人々が都市に戻ってくると、ロックダウンが開けた生活の新たな活気を受け入れようとしているコミュニティの中で、人々は再びたくさんの新たな隣人に囲まれることになる。

OneRoof(ワンルーフ)は、集合住宅用のソーシャルネットワークを構築している企業だ。郵便番号や近隣地域に基づくコミュニティを組織するNextdoor(ネクストドア)とは異なり、OneRoofは大規模な集合住宅の中に存在感を高め、近隣住民がより小さくて緊密な輪の中でお互いを知ることができるようにしたいと考えている。

「(Nextdoor)は郵便番号に基づいていますが、サンフランシスコやニューヨークのような大都市では、何万人もの人々が含まれます」と、OneRoofのCEOであるSelin Sonmez(セリン・ソンメス)氏は、TechCrunchに語った。「その時点で、人々には共通点が少なくなってしまいます。集合体が大きすぎて、もはや関連がないからです」。

共通点があるということだけでなく、人々はひと握りの隣人とコミュニケーションをとる方が、何千人もの人々とそうするよりも安心できると、ソンメス氏は述べている。

ソンメス氏と共同設立者(で夫でもある)のNikos Georgantas(ニコス・ジョルガンタス)氏は、このアプリによって、人々がビルのエレベーターや廊下で出会う人々とより気軽に話ができるようになり、新型コロナウイルス感染流行によって大都市では困難になったよく知らない者同士の関係が育まれることを期待している。

このビジョンを実現するために、OneRoofは125万ドル(約1億4000万円)の小規模なシード資金調達を実施した。これはGeneral Catalyst(ジェネラル・キャタリスト)が主導し、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)のディスカバリーファンド、Dream Machine(ドリーム・マシーン)、Script Capital(スクリプト・キャピタル)、Urban US(アーバンUS)が参加した。

このアプリはメッセージ機能を中心に構成されており、ユーザーはSlackのようなハブで近隣の人々とさまざまなトピックについて話し合い、興味に応じて自分のサブコミュニティを組織することができる。なお、OneRoofはビル管理者と深いパートナーシップを築くことは求めていない。過去にビル全体のメッセージボードを作ろうとした際には、ビルの管理者にグループの管理を任せたため、ほとんどが失敗したという。

画像クレジット:OneRoof

このような小規模での運営にはいくつか難しい点がある。OneRoofのモデルでは「スーパーネイバーズ」と呼ばれる人々が、自分たちの住む建物への初期導入作業の多くを担う。ユーザーが自分の住む建物をOneRoofに登録したいと思ったら、OneRoofに依頼して、同じ建物の住人の郵便受けにサービスの宣伝チラシを送ってもらうことで、このプライベートアプリに参加するための独自のコードを住民に教えることができる。また、上の写真のような、参加コードが記載されたドアノブにかける札を送ってもらうことも可能だ。ソンメス氏はこれが特に成功しているという。

このアプリは、ニューヨーク市内にある約400のビルに導入されており、近々、ボストン、マイアミ、ロサンゼルスなど、他の主要都市にも拡げることを計画している。

画像クレジット:OneRoof

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Appleマップが3Dビューを展開、ロンドン、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコで

Apple(アップル)は、「マップ」アプリ内で、ロンドン、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコなど、多くの都市に3Dマップを導入する。iOS 15で提供されるこの体験は、市場をリードするGoogleマップとの競争力を高めるためにAppleのマッピングプラットフォームに数年にわたって行われた投資の結果だ。このアップデートには、現在主要な市場に導入されているような3Dマップの追加だけでなく、全体的により詳細な地図、改善された交通機関の機能、AR表示モードなども含まれている。

関連記事:AppleマップがiOS 15アップグレードでより詳細な地図、交通機関ナビ、ARビューなど追加

これらの機能の多くは、充実した機能を得るためまず米国および世界の主要都市で導入され、時間をかけて展開してきた。例えばARビューイングは、2021年に入ってから一部の都市で開始された

画像クレジット:Apple

Appleによると、3Dマップでは、ユーザーは近隣地域、商業地区、マリーナ、ビルなどの詳細を見ることができ、標高の詳細、新しい道路ラベル、さらにはカスタムデザインされたランドマークも表示されるという。

例えば、サンフランシスコのコイトタワー、ロサンゼルスのドジャー・スタジアム、ニューヨークの自由の女神、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールなど、有名なスポットのレンダリング画像がマップに表示され、今後さらに多くのランドマークが追加される予定だ。

画像クレジット:Apple

2021年後半には、フィラデルフィア、サンディエゴ、ワシントンD.C.でこの種の3Dマップが利用できるようになるとAppleは述べている。そして2022年には、モントリオール、トロント、バンクーバーでも利用できるようになる。

Appleは、より明確に表示されるターンレーン、中央分離帯、バス・タクシー用レーン、横断歩道などによって、道路レベルでのナビゲーションも強化している。これらは3D表示モードで表示されるため、交通状況に応じて最適な車線を選択したり、より良いルート計画を立てたりすることが容易になる。また、Googleマップと同様に、現在の道路状況に基づいた到着予定時刻も表示される。Appleは、これまで2021年のリリースが発表されていたこの新しいナビゲーションが、具体的な期限はなしに2021年後半にCarPlayに搭載される予定であると述べた。

画像クレジット:Apple

同様に、2021年初めに発表されていた他の地図のメジャーアップデートも現在展開中だ。これには、Citymapperのような、交通機関を利用する人たちに好まれるサードパーティのアプリケーションに対して、Appleマップがより競争力を持つように設計された機能が含まれている。近くの交通機関の駅が画面上部に大きく表示され、ユーザーはお気に入りの路線をマップにピン留めして簡単にアクセスできるようになった。また、Apple Watchでもできるように、路線を選択すると、降りる時間になるとマップが自動的に通知する。

Appleマップは、拡張現実(AR)を利用したステップ・バイ・ステップの案内で、より臨場感のある徒歩ルート案内を提供する。これは、ユーザーが携帯電話をかざして周辺の建物をスキャンすると、マップがより正確な位置を生成し、より詳細な案内を提供するというものだ。この機能は、2021年に入ってから一部の市場で提供されている。

iOS 15のユーザーは、新しい3D地球儀を見ることができる。また、マップの「ガイドを詳しく見る」ボタンをタップすると、Time Out、The Washington Post、The National Park Foundation、Complex、The Infatuationなどが提供する厳選されたガイドにアクセスすることがでる。これらのガイドは世界中の都市での観光ガイドを提案する。また、ユーザー自身がガイドを作成し、友人や家族と共有することもできる。

画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

ニューヨーク市でデリバリーアプリワーカーの待遇改善法案が可決、トイレに行ってもいいよ!

ニューヨーク市議会で米国時間9月23日成立した条例により、GrubhubやDoorDash、Uber Eatsなどのアプリで配達をしているギグワーカーの最低賃金が決まり、労働条件が改善される。具体的には、デリバリーワーカーはレストランのトイレを使用でき、配達の最長距離を指定でき、1回の配達における最低賃金を設定でき、チップは確実にワーカーが入手できるようになる。米国の大都市がこのような法制を敷くのはこれが初めてであり、フードデリバリー企業とその何千名にものぼる契約労働者との関係に対する、行政の介入の前例となる。

一連の条例は、ニューヨーク市のNPO法人Workers Justice Projectから生まれた、主に移民のデリバリーワーカー団体であるLos Deliveristas Unidos(LDU)からの要望や陳情に基づいて起草された。同団体はパンデミックの間に労働条件の改善を求めて抗議活動を行い、4月にはニューヨーク市の最大のサービス労働者の組合であるSEIU Local 32BJに正式に加入している

Workers Justice ProjectのLigia Guallpaが、デリバリーワーカーを支援する市議会の票決に先駆けてスピーチしている。

LDUのウェブサイトには「実際にはフードデリバリーワーカーの多くが、複数のフードサービスアプリのために、1日に12時間以上、寒さと雨の中でも働き、それでも家族を養える収入を得ていない」とある。

LDUの幹部の1人は、VICEで次のように語っている。「ギグワーカーを金で釣って雨や雪でも仕事をさせているため、危険な天候が高収入を得る機会になる。今月、ニューヨーク市で13名が死んだハリケーンIDAのときも、デリバリーワーカーは食べ物を運び、洪水の最中でも注文に応えていた。DoorDashはマンハッタンでサービスを中止し、Grubhubもニューヨーク市内の一部でサービスを中断したが、それでも多くのギグワーカーがボーナスやインセンティブを求めて、身を危険にさらしながら仕事を続けました」。

こんな天候の中で、Grubhubのデリバリーはまだあなたのディナーの配達をしている。

ハリケーンIDAのこのような状況は、何年間も自明だった真実を照らし出している。デリバリーアプリの契約労働者は生活費を得るために苦労しているため、高額な賃金に釣られて自らを危険にさらす。それと同時にDoorDashやUber EatsやGrubhubのような企業は、パンデミックの間でありながら仕事が増えても、お金は儲からない

LDUはニューヨーク市の500名あまりの、アプリを利用する配達人を調査し、12.21ドル(約1349円)という時給をはじき出した。それは、市が定めている15ドル(約1657円)の最低賃金より少ない。それだけでなく、デリバリーワーカーは、交通費を自分で負担しなければならない。ニューヨーク市の場合その交通手段は主に電動自転車だ。また、デリバリーワーカーは窃盗に遭いやすい。さらに、今回の調査の回答者の49%が配達時に事件や事故に遭い、75%が医療費を自前で払ったと回答している。しかしDoorDashはTechCrunchに対して、マンハッタンでは1時間に33ドル(約3645円)稼いでいると述べている。

DoorDashはTechCrunch宛の声明で次のように述べている。「ニューヨーク市のデリバリーワーカーが特殊であることは私たちも十分理解しており、彼らのためになるポリシーの発見に労使協調して努めています。そのため2020年は、ワーカーの安全を守り収入を上げ、トイレへのアクセスを広げる業界初の取り組みを発表した。市議会も含め、すべてのステークホルダーとの協調は今後も継続すべきであり、予期せざる結果にならないよう十分注意しながら、ニューヨーク市のすべてのデリバリーワーカーを支援する方法を見つけなければなりません」。

DoorDashは今回の条例への懸念として、トイレの利用に際していちいちレストランの許可を必要なのはおかしい、と述べている。DoorDashでは最初の契約時に、デリバリーワーカーによるトイレの利用を契約条項に含めている。

画期的だ!おめでとう。LDUの@workersjusticepは歴史的な市条例を勝ち取り、デリバリーワーカーにトイレの利用と賃上げとチップの透明性と、さらにそれ以上のものを与えた。エッセンシャルワーカーのための闘争を、ともに続けよう!

Grubhubも条例の支持を表明している。同社はTechCrunch宛の声明で「これらの条例は、ニューヨークのレストランと住民のために毎日厳しい労働をしているデリバリーワーカーを支援する常識的なステップである。彼らが確実に生活給を付与されトイレにアクセスできることは、単なる名案ではなく、当然やるべきことだ」。

その他のアプリのギグワーカーもデリバリーと同様の問題を抱えている。今週初めにInstacartの契約労働者1万3000名を擁する団体Gig Workers Collectiveは、賃上げや労働条件の改善など5つの要求にInstacartが応じるまではアプリを削除するよう顧客に求めた。これらのアプリのワーカーは従業員(正社員)ではなく契約労働者となっているため、最低時給をはじめ保護が少ない。Instacartは過去に、ワーカーのチップを賞与額に含めていた。

ニューヨーク市の約8万名のデリバリーワーカーにとっては、今日の条例が前向きな変化となる。しかしテクノロジー企業が実際にその最低賃金を支払い、労働者のニーズの充足を保証するかは、まだわからない。

画像クレジット:撮影Tomohiro Ohsumi/Getty Images/Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Uber Eats、Grubhub、DoorDashが配達手数料制限を法制化したNY市を提訴

アプリがレストランのサービス利用に対して請求できる手数料の金額を恒久的に制限する法律をめぐり、フード注文・デリバリープラットフォームのDoorDash(ドアダッシュ)、Caviar(キャビア)、Grubhub(グラブハブ)、Seamless(シームレス)、Postmates(ポストメイツ)、Uber Eats(ウーバーイーツ)がニューヨーク市提訴で結束した。

これらの企業が米国9月9日夜に連邦裁判所に訴訟を起こし、NY市の法律の施行、不特定の金銭的損害、陪審員による裁判を回避する差止命令を模索している、とウォールストリートジャーナル紙が最初に報じた。

ニューヨーク市議会は2020年、パンデミックによるロックダウンで苦境に陥ったレストラン業界の負担を軽減しようと、サードパーティのフードデリバリーサービスがレストランにデリバリー注文1回につき15%超を、マーケティングと他のデリバリー以外のサービスに対して5%超を課金するのを禁じる時限立法を導入した。NY市を提訴した企業は、クイーンズ区選出の市議会議員Francisco Moya(フランシスコ・モヤ)氏が6月に提出した法案のもとで8月に恒久化された手数料の制限が、すでに数億ドルの損害を生じさせた、と主張している。

「新型コロナウイルス感染症のパンデミックでは、原告のようなサードパーティのプラットフォームはレストランの経営や食産業労働者の雇用の継続の助けになりました。ここには地域のレストラン向けのコロナ救済活動への何百万ドルという資金提供も含まれます」と訴状にはある。「にもかかわらずニューヨーク市は、民間の極めて競争が激しい産業、つまりサードパーティのラットフォームを通じたフード注文・デリバリーの促進に恒久的な価格統制を課すという異常な手段を取りました。そうした恒久的な価格統制は原告に対してだけでなく、市が奉仕を約束している地域密着のレストランの活性化にもに害を及ぼします」。

他の自治体もまたパンデミックの間に似たような手数料上限を設けたが、パンデミックが落ち着き、レストランが店内営業を始められるようになったのにともない、大半はそうした措置をなくした。サンフランシスコ市は、恒久的な15%上限を導入することを決めたひと握りの自治体の1つで、アプリベースの企業はサンフランシスコでも訴訟を起こしている。高ければ注文1件あたり30%にもなる手数料の制限の延長は「公衆衛生の非常事態とまったく関係がなく」、随意契約に干渉し、また「ダイナミックな産業の運営に経済的条件」を指示しているため、違憲だと主張している。

暫定法では、上限を破った場合、レストラン1軒につき1日あたり最大1000ドル(約11万円)の罰金が科される。新しい法律によりレストランと契約を結び直す必要に迫られるばかりか、消費者への価格をあげて配達員の稼ぐ力を損なうことになる、と原告企業は述べた。

また、NY市が地域のレストランの収益性を改善したければ、配達サービスの手数料を抑制する代わりに、減税したり市の懐から助成金を出したりすることができるはずだ、とも主張している。

「しかしそうした合法的なオプションの1つを取るのではなく、NY市はサードパーティプラットフォームに対して敵意丸出しの不合理な法律を導入しました」と原告企業は述べた。その際、マヨ氏が配達料金にかかる手数料を10%を上限とする法案を提出した後の同氏のツイート「NYCの地域のレストランは新型コロナが直撃するずっと前から、GrubHubのようなサードパーティサービスの配達料金に10%の上限を必要としていました。レストランは今そうした上限を心底求めています」を引用した。

今回の法制化は、消費者のためにコストを安く抑えようとしてレストランとギグワーカーの両方に負担を強いていると批判されているアプリベースの配達企業に対してますます厳しい目が向けられている中でのものでもる。直近では、カリフォリニアの上位裁判所が、そうした企業が引き続き労働者を従業員ではなく独立請負人として分類できるようにするProposition 22は違憲とする判決を下した。この判決を受けて、DoorDashの労働者は先に、賃金アップとチップに関するさらなる透明性を求めてDoorDashのCEO、Tony Xu(トニー・シュー)氏の自宅の外で抗議活動を行った。一方、マサチューセッツ州ではProp 22同様の法律について、2022年11月に投票が行われることになった。

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「レストランは手数料を通じて配達などさまざまなサービスの代金をアプリベースの配達会社に払っています」とNY市を相手取った訴訟で匿名の配達員は述べた。「こうした手数料に上限を設けることは私のような人の収入が少なくなることを意味します。手数料の上限はまた、私が届ける顧客にとって配達サービスがより高価なものになり、ひいては私への配達依頼が少なくなることにつながるかもしれません」。

画像クレジット:Tomohiro Ohsumi/Getty Images / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】Apple Cardをめぐる米国の法執行はどのように間違ったのか

編集部注:本稿の著者Liz O’Sullivan(リズ・オサリバン)氏は、企業のモデルリスクとアルゴリズムのガバナンスを自動化するプラットフォームParityのCEO。また、Surveillance Technology Oversight ProjectやCampaign to Stop Killer Robotsに対して、人工知能に関するアドバイスを行っている。

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アルゴリズム正義の支持者たちは、UHGApple Cardのような企業に対する法的調査によって、いわゆる「裁判の日々」を迎え始めている。Apple Card訴訟は、定量化可能な公正性という新たな分野において、現在の反差別法が科学的研究の急速なペースに追いついていないことを示す好例である。

Appleとその引受会社が公正貸付違反を犯していないと判断されたのは確かかもしれないが、今回の判決は、あらゆる規制区域で機械学習を利用している企業に対する警鐘となり得る、明確な警告を提示した。経営陣がアルゴリズムによる公正さをもっと真剣に受け止め始めない限り、彼らの前途は法的な問題と評判の低下に満ちたものになるだろう。

関連記事:Apple Cardプログラムは公正貸付法に違反していないとNY州金融サービス局が報告

Apple Cardに何が起きたのか

2019年後半、スタートアップのリーダーでありソーシャルメディアで著名なDavid Heinemeier Hansson(デイヴィッド・ハインマイヤー・ハンソン)氏は、Twitter上で重要な問題を提起し、大きな反響と称賛を巻き起こした。「いいね!」やリツイートが5万件近くある中、同氏はAppleと引受パートナーのGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)に対し、同じ金銭的能力を持つ同氏と同氏の妻に付与される信用限度額が異なる理由を説明するよう求めた。アルゴリズムの公正性のフィールドに立つ多くの関係者にとって、私たちが提唱する問題がメインストリームになるのを目にすることが重大な分岐点となり、結果的にニューヨーク州金融サービス局(DFS)からの照会に結実した。

DFSが2021年3月に、ゴールドマンの引受アルゴリズムについて、1974年に制定された女性やマイノリティを差別融資から保護する厳格な金融アクセス規則に違反していないと結論づけたことは、一見したところ、信用引受会社にとって心強く思えるものかもしれない。活動家にとっては残念な結果だが、財務部門のデータチームと密接に協力している私たちにとっては驚く結果ではなかった。

金融機関向けのアルゴリズムアプリケーションの中には、試行のリスクが利益をはるかに上回るものがあり、信用引受もその1つだ。貸付の公正性に関する法律は(古いものであれば)明確かつ厳格に施行されるため、ゴールドマンが無罪となることは予測できた。

とはいえ、ゴールドマンのアルゴリズムが、現在市場に出回っている他のすべての信用スコアリングおよび引受のアルゴリズムと同様、差別化していることは疑いの余地がない。また、仮に研究者がこうした主張を検証するために必要なモデルやデータへのアクセスを許可されたとしても、これらのアルゴリズムが崩壊することはないだろう。私がこれを知っているのは、ゴールドマンのアルゴリズムを検証するための方法論をニューヨーク州DFSが部分的に公開したからであり、ご想像の通り、その監査は、今日の最新のアルゴリズム監査人によって保持されている標準には遠く及ばないものだった。

DFSは(現行法の下で)Apple Cardの公正性をどのように評価したか

DFSは、Appleのアルゴリズムが「公正」であることの証明として、ゴールドマン・サックスが申請者の性別や配偶者の有無などの「禁止された特性」を利用していたかどうかを最初に検討した。これはゴールドマンにとってパスするのは容易だった。人種、性別、婚姻状況をモデルの入力に含めていないからだ。しかし、いくつかのモデル特性が、保護されたクラスの「プロキシ」として機能し得ることは、何年も前から知られている。

50年間の判例に基づくDFSの方法論では、この問題を検討したかについて言及されていないが、検討されなかったことは推測できる。もしそうであれば、信用スコアと人種との間に強い相関関係があることがすぐに判明するはずだ。それに関連して、一部の州では損害保険への利用を禁止することを検討している。プロキシ特性は最近になって研究の焦点になったばかりであるが、科学がいかにして規制を凌駕してきたかを示す第1の例を提供するものだ。

保護された特性がない場合、DFSは、内容は類似しているが、異なる保護クラスのユーザーに属する信用プロファイルを調査した。不正確な感じがするが、申請書で性別を「フリップ(反転)」させた場合に信用供与の決定にどのような影響があるかを明らかにしようとした。男性申請者の女性バージョンも同じ扱いになるかということだ。

直感的には、これは「公正」を定義する1つの方法のように思える。機械学習の公正性の分野には「フリップテスト」と呼ばれる概念がある。これは「個人の公正性」と呼ばれる概念の多くの尺度の中の1つであり、まさにそのように聞こえる。筆者は、AI専門の大手法律事務所bnh.aiの主任研究員であるPatrick Hall(パトリック・ホール)氏に、公正貸付の事例を調査する上で最も一般的な分析について尋ねた。DFSがApple Cardを監査するのに使用した方法を参照して、同氏はそれを基本回帰、または「フリップテストの1970年代バージョン」と表現し、不十分な法律について第2の例を提示した。

アルゴリズム的公正性のための新しい語彙

Soron Barocas(ソロン・バロカス)氏の独創的な論文「Big Data’s Disparate Impact」が2016年に発表されて以来、研究者たちは哲学の核となる概念を数学的な用語で定義することに熱心に取り組んできた。いくつかのカンファレンスが開催され、最も注目すべきAIイベントで新たな公正性の道筋が示された。この分野は高度成長期にあり、現在のところ法律が追いついていない状況だ。しかし、サイバーセキュリティ業界に起きたように、この法的猶予は永遠には続かないだろう。

公正な貸付を管理する法律は公民権運動から生まれたもので、制定以来50年以上の間にあまり進展が見られなかったことを考えると、DFSの軟式監査は容認できるかもしれない。法律上の前例は、機械学習の公正性に関する研究が本格的に始まるずっと前のものだ。もしDFSが、Apple Cardの公正性を評価するという課題に適切に対処できるように装備されていれば、過去5年間に花開いたアルゴリズム評価のための堅牢な語彙を使用することができただろう。

例えばDFSの報告書は、Joy Buolamwini(ジョイ・ブオラムウィニ)氏、Timnit Gebru(ティムニット・ゲブル)氏、Deb Raji(デブ・ラジ)氏による、2018年に発表された調査の中の有名な規準「equalized odds」の測定については触れていない。同氏らの論文 Gender Shades」では、顔認識アルゴリズムが明るい肌の被験者よりも暗い女性の顔で間違った推測をすることが多いことを証明しており、この推論はコンピュータービジョンだけでなく、予測に関するさまざまなアプリケーションにも当てはまる。

均等オッズは、Appleのアルゴリズムに対して問うべきものだろう。どのくらいの頻度で信用力を正確に予測しているか。どれくらいの頻度で間違った推測をしているか。性別、人種、あるいは障害ステータスの異なる人々の間でこれらのエラー率に違いがあるか。ホール氏によると、これらの測定は重要だが、法制度を完全に体系化するには新しすぎるという。

もしゴールドマンが、現実世界の女性申請者を常に過小評価していたり、黒人の申請者に対して実際に適用されるべきものよりも高い金利を設定していたりすることが判明すれば、こうした十分なサービスを受けていない人々が、全国規模でどのような悪影響を受けるかは想像に難くない。

金融サービスのCatch-22(落とし穴)

最新の監査人であれば、判例によって指示された方法では、マイノリティのカテゴリー内でのセクション間の組み合わせに対する公正性の微妙な差異を捉えることができないことを認識している。この問題は、機械学習モデルの複雑さによってさらに深刻化している。例えば、あなたが黒人で、女性で、妊娠している場合、あなたが信用を得る可能性は、それぞれの包括的な保護されたカテゴリーの結果の平均を下回るかもしれない。

マイノリティのサンプル数は定義上セット内のより少ない数であることを考えると、これらの過小評価されたグループは、その独自性に特別な注意を払わない限り、システムの全体的な監査から利益を享受することはないだろう。このことから、最新の監査人は、各グループの個人の人口動態を明確に把握した上で結果を測定できる「認知による公正性」アプローチを採用する傾向にある。

しかし「Catch-22(落とし穴)」が存在する。金融サービスやその他の厳格に規制された分野では、監査人は最初から機密情報を収集することができないため「認知による公正性」を利用できないことが多い。この法的制約の目的は、貸し手が差別されないようにすることにあった。運命の残酷なねじれの中で、これはアルゴリズムによる差別を覆い隠し、私たちに法的不備の第3の例を与える。

この情報を収集できないという事実は、モデルが十分なサービスを受けていないグループをどのように扱っているのかを知る上で障害となっている。それがなければ、私たちは実際的に真実であることを証明できないだろう。例えば、専業主婦は両方の配偶者の名前ですべてのクレジットベースの購入を実行するわけではないため、より薄い信用ファイルを確実に持っている。マイノリティのグループは、ギグワーカー、チップを受け取る労働者、または現金ベースの業界に属する傾向が極めて高く、マジョリティにはそれほど一般的ではないことが証明されているような所得プロファイルの共通性がもたらされることが考えられる。

重要な点として、申請者の信用ファイルにおけるこれらの相違は、必ずしも真の財務責任や信用力につながるものではない。信用力を正確に予測するには、その方法(例えば信用スコア)がどのようにブレークダウンするのかを把握する必要があるだろう。

AIを使用する企業にとってこれは何を意味するのか

Appleの例で言えば、同社が時代遅れの法律で守られている差別に対抗するために、信用ポリシーの帰結的なアップデートを行ったという話に希望に満ちたエピローグを挙げる価値がある。AppleのCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は声明の中で「業界が信用スコアを計算する方法に公正性が欠けている」ことを即座に強調した。

関連記事:アップルが配偶者とティーンエージャーのための「Apple Card Family」発表、ジェンダー差別疑惑を払拭

新しいポリシーでは、配偶者や親が信用ファイルを結合して、信用ファイルが弱い方が強い方の恩恵を受けられるようにしている。これは、世界に構造的に存在する差別を実際に減らす可能性のある措置を先を見越して考えている企業のすばらしい例だ。Appleはポリシーを改訂するにあたり、今回の調査の結果として導入されるかもしれない規制に先んじた。

これはAppleにとって戦略的に有利な点と言える。なぜなら、ニューヨーク州DFSはこの分野を支配する現行の法律が不十分であることに徹底的に言及しており、規制のアップデートは多くの人が考えているよりも間近かもしれないからだ。金融サービス監督官Linda A.Lacewell(リンダ・A・レイスウェル)氏の言葉を借りれば「現在の形での信用スコアリングの利用と、融資における差別を禁止する法律や規制は、強化と近代化を必要としている」。規制当局と協働した筆者の経験では、これは今日の当局が極めて熱心に追求していることだ。

米国の規制当局が、自動化と数学における平等に向けた堅牢な語彙を活用して、AIを統制する法律の改善に取り組んでいることは間違いない。連邦準備制度、OCC(通貨監督庁)、CFPB(消費者金融保護局)、FTC(連邦取引委員会)、連邦議会は、ペースが遅くとも、アルゴリズムによる差別に対処することに意欲的である。

その一方で、アルゴリズムによる差別が横行していると信じるに足る十分な理由が存在する。その主なるものとして、業界がここ数年、学術界の言葉を取り入れるのに消極的だったことが挙げられる。企業がこの新しい公正性の分野を活用できず、ある意味で保証されている予測的差別を根絶できないことに対する言い訳の余地はほとんどない。EUは、今後2年以内に採択される予定のAIに特化した法案に同意している。

機械学習の公正性の分野は急速に成熟しており、毎年のように新しい手法が生み出され、無数のツールがそれを助けている。この分野は今になってようやく、ある程度の自動化によってこれを規定できる段階に達しつつある。標準化団体は、米国の法律の採択が遅れている場合でも、これらの問題の頻度と深刻さの低減に向けたガイダンスを提供し、積極的に関与している。

アルゴリズムによる識別が意図的であるかどうかは、違法性を有する。そのため、医療、住宅、雇用、金融サービス、教育、または政府に関連するアプリケーションで高度な分析を使用している場合、誰もが知らずにこれらの法律に違反している可能性がある。

センシティブな状況下でのAIの無数のアプリケーションについて、より明確な規制ガイダンスが提供されるまでの間、業界はどのような公正性の定義が最善かを自力で判断する必要がある。

画像クレジット:SOPA Images / Getty Images

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(文:Liz O’Sullivan、翻訳:Dragonfly)

ツイッターが新型コロナ感染再拡大を受け再開したばかりのNYとSFのオフィスを閉鎖

ニューヨークとサンフランシスコのオフィスを再開してわずか2週間、ソーシャルメディア大企業Twitter(ツイッター)は米国時間7月28日、それらのオフィスを「すぐに」閉めると明らかにした。

この決定は「CDC(米疾病予防管理センター)のアップデートされたガイドラインを熟慮し、現状を踏まえてのもの」と広報担当は話している。

「Twitterはニューヨークとサンフランシスコのオフィスを閉鎖し、予定していた他のオフィスの再開も一時停止することを決めました。この措置はすぐに取られます。当社は引き続き各地域の状況を注視し、Tweeps(ツイッターユーザー)の健康と安全を優先する必要な措置を取ります」と広報担当は付け加えた。

同社は7月12日に2つのオフィスを再開したばかりだった。各オフィスで働く人数は明らかにしなかった。

CDCは今週、伝染力の強いデルタ株についての懸念が強まる中で、ワクチン接種完了者に新型コロナウイルス感染率が高い地域の屋内でのマスク着用を推奨した

この記事の前に、GoogleのCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏がオフィスに戻る従業員にワクチン接種を義務付けることを発表した、とTechCrunchのBrian Heater記者が報じた。ワクチン接種の義務付けはGoogleとAlphabetの従業員に宛てたレターの内容の一部であり、新型コロナ変異種が引き続き世界中で拡大している中で、同社が在宅勤務措置を10月18日まで延長することもレターには記されていた。

TechCrunchへのメッセージの中で、Facebook(フェイスブック)の人事担当VPのLori Goler(ロリ・ゴーラー)氏は同社も似たような措置を取ることを認めた

Amazon(アマゾン)もこの件に関するTechCrunchからの問い合わせに対し「当社はAmazon従業員と契約業者に新型コロナワクチンが利用できるようになり次第すぐさま接種するよう、強く奨励しています」と述べた。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:TwitterニューヨークサンフランシスコCDC / 米疾病予防管理センターオフィス新型コロナウイルスワクチン

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

ニューヨークの電力網に負担をかけずに電動モペッドの電力を供給するためにRevelはゲーム化したアプリを利用

Revel(レベル)が、ニューヨーク市の電力網に負担をかけずに3000台以上の電動モペットへの充電を行うために、エネルギー使用をゲーム化したアプリを利用する。

ブルックリンを拠点とするこのスタートアップにとって、電気は重要な要素だ。最近同社のサービスは、電動モペッドの共有だけでなく、電動バイクのサブスクリプション急速充電インフラ、さらには電気自動車(EV)の配車サービスにまで拡大している。Revelが運用コストを可能な限り低く抑えるためには、単なる電力の利用だけでなく、電力を利用するタイミングも管理することが不可欠だ。

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そこで、登場したのがLogical Buildings(ロジカル・ビルディング)だ。このソフトウェア会社は、利用者が毎月のエネルギー消費量を減らし、それによって、現金報酬を得ることができるアプリGridRewards(グリッドリワーズ)を開発した。このアプリの「仮想発電所」ソフトウェアは、Revelが保有する車両の充電スケジュールを動的に調整し、ニューヨーク市の電力網の弾力的運用をサポートするのに役立つと両社は述べている。

RevelのCOOで共同創業者のPaul Suhey(ポール・スヘイ)氏は「当社は電動モビリティ製品を拡大していく中で、電力網の負債ではなく資産となることを計画しています」と述べる。「私たちのEVインフラと充電オペレーションは、ニューヨーク市がよりクリーンな電力網に移行する際に大きな役割を果たすことができます」。

電気自動車の導入やマイクロモビリティの共有サービスが増加しているため、多くの業界関係者がバッテリーと電力網間でのエネルギーを転送を模索している。EVのバッテリー交換を行うAmple(アンプル)は、同社の交換ステーションを緊急時のバックアップ電源として利用できるとしている。また、フォードの新型ピックアップトラック「 F-150 Lighting」も、停電時に自宅の電力を供給することができる。

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Revelの場合、電力網の解放が即座に必要な場合には、迅速に充電ステーションからの負荷を軽減する「デマンドレスポンス」(需要反応)オペレーションのようなサービスを提供したいと考えている。これは同社が先にニューヨークで実施したような運用だ。6月28日の猛暑の中で、Revelは需要のピーク時を避けるために、車両群の充電スケジュールを調整したのだ。

Revelによれば、エネルギー需要が高い時には、発電所から単位電力あたり2倍の二酸化炭素と20倍の窒素酸化物が排出されるため、ピーク時の需要を避けることで、よりクリーンな電力網の構築にもつながるという。

Revelまた、完全EV配車サービス用にTesla(テスラ)も所有しているが、このサービスは、市でのハイヤー新規導入に上限が設けられたため、サービスの停止を余儀なくされている。しかし現時点では、同社がこの技術を適用するのは電子モペッドに限定されている。

Logical Buildingsの業務担当副社長であるDavid Klatt(デビッド・クラット)氏は「交通機関の電化が進む中、電気モビリティ会社は電力網の弾力性を高めるための充電スケジュールを立てることが重要です」という。「Revelは、ニューヨーク市の円滑な電化と脱炭素化に道を開く、インテリジェントな充電オペレーションのリーダーとなるために必要な措置を講じています」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:ニューヨーク電力網電動モペッドRevel電気自動車充電ステーション

画像クレジット:Revel

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

ニューヨーク市で生体情報プライバシー法が発効、データの販売・共有を禁止

収集した顧客の生体情報データで企業が行えることを制限する生体情報プライバシーの新条例がニューヨーク市で発効した。

米国時間7月9日から、生体情報を収集している企業は(最も一般的な手法は顔認証と指紋だ)データがどのように収集されているかを説明する通知とサインを、顧客が気づくようドアに表示することが求められる。この条例は、いくつか挙げると小売、店舗、レストラン、劇場など、幅広い業種の企業に適用される。また収集した生体情報を販売・共有したり、そうした情報で益を得たりすることも禁じている。

この取り組みは、生体情報データがどのように収集・使用されているのかに関して、ニューヨーク居住者、そして毎年ニューヨーク市を訪れる何百万という人を保護するものだ。一方で、差別的で往々にして機能していないと批評家が批判するテクノロジーの使用を企業に思いとどまらせる。

条例に違反した企業は厳しい罰則に直面するが、違反をすばやく正せば罰金を回避できる。

法律というのは決して完全ではないもので、こうした法律も同様だ。というのも、今回の法律は警察を含む政府機関には適用されないからだ。条例がカバーする企業の中で対象外となるのは、たとえば指紋認証で出退社する従業員だ。また、何をもって生体情報とするかについては、対象範囲を拡大したり狭めたりするという問題に直面することが考えられる。

似たような生体情報プライバシー法は2020年にオレゴン州ポートランドが制定しており、ニューヨークはポートランドに続く最新の例となる。しかしニューヨークの法律は、他の都市の強力な生体認証プライバシー法には及ばない。

イリノイ州は、同意なしでの生体データの使用を訴える権利を住民に保障する法律「Biometric Information Privacy Act」を導入している。許可を得ずに写真に写っているユーザーをタグするために顔認証を使っていたFacebookは2021年、イリノイ州の住民が2015年に起こした集団訴訟で6億5000万ドル(約716億円)を払って和解した。

ニューヨーク拠点のSurveillance Technology Oversight ProjectのエグゼクティブディレクターAlbert Fox Cahn(アルベルト・フォックス・カーン)氏は今回の法律について、ニューヨーカーがどのように地元の企業に追跡されているのかを知ることができるようになるたための「重要なステップ」だと述べた。

「偽の顔認証マッチングは、ニューヨーク市警察がRite AidやTargetへと歩いているあなたに職務質問することにつながるかもしれません」とカーン氏はTechCrunchに語った。同氏はまた、他の都市がすでにそうしたように、ニューヨークが顔認証などのシステムを非合法化することでさらに規制すべきだとも話した。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ニューヨーク生体情報プライバシー顔認証

画像クレジット:Leo Patrizi / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

ニューヨーク州ITサービス局のコードリポジトリがインターネット上に公開されていた

ニューヨーク州政府IT部門が使っているコードリポジトリがインターネット上に公開され、州政府システムに関連する秘密鍵とパスワードを含む内部プロジェクトデータが誰にでもアクセスできる状態になっていた。

露出したGitLab(ギットラブ)サーバーは、米国時間6月26日にドバイ拠点のサイバーセキュリティ会社SpiderSilk(スパイダーシルク)が発見した。Samsung(サムスン)やClearview AI(クリアビューAI)、MoviePass(ムービーパス)のデータ漏洩を発見したことで知られる会社だ。

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州当局はGitLabを、自らが管理するサーバー上で共同開発しているソースコード(およびプロジェクトに必要な秘密鍵、トークン、パスワード)の格納に使用していた。しかし、露出したサーバーはインターネットからアクセス可能であり、部外者の誰でもがユーザーアカウントを作成し、自由にログインできる構成になっていた、とSpiderSilkの最高セキュリティ責任者であるMossab Hussein(モサブ・フセイン)氏がTechCrunchに語った。

TechCrunchが問題のGitLabサーバーを訪れたところ、ログインページが表示され、新規ユーザーアカウントを受け付けていた。どれほどの時間GitLabサーバーがこの状態になっていたか正確にはわかっていないが、露出されたデバイスやデータベースの検索エンジンであるShodan(ショーダン)の履歴データによると、当該GitLabサーバーがインターネットで最初に発見されたのは3月18日だった。

SpiderSilkは、ニューヨーク州情報テクノロジーサービス局配下のサーバーとデータベースに関連する秘密鍵とパスワードを含むGitLabサーバーのスクリーンショットを何枚か共有した。露出したサーバーが不正アクセスあるいは破壊されることを恐れた同社は、このセキュリティ欠陥の公開について州に助言を求めた。

TechCrunchは、サーバーが発見された直後ニューヨーク州政府に注意を促した。当局に宛てた露出したGitLabサーバーに関する何通かのメールは開封されたが返信はなかった。当該サーバーは6月21日午後に閉鎖オフラインになった。

ニューヨーク州ITサービス局のScot Reif(スコット・リーフ)報道官は、サーバーは「ベンダーが設置したテストボックスであり、データは含まれておらず、すでに本局によって削除されています」と語った(リーフ氏は自分の回答は「オン・バックグラウンド」で、州当局者に帰属するものであり、(公表には)条件に関する両社の事前合意が必要だと語ったが、TechCrunchは条件を拒否する機会を与えられなかったため回答を報道した)。

質問に対しリーフ氏は、ベンダーの名前、あるいはサーバーのパスワードが変更されたかどうかを答えなかった。サーバー上のプロジェクトのいくつかには「prod」のマークが付けられており、これはサーバーが利用中であることを示す「production」の一般的略称である。リーフ氏は、本事象が検事総長事務局に報告されたかどうかも明らかにしなかった。検事総長広報官に質問したところ、本稿公開時までに回答はなかった。

TechCrunchは、ベンダーがIndotronix-Avani(インドトロニクス・アバニ)であると認識している。ニューヨーク拠点の企業でインドに支社があり、ベンチャーキャピタル会社のNigama Venturesが所有している。何枚かのスクリーンショットが、GitLabプロジェクトの一部がIndotronix-Avaniのプロジェクト・マネージャーによって変更されたことを示している。同社のウェブサイトにはニューヨーク州政府の名前が米国国務省や防衛省などの政府顧客とともに誇示されている。

Indotronix-Avaniの広報担当者、Mark Edmonds(マーク・エドモンズ)氏はコメント要求に答えなかった。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:ニューヨークデータ漏洩

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

NYのトップホテルMint House、新型コロナの影響でそのおもてなしビジネスに変化

ニューヨーク市内の一流ホテルはどこであろう?TripAdvisor(トリップアドバイザー)ユーザーによると、それは Mint House at 70 Pine(ミントハウスアット70パイン)だ。写真を見てみるとその理由は明らかだ。ニューヨーク市内のホテルの部屋は基本的には、必要なすべてのものがコンパクトに収まったお弁当箱のようなものだが、Mint Houseの客室は違う。Mint Houseの客室はまるでマンションの部屋のようであり、旅行者はそれに注目している。

新型コロナのパンデミックにより、Mint Houseの業務形態が変わったが、各国で経済再開が始まる中、同社は出張者と観光客を迎え入れる状態にある。

Mint Houseは2017年に創業し、サービスを拡大しながら2019年には1500万ドル(約16憶円)の資金を得た。当時、Revolution Venture(レボリューションベンチャー)の管理パートナーでMint Houseの投資家であるTige Savage(タイグ・サベージ)氏は同社について「Mint Houseはホテルの良いところとAirbnb(エアビーアンドビー)の良いところだけを併せ持つ最高のホテルだ」と説明した。

同社は従来のホテルとは異なり、Airbnbで借りられる部屋のような客室を提供しているが、ホテルのようなサービスも提供しているのだ。Lyric(リリック)と呼ばれる別の企業も同様のサービスを提供しようとし、最終的に廃業する前に 1億5000万ドル(約164億円)調達していた

Mint Houseはそもそもセカンダリーマーケット(訳者注:ニューヨーク市以外)の出張者をターゲットにしていた。新型コロナが流行する前は主にインディアナポリス、デンバー、ナッシュビル、マイアミ、デトロイトで部屋を提供していた。Mint HouseのCEO Will Lucas(ウィル・ルーカス)氏は当時、こうした市場は、主な市場よりも宿泊状況が悪い場合が多いため、機会があったと説明した。

コロナ禍により、Mint Houseの軌道に変化があった、とルーカス氏はTechCrunchのインタビューで語った。パンデミックになったばかりのころ、サービス業は落ち込んだ。Mint Houseでも利用率が60%から一桁台に落ち込み、顧客への返金に応じて、従業員を一時解雇する必要があった。だが新しい営業チームメンバーを通じて徐々にMint Houseの提供するサービスがパンデミックに適していることがわかった。職場に行けなくなった人々は住む場所と仕事をする場所が必要だったのだ。出張する医療専門家には、第2の我が家が必要になった。一部の大学生は学生寮から追い出されても、授業には出席しなければならなかった。Mint Houseのマンションの一室のような客室は、キッチンといえばコーヒーメーカーと小さな冷蔵庫だけといった従来のホテルの客室と比べて、魅力的なものであった。Mint Houseの客室には、キッチンとリビング、そして最近需要が高まっている仕事スペースが付いているのだ。

パンデミックの状況に慣れてくると、Mint Houseでは宿泊数に大きな変化が見られた。コロナ禍になる前の平均宿泊数は4泊だったが、コロナ禍における平均宿泊数は21泊であった。これは宿泊者のニーズが変わったためだ。会議のために飛ぶ代わりに、長期的にリモートで働く場所が必要とされていた。パンデミックの真っただ中では、宿泊客の81%がリモートワーカーであった。

Mint Houseの主な特徴は、ソーシャルディスタンスを実践するためのようにも見えるが、これはパンデミックの前から採用されていたものだ。宿泊客はフロントデスクでチェックインをする必要がなく、カードキーもない。また食品等を注文して、到着前に部屋に運んでもらうようにできる。このサービスはビジネス旅行者用のホテル以外ではほとんど見かけることはないが、今や観光旅行者にも需要がある。またすべてのロケーションでカスタマーサービスが一元化されている。

2020年はサービス業のほとんどが弱っていたが、Mint Houseはすばらしい成長を遂げていた。パンデミックが始まってから数カ月後、Mint Houseの利用率は新記録を達成した。6月までには、客室の84%が予約で埋まり、2020年はその後も平均して80%以上の利用率を保った。また2020年後半にはポートフォリオを50%以上倍増し、成長した。

パンデミックのどん底からおよそ1年経った現在、Mint Houseは13の市場で24棟のホテルを展開している。

同社はニューヨーク市内では大手と競合しているとCEOのルーカス氏は言及した。

「ニューヨーク市内では2021年、平均して2.2倍のRevPAR(販売可能客室売り上げ)を上げている」と同氏。「当社のCompSet(競合社、この場合は競合ホテル)は、2つのThompson(トンプソン)ホテル、3つのMarriott(マリオット)ホテルとHilton(ヒルトン)ホテルなど、非常に手ごわい大手ホテルだ。当社は利用率ナンバーワン、ADR(平均販売価格)ナンバーワンで、総合してもCompSetを上回っている」。

ルーカス氏は、これらのランキングはMint Houseの強みと従来のホテルブランドからの差別化を示していると確信しているが、さらなる成長のために老舗ホテルブランドからエグゼクティブを迎え入れた。

Mint Houseは最近、新しく数名のエグゼクティブが加わったことを発表した。Domio(ドミノ)、Hilton(ヒルトン)、MGM Hospitality(MGMホスピタリティー)、Marriott(マリオット)で働いていたJim Mrha(ジム・マルハ)氏をMint HouseのCFOとして迎え入れ、TPG Hotels & Resorts(TPGホテルズ&リゾーツ)とStarwood(スターウッド)の元投資担当者兼エグゼクティブのPaul Sacco(ポール・サッコ)氏は最高開発責任者(CDO)として加わった。また、トラベルeコマーススタートアップPorter & Sail(ポーター&セイル)のエグゼクティブであったJess Berkin(ジェス・バーキン)氏は新しくマーケティングおよび通信のエグゼクティブに就任した。

「当社はこれから本当に猛進すると思う」とルーカス氏は自慢げに語った。

世界が再開へと進む中、Mint Houseはアグレッシブな成長戦略に取り組もうとしている。同社は販売可能客室数を倍増し、1カ月以内のロンドンへの進出から初め、最終的には南米まで、全国に進出することを考えている。

2021年も半分を過ぎ、パンデミックも落ち着く中で旅行が再び変化し始めている。Mint Houseの平均宿泊数は2020年の21泊から6泊程度に下がっている。ルーカス氏によると、これは観光旅行者が増加しており、短期出張も戻っている。そしてホームオフィスから離れて、マイアミなどの新しい場所でリモートワークをする新しいタイプのビジネス旅行者もいる。

Mint Houseはホテルと、Airbnbが提供するような短期レンタルの中間に位置付けられる。ホテルが提供する利便性と信頼を提供しながら、短期レンタルのスタイルと心地よさも提供するのだ。同社がその計画を遂行できるのであれば. 最近行ったエグゼクティブの雇用が役に立つはずで、ニューヨーク市内、そして全米ならびに世界でHiltonやMarriottと十分に渡り合っていける。

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カテゴリー:その他
タグ:ニューヨークホテル新型コロナウイルス

画像クレジット:Mint House

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(文:Matt Burns、翻訳:Dragonfly)

グーグル初の常設店舗がニューヨークに現地時間6月17日オープン

Googleは何年にもわたって期間限定のポップアップストアを多数開設してきたが、まもなく初の常設店舗がニューヨークのチェルシー地区にオープンする。Apple、Microsoft、Samsung、さらにはAmazonもマンハッタンに店舗を構え、そのうちのいくつかはGoogleの新しい店舗のすぐそばだ。Googleは実店舗のモデルに関してこうした同業他社の仲間入りを果たすことになる。

新しい店舗は現地時間の6月17日午前10時(日本時間6月17日午後11時)にオープンする。販売フロアの面積は5000平方フィート(464.5平方メートル、140.5坪)で、高額なウェストサイドの不動産にGoogleが大きな投資をして購入したビルにある。この場所には以前郵便局とスターバックスがあったが、新たに大家になったGoogleとのリース契約が満了となって退去した。

画像クレジット:Google and Paul Warchol

店舗レイアウトの設計は体験型で、増えつつあるGoogleのハードウェア製品と他社製品が置かれている。基本的には、スマートフォンのPixel、Home製品、Stadia、WearOS、そしてハードウェアの新製品やFitbitデバイスを旅行客や地元住民に紹介する店舗だ。

バイスプレジデントのJason Rosenthal(ジェイソン・ローゼンタール)氏はプレス向け内覧会で「我々はここ数年間ポップアップストアを通じて、Googleだけがお客様に提供できるものとして何が期待されているかについて理解を深めてきました。2016年、17年、18年、19年のポップアップストアから学び、それをチェルシーにオープンする店舗に取り入れています」と説明した。

コロナ禍による制限のため、内覧会はバーチャルで実施された。まもなく正式にオープンするが、ニューヨーク市が感染終盤期の対応をとっているため(収束を祈る)、Googleは引き続き標準的な安全対策を維持する。

コロナ禍でストアのオープンが計画より遅れたことはおそらく間違いないが、Googleは6月17日に全面開業することを約束している。オープンに先立ち、数週間の試験運用が実施された。試験運用では50人前後のストアスタッフがトレーニングを積み、Googleはエクスペリエンスの最終仕上げをした。さらにその前には、カリフォルニア州マウンテンビューの倉庫に実店舗大のモックアップを作ってアイデアを試していた。

画像クレジット:Google and Paul Warchol

17フィート(約5メートル)のウインドウには製品のスクリーンやジオラマが並び、ストア内の至るところに「サンドボックス」がある。大規模家具店にあるのと同様のリビングルームなど、実際の利用状況を効果的に試せるエリアだ。Stadiaをプレイできるゲーミングエリアや、さまざまなHome / Nest製品を試せる防音スペースもある。

Apple Storeと同様に、Pixelsなどのデバイスが故障した際に持ち込んで修理してもらうことができる。Googleは、店舗内で修理できるデバイスを増やしており、画面の破損などの特定の問題は同日修理が可能になる見込みだと説明している。

  1. Interactive-Hardware-Space

    写真:Paul Warchol
  2. Imagination-Space

  3. Here-to-Help-Support-Desk

    写真:Photos courtesy of Google and Paul Warchol
  4. Discovery-Boxes-from-interior

    写真:Photos courtesy of Google and Paul Warchol
  5. Discovery-Boxes-from-exterior

    写真:Photos courtesy of Google and Paul Warchol
  6. Discovery-Box-Sustainability

    写真:Photos courtesy of Google and Paul Warchol
  7. Discovery-Box-Organization-_-Pixel

    写真:Photos courtesy of Google and Paul Warchol
  8. Discovery-Box-Nest-Hub

    写真:Photos courtesy of Google and Paul Warchol
  9. Branded-Merchandise-Tote-Bag

    写真:Gus Van Zandt r
  10. Branded-Merchandise-Basketballs

    写真:Google and Paul Warchol

この店舗自体が実験的な位置づけであり、米国内の他の場所、そしておそらくハードウェアを販売している他の国でも、店舗をオープンする計画があるようだ。ただし現時点では、チェルシーにオープンするこの店舗以外についてGoogleは言及しないものとみられる。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Googleニューヨーク店舗

画像クレジット:Paul Warchol / Google

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(文:Brian Heater、翻訳:Kaori Koyama)

10分で満充電にできるEVバッテリー交換のAmpleがENEOSと日本国内での交換インフラ展開、運営で提携

電気自動車のバッテリー交換を行うスタートアップのAmple(アンプル)は、何年にもわたって技術開発に取り組んできたが、2021年6月、日本とニューヨークへの拡大を促進するための2つのパートナーシップを締結した。2014年に設立され、先の3月にステルス状態を脱したこのスタートアップは、日本の石油 / エネルギー企業であるENEOS(エネオス)と提携し、日本国内でバッテリー交換インフラを共同で展開・運営することを米国時間6月15日に発表した。

両社は今後1年間、配車サービス、タクシー、自治体、レンタカー、ラストワンマイル配送などの企業を対象に、Ampleの全自動交換技術を試験的に導入する。また、AmpleとENEOSは、交換ステーションがエネルギーグリッドのバックアップ電源などの、他の用途にも使えるかどうかも評価する。まだパートナーシップは立ち上げの段階で、発表されていることは少ない。たとえばAmpleは、パイロットプログラムいつ日本のどこで始まるのかについては明らかにしていない。しかし、詳細には乏しいものの、ENEOSが関心を見せたことは、(少なくともAmpleの)バッテリー交換技術が信奉者を集めつつあることを示している。

今回のENEOSの発表は、Ampleが配車サービス、タクシー、ラストマイル配送用のEV(電気自動車)レンタル会社であるニューヨーク市のSally(サリー)との提携を行った数日後に行われた。Ampleの創業者でCEOのKhaled Hassounah(ハレド・ハッソウナ)氏によると、AmpleとSallyは、2021年の第4四半期までにニューヨークで5~10カ所のステーションを展開し、2021年には他の市場にも進出する予定だ。

関連記事:1000億円超を調達しながら失敗に終わったEVのバッテリー交換ビジネスを復活させるAmple

AmpleとSallyのパートナーシップは、数カ月後にはサンフランシスコにも拡大する。サービスを利用するコストにもよるが、少なくともカリフォルニア州では、配車サービスのドライバーにとっては有利な取引になるかもしれない。カリフォルニア州では2030年までにUber(ウーバー)とLyft(リフト)のドライバーの90%がEVに乗る必要があるとする法令が出されたばかりだ

「最終的には、交換ステーションをガソリンスタンドのようにどこにでもあるものにすることが目標です」とハッソウナ氏はTechCrunchに語った。

Ampleはこの3月に、ベイエリアで5カ所の交換ステーションの発表を行うと同時にステルス状態から抜け出した。また、Uberとの提携により、ドライバーはAmpleのバッテリー技術を搭載したクルマをAmpleから直接借りることができる。

Ampleのポリシー兼国際支援担当副社長のLevi Tillemann(レビ・ティルマン)氏は、TechCrunchの取材に対して「Ampleアーキテクチャは、あらゆる最新の電気自動車に統合できるよう設計されています」と答える。「一般的な電気自動車では、バッテリーパックをクルマから取り外すことは想定されていませんが、Ampleシステムを使えば、純正のバッテリーパックとまったく同じ寸法のアダプタープレートを備えたバッテリーパックと交換することができます。そのアダプタープレートこそが、バッテリー交換を可能にするためのアーキテクチャなのです」。

Ampleの標準化されたバッテリーモジュールは、Ampleプラットフォームで動作するように設定されたどの車両でも動作します、とティルマン氏はいう。今回のAmpleとSallyの提携により、Ampleはビジネスモデルを実証するために立ち上げた、自社による車両運行からの脱却を始めることができる。同社は、Sallyをはじめ、将来的にはおそらく他のフリート会社やレンタル会社とも協力して、Ample対応の車両を作っていく予定だ。

「Ampleのバッテリー交換技術は、どんな電気自動車にも対応していて、純正バッテリーとの置き換えが可能で、しかもクルマの改造(ハードウェア、ソフトウェアのいずれも)を必要としないので、EVインフラの導入にかかるコストと時間が劇的に削減されます」とハッソウナ氏はいう。

配車サービスのドライバーがEVへの乗り換えを躊躇する理由の1つに、バッテリーの充電時間がある。ハッソウナ氏によると、バッテリー交換には現在10分しかかからないが、年内には5分に短縮することを目指しているそうだ。より効率的でシームレスなプロセスを実現することで、配車サービスのドライバーや物流企業が切り替えを行う後押しをすることができるだろう。

「現在、ドライバーはエネルギーも含んでスワップサービスに対して1マイルあたり10セント(約11円)を支払っています。航続距離は車種やバッテリーサイズによって異なります」とハッソウナ氏は語る。「サービスの価格は電気料金によって変わりますが、ガソリンに比べて1~2割程度安くなることを目標にしています」。

ドライバーがバッテリーを交換したいときは、Ampleのアプリを使って近くのステーションを探し、自動交換を始める。各ステーションでは、1時間あたり5~6台程度のサービスが可能だが、年内にはその倍のサービスが可能になると見込まれている。とはいえ、これは各ステーションでの利用可能電力量にもよる。

ティルマン氏は、Ampleの拡大に伴い、既存のOEMパートナーと協力して、生産ラインで新車にAmpleの製造用プレートを取り付けるという選択肢を消費者に提供できる日を目指しているという。

彼は「私たちのユニットのコストは、バッテリースワップシステムにとって非常に有利なものです」という。「展開に大きなコストがかからないために、比較的少数の車両でも、バッテリー交換アーキテクチャーは経済的で収益性が高くすることができるのです」。

以前にAmpleに投資を行ったENEOSは、同社によれば、次世代のエネルギー供給に取り組んでいるとのことだ。同社はまた、水素についても検討しており、最近ではトヨタが日本で建設中の未来型試作都市「Woven City(ウーブン・シティ)」と提携した。同市は水素を使って電力を供給する予定だ。

関連記事:トヨタ自動車とENEOSが協力し実験都市「Woven City」における水素エネルギーの利活用ついて検討開始

カテゴリー:モビリティ
タグ:Ample日本ニューヨークEVバッテリーENEOS

画像クレジット:Ample

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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

グーグルが今夏ニューヨークに店舗を開設、ハードウェア販売に本腰

Google(グーグル)はここしばらく店舗を模索してきた。マンハッタン・ソーホー地区のポップアップ店舗をTechCrunchが紹介したのは4年以上前のことだ。しかし同社のブランドを冠した小売店舗はかなり限られてきた。同社がまずソフトウェアの会社であることを考えると、驚くことではない。

しかし今夏、同社は増えつつある小売店舗を展開する他のテック企業の仲間に加わる。初のGoogle Storeがニューヨークのチェルシー地区にある元ポート・オーソリティの建物にオープンする。このビルには同社のNYオフィスも入っている。

店舗開設はAppleやSamsungに続くものだ。2社とも近くに店舗を持っている(Amazonは本屋を展開しているが、それは少しアップタウンの方のエンパイア・ステート・ビル近くにある)。

競合するかのように、店舗はGoogleのハードウェア製品を中心に据える。つまり、PixelスマホやさまざまなNestデバイスなどだ。Googleの製品の提供はAppleやSamsungなどに比べるとまだかなり限定されているが、直近のFitbit買収完了は明るく照らされた商品棚にバラエティに富んだ商品を陳列するのに役立つはずだ。

初の小売店舗をオープンするのに、2021年は特に奇妙な年だ。Googleがチェルシーにかなりの面積の小売スペースをもってしばらく経つが、新型コロナウイルスが2020年店舗をオープンさせるという計画をほぼ台無しにした。しかしニューヨーク市は巨大な人口にかなりのスピードでワクチン接種を進めていて、2021年5月初めの時点で成人の41%が接種を完了した。

それでもGoogleは安全を優先している。ブログには以下のようにある。

Google Storeではマスク、手指消毒、そしてソーシャルディスタンシングが求められ、1日に数回全スペースを清掃します。顧客がショッピングの間、安全だと感じられるよう、入店できるゲストの数は制限されます。手軽なピックアップオプションも利用可能です。必要に応じて健康と安全に関する手順を展開するため、引き続き市や州、国の当局のガイダンスを遵守します。

店舗設置は、同社にとってよりハードウェア推進という大きな取り組みの一部のように聞こえる。ハードウェアは同社が遅れを取っている分野であり、特にモバイル部門においてはそうだ。Googleは初の店舗について「当社のハードウェア・ジャーニーにおける重要な次なるステップ」と表現している。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:GoogleGoogle I/O 2021店舗PixelGoogle Nestニューヨーク

画像クレジット:Google

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

Limeがニューヨーク市に電動モペッド100台導入、デブラシオ市長による7月1日の完全解禁宣言を受けて

ニューヨーク市の電動スクーターシェアリング事業の入札を、最初の企業として勝ち取ってから数週間後、マイクロモビリティー大手のLime(ライム)は、ニューヨークの街に電動モペッドを導入する。ニューヨーク市で複数の形態のマイクロモビリティーシェアリングを展開するのは、Limeが初となる。

米国時間4月30日、Limeはブルックリン区の路上に100台の電動モペッドを展開する。今後数週間で、対象地域はクイーンズ区とマンハッタン区の南区域に広げる予定だ。ニューヨーク市は、自動車の排気ガスによる大気汚染と温暖化に悩まされてきた。2050年までにカーボンニュートラルを実現したいならば、同市は電動マイクロモビリティーをもっと快く受け入れる必要がある。

Limeの直接の競合相手は、ニューヨーク市でLimeの他に唯一電動モペッドのシェアリング事業を展開しているRevel(レベル)だ。Revelは先日、全電気自動車による配車サービスの開始を発表したばかりだ。Limeが最初に運用を開始する地域は、ウィリアムズバーグからグリーンポイント、さらにブルックリンハイツにかけてのブルックリン区北部のほぼ全域というRevelの対象地域と、だいたい重なっている。だが、Limeの広報担当者によれば、Limeは南西部のフラットランズまで対象地区を広げるという。

2021年4月初め、LimeはワシントンD.C.とパリでも電動モペッド事業を開始している。どちらの地区でも、Limeが力を入れているのがライダーと他の道路利用者の安全だ。そのための機能として同社は、AIによるヘルメット検知、免許証確認、活性テストを導入している。活性テストとは、指示に従っていくつかの表情を見せ、ライダーが本物の生きた人間であることを証明するためのもので、他人の顔写真で誤魔化すことを防ぐ。Limeの広報担当者は、この活性テストは免許証の人物とライダーの照合にも使われると話している。

関連記事:共有モビリティのLimeが10km先にも行けるペダルつきの電動バイク「モペッド」導入を発表

さらにLimeは、米モーターサイクル安全財団の監修で構築したライダー教育カリキュラムの受講をライダーに義務づけている。サービスは自賠責保険でカバーされ、ライダーが運転中に人や器物に損害を与えた場合の金銭的な補償がなされる。ただし、ライダー自身の怪我や器物の損害は対象外となる。

ライバルのRevelは、こうした安全対策の導入を苦い教訓から学んでいる。2020年夏、ヘルメットを装着しないライダーの死亡事故や通報が相次いだことを受け、同社は電動モペッドのシェアリングを数週間停止し、市当局の不安を払拭するための安全対策を練った。現在Revelでは、利用者にヘルメットを着用した自撮り画像を要求している。また初めて利用する人はみな、乗車前に、安全訓練クイズ21問に答え、教則動画を見ることが義務づけられている。Revelのアプリには、コミュニティ通報ツールも組み込まれていて、悪質なライダーを見かけた人は、誰もが通報できるようにもなっている。

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ライダーの安全を守るためのLimeとReveの取り組みは、ニューヨーク市交通局(DOT)に指示されたものではない。DOTによる電動スクーターの承認には長い時間を要したが、電動モペッドには市の規制がない。

「私たちはDOTと協力して作業を進め、私たちの取り組みを逐一報告し、質問に答え、あらゆる問題点に対処しています」とLimeの広報担当者はTechCrunchに話した。

Limeは今後、Pell Grant(大学生向けの米連邦政府による給付型奨学金)の受給者、休職中の人、各種助成を受けている人の料金を割り引き、さらにパンデミックの影響を強く受けた最前線で働く人、教師、非営利団体の職員、アーティスト、接待業の人たちは無料にするLime Aid(ライムエイド)プログラムを実施する予定だ。

より多くのニューヨーク市民がワクチン接種を受けて、街の活動が元どおりに解禁されたとき(7月1日に完全解禁という計画が発表されたばかりだ)、Limeはマイクロモビリティ提供者の主導的地位を確立したいと考えている。彼らにとって、パンデミック後の夏は、この上ない好機だ。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Limeニューヨーク電動モペッドマイクロモビリティ

画像クレジット:Lime

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:金井哲夫)