ナノ・ユニバースで物々交換できるバンクの「モノ払い」をGardiaが全力サポート

Gardia(ガルディア)は6月12日、バンクが始めた新しい決済手段「モノ払い」に対する、独自の与信審査サービスと債務不履行リスクに対する保証サービスを提供開始した。

Gardiaは、飲食店などでの予約に対する無断キャンセルや代金後払いなどのリスク保証サービスを展開している2017年設立のスタートアップ。光本勇介氏が率いるバンクは、品物の写真を撮るだけで査定額が即時算出されて現金化できる「CASH」、航空券やホテル宿泊などの費用で後払いで旅行に行ける「TRAVEL Now」などのサービスを展開している。

今回バンクが始める新決済手段「モノ払い」とは、購入したい商品の決済時に現金やクレジットカードではなく、手元にある品物を使って決済できる。前述のCASHのシステムが利用されており、手元にある商品の写真を撮れば査定額が判明するので、その査定額ぶんで新しい買い物ができるという仕組みだ。

本日から、エボラブルアジアが運営する総合旅行プラットフォーム「エアトリ」と、nano・universe(ナノ・ユニバース)が運営するオンラインストアで「モノ払い」を利用できる。

CASHが“モノでモノが買える”新決済手段「モノ払い」をリリース

即時買い取りアプリ「CASH」などを提供するバンクは6月12日、不要なアイテムをオンラインストアでの決済に使える“物々交換”の新サービス「モノ払い」をリリースした。

CASHはファッションアイテムやガジェットなどのブランド、カテゴリー、コンディションを選択して写真を撮るだけで査定が行われ、アイテムを発送する前に現金化できる買い取りアプリだ。

モノ払いは、CASHの買い取り査定の仕組みを利用して、オンラインストアなどで商品を購入する際の決済手段として利用できるサービス。今までであれば「不要なアイテムを売る」「換金する」「新しいアイテムを買う」といったステップを踏んでいたところを、「モノでモノを買う」ことができる。

オンラインストア側はモノ払いを導入することで、新たな決済手段を顧客に提供でき、売上金は通常通り受け取ることができるという。

リリース時点ではエボラブルアジアが運営する旅行予約サイト「エアトリ」が、モノ払いを導入。次いでアパレルブランドのナノ・ユニバースが運営する自社オンラインストアで、6月末ごろをめどに導入が予定されているという。

バンクではモノ払いリリースにあたり「私たちにとって『モノ』は『価値あるお金』。私たちが決済手段として購買機会に関わらせていただくことで、『お金』を介さない新しい購買機会を提供していければと考えている」とコメントしている。

即時買い取りアプリ「CASH」のバンク、買い取ったアイテムを100円から販売するオークションサービス開始

即時買い取りアプリ「CASH」などを提供するバンクは11月20日、同社がCASHを通して買い取ったアイテムを購入できる法人限定のオークションサイト「CASH Mall(キャッシュモール)」を開始すると発表した。

CASH Mallでは、毎日0時から翌日23時までインターネットオークションが開催され、すべてのアイテムが100円からスタートする。オークションには常時300のアイテムが出品され、毎日そのアイテムリストは更新。翌日のアイテムリストは前日までに公開されるという仕組みだ。登録料、手数料、配送料などは無料。ユーザーとなるリユース事業者は、事業者アカウントの登録を済ませるだけですぐに利用できる。

新サービスCASH Mallについて、バンク代表取締役の光本勇介氏は、「約1兆6000億円の市場規模があると言われるリユース市場ですが、事業者が希望するほどリユース品を買い取れないという現状があります。だからこそ、多くのリユース企業ではプロモーションに多額の資金を使い『買い取ります!』と訴求しています。私たちのマーケットにくれば、確実に、買取りたい商材が買取りたい価格で買い取れるということを実現していく」と話す。

ただ、僕が最初この話を聞いたとき、バンクはCASHを通してアイテムを買い取ったものはいいものの、それらを上手く再販売できずに在庫が溜まってしまっているのではないかと思った。バンクにとってはアイテムの再販売がマネタイズポイントであり、アイテムを再販売できずに在庫として溜まればキャッシュフローが滞る。だから、買い取った品を大量に“処分”できる低価格なオークションマーケットプレイスを作らざるを得なかったのではないかという疑問だ。

それについて光本氏は、「大口のアイテムは今でも、そしてこれからも私たちが特定の大手事業者と取引します。しかし、CASH Mallでは私たちがカバーしきれない、大量にいる小規模事業者や個人のセドラーなどにもリーチして再販売するためのマーケットプレイスになる」と話した。それに加えて、光本氏は“ある光景”を変えたいからこそCASH Mallを作ったのだと強調した。

今回取材で、光本氏はリユース事業者がアイテムを競り落とすオークションの様子を映した動画を観せてくれた。小さな会議室ほどのスペースに所狭しと並べられたイスと机に事業者が座り、前方にはオークション主催者が立っている。部屋の壁には10個ほどのモニターが設置され、オークション主催者の手元にあるアイテムが映し出される。主催者が競りを開始すると、事業者が一斉に手のひらを使った合図で競りに参加する。そんな光景がその動画には映し出されていた。

僕は実際にオークションには参加したことがないので、アナログのやり方にはそれなりの良さがあるのかもしれないが、その動画を観て2008年くらいにタイムスリップした気持ちになったのは確かだ。取材の中で光本氏がベンチマーク先としてあげていたのが、自動車業界で近代的なオークションシステムを運営するUSS。つまり”今の時代の当たり前”をモノのリユース市場にも持ち込みたいと考えたのだ。

「いまの時代に合わせた、2次流通業界の企業がネットでモノを簡単に仕入れられるサービスを作り、CASH Mallを「モノ版USS」と呼ばれるようなマーケットプレイスにするのが一番の理想です」(光本氏)

「TRAVEL Now」光本氏、「ズボラ旅」有川氏に聞く新型旅行サービス誕生のトリガー

写真右からバンク代表取締役/CEO 光本勇介氏、HotSpring代表取締役 有川鴻哉氏、プレジデントオンライン編集部 岩本有平氏

東京・渋谷ヒカリエで開催中のTechCrunch Tokyo 2018。2日目の11月16日には、今年注目の旅行分野サービスを提供するスタートアップ2社が登壇し、「2018年は新型旅行サービス元年だったのか、旅領域のキーパーソンに聞く」と題してパネルディスカッションを行った。登壇したのは「TRAVEL Now」を提供するバンク代表取締役/CEOの光本勇介氏と、「ズボラ旅 by こころから(以下、ズボラ旅)」を提供するHotspring代表取締役の有川鴻哉氏。モデレーターは元TechCrunch Japan副編集長、現プレジデントオンライン編集部の岩本有平氏が務めた。

Hotspringが旅領域における新サービス、ズボラ旅を発表したのは2018年5月のこと。LINEチャットで旅をしたい日付と出発地を伝えるだけで、旅行プランを提案、予約までしてくれるズボラ旅は、旅のプランを考えることすら面倒な“ズボラ”な人でも気軽に利用できるサービスとして注目を集めた。

そして6月には、即時買取サービス「CASH」でスタートアップ界隈をにぎわせたバンクが、旅行領域に進出することを発表。与信の手続きなしで、後払いで旅行に行ける新サービス、TRAVEL Nowをスタートさせた。

ほかにもメルカリが旅行業へ参入、LINEがTravel.jpとの提携でLINEトラベル.jpをスタートするなど、今年は旅行分野でさまざまな動きが見られる年だ。その大きな渦の中、2社が旅という分野に注目した理由はなんだったのか。なぜこのタイミングだったのか。

光本氏も有川氏もシリアルアントレプレナーとして、複数の事業を立ち上げてきた人物。その2人がなぜ、今、旅行に注目したのか、まずは話を聞いた。

光本氏は「旅行領域の市場はでかい。OTA(Online Travel Agent)には巨大プレーヤーが海外にも国内にも大勢いて、楽天とじゃらんだけでも1.5兆円の規模がある。でもこの市場はお金がある人のためのもの。旅行に行きたい人はいっぱいいて、来月、再来月にはお金があるかもしれない。そういう人に旅行に行く機会を提供すれば、下手をしたら今の市場よりでかい市場があるかもしれない。『市場を作ってみないとわからない』というなら、作ってみたいと思って」と話す。

また光本氏は「個人的には毎年テーマを作っている」として「去年はお金がテーマだったので、CASHだった。今年は旅行がテーマだと思って、TRAVEL Nowを作った」とも述べている。

「なぜかといった理由がロジカルにあるわけではない。世の中、いろんな業界があって、各業界のトッププレーヤーがそれを牽引して、それなりの規模のビジネスを5年10年やっている。つまり以前に作られたメイン事業としてずっと同じことをしているわけだが、世の中や消費者はビックリするぐらい変化している」(光本氏)

光本氏は「テクノロジーやデバイスの変化に比べて、トッププレーヤーのビジネスは大きく変わっていない。既存の業界の変化もフラットに進んではいるが、世の中は想像以上に進んで変化している。そのギャップができたとき、新しい仕組みにグルッと入れ替わるんだと思う」という。

「それが去年は金融、今年は旅行と思っていたら、やはり今の消費者や世の中、デバイスに合わせた新しい旅行を提案するサービスが出てきている。タイミングだったのかな」(光本氏)

TRAVEL Nowも「思っていた以上に需要がある」と光本氏。「もっと突っ込んでいく価値がある」とサービス開始から3カ月の所感として感じているそうだ。

ちなみにバンクの光本氏はつい先日、DMMからの独立(MBO)を発表したばかりだが、事業のスピード感を上げたい、と感じたのは、このあたりの感覚もあったのかもしれない。会場では、MBO発表時のプレスリリース以上のコメントは聞くことはできなかった。

一方の有川氏も「光本さんも話すとおり、消費者とサービス提供側に差分があると感じたことが、ズボラ旅リリースのきっかけになっている」と話している。

「オンラインで旅行を買っている人は、全体の35%。服とかなら試したい、というのはわかるが、旅行は試着も何も試せないし、オフでもオンでも変わらないはず。なのにまだ3割台なのは何でだろうと考えた」(有川氏)

有川氏は「オンライン旅行サイトを触ると、いきなり目的地や日にち、人数を入れなければいけなくて、それから探し始めることになる。でもその時には行き先は決まっていないのでは?」とその理由について考えを説明している。

「友だちと会話していて『来月ぐらい温泉行きたいねー』といった感じで、旅行ができればいいのに、と思った。OTAはそことのギャップが激しい。光本さんの言う、お金がなくて旅行に行けない、という人がいるのだとしたら、申し込みがめんどくさくて行けなくなった人も、メチャメチャいるのではないか。そこでLINEのチャットで簡単に『どこかへ行きたい』と言えば予約まで行けるといいな、と思ってズボラ旅を立ち上げた」(有川氏)

現在のサービスの手応えについて有川氏は「会話で、相手が何となく見えると相談を詰めていけるので、コンバージョンは高いのではないか」と述べる。「今はサービスフローが成立して、行けるな、と思っているところ。ズボラ旅はスタッフがチャットで対応するサービスなので、オペレーションが重要。スタッフがユーザーの旅行を作っていけるのかどうか、お客さんの数を絞って検証していた。これから、ようやく増やしていくぞ、というタイミング」(有川氏)

2人ともIT畑の出身。リアルの代理店から始まっているOTAと比べて、メリットや不利と感じる点はどういうところだろうか。

光本氏は「僕たちの強みは“ド素人”なところ」という。「どのサービスでもそうだと思っているが、これまでに手がけた金融(CASH)でもオンラインストア(STORES.jp)の時も、対象にしているのはド素人の方々。旅行のド素人がド素人の方のためにサービスを作れば、気持ちをわかって作ることできる。それが強み」(光本氏)

業界ならではの知識やネットワークなどの面で弱みはあるとは思う、としながら、「いろんな企業の力を借りたり、自分たち自身が学んでカバーしている」と光本氏は話している。

「TRAVEL Nowでも情報はそぎまくった。記入するのがめんどくさい部分は、業界の人がビックリするぐらい取っちゃった。提携先の旅行会社の人からは、当たり前のように『あの情報もこの情報もほしい』とフィードバックが来たが、本当に必要かと聞くと『あったほうがいいからです』みたいな理由で。なくても予約できるし旅行はできる。ユーザーとしてはない方がいいし、実は成り立つじゃん、ということになった」(光本氏)

光本氏は「みんなが思っている以上に、旅行をガマンしている人はいると思っている」と話す。「2万円、3万円ぐらいの旅行なら行けばいいじゃないか、とよく言われるが、そういうことを言ってくるのはお金を持っている人。全国的な観点でいったら、安い温泉宿へ行くというのでもガマンしている人がいっぱいいる。『結婚記念日だから』『子どもの誕生日だから』今月旅行に行きたい。来月ならお金はどうにかなるかも。そういう人がちょっとしたお金がないから、このタイミングに旅行するのをガマンするのは悲しいし、残念だ。そういう人が旅行に行ける機会を作りまくりたい」(光本氏)

CASHもTRAVEL Nowも性善説で運営し、後払いをサービスに取り入れているが、悪用するユーザーもいるのではないか、という懸念もある。危ない人が利用するケースは「ゼロではない」と光本氏も認める。だがこの性善説で提供するサービスの領域に「興味があってチャレンジしたい」と語る。

「人を疑うのはコストでしかない。想定以上にきちんと払ってもらえるなら、ビジネスとして成り立つし、我々は疑うというコストをセーブできる。性善説に基づいたマスのサービスは世の中にない。そこに可能性と面白さがある。今はいろいろと実験しているところ。もう少し突き詰めたい」(光本氏)

有川氏は既存の旅行市場は「特殊」という。「OTAはITサービスを15〜6年やっている。ITサービスとしては長い方だ。そこには技術的負債もあり、リニューアルはされているけれど、全く新しいものではない。そこへモバイルシフト、スマートフォンの台頭とかが起きている。今このタイミングで新しく参入するからこそ、今までになかったものが出せる」とその考えを説明する。

LINEを入口としていることで、ズボラ旅のユーザーには若い人が多いのかと思いきや、お客さんの幅は広いようだ。「OTAサイトが使えない、使い方がわからない人も多い。今までインターネットが触れなかった人、60代の方が子どもに聞きながら使う、ということもある」(有川氏)

認知の部分でもLINEをベースにすることで、クリアできているようだ。今は旅行メディアとの連携により、記事を読み終わったところで申し込みできる入口を増やしているところだという。

今後、2社が考える旅行サービスの展開はどのようなものなのだろうか。

光本氏は「ポテンシャルが大きすぎるので、直近数年のイメージだが」として「超カジュアルにハードル低く、旅行に行く機会を提供しまくってみたい」と言う。

有川氏は「手段はチャットであってもなくても、旅行の相談窓口であり、オススメ場所でありたい」という。「我々が提供しているのは“レコメンド事業”だと思っている。商品はたくさんあるので、それを合う人にマッチングしていく、というサービスだ。そこでデバイスは何でもいいし、音声アシスタントを使うという方法もあると思う。形は問わなくなっていくのかな」(有川氏)

ズボラ旅はイベントが行われた11月16日、サービスを大きくリニューアルした。ホテル・旅館の予約だけでなく、新幹線や特急券、航空券などの旅行手段、現地の公園や美術館などの施設のチケット、レストランなど、何でもLINEで相談すれば、まとめて予約することが可能になったのだ。

また、2019年初にも、海外旅行への対応を予定しているという。有川氏は「飛行機もホテルも現地アクティビティーもレストランも、全部日本語でLINEで会話するだけで予約して、行って帰ってこられるようになる」として「オペレーションは大変だけれど、やる価値はあると思っている」とサービスに自信を見せる。

来年にかけて、有川氏は「何も考えなくても、どこかへ行きたいね、というのがかなう世の中を実現するために、今ないものを作っていく。今、日本で1年あたりの旅行回数は2.6回と言われているが、旅行を簡単にして、その数字を増やしていくためにインパクトを与えたい」(有川氏)

光本氏のほうは、「金融」「旅行」に続いて、来年は「不動産」に注目しているという。「これもロジカルな理由はないが、単純にこれまで変わっていなかった業界。世の中が変わっている中で、今の世の中に合った新しい不動産サービスは出てくるべき。世の中と業界とのギャップが開ききるタイミングじゃないか。(自分がやるかどうかはともかく)新しい価値をもたらすような不動産サービスが、来年は出てくるような気がしている。もし本当にそうなったら、褒めてください(笑)」(光本氏)

バンクがDMM.comからMBOにより独立——5億円で株式譲渡、「CASH」「TRAVEL Now」は継続

即時買取サービス「CASH(キャッシュ)」、あと払い旅行サービス「TRAVEL Now(トラベルナウ)」を運営するバンクは11月7日、MBO(マネジメントバイアウト)を実施し、親会社のDMM.comから独立したことを発表した。

MBO実施はバンク代表取締役兼CEOの光本勇介氏個人によるもの。DMM.comが保有するバンクの全株式を買い取ったということだ。バンクが提供するサービスは、引き続き新体制のもとで運営される。

DMM.comは2017年10月31日にバンクの全株式を光本氏から70億円で取得し、子会社化していた。DMM.comのリリースによると、光本氏への株式譲渡(売却)金額は5億円。ほかに買収後、運転資金として20億円の貸付があったということだが、この貸付金についてはバンクから5年で返済することで合意しているという。

バンクはMBOにともない、「よりスピーディーで柔軟な経営判断が行えるとともに、DMM.comのグループ会社として積んだ経験を活かしながら、CASHやTRAVEL Nowを中心に、 新規事業をふくめ、創業時からの経営理念『見たことのないサービスで新しい市場をつくる』を引き続き掲げ、バンクが得意とするインターネットビジネスによる新しい価値の提供に邁進していく」とコメント。

また、光本氏は自身のブログ上で以下のように述べている。

年末に近づき、来年の各事業のチャレンジや新規事業などを考えていく過程で、
私がイメージする投資規模やアクセルの踏み具合などを考えたとき、DMMから卒業をさせていただいた方が、
よりスピーディで柔軟な経営判断・動きが行えると判断をしました。十分な話し合いをさせていただいた結果、
DMMからもご理解をいただき、このようなアクションに至ることとなりました。

光本氏は、来週開催されるTechCrunch Tokyo 2018で、11月16日に行われるパネルディスカッションにも登壇予定。テーマは「新型旅行サービス」に関するものだが、今回のMBOについても、直接話を聞ける機会になるかもしれない。

与信をとらずに人を信じるーー「CASH」運営のバンク、“いま”お金がなくても旅行できる新サービス

「これは、CASHを手がける僕らだからこそやるべき事業なんです」ーー即時買い取りサービス「CASH」を手がけるバンク代表取締役の光本勇介氏は、今日発表されたばかりの新サービスについてこう説明した。その新サービスの名前は「TRAVEL Now」。あと払い専用の旅行代理店アプリだ。

TRAVEL Nowで旅行を買うとき、その時点で旅行代金が手元にある必要はない。ユーザーは海外旅行を含む3000種類の旅行プランの中から欲しいものを選び、ボタンを押すだけ。するとハガキが送られてくるから、それを持ってコンビニに行き、2ヶ月後までに支払いを済ませればいい。そのハガキを持つ手は、TRAVEL Nowで買った旅行で日焼けしていても構わない。

一番重要なのは、TRAVEL Nowを利用するにあたり面倒な審査や手続きなどは必要ないということ。バンクは、このサービス運営にあたってユーザーの与信はとらない。

人を信じる

CASHをリリースしたとき、同サービスは性善説によって成り立つビジネスだと光本氏は言い切った。その光本氏は今回の取材で、「CASHでは、人を信じてお金をばら撒いた。TRAVEL Nowでは、人を信じて旅行をばら撒く」と話す。では、なぜ旅行という領域にテーマを絞ったのかと聞くと、光本氏は一言、「勘です」と言った。

日本のオンライン旅行代理店(OTA)市場は、楽天やリクルートなどのビッグプレイヤーたちが長年にわたり覇権を握ってきた業界だ。どれだけマーケティング費用をかけられるか、という体力勝負になりがちなOTA市場にスタートアップが参入するためには、サービスに何かしらの新しさが求められる。

先日、チャット型旅行代理店の「ズボラ旅」をリリースしたHotspringは、チャットの向こう側にいる人に日程だけ伝えれば、目的地や旅先のプランをどんどんリコメンドしてくれるという“楽さ”をウリにしてOTA市場に参入した。バンクの場合、この市場に参入するための武器は、“そもそも旅行を買う時にお金を必要としないサービスを作る”というブッ飛んだ発想だった。

「旅行はモノとは違い、『彼女の誕生日があるから』だとか『急に休暇ができたから行きたい』といった、“いま”のニーズがとても重要です。でも、その時にたまたまお金がないから旅行を諦めていた人は多いはず。既存の旅行市場は、お金がある人が旅行に行くことで形成される市場だが、TRAVEL Nowは、その既存市場が取りこぼしていた人たちに旅行を提供することで市場を創る」(光本氏)

CASHのバンクだからこそできる事業

CASHが買い取った商品を並べた倉庫

与信も取らず、お金を受け取るより先に旅行を提供するーー仮に光本氏とは別の人がこのアイデアを思いついたとしても、それを実行することは難しかったはずだ。

「ノールック買い取り」と言われたCASHでさえ、ユーザーに“ばら撒いていた”のは1人あたり2万円まで。一方、比較的高額な旅行商品を扱うTRAVEL Nowでは、その数字が10万円にまで跳ね上がる。それを可能にするのは、「人を信じるために人を知る」能力だと光本氏はいう。

「CASHを1年運営してきて、ユーザーの行動をもとに悪い人を見分けるための知見がついてきました。例えば、CASHの初回利用時にグッチ、ルイヴィトン、APPLE製品の新品を売る人がデフォルトする(お金を渡しているのに、商品が送られてこない)率は94%。そして、その人が出品から5分以内に出金ボタンを押すと、デフォルト率は96%まで上がります。即時買い取りというフォーマットやUI/UXを真似ることはできるけれど、この事業は、ユーザーの行動によって悪い人を見分けるという技術がないとできないと思っています」(光本氏)

CASHの運営に関する具体的な数字は非公開であるものの、これらの行動分析により、CASH全体のデフォルト率は1年前のサービスリリース時にくらべて「10分の1以下」(光本氏)に下がったという。

CASHで培った行動分析力を駆使して、今度は旅行をユーザーにばら撒くと決めたバンク。はたして、与信をとらずに人を信じるビジネスは成立するのか。壮大な社会実験が始まった。

即査定・現金化できる買取アプリ「CASH」の最低買取金額が1000円にアップ

ファッションアイテムなどを撮影するだけで即査定、現金化できる買取アプリ「CASH(キャッシュ)」。6月のサービス開始からわずか16時間で3億6000万円分の「キャッシュ化」がされるも、利用が殺到しすぎてサービスを停止し、物議を醸した。その2カ月後にサービスを再開。11月21日には運営のバンクDMM.comが70億円で買収し、話題を集め続けている。

そのCASHで今度は「最低買取金額を1000円に変更する」との発表があった。“どんなアイテムを査定しても、買取金額が1000円以上になる”とうたう今回の変更。8月のサービス再開時にブランド品買取に特化し、当初「1000円でキャッシュ化できた」ことで話題になった「H&Mのヘアゴム」などはさすがにカテゴリーから削除されているが、服飾雑貨で使用済みのものなど、これまでは1000円以下と査定されていたものも軒並み1000円以上に査定額が変わることになる。

CA4LA(カシラ)のキャップ(使用済み・美品)を査定したところ。以前は査定額500円だった。

CASHを運営するバンク代表取締役兼CEOの光本勇介氏は、DMM.comによる買収に際してのインタビューでも「前提として僕たちは1円でも高く買い取れるよう努力している。今の時点でも、不利に、安く買いたたいているわけではない。『この価格ならノールックで買い取らせて頂ける』と提示している」と話している。

以前ならオークション、直近では“フリマアプリ”が幅を利かせていた中古品の二次流通市場。だが、本日(11月27日)、メルカリも「メルカリNOW」を引っさげて即時買取市場への参入を発表した。こうした動きをきっかけに“買取”の分野が拡大し、マーケット自体に変化が訪れる可能性もある。

サービス運営2カ月弱での大型イグジット、買取アプリ「CASH」運営のバンクをDMM.comが70億円で買収

左からバンク代表取締役兼CEOの光本勇介氏、DMM.com代表取締役社長の片桐孝憲氏

“目の前のアイテムを一瞬でキャッシュ(現金)に変えられる”とうたう買取アプリ「CASH(キャッシュ)」。そのコンセプト通り、ファッションアイテムなどをアプリで撮影するだけで即査定というシンプルで素早い現金化のフローもさることながら、サービスローンチからわずか16時間でユーザーからの申し込みが殺到し過ぎてサービスを2カ月ほど停止したこと、さらにはその16時間で3億6000万円分の「キャッシュ化」がされたことなどとにかく話題を集め続けている。そんなCASHが創業から約8カ月、サービス運営期間で言えばわずか2カ月弱で大型のイグジットを実現した。

DMM.comは11月21日、バンクの全株式を取得、子会社化したことを明らかにした。買収は10月31日に合意。買収金額は70億円。代表取締役兼CEOの光本勇介氏をはじめ、6人いるバンクのメンバーは引き続きCASHを初めとしたサービスの開発を担当する。今後は、DMMグループの持つ資本力やシステム基盤、サービス体制を連携させることで、拡大成長を目指すとしている。

「リリースしてから思ったことは、僕たちが取りたい市場には想像した以上のポテンシャルがあるということ。ただ、需要があるからこそ、競合環境も厳しくなると考えた。市場が大きくなる中で、それなりの自己資本も必要。(資金を調達して)一気にアクセルをかけなければならないこのタイミングでの戦い方を考えている中で今回の話を頂いた」

「DMMグループはいわば現代の超クールな総合商社。金融にゲームから、水族館にサッカーチームまで持っている。一方で僕たちみたいなサービス運営が2カ月、売上もこれからの会社の買収も数日で決めてしまう。こんなに“ぶっ込んでいる”会社はない。大きい市場を取りに行こうとしているときに、経済合理性をいったん置いてでも挑戦する会社がサポートしてくれるというのは、とても心強い。困っていることや強化したいことを相談すると、ほとんど何でもある。例えば物流まで持っているんだ、と」

光本氏は今回の買収についてこう語る。

一方、DMM.com代表取締役社長の片桐孝憲氏は、同年代(片桐氏は1982年生まれ、光本氏は1981年生まれ)の経営者である光本氏を自社に欲しかった、と語った上で、「(光本氏は以前ブラケット社を創業、イグジットした上で)2回目でもいいサービス、いいチームを作っていると思っていた。もともとDMMでも(CASHのようなサービスを)やるという話はあったが、結局チームまではコピーできない。とは言えバンクを買収することは不可能だと思っていたので、ちょっと出資ができないかと思っていた」と振り返る。

買収のきっかけとなったメッセージ

片桐氏は以前から競合サービスの立ち上げについてDMM.comグループ会長の亀山敬司氏と話していたが、10月になって事態が動き出したという。片桐氏の海外出張中に、以前から面識があったという亀山氏が、光本氏に直接メッセージを送り、翌日の食事に誘って買収の提案を行ったのだという。その後はトントン拍子で話が進み、約1カ月で買収完了に至った。「きっちりとCFOがデューデリジェンスもしているが、基本的に口頭ベースで合意したのは5日くらいのスピードだった」(片桐氏)

ちなみに今回の買収、光本氏にはロックアップ(買収先の企業へ残って事業の拡大をする拘束期間。通常2〜3年程度付くことが多い)が設定されていないという。「もし明日辞めても、『そっかー……』というくらい。ロックアップというのは意味がないと思っている。僕が担当した会社(DMM.comが買収したnana musicとピックアップのこと)はロックアップがない。経営者との関係性や経営者のやる気がなくなったら意味がないから。僕がバンクを経営できるわけではない。モチベーションを上げるためのソースがないと無理だと思っている。(買収は)事業を付け加えていくことというよりは、いい経営者にジョインしてもらうこと」(片桐氏)

光本氏は先週開催したイベント「TechCrunch Tokyo 2017」にも登壇してくれており、その際にも尋ねたのだけれども、現状CASHに関する細かな数字については非公開とのこと。「まだ運営して2カ月くらいのサービスなので、僕たちもまだデータをためている段階。ただ、2カ月前に再開して、改めて確信したのは、今までは二次流通や買取の市場——つまり『モノを売る』という手段の一番簡単なものがフリマアプリだと捉えられていたが、(より手軽という意味で)その下はもっとあったのだということ。この市場はフリマアプリと同様に持っていけるポテンシャルがある。それをただただ構築していきたい」(光本氏)

また、少額・即金という資金ニーズに対応するCASHに対して、FinTechをもじって「貧テック」と揶揄する声もあったが、「全く理解できない。前提として僕たちは1円でも高く買い取れるよう努力している。今の時点でも、不利に、安く買いたたいているわけではない。『この価格ならノールックで買い取らせて頂ける』と提示しているだけだ」と反論した。

バンクはDMM.com傘下で開発体制も大幅に強化する。すでにDMMグループからの出向も含めて人数を拡大中で、2018年中には100〜150人規模を目指して採用を進めるとしている。また当初はCASH以外のサービスも展開するとしていたが、「機会があれば(DMMと)一緒に新しい事業をやっていきたい。会社としてはやりたいネタがいっぱいある。まずはCASHに注力しつつ、新規の事業も出していきたい」(光本氏)と語っている。

なお11月20日にはヤフーがオークションサービス「ヤフオク!」内で、ブックオフコーポレーション、マーケットエンタープライズと連携した家電・携帯電話・ブランド品などの買い取りサービス「カウマエニーク」を公開している。こちらはブックオフ店舗持ち込みか宅配による買い取りだが、フリマに続いて買取のマーケットにも続々動きがありそうだ。

「CASH」運営のバンクが売買価格比較サイト「ヒカカク!」へ出資、サービス連携へ

バンク代表取締役兼CEOの光本勇介氏(左)とジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏(右)

サービス再開、そして約2時間で1000万円のキャッシュ化完了と、何かと話題を振りまいている買取アプリ「CASH」。その運営元のバンクは8月25日、買取価格比較サイト「ヒカカク!」運営のジラフへ出資したことを明らかにした。金額は非公開だが数百万円程度。ジラフは今回のラウンドで数千万円規模の調達を目指す。

ヒカカク!は2014年9月スタートの二次流通品の買取価格比較サイト。スマートフォンやカメラ、ゲームソフトなどの買取価格を比較・検索することができる。現在、月間利用者数は120万人を突破。買取商品数は90万件以上、買取口コミ数は1.5万件以上の日本最大級の買取比較サービスとなっている。ジラフによると、月間流通総額(見積もりから推定成約率を加味した金額。見積もり自体はもっと大きい規模で行われているとのこと)も1億円を超えているという。

今後はヒカカク!が持つ各種二次流通企業の買取価格データをCASHの査定などに活用していくほか、CASHとヒカカク!の連携、協業を進めていくとしている。現在CASHでキャッシュ化(買取)に対応するのはファッションアイテムが中心だが、今後は他ジャンルに拡大する際、ヒカカク!の持つ買取価格データは査定額の算定などにも影響する貴重なデータになるだろう。なおこの発表に先かげて、オークション売買価格データを持つオークファンがバンクとの提携を発表している

サービスを再開したばかりの「CASH」、2時間あまりで1000万円のキャッシュ化を完了

キャッシュ化の上限に達したこと旨が表示されたCASHの画面

今朝サービス再開のニュースを報じたばかりの(質屋アプリあらため)買取アプリの「CASH」だが、驚くようなペースで利用されているようだ。サービス再開からわずか2時間あまりで、本日分の上限額である1000万円(再開したCASHでは、初月で3億円・1日1000万円でキャッシュ化の上限額を設定している)のキャッシュ化を完了したという。

バンク代表取締役兼CEOの光本勇介氏によると、アプリをアップデートしたのは本日の10時。そこから2時間17分(137分)で1000万円の枠がなくなったという。

それまでにCASHで査定された回数は1万6615回、実際にキャッシュ化されたアイテム数は4372個(キャッシュ率26%)、1分あたりキャッシュ化されたアイテムが31個で、金額にすると7万2993円、1回あたりの平均キャッシュ金額は2355円とのこと。

ちなみにこのCASH、まだiOS向けにしかアプリをリリースしておらず、ユーザー数も5万人程度。もちろんサービス開始初日ということで、物珍しさもあるし、リサーチ的に利用しているユーザーも少なくないとは思うけれども、光本氏が語る「少額資金のニーズ」が期待ができるスピードだ。

CASHは「メルカリ疲れ」を救うのか

ところでサービス再開のニュースでは触れなかった話だが、光本氏は「メルカリ疲れ」なんて言葉でも、CASHのニーズがあるのではないかと語っていたのが面白かったのでここでご紹介しておく。

メルカリやFRILといったフリマアプリは、これまで個人間売買の主流でもあったオークションサービスと比較しても格段に使いやすくなっているし、匿名配送などにも対応が始まっている。だけれども、出品者と購入者でのコミュニケーションが必須だし、購入、送付、両者の評価といったフローで入金までに時間がかかる。何より全ての商品が売れるか分からない。こういったコミュニケーションや時間に疲れてしまうという声がある、という話だ。

実際にソーシャルメディアで検索すると、「(買取サービスの査定額は)フリマアプリで売るよりも安くなるが、便利」という声があるのも事実だ。別にどちらがいいという話でもないが、少なくとも必要なくなったものを素早く現金化するための選択肢が広がるというのは、ユーザーとしては歓迎できる話ではないだろうか。

レンディングアプリ「CASH」が利用集中で査定を一時中止、ローンチ後16時間でキャッシュ化3.6億円超え

2017年6月28日にローンチしたばかりのレンディンぐサービスアプリ「CASH」は、運営元のバンクの想像を超える反響があったようだ。

バンクは、CASHの利用が集中したため、査定機能を一時停止したと発表した。

運営元のコメントは以下の通りだ。

大変心苦しく、ご迷惑をおかけいたしますが、私たちの想像を遥かに超えたサービス利用が本日ございました為、一時的にアイテムのキャッシュ機能のご利用に制限を掛けさせていただきました。

現金の引き出しなど、査定以外の機能は引き続き利用できるとバンクは発表している。

また、バンクはCASHの反響がどれだけ大きかったかを示すデータもリリース文に掲載している。それによると、サービスローンチから16時間34分の間に、約3万のアプリダウンロードがあり、7万2796回アイテムがキャッシュ化され、アイテムのキャッシュ化の総額は3億6629万3200円に上った。キャッシュ化されたアイテムのうち7000個あまりが、本日バンクのオフィスに到着するという。