Spotifyが2人の音楽の好みを比較して作るBlendプレイリストを最大10人に拡大、人気アーティストとのBlendも作成可能

Spotify(スポティファイ)で人気のあるプレイリスト作成ツールの「Blend」に、2021年の正式公開以来最大のアップデートが実施される。これまでのBlendでは2人のユーザーのお気に入りの曲を組み合わせて共通項を探し、音楽の好みが重なり合うところを見つけられる。Blendを作成すると、2人のリスニング傾向に基づいて毎日新しい曲で更新される。米国時間3月30日、SpotifyはBlend機能を進化させ、最大10人と組み合わせて、あるいはお気に入りのアーティストと組み合わせてプレイリストを作れるようにすると発表した

SpotifyはBTSCharli XCXKacey MusgravesLauvMegan Thee StallionMimi WebbTai VerdesXamãなどのアーティストと提携し、自分の音楽の好みとアーティストの音楽の好みに共通する曲を1つのBlendプレイリストにまとめられるようにする。他のBlendプレイリストと同様に、ユーザーには「テイストマッチ」のスコアが記載されたカードも提供される。スコアは自分のリスニングの好みをBlendの参加者と比較し、どの程度似ているか、あるいは違うかに基づいて計算される。

このカードは、Facebook(フェイスブック)、Instagram(インスタグラム)、Snapchat(スナップチャット)、Twitter(ツイッター)などのソーシャルメディアに直接共有できるようになっている。

アーティストとの連携に加え、SpotifyはBlendをアップデートして家族や友人のグループが独自の共有プレイリストを作れるようにした。Spotify Familyのメンバーはすでに同様のテクノロジーを活用して家族全員が楽しめる曲を集め自動で更新されるFamily Mixプレイリストを利用することができた。しかしこの機能はSpotify Familyのメンバー限定で、個人のユーザーは利用できなかった。SpotifyはBlendに似たDuo Mixというプレイリストも提供しているが、これもDuoのプランのユーザーに限られている。

ストリーミング事業者が提供するパーソナライズされたプレイリストは、サービスを売り込むための重要なツールだ。Spotifyのライバルである音楽サービスのApple MusicやGoogle(グーグル)のYouTube Musicではそれぞれの企業のスマートフォンやモバイル用ソフトウェアに音楽アプリが含まれているが、Spotifyにはその強みがない。それにもかかわらずSpotifyが音楽ストリーミング市場をリードしている理由の1つが、パーソナライズされたプレイリストだ。エンターテインメント調査会社のMIDiAが2022年1月に公開したレポートによると、Spotifyの音楽サブスク市場における世界でのシェアは31%で、Apple Musicの15%、Amazon Musicの13%などをリードしている。その一因は、Spotifyがユーザーを好きな音楽、そして現在ではポッドキャストで引きつけるためにパーソナライズ機能を大いに活用していることだと考えられる。また、Spotifyは新しい機能やプレイリストをかなり頻繁に公開して、パーソナライズ技術の活用に関して先行していることをユーザーや競合に示している。

Spotifyは今回の機能強化より前にBlendのマッチング技術を別のところで利用していた。2021年12月に同社は、パーソナライズして1年を振り返る「Spotifyまとめ」でBlendを活用した。「Wrapped Blend(まとめブレンド)」と名づけられたこの機能で、自分と友人の「まとめ」を比較することができた。

今回の新しいBlendは、米国時間3月30日から展開される。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

アドビが「Experience Cloud」のカスタマージャーニー分析に新たな実験機能を追加

Adobe(アドビ)は米国時間3月15日、同社の「Experience Cloud(エクスペリエンス・クラウド)」製品群に含まれる、プラットフォーム全体で顧客を追跡するツール「Customer Journey Analytics(カスタマージャーニー分析)」に導入された多数の新機能を発表した。

新型コロナウイルス感染流行から、より多くのブランドとその顧客がオンラインショッピングへの移行を加速させる中、チャンネル(ウェブ、モバイル、店舗など)をまたいでユーザー体験を管理し、パーソナライズできるようにする必要性も高まっている。しかし、これらのデータをすべて追跡してダッシュボードにプロットすることと、その実用価値を高めることは、また別の話だ。

画像クレジット:Adobe

小さな変化でも、さまざまなプロパティをまたがってカスタマージャーニー全体にどのような影響を与えるかを、企業がより理解しやすくするために、アドビは企業が現実のシナリオをテストして、その結果を分析できる新しい実験機能の提供を開始した。例えば、モバイルアプリに変更を加えることによってコールセンターへの問い合わせが減少するかどうかを確認したり、ウェブサイトを変更するとモバイルアプリのダウンロードが増加するかどうかなどを確認することができる。これは基本的に、カスタマージャーニー全体を対象とするA/Bテストだが、さらに企業はこのデータを使って、個々のユーザーや大規模なユーザーセグメントに向けて、ユーザー体験を正確にパーソナライズできるという利点もある。

これらはすべて機械学習モデルによって行われるもので、膨大なデータセットから相関関係を容易に見つけ出すことができる。アドビによると、このアルゴリズムは「過去のデータ、比較可能なキャンペーン、進行中のベンチマークなど」を参照するということだ。

「現在、人々はしばしばデジタルを使って、以前にはやらなかったかもしれないようなことを始めています。彼らは1つの結果を得るために、複数のデバイスを通じて複数のチャネルに関与しているのです」と、Adobe Analytics(アドビ・アナリティクス)のプロダクトマーケティング担当ディレクターを務めるNate Smith(ネイト・スミス)氏は筆者に語った。「このことは、生涯価値と顧客保持に力を入れる多くのブランドにとって、オムニチャネル分析の優先順位を押し上げることになりました。問題になっているのは、そのような分析を行っている方法です」。

スミス氏は、従来のアプローチ、すなわちデータウェアハウスやデータレイクへのデータパイプラインとか、SQLレイヤーとその上の可視化ツールといったやり方では、一見シンプルだがコード化するのが難しい質問に対する迅速な答えを関係者が必要としている環境では、あまりにも複雑で効率が悪いと主張する。

「私たちのカスタマージャーニー分析では、Adobe Experience Platform(アドビ・エクスペリエンス・プラットフォーム)に用意されている多くの専用コンポーネントを利用できます。このプラットフォームは、当社がこの分野で買収した企業がネイティブに接続できるように、この数年間で完全にネイティブに構築されています」と、スミス氏は語る。「他の多くのベンダーが、マーケティング・クラウド・ポートフォリオを構築するために大規模な買収を行っていますが、当社はそのためのプラットフォームを実際に開発しました。なぜなら、これらをすべて機能させるためのダクトテープや針金は、ある時点でなくなってしまうからです」。

このカスタムプラットフォームがあるからこそ、新たな実験機能にチームはデータを送り込むことができる。スミス氏が指摘するように、これは開発者が既存のあらゆるツールを使って、これらのテストを構築できることも意味する。

アドビはまた、カスタマージャーニー分析が持つ顧客セグメントの発見機能と「Customer Data Platform(カスタマーデータプラットフォーム、CDP)」との間の新たな統合も構築した。「カスタマージャーニー分析で発見したオーディエンスをCDPで実際に共有し、どのシステムでもそれに対するアクションを起こすことができます」と、スミス氏は説明する。「私たちにとって、インサイトを発見するだけでなく、インサイトを最終的に活性化できるというのが、本当にエキサイティングな瞬間なのです」。

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

健康・長寿分野の数多いスタートアップの1つ、bioniqが高度にパーソナライズされたサプリメントを発売

TechCrunchでは2021年、人間の健康と長寿を増進するサプリメントを研究し、1300万ドル(約15億円)を調達したLongevica(ロンジェヴィカ)という会社を取り上げた。また、1200万ドル(約13億9000万円)を調達して後にBayer(バイエル)に買収されたcare/of(ケアオブ)や、Nestle(ネスレ)に買収されたPersona(ペルソナ)などのイグジットを果たした企業もある。また、英国のスタートアップ企業であるHeights(ハイツ)は、クラウドファンディング・プラットフォームのSeedrs(シーダーズ)を通じて170万ポンド(約2億7000万円)のシード資金を調達した

これらは、デジタルヘルス、ウェルネス、長寿のスタートアップ分野で起こっているブームのほんの一例に過ぎない。

今回、ロンドンを拠点とするbioniq(バイオニック)は、OKS Group(OKSグループ)とMedsi Group(メディシ・グループ)から1500万ドル(約17億4000万円)のベンチャー資金を調達し「300万の独自の生化学的データポイントによるパーソナライズされたサプリメント製品」である「bioniq GO」を発売すると発表した。

bioniqによると、月額49ポンド(約7700円)のbioniq GOという製品は、3万人以上の患者の5万回を超える血液検査と25の医学出版物のデータを活用することで、市場に出回っている同様の製品と比べて20万倍も高いレベルのパーソナライゼーションが可能になったという。

このトレンドの意味するところは、bioniqやLongevicaのようなスタートアップ企業が、いわゆる「年齢より若く見える」化学物質に関するビッグデータを利用して、ウェルネスや長寿の領域に参入し始めているということだ。

bioniqによると、bioniq GOには最大34種類の成分が含まれており、その組み合わせは1000万通りにも及ぶという。そのすべてが安全かつ高効率であることが臨床的に証明されていると、同社は主張している。

bioniqのCEO兼共同設立者であるVadim Fedotov(ヴァディム・フェドートフ)氏は、次のように述べている。「bioniqでは、医療の未来はデータの集約と健康モニタリングのデジタル化にあると考え、無病の人々のためのユニークなツールを作り出しています。bioniq GOの発売によって、私たちは血液検査を行わないサプリメントとしては業界最高レベルのパーソナライゼーションを提供することを目指しています。そして新しい血液サンプルを得るたびに、当社のシステムは改善され、より効果的になり、bioniq GOの処方はさらに効率的になっていくのです」。

bioniqのCEO兼共同設立者ヴァディム・フェドートフ氏(画像クレジット:bioniq)

bioniqという会社は、元ドイツ代表のバスケットボール選手であるフェドートフ氏と、かつてスイスでプロスポーツ選手の認知機能と身体機能を向上させるシステムを開発した脳神経外科医のKonstantin Karuzin(コンスタンチン・カルジン)博士によって設立された。

2022年初め、bioniqはミュンヘン工科大学からスピンオフした科学企業であるLOEWI(レーヴィ)の買収を発表した。LOEWIは、個人の血液検査とライフスタイルに基づくテーラーメイドの栄養素を提供している。

多くのスタートアップ企業が、このような個人に合わせた健康とウェルネスに対する新しいアプローチに取り組んでいることは明らかだ。今後はさらに多くの企業や製品が登場することが予想される。

画像クレジット:

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

オーディオを「パーソナライズ」するMimi、Skullcandyなどの本技術搭載ヘッドフォンを徹底検証

音声処理のスタートアップ企業Mimi(ミミ)は、個人に合わせてパーソナライズされた聴覚プロファイルを作ることができると公言している。つまり、音量を大きくすることなく音を聞こえやすくしてくれるというわけだ。難聴予防にもなる他、これによりすでに難聴になってしまった人でも聴力に新たなダメージを与えることなく、コンテンツを聞こえやすくしてくれるのだという。

科学プロジェクトとしての理論は非常にすばらしいのだが、企業としては明らかな問題点がある。その技術が私たちの普段使用する製品に搭載されなければ、単なる学術的なものとして終わってしまう。その技術が製品として普及しないことには人々を助けることはできないのである。Mimiはこの課題に飛躍的な前進をもたらすべく、複数のパートナーシップを発表した。Mimiの技術が有名オーディオ製品に搭載されれば、同社にとってもそして私たちの聴覚の健康にとっても大きな意味を持つことになるだろう。

2014年、TechCrunch Battlefieldのステージに登場したMimiのCEO兼創業者のフィリップ・スクリバノウィッツ氏

2014年にニューヨークで開催されたTechCrunch Distruptのステージに登場したMimi。7年前の当時、同社の製品が優れたアイデアだということは明確だったのだが、同社は以来長い道のりを歩んできた。そんな同社も最近では数々の成功を収める事業会社となっており、新たに発表されたSkullcandy(スカルキャンディー)、Cleer(クリア)、Beyerdynamic(ベイヤーダイナミック)とのパートナーシップにより、この技術がついに私たちの耳に届くことになる。

SkullcandyのCEOであるJason Hodell(ジェイソン・ホーデル)氏は次のように話している。「弊社のファンにとって有意義な技術を使った、手に取りやすい製品を作ることが私たちの使命です。ミミとともに、個人に合わせて調節できる健康的なリスニング習慣をサポートすることで、ファンのみなさまの楽しみと健康に、生涯にわたるポジティブな影響をもたらしたいと考えています。Mimiとのパートナーシップにより、弊社のコアミッションが最適な形で体現されました」。

Cleer Audioの社長であるPatrick Huang(パトリック・ファン)氏は「Cleer+アプリで販売している最新のイヤフォンとヘッドフォンにMimi Sound Personalizationを導入できることを大変うれしく思います。聴覚の最適化とウェルネス機能を製品に搭載することで、当社の製品とお客様に、確実に付加価値がもたらされるでしょう」とコメントしている。

その仕組みは?

Mimiの共同創設者で研究開発責任者のNick Clark(ニック・クラーク)氏による説明は次の通りだ。「聴覚システムには周波数の解像度があります。スクリーン上のピクセルのようなものだと考えてください。耳が良ければピクセル数は多いのですが、それでも2つの異なる情報が1つのピクセルに入ってしまうと、優勢な情報が支配的になってしまいます。健康な耳の解像度は限られているので、大量の情報を捨ててファイルサイズを大幅に削減するというのが、mp3の基本です。Mimiのユニークな点は個別のプロファイルにあります。例えば、聴力がやや劣っている人のピクセルは、大きくて数が少ないと例えられますが、ピクセル数はその人の実際の聴力に関係するのでMimiにはどうすることもできません。しかし、何が私たちにできるかというと、音を少しでもそれに合うように処理するのです。何かを選択的に増幅したり、何かを選択的に減少させたりすると、最多の情報を伝達することができます。これによって、人々に豊かな体験をもたらすことができるのです」。

記事に掲載する画像としてはいかにも地味だが、Mimiがとらえた筆者の聴覚データをこのようにして見るのはとても興味深い。アプリから誰でもCSV形式の出力をリクエストできる。どのくらいの音量および周波数のビープ音を聞き取れるのかといったデータが主に取得されているようだ

Mimiの技術を試すために、今回筆者が試用させてもらったのは、Skullcandyによる99ドル(約11000円)のGrind Fuel True Wireless Earbuds、Cleer Audioによる130ドル(約15000円)のAlly Plus II Wireless Earbuds、Beyerdynamicによる300ドル(約3万4000円)のLagoon ANCヘッドフォンの3つのデバイスだ。設定手順は3つのデバイスともほぼ同様で、それぞれのメーカーのアプリをダウンロードして、聴覚プロファイルを作成するプロセスを行うだけだ。

プロファイルの作成は非常に簡単で、生まれた年を伝えればすぐにテストを開始することができる。聴力検査自体は非常に奇妙で、電子コオロギの群れを箱に閉じ込めてその上からビープ音を鳴らしたような音が聞こえてくる。ビープ音は徐々に大きくなり、音が聞こえている間はボタンを押し続ける。やがてビープ音は再びフェードダウンし、ビープ音が聞こえなくなったらボタンを離すというものである。ビープ音はさまざまな周波数で発生する。入力された情報をもとに個人のプロファイルを作成し、プロファイルを作成し終えたらMimiのアカウントを作成して保存するという流れである。つまり、Mimiの技術に対応しているデバイスであれば、どのデバイスでも自分のプロファイルを使うことができるのだ。そのためありがたいことに「コオロギの箱」を繰り返し聞く必要はない。

Cleerアプリでのパーソナライズ結果(左)とSkullcandyアプリでのパーソナライズ結果(中、右)はかなり異なっていた。Skullcandyからの2つの結果はほぼ同じだったため、少なくとも測定値には一貫性があるということだろう

同製品の聴覚テストの構成要素は大成功を収め、広く使用されている。同社の聴力検査アプリはApp StoreでNo.1を獲得しており、毎月約5万人がこのアプリを使って聴力検査を行っているという。このアプリのレビューを見ると、プロによる聴覚テストと一致していると多くのユーザーが感じているようだ。

「当社の聴力検査アプリと同じ技術がSDK(ソフトウェア開発キット)として提供されており、当社のパートナーはコンパニオンアプリに組み込むことが可能です」とMimiのCEOであるPhilipp Skribanowitz(フィリップ・スクリバノウィッツ)氏は説明している。

聴覚テストの結果をパーソナライズされたプロファイルに適用し、これをユーザーの耳にできるだけ近いところでシグナルプロセッサーとして実行することにより、Mimiのマジックは開花する。

「弊社のソフトウェアは、デジタルオーディオが通過できる場所であればどこでも適用できます。聴覚IDを作成したら、耳に届く前にオーディオストリームを調整するため処理アルゴリズムに転送する必要があります。弊社には複数のコンポーネントと処理アルゴリズムがあり、ヘッドフォンの場合はBluetoothチップ上で、テレビの場合はオーディオチップ上で動作します。公共放送のテストやストリーミングアプリケーションのパートナー、科学関連のパートナーやスマートフォン関連のパートナーもいます」とスクリバノウィッツ氏は話す。

試聴体験はどうなのか?

重要なのは、実際の効果である。残念なことに効果を聴き分けるのは難しく、また試したデバイスによって大きな違いが出た。

Mimiのヒアリングテストを3つの製品で行ったところ、結果は大きく異なった。左からSkullcandyの「Grind Fuel」、Beyerdynamicの「Lagoon ANC」、Cleerの「Ally Plus II」(画像クレジット:Haje Kamps)

Cleerのイヤフォンは電源を入れて耳に入れると、音声が再生されていないときでも不思議なヒスノイズが発生していた。音楽の再生中、パーソナライズをオンにしたときとオフにしたときの音の違いはあまり分からなかった。良いニュースとしては、Cleerのイヤフォンを使ってプロファイルとMimiのアカウントを作成し、プロファイルを保存できたことくらいである。これで他のデバイスでもすぐに使用できるということだ。

Cleerの社長と話したところ、ヒスノイズや雑音は極めて異常なものだと断言してくれた。そこで2個目のイヤフォンを送ってもらったのだが、残念ながらこのイヤフォンにも同じ問題が発生した。筆者の運が驚くほど悪かった可能性もあるが、一般発売までにまだ課題が残っていると考えて間違いないだろう。

Skullcandyも不調だった。サウンド・パーソナライゼーションを設定した後、Skullcandyのアプリが毎回クラッシュして結果を保存することができなかったため、パーソナライゼーションの効果を聞くことができなかった。またなぜかSkullcandyではMimiにログインして、保存されたMimiプロファイルを使用するオプションが存在せず、新規に作成しなければならない。アプリが筆者のプロファイルを保存できなかった上、他のデバイスで作成したMimiプロファイルも使用できなかったため、結局Skullcandyのイヤフォンでパーソナライズされたオーディオを聞くことができなかった。このアプリの問題について、Skullcandyのチーフプロダクトオフィサーに話を聞いてみた。

SkullcandyのチーフプロダクトオフィサーであるJeff Hutchings(ジェフ・ハッチングス)氏の回答は次のとおりである。「Skullcandyでは、製品の品質を非常に重視しています。弊社のモバイルアプリは、当時入手可能だったあらゆるモバイルデバイスとOSの組み合わせを用いて厳密にテストされました。その結果、Android 12を搭載した新しいPixel 6/6 Proで問題が発生していることがわかりました。Skullcandyはこの問題を可能な限り早く解決するために、アップデートリリースに積極的に取り組んでおります」。

Beyerdynamicのヘッドフォン「Lagoon ANC」(画像クレジット:Haje Kamps)

Beyerdynamicのヘッドフォン、Lagoon ANCは別の話である。もちろん同ヘッドフォンはオーバーイヤー型で、価格も他2種よりかなり高価格のため当然とも言えなくないが、Beyerdynamicのヘッドフォンではパーソナライゼーションによる顕著な違いが聴き分けられた。特にアクティブ・ノイズキャンセリングをオンにすると、Mimiのパーソナライズ効果による変化が著しく感じられた。パーソナライゼーションをオフにしたときよりも音がより鮮明で、ディテールがより明確に聞こえ、なんというか…ステレオ感が増したような音と言えば良いのだろうか。説明するのは非常に難しいのだが、今後筆者のすべてのヘッドフォンにMimiの機能を付けたいと思うほどの違いである。

ただ、それが故にCleerやSkullcandyのイヤフォンには、なぜそこまで顕著な違いがないのかが気になるところである。Beyerdynamicのヘッドフォンで作ったプロファイルを、他のヘッドフォンで使ってみたら良いのではないかと思ったのだが、SkullcandyのアプリではMimiのアカウントにログインできないようなのでそれは叶わず、またCleerのアプリでは一度作成したら他のプロファイルを読み込むことはできなかった。結局、携帯電話からCleerアプリを削除し、再インストールしてからMimiのアカウントにログインし直す羽目になった。今回の筆者のような使い方をするユーザーが多くないことは承知しているが、Mimiの創業者が期待しているユースケースの1つであるにもかかわらず、Mimiのサーバーにすでにあるプロファイルをコピーできないというのはかなり残念である。

プロファイルのコピー騒動はさておき、Beyerdynamicのプロファイルを使用すると、Cleerのイヤフォンでも違いをわずかに感じることができた。ステレオチャンネルの分離が良くなったように聞こえるが、上述の「ステレオ感が増した」感覚ではなく、全体的に劇的な違いがあるとは言い難い。Beyerdynamicのヘッドフォンで感じた「すげぇ」という感動はなく、またこの分野での最も明白なライバルであるNuraphone(ヌラフォン)体験には遠く及ばない。

これらのヘッドフォンとNuraphoneのヘッドフォンを比較しないわけにはいかないだろう。Nuraphoneは399ドル(約45500円)と高価だが、聴力を測定する方法に明確な違いがある。聞こえる音と聞こえない音をユーザーに判断させるのではなく、ヘッドフォンが直接ユーザーの耳を測定するのである。このアプローチの欠点は、非常に特殊なヘッドフォンでしか機能しないことと、プロファイルがNura以外のヘッドフォンには移植できないことである。それでも効果は非常に素晴らしく、買ってから5年経った今でもNuraのNuraphoneヘッドフォンは筆者にとって音楽への没入感を高めるための必須アイテムとなっている。

全体として、こういったパートナーシップを築き、Mimiのテクノロジーを人々の手に届けるというのはMimiチームにとって非常にエキサイティングなことである。

結局のところ、パーソナライゼーション技術の評価というのは、ここでは筆者の個人的な体験に基づいてしかレビューを書くことができないため難しい。もしかしたら筆者の聴覚が人より優れていたり劣っていたりして、Mimiの技術が筆者にはあまり効果がない可能性もある。他の人はまったく違う感想を持つかもしれない。筆者にとってはハイエンドのヘッドフォンが非常に効果的なため、次に購入するハイエンドのヘッドフォンには、必ずMimiのテクノロジーが搭載できるものを選びたいと思う。イヤフォンについては、1つはまったく機能せず、もう1つも今1つだったこともあり、サンプル数としてはあまりにも少ない。筆者はあまり価値を見出せないが、Mimiテクノロジーによってヘッドフォンの価格が上がったり、オーディオ品質を低下させたりしないのであれば、あって損することはないだろう。

画像クレジット:Haje Kamps

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

AIを活用しブランド・小売業者向けCRMを自動化するOmetriaが約45.5億円調達

ヤプリがノーコードの顧客管理システム「Yappli CRM」を提供開始、ポイント・電子マネーの発行やマーケ施策をワンストップで

2019年にシリーズBで2100万ドル(約23億9000万円)を調達したOmetriaは、ブランドや小売業者がマーケティングメッセージをパーソナライズできる「AIを活用した」カスタマーマーケティングプラットフォームを提供していた。

今回同社は、InfraVia GrowthがリードするシリーズCのラウンドで4000万ドル(約45億5000万円)を調達した。これには、従来からの投資家であるOctopus VenturesやSonae IM、Summit Action、Adjuvo、Columbia Lake Partners、さらに会長のLance Batchelor(ランス・バチェラー)氏ら初期の投資家も参加した。同社の資金調達額は、これで7500万ドル(約85億4000万円)になる。

同社によると、特に現在、消費者データの共有のされ方や共有先について、消費者自身がコントロールを握るようになってるため、この資金で同社のプロダクトとエンジニアリングのチームのサイズを今の3倍にするという。

新しいスタッフも雇用した。新しいチーフテクノロジーオフィサー(CTO)はSizmekのCTOだったMarkus Plattner(マーカス・プラットナー)氏、最高収益責任者は元App Annieの専務取締役Paul Barnes(ポール・バーンズ)氏、マーケティングのトップCMOは元Simon DataでTinycluesのMichelle Schroeder(ミシェル・シュローダー)氏だ。

OmetriaのCEOで創業者のIvan Mazour(イワン・マズア)氏によると「リテールのマーケターたちはみんな異口同音に個人化の重要性を主張してきましたが、消費者の1人としてインボックスを見るかぎり、マーケティングテクノロジーのベンダーはどこもそれを実現していません。その顧客体験のギャップの原因は、彼らのテクノロジースタックにある。Ometriaは、そのギャップを埋めるために創業されました」という。

InfraVia CapitalのパートナーであるGuillaume Santamaria(ギヨーム・サンタマリア)氏は「コマースの成功は、優れた顧客体験を作り出してブランドを差別化する能力にかかっています。Ometriaは、それを達成するためのソリューションを提供しています」という。

Ometriaの主な競合相手は、メールサービスのEmarsysやSailthru、Selligent、Bronto、Dotmailerなど、消費者行動マーケティングツールのCloudIQやSaleCycle、Yieldify、そしてカスタマーインサイトのMore2やAgileOneなどとなる。

同社の「共同マーケター」プラットフォームは、データサイエンスを利用して個人化されたマーケティング体験を作り最適化する。その主な顧客企業は、Steve Madden、Aden + Anais、Pepe Jeans、MADE.com、Notonthehighstreet.com、Hotel Chocolat、Feeluniqueなどだ。

さらにマズア氏は「現在、リテールのマーケターたちは、顧客の期待に沿えないという問題を抱えています。100万の人間がいて、30種類のタッチポイントがあると考えると、その多様性が膨大な数であることがわかるでしょう。それはSMSやメールだけではありません。このニーズに応える方法は、人間とマシン / コンピューターインテリジェンスのハイブリッドだけです」と付け加えた。

画像クレジット:Ometria

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hiroshi Iwatani)

YouTube、ユーザーが新たなコンテンツとの出会いをもたらす「New to you」を展開

YouTubeは、2021年の初めに試験的に導入した「New to you」タブを、プラットフォーム上で展開している。この新しいタブは、モバイル、デスクトップ、テレビの各デバイスのYouTubeトップページで利用できるようになっている。YouTubeは、この機能により、ユーザーが普段見ているおすすめ動画以外の新しいクリエイターやコンテンツを発見できるようになるとしている。


この新しいタブは、ユーザーの好みに合ったコンテンツを、これまで出会ったことのないチャンネルから表示する。これは、ゲームや美容などの特定のトピックのコンテンツを探すのに役立つYouTubeの「Explore」リストよりも一歩進んだものだが、ユーザーの特定の関心事は考慮されていない。

YouTubeは「New to you」が視聴者に合わせてパーソナライズされていることを指摘している。これは、ユーザーが興味を持ちそうなコンテンツと、ユーザーが普段見ているものとは少し異なるコンテンツとのバランスを取ろうとしているためだ。

YouTubeはブログで「みなさんからは、おすすめの動画を見終わった後に、新しいクリエイターや新しい動画を見たいという声をいただいています。この新しい選択肢によって、新鮮さを保ちつつ、クリエイターが新たな視聴者とつながることを期待しています」と述べている。

モバイル版では、YouTubeのトップページを更新すると、このタブが表示される。また、フィードをスクロールすると、このタブが表示されることもあるという。なお本機能はパーソナライズされているため、常に表示されるとは限らない。また、このタブを表示するには、YouTubeにサインインしている必要がある。

新機能により、クリエイターは、自分のコンテンツに最も興味を持ちながらも、他の方法では見つけられなかった人をターゲットにして、新たな視聴者を獲得することができる。また、ユーザーが新コンテンツを見つけたり、新たな興味を発見したりするのにも役立つ。

どうやらこの最新機能は、TikTokの人気ページ「For You」をYouTubeが取り入れたもののようだ。この機能は、ユーザーがより多くのコンテンツを見つけるのに役立つだけでなく、クリエイターが発見されるのにも役立つため、TikTokの成功に大きく貢献している。YouTubeの「New to you」フィードは、同じことをユーザーに提供することを目的としているようだ。

この新しい機能は米国消費者製品安全委員会が、プラットフォームが幼いユーザーに与える影響力についてYouTubeとSnapとInstagramを聴聞する予定と同じタイミングで展開された。

画像クレジット:YouTube

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ウェブサイトに個人識別情報を利用しないレコメンデーション技術を企業に提供するCrossing Minds

Crossing Mindsの創業者。左から、セバスチアン・スラン氏、アレクサンドル・ロビケット氏、エミール・コンタル氏(画像クレジット:Crossing Minds)

私たちが見るメディアやショッピングの世界ではたいてい下の方に小さな枠があり、そこには似ている、あるいは他の人が利用したコンテンツや商品が表示される。

消費者はウェブサイトがもっとパーソナライズされることを期待している。ということは、ウェブサイトはあなたが見たいものを見せるために、あなたを知る必要がある。

Crossing Mindsは、CEOのAlexandre Robicquet(アレクサンドル・ロビケット)氏がEmile Contal(エミール・コンタル)氏およびGoogle Xの創業者でスタンフォード大教授のSebastian Thrun(セバスチアン・スラン)氏とともに始めた会社で、2018年にTechCrunchが開催したDisrupt Battlefieldでコンシューマ向けアプリのHaiを発表した。このアプリはユーザーに本、音楽、番組、ビデオゲーム、レストランなどのエンターテインメントを提案するものだった。

2年間でアクティブユーザーは数千人、そしていくつかの大企業を顧客として獲得したが、提案に課題があったため中断してB2Bにピボットした。

ロビケット氏はTechCrunchに対し「パーソナライズはあらゆるところにあり、今後進化する検索もフィルタリングされるようになるでしょう。1つの企業向けのレコメンデーションエンジンやAPIを作るのではなく、多くの企業にスケールして提供できるものを作ることが重要です」と語った。

同氏は、消費者の最大60%がサイトの新規ユーザーであるため、ゼロからの出発である「コールドスタート」が問題になることがあるという。さらに同氏は、サードパーティのcookieの価値が下がり、プライバシー関連の法律が厳しくなり、リアルタイムで現在と過去のウェブセッションをリンクするのが難しいといった障壁もあり、サイトの訪問者を知る方法はほとんどないと補足した。

Crossing Mindsはこうした課題に取り組み、オンサイトのアクションをもとに提案をする方法を開発した。これにより個人を識別する情報を使わずに、顧客は企業を簡単に見つけて関わりを持つことができる。

Crossing Mindsは同社のデータベースと関連づけ、KPIに基づいておよそ2週間でモデルを構築できる。このSaaSモデルはレコメンデーションごとに課金される。

米国時間10月18日にCrossing MindsはシリーズAで1000万ドル(約11億4500万円)を調達したと発表した。このラウンドを主導したのはRadical Venturesで、これまで投資していたIndex Ventures、Partech、Lerer Hippeauも参加した。ロビケット氏は今回の資金をエンジニアリングチーム、製品開発、カスタマーベースに投入し、リーダーシップチームを充実させる考えだ。

Crossing MindsはPenguin Random House、Danone、Inkboxなどにサービスを提供している。ロビケット氏は、利用企業は売上が平均で93%、クリックスルー率は120%増加したと推計している。

Radical Ventures共同創業者のTomi Poutanen(トミ・ポータネン)氏は、Inkboxなどの企業は「Crossing Mindsと連携したときにルビコン川を渡る」ことができたという。同氏は、コンバージョン、リピート販売、チャーンの指標によって経済的な手法が成長すると述べた。

例えばInkboxは2月にCrossing Mindsを利用し始め、Crossing Mindsによればメールのクリックスルー率が250%増、カート追加が250%増、新規ユーザーのオンサイトのコンバージョンが68.6%増の結果がすでに見られるという。

ポータネン氏は「アレクサンドル、エミール、セバスチアンはユニークなものを持っています。数学とディープテックに関する経歴や学位の基盤は、他にはなかなかありません。彼らはプロダクトの価値とその使い方を深く理解しています」と述べた。

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(文:Christine Hall、翻訳:Kaori Koyama)

Google TVにユーザープロファイル、ウォッチリスト、改善された「アンビエントモード」追加

Google TVが、家族の全員が自分のGoogleアカウントで自分の個人化されたスペースにアクセスできるように複数のユーザープロフィールを追加する。Googleによるとユーザーは、その個人化されたプロフィールでテレビ番組や映画を観ることができる。

Googleのブログ記事によると、ユーザーがテレビを見るとき、プロフィールが彼らの関心と好みを収集してアカウントに加え、類似のコンテンツを見つけやすいようにする。親が子どものプロフィールをセットして、子どもが観てもいいムービーや番組も指定できる。各アカウントにウォッチリストがあるため、後で見たいコンテンツも自分のプロフィールに追加され、他のユーザーのリストに入ることはない。

さらにGoogleによると、プロフィールはユーザーのGoogleアシスタントのアカウントにリンクされているため、おすすめの映画やその日の予定などをアシスタントに尋ねることができる。

同社によると、アプリをダウンロードするときのログイン情報がそのまま使われるため、プロフィールはほとんど自動的に作成され、新しいプロフィールのセットアップを一から行なう苦労はない。

画像クレジット:Google

また、アシスタントのスクリーンセーバー的機能である「アンビエントモード」に個人化情報やおすすめカードを追加して、より便利にできるという。たとえばプロフィールに天気予報やニュース、スポーツなどを指定していれば、テレビはいつもそれらの最新情報を映し出すだろう。また画面上のショートカットをスクロールして、写真を見る、音楽を聴くなどをすばやく指定できる。ユーザーが長時間いない場合、テレビを自動的にアンビエントモードの写真やアートなどにすることもできる。

また、Google TVはYouTube TVやSling TVに加え、ストリーミングサービスのPhiloを統合してライブの機能を一層充実させた。PhiloをライブTVのプロバイダーに加えると、Live TVタブやおすすめ機能で、その番組を観ることができる。

プロフィールとアンビエントモードのサポートは、Google TVのあるChromecastやSonyとTCLのGoogle TVで近く展開される。プロフィールはグローバルに提供されるが、アンビエントモードのカードは最初は米国のみだ。

画像クレジット:Google

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

独Xaynが広告を表示させずにプライバシーを保護できる検索ツールのウェブ版を発表

ベルリンを拠点とするスタートアップ企業Xayn(ゼイン)は、Googleのようなアドテック大手のトラッキングやプロファイリングを利用せずに、プライバシー保護とパーソナライズを両立させた広告のない検索サービスを提供している(2020年のTechCrunchの記事を参照のこと)。同社はその製品の提供範囲を拡大し、ウェブ版(現在はベータ版)を発表した。

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同社がモバイルアプリと同様の機能を持つ「light web version」と説明しているウェブ版「Xayn WebBeta」は、あるコンテンツに「興味がないことを意思表示するためにスワイプ」できないといった点がXaynのモバイルアプリとは異なる。

ブラウザのように見えても、Xayn自体はブラウザとも少し違う。同社が「ブラウジングエンジン」と称するXaynでは、プライベート検索だけでなく、ディスカバリーフィード(ニュースフィード)の形でコンテンツを整理して表示することで、アプリ内でブラウジングすることができる。

デスクトップのブラウザでXaynを読み込むと、XaynのAIがフィードで何を表示するかを判断するために、短いタイムラグが発生する(モバイルでも同様)。Xaynを最初に起動したとき(すなわち、AIがゼロからコンテンツをユーザーの地域に合わせてローカライズしているとき)は、すでにユーザーが何回かXaynにアクセスしてユーザー固有の閲覧シグナルをAIが利用できるときを比べて、わずかに長く時間がかかるようだ。

ウェブ版のXaynでは、コンテンツの左右に緑(好き)またはピンク(嫌い)のバーが表示されている。そのバーの横にカーソルを合わせるとホップアップ表示される、上向き(または下向き)の親指のアイコンをクリックすることで、特定のコンテンツに対する「評価する」または「評価しない」のシグナルを送ることができる。左クリックだけで「いいね!」できる、という仕組みだ。

また、フィードを増やしたくない場合は、フィードをオフにして、起動時に検索バーだけを表示させることもできる。

デフォルトでは、検索結果はコンテンツペインに、ニュースフィードと同じような長方形のグリッドで表示される。情報を求めているユーザーにとっては、少しばかり情報密度が足りないだろうか。

Xaynウェブ版(ベータ版)の検索結果ページのサンプル(画像キャプチャー:Natasha Lomas / TechCrunch)

Xaynの学習AIは、右上の「脳」のアイコンをクリックすれば、いつでもオフにすることができる。オフにすると、ユーザーが閲覧しているものが、ユーザーに表示されるコンテンツ(フィードのコンテンツと検索結果の両方)を決定するAIの学習に使用されないようになる。

全体をまっさらな状態に戻したい場合は、手動で閲覧データを消去して学習をリセットすることもできる。

ユーザーに魅力的なもう1つの要素はXaynには広告が表示されないことだ。DuckDuckGoやQwantのような他の非追跡型プライベート検索エンジンは、コンテクスト広告を表示することで収益を上げているが、Xaynには広告がない。

さらに同社は、検索業界の常識にとらわれずに、Xayn AIの検索アルゴリズムをオープンソースで提供している。

他にもウェブ版のXaynには、クリック1つで関連コンテンツが表示される「ディープサーチ」や「コレクション」というブックマークのような機能がある。ユーザーは「コレクションを作成、コンテンツを追加、管理することで、お気に入りのウェブコンテンツを集めて保存することができる」という。

Xaynは広告を表示しないだけでなく、広告ブロッカーを搭載し、第三者のサイトに表示される広告をブロックして「ノイズのない」ブラウジングを実現している。

Xaynのウェブ版は、ChromiumベースのブラウザとFirefoxにのみ対応しているので、Safariユーザーはサポートされたブラウザに切り替えてXaynを使用する必要がある。

同社によると、2020年12月に発表されたXaynのモバイルアプリは、その後世界中で25万回以上ダウンロードされている。

Xaynのモバイルアプリでは、発表から3カ月後には毎日10万以上のアクティブ検索が行われ、Xaynはブラウジングデータとユーザーの興味を示すスワイプを取り込み、このツールの価値提案の中核であるパーソナライズされたコンテンツの検索のためのAIをトレーニングし、改善している。この学習と再評価はすべてデバイス上で行われ「Xaynはユーザーごとの検索結果のプライバシーを保護している」とアピールできる材料になっている。

また、フィルターバブル(泡の中にいるように、自分の見たい情報しか見えなくなること)効果を避けるために、Xaynの検索結果には意図的な変化が加えられ、アルゴリズムが常に同じものばかりをユーザーに提供しないようにしている。

Xaynのウェブ版もモバイル版も、Masked Federated Learning(保護されたフェデレーテッドラーニング(連合学習))と呼ばれる技術を用いて、ユーザーのプライバシーを損なうことなく、ユーザーにパーソナライズされたウェブエクスペリエンスを提供している。

もちろんGoogle(グーグル)も独自の広告ターゲティング技術の改善に取り組んでいて、現在、広告ターゲティングのためにブラウザユーザーをインタレストバケットに分類するFloC(コホートの連合学習)と呼ばれる技術を試験的に導入し、トラッキングクッキーを廃止しようとしている。しかし、Xaynとは異なり、Googleのコアビジネスはユーザーをプロファイリングして広告主に販売することだ。

共同創業者でCEOのLeif-Nissen Lundbæk(レイフニッセン・ルンドベーク)氏は声明で次のように述べる。「私たちは、誤ったプライバシーと利便性のジレンマへの直接的な対応としてXaynを開発しました。このジレンマを解決できることはすぐに証明されました。ユーザーはもはや敗者ではありません。実際、私たちのすばらしいエンジニア&デザイナーチームは、アップデートのたびに、プライバシーや品質、優れたユーザーエクスペリエンスがいかに密接に結びついているかを繰り返し実証してくれます」。

「私たちは既存のものをコピーするのではなく、じっくりと検討して新しいものを作りたいと考えました。Xaynでは、積極的にウェブを検索したり、インターネット全体からパーソナライズされたコンテンツを提案するディスカバリーフィードを閲覧したりして、インターネット上のお気に入りのサイトを見つけることができます。どちらの方法でもユーザーのプライバシーは常に保護されます」。

デザイン部門の責任者であるJulia Hintz(ジュリア・ヒンツ)氏も、別の声明で次のように付言している。「Xaynのウェブ版を開発するにあたり、Xaynアプリの成功につながったすべての要素をデスクトップのブラウザウィンドウで利用できるようにしました」。

「ウェブ版にもプライバシーを保護するアルゴリズム、直感的なデザイン、スムーズなアニメーションが採用されています。ユーザーは、慣れ親しんだ環境から切り離されることなく、モバイルとデスクトップを簡単に切り替えることができます。これこそが、シームレスで強いインタラクションの鍵となる、Xaynのすばらしい利点です」。

ウェブ版のXaynでは、ユーザーの個人情報はブラウザ内に保存されるという。

ウェブ版のセキュリティについては、広報担当者が次のように話す。「デスクトップパソコンは、一般的にスマートフォンよりも安全性が低いといわれています。Xaynはプライバシー保護のために、分散型の機械学習と暗号化を組み合わせて個人データを保護しています。純粋に技術的な観点から見ると、Xaynはデスクトップデバイス上のブラウザの中のブラウザです。Xaynはそれぞれのブラウザのサンドボックス内で動作し、個人データを第三者の不要なアクセスから保護します」。

Xaynは今後、プライバシーを保護しながらパーソナライズされたブラウジングを同期する機能を追加する予定で、オンラインであればどこからでも、モバイルとデスクトップの複数のデバイスでAIの学習結果を享受できるようになる。

ブラウザでwww.xayn.comにアクセスすれば、Xayn検索エンジンのウェブ版(ベータ版)をデスクトップパソコンで確認できる。

Xaynは2021年8月、日本のベンチャーキャピタルGlobal Brain(グローバル・ブレイン)とKDDIが主導し、ベルリンのEarlybird VC(アーリーバードVC)などの既存の支援者が参加したシリーズAラウンドで1200万ドル(約13億円)を調達。累計調達額は2300万ドル(約25億円)を超えた。同社が日本をはじめとするアジアに注目しているのは確実だ。

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画像クレジット:Xayn

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

Spotifyが友達と音楽の好みを合わせてプレイリストが作れる新機能「Blend」を正式公開

米国時間8月31日、Spotify(スポティファイ)は共有プレイリスト機能である「Blend」(ブレンド)を全世界のユーザーに正式公開した。今夏、Spotifyはこの新しい共有プレイリスト体験のベータテストを開始している。この機能は2人のユーザーが互いの好きな曲を1つの共有プレイリストにまとめられるもので、使われているテクノロジーはSpotifyのFamily Mix(ファミリー・ミックス)やDuo Mix(デュオ・ミックス)などの複数人プレイリスト機能と同じものだ。しかしBlendでは、無料ユーザーを含め誰でも自分たちの音楽テイストを融合できる。

新機能はベータ版以降、さらに進化したとSpotifyはいう。

Blend(すなわち2人の共有プレイリスト)を作ったユーザーには、両者のリスニング志向が似ているか異なっているかを表す「taste match score」と呼ばれる数値が与えられる。Blendを初めて作った後、スコアはパーセンテージで表され、どの曲が2人を結びつけたかを示すテキストが添えられる。

Blendにはカバーアートも付加されるのでユーザーは自分のプレイリストを見つけやすくなる。


プレミアムサブスクライバーには追加の特典がある。彼らのバージョンのBlendでは、リスナーはユーザーのどのお気に入り項目がプレイリストの各曲に貢献しているかを見ることができる。

Spotifyによると、Blendのテスト中、Olivia Rodrigo(オリヴィア・ロドリゴ)がBlendプレイリストで最も多くストリーミングされたアーティストのトップになり、Doja Cat(ドージャ・キャット)、Taylor Swift(テイラー・スウィフト)、The Weekend(ザ・ウィークエンド)、Lil Nas X(リル・ナズX)などが続いた。

この機能は、Spotifyに単に楽しい新機能を加えるだけではない。ユーザー獲得戦略の一環だ。無料ユーザーもBlendの作成や参加が可能なので、この機能はSpotifyが初めての人を誘う方法としても機能する。現在音楽にお金を払っていない人やライバルサービスをサブスクライブしている人も。そして、一度Spotifyアプリを使えば、使い続けてくれるかもしれない、という考えだ。

Blendは2021年6月にOnly Youという新しいアプリ内体験とともに発表された。Only Youはユーザーのお気に入り楽曲と聴取傾向に焦点を当てた機能で、Spotifyで人気の年間振り返り、Spotify Wrappedの年途中バージョンのようなものだ。BlendではOnly Youと同じくソーシャル・シェアリングがサポートされている。ユーザーはBlendの「data stories」を自分のSNSでシェアできる。これはBlendが作られた直後にポップアップするスクリーンと同じもので、Blendプレイリストの中でいつでも表示することができる。

こうして頻繁にリリースする機能でSpotifyが伝えようとしているより大きなメッセージは、同社がパーソナライゼーション技術に関して他を大きく引き離していることを、ユーザーやライバルに示すことだ。Spotifyのプレイリストのアイデアは多くのライバルが真似しているが、同社はすぐ後に新機能をリリースする傾向がある。Only Youや通勤者向けのプレイリストワークアウト向けさらにはアーティスト、ジャンル、年代に基づく新しいミックスのコレクションなどだ。

Blendは、SpotifyモバイルアプリのMade for Youタブから利用できる。初めに「Create Blend」、次に「invite」をタップして、自分のBlendに参加する友だちを選ぶ。友だちが承認すると、Spotifyがカバーアートとトラックリストを作り、あなたのtaste match scoreを表示する。「Share this Story」をタップすれば、data storiesをSNSでシェアできる。

Blendは米国時間8月31日から世界の全ユーザーに公開される。大規模な展開には時間がかかるので、すぐには出てこないかもしれないので、時々確認して欲しい。

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画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

パーソナライズ×D2Cブランド「MEDULLA」「HOTARU PERSONALIZED」運営のSpartyが総額約41億円調達

パーソナライズ基軸のD2Cブランド「MEDULLA」「HOTARU PERSONALIZED」運営のSpartyが総額約41億円調達

Sparty(スパーティー)は8月13日、約20億円の第三者割当増資および21億円の融資により、総額約41億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リード投資家のJICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合(JICベンチャー・グロース・インベストメンツ)、既存株主・新規投資家。また借入先はりそな銀行、みずほ銀行、三菱UFJ銀行。

調達した資金は、2022年6月までに200名規模の採用強化、各パーソナライズブランドの認知向上を目指した広告展開、幅広いマーケティング活動投資に活用する。さらに、アジア市場をはじめとするグローバル展開、SDGsへの積極的な取り組みも実施する。

Spartyは、2017年7月の創業以降「一人ひとりの個性を価値化したい」という想いのもと「色気のある時代を創ろう」をミッションに掲げ、パーソナライズを基軸としたD2Cブランドを展開。パーソナライズヘアケア「MEDULLA」、パーソナライズスキンケア「HOTARU PERSONALIZED」、パーソナライズボディメイク「Waitless」の3ブランドを主軸に手がけ、2021年8月時点で累計会員数は35万人以上という。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:サブスクリプション(用語)SpartyD2C(用語)パーソナライズ(用語)美容(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

プライバシーとパーソナライズを両立する検索エンジンXaynが日本のKDDIやGlobal Brainなどから約13億円調達

TechCrunchは2020年12月に新しいスマホアプリベースの検索エンジンXayn(ゼイン)を取り上げた。

「検索エンジン!?」。そういうのはわかる。個人に合わせて検索結果を調整する現代の検索エンジンの能力は便利なものだが、そうしたユーザー追跡はプライバシーを犠牲にしている。いくつか例を挙げると、この監視社会はGoogle(グーグル)の検索エンジンやFacebook(フェイスブック)のターゲティング広告を改善しているかもしれないが、我々のプライバシーにとってはあまり良くない。

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もちろんインターネットユーザーは米国拠点のDuckDuckGoや、フランスのQwantなどに切り替えることができるが、プライバシーで得られるものがある代わりに、検索結果の調整の欠如によりユーザーエクスペリエンスや検索結果の適切性が往々にして損なわれる。

ベルリン拠点のXaynが提案しているのは、パーソナライズされているもののプライバシーが守られているスマホでのウェブ検索だ。これはGoogleが展開するクラウドベースのAIや、現代のスマートフォンにビルトインされているAIに代わるものだ。結果として、あなたに関するデータはXaynのサーバーにアップロードされない。

このアプローチは「プライバシー熱烈支持者」のためだけではない。検索を要するがGoogleのマーケットにおける支配的地位は必要としないという事業者もこのモデルにますますひきつけられている。

その証拠が8月9日に明らかになった。Xaynは、日本のベンチャーキャピタルGlobal Brain(グローバル・ブレイン)と通信事業者KDDIがリードしたシリーズAラウンドで約1200万ドル(約13億円)を調達した。本ラウンドには既存投資家であるベルリンのEarlybird VCなども参加し、Xaynの累計調達額は2300万ドル(約25億円)を超えた。

Xaynの検索エンジン、ディスカバリーフィード、そしてモバイルブラウザの融合はこうしたアジアマーケットの企業にアピールしてきたようだ。というのも、特にXaynはOEMデバイスに組み込むことができるからだ。

今回の投資を受け、Xaynは日本を皮切りとするアジアマーケット、ならびに欧州マーケットに注力する。

Xaynの共同創業者でCEOのLeif-Nissen Lundbæk(リーフ−ニッセン・ルンドベック)氏は次のように述べた。「我々はXaynで、パーソナライゼーションを通じたすばらしい検索結果、高度なテクノロジーを使ったプライバシー重視デザイン、そしてクリーンなデザインを通じた便利なユーザーエクスペリエンスのすべてを手にすることができると証明しました」。

そして「データーを販売し、多くの広告を表示するのが常態となっている業界にあって、当社はプライバシーを優先し、ユーザーの満足を中心に据えることを選びました」と付け加えた。

今回の資金調達は、 EUのGDPR(一般データ保護規則)やカリフォルニア州のCCPA(消費者プライバシー法)といった法制化がオンライン上の個人データについて市民意識を高めてきた中でのものだ。

リリース以来、Xaynのアプリは世界で21万5000回ダウンロードされ、アプリのウェブバージョンも間もなく展開される、と同社は話す。

電話取材で、ルンドベック氏は資金調達にともなうKDDIの役割について詳しく話した。「KDDIとの提携は、我々がユーザーにXaynへのアクセスを無料で提供することを意味します。KDDIのような企業が実際の顧客でありながら、KDDIが当社の検索エンジンを無料で提供します」。

Xaynの基本的な特徴には、パーソナライズされた検索結果がある。個人データの収集や共有はせずに、Tinderのようなスワイプから学ぶインターネット全体のパーソナライズされたフィードだ。そして広告なしのエクスペリエンスも提供される。

グローバル・ブレインのパートナー、上前田直樹氏は次のように述べた。「プライベートオンライン検索のマーケットは成長していますが、Xaynはオンラインでの情報収集がどのようにあるべきか、その再考法において他社より抜きん出ています」。

KDDI Open Innovation Fundの責任者である中馬和彦氏は「この欧州のディスカバリーエンジンは効率的なAIにプライバシー保護重視とスムーズなユーザーエクスペリエンスを独自に組み合わせています。KDDIは、専門性とテクノロジーで未来を形作ることができる企業に目を光らせています。ですので、今回の取引は当社に完璧にマッチするものでした」。

共同創業者であるCEOのリーフ−ニッセン・ルンドベック氏、最高研究責任者のMichael Huth(マイケル・フート)教授、最高執行責任者のFelix Hahmann(フェリックス・ハーマン)氏に加え、Daniel von Heyl(ダニエル・フォン・ヘイル)博士が最高財務責任者として取締役会に加わり、Frank Pepermans(フランク・ペパーマンズ)氏が最高テクノロジー責任者に、Michael Briggs(マイケル・ブリグズ)氏が最高事業成長責任者に就く。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:プライバシー検索エンジンKDDI資金調達スマートフォンアプリパーソナライズXayn

画像クレジット:xayn team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

AIで心を癒すあなただけのアロマを調合、コードミーが「香りのトータルコーディネート」など新展開

AI技術を駆使してパーソナライズされた香りを届ける「CODE Meee ONE」が人気だ。同サービスを提供するコードミーは2017年4月に創業。BtoC向けにフレグランス関連商品の企画・開発・販売を、BtoB向けに香りの空間デザインなどを展開している。2020年度はBtoC、BtoB合わせて、売上ベースで対前年比約400%増になったという。コードミーの太田健司代表に、事業内容や新たな展開について話を聞いた。

コードミーが扱う「香り」とは

誰でも、ある香りを嗅いだ瞬間、その香りにまつわる記憶が一瞬でよみがえるといった経験があるのではないだろうか。国内最大手の香料会社で10年間フレグランス開発などを行ってきた太田氏は「人間の五感で唯一、嗅覚は感情と記憶に直接結び付いています」と説明する。

脳には、喜怒哀楽などの感情や記憶をつかさどる器官を持つ大脳辺縁系がある。大脳辺縁系には、匂いだけがダイレクトに伝達される。このため、香りを嗅げば無意識のうちに、過去の情景が呼び起こされるといった現象が起きるのだという。

太田氏は「香りはパワフルなツールですが、まだ完全には解明されていない部分も多いものです。例えば、人が亡くなるとき、最後に残っている感覚は嗅覚だといわれています。原始的で神秘的な香りの可能性は、とても大きいと思っています」と話す。

ストレス課題の解消を狙う「CODE Meee ONE」

CODE Meee ONEは、毎月アロマが届くサービスだ。サブスク型で1カ月税込1800円。年齢や性別の他、睡眠不足・疲労・二日酔いといった自身のストレス課題、香りの好みなどをウェブ診断で答えれば、3000パターン以上の中からパーソナライズされた3つのアロマが提案される。

サービス利用中は香りの再診断もできる。「季節や自身のライフステージに合わせ、抱えるストレス課題や、香りの好み、香りに期待する機能性などは変化するという前提です。その時々の診断結果に合わせて『今のあなたに最適な香りが作られる』ことになります」と太田氏はいう。なお、お試しとして単発でも購入可能で、その場合は税込2800円となる。

CODE Meee ONEでのウェブ診断後、パーソナライズされたアロマの代表的な素材3つがユーザーに表示されるようになっているが、それぞれの配合比なども個人によって変わる。

太田氏は「CODE Meee ONEで出来上がるアロマは、その人にしかない香りになります。素材の配合比や濃度など細かく分けていけば、実質的にそのパターンは無限に近くなります」と語った。

また、パーソナライズのためにサービスをTwitterと連携することもできる。直近の投稿データ200件分をAIが解析し、現在の精神状態をグラフでビジュアル化。この結果に基づいてさらにアロマをもう1つ提案している。

太田氏は「Twitterによる分析は、IBMの人工知能『Watson』と連携しています。直近の投稿データ200件分に出てくる単語ごとに分析しています。『Twitterは本心ではなく、建前も多い』とよく言われますが、人は使う単語にクセが出ます。本人も意識していない、しっかりとしたインサイトが単語から分析できるのです」と説明する。

CODE Meee ONEはサービスローンチから2年近く経つが、新型コロナが蔓延する中、顧客の幅が一気に広がったという。「コロナ禍で『自分の心身を労わろう』という考えが広がり、家の中でより豊かな時間を感じたいと、新たに香りに着目している人が増えました」と太田氏はみる。現在、数千人がサービス利用している。

CODE Meee ONEで蓄積したユーザーデータはパーソナライズの精度を上げることはもちろんだが、BtoB事業にも活かしている。

「BtoB向けの空間デザインでは、ターゲット層に対して、香りによって『集中力を上げる』『リラックスする』などの機能を期待したいといったとき、蓄積したデータを活用しながら、香りを開発しています」と太田氏。

BtoB向けの空間デザインも基本的にはサブスク型で提供し、価格は企業や案件によりその都度カスタマイズする。コードミーは東急不動産ホールディングスなど、すでに数十カ所以上で空間デザインを行っている。

科学に裏打ちされたデータに基づく香り

コロナ禍において、コードミーはマスク専用のプレミアムアロマスプレーの販売も始めた。

太田氏は「マスクに吹きかけるアロマスプレー自体はすでに世の中にありました。ただ、それらは単にいい香りがするというものが多いです。我々は、脳波を測定し、感性科学的に『快適度の向上』『ストレス値の軽減』といった結果が出たオリジナルの調合香料を開発しました。科学に裏打ちされたアロマスプレーとして人気が集まり、売上向上にもつながりました」と説明する。

コードミーでは2017年の創業時から、バイタルデータと香りの相関性を重要視し、研究を進めてきた。バイタルデータの中でも特に着目しているのが脳波だ。2019年には電通サイエンスジャムとの連携により、脳波による感性把握技術に基づく香りで、快適な職場環境をデザインする実証実験も行った。

さらに2020年には、東京・江戸川病院と連携し、臨床研究も始めた。医療・介護施設には、疾患や薬剤などに関連する医療現場特有の匂いがある。特にがん医療の現場では、がん組織に由来する特有の腫瘍関連の匂いが日常生活に関わる問題となっていながらも、いまだに根本的な解決策は確立されていないという。

コードミーではコロナ渦の過酷な状況で働く医師、看護師、介護士らを対象に、マスク専用プレミアムアロマスプレーを提供して効果検証を行った。

太田氏は「結果として、総合的な快適度が上がり、医療施設特有の匂いに対するネガティブな感覚も改善傾向が見られたことが、定性と定量の両データで示されました。今後はデータに基づくソリューションフレグランスを、医療施設内の空間デザインへと展開し、患者様、ご家族などのQOL(生活の質)向上に対する取り組みを計画中です」と述べた。

新たな「香りのトータルコーディネート」

コードミーは新たな展開として、生活のあらゆるシーンにパーソナライズした香りで寄り添う「香りのトータルコーディネート」を展開する。2021年内にはファーストプロダクトも出す予定だという。

シャンプーや石鹸、洗剤、柔軟剤、ルームフレグランス、ハンドクリームなど、日々の暮らしの中で香りを感じる場面は多くある。これらの商材をパーソナライズして提案し、好みの香りを1日を通して楽しめるようにするのだ。

現在はウェブ診断などの質問項目や販売方法なども検討段階だ。入浴剤などはサブスク型でも良いが、香水はそれほど利用率が高くないため、プロダクトにあったカタチで販売方法を検討する必要があるとする。

太田氏は「ウェブ診断でも、例えば香水なら『どんな自分を表現したいか』といったように、設問も大きく変えていく必要があります。このサービスは、完成形に至るまで時間がかかるかもしれません。ただ、年末にはまず新しいプロダクトを、また来年以降にもいくつか出せるよう動いていきます」と語った。

その上で「香料会社で培ったスキルと経験がある私だからこそできることがしたいと考えています。パーソナライズされた香りのトータルコーディネートが実現すれば、日本初のサービスになると思います」と太田氏は自信を見せる。

カテゴリー:その他
タグ:コードミー香りパーソナライズ人工知能Watson日本

画像クレジット:コードミー