パリ、スクーターシェアリングサービスに時速10kmまでの制限を要請

パリでスクーターに乗ることは、もうすぐ信じられないほど遅く感じるようになる。パリ市は、スクーターのシェアリングサービスが、最高速度を時速10kmに制限するべきだと発表した。この決定は、スクーターと歩行者の負傷事故が多発したことを受けたものだ。

パリは、スクーターシェアリング企業にとって重要な市場だ。パリは自転車専用道路のネットワークがある密集した都市だ。また、パリを探索するためのさまざまな方法を探している多くの観光客がいる。

そういった理由から、少し手に負えない状況になっていた。ある時点では、16の異なるスクーターのスタートアップが、パリでスクーターを運営したがっていた。結局、パリは3社を選び、一連のルールを導入した。Dott(ドット)、Lime(ライム)、Tier(ティアー)の3社は、2年間、電動スクーターの共同運行の許可を得た。

それ以来、この3社の活動は順調だ。2021年だけでも、Dottは8500万ドル(約96億2600万円)を株式と資産担保付きの負債で調達し、Tierは最近2億ドル(約226億5100万円)を負債と株式で調達し、Limeは5億2300万ドル(約592億3300万円)を転換社債とタームローンで調達した。ただし、スクーターは利用者だけでなく、道を歩いている人にとっても公共の安全に関する問題となった。AFP通信によると、スクーターは2021年だけで298件の事故を起こしている。329人が負傷し、2人が死亡している。

特に、2021年6月に衝撃的な出来事があった。2人の女性が夜のセーヌ川の近くでスクーターに乗っていた。2人は歩行者をはね、そのまま放置した。その数日後、はねられた彼女は病院で亡くなった。

この事故の後、パリ市とスクータースタートアップの関係は、決して元に戻ることはなかった。7月1日、パリはチュイルリー公園やパレ・ロワイヤル庭園、バスティーユ広場やレピュブリック広場など、歩行者の密度が高い12のエリアをリストアップした。スクーターシェアリング会社は、リアルタイムのジオロケーションを利用して、これらのエリアでは最高速度を時速10kmに制限することに合意した。

2021年9月に、パリ市は各区役所にスクーターの最高速度を時速10kmに制限すべきエリアのリストアップを依頼した。その結果は、700のスローゾーンのパッチワークだった。そして、スクーターのスタートアップ企業は、それぞれのサービスでこれらのゾーンを導入することに合意した。

しかし、パリ市はそれよりもさらに先を目指している。自転車、スクーター、その他のマイクロモビリティのための広い車線を持ついくつかの通りを除いて、街全体がスクーター・スタートアップにとってスローゾーンになった。もちろん、自分のスクーターを持っている人は、その制限は個人のデバイスには適用されない。スクーターのシェアリングサービスに対する新たな規制は、12月前半に実施される予定だ。

唯一の朗報は、スクーターの入札が半年間延長されたことだ。Dott、Lime、Tierは、2023年2月までスクーターの許可証を維持する。しかし、今日の新しいルールは、パリでの利用にいくつかの重要な影響を与える可能性がある。

モペッドの規制

その他のニュースとして、パリ市は自由に浮遊する電動モペットの規制も行う予定だ。現在、パリではCityscoot(シティスクート)、Cooltra(クールトラ)、Lime、Yego(イエゴ)、Troopy(トルーピー)の5社が運行している。その他の企業もパリでの発売に向けて動いている。

パリでは、モペッドを許可制にしたいと考えている。これは、スクーターの許可証と同じような仕組みだが、許可証の有効期限は5年になる。パリでモペッドを走らせることができるのは、2か3社に限られる。新システムは2022年9月1日に開始される。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Yuta Kaminishi)

パリ裁判所がAirbnbに違法掲載で10.7億円の罰金

パリの裁判所が、民泊のマーケットプレイスとして人気の高いAirbnbに罰金を科した。裁判所によると、そのテクノロジー企業は同社のプラットフォームにアパートを載せるにあたってパリ市の規制に違反した。Airbnbはパリ市に960万ドル(約10億7000万円)を払わなければならない。

判決は確定までに数年を要している。世界中の大都市の多くと同じく、Airbnbはパリの住宅市場に何らかの影響力を及ぼしている。多くのアパートが住宅市場から姿を消し、Airbnbの常設のアパートになり、賃料が上がっている。

2017年には、パリの住民は自分の家をAirbnbに載せることがやや困難になってきた。たとえばアパートは、年間120泊以上貸すことができない。そこで家主たちは、常住のテナントからAirbnbの顧客に切り替えることを、ためらうようになった。

民泊プラットフォームは複数あるため、パリ市は登録方式を採用した。自分のアパートをAirbnbに載せたい人は、まず登録をする。するとAirbnbのようなプラットフォームは、登録番号を確認してから、1年で120泊位内までのキャパシティを載せる(市による泊数の管理ができる)。

当初市は、およそ1000件の不正登録のアパートを摘発し、それらの掲載中止を求めた。

2019年にパリ市は、今度はAirbnbを同じ理由で訴訟を起こした。規制はやや変更され、責任をホストとプラットフォームが共有することになり、本日の罰金につながる。

パリ市のIan Brossat(イアン・ブロサット)副市長は声明で「フランスで自治体がテクノロジー大手に勝訴したのはこれが初めてのことになります。ついにプラットフォームが有罪になりました。パリ市民にとってすばらしい勝利です」。

AirbnbはAFPの取材に対して、パリの2020年の掲載物件の95%は、120泊以下の予約だったと述べている。5%の物件が予約泊数の5%を超えていた。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Airbnbフランスパリ裁判

画像クレジット:Nelson Minar / Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hiroshi Iwatani)

注文から15分でグローサリーを配達するCajooがパリでサービス開始

730万ドル(約7億7000万円)を調達したフランスのスタートアップCajoo(カジュー)を紹介しよう。同社は現地時間2月4日、携帯電話から注文したグローサリーを15分後に受け取れるサービスをパリで立ち上げた。

「私は2020年8月中旬にBolt(ボルト)を離れ、2人の創業者と一緒に15分で配達する会社を立ち上げました」と共同創業者でCEOのHenri Capoul(ヘンリ・カプル)氏は筆者に語った。Boltでの経験のおかげで、同氏はおそらくロジスティックとマーケットプレイス大規模運営について多少は知っている。他の創業者メンバーはGuillaume Luscan(ギヨーム・ラスカン)氏とJeremy Gotteland(ジェレミー・ゴッテランド)氏だ。

Cajooは他のサービスとどう違うのだろうか。フランスにはInstacart(インスタカート)もなければ、他のグローサリー配達専門サービスもない。その代わり、多くのスーパーチェーンが配達サービスを提供している。スーパーのウェブサイトやアプリからグローサリーを注文し、翌日か2日後に配達される。

一部の小売業者はより迅速な対応を試みている。CarrefourのLivraison ExpressやMonoprixのMonoprix Plusなどだ。AmazonもAmazon Prime Nowのサブサービスを通じて一部のグローサリーを配達できる。ただ注文品を受け取るまでに30分、1時間、あるいは2時間かかる。

しかしDeliverooやUber Eats、他の同様のサービスの成功が示すように、人々はいますぐ届けてほしいのだ。ユニットエコノミクス、労働法、小型店舗や自治体への影響のために性急さは持続不可能だと筆者は考える。それでも、Cajooにとっては十分な需要があるようだ。

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Cajooはフルスタックのアプローチで差別化を図りたいと考えている。同社は自前のマイクロフルフィルメントセンターを運営している。独自の製品棚卸表を持つ。できるだけたくさんの配達用車両を管理する。そしてもちろん顧客に直接販売する。

また、Glovo(グロボ)は顧客の地元のグローサリー店からの配達を提供している。しかし同社は数週間前にフランスから撤退した。店舗から直接購入することでは十分なマージンを生み出せなかったようだ。スペインでGlovoは自社運営するダークストアにフォーカスしている。

Cajooは、パスタやシャンプー、キャンディなど近くの店にあるようなあらゆるものを扱う。またワインやビール、スナックも注文できる。これらは儲けの多い部門であることが、Uberによる11億ドル(約1160億円)でのDrizly(ドリズリー)買収で証明されている。

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そしてCajooは現地時間2月4日、パリの9区とその周辺でサービスを開始した。パリ全体をカバーするのにマイクロフルフィルメントセンター10カ所が必要で、展開するのに数カ月かかると同社は考えている。

Cajooはまた、空き店舗、空きガレージ、新しいオーナー待ちの小型倉庫が数多くあるという現在の経済危機の恩恵も受けている。

「当社モデルの差異化要因は当社がマーケット価格で製品を提供するというところにあります。MonoprixやCarrefour Expressの店舗と同じ価格で、そして配達料金は2ユーロ(約250円)以下です」とカプル氏は話した。

Cajooは配達料金から売上高の大半を生み出そうとはしていない。配達料金は1回にアイテム1つだけ注文するということがないためにする、最低の設定になっている。その代わり同社は他の小売企業と同様、製品そのものからマージンを得る。

FrstとXAngeがCajooのシードラウンドをリードし、Chauffeur-Privé(のちにKaptenにブランド名を変更した)の2人の共同創業者も参加した。

筆者は配達スタッフに関する同社の計画について尋ねた。2020年Gurvan Kristanadjaja(グルヴァン・クリスタナジャジャ)氏がLibérationで報じたように、フランスではフードデリバリー企業で働く請負労働者に関して深刻な問題がある。たとえばFrichtiの配達スタッフのかなりの割合が不法移民だ。DeliverooやUber Eatsの一部の配達員は不法移民にアカウントを貸している。

Cajooは配達をさばく従業員を雇用し、彼らに電動自転車を貸与するつもりだとカプル氏は話した。しかし同社はまた請負業者やフリーランサーなどのパートナーとも協業する。

「当社はDeliverooやUber Eatsと同じスタンダードにしたくありません。適切な配達スタッフを雇用し、労働許可を持っていることを確かめることは重要なことです」と同氏は述べた。各マイクロフルフィルメントセンターにはトイレや次の注文を待機する場所も設置される。

人気が出るにつれてCajooが長期にわたって高品質を維持できるかどうかが今後重要になる。少なくとも、同社のサービスは正しい考え方で始まっている。

画像クレジット:Cajoo

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:グローサリーデリバリーCajoo資金調達パリ

画像クレジット:Cajoo

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi